JP4060983B2 - インフレーション製膜装置および製膜方法並びに熱可塑性液晶ポリマーフィルム - Google Patents

インフレーション製膜装置および製膜方法並びに熱可塑性液晶ポリマーフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インフレーション製膜装置および製膜方法並びに光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)からなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)に関する。さらに詳しくは、本発明による熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを原料とし、これに由来する各種の優れた特性を発揮できるので、回路基板、特に精密回路基板の電気絶縁材料などとして有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、(1) 金属箔と直接熱接着できる、(2) 耐熱性である、(3) 低吸湿性である、(4) 熱寸法安定性に優れている、(5) 湿度寸法安定性に優れている、(6) 高周波特性に優れている、(7) 有毒なハロゲンや燐およびアンチモン等の難燃剤を含有しなくても難燃性である、(8) 耐放射線性に優れている、(9) 熱膨張係数を制御できる、(10)低温でもしなやかであるなどの特長を有するために、回路基板の電気絶縁材料として理想的な材料の一つとされている。したがって、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを電気絶縁材料とする回路基板、特に精密回路基板の実現が要望されている。
【0003】
ところが、熱可塑性液晶ポリマー分子は、製膜装置におけるダイのスリットから吐出させると、吐出方向に分子が配向し、そのままでは分子の大部分が殆ど同一方向(フィルムの長手方向、すなわちMD方向)に配向する。したがって、得られるフィルムはMD方向に裂け易いばかりでなく、MD方向とこれに直交する方向(TD方向)とで、熱膨張係数や熱寸法変化率などの物性の異なる熱可塑性液晶ポリマーフィルムとなる。つまり、MD方向とTD方向とで物性が異なることを異方性、逆に殆ど等しいことを等方性と称すれば、上記の製膜装置のダイから溶融ポリマーを吐出して得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは異方性である。
【0004】
かかる異方性フィルムは、MD方向とTD方向とで熱寸法変化率や熱膨張係数が異なるため、回路基板、特に精密回路基板の絶縁材料として用いるとき、回路基板の製造途中で、回路基板に反りや歪みが発生したり、回路基板上の回路配線が位置ずれを起したりする。
【0005】
この異方性を緩和するため、従来より次のような種々の方法が提案されてきた。
(1)環状スリットの内外周壁が互いに反対方向に回転する可動ダイリップを用いて溶融液晶ポリマーを吐出させる、いわゆる回転ダイによるインフレーション製膜方法(特表平3−504948号公報、特表平4−506779号公報)。
(2)多層Tダイの各層の吐出方向を交差させる製膜方法(特開平2−89617号公報、特開昭63−264323号公報)。
(3)Tダイで横方向に磁場をかける製膜方法(特開昭63−242513号公報)。
(4)Tダイなどを用いて得られる異方性液晶ポリマーフィルムを、合成樹脂フィルムとラミネートし、このラミネート体を横延伸(MD方向よりも大きい延伸倍率でTD方向に延伸)する後加工方法(特開平7−323506号公報、特開平7−251438号公報、特開平9−131789号公報)。
(5)静止環状ダイを用いて、溶融液晶ポリマーをチューブ状に吐出させ、チューブ内に気体を吹き込んで内部から圧力をかけることにより膨張せしめて延伸させるインフレーション製膜方法(特開平2−3430号公報、特開平2−88212号公報)などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)と(2)の方法は、フィルムの表面と裏面における熱可塑性液晶ポリマー分子の配向方向が交差するので、厚さ方向の全体としての配向バランスは保たれるが、特殊なダイから吐出された溶融液晶ポリマーは、ダイから吐出された直後の溶融状態から冷却固化され、半溶融状態を経てさらに冷却されて固化に至るフィルム形成過程において、バブルのネックとエクスパンドの表、裏面において収縮する方向が交差する。このため、表面と裏面で方向の異なる収縮応力が発生し、ネックとエクスパンドが捩れるように応力が作用し、形状が変わり易くて不安定となり、長時間安定した製膜が困難となるだけでなく、実用し得る均一膜厚のフィルムが得られ難い。
【0007】
上記(3)の方法は、物理化学的には異方性緩和の効果が得られる可能性はあるが、磁場による作用は小さいので、ポリマー分子の配向角を効果的に変化させるためには長時間を必要とする。したがって、実際の製膜時における異方性緩和には適用困難で、実用可能な等方性フィルムを効果的に得ることは難しい。
【0008】
上記(4)の方法は、異方性緩和という目的に対しては有効であり、実用可能な等方性フィルムを得ることができるが、生産効率の点で問題がある。
【0009】
上記(5)の方法は、異方性をほぼ完全に解消するために、バブルの内圧を大きくして横方向の延伸倍率を大とすれば、環状ダイ吐出直後のネックに溶融液晶ポリマーの収縮作用によって捻じれが発生し、ネック形状が製膜方向に対し変化し易くなる。このため、バブルが不安定となり、得られるフィルムの膜厚分布が不均一になり易い。しかし、この方法は生産効率が高いので、安価で実用可能な熱可塑性液晶ポリマーフィルムを工業的に生産するのに適している。
【0010】
そこで本発明者等は、上記(5)の方法を利用し、これの問題となっているネックの捻じれを解消してバブルの安定性を向上させ、得られるフィルムの膜厚分布を小さくすることについて鋭意研究した結果、新たな有効な手段を見出した。以下、このことについて、図面を挙げて詳細に説明する。
【0011】
図1は、インフレーション製膜を行う場合の概略説明図である。図1(a)において、押出機1から押出された溶融させた熱可塑性液晶ポリマー(以下、これを溶融液晶ポリマーと称する)は、斜行マンドレル2を経て環状ダイ3からチューブ状に吐出され、内部に導入した気体の圧力で膨張してバブル4となる。そして、バブル4が冷却固化されて熱可塑性液晶ポリマーフィルム8となり、複数のガイドローラによりターレットワインダー9へと案内される。
【0012】
また、前記バブル4は、図1(b)のように、液晶ポリマーの流れ方向に沿って、ネック7、エクスパンド6、シリンダー5に分かれる。このネック7は、ダイ3の環状スリットより吐出された溶融液晶ポリマーが形成する径の比較的小さいシリンダー状部分である。バブル4に空気あるいは窒素などの気体を導入して内圧を高めることにより、バブル4は径方向外方に膨張して径を増大させる。実際に径が増大する領域をエクスパンド6と称する。高温の溶融液晶ポリマーは、ダイ3より吐出された直後より冷却され、ネック7の領域とエクスパンド6の領域において徐々に冷却されて固化する。冷却固化されてもはや径が変化しない領域をシリンダー5と称する。
【0013】
上記の製膜装置による製膜時に、従来ではネック7の不安定な動きが見られ、この現象は、その形状の経時的変動による揺れや円周方向の回転などに起因するものと考えられていた。そこで、これを解消するために、溶融液晶ポリマーの温度分布、環状ダイ3の真円性、円周方向の温度の均一性、ダイスリット間隔の円周方向の均一性、ネック7およびエクスパンド6の領域において外周より接触する冷却風の温度、風速などの均一性を図り、バブル4の周囲の環境条件を徹底的に改善した。それにもかかわらず、ネック7の不安定な動きは解消されなかった。
【0014】
本発明者らは、前記ネック7の動きを詳細に観察し、測定して分析した結果、ネック7は、実際には形状が経時的に変動しているのではなく、またネック7は円周方向に回転しているのでもないことを知り、ネック7の本当の捻じれ原因を見出した。このネック7の捻じれとは、図2の(a)に示すように、タオルを絞ったときに見られるような僅かな形状の捩れである。通常の製膜時において実際に観察されるネック7の形状は、図2(b)のように、詳細に観察しない限り捻じれ形状であることが、判別できない程度のゆるやかな形状の歪みである。
【0015】
このネック7の捻じれ形状は、下方から上方への移動70に伴って、あたかも理容店の赤青白のしま模様の回転塔のように、ネック7が方向72の向きに回転しているように錯覚されていたことが判明した。さらに詳しく言えば、理容店の回転塔は捻じれ縞模様が回転しており、縞模様が上方あるいは下方へ連続的に移動しているように見える。一方、インフレーション製膜時のネック7は、逆に捻じれ形状が上方に連続的に移動しているために、ネック7が回転しているように錯覚される。このことは、ネック長さを十分に大きくするような押出条件あるいはバブル内圧を低下させるなどの条件を採用することにより、捻じれ形状を激しく発生させれば、明瞭に観察できる。捻じれ形状の上方への移動を考慮すれば、ネック回転の錯覚の他に、ネック7の揺れ(幅方向71の揺れ)の錯覚もあることが容易に理解される。
【0016】
かかるネック7の捻じれは、熱可塑性液晶ポリマー特有の現象であって、ポリエチレン、ポリプロピレンなど通常のポリマーのインフレーション製膜時には観察されない。
【0017】
そこで、何故に熱可塑性液晶ポリマーだけに捻じれが発生するかについて、さらに原因究明を行ったところ、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレル2を流れるときに発生する斜行流に起因することを解明した。
斜行マンドレル2は、回転ダイ3における溶融液晶ポリマーの流れ方向の上流側に配置され、押出機1から押出される溶融液晶ポリマーを混合および整流またはその何れかを行って、この溶融液晶ポリマーの流れを均一化するために設けられる。その典型的なものは、いわゆるスパイラルマンドレルと称されるものであり、以下、このスパイラルマンドレル2に基づいて説明する。
【0018】
このスパイラルマンドレル2は、図3に示すように、内子21と外子22を備え、この内子21の外周壁には同方向に延びる複数条の螺旋状の溝23を形成している。そして、内子21の下方に設けた導入口24から導入する溶融液晶ポリマーを、溝23の内部またはその周りに沿って案内させながら、内子21と外子22の間に設けたギャップ25の上端からダイ部3に導き、マンドレル部エア通路26から導入された空気はダイ部エア通路25を経て溶融液晶ポリマー内部に入って、バブル4を形成する。前記の各溝23は、マンドレル2の下方から上方に行くに従って徐々に深さが浅くなるように形成されている。このとき、ギャップ25における溶融液晶ポリマーの主たる流れは、溝23の内部を流れる斜行流と、溝外を流れるか、溝23を乗り越えまたは溝23から溢れ出るかして、垂直方向上方へと流れる垂直流である。また、溝23は、下方から上方に行くに従って深さが徐々に浅くなるので、溝23内を斜行流として流れる溶融液晶ポリマーは、上方へ進むに従って溝外へ溢れ出して、垂直流となる。このように、マンドレル2においては、斜行流と垂直流が互いに接触し、また斜行流が垂直流に変わっていく過程で、溶融液晶ポリマーの混合・均一化が行われる。
【0019】
また、斜行流は溝23に沿って流れるとき、斜め方向の剪断力を受けるので、剪断力の方向に配向し易い液晶ポリマー分子は、斜めに配向する傾向にある。一方、垂直流においては、剪断力が垂直方向に作用するので、垂直流における液晶ポリマー分子は、垂直に配向する傾向にある。これらのことは、スパイラルマンドレルだけでなく、全ての斜行マンドレルに共通して起る。
【0020】
しかしながら、溶融液晶ポリマーは剛直な長い分子であるため、分子の向きをすばやく瞬間的に変えることは難しい。このため、斜行流にある斜めに配向している分子が垂直流に侵入したとしても、斜めに配向したまま垂直に流れる傾向がある。むろん、しばらく垂直流に存在すれば、垂直流に沿って配向するように、剪断力が作用するので、いつまでも斜めに配向したままではなく、当初の傾きは緩和されて、より垂直方向に近い配向になる。
【0021】
そして、垂直に配向した溶融液晶ポリマー分子と斜めに配向した溶融液晶ポリマー分子とが混在した垂直流が、マンドレル上端に達し、ダイ3を経て外部に吐出されて、バブル4のネック7を形成することになる。すなわち、ネック7を構成する溶融液晶ポリマー分子は、垂直に配向した分子と、斜め方向に傾いて配向した分子とからなり、ネック7の全体としては、平均して垂直方向よりも斜め方向に傾いて配向した分子の方が多い傾向にある。
【0022】
さらに、溶融液晶ポリマーは、冷却されると、液晶ポリマー分子の配向方向よりも、配向方向に対し直交する方向に強い収縮が起こる。したがって、図4のように、液晶ポリマー分子の配向方向73に対して直交する方向で、ネック7に対しては斜め向きの冷却収縮応力74が発生する。そして、この冷却収縮応力74がネック7に捻じれを与える原因となる。
【0023】
つまり、ネック7の上端側は下部側に対し冷却されて固くなりつつあり、しかも上端はエクスパンド6に固定されて回転できないのに対し、下端側は高温溶融状態にあって柔らかいので、冷却収縮応力74により円周方向への回転力を受ける。また、このとき溶融液晶ポリマーは、回転力に完全に追従するほどには軟らかくはないので、図2のように、ネック7には、タオルを絞ったときのように捩じれが発生する。そして、このネック7が捩じれたままの状態でエクスパンド6で膨張され、これが冷却固化されてシリンダー5となり、最終的に熱可塑性液晶ポリマーフィルム8となるので、フィルム8に捩れが残って、この捩れがフィルム8の膜厚分布を不均一にする。
【0024】
そこで、製膜時にネックへの捻じれの発生を防止するための研究を行ったところ、環状ダイの内周壁と外周壁を、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に、同方向かつ同回転数で回転させれば、斜行流にある斜め方向に配向した溶融液晶ポリマー分子の配向姿勢が垂直方向に矯正されて、ネックに発生する捻じれを解消できることを見出し、本発明をなすに至った。しかして、本発明の目的は、製膜時にネックに捻じれが発生するのを解消して、膜厚分布が均一な熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得るようにすることにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のインフレーション製膜装置は、溶融液晶ポリマーを斜行マンドレルを経て環状ダイからチューブ状に押出し、内圧をかけることにより膨張させた後、冷却固化させて熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得るインフレーション製膜装置であって、環状ダイの内周壁と外周壁を、同一方向かつ同一回転数で、溶融させた熱可塑性液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に回転させることにより、溶融させた熱可塑性液晶ポリマー分子の斜行流によって斜め方向に配向した配向姿勢を垂直方向に矯正することを特徴とする。
【0026】
上記の製膜装置による製膜時に、環状ダイの内周壁と外周壁を、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に、同方向かつ同回転数で回転させることにより、斜行流にある斜め方向に配向した溶融液晶ポリマー分子の配向姿勢が垂直方向に矯正されるので、バブルのネックに捻じれが発生しない。このため、得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、膜厚分布が均一となって良好なものとなる。
【0027】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーの原料は特に限定されるものではないが、その具体例として、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。但し、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、各々の原料化合物の組み合わせには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0028】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【0029】
【表1】
Figure 0004060983
【0030】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【0031】
【表2】
Figure 0004060983
【0032】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【0033】
【表3】
Figure 0004060983
【0034】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【0035】
【表4】
Figure 0004060983
【0036】
これらの原料化合物から得られる熱可塑性液晶ポリマーの代表例として表5に示す構造単位を有する共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
【0037】
【表5】
Figure 0004060983
【0038】
また、本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーとしては、フィルムの所望の耐熱性および加工性を得る目的においては、約200〜約400℃の範囲内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有するものが好ましいが、フィルム製造の観点からは、比較的低い融点のものが好ましい。したがって、より高い耐熱性や融点が必要な場合には、一旦得られたフィルムを加熱処理することによって、所望の耐熱性や融点にまで高めることが有利である。加熱処理の条件の一例を説明すれば、一旦得られたフィルムの融点が283℃の場合でも、260℃で5時間加熱すれば、融点は320℃になる。
【0039】
さらに、以上の環状ダイには、溶融液晶ポリマーの流れ方向に複数に分割された分割回転部を設けて、これらの分割回転部を、同一方向かつ同一回転数で、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に回転させ、このとき流れ方向の上流側に配置する分割回転部の回転数に対し、下流側の分割回転部の回転数を大とするようにしてもよい。このようにすれば、環状ダイの構成が若干複雑となるものの、バブルのネックに捻じれが発生するのを一層確実に防止できて、より良好な熱可塑性液晶ポリマーフィルムが得られる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明に用いる環状ダイ3の一例を示している。このダイ3は、図3に示すスパイラル(斜行)マンドレル2の溶融液晶ポリマー流れ方向の下流側に組付けるもので、内子31と外子32を備え、そのポリマー流れ方向の下流側には、本発明で言うところの内、外周壁を形成する回転部33を配置している。この回転部33は、内子31に対向する円盤状の第1分割部33a(内周壁)と、外子32に対向するドーナツ状の第2分割部33b(外周壁)とからなる。前記の内子31、外子32と各分割部33a、33bの間には、スパイラルマンドレル2から供給される溶融液晶ポリマーが流れるギャップ34を形成し、また内子31と第1分割部33aの中心には、バブル4に内圧をかけるためのエア通路35を貫通して形成している。さらに、各分割部33a、33bは、周方向に間隔を有して配置された複数の連結具36により互いに結合して、第2分割部33bに設けたギヤ37により一体回転させる。このギヤ37は、モータ38に連結したモータギヤ39で回転駆動させる。そして製膜時に、モータ38により各分割部33a、33bを、同一方向かつ同一回転数で、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に回転させる。
【0041】
図6は、他の実施形態にかかる環状ダイ3を示している。このダイ3は、内子31と外子32を備え、その溶融液晶ポリマー流れ方向の上流側に第1回転部41を、その下流側にさらに第2回転部42を配置するとともに、これら各回転部41、42に第1および第2ギヤ43、44を設けている。そして、これらギヤ43、44をそれぞれ個別にモータに連結されたギヤ(図示せず)に連結して、この各ギヤにより各回転部41、42を、溶融液晶ポリマーがスパイラル(斜行)マンドレル2(図3)を通過するときに発生する斜行流と逆方向で同一方向に回転させ、このとき上流側の第1回転部41に対して下流側の第2回転部42の回転数を大とする。これにより、溶融液晶ポリマーの回転が2段階で円滑に抑制される。前記第1、第2回転部41、42は、図5の場合と同じく2つの分割部41a、41bおよび42a、42b(何れも内、外周壁)に分割されており、これらを複数の連結具により互いに結合して、同一方向に回転させるものとする。この場合も、内、外子31、32と各回転部41、42の分割部41a、41bおよび42a、42bの間にギャップ45を形成し、また内子31と各回転部41、42の中心には、エア通路46を貫通して形成する。
【0042】
次に、以上の環状ダイ3を用いて製膜するときの具体的な実施例を挙げて説明する。
実施例1
まず、環状ダイ3を組付ける斜行マンドレル2としては、内子21の最上端部外形45mm、外子22の内径50mm、溝23の本数4本、溝23のヘリカル角度18.5°、溝23の最大深さ8mm、溝23の最小深さ0mm、溝23のピッチ14mmである(図3参照)。
【0043】
また、環状ダイ3としては、図5のものを用いた。このダイ3は、回転部33における第1分割部33aの外径39mm、第2分割部33bの内径40mm、回転部33の全体の厚み20mmである。これら各分割部33a、33bには、円周方向に等間隔に8個の連結用穴(直径6mm、深さ2mm)を形成し、これにステンレス製の連結具36を介入して連結することにより、それぞれ一体回転可能に固定している。このとき、上記の斜行マンドレル2とダイ3を用いて、その回転部33を回転させることなく、停止した状態で溶融液晶ポリマーを吐出させると、ポリマーが斜行マンドレル2を通過するとき、反時計回りの斜行流が発生する。そして、バブル4のネック7においては、斜行流にある斜め方向に配向したポリマー分子に対して直交する方向に強い収縮応力が作用するので、ネック7にはポリマーの流れ方向下流側(図の上方側)から見て時計回り方向の捩れが発生する(図4および後述の比較例1参照)。
【0044】
次に、環状ダイ3に設けた回転部33の各分割部33a、33bを、溶融液晶ポリマーが斜行マンドレル2を通過するときに発生する斜行流の流れ方向とは逆方向に、つまり同図の上方側から見て時計回り方向に、同一方向に毎分0.25回転の同一回転数で回転させる。そして、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が280℃の熱可塑性液晶ポリマーを吐出量20Kg/時で溶融押出し、エア通路35からバブル4内にエアを吹き込むことにより、横延伸倍率4.77倍、縦延伸倍率2.09倍の条件でインフレーション製膜を行った。
【0045】
実施例1によれば、バブル4のネック7に捻じれが発生することなく、安定した製膜ができ、平均膜厚50μm、膜厚分布±7%で、均一膜厚の良好な熱可塑性液晶ポリマーフィルムが得られた。
【0046】
比較例1
実施例1において、環状ダイ3の回転部33を回転停止した以外は実施例1と同様にして、インフレーション製膜を行った。この結果、製膜時にバブル4のネック7に捻じれが観察され、得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの膜厚分布は±11%で膜厚が不均一となった。
【0047】
実施例2
斜行マンドレル2として、実施例1と同じものを用いた。また、環状ダイ3としては、図6に示すものを用いた。このダイ3は、第1回転部41の厚み15mm、第2回転部42の厚み5mmである。そして、第1および第2回転部41、42を、それぞれ溶融液晶ポリマーの流れの下流側から見て時計回り方向に回転させた。このとき、第1回転部41は毎分0.15回転で、また第2回転部42は毎分0.3回転の回転数で回転させた。それ以外は、実施例1と同様にしてインフレーション製膜を行った。
【0048】
実施例2の製膜装置によれば、バブル4のネック7に捻じれが発生することなく、安定した製膜ができ、平均膜厚50μm、膜厚分布±5%で、均一膜厚の良好な熱可塑性液晶ポリマーフィルムが得られた。
【0049】
比較例2
実施例2において、環状ダイ3の各回転部41、42を回転停止した他は実施例2と同様にして、インフレーション製膜を行った。この結果、製膜時にバブル4のネック7に捻じれが観察され、得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの膜厚分布は±11%で膜厚が不均一となった。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、製膜時にバブルのネックに捻じれが発生するのを解消できて、膜厚分布が均一な熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インフレーション製膜を行う場合の概略説明図で、(a)は同製膜装置の側面図、(b)は得られるバブルを説明する側面図である。
【図2】従来の製膜時に発生するネックの捩じれ状態の説明図で、(a)は捩じれ状態の模式図、(b)は製膜時に実際に観察される捩じれ状態図である。
【図3】スパイラルマンドレルの断面図である。
【図4】従来の製膜時にネックに発生する収縮応力を説明する側面図である。
【図5】本発明で用いる環状ダイの断面図である。
【図6】本発明で用いる別の環状ダイの断面図である。
【符号の説明】
2…斜行マンドレル、3…環状ダイ、4…バブル、7…ネック、8…熱可塑性液晶ポリマーフィルム。

Claims (3)

  1. 光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称する)からフィルムを作製するにあたり、溶融させた熱可塑性液晶ポリマーを斜行マンドレルを経て環状ダイからチューブ状に押出し、内圧をかけることにより膨張させた後、冷却固化させて上記フィルムを得るインフレーション製膜装置において、
    環状ダイの内周壁と外周壁を、同一方向かつ同一回転数で、溶融させた熱可塑性液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に回転させることにより、溶融させた熱可塑性液晶ポリマー分子の斜行流によって斜め方向に配向した配向姿勢を垂直方向に矯正することを特徴とするインフレーション製膜装置。
  2. 溶融させた熱可塑性液晶ポリマーを斜行マンドレルを経て環状ダイからチューブ状に押出し、内圧をかけることにより膨張させた後、冷却固化させて上記フィルムを得るインフレーション製膜方法において、
    環状ダイの内周壁と外周壁を、同一方向かつ同一回転数で、溶融させた熱可塑性液晶ポリマーが斜行マンドレルを通過するときに発生する斜行流の流れ方向と逆方向に回転させることにより、溶融させた熱可塑性液晶ポリマー分子の斜行流によって斜め方向に配向した配向姿勢を垂直方向に矯正することを特徴とするインフレーション製膜方法。
  3. 請求項2の製膜方法により得られる熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルム。
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