JP2004131532A - ホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物、およびそれを含む樹脂組成物、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ホスホン酸基を有する2種のポリベンザゾール系化合物を主成分とし、両者のユニットの共重合モル比が20:80から80:20の範囲にあることを特徴とするポリベンズイミダゾール系化合物により、上記目的が達成される。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子電解質膜として有用なホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物、それを含む樹脂組成物、樹脂成形物、固体高分子電解質膜、固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体、燃料電池および複合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液体電解質のかわりに高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を上げることができる。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜としてプロトン導電率とともに化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」を代表例とするパーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。しかしながら、100℃を越える条件で運転しようとすると、膜の含水率が急激に落ちるほか、膜の軟化も顕著となり燃料電池として十分な性能を発揮することはできない。また、膜のコストが高すぎることも燃料電池技術の確立の障害として指摘されている。
【0003】
このような欠点を克服するため、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子電解質膜が種々検討されている。例えば、高耐熱、高耐久性のポリマーとして知られるポリベンズイミダゾールなどの芳香族ポリアゾール系のポリマーにスルホン酸基を導入して上記目的に利用することが考えられる。このようなポリマー構造として、スルホン酸を含有したポリベンズイミダゾールについては、非特許文献1における3,3’−ジアミノベンジジンと3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸または2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸から合成するものが、特許文献1では1,2,4,5−ベンゼンテトラミンと2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸を主成分として合成するものが報告されている。しかしこれらの報告では、スルホン酸含有ポリベンズイミダゾールの溶解性や耐熱性などには注意が向けられているが、電解質膜用途などスルホン酸基が持つ電気化学的特性について顧みられることはなかった。特に、これらの物は、耐熱性、耐溶剤性、機械的特性とイオン伝導特性を両立させる点で劣り、高分子電解質膜などには使用するには不適であった。一方、特許文献2において、高分子電解質膜用のポリマーとしてイミダゾール環が結合する芳香環および/またはイミダゾール環が結合しないベンゼン環ユニット上にスルホン酸基が導入された構造が例示されているが、高分子電解質膜としての特性についての記述はなく、その有用性は不明である。スルホン酸基含有ポリベンズイミダゾールが高分子電解質膜として評価された例としては、特許文献3にジカルボン酸モノマーユニット上にスルホン酸基が導入されたものが報告されている。
【0004】
また、スルホン酸基よりは耐熱性に優れると考えられるホスホン酸基を有する芳香族ポリマーについて、固体高分子電解質としての応用という視点から着目したものはあまりみられない。わずかに散見される例として、4,4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン)ビス(2−アミノフェノール)からなるポリベンズオキサゾールにおいて、ジカルボン酸成分の5〜50%を3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸とするポリマーが報告されており(特許文献4)、溶解性の良さと複合材料としての可能性に着目しているが、燃料電池用途の固体高分子電解質としては考慮されることはなかった。実際、このポリマーはイオン伝導性も低い値しか示さないことから、燃料電池用の固体高分子電解質には適さないと言える。一方、特許文献5において、高分子電解質膜用のポリマーとしてイミダゾール環が結合する芳香環および/またはイミダゾール環が結合しないベンゼン環ユニット上にホスホン酸基が導入された構造が例示されているが、高分子電解質膜としての特性についての記述はなく、その有用性は不明である。ホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾールが高分子電解質膜として評価された例としては、特許文献6にジカルボン酸モノマーユニット上にホスホン酸基が導入されたものが報告されている。
【0005】
【特許文献1】
USP−5312895
【特許文献2】
特表平8−504293特許公報
【特許文献3】
特開平2002−208416
【特許文献4】
USP5,498,784号公報
【特許文献5】
特表平8−504293特許公報
【特許文献6】
特開平2002−146022
【非特許文献1】
Uno他,J. Polym. Sci., Polym. Chem., 15, 1309(1977)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、耐溶剤性、機械特性などの面で優れた性質を持つポリベンザゾール系化合物にホスホン酸基を導入することにより、特に高温での使用に優れた固体高分子電解質となりうる新規な高分子材料を得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾールユニットを組み合わせることにより、本発明の目的を満たす新規な高分子材料となることを見出すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記(1)〜(7)により達成される。
【0009】
(1)下記の式(1)と(2)で表される結合ユニットを主成分とし、式(1)と(2)で表される結合ユニットの共重合モル比が20:80から80:20の範囲にあることを特徴とするポリベンズイミダゾール系化合物。
【0010】
【化2】
(式(1)および式(2)においては、mは1から4の整数を、Arは芳香族結合ユニットを表わし、Xは直接結合、−O−、−SO2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−OPhO−よりなる群から選ばれる1種以上であることを表わすものとする。)
【0011】
(2)第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0012】
(3)第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする樹脂成形物。
【0013】
(4)第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする固体高分子電解質膜。
【0014】
(5)固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両面に接合された電極触媒層とを構成要素として含む複合体であって、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層を構成する成分として、第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体。
【0015】
(6)第5の発明に記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池。
【0016】
(7)固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両面に接合された電極触媒層とをバインダを用いて接着させる工程を含む複合体の製造方法であって、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層は第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を構成成分として含有し、該バインダも第1の発明に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を構成成分として含有することを特徴とする固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明におけるホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物は、下記の式(1)および(2)で表される結合ユニットを主成分とし、式(1)と(2)で表される結合ユニットの共重合モル比が20:80から80:20の範囲にあることを特徴とするとする。式(1)で表せる結合ユニットのモル比が20%以下の場合は高温でのプロトン導電率が際だって高い値とならず、80%以上の場合は加工性や膜強度不良になる傾向がある。本発明で示す共重合モル比の範囲において高温でのプロトン導電率と機械特性に優れたものとなる。
【0019】
【化3】
【0020】
上記の式(1)および式(2)においては、mは1から4の整数を、Arは芳香族結合ユニットを表わし、Xは直接結合、−O−、−SO2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−OPhO−よりなる群から選ばれる1種以上であることを表わしている。
【0021】
本発明のポリベンズイミダゾール化合物が示すプロトン伝導率は、80℃、湿度95%RHの恒温・恒湿オーブン内でフィルム状試料について交流インピーダンス法により求めた際に、1x10−3S/cm以上を示すことが好ましく、1x10−2S/cm以上であることが特に好ましく、その際に100℃以上の高温においても特に優れたプロトン導電挙動を示すことができる。
【0022】
本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物を合成する経路は特には限定されないが、イミダゾール環を形成し得る芳香族テトラミン類およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる化合物と、ホスホン酸基を含有する芳香族ジカルボン酸およびその誘導体よりなる群から選ばれる一種以上の化合物との反応により合成することができる。ホスホン酸基を含むジカルボン酸はそれぞれ一種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0023】
ここで、ベンズイミダゾールユニットや、ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸結合ユニットは、ランダム重合および/または交互的重合により結合していることが好ましい。また、これらの重合形式は一種に限られず、二種以上の重合形式が同一の化合物中で並存していてもよい。
【0024】
本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾールのうち、式(1)で示されるユニットを与える芳香族テトラミンの具体例としては、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンおよびこれらの誘導体が、式(2)で示されるユニットを与える芳香族テトラミンの具体例としては、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3,4−ジアミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンジジンおよびこれらの誘導体が挙げられる。また、式(1)および式(2)で表されるユニットが主成分となる範囲において、他の芳香族テトラミンやその誘導体が使用されてもかまわない。
【0025】
これらの芳香族テトラミン類の誘導体の具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸などの酸との塩などを挙げることができる。また、これらの化合物は単独で使用してもよいが、同時に複数使用することもできる。さらに、これらの化合物は、必要に応じて塩化すず(II)や亜リン酸化合物などの公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0026】
該ホスホン酸基を含有するポリベンズイミダゾールを合成する際に用いるホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸およびその誘導体としては、特に限定されるものではなく、芳香族ジカルボン酸骨格中に1個から4個のホスホン酸基を有する化合物を好適に使用することができる。具体例としては、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ビスホスホノテレフタル酸、などのホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸およびこれらの誘導体を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸骨格中に5個以上のホスホン酸基を有すると、ポリマーの耐水性が低下する傾向が出てくるので好ましくない。
【0027】
ここで、これらのホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸のホスホン酸誘導体としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などをあげることができる。また、これらの化合物は単独で使用してもよいが、同時に複数使用することもできる。さらに、これらの化合物は、必要に応じて塩化すず(II)や亜リン酸化合物などの公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0028】
そして、ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸の構造はこれらに限定されることはないが、ここに示したようなフェニルホスホン酸基型のホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0029】
本発明のポリベンズイミダゾール系化合物の合成に用いる、ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸の純度は特に限定されるものではないが、97%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸を原料として重合されたポリベンズイミダゾール系化合物は、スルホン酸基およびホスホン酸基を有さない芳香族ジカルボン酸を原料として用いた場合に比べて、重合度が低くなる傾向が見られるため、ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸はできるだけ純度が高いものを用いることが好ましい。すなわち、芳香族ジカルボン酸の純度が97%未満の場合には、得られるポリベンズイミダゾール系化合物の重合度が低下して固体高分子電解質の材料として適さないものとなる傾向がある。
【0030】
ホスホン酸基含有ジカルボン酸はそれら単独だけでなく、式(1)および式(2)で表されるユニットが主成分となる範囲において、ホスホン酸基を含有しないジカルボン酸とともに共重合の形で導入することができる。ホスホン酸基含有ジカルボン酸とともに使用できるジカルボン酸例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ターフェニルジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等ポリエステル原料として報告されている一般的なジカルボン酸を使用することができ、ここで例示したものに限定されるものではない。また、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジカルボキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、4,6−ジカルボキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,2’−ジスルホ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ジスルホ−4,4’−ビフェニルジカルボン酸などのスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸およびこれらの誘導体使用することもできる。
【0031】
また、これらの化合物は単独で使用してもよいが、同時に複数使用することもできる。さらに、これらの化合物は、必要に応じて塩化すず(II)や亜リン酸化合物などの公知の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0032】
上述の芳香族テトラミン類およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる一種以上の化合物と、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを用いて、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を合成する方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、J.F.Wolfe, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 2nd Ed., Vol.11, P.601(1988)に記載されるようなポリリン酸を溶媒とする脱水、環化重合により合成することができる。また、ポリリン酸のかわりにメタンスルホン酸/五酸化リン混合溶媒系を用いた同様の機構による重合を適用することもできる。なお、熱安定性の高いポリベンズイミダゾール系化合物を合成するには、一般によく使用されるポリリン酸を用いた重合が好ましい。
【0033】
さらに、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を得るには、たとえば、適当な有機溶媒中や混合原料モノマー融体の形での反応でポリアミド構造などを有する前駆体ポリマーを合成しておき、その後の適当な熱処理などによる環化反応で目的のポリベンズイミダゾール構造に変換する方法なども使用することができる。
【0034】
また、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を合成する際の反応時間は、個々の原料モノマーの組み合わせにより最適な反応時間があるので一概には規定できないが、従来報告されているような長時間をかけた反応では、ホスホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸などの原料モノマーを含む系では、得られたポリベンズイミダゾール系化合物の熱安定性が低下してしまう場合もあり、この場合には反応時間を本発明の効果の得られる範囲で短くすることが好ましい。このように反応時間を短くすることにより、ホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物も熱安定性の高い状態で得ることができる。
【0035】
また、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物の合成後においては、各繰返し単位同士はランダム重合および/または交互的重合により結合していることで、高分子電解質膜の材料として安定した性能を示す特徴を持つ。ここで、本発明のポリベンズイミダゾール系化合物をランダム重合および/または交互的重合の重合形式により合成するには、すべてのモノマー原料を重合初期から当量性を合わせた配合割合で仕込んでおく方法で作ることが好ましい。
【0036】
なお、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物をランダム重合や交互的重合ではなくブロック重合により合成することもできるが、その際には、当量性をずらした配合割合のモノマー原料の仕込み条件で第一成分のオリゴマーを合成し、さらにモノマー原料を追加して第二成分も含めて当量性が合う形に配合割合を調整した上で重合を行なうことが好ましい。
【0037】
本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、1,000以上であることが好ましく、3,000以上であればより好ましい。また、この分子量は1,000,000以下であることが好ましく、200,000以下であればより好ましい。この分子量が1,000未満の場合には、粘度の低下によりポリベンズイミダゾール系化合物から良好な性質を備えた成形物を得ることが困難となる。また、この分子量が1,000,000を超えると粘度の上昇によりポリベンズイミダゾール系化合物を成形することが困難になる。また、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物の分子量は、実質的には濃硫酸中で測定した場合の対数粘度で評価することができる。そして、この対数粘度は0.25以上であることが好ましく、特に0.40以上であればより好ましい。また、この対数粘度は30以下であることが好ましく、特に15以下であればより好ましい。この対数粘度が0.25未満の場合には、粘度の低下によりポリベンズイミダゾール系化合物から良好な性質を備えた成形物を得ることが困難となる。また、この分子量が30を超えると粘度の上昇によりポリベンズイミダゾール系化合物を成形することが困難になる。
【0038】
本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物は単独での使用に限られるわけではなく、他のポリマーとともに組成物として使用することができる。得られた樹脂組成物は燃料電池に用いる固体高分子電解質膜の材料として好適に使用可能である。組成物としてともに用いるポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。これらの樹脂組成物として使用する場合には、本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物は、樹脂組成物全体の50重量%以上100重量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70重量%以上100重量%未満である。本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物の含有量が樹脂組成物全体の50重量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン伝導膜のホスホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、ホスホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0039】
ここで、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物とともに配合し得るポリマーとしては、イオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物が好ましい。イオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物とは、芳香族ポリオキサゾール類、芳香族ポリチアゾール類、芳香族ポリイミダゾール類およびそれらが混在する組成物やそれらの共重合体を言うものとする。なお、本発明の樹脂組成物は、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物単独からなる樹脂組成物も含むものとする。
【0040】
本発明の樹脂組成物に配合し得るイオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物としては、特に限定されるものではないが、たとえば、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスイミダゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスイミダゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズオキサゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズオキサゾール}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズチアゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズチアゾール}、ポリ{2,2’−(p−フェニレン)−6,6’−ビベンズイミダゾール}、ポリ{2,2’−(m−フェニレン)−6,6’−ビベンズイミダゾール}、ポリ(2,6−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,5−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,6−ベンズチアゾール)、ポリ(2,5−ベンズチアゾール)、ポリ(2,6−ベンズイミダゾール)、ポリ(2,5−ベンズイミダゾール)などを挙げることができる。
そして、これらの化合物の中でも、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:5,4−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ{(ベンズ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル)−1,4−フェニレン}、ポリ(2,6−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,5−ベンズオキサゾール)、ポリ(2,6−ベンズチアゾール)、ポリ(2,5−ベンズチアゾール)などが、本発明の樹脂組成物に配合し得るイオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物としては特に好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物に配合し得るイオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物の重合度は、メタンスルホン酸中で測定した場合の対数粘度が0.5dl/g以上となるような重合度であることが好ましく、1dl/g以上となるような重合度であればより好ましい。また、この重合度は、上記の対数粘度が50dl/g以下となるような重合度であることが好ましく、30dl/g以下となるような重合度であればより好ましい。上記の対数粘度が0.5dl/g未満となるような重合度である場合には、樹脂組成物の成形性や機械特性が低下する傾向があり、上記の対数粘度が50dl/gを超えるような重合度である場合には、樹脂組成物の加工性が低下する傾向がある。
【0042】
本発明の樹脂組成物における、イオン性基を有さないポリベンザゾール系化合物の含有量は、樹脂組成物全体の質量に対して1質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であればより好ましい。また、この含有量は99質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であればより好ましく、30質量%以下であれば最も好ましい。この含有量が1質量%未満の場合には、成形性や機械特性が低下する傾向があり、この含有量が99質量%を超えると本来の目的である高分子電解質としての特性が低下する傾向がある。
【0043】
本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物と他のポリマーを混合する方法としては、公知の任意の方法を用いることができる。たとえば、両者を適当な溶媒に溶解して混合したり、溶融混練したり、粉砕して混合したりすることなどができるが、これらに限定されるものではない。これらの混合方法の中でも、製造工程の簡便性、製造コストおよび品質を考慮すれば、両者を溶媒に溶解して混合する方法が好ましい。具体的には、両者を溶解した溶液を混合してもよいし、一度に両者を混合して溶解してもよい。この場合、両者を溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ベンジルアルコールなど有機極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸を用いることができるがこれらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は単独で用いてもよいが、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。さらに、両者の溶解性を向上させる手段として、両者を溶解する溶媒として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸あるいはアミン類を有機溶媒に添加したものを用いてもよい。
【0044】
上記の溶液中における、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物と他のポリマーとの濃度の合計は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であればより好ましい。また、この濃度の合計は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であればより好ましい。この濃度の合計が0.1質量%未満の場合には、樹脂組成物の成形性が低下する傾向があり、この濃度の合計が50質量%を超えると樹脂組成物の加工性が低下する傾向がある。
【0045】
本発明におけるホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾールは他の酸性基含有ポリマーとの組成物として使用することもできる。
【0046】
本発明におけるホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物とともに使用される酸性基含有ポリマー化合物としては、本発明のポリベンズイミダゾール系化合物との組成物としてフィルム形成能を有するものであり、そのポリマー中に、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基などの酸性基やそれらの誘導体を含んでいるものであれば特に構造が限定されるものではない。酸性基含有ポリマー中に含まれる酸性基量は、0.5〜4.0当量/kgであることが好ましい。酸性基量が0.5当量/kgよりも少ないと、十分高いイオン伝導特性を示さない傾向にあり、4.0当量/kgよりも多いと、含水時の膨潤が大きくなりすぎるため、高分子電解質膜として使用するのに適さなくなる。
【0047】
本発明に使用される酸性基含有ポリマーの例として、下記の式(3)で表されるパーフルオロエチレン共重合体が挙げられる。
【0048】
【化4】
【0049】
この共重合体は、例えば、テトラフルオロエチレンと末端にスルホニルフルオライド基を有するパーフルオロビニルエーテルの共重合体を加水分解してスルホン酸基としたスルホン化ポリマー、あるいは、このスルホン酸基の一部または全部がカルボキシル基に置換された形のカルボキシル化ポリマーである。上記一般式(6)中、xは1〜30、yは10〜2,000、mは0〜10、nは1〜10の数であるものが好ましい。ここで、xが1未満では、水溶性となってしまう。一方、30を超えると、プロトン伝導度が低下する。また、yが10未満では、プロトン伝導度が低下する。一方、2,000を超えると、機械的強度が低下する。さらに、mが10を超えると、プロトン伝導度が低下する。さらに、nが5を超えると、プロトン伝導度が低下する。また、上記一般式(1)中、Pは、−SO3 Qまたは−COOQであり、ここで、Qは、水素原子またはナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属原子、4級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等である。具体例としては、米国・デュポン社製のナフィオン、米国・ダウケミカル社製の通称Dow膜(、旭化成工業(株)製のアシプレックス(Aciplex)、旭硝子(株)製のフレミオン(Flemion)などが挙げられる。
【0050】
またこの他の酸性基含有ポリマーの例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸成分の少なくとも1種を含むアイオノマーが挙げられる。さらに、芳香族系のポリマーとして、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
【0051】
上記酸性基を含有するポリマーのうち、芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。本発明のスルホン酸基含有芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を得るためには、これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
【0052】
また、上記酸性基含有ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種に酸性基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いて酸性基含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られた酸性基含有ポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
【0053】
本発明に使用される上記酸性基含有ポリマーは、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物とともに混合して使用されるが、ホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物と酸性基含有ポリマー化合物の割合が、重量比で5:95〜100:0であることが好ましい。ホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾールの含有率が5重量%より少ない場合は、イオン伝導膜として高温高湿時の膨潤性が高くなりすぎる傾向があるからである。
【0054】
本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物と酸性基含有ポリマーを含有する組成物を得るには、本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物と本発明の酸性基含有ポリマーを混合することにより得ることが出来る。そして、この混合されたポリマー組成物は、重合溶液、単離したポリマー、および再溶解させたポリマー溶液等から押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の方法で繊維やフィルムに成形することができる。これらの成形過程の中では、適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ベンジルアルコールなど有機極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、特に有機溶媒系から成形することが好ましい。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸を有機溶媒に添加したものや、アミン類など添加したものを溶媒としてもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。低すぎると成形性が悪化し、高すぎると加工性が悪化する。
【0055】
また、必要に応じて本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール、酸性基含有ポリマーとともに、他のポリマーと複合された形で繊維やフィルムに成形することもできる。複合化に使用できるポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。これらのポリマーとの樹脂組成物として使用する場合には、本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物と酸性基含有ポリマーは、樹脂組成物全体の50重量%以上100重量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70重量%以上100重量%未満である。本発明のアルコキシスルホン酸基含有ポリアリーレンエーテル系化合物の含有量が樹脂組成物全体の50重量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン伝導膜は良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、酸性基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0056】
本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系ポリマーと酸性基含有ポリマーを含む組成物は、高温高湿下での寸法安定に優れているとともに、イオン伝導性にも優れており、フィルム、膜状にして燃料電池などのイオン交換膜として使用するのに適している。さらに、本発明の組成物は溶解性に優れていることから、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を作製するときのバインダー樹脂等の塗料として利用することもできる。
【0057】
また本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物は無機酸および/または有機酸などの酸化合物との組成物として使用することもできる。
【0058】
本発明におけるホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物とともに使用される無機酸としては、リン酸、ポリリン酸、硫酸、硝酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸およびそれらの誘導体が使用される。本発明におけるポリベンズイミダゾール系化合物とともに使用される有機酸としては、有機スルホン酸、有機ホスホン酸が使用される。有機スルホン酸の具体的な例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、セチルスルホン酸、スルホコハク酸、スルホグルタル酸、スルホアジピン酸、スルホピメリン酸、スルホスベリン酸、スルホアゼライン酸、スルホセバシン酸を始めとするアルキルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロピルスルホン酸、等のパーフルオロアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、1,3−ベンゼンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、ニトロトルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、等の芳香族スルホン酸、およびこれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されることなく各種構造の有機スルホン酸を使用することが出来る。有機ホスホン酸の具体的な例としては、フェニルホスホン酸、1,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸等の芳香族系ホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等の脂肪族系ホスホン酸、およびこれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されることなく各種構造の有機ホスホン酸を使用することが出来る。
【0059】
本発明の無機酸および/または有機酸は、本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物とともに混合して使用されるが、その使用割合はポリベンズイミダゾール系化合物中の窒素原子1モルに対して、無機酸および/または有機酸が0.1〜5モルである場合に、特に優れたイオン伝導特性を長期にわたって維持する特性を示す。0.1モルより使用割合が少ない場合は、イオン伝導度が十分に高い値を示さない傾向が現れ始め、5モルより使用割合が多い場合には、長期使用に伴いイオン伝導度の低下する割合が多くなる傾向が現れ始める。
【0060】
本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物と無機酸および/または有機酸を含有する組成物を得るには、本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物から各種成形物を作製する際に、本発明の無機酸および/または有機酸を混合させておく方法がある。例えば、本発明のホスホン酸基含有ポリアゾール化合物は、重合溶液、単離したポリマー、および再溶解させたポリマー溶液等から押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の方法で繊維やフィルムに成形することができるが、この際に溶液やポリマーに本発明の無機酸および/または有機酸を混合しておくことで、本発明の組成物を成形物として得ることが出来る。これらの成形過程の中では、適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ベンジルアルコールなど有機極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、特に有機溶媒系から成形することが好ましい。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸あるいはアミン類を有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。溶液中のポリマー濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。低すぎると成形性が悪化し、高すぎると加工性が悪化する。
【0061】
本発明の樹脂成形物は、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する。
【0062】
すなわち、本発明の樹脂成形物は、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物や本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物またはその樹脂組成物を溶解させた溶液を、押し出し、紡糸、圧延、キャストなど任意の公知の成形方法により繊維やフィルムなどの形状に成形することにより製造することができる。
【0063】
なお、これらの成形方法の中でも、本発明の樹脂組成物を適当な溶媒に溶解した溶液から成形する方法が好ましい。したがって、本発明の樹脂成形物は本発明の樹脂組成物から成形される以上、必然的に本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有することとなる。
【0064】
ここで、本発明の樹脂組成物を溶解する溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ベンジルアルコールなどの有機極性溶媒や、ポリリン酸、メタンスルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などの強酸から適切なものを選ぶことができるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらの溶媒は、単独で用いてもよいが、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。また、本発明の樹脂組成物の溶解性を向上させる手段として、臭化リチウム、塩化リチウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸あるいはアミン類などを有機溶媒に添加したものを溶媒としてもよい。
【0065】
ここで、溶液中の本発明の樹脂組成物の濃度は0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であればより好ましい。また、この濃度は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であればより好ましい。この濃度が0.1質量%未満の場合には、樹脂成形物の成形性が低下する傾向があり、この濃度が50質量%を超えると、樹脂成形物の加工性が低下する傾向がある。
【0066】
さらに、本発明の樹脂組成物を含有する溶液から樹脂成形物を得る方法としては、公知の成形方法を用いることができる。たとえば、加熱、減圧乾燥、樹脂組成物を溶解する溶媒と混和できるが樹脂組成物がほとんど溶解できない非溶媒への浸漬などによって、溶媒を除去しホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物を含有する樹脂成形物を得ることができる。
【0067】
ここで、本発明の樹脂組成物を溶解させる溶媒が有機溶媒の場合は、加熱または減圧乾燥で溶媒を留去させることが好ましい。この溶媒が強酸の場合には、水、メタノール、アセトンなどに浸漬することが好ましい。この際、必要に応じて他の樹脂組成物と複合された形で繊維やフィルムに成形することもできる。たとえば、溶解性挙動が類似するポリベンザゾール系化合物を含有する樹脂組成物と組み合わせると、良好な成形をするのに都合がよい。
【0068】
本発明の固体高分子電解質膜は、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する。本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物は、イオン伝導性に優れているため、フィルム、膜状にして燃料電池などのイオン交換膜として使用するのに適している。よって、本発明の固体高分子電解質膜もイオン伝導性に優れ、燃料電池などのイオン交換膜として使用するのに適している。
【0069】
また、本発明の固体高分子電解質膜は、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物や本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0070】
ここで、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物を主成分とする膜を成形する好ましい方法は、本発明の樹脂組成物を含有する溶液からのキャストである。キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してホスホン酸基を有するポリベンザゾール系化合物を含有する樹脂組成物を含有する膜を得ることができる。この場合、溶媒の除去は、乾燥により行うことが膜の均一性からは好ましい。また、樹脂組成物や溶媒の分解や変質をさけるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することが好ましい。キャストする基板には、ガラス板やテトラフルオロエチレン板などを用いることができる。溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。また、この場合、キャストする際の溶液の厚み(本明細書において、単にキャスト厚とも呼称する)は特に制限されないが、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であればより好ましい。また、この厚みは1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であればより好ましい。この厚みが100μm未満の場合には、キャストした溶液から得られる膜が形態を保てなくなる傾向があり、この厚みが1000μmを超えると、不均一な膜ができやすくなる傾向がある。さらに、この溶液のキャスト厚を制御する方法としては、公知の制御方法を用いることができる。たとえば、特に限定されるものではないが、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いてキャスト厚を一定にしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度でキャスト厚を一定に制御することができる。そして、このようにしてキャストした溶液の溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。たとえば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
【0071】
また、本発明の固体高分子電解質膜は、目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には200μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが最も好ましい。一方、本発明の固体高分子電解質膜は、目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、機械強度の面からはできるだけ厚いことが好ましい。具体的には5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが最も好ましい。
【0072】
本発明による膜は、耐久性、耐溶剤性、機械的特性に優れている。例えば、耐久性としては高温での劣化が少なく、耐溶剤性では酸性水溶液中での膨潤も少なく、機械的特性では膜厚の薄い状態でも膜の取り扱いで破断などの心配がないものである。さらに、本発明のポリマー構造を主成分にすることにより、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を作製するときのバインダー樹脂等の塗料として利用することもできる。
【0073】
本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物は、固体高分子電解質膜とその両面に接合された電極触媒層とで構成される固体高分子電解質/電極触媒層複合体において、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層の構成成分として好適に使用することができる。このとき、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物は、イオン伝導性の面からは、分子中に2.0meq/g以上のスルホン酸基および/またはホスホン酸基を有することが好ましい。
【0074】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体は、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層が本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有していることが特徴である。また、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体においては、該固体高分子電解質膜および電極触媒層の両者が本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を主成分していることが好ましい。また、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体においては、該固体高分子電解質膜と電極触媒層とを接着させるバインダーが本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有していればさらに好ましい。
【0075】
ここで、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する上記のバインダーの硫酸酸中における対数粘度は、0.1dl/g以上であることが好ましく、0.3dl/g以上であればさらに好ましい。また、この対数粘度は、10dl/g以下であることが好ましく、8dl/g以下であればさらに好ましい。
【0076】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体においては、固体高分子電解質膜としては、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、ダウケミカル社製の「ダウ膜」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成社製の「アシプレックス(登録商標)」、ゴアテックス社製の「ゴアセレクト(登録商標)」などの既存のパーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質や、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリエーテルケトン、リン酸や硫酸などの強酸を含浸したポリベンズイミダゾール、および本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する高分子電解質を好適に使用することができる。また、これらの高分子電解質膜としては、イオン伝導性が大きく損なわれない範囲であれば、これらの高分子電解質を複数含む固体高分子電解質膜を用いることもできる。
【0077】
また、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体において用いる高分子電解質膜としては、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物以外のポリマーを混合して作成された固体高分子電解質膜を用いてもよい。混合するポリマーとしては、ポリアゾール系のポリマーが相溶性に優れるため好ましい。
【0078】
そして、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体において用いる高分子電解質膜は、各種高分子電解質を含有する樹脂組成物を、溶液に溶解してキャストした後乾燥あるいは非溶媒に浸漬して溶媒を除去したり、このような溶液や樹脂組成物の熱プレスやロール、押し出しによる成型など、公知の任意の成形方法によって得ることができる。ここで、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体において用いる固体高分子電解質膜の厚みは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、この厚みは300μm以下であることが好ましく、100μm以下であればより好ましい。
【0079】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体において用いる固体高分子電解質膜を成形する際には、本発明のホスホン酸基を有するポリベンザゾール系化合物を含有する樹脂組成物を溶媒に溶解して成形することが好ましい。この場合に、本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を含有する樹脂組成物を溶解するのに適する溶媒としては、特に限定されるものではないが、たとえば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホンアミド、ベンジルアルコールなどの有機極性溶媒や、塩化アルミニウム、塩化リチウム、臭化リチウムなどのルイス酸を添加したニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化化合物や、ポリリン酸、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの強酸などが挙げられる。また、これらの溶媒は単独で使用してもよいが、本本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体において用いる固体高分子電解質膜の特性に悪影響を及ぼさない範囲で複数を混合して使用してもよい。
【0080】
さらに、これらの溶媒の中でも、ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒が好ましい。そして、非プロトン性極性溶媒は、ポリマーの溶解性と溶液の安定性を向上させるために、塩化アルミニウム、塩化リチウム、臭化リチウムなどのルイス酸を添加してもよい。ベンジルアルコールにアミン系化合物を添加したものも好ましい溶媒となる。
【0081】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体は、固体高分子電解質膜に触媒金属と結着材とをホットプレスしたり、市販のガス拡散電極に本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物をはじめとする高分子電解質を噴霧したり塗布したりして浸透させたもので前記の固体高分子電解質膜を挟んで接合したりすることにより得ることができる。
【0082】
また、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体は、テトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムに、前記の高分子電解質と触媒とを溶媒に均一に分散したペーストを塗布乾燥の繰り返しによって積層したものを、触媒層を内側にして固体高分子電解質膜を挟みホットプレスして接合することによっても得ることができる。
【0083】
また、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体は、前記の高分子電解質と触媒とを溶媒に均一に分散したペーストを、刷毛、筆、アプリケーター、噴霧、印刷などの方法によって固体高分子電解質膜に塗布した後に、溶媒を乾燥させて接合することによっても得ることができる。また、このようなペーストでカーボンペーパーなどの電極材と高分子電解質膜とを接合しても得ることができる。なお、これらの方法においては、あらかじめイオン性基をNaなどのアルカリ金属塩としておいてから行ない、接合後の酸処理によってもとの酸に戻すことをしてもよい。またスパッタリングなどによって固体高分子電解質膜に直接触媒を接合することもできる。
【0084】
さらに、高分子電解質として本発明のホスホン酸基を有するポリベンズイミダゾール系化合物を用いる場合は、前記の溶媒を使用することができる。この際、溶液あるいはペースト中の高分子電解質の濃度は0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であればより好ましい。また、この濃度は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であればより好ましい。
【0085】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体においては、該電極触媒層に用いる触媒としては、触媒金属の微粒子を担持した導電性材料が好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。この触媒金属は白金を主成分とする貴金属であることが好ましく、ロジウム、パラジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウムなどの他の金属を含んでいてもよい。
【0086】
また、この触媒の粒径は1nm以上であることが好ましく、5nm以上であればより好ましい。そして、この触媒の粒系は50nm以下であることが好ましく、30nm以下であればより好ましい。
【0087】
さらに、本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体に用いる電極触媒層においては、高分子電解質に対する触媒の量は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であればより好ましい。また、この触媒の量は1,000質量%以下であることが好ましく、500質量%以下であればより好ましい。
【0088】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体に用いる電極触媒層におけるその他の成分としては、特に限定されるものではないが、たとえば、結着材としてポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられる。
【0089】
本発明の固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体に用いる電極触媒層を成形するためのホットプレスの条件は、使用する材料によって適当な条件を選ぶことができるが、良好な成形性を得るためには、ホットプレスの温度は100℃以上であることが好ましく、150℃以上であればより好ましい。また、ホットプレスの温度は300℃以下であることが好ましく、250℃以下であればより好ましい。そして、ホットプレスの圧力は1MPa以上であることが好ましく、2MPa以上であればより好ましい。また、ホットプレスの圧力は10MPa以下であることが好ましく、7MPa以下であればより好ましい。
【0090】
[実施例]
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
溶液粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度で濃硫酸に溶解し、30℃の恒温槽中でオストワルド粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度[ln(ta/tb)]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
イオン伝導性測定:自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温・恒湿オーブン(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]x膜厚[cm]x抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0091】
実施例1
3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン(略称:TAS)1.800g(0.00647mole)、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン4塩酸塩(略称:TAB)1.225g(0.00431mole)、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸(略称:DCP、純度98%)2.653g(0.01078mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75質量%)24.98g、五酸化リン20.02gを重合容器に量り取った。次いで、重合容器中に窒素を流し、オイルバス上でゆっくり撹拌しながら110℃まで昇温した。その後、110℃で6時間保持した後、150℃に昇温して1時間、200℃に昇温して6時間重合した。重合終了後、放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙が中性になるまで水洗を繰り返してポリマーを得た。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.04を示した。得られたポリマー1gをベンジルアルコール8mlとともに撹拌しながら水酸化テトラメチルアンモニウムの25%メタノール水溶液を2ml加えて均一溶液とし、ホットプレート上で、ガラス板上に約200μm厚に流延し、NMPを蒸発させた。フィルムをガラス板からはがし、希硫酸浸漬処理の後、水洗するとともに、80℃終夜減圧乾燥した。このフィルムの80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.010S/cmを示した。1cm角に切り出した本フィルムを100℃熱水に1時間浸漬した後、フィルムの縦横の長さを測定したところ、寸法の伸びは縦横とも5%以下であった。
【0092】
実施例2
TASとTABの使用量を変えて共重合比率をかえる以外は実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
比較例1
TAS3.000g(0.01078mole)、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸(略称:DCP、純度98%)2.653g(0.01078mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75質量%)24.98g、五酸化リン20.02gを重合容器に量り取り、110℃での保持時間を1時間とする以外は実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0094】
比較例2
TASを使用せず、TABを3.062g(0.01078mole)とする以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例3
実施例1で作製したフィルムを、85%リン酸水溶液に3時間浸漬後、メタノールで洗浄し、80℃で減圧乾燥したところ、ポリマー中の窒素原子あたり0.4個のリン酸が含浸されたフィルムを得ることが出来た。このフィルムの80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.08S/cmを示した。
【0097】
実施例4
比較例1において、DCPのかわりにテレフタル酸を1.791g(0.01078mole)用いる以外は比較例1と同様にして、ホスホン酸基を含まないポリベンズイミダゾールを合成した。得られたポリマーの対数粘度は1.62であった。このポリマー0.2gと実施例1で得られたポリマー0.8gをベンジルアルコール8mlとともに撹拌しながら水酸化テトラメチルアンモニウムの25%メタノール水溶液を2ml加えて均一溶液とし、ホットプレート上で、ガラス板上に約200μm厚に流延し、NMPを蒸発させた。フィルムをガラス板からはがし、希硫酸浸漬処理の後、水洗するとともに、80℃終夜減圧乾燥した。このフィルムの80℃95%RHにおけるイオン伝導度は0.009S/cmを示した。1cm角に切り出した本フィルムを100℃熱水に1時間浸漬した後、フィルムの縦横の長さを測定したところ、寸法の伸びは縦横とも5%以下であった。
【0098】
【発明の効果】
本発明のホスホン酸基含有ポリベンズイミダゾール系化合物は、膜として優れた機械特性を示すとともに、高温でも高いイオン伝導特性を示す高分子電解質膜となる。
Claims (7)
- 請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする樹脂成形物。
- 請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を主要な構成成分として含有することを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両面に接合された電極触媒層とを構成要素として含む複合体であって、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層を構成する成分として、請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体。
- 請求項5に記載の複合体を含有することを特徴とする燃料電池。
- 固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の両面に接合された電極触媒層とをバインダを用いて接着させる工程を含む複合体の製造方法であって、該固体高分子電解質膜および/または電極触媒層は請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を構成成分として含有し、該バインダも請求項1に記載のポリベンズイミダゾール系化合物を構成成分として含有することを特徴とする固体高分子電解質膜/電極触媒層の複合体の製造方法。
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