JP4055475B2 - 排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は主としてエンジンの排気浄化に適用される排気浄化装置に関し、特にHCトラップ機能を有する排気浄化装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術と解決すべき課題】
三元触媒を備えた排気浄化システムではエンジン冷間運転時のHCの処理が課題となっている。触媒が活性温度に達するまでは低温条件下での燃焼時に排出されやすいHCを十分に浄化できないからである。この問題に対応するものとして、特開平11−324662号公報には、HC吸着剤を担持し担体と三元触媒を担持した担体とをガス流れ方向に交互に複数個配置した排気浄化装置が提案されている。HC吸着剤は排気ガス中のHCを一時的に捕捉しておく機能を持っており、捕捉されたHCは温度上昇に伴い吸着剤から脱離する。そこで前記排気浄化装置では、三元触媒に隣接して設けたHC吸着剤により、三元触媒が活性温度に達するまでのHCの排出を抑制している。しかしながら、捕捉されたHCが吸着剤から脱離を開始する温度に達しても、この時点では下流側の三元触媒がまだ十分に活性化していないため、HCの排出を抑制する効果は十分ではない。また、HCトラップと三元触媒とを交互に配置した構造であるので、所要のHCトラップ性能を確保しようとすると装置が大型化してしまうという問題もある。
【0003】
本発明の目的は、エンジン冷間運転時においてもHCの排出を確実に抑制することのできる小型の排気浄化装置を提供することである。
【0004】
【発明の概要】
本発明では、HC吸着剤と触媒金属とを担持させた複数の担体を、ガス流れ方向に隙間を空けて配設する。
【0005】
それぞれがHCトラップおよび触媒機能を備えた複数の担体を隙間を空けて配設した構成においては、担体間の隙間がその前後で担体内の伝熱を遮断する作用を有するため、隙間よりも下流への熱伝導が抑制され触媒担体全体として温度上昇が遅くなる。すなわちHCが脱離するまでの時間が長くなるので、それだけ下流側担体でのHCの捕捉量を増大させることができる。一方、その間に触媒金属の温度が上昇して転化率が高くなるので、HC脱離時の処理効率も向上する。また、担体間に隙間を設けるとこの隙間部分でガス流れに乱れを生じる。この乱れは、排気ガスがHC吸着剤に接触する機会を増やすのでそれだけHCトラップ性能を向上させる。
【0006】
隙間を持たない連続したセル構造の触媒では、触媒担体の断面上でガスの流量分布および昇温性に偏りがあり、言い換えればセル毎にHCトラップ性能や転化率に偏りを生じるため排気浄化装置が本来有している性能を使いきることは難しい。これに対して隙間を設けた構成では前記乱流作用により担体の断面方向でのガス流量分布を均一化できるので制御性が向上し、排気浄化装置本来の性能を十分に発揮させることが可能となる。
【0007】
他方、前述のようにしてHC吸着剤および触媒金属の作用が促進されることから、所要の能力を有する排気浄化装置をより小型化することが可能となる。
【0008】
担体または隙間は多数を設けることにより前記効果をより高めることができ、また詳しくは実施形態として後述するが、複数の担体のガス流れ方向の寸法や、担体に担持させる触媒金属またはHC吸着剤の分布、層構造の設定に応じて固有の有益な特性を与えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による排気浄化装置を適用したエンジンシステムの一例を示している。図において1はエンジン、2はその吸気通路、3は排気通路である。4は排気通路3から排気ガスの一部を吸気通路2へと還流させるEGR通路、5は前記排気還流量を制御するEGR制御弁である。7は燃料噴射弁、8は点火プラグである。
【0010】
9〜11は排気通路3に介装された排気浄化装置である。これら3個の排気浄化装置9〜11は、基本的にはCO,HCの酸化機能とNOxの還元機能を併有する三元触媒であり、これらのうち何れかまたは全部はゼオライト等のHC吸着剤によりHCを一時的に捕捉しておく機能を備えたHCトラップ触媒として構成されている。
【0011】
12と13はそれぞれ最上流の排気浄化装置9の上流と下流にて排気ガスの空燃比もしくは酸素濃度を検出する排気ガスセンサ、14は中段の排気浄化装置10の触媒温度を検出する温度センサである。
【0012】
15はエンジン回転速度や吸入空気量などの運転状態信号に基づいて空燃比および点火時期などを制御するコントローラであり、CPUおよびその周辺装置からなるマイクロコンピュータにより構成されている。
【0013】
図2に、前記排気浄化装置9〜11およびその内部に収容される担体の詳細を示す。本発明では、基本的には図2に示したように排気のガス流れ方向(矢印方向)に沿って複数、この場合4個のセラミクス製ハニカム状担体21a〜21dを配設する。各担体21a〜21dはその長さが上流側に位置するものほど小となるように設定してあり、また各々の間には隙間g(g1〜g3)を設けている。各担体21a〜21dには、図4に示したように、それぞれのセル24の表面にゼオライトなどのHC吸着剤を含むHCトラップ層25と、Pt、Rh、Pd等の触媒金属を含む触媒金属層26とをコーティングにより形成してある。
【0014】
図中の34は触媒容器、35はセラミクスファイバーあるいはアルミナファイバーなどからなる耐熱マットである。担体21a〜21dはその外周部に巻回した耐熱マット35を介して触媒容器34内に固定してある。この実施形態では、隙間gの周縁部を担体21と同一の線膨張係数を有するリング状の充填材36で埋めてある。このように充填材36を設けることにより、隙間gを一定に維持できると共に、隙間gを抜けてきた排気によりマット35が風蝕されて摩耗する不具合を防止することができる。また、担体21と同一の線膨張係数を有する充填材36を用いることにより、担体21の強度を確保できる。
【0015】
前記構成を有する排気浄化装置により次のような効果が得られる。エンジン始動直後は未着火燃料や不完全燃焼により定常アイドル運転時に比較すると多くのHCが燃焼室から排出される。このHCは大部分が排気浄化装置のHCトラップ層25に捕捉され、その後HCトラップ層25の温度が150℃程度に達すると捕捉されたHCがHCトラップ層25から脱離を開始する。このとき排気に直接晒される触媒金属層26が300℃程度の活性温度に達していれば脱離したHCは触媒反応により酸化処理される。
【0016】
本発明では、複数の担体21a〜21dを隙間gを空けて配設したことにより、担体間の伝熱が抑制されるため、一体構造の担体に比較して装置全体の温度上昇が遅れ、それだけHCトラップ層25がHC脱離温度に達するまでの時間も長くなる。このことは担体に捕捉されるHC量を増大させるとともにHC脱離が開始されるまでの触媒金属層26の温度上昇量を大きくするのでHCの浄化性能も向上する。また、隙間gの部分を排気ガスが通過するときの乱流の作用によりセル表面のHC吸着剤がより有効に利用されるので、HCを捕捉する性能自体も一体構造のものより向上する。また、このようにHCの捕捉性能および触媒の転化効率が高められることにより、排気浄化装置を小型化することができる。
【0017】
特に、図4のようにセル24の下層側にHCトラップ層25を、上層側に触媒金属層26をそれぞれ積層した構成においては、隙間gを設けたことにより、HCトラップ層25がHC脱離温度に達するまでの時間を長くし、HC脱離が開始されるまでの触媒金属層26の温度上昇量を大きくし、さらに前記乱流の作用によりHCトラップ層25へのHC捕捉効果を確保しつつ、触媒金属層26の活性を均一にできるので高い浄化性能が発揮される。触媒金属層26で生じる反応熱は既述したように隙間gにより下流側への伝達が抑制されるので、下流側HCトラップ層25の温度上昇が遅くなりHC捕捉性能が向上する。触媒金属層26は隙間gで仕切られた担体ブロック毎の熱容量が小さいので排気ガスの流入に伴い上流側から順に活性化しHC脱離時の浄化性能を向上させる。
【0018】
複数の担体21a〜21dはそれぞれの長さを等しく設定してもよいが、この実施形態のように上流側のものほど短い構成とした場合には、前述した担体内の熱伝導の抑制とガスの乱流化をそれだけ上流側で行わせて、HCトラップ性能および転化効率をより高めることができる。また、上流側担体の熱容量が比較的小さくなり昇温しやすくなるので、上流側での触媒の早期活性が促される。このような作用は、例えば上流側担体のセル数を少なくしたりHCトラップ層25の厚さを小さくしたりすることなどによって担体の熱容量を小さくすることによっても得られる。
【0019】
担体および隙間を設ける数は、ガス流の乱流化と伝熱の抑制という観点からは多くした方が有効である。担体間の伝熱が隙間gにより抑制される作用はメタル担体であっても期待できるが、セラミクス担体はゼオライト等のHC吸着剤との相性が良く、コーティングの強度が高いという利点がある。
【0020】
HCの捕捉量を増やすためにHC吸着剤の担持量を増やすとセルの通路面積が小さくなりそれだけ排気抵抗が増大してしまう。この点、本発明では前述した乱流化および熱伝導抑制の効果によりHCトラップ性能が向上するのでセル密度を下げて排気抵抗の軽減を図ることも可能である。具体的には一般的な三元触媒のセル密度が900〔セル/平方インチ〕以上であるのに対して、本発明では300〔セル/平方インチ〕(=47〔セル/平方センチメートル〕)以下、少なくとも600〔セル/平方インチ〕(=93〔セル/平方センチメートル〕)以下にすることが可能である。前記セル密度の単位は担体横断面の面積1平方インチあたりのセル数であり、当業者による取引上の常用単位である。また、HC吸着剤の担持量は、例えばセル密度が300〔セル/平方インチ〕のとき350〔g/cf〕(=12.4[mg/cm ])程度、セル密度が600〔セル/平方インチ〕のとき250〔g/cf〕(=8.8[mg/cm ])程度とする。前記担持量の単位は触媒担体の見かけ上の容積1立方フィートあたりのグラム数であり、当業者による取引上の常用単位である。
【0021】
図3に、3個以上の担体を有する構成についての他の実施形態を示す。この場合、6個の担体21a〜21fのうち、最上流に位置する担体21aの長さをその下流側の担体21bよりも小さくすると共に、最下流に位置する担体21fの長さをその上流側の担体21eよりも小さくしている。担体21fはその長さを小さくする代わりに、上流側担体21eや21dに比較して熱容量を小さく設定したものとしてもよい。この実施形態によれば、最下流の担体21fが昇温しやすくなるので、担体下流部の温度が上昇しにくい特性を示す場合に、その昇温を促して転化効率を高められる。
【0022】
前記構成において、複数の担体のうちの下流側に位置するもの、例えば図2の担体21d、図4の担体21e〜21fについて、そのHC吸着剤または触媒金属の何れか一方または両方の担持量(重量または密度)を上流側の担体に比較して大きくした構成をとしてもよい。前記隙間gの断熱作用により下流側の担体ほど昇温しにくくなるので、下流側担体のHC吸着剤の担持量を増やすことによりそれだけHC捕捉量を効率的に増大させられると共に、HCの脱離タイミングを触媒活性化のタイミングに合致するように遅らせることができる。一方、担体の低温下により触媒金属については転化効率が低下傾向となるが、これは触媒金属の担持量を増やすことで補うことができる。
【0023】
図5〜図8は、HC吸着剤および触媒金属の層構造に関する他の実施形態である。図5は、HCトラップ層25に隣接してアルミナ等からなる断熱層29を均一な厚さに形成した実施形態である。断熱層29により、触媒金属層26からHCトラップ層25への伝熱量を低減できるので、触媒金属層26の昇温を早めつつHCトラップ量を増大して、浄化性能より向上させることができる。
【0024】
前記断熱層29を、図6に示したようにその厚さが担体上流部ほど大となるように形成することにより、排気熱と触媒反応とで昇温しやすい上流側HCトラップ層の温度上昇を抑制してHCトラップ性能をより高めることができる。
【0025】
図7は断熱層29を担体上流側にて触媒金属層26の表面に近接するように形成した実施形態である。この実施形態によれば、昇温の比較的早い上流部でのHCトラップ層25の熱容量を増大させて昇温を遅らせ、HCトラップ性能を高めることができる。
【0026】
図8は断熱層29を下流側にて担体表面に近接するように形成した実施形態である。この実施形態によれば、昇温の比較的遅い下流部での触媒金属層26の活性を早めて、HCトラップ性能とHC脱離後の浄化性能の向上という相反する性能をさらに改善することができる。
【0027】
前記図4〜図8の構成において、HCトラップ層25または触媒金属層26を互いに特性が異なる複数の層から構成するようにしてもよい。例えば、触媒金属層26については、表層側にPdを適用した場合には、深層側にはPd−Rh系、またはPt−Rh系、または比較的低密度のPd層とする。担体やHC吸着剤の特性による昇温性に応じてHC脱離タイミングまたは触媒金属の活性タイミングをより適切に制御することが可能となる。
【0028】
なお、以上の各図は隙間の形成態様や排気浄化装置の構造を説明するための図面であり、隙間の幅、ピッチなどは説明の便宜のために実際とは異なる寸法または比率で描いてある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による排気浄化装置を適用したエンジンシステムの一例を示す概略構成図。
【図2】本発明による排気浄化装置の一実施形態の縦断面図。
【図3】担体配列に関する他の実施形態の側面図。
【図4】前記担体のセル部詳細断面図。
【図5】担体に関する他の実施形態のセル部詳細断面図。
【図6】担体に関する他の実施形態のセル部詳細断面図。
【図7】担体に関する他の実施形態のセル部詳細断面図。
【図8】担体に関する他の実施形態のセル部詳細断面図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 吸気通路
3 排気通路
9〜11 排気浄化装置
21a〜21e ハニカム状担体
24 セル
25 HCトラップ層
26 触媒金属層
29 断熱層
34 触媒容器
g 隙間

Claims (18)

  1. エンジンから排出されるHCを含む排気を浄化する排気浄化装置であって、
    ゼオライトを含むHCトラップ層の表面に、Ptを含む触媒金属層をコーティングにより積層形成して担持させた複数の担体を、同一の触媒容器内にガス流れ方向に配設し、
    前記複数の担体間には、ガス流れに乱れを生じさせ、かつ担体間の伝熱を抑制する隙間を形成したことを特徴とする排気浄化装置。
  2. 前記複数の担体のうち、最上流に位置するものの長さをその下流に位置するものに比較して小とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  3. 前記複数の担体のうち、最上流に位置するものの熱容量をその下流に位置するものに比較して小とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  4. 前記担体を3個以上備え、かつ最下流に位置するものの長さをその上流に位置するものに比較して小とした請求項2または請求項3に記載の排気浄化装置。
  5. 前記担体を3個以上備え、かつ最下流に位置するものの熱容量をその上流に位置するものに比較して小とした請求項2または請求項3に記載の排気浄化装置。
  6. 前記複数の担体のうち、下流に位置するもののHC吸着剤の担持量を上流に位置するものに比較して大とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  7. 前記複数の担体のうち、下流に位置するものの触媒金属の担持量を上流に位置するものに比較して大とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  8. 前記複数の担体のうち、下流に位置するもののHC吸着剤と触媒金属の担持量を上流に位置するものに比較して大とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  9. 前記担体はセラミクスから構成した請求項1に記載の排気浄化装置。
  10. 前記HCトラップ層と触媒金属層との間に断熱層を形成した請求項1に記載の排気浄化装置。
  11. 前記断熱層は均一な厚さに形成した請求項10に記載の排気浄化装置。
  12. 前記断熱層は、上流側の厚さを下流側に比較して大とした請求項10に記載の排気浄化装置。
  13. 前記断熱層は、上流側ほど表層に近接するように形成した請求項10に記載の排気浄化装置。
  14. 前記断熱層は、下流側ほど担体表面に近接するように形成した請求項10に記載の排気浄化装置。
  15. 前記担体のセル密度は93〔セル/平方センチメートル〕以下である請求項1に記載の排気浄化装置。
  16. 前記複数の担体のうち、上流側に位置するもののセル密度を下流側に位置するものに比較して小とした請求項1に記載の排気浄化装置。
  17. 前記HC吸着剤のコーティング量は8.8[mg/cm ]以上である請求項1に記載の排気浄化装置。
  18. 前記担体は、その担体と同一の線膨張係数を有するリング状の充填材によって前記触媒容器内に固定される請求項1から17までのいずれか1つに記載の排気浄化装置。
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