JP4060051B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータにより駆動されるポンプの発生油圧によりステアリング機構に操舵補助力を与えるパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステアリング機構に結合されたパワーシリンダにオイルポンプからの作動油を供給することによって、ステアリングホイールの操作を補助するパワーステアリング装置が知られている。オイルポンプは、電動モータによって駆動され、その回転速度に応じた操舵補助力がパワーシリンダから発生される。
ステアリング軸には、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクの方向および大きさに応じてねじれを生じるトーションバーと、トーションバーのねじれの方向および大きさに応じて開度が変化する油圧制御弁とが組み込まれている。この油圧制御弁は、オイルポンプとパワーシリンダとの間の油圧系統に介装されていて、操舵トルクに応じた操舵補助力をパワーシリンダから発生させる。
【0003】
電動モータの駆動制御は、たとえば、ステアリングホイールの舵角速度に基づいて行われる。すなわち、ステアリングホイールに関連して設けられた舵角センサの出力に基づいて舵角速度が求められ、この舵角速度に基づいて電動モータの目標回転速度が設定される。この目標回転速度が達成されるように、電動モータに電圧が供給される。さらに具体的には、舵角速度が小さい場合には、ステアリングホイールの操作がわずかであるから、電動モータは、目標回転速度の下限値であるスタンバイ回転速度に減速される。一方、舵角速度が大きければ、ステアリングホイールが大きく操作されていると見なされ、そのときの舵角速度に応じて電動モータが駆動され、操舵補助力が発生される。
【0004】
パワーステアリング装置を制御するための電子制御ユニットは、センサライン等の故障を検出する異常監視処理を実行している。この異常監視処理によっていずれかの異常が検出されると、電子制御ユニットは、フェールセーフ処理を実行して、電動モータを停止させる。センサラインの断線等の故障は、一時的なものである場合もあるから、異常状態から正常状態へと復帰する場合もある。このような場合には、電子制御ユニットは、電動モータを再び起動することになる。
【0005】
また、たとえば、舵角速度が一定値未満の状態が所定時間以上継続するなどの条件が成立したときに、電動モータを停止させるための制御が行われる場合もある。電動モータが停止された後には、電子制御ユニットは、舵角速度が所定値以上になるなどの所定のモータ起動条件が成立したことに応答して、電動モータを起動するための処理を実行する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
オイルポンプを駆動するための電動モータには、たとえば、ブラシレスモータが適用されるが、このブラシレスモータは、通常、一方向にのみ回転することを前提に設計されている。ところが、フェールセーフ等によってブラシレスモータが停止すると、油圧ホース内の残圧等に起因する外力により、ブラシレスモータが逆方向に回転される場合がある。このような場合に、異常状態から正常状態への復帰などにより、ブラシレスモータが起動されると、ブラシレスモータのロータは、逆方向への磁気を受ける。これにより、ブラシレスモータの減磁(モータ内の磁力特性が変化すること)が発生して、仕様通りのモータ出力を得ることができなくなる。
【0007】
たとえば、図5に示すように、ステアリング機構に対する負荷(操舵トルク)に対してブラシレスモータの電流Iが曲線L0で示すように変化し、ブラシレスモータの回転速度が曲線L10で示すように変化するように仕様が定められている場合を想定する。この場合、減磁が生じたブラシレスモータにおける各特性は曲線L1,L11で示す通りとなる。すなわち、一定の駆動電流の入力に対して所望の出力が得られなくなり、負荷の増大とともに、回転速度が所望の値よりも低くなってしまう。
【0008】
そこで、この発明の目的は、逆転状態での電動モータの駆動を確実に回避することにより、電動モータの減磁を防止し、所望の操舵補助力を確実に得ることができるようにしたパワーステアリング装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、電動モータ(27)により駆動されるポンプ(26)の発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、上記電動モータが逆転しているかどうかを検出するモータ逆転検出手段(15,31,S5)と、操舵速度が所定値以上になったこと、またはフェール状態からの復帰が検出されたことを含む電動モータ起動条件が成立したときに、上記モータ逆転検出手段が上記電動モータの逆転を検出していないことを条件に、上記電動モータを起動するモータ起動制御手段(31,S7〜S10,S2,S3)とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。
【0010】
この構成によれば、電動モータ起動条件が成立した場合であっても、電動モータが逆転していると、この電動モータの起動が禁止される。すなわち、電動モータが静止しているかまたは所定方向に正転している場合にのみ、モータ起動制御手段は、電動モータを起動する。これにより、電動モータが逆転状態で駆動されることを確実に防止できるから、電動モータの減磁が生じることがない。よって、電動モータは仕様通りの出力を発生できるので、良好な操舵補助を行うことができる。
電動モータ起動条件は、操舵速度が所定値以上になったこと、またはフェールセーフ機能等により電動モータが停止された後、フェール状態からの復帰が検出されたことを含む。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記モータ起動制御手段は、上記電動モータ起動条件が成立したときに、上記モータ逆転検出手段が上記電動モータの逆転を検出していないことが確定した後、一定の待機時間の満了後に、上記電動モータを起動するものであることを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング装置である。
この構成では、電動モータが逆転していないことが検出された場合であっても、一定の待機時間の満了後に電動モータが起動されるようになっている。たとえば、電動モータの回転をホールセンサ等のセンサ出力を用いて検出する場合に、電動モータが一定回転速度以上で逆転していない限り、電動モータの逆転を正確に検出できない場合がある。そこで、この発明では、一定回転速度未満で惰性回転している電動モータが静止状態に至るのに十分な一定の待機時間が満了した後に、電動モータを起動することとしている。これによって、電動モータを逆転状態で起動することをより確実に防止できる。
【0012】
なお、電動モータが逆転されていない場合に、さらに電動モータが正転状態か否かを検出し、電動モータの正転状態が検出されれば、ただちに電動モータを起動するとともに、電動モータの逆転も正転も検出されない場合にのみ、上記待機時間の満了を待機することとしてもよい。
請求項3記載の発明は、上記モータ逆転検出手段による電動モータの逆転の検出が、イニシャルチェック期間中に行われることを特徴とする請求項1または2記載のパワーステアリング装置である。
【0013】
この構成によれば、電動モータの逆転の検出はイニシャルチェック期間中に完了するので、電動モータの起動処理に要する時間が長くなることがない。
請求項4記載の発明は、上記一定の待機時間がイニシャルチェック期間中に満了するように、上記モータ逆転検出手段による検出時間および上記一定の待機時間が定められていることを特徴とする請求項2記載のパワーステアリング装置である。
【0014】
この構成の場合にも、請求項3記載の発明の場合と同じく、電動モータの起動処理に要する時間が長くなることがない
【0015】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の基本的な構成を示す概念図である。このパワーステアリング装置は、車両のステアリング機構1に関連して設けられ、このステアリング機構1に操舵補助力を与えるためのものである。
【0016】
ステアリング機構1は、運転者によって操作されるステアリングホイール2と、このステアリングホイール2に連結されたステアリング軸3と、ステアリング軸3の先端に設けられたピニオンギア4と、ピニオンギア4に噛合するラックギア部5aを有し、車両の左右方向に延びたラック軸5とを備えている。ラック軸5の両端にはタイロッド6がそれぞれ結合されており、このタイロッド6は、それぞれ、操舵輪としての前左右輪FL,FRを支持するナックルアーム7に結合されている。ナックルアーム7は、キングピン8まわりに回動可能に設けられている。
【0017】
この構成により、ステアリングホイール2が操作されてステアリング軸3が回転されると、この回転がピニオンギア4およびラック軸5によって車両の左右方向に沿う直線運動に変換される。この直線運動は、ナックルアーム7のキングピン8まわりの回動に変換され、これによって、前左右輪FL,FRの転舵が達成される。
ステアリング軸3には、ステアリングホイール2に加えられた操舵トルクの方向および大きさに応じてねじれを生じるトーションバー9と、トーションバー9のねじれの方向および大きさに応じて開度が変化する油圧制御弁23とが組み込まれている。油圧制御弁23は、ステアリング機構1に操舵補助力を与えるパワーシリンダ20に接続されている。パワーシリンダ20は、ラック軸5に一体的に設けられたピストン21と、ピストン21によって区画された一対のシリンダ室20a,20bとを有しており、シリンダ室20a,20bは、それぞれ、オイル供給/帰還路22a,22bを介して、油圧制御弁23に接続されている。
【0018】
油圧制御弁23は、さらに、リザーバタンク25およびオイルポンプ26を通るオイル循環路24の途中部に介装されている。オイルポンプ26は、電動モータ27によって駆動され、リザーバタンク25に貯留されている作動油を汲み出して油圧制御弁23に供給する。余剰分の作動油は、油圧制御弁23からオイル循環路24を介してリザーバタンク25に帰還される。
油圧制御弁23は、トーションバー9に一方方向のねじれが加わった場合には、オイル供給/帰還路22a,22bのうちの一方を介してパワーシリンダ20のシリンダ室20a,20bのうちの一方に作動油を供給する。また、トーションバー9に他方方向のねじれが加えられた場合には、オイル供給/帰還路22a,22bのうちの他方を介してシリンダ室20a,20bのうちの他方に作動油を供給する。トーションバー9にねじれがほとんど加わっていない場合には、油圧制御弁23は、いわば平衡状態となり、作動油はパワーシリンダ20に供給されることなく、オイル循環路24を循環する。
【0019】
パワーシリンダ20のいずれかのシリンダ室に作動油が供給されると、ピストン21が車幅方向に沿って移動する。これにより、ラック軸5に操舵補助力が作用することになる。
油圧制御弁23に関連する構成例は、たとえば、特開昭59−118577号公報に詳しく開示されている。
電動モータ27は、たとえばブラシレスモータからなり、駆動回路28を介して、電子制御ユニット30によって制御される。駆動回路28は、たとえば、パワートランジスタのブリッジ回路からなり、電源としての車載バッテリ40からの電力を、電子制御ユニット30から与えられる制御信号に応じて電動モータ27に供給する。
【0020】
電子制御ユニット30は、車載バッテリ40からの電力供給を受けて動作するマイクロコンピュータを含み、このマイクロコンピュータは、CPU31と、CPU31のワークエリアなどを提供するRAM32と、CPU31の動作プログラムおよび制御用のデータ等を記憶したROM33と、CPU31、RAM32およびROM33を相互接続するバス34とを備えている。
電子制御ユニット30には、舵角センサ11から出力される舵角データが与えられるようになっている。舵角センサ11は、ステアリングホイール2に関連して設けられており、イグニッションキースイッチが導通されてエンジンが始動したときのステアリングホイール2の舵角を初期値「0」として、この初期値からの相対舵角に対応し、かつ操舵方向に応じた符号の舵角データを出力する。CPU31は、この舵角データに基づいて、その時間微分値に相当する舵角速度を演算する。
【0021】
電子制御ユニット30には、さらに、電動モータ27に流れる電流を検出する電流検出回路12からの電流検出信号と、電動モータ27のロータの回転方向および回転速度を検出する回転センサ15からの回転速度信号とが与えられるようになっている。回転センサ15は、たとえば、電動モータ27としてのブラシレスモータに内蔵されたホールセンサ(通常は複数個)であってもよい。
さらに、電子制御ユニット30には、車速センサ13から出力される車速信号が与えられるようになっている。車速センサ13は、車速を直接的に検出するものでもよく、また、車輪に関連して設けられた車輪速センサの出力パルスに基づいて車速を計算により求めるものであってもよい。
【0022】
電子制御ユニット30は、舵角センサ11、電流検出回路12および車速センサ13からそれぞれ与えられる舵角データ、電流データおよび車速データに基づいて、電動モータ27の駆動を制御する。
図2は、舵角信号に基づいて算出される舵角速度と電動モータ27の目標回転速度との対応関係を示す特性図である。目標回転速度Rは、舵角速度Vθ(操舵速度に相当する。)に対して定められた第1しきい値VT1および第2しきい値VT2の間で単調に増加(この実施形態ではリニアに増加)するように、下限値R1と上限値R2との間で定められる。この単調増加区間における目標回転速度Rの下限値R1がスタンバイ回転速度とされ、第1しきい値VT1未満の舵角速度に対しては、このスタンバイ回転速度R1で電動モータ27が回転駆動される。
【0023】
CPU31は、車速に基づいて、図2に示すように、舵角速度Vθに対する目標回転速度Rの傾きを可変設定する。すなわち、第2しきい値VT2が、車速域に応じて可変設定される。より具体的には、車速が大きいほど、第2しきい値VT2は大きな値に設定される。これにより、車速が大きいほど目標回転速度Rが小さく設定されることになり、操舵補助力が小さくなる。こうして、車速に応じた適切な操舵補助力を発生するための車速感応制御が行われる。
【0024】
一方、CPU31は、装置の各部の異常を監視する異常監視ルーチンを実行しており、異常が生じたときには、フェールセーフ処理を実行し、電動モータ27を停止させて、不所望な操舵補助が行われないようにする。センサラインの一時的な断線などのような一時的な故障の場合には、異常状態から正常状態に復帰する場合がある。このような場合には、異常監視ルーチンは、モータ起動命令を発行する。これに応答して、CPU31は、電動モータ27を再び起動するための処理を実行する。
【0025】
図3は、電動モータ27が停止状態であるときに、CPU31が制御周期毎に繰り返し実行する電動モータ起動制御処理を説明するためのフローチャートである。CPU31は、まず、モータ駆動命令が発行されたか否かを判断し(ステップS1)、モータ駆動命令が発行されていなければ、リターンする。モータ駆動命令が発行されると(ステップS1のYES)、モータ起動許可フラグを調べ、モータ起動許可フラグがオン状態であれば(ステップS2のYES)、電動モータ27を起動する(ステップS3)。
【0026】
モータ起動許可フラグがクリア状態であれば(ステップS2のNO)、回転センサ15の出力信号(たとえば複数のホールセンサの出力信号パターン)を検出し(ステップS4)、電動モータ27が逆転中であるか否かを判断する(ステップS5)。
電動モータ27は、一方向(正転方向)に回転されたときに仕様通りのモータ出力を発生するように設計されており、この電動モータ27が正転方向に回転したとき、油圧制御弁23およびパワーシリンダ20を含む油圧システムは油圧を発生する。電動モータ27が逆転方向に惰性回転しているときに駆動回路28からの駆動電流が供給されると、電動モータ27は逆回転状態から正回転方向に駆動される。この場合には、上記の油圧システムは定格な油圧を発生せず、しかも、電動モータ27の減磁生じる。
【0027】
そこで、CPU31は、電動モータ27が逆転中であると(ステップS5のYES)、モータ起動許可フラグをクリア状態とし、さらに電動モータ27の停止時間を計測するための停止監視タイマをクリアして(ステップS6)、リターンする。
一方、電動モータ27が逆転中でないと判断されると(ステップS5のNO)、CPU31は、さらに電動モータ27が正転中か否かを判断する(ステップS7)。ホールセンサ等からなる回転センサ15の出力信号に基づく電動モータ27の回転の検出は、電動モータ27が正転方向または逆転方向に一定回転速度以上の回転速度で回転しているときにのみ可能であって、電動モータ27が低速回転(たとえば、1000rpm未満)している時には、電動モータ27の回転速度または回転方向を検出することができない。したがって、電動モータ27が停止しているときまたは低速回転しているときには、ステップS7における判断が否定されることになる。
【0028】
CPU31が電動モータ27の正転状態を検出すると(ステップS7のYES)、CPU31は、モータ起動許可フラグをオン状態とし、停止監視タイマをクリアして(ステップS10)、リターンする。この後、再び図3の処理が行われたときには、モータ起動許可フラグがオン状態であるので、処理はステップS2からステップS3へと進み、電動モータ27が起動されることになる。
電動モータ27が停止中または低速回転中である時には、ステップS7における判断が否定され、ステップS8において、停止監視タイマがインクリメントされる。CPU31は、この停止監視タイマが所定の待機時間T2以上になるまで停止監視タイマのインクリメントを継続し(ステップS8,S9)、停止監視タイマが待機時間T2に達すると、モータ起動許可フラグをオン状態とし、停止監視タイマをクリアして(ステップS10)、リターンする。
【0029】
上記待機時間T2は、回転センサ15による電動モータ27の回転方向が可能な回転速度未満(たとえば、1000rpm未満)で回転している電動モータ27の惰性回転が停止するのに十分な時間に定められている。すなわち、電動モータ27の逆転または正転のいずれもが検出されなかった場合においては、停止監視タイマが待機時間T2の計測を完了するまでに、電動モータ27の回転は停止している。
【0030】
図4は、CPU31が電動モータ27の起動に際して実行するイニシャルチェック期間と、図3に示されたモータ起動処理との関係を示す図である。CPU31は、イニシャルチェック期間中に図3に示すモータ起動処理を実行し、イニシャルチェック期間中の初期の時間T1において、回転センサ15の出力信号を参照することによって、電動モータ27が正転中であるか逆転中であるかを判断する。停止監視タイマが計測する上記の待機時間T2は、時間T1の経過後、イニシャルチェック期間中に満了するように定められている。すなわち、時間T1+T2は、イニシャルチェック期間の時間よりも短く定められている。
【0031】
以上のように、この実施形態によれば、電動モータ27の起動に際して実行されるイニシャルチェックの期間中に、電動モータ27が逆転しているか否かが判断される。電動モータ27の逆転が検出されれば、電動モータ27の起動が禁止される(ステップS5のYES,ステップS6)。
一方、電動モータ27の正転が検出されると(ステップS7のYES)、モータ起動許可フラグがオン状態とされて(ステップS10)、電動モータ27が起動されることになる(ステップS2,S3)。
【0032】
さらに、電動モータ27の回転速度がその回転方向の検出が困難なほど低速であるかまたは電動モータ27が停止している場合には、電動モータ27を停止状態に導くのに十分な待機時間T2を待機した後に(ステップS8,S9)、モータ起動許可フラグがオン状態とされて(ステップS10)、電動モータ27が起動される(ステップS2,S3)。
このようにして、電動モータ27が逆転状態のときに起動されることを確実に防止できるから、電動モータ27の減磁が生じることがなく、この電動モータ27は確実に仕様通りの出力を発生することができる。これによって、良好な操舵補助を行うことができる。しかも、電動モータ27の回転方向の検出および電動モータ27を停止状態に導くための待機時間T2は、モータ起動処理のためのイニシャルチェック期間中に満了するように定められているから、モータ起動処理が長くなることもない。
【0033】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。たとえば、上記の実施形態では、電動モータ27は、異常検出時に停止されて、正常状態への復帰とともに起動されることとしているが、たとえば舵角速度が所定値未満の状態が一定時間以上継続した場合に電動モータ27を停止し、さらに舵角速度が一定値以上となったことに応じて電動モータ27を起動する制御を行う場合に、電動モータ27の起動時における処理を図3のフローチャートに従って実行するようにしてもよい。
【0034】
また、上記の実施形態では、電動モータ27が逆転中でないと検出された場合(ステップS5のYES)に、さらに電動モータ27が正転状態か否かを検出し(ステップS7)、電動モータ27が正転状態であれば、ただちにモータ起動許可フラグをオン状態としている(ステップS10)。しかし、電動モータ27が正転状態であるかどうかの検出は必ずしも必要ではなく、図3のステップS7の処理を省いて、電動モータ27が逆転状態でないと判断された場合には、必ず待機時間T2の満了を待機することとしてもよい。
【0035】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の構成を示す概念図である。
【図2】電動モータの目標回転速度の設定例を示す図である。
【図3】電動モータの起動制御を説明するためのフローチャートである。
【図4】電動モータの起動に際して実行されるイニシャルチェックの期間における処理を説明するためのタイムチャートである。
【図5】電動モータの減磁による出力特性の変化を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ステアリング機構
2 ステアリングホイール
11 舵角センサ
12 電流検出回路
13 車速センサ
15 回転センサ
20 パワーシリンダ
23 油圧制御弁
24 オイル循環路
26 オイルポンプ
27 電動モータ
28 駆動回路
30 電子制御ユニット
31 CPU
32 RAM
33 ROM

Claims (4)

  1. 電動モータにより駆動されるポンプの発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、
    上記電動モータが逆転しているかどうかを検出するモータ逆転検出手段と、
    操舵速度が所定値以上になったこと、またはフェール状態からの復帰が検出されたことを含む電動モータ起動条件が成立したときに、上記モータ逆転検出手段が上記電動モータの逆転を検出していないことを条件に、上記電動モータを起動するモータ起動制御手段とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 上記モータ起動制御手段は、上記電動モータ起動条件が成立したときに、上記モータ逆転検出手段が上記電動モータの逆転を検出していないことが確定した後、一定の待機時間の満了後に、上記電動モータを起動するものであることを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング装置。
  3. 上記モータ逆転検出手段による電動モータの逆転の検出が、イニシャルチェック期間中に行われることを特徴とする請求項1または2記載のパワーステアリング装置。
  4. 上記一定の待機時間がイニシャルチェック期間中に満了するように、上記モータ逆転検出手段による検出時間および上記一定の待機時間が定められていることを特徴とする請求項2記載のパワーステアリング装置。
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