本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
先ず本発明に係るマイクロリレーの基本構成を図7〜図10に基づいて説明する。このマイクロリレーは、ヨーク20に巻回されたコイル22,22への励磁電流に応じてヨーク20の両磁極(両脚片20bの先端面)が異極に励磁される電磁石装置2と、矩形板状のガラス基板からなり電磁石装置2を収納する収納部を有し厚み方向の一表面側において長手方向の両端部それぞれに各一対の固定接点14が設けられたベース基板1と、ベース基板1の上記一表面側において収納部の周部に固着される枠状(矩形枠状)のフレーム部31およびフレーム部31の枠内に配置されて4本の支持ばね部32を介してフレーム部31に揺動自在に支持されるとともにヨーク20の磁極に吸着されて揺動するアーマチュア30およびアーマチュア30にそれぞれ2本の接圧ばね部35を介して支持されそれぞれ可動接点39が設けられた2つの可動接点基台部34を有するアーマチュアブロック3と、アーマチュアブロック3におけるベース基板1とは反対側で周部がフレーム部31に固着された矩形板状のガラス基板からなるカバー4とを備えている。
電磁石装置2のヨーク20は、2つのコイル22,22が直接巻回される細長の矩形板状のコイル巻回部20aと、コイル巻回部20aの長手方向の両端部それぞれからアーマチュア30に近づく向きに延設されコイル22,22への励磁電流に応じて互いの先端面が異極に励磁される一対の脚片20b,20bとで構成され、このヨーク20と、ヨーク20の両脚片20b,20bの間でコイル巻回部20aの長手方向の中央部に重ねて配置された矩形板状の永久磁石21と、細長の矩形板状であってヨーク20のコイル巻回部20aにおける永久磁石21との対向面とは反対側でコイル巻回部20aと直交するようにコイル巻回部20aに固着されるプリント基板23とを電磁石装置2は備えている。なおヨーク20は、電磁軟鉄などの鉄板を曲げ加工あるいは鋳造加工することにより形成されており、両脚片20b,20bの断面が矩形状に形成されている。
永久磁石21は、コイル巻回部20aとの重ね方向(厚み方向)の両面それぞれの磁極面21a,21bが異極に着磁されており、一方の磁極面21bがヨーク20のコイル巻回部20aに当接し、他方の磁極面21aがヨーク20の両脚片20b,20bの先端面と同一平面上に位置するように厚み寸法を設定してある。
各コイル22,22はそれぞれ、永久磁石21とヨーク20の脚片20b,20bとによって口軸方向(つまり、コイル巻回部20aの長手方向)への移動が規制される。プリント基板23は、絶縁基板23aの一表面における長手方向の両端部に導体パターン23bが形成されており、各導体パターン23bにおいて円形状に形成された部位が外部接続用電極を構成し、矩形状に形成された部位がコイル接続部を構成している(図8参照)。ここにおいて、各コイル接続部にはコイル22,22の端末が電気的に接続されるが、コイル22,22は、外部接続用電極間に電源を接続してコイル22,22へ励磁電流を流したときにヨーク20の両脚片20b,20bの先端面が互いに異なる磁極となるように接続されている。なお各導体パターン23bにおける外部接続用電極には、導電性材料(例えばAu,Ag,Cu,半田など)からなるバンプ24が適宜固着されるが、バンプ24を固着する代わりに、ボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
ベース基板1は、パイレックス(R)のような耐熱ガラスにより形成されており、外周形状が矩形状であって、中央部には厚み方向に貫通し電磁石装置2を収納する収納孔16が貫設され、収納孔16を挟んで長手方向両端部には厚み方向に貫通する各3個のスルーホール10が短手方向に並べて貫設されている。またベース基板1の厚み方向の両面であって各スルーホール10それぞれの周縁にはランド12が形成されている。ここに、ベース基板1の厚み方向において重なるランド12同士はスルーホール10の内周面に被着された導電性材料(例えばCu,Cr,Ti,Pt,Co,Ni,Au,あるいはこれらの合金など)からなる導体層(図示せず)により電気的に接続されている。また、ベース基板1の厚み方向の他表面側の各ランド12にはバンプ13が適宜固着されており、バンプ13をランド12に固着することによって、ベース基板1の上記他表面側ではスルーホール10の開口面がバンプ13により覆われる。スルーホール10の開口面は円形状であって、ベース基板1の上記一表面には、それぞれスルーホール10の開口面およびランド12を覆う6枚のシリコン薄膜からなる蓋体19が固着されている。
また、上述した各一対の固定接点14は、ベース基板1の長手方向両端部においてベース基板1の角部に配置される2つのスルーホール10の間でベース基板1の短手方向に並設されており、これら2つのスルーホール10の周縁に形成されたランド12に導電パターン18aを介して電気的に接続されている。またベース基板1の長手方向両端部には、固定接点14よりも外側にベース基板1の短手方向に沿って延びる導電パターン18bが形成されており、この導電パターン18bは上記短手方向中央部のスルーホール10の周縁に形成されたランド12に電気的に接続されている。マイクロリレーをプリント基板のような実装基板に実装する際には導電パターン18bがスルーホール10およびランド12を介して実装基板に形成されたグランドパターンに電気的に接続されるので、静電ノイズを遮断してマイクロリレーの高周波特性を向上させることができる。ここに、固定接点14および導電パターン18a,18bおよびランド12の材料としては、例えばCr,Ti,Pt,Co,Cu,Ni,Au,あるいはこれらの合金などの導電性材料を採用すればよく、バンプ13の材料としては、例えばAu,Ag,Cu,半田などの導電性材料を採用すればよい。なお上述の導体層は、例えばめっき法、蒸着法、スパッタ法などによって形成すればよい。なお、このマイクロリレーでは、蓋体19がスルーホール10の開口面を閉塞する閉塞手段を構成し、ベース基板1の上記他表面側におけるランド12が接続用電極を構成している。
また収納孔16の開口面は十字状であって、上記一表面側には、収納孔16を閉塞するシリコン薄膜からなる蓋体17が固着されている。また収納孔16は、ベース基板1の上記一表面から上記他表面に近づくにつれて徐々に開口面積が大きくなるテーパ形状となっているので、ベース基板1の上記他表面側から電磁石装置2を挿入しやすく、且つ、ベース基板1の上記一表面における収納孔16の開口面積を比較的小さくすることができる。
ここで電磁石装置2は、ヨーク20の両脚片20b,20bの各先端面(磁極面)が蓋体17と対向する形で収納孔16に挿入される。なお、このマイクロリレーでは収納孔16の内周面と蓋体17とで囲まれる空間が電磁石装置2を収納する収納部を構成しており、電磁石装置2は、永久磁石21がベース基板1の厚み寸法内でアーマチュア30とヨーク20とにより形成される磁路中に設けられ、プリント基板23における絶縁基板23aの表面がベース基板1の上記他表面と略面一となっている。なお蓋体17,19は、シリコン基板をエッチングや研磨などで薄膜化することにより形成したシリコン薄膜で構成されており、厚み寸法を20μmに設定してある。ここに蓋体17,19の厚み寸法は20μmに限定するものではなく、例えば5μm〜50μm程度の範囲内で適宜設定すればよい。また蓋体17,19は、シリコン薄膜に限らず、ガラス基板をエッチングや研磨などで薄膜化することにより形成したガラス薄膜により構成してもよい。
アーマチュアブロック3は、シリコン基板からなる半導体基板を半導体微細加工プロセス(MEMSプロセス)により加工することによって、上述の矩形枠状のフレーム部31と、上述の4本の支持ばね32と、フレーム部31の枠内に配置されアーマチュア30の一部を構成する矩形板状の可動基台部30aと、上述の4本の接圧ばね35と、上述の2つの可動接点基台部34とを形成してあり、可動基台部30aと、可動基台部30aにおけるベース基板1との対向面に固着された磁性体(例えば、軟鉄、電磁ステンレス、パーマロイなど)からなる矩形板状の磁性体部30bとでアーマチュア30を構成している。したがって、アーマチュア30が4本の支持ばね部32を介してフレーム部31に揺動自在に支持されている。なお、可動基台部30aはフレーム部31よりも薄肉であり、アーマチュア30の厚み寸法は、アーマチュアブロック3とベース基板1とを固着した状態においてアーマチュア30の磁性体部30bと蓋体17との間に所定のギャップが形成されるように設定されている。
上述の支持ばね部32は、可動基台部30aの短手方向の両側面側で可動基台部30aの長手方向に離間して2箇所に形成されている。各支持ばね部32は、一端部がフレーム部31に連続一体に連結され他端部が可動基台部30aに連続一体に連結されている。なお各支持ばね部32は、平面形状において上記一端部と上記他端部との間の部位を同一面内で蛇行した形状に形成することにより長さ寸法を長くしてあり、アーマチュア30が揺動する際に各支持ばね部32にかかる応力を分散させることで、各支持ばね部32の破損を防止している。
また可動基台部30aは、短手方向の両側縁の中央部から矩形状の突片36が連続一体に延設され、フレーム部31の内周面において突片36に対応する部位からも矩形状の突片37が連続一体に延設されている。すなわち、可動基台部30aから延設された突片36とフレーム部31から延設された突片37とは互いの先端面同士が対向している。ここに、可動基台部30aから延設された各突片36の先端面には凸部36aが形成されており、フレーム部31から延設された各突片37の先端面には、凸部36aが入り込む凹部37aが形成されている。したがって、凸部36aが凹部37aの内周面に当接することでフレーム部31の厚み方向に直交する面内におけるアーマチュア30の移動が規制される。また各突片36におけるベース基板1との対向面には支点突起36bを突設してあり、このような一対の支点突起36bを設けることでアーマチュア30の揺動動作をより安定させることができる。なおアーマチュア30の同一の側縁側に配設される2つの支持ばね部32は、突片36の両側に位置している。
またアーマチュアブロック3は、アーマチュア30の長手方向においてアーマチュア30の両端部とフレーム部31との間にそれぞれ可動接点基台部34が配置されている。各可動接点基台部34は上述の2本の接圧ばね部35を介して可動基台部30aに支持されており、各可動接点基台部34におけるベース基板1との対向面に導電性材料からなる可動接点39が固着されている。なお可動基台部30aは上述のように矩形板状に形成されており、磁性体部30bの変位量を制限するストッパ部33が四隅それぞれから連続一体に延設されており、接圧ばね部35の平面形状は、ストッパ部33の外周縁の3辺に沿ったコ字状に形成されている。このストッパ部33は、ベース基板1の上記一表面と接触することにより磁性体部30bの変位量を制限する。
なおアーマチュアブロック3は、上述の説明から分かるように、フレーム部31、可動基台部30a、支持ばね部32、可動接点基台部34、接圧ばね部35が上述の半導体基板の一部により構成されている。半導体基板としては例えば厚み寸法が200μm程度のシリコン基板を用いればよいが、当該厚み寸法は特に限定するものではなく、例えば50μm〜300μm程度の範囲で適宜設定すればよい。また可動接点基台部34の厚み寸法と可動接点39の厚み寸法との合計寸法についても、接点開成状態において可動接点39と固定接点14との間の距離が所定距離となるように設定されている。
一方、カバー4は、パイレックス(R)のような耐熱ガラスにより構成されており、アーマチュアブロック3との対向面にアーマチュア30の揺動空間を確保する凹所4aが形成されている。
ところで、上述のアーマチュアブロック3のフレーム部31におけるカバー4との対向面の周部には全周に亙って接合用金属薄膜38が形成され、ベース基板1との対向面の周部には全周に亙って接合用金属薄膜(図示せず)が形成されている。また、ベース基板1におけるアーマチュアブロック3との対向面の周部にも全周に亙って接合用金属薄膜15が形成され、カバー4におけるアーマチュアブロック3との対向面の周部にも全周に亙って接合用金属薄膜(図示せず)が形成されている。而してアーマチュアブロック3とベース基板1およびカバー4とを圧接または陽極接合により気密的に接合することができ、ベース基板1とカバー4とフレーム部31とで囲まれる空間の気密性が向上する。すなわちアーマチュア30、可動接点39、固定接点14などを収納する空間(この空間を接点チャンバと言う)の気密性を高めることができる。なお接合用金属薄膜15,38の材料としては、例えばAu,Al−Siなどを採用すればよい。
以上説明したマイクロリレーをプリント基板のような実装基板に実装する際には、例えばベース基板1の上記他表面側において露出した2個のバンプ24および6個のバンプ13をそれぞれ上記実装基板の一表面側に形成された導体パターンに接続すればよい。
次に、このマイクロリレーの製造方法について簡単に説明する。このマイクロリレーの製造にあたっては、半導体基板たるシリコン基板をリソグラフィ技術、エッチング技術などの半導体微細加工プロセス(マイクロマシンニング技術)により加工してフレーム部31、支持ばね部32、接圧ばね部35、可動接点基台部34、アーマチュア30の一部を構成する可動基台部30aを形成した後で可動基台部30aにおいてベース基板1側となる一面に磁性体からなる磁性体部30bを固着し且つ可動接点基台部34に可動接点39を固着することでアーマチュアブロック3を形成するアーマチュアブロック形成工程と、アーマチュアブロック形成工程にて形成したアーマチュアブロック3とベース基板1およびカバー4を圧接または陽極接合により固着することでベース基板1とカバー4とアーマチュアブロック3のフレーム部31とで囲まれる空間を密封する密封工程と、密封工程の後でベース基板1の収納部に電磁石装置2を収納してベース基板1に固定する電磁石装置配設工程とを備えている。
ここにおいて、ベース基板1の形成にあたっては、ベース基板1の基礎となるガラス基板において収納部に対応する部位に厚み方向に貫通する収納孔16を形成するとともにガラス基板の長手方向両端部に厚み方向に貫通する各3個のスルーホール10を短手方向に並べて形成した後、ランド12、固定接点14、導電パターン18a,18b、導体層などを形成してから、上記ガラス基板において固定接点14を設けた側の表面に収納孔16およびスルーホール10の両方を覆う薄膜(例えば、シリコン薄膜、ガラス薄膜など)を固着し、当該薄膜をパターニングすることによって収納孔16およびスルーホール10それぞれの開口面を個別に閉塞する蓋体17,19を形成すればよい。なお収納孔16およびスルーホール10はエッチング法やサンドブラスト法などにより形成すればよい。
またカバー4の形成にあたっては、カバー4の基礎となるガラス基板において凹所4aを形成した後、接合用金属薄膜を形成すればよい。ここに凹所4aはエッチング法やサンドブラスト法などにより形成すればよい。
なお、このマイクロリレーはベース基板1およびカバー4それぞれがガラス基板を加工することで形成されているが、ベース基板1とカバー4との一方あるいは両方を、シリコン基板を加工することにより形成してもよい。またベース基板1およびカバー4をそれぞれガラス基板に限定し、アーマチュアブロック3の元となる半導体基板をシリコン基板に限定すれば、上記接合用金属薄膜15,38を設けなくてもアーマチュアブロック3とベース基板1およびカバー4とを陽極接合により気密的に接合することができる。なお上述のアーマチュアブロック3を多数形成したウェハと、上述のベース基板1を多数形成したウェハおよび上述のカバー4を多数形成したウェハとを圧接または陽極接合により固着してからダイシング工程などによって個々のマイクロリレーに分割してもよいことは勿論である。
次にマイクロリレーの動作について簡単に説明する。このマイクロリレーでは、コイル22,22への通電が行われると、磁化の向きに応じて磁性体部30bの長手方向の一端部がヨーク20の一方の脚片20bの先端面(磁極面)に吸着されてアーマチュア30が揺動し、ヨーク20→磁性体部30b→永久磁石21→ヨーク20の閉磁路が形成されて、長手方向一端側の可動接点基台部34に固着された可動接点39が対向する一対の固定接点14,14に所定の接点圧で接触し、一対の固定接点14,14の間が可動接点39を介して導通するとともに、アーマチュア30の長手方向他端側の可動接点基台部34に固着された可動接点39が対向する一対の固定接点14,14から開離し、一対の固定接点14,14の間が開放される。この状態でコイル22,22への通電が停止されると、永久磁石21の発生する磁束によって上記閉磁路がそのまま維持され、磁性体部30bの長手方向一端側がヨーク20の一方の脚片20bに吸着された状態が保たれる。
またコイル22,22への通電方向を逆向きにすると、磁性体部30bの長手方向の他端部がヨーク20の他方の脚片20bの先端面(磁極面)に吸着されてアーマチュア30が反対側に揺動し、一対の固定接点14,14に接触していた可動接点39が開離すると共に、アーマチュア30の長手方向他端側の可動接点基台部34に固着された可動接点39が対向する一対の固定接点14,14に所定の接点圧で接触し、一対の固定接点14,14の間が可動接点39を介して導通する。この状態においてもコイル22,22への通電を停止すると、永久磁石21の発生する磁束によって吸着力が維持されて、そのままの状態が保持され、いわゆる双安定動作が行われる。
ところで、上述したマイクロリレーは、常開接点と常閉接点とを1極ずつ備えた双極単投型の接点構成を備えており、アーマチュア30の揺動方向における両端部に可動接点基台部34を設けているため、リレー全体の長手方向寸法が長くなっていた。ここで、常開接点又は常閉接点を1極のみ備えた単極単投型のマイクロリレーが必要な場合に、双極単投型と単極単投型のリレーでアーマチュアブロック3を共通化するために、ベース基板1の片側部に設けた一対の固定接点14をグランドに短絡させて常閉接点(又は常開接点)の機能を失わせることで、常開接点(又は常閉接点)を1極だけ備えた単極単投型の接点構成を有するマイクロリレーを実現した場合にはリレー全体の長手方向寸法が長くなるという問題があった。そこで、常開接点(又は常閉接点)を1極だけ備えた単極単投型の接点構成を有するマイクロリレーが必要な場合には図11〜図14に示すように、上述したマイクロリレーにおいて長手方向の一端側に設けた一対の固定接点14と他端側のコイル22を省略してベース基板1の全長を短くするのが望ましい。
以下に常開接点又は常閉接点を1極のみ備えたマイクロリレーについて図11〜図14を参照して簡単に説明する。尚、上述したマイクロリレーと共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
このマイクロリレーが備える電磁石装置2のヨーク20は、コイル22が直接巻回される細長の矩形板状のコイル巻回部20aと、コイル巻回部20aの長手方向の両端部それぞれからアーマチュア30に近づく向きに延設された一対の脚片20b,20bとで構成され、このヨーク20と、コイル巻回部20aにおける両脚片20b,20bの間でアーマチュア30の揺動中心に対応する部位に重ねて配置された矩形板状の永久磁石21と、細長の矩形板状であってヨーク20のコイル巻回部20aにおける永久磁石21との対向面とは反対側でコイル巻回部20aと直交するようにコイル巻回部20aに固着されるプリント基板23とを電磁石装置2は備えている。なおヨーク20は、電磁軟鉄などの鉄板を曲げ加工あるいは鋳造加工することにより形成されており、両脚片20b,20bの断面が矩形状に形成されている。
コイル22は、コイル巻回部20aにおける永久磁石21と一方の脚片20bとの間の部位に巻回されており、永久磁石21と脚片20bとによって口軸方向への移動が規制される。またプリント基板23は、絶縁基板23aの一表面における長手方向の両端部に導体パターン23bが形成されており、各導体パターン23bにおいて円形状に形成された部位が外部接続用電極を構成し、矩形状に形成された部位がコイル接続部を構成している(図12参照)。ここにおいて、各コイル接続部にはコイル22の端末が接続され、外部接続用電極間に電源を接続してコイル22に励磁電流を流したときに、コイル22が巻回された側の脚片20b先端面に磁束が発生して、この脚片20bの先端面にアーマチュア30が吸着されることで、アーマチュア30が揺動する。なお各導体パターン23bにおける外部接続用電極には、導電性材料(例えばAu,Ag,Cu,半田など)からなるバンプ24が適宜固着されるが、バンプ24を固着する代わりに、ボンディングワイヤをボンディングしてもよい。
ベース基板1は、パイレックス(R)のような耐熱ガラスにより形成されており、外周形状が矩形状であって、中央部には厚み方向に貫通し電磁石装置2を収納する収納孔16が貫設され、長手方向におけるコイル22側の一端部には厚み方向に貫通する3個のスルーホール10が短手方向に並べて貫設されている。またベース基板1の厚み方向の両面であって各スルーホール10それぞれの周縁にはランド12が形成されている。ここに、ベース基板1の厚み方向において重なるランド12同士はスルーホール10の内周面に被着された導電性材料(例えばCu,Cr,Ti,Pt,Co,Ni,Au,あるいはこれらの合金など)からなる導体層(図示せず)により電気的に接続されている。また、ベース基板1の厚み方向の他表面側の各ランド12にはバンプ13が適宜固着されており、バンプ13をランド12に固着することによって、ベース基板1の上記他表面側ではスルーホール10の開口面がバンプ13により覆われる。スルーホール10の開口面は円形状であって、ベース基板1の上記一表面には、それぞれスルーホール10の開口面およびランド12を覆う3枚のシリコン薄膜からなる蓋体19が固着されている。
また、上述した一対の固定接点14は、ベース基板1の長手方向におけるコイル22側の一端部において、ベース基板1の角部に形成された2つのスルーホール10の間でベース基板1の短手方向に並設されており、これら2つのスルーホール10の周縁に形成されたランド12と導電パターン18aを介して電気的に接続されている。またベース基板1の長手方向におけるコイル22側の一端部には、固定接点14よりも外側にベース基板1の短手方向に沿って延びる導電パターン18bが形成されており、この導電パターン18bは、ベース基板1の短手方向中央部のスルーホール10の周縁に形成されたランド12に電気的に接続されている。マイクロリレーを実装基板に実装する際には導電パターン18bがスルーホール10およびランド12を介して実装基板に形成されたグランドパターンに電気的に接続されるので、導電パターン12bにより静電ノイズを遮断してマイクロリレーの高周波特性を向上させることができる。
ここで電磁石装置2は、ヨーク20の両脚片20b,20bの各先端面が蓋体17と対向する形で(つまりアーマチュア30側に向けて)収納孔16に挿入される。なお、このマイクロリレーでは収納孔16の内周面と蓋体17とで囲まれる空間が電磁石装置2を収納する収納部を構成しており、電磁石装置2は、永久磁石21がベース基板1の厚み寸法内でアーマチュア30とヨーク20とにより形成される磁路中に設けられ、プリント基板23における絶縁基板23aの表面がベース基板1の上記他表面と略面一となっている。
一方、アーマチュアブロック3は、シリコン基板からなる半導体基板を半導体微細加工プロセス(MEMSプロセス)により加工することによって、上述の矩形枠状のフレーム部31と、上述の4本の支持ばね32と、フレーム部31の内側に配置されアーマチュア30の一部を構成する矩形板状の可動基台部30aと、上述の2本の接圧ばね35と、上述の1つの可動接点基台部34とを形成してあり、可動基台部30aと、可動基台部30aにおけるベース基板1との対向面に固着された磁性体(例えば、軟鉄、電磁ステンレス、パーマロイなど)からなる矩形板状の磁性体部30bとでアーマチュア30を構成している。すなわちアーマチュア30は4本の支持ばね部32を介してフレーム部31に揺動自在に支持されている。
またアーマチュアブロック3は、アーマチュア30の長手方向においてコイル22側のアーマチュア30の一端部とフレーム部31との間に可動接点基台部34が配置されている。可動接点基台部34は2本の接圧ばね部35を介して可動基台部30aに支持されており、可動接点基台部34におけるベース基板1との対向面に導電性材料からなる可動接点39が固着されている。なお可動基台部30aは上述のように矩形板状に形成されており、磁性体部30bの変位量を制限するストッパ部33が長手方向の一端側の左右の角部から連続一体に延設されており、接圧ばね部35の平面形状は、ストッパ部33の外周縁の3辺に沿ったコ字状に形成されている。なおストッパ部33は、ベース基板1の上記一表面と接触することにより磁性体部30bの変位量を制限するものである。
アーマチュアブロック3は、上述の説明から分かるように、フレーム部31、可動基台部30a、支持ばね部32、可動接点基台部34、接圧ばね部35が上述の半導体基板の一部により構成されている。半導体基板としては例えば厚み寸法が200μm程度のシリコン基板を用いればよいが、当該厚み寸法は特に限定するものではなく、例えば50μm〜300μm程度の範囲で適宜設定すればよい。また可動接点基台部34の厚み寸法と可動接点39の厚み寸法との合計寸法についても、接点開成状態において可動接点39と固定接点14との間の距離が所定距離となるように設定されている。
一方、カバー4は、パイレックス(R)のような耐熱ガラスにより構成されており、アーマチュアブロック3との対向面にアーマチュア30の揺動空間を確保する凹所4aが形成されている。
ここで、上述のアーマチュアブロック3のフレーム部31におけるカバー4との対向面の周部には全周に亙って接合用金属薄膜38が形成され、ベース基板1との対向面の周部には全周に亙って接合用金属薄膜(図示せず)が形成されている。また、ベース基板1におけるアーマチュアブロック3との対向面の周部にも全周に亙って接合用金属薄膜15が形成され、カバー4におけるアーマチュアブロック3との対向面の周部にも全周に亙って接合用金属薄膜(図示せず)が形成されている。而してアーマチュアブロック3とベース基板1およびカバー4とを圧接または陽極接合により気密的に接合することができ、ベース基板1とカバー4とフレーム部31とで囲まれる空間の気密性が向上する。すなわちアーマチュア30、可動接点39、固定接点14などを収納する空間(この空間を接点チャンバと言う)の気密性を高めることができる。なお接合用金属薄膜15,38の材料としては、例えばAu,Al−Siなどを採用すればよい。
以上説明したマイクロリレーをプリント基板のような実装基板に実装する際には、例えばベース基板1の上記他表面側において露出した2個のバンプ24および3個のバンプ13をそれぞれ上記実装基板の一表面側に形成された導体パターンに接続すればよい。
以下に、このマイクロリレーの動作について簡単に説明する。このマイクロリレーでは、コイル22への通電が行われると、磁化の向きに応じて磁性体部30bのコイル22側の一端部がヨーク20の一方の脚片20bの先端面(磁極面)に吸引されてアーマチュア30が揺動し、ヨーク20→磁性体部30b→永久磁石21→ヨーク20の閉磁路が形成されて、可動接点基台部34に固着された可動接点39が一対の固定接点14,14に所定の接点圧で接触し、一対の固定接点14,14の間が可動接点39を介して導通する。この状態でコイル22への通電が停止されると、永久磁石21の発生する磁束によって上記閉磁路がそのまま維持され、磁性体部30bの長手方向一端側がヨーク20の一方の脚片20bに吸引された状態が保たれる。
またコイル22への通電方向を逆向きにすると、コイル22側の脚片20bの先端面が異極に励磁されて、磁性体部30bのコイル22側の一端部が脚片20bの先端面から離れ、支持ばね部32のばね復帰力によって復帰位置まで揺動し、一対の固定接点14,14に接触していた可動接点39が開離する。すなわち、このマイクロリレーは常開接点又は常閉接点として機能する接点を1極備えた単極単投型の接点構成を有している。
なお、上述した基本構成のマイクロリレーでは、アーマチュアブロック3におけるベース基板1とは反対側で周部がフレーム部31に固着されたカバー4を備えていることにより、アーマチュア30および固定接点14および可動接点39が密閉空間内に配置され、電磁石装置2は、ベース基板1の厚み寸法内でアーマチュア30とヨーク20とにより形成される磁路中に永久磁石21を設けてあるので、従来のようにアーマチュアブロックとベース基板との間にスペーサを介在させる必要がなく、リレー全体の薄型化が可能となる。すなわち、リレー全体の厚み寸法をベース基板1の厚み寸法とアーマチュアブロック3のフレーム部31の厚み寸法とカバー4の厚み寸法との合計寸法によって規定することができ、ベース基板1とカバー4とフレーム部31とで構成される器体の薄型化が可能となる。
(実施形態1)
以下では、上述した図7〜図10に示す基本構成のマイクロリレーにおいて電磁石装置2の構成を変更した実施形態について図1〜図3を参照して説明する。尚、電磁石装置2以外は上述した基本構成のマイクロリレーと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本実施形態に用いる電磁石装置2は、ヨーク20と、永久磁石25と、コイル22とを主要な構成として備える。ヨーク20は、コイル22が直接巻回される細長の矩形板状のコイル巻回部20aと、コイル巻回部20aの長手方向の両端部それぞれからアーマチュア30に近づく向きに延設されコイル22への励磁電流に応じて互いの先端面が異極に励磁される一対の脚片20b,20bとで構成され、両脚片20b,20bの先端部の間に矩形板状の永久磁石25が介装されている。なおヨーク20は、電磁軟鉄などの鉄板を曲げ加工あるいは鋳造加工することにより形成されており、両脚片20b,20bの断面が矩形状に形成されている。
永久磁石21は扁平な矩形板状であって、両脚片20b,20bの先端部に対向する両端部と、アーマチュア30の揺動中心に対応する中間部とが互いに異極に着磁されており、永久磁石21の表面が両脚片20b,20bの先端面からアーマチュア30側に突出しないように厚み寸法が設定されている。
コイル22は、両脚片20b,20bの間のコイル巻回部20aの略全体に巻回されており、脚片20b,20bによって口軸方向(つまり、コイル巻回部20aの長手方向)への移動が規制されている。そして、図示しない外部接続用電極間に電源を接続してコイル22へ励磁電流を流すと、ヨーク20の両脚片20b,20bの先端面が互いに異なる磁極に励磁されるようになっている。
本実施形態の電磁石装置2は以上のような構成を有しており、電磁石装置2の永久磁石25はヨーク20の両脚片20b,20bの先端部間に介装されているので、電磁石装置2を収納するベース基板1の厚み寸法を厚くすることなく永久磁石25を配置することができ、アーマチュアに永久磁石を配置した従来例のようにアーマチュアブロック3とベース基板1との間にスペーサを介在させる必要がないため、リレー全体を薄型化できる。また本実施形態においても、アーマチュアブロック3におけるベース基板1とは反対側で周部がフレーム部31に固着されたカバー4を備えていることにより、アーマチュア30および固定接点14および可動接点39を密閉空間内に配置することができる。
(実施形態2)
以下では、上述した図7〜図10に示す基本構成のマイクロリレーにおいて電磁石装置2の構成を変更した他の形態について図4〜図6を参照して説明する。尚、電磁石装置2以外は上述した基本構成のマイクロリレーと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本実施形態に用いる電磁石装置2は、ヨーク20と、永久磁石21と、コイル22,22とを主要な構成として備える。ヨーク20は、細長の矩形板状の連結部20cと、連結部20cの長手方向における両端部からそれぞれ一方向(アーマチュア30側)に突出するコイル巻回部20d,20dとで構成され、コイル巻回部20d,20dは連結部20cに比べて短い寸法に設定されている。なおヨーク20は、電磁軟鉄などの鉄板を曲げ加工あるいは鋳造加工することにより形成されており、両脚片20b,20bの断面が矩形状に形成されている。
コイル22,22はそれぞれヨーク20における短手側の各コイル巻回部20d,20dに巻回され、各コイル巻回部20d,20dの先端部の磁極をアーマチュア30側に向けて配置されており、各コイル22,22への励磁電流に応じて両コイル巻回部20d,20dの磁極が互いに異極に励磁されるようになっている。
また永久磁石21は矩形板状であって、ヨーク20の連結部20cにおける両コイル巻回部20d,20dの間の部位で、アーマチュア30の揺動中心に対応する部位(長手方向の中央部)に重ねて配置されており、連結部20cとの重ね方向(厚み方向)の両面それぞれの磁極面21a,21bが異極に着磁されており、一方の磁極面21bがヨーク20の連結部20cに当接し、他方の磁極面21aがヨーク20の両コイル巻回部20d,20dの先端面と同一平面上に位置するように厚み寸法を設定してある。
本実施形態の電磁石装置2は以上のような構成を有しており、電磁石装置2のヨーク20は、連結部20cと、連結部20cの長手方向における両端部からそれぞれ一方向に突出するコイル巻回部20d,20dとを有し、このヨーク20の短手側の両コイル巻回部20d,20dにコイル22,22がそれぞれ巻回されており、永久磁石21は連結部20cにおけるアーマチュア30の揺動中心に対応する部位にアーマチュア30側に重ねて配置されている。ここで永久磁石21の厚み寸法はコイル巻回部20dの長さ寸法と略同じ寸法に形成され、永久磁石21の磁極面21aがコイル巻回部20d,20dの先端面と同一平面上に位置するように厚み寸法を設定しているので、電磁石装置2を収納するベース基板1の厚みを厚くすることなく永久磁石21を配置することができるから、アーマチュア30に永久磁石を配置した従来例のようにアーマチュアブロック3とベース基板1との間にスペーサを介在させる必要がないので、リレー全体を薄型化できる。また本実施形態においても、アーマチュアブロック3におけるベース基板1とは反対側で周部がフレーム部31に固着されたカバー4を備えていることにより、アーマチュア30および固定接点14および可動接点39を密閉空間内に配置することができる。
なお上述した基本構成および実施形態1,2のマイクロリレーにおいて、コイル22の巻線として、絶縁被覆の上に自己融着性の融着層が設けられた自己融着線を用いても良く、融着層を溶融させることでコイル22を固着できるから、ボビンを不要にでき、コイル22を一層小型化することができる。