JP4539809B2 - 排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は排気浄化装置に関し、特に、NOx吸蔵触媒と三元触媒とを有する排気浄化装置に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
排気浄化装置において、三元触媒は理論空燃比近傍の排気空燃比で浄化能力を発揮するものになっており、リーン空燃比運転中のエンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)を十分に浄化することはできず、このため、NOx排出量の低減にNOx吸蔵触媒を用いることがある。NOx吸蔵触媒は、酸化雰囲気で排ガス中のNOxを吸蔵し、吸着したNOxを還元雰囲気で窒素(N2)に還元するもので、一般に、NOx吸蔵触媒にはアルカリ金属やアルカリ土類金属がNOx吸蔵剤として添加されている。
【0003】
但し、NOx吸蔵触媒には高温での使用中にNOx吸蔵能力が低下するという問題があり、とくにアルカリ金属を添加したものではその様な問題が顕著に現れる。本願発明者らは、この問題が、高温での吸蔵剤の飛散やコージライト担体内への移動による吸蔵剤の量的な目減りに起因して生じるとの認識の下で、NOx吸蔵触媒にゼオライトなどの吸蔵剤移動抑制剤を添加して上記の問題を解消することを提案している(特開2001−129402号公報を参照のこと)。
【0004】
また、本願発明者らは、三元触媒へのNOx吸蔵剤の影響についても研究を進め、その結果、吸蔵剤の飛散により三元触媒の浄化活性が低下することが判明した。その理由は、第1には電子供与性の高い吸蔵剤たとえばアルカリ塩からの電子の放出により三元触媒の貴金属のCO、HC吸着作用が弱まることにあり、第2には吸蔵剤により貴金属活性面が覆われることにある。しかも、吸蔵性能の高い吸蔵剤ほど電子供与性が高く貴金属の吸着作用を低下させ、また、NOx触媒への吸蔵剤の添加量が増大するほど貴金属活性面が吸着剤により覆われ易くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
さて、リーン及びリッチ空燃比運転を含む各種エンジン運転状態において排ガス浄化を良好に行うことを企図して排気浄化装置をNOx吸蔵触媒とその下流に配された三元触媒とで構成することがある。この場合、上記の説明からわかるように、NOx吸蔵触媒から三元触媒へ飛散する吸蔵剤により三元触媒の触媒作用が弱まるおそれがある。しかも、特開2001−1290402号公報に記載のように吸蔵剤移動抑制剤をNOx吸蔵触媒に添加することによっては、NOx吸蔵触媒から飛散した吸蔵剤による三元触媒の浄化性能低下を十分に防止できないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吸蔵触媒から飛散した吸蔵剤による三元触媒の浄化性能低下を防止または抑制するようにした排気浄化装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つが吸蔵剤として添加された吸蔵触媒と、機関の排気通路において吸蔵触媒の下流側に設けられた三元触媒とを有し、アルカリトラップ機能を有する酸性物質を三元触媒に添加したことを特徴とする。
【0008】
吸蔵触媒に吸蔵剤として添加されたアルカリ金属やアルカリ土類金属は高温下で飛散し易く、飛散した吸蔵剤が三元触媒に到達すると、例えば吸蔵剤の電子供与作用により三元触媒の貴金属上へのCOやHCの吸着作用が弱化したり、吸蔵剤が貴金属活性面上を移動して表面を覆ってしまうなどの不都合を来すおそれがある。この点、本発明の三元触媒にはアルカリトラップ機能を有する酸性物質が添加されており、吸蔵触媒から飛散して来た吸蔵剤は酸性物質により保持され、これにより吸蔵剤による三元触媒の性能低下が効果的に防止または抑制される。
【0009】
請求項2に記載の発明では、三元触媒は三元触媒層と酸性物質を含む層とで構成され、酸性物質を含む層が三元触媒層より上層側に形成されていることを特徴とする。
排気通路内を流れる排気にのって吸蔵触媒から三元触媒へ飛散してきた吸着剤は三元触媒の上層側に到達し、この際、上層側に添加されている酸性物質により吸蔵剤が効率的に保持されて三元触媒層への侵入が防止または抑制され、吸蔵剤による三元触媒の三元性能の低下が効率的に防止または抑制される。
【0010】
請求項3に記載の発明は、三元触媒の上流側部分に酸性物質を多く添加したことを特徴とする。
吸蔵触媒から排気にのって飛散してきた吸蔵剤は一般には三元触媒の上流側部分を経て下流側部分へ至り、この際、吸蔵剤の多くは三元触媒の上流側部分に多く含まれる酸性物質により効率的に保持される。このため、三元触媒の上流側部分において三元触媒層への吸蔵剤の侵入が防止または抑制される一方、三元触媒の下流側部分に到達する吸蔵剤は少なく、従って、吸蔵剤による三元触媒の性能低下が全体として効率的に防止または抑制される。
【0011】
請求項4に記載の発明では、酸性物質は、吸蔵剤と反応して安定物質に変換する材料であることを特徴とする。
吸蔵触媒から飛散してきた吸蔵剤が三元触媒に到達すると、吸蔵剤と三元触媒に含まれる酸性物質とが反応して吸蔵剤は安定物質に変換され、従って、吸蔵剤による三元触媒の性能低下が確実に防止または抑制される。
【0012】
請求項5に記載の発明では、酸性物質は、シリカ(SiO2)、ゼオライト、リン(P)、チタニア(TiO2)及び珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)のうちの少なくとも一つを含む。
この種の酸性物質は工業的に入手し易く、従って、吸蔵剤を三元触媒に含まれる酸性物質で保持する本発明の排気浄化装置を安価に構成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態による排気浄化装置を説明する。
本実施形態の排気浄化装置は、内燃機関たとえば筒内噴射型ガソリンエンジンに搭載される。筒内噴射型エンジンは、その運転域に応じて混合気の空燃比を超リーン空燃比からリッチ空燃比にわたって変化させて、燃費及び排気特性を向上しつつ所要のエンジン出力を発生するもので、従来公知の如く構成されている。
【0014】
エンジンについて簡略に説明すると、図1に示すように、エンジン1のシリンダヘッド2には各気筒毎に点火プラグ4及び電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられ、燃料噴射弁6は、燃料を燃焼室8内に直接に噴射できるようになっている。
また、シリンダヘッド2には各気筒毎に吸気ポートが形成され、各吸気ポートが連通する吸気マニホールド10にはスロットル弁11が設けられている。参照符号11aは、スロットル開度を検出するスロットルセンサ11aを表す。また、シリンダヘッド2に各気筒毎に形成された排気ポートは排気マニホールド12に連通し、排気マニホールド12には排気管(排気通路)14が接続されている。
【0015】
本実施形態の排気浄化装置はNOx吸蔵触媒20と三元触媒30とを有し、三元触媒30は排気管14内においてNOx吸蔵触媒20の下流に配されている。
NOx吸蔵触媒20は、酸化雰囲気においてNOxを硝酸塩X−NO3として吸蔵する機能と主としてCOの存在する還元雰囲気中でNOxをN2(窒素)等に放出還元させる機能とを奏する。詳細な図示を省略するが、本実施形態のNOx吸蔵触媒20は、多数のセルからなるハニカム型のコージライト担体とその表面に形成されたNOx吸蔵触媒層とから構成されている。
【0016】
コージライト担体は、例えば、アルミナ源の粉末、シリカ源の粉末およびマグネシア源の粉末を、アルミナ、シリカ、マグネシアの割合がコージライト組成になるように混合したものを水に分散させ、その固形分をハニカム状に成形して焼成したものである。そして、このコージライト担体を、プラチナ(Pt)などの貴金属とアルカリ金属やアルカリ土類金属などのNOx吸蔵剤とを含むスラリー中に浸漬し、これを乾燥後に焼成することにより、NOx吸蔵触媒層がコージライト担体の表面に形成される。吸蔵剤は、カリウム(K)やバリウム(Ba)が代表的であるが、これらに限らず、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であれば如何なるものであってもよい。
【0017】
本実施形態の三元触媒30は、多数のセル(図2に一つのセルの四半部を示す)からなるハニカム型のコージライト担体31に三元触媒層32及び酸性物質層33を2層コートしたものであり、酸性物質層33は、三元触媒層32の表面すなわち三元触媒層32より上層(表層)側に形成されている。ここで、酸性物質層33とはアルカリトラップ機能を有する酸性物質が添加された層を指し、また、酸性物質のアルカリトラップ機能とは、NOx吸蔵触媒20から飛散して三元触媒30へ到達したNOx吸蔵剤を捕捉する機能をいう。
【0018】
酸性物質層33に添加される酸性物質は、図3に示すようなIV、V、VI族の遷移元素やIV、V、VI族の典型元素(Si、P、S、V、Cr、As、Nb、Mo、Wなど)を含むものであって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との親和性が大きいものが好ましい。なお、図3には上記元素とカリウムとの親和性を示す。
【0019】
より具体的には、酸性物質は、シリカ(SiO2)、ゼオライト、リン(P)、チタニア(TiO2)及び珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)からなる群から選択される少なくとも一つを含むものであって、好ましくは、吸蔵剤と反応して吸蔵剤を安定物質に変換する材料である。
珪素(Si)やタングステン(W)から成る酸性物質は、吸蔵剤としてのカリウムとの反応性が良い。
【0020】
また、酸性物質としてのゼオライトは吸蔵剤を固定する能力に優れる。すなわち、ゼオライトは、高温の水蒸気存在下においてイオン化された吸蔵剤たとえばカリウムをゼオライトの酸点のカチオン交換能によりイオンとして固定する。なお、ゼオライトのカチオン交換能がSiO2/AlO3比に反比例する一方、耐熱性がこれに比例するので、上記の比を適宜に設定して所要の吸蔵剤固定作用と耐熱性とを備えたゼオライトを得ることができる。
【0021】
また、珪素(Si)、タングステン(W)やリン(P)から成る酸性物質は、吸蔵剤としてのアルカリ塩が有する非常に高い電子供与性を抑制し、また、吸蔵剤と反応して吸蔵剤を安定物質に変換する。例えば、リンは吸蔵剤としてのカリウムと強く反応してカリウムを安定物質であるリン酸カリウムに変換する。すなわち、カリウムを安定化することによって電子供与性が抑制され、また、三元触媒層の貴金属活性面上で移動する性質が抑制されるため、三元触媒30の浄化性能に影響を及ぼすおそれが少ない。
【0022】
同様に、珪素はカリウムと強く反応してカリウム、珪素及び酸素の化合物である安定物質(ケイ酸カリウム(K2SiO3))に変換する。
以上を総合していえば、珪素やリンを含む酸性物質が特に好ましい。
上記構成の三元触媒30は例えば以下のように製造される。先ず、NOx吸蔵触媒20のコージライト担体と同様に三元触媒30のコージライト担体31を製作する。次に、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属と耐火性無機材料とを含むスラリー中にコージライト担体31を浸漬してこれを乾燥・焼成して、コージライト担体31の表面に三元触媒層32を形成する。次いで、三元触媒層32が形成されたコージライト担体31を、酸性物質を含む酸性酸化物のスラリー中に浸漬し、これを乾燥・焼成して、三元触媒層32の表面に酸性物質層33を形成する。コージライト担体31へ担持される三元触媒層32及び酸性物質層33の構成物質全体の担持量は触媒容量1リットルあたり例えば約200グラムであり、この場合、三元触媒30の浄化性能上、酸性物質の担持量を1〜100g/Lに設定することが好ましい。また、吸蔵剤による三元触媒30のアルカリ被毒の度合は、一般には、三元触媒30の上流側部分で大きいので、酸性物質を酸性物質層33の上流側部分に多く担持させることが好ましい。
【0023】
上述のように、本実施形態の排気浄化装置はNOx吸蔵触媒20と三元触媒30とを排気通路14内にこの順序で設けてなり、この排気浄化装置を搭載したエンジンは既述のように種々の空燃比で運転される。そして、リーン空燃比での運転中にエンジンから排出された排ガス中のNOxは、NOx吸蔵触媒20の吸蔵触媒層に分散された吸蔵剤の作用下で硝酸塩の形で吸蔵される。また、リッチ空燃比での運転中にNOx吸蔵触媒20から放出される硝酸塩は、三元触媒30の貴金属による触媒作用の下でCOなどと反応して窒素に還元される。また、ストイキ運転やリッチ運転中に発生するCO,HCは三元触媒30により浄化される。
【0024】
さて、エンジン運転に伴ってNOx吸蔵触媒20の温度が上昇すると、NOx吸蔵触媒20から飛散した吸蔵剤が三元触媒30に付着してその浄化活性を低下させるおそれがあるが、本実施形態の三元触媒30は、その表層側に酸性物質層33を備えて吸蔵剤による浄化活性低下を防止または抑制することができる。すなわち、酸性物質層33中に添加された酸性物質は、シリカ(SiO2)、ゼオライト、リン(P)、チタニア(TiO2)および珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)の少なくとも一つからなり、そのアルカリトラップ機能によりアルカリ金属やアルカリ土類金属である吸蔵剤を捕捉し、好ましくは、吸蔵剤と反応して吸蔵剤を電子供与性及び移動性向のない安定物質に変換する。この様に、NOx吸蔵触媒20から飛来した吸蔵剤が三元触媒30の酸性物質層33により保持され、好ましくは安定物質に変換されるので、吸蔵剤が三元触媒30の三元触媒層32内に侵入するおそれが少なく、吸蔵剤による三元触媒30の浄化活性低下が防止または抑制される。
【0025】
本願発明者らは、酸性物質層33の浄化活性低下防止効果を評価するための下記の実験を行った。
この実験にあたり、三元触媒層と酸性物質層としてのシリカ(SiO2)層とをこの順序でコージライト担体に担持してなる三元触媒を実施例として製作した。酸性物質層には触媒容量1リットルあたり15グラムのシリカを添加した。また、三元触媒層のみをコージライト担体に担持した三元触媒を比較例として製作した。次に、実機におけるNOx吸蔵触媒から三元触媒への吸蔵剤(ここではカリウム)の飛来を模するために、実施例に係る三元触媒および比較例に係る三元触媒の各々をカリウム溶液中に浸漬し、これにより三元触媒にカリウムを物理吸着によって担持させた。すなわち、各三元触媒をアルカリ被毒させた。ここでのアルカリ被毒の度合は実機におけるNOx吸蔵触媒から飛散する吸蔵剤(カリウム)によるアルカリ被毒の場合よりも大きいものと解される。
【0026】
次に、実施例に係る三元触媒を電気炉内に入れ、炉内温度を400℃まで上昇させてこの炉内温度に保持した。更に、電気炉の入口から出口に向かって空気と燃料との混合ガスを流しつつ、電気炉入口および出口のそれぞれにおけるガス中HC濃度を測定した。この濃度測定は、実機における排気空燃比に対応する混合気ガスの空気・燃料の比(A/F)を14.0ないし15.0の範囲で変化させつつ実施し、それぞれのA/FにおけるHC浄化率を電気炉入口及び出口での濃度測定値に基づいて算出した。比較例に係る三元触媒についても同様の測定を行い、測定値からHC浄化率を算出した。
【0027】
実施例および比較例に係る三元触媒によるHC浄化率の算出結果を図4に示す。図4から明らかなように、比較例に比べて実施例のものはA/Fが大きい領域(リーン空燃比領域)でのHC浄化率に特に優れる。この理由は、実施例の三元触媒では、シリカコート(酸性物質層)によりカリウムが捕捉されて三元触媒の貴金属活性に対するカリウムの悪影響が抑制されることにあると解される。既述のように、本実験における三元触媒のアルカリ被毒度合は実機の場合よりも大きいと考えられ、この実験結果は、三元触媒層をシリカ層(酸性物質層)でコーティングしてなる三元触媒が実用性に富むことを示している。
【0028】
さて、本発明の三元触媒はその表層側に酸性物質層が形成されており、この酸性物質層が、三元触媒のHCライトオフ性能に影響を及ぼすことが懸念される。
そこで、本願発明者らは、上記実験にいう実施例に係る三元触媒および比較例に係る三元触媒を用いて、酸性物質層(ここではシリカコート)がHCライトオフ性能に与える影響を評価するための実験を行った。
【0029】
この実験では、実施例の三元触媒を電気炉中に入れた後に、A/Fが14.5の混合ガスを炉中に流すと共に炉中温度を室温から400℃まで上昇させつつ、電気炉入口および出口におけるガス中HC濃度を複数の温度において測定し、各温度における入口及び出口でのHC濃度からHC浄化率を算出した。比較例の三元触媒についても同様の測定および算出を行った。図5に算出結果を示す。
【0030】
図5から分かるように、比較例のものに比べ、実施例の三元触媒は、270℃付近の温度領域におけるHC浄化特性の立ち上がりが僅かに緩慢であるが、300℃を上回る温度領域でのHC浄化特性の立ち上がりは急峻であり、従って、シリカコートにより三元触媒のHCライトオフ性能が低下するおそれはないとの結論を得た。
【0031】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では三元触媒層32と酸性物質層33を担体31に2層コートした三元触媒30を用いたが、これに代えて、図6に示すように、三元触媒30は、三元性能を奏する貴金属と酸性物質とを添加した触媒層34を担体31に担持したものでも良い。
【0032】
また、図7に示すように、三元触媒30を上流側部分301と下流側部分302とに領域分けし、上流側部分301のみを三元触媒層32と酸性物質層33との2層コートとしたり、三元性能を奏する貴金属と酸性物質とを添加した触媒層34を有するものとする一方、下流側部分302は通常の三元触媒層として構成したり、下流側部分302より上流側部分301の酸性物質含有量を多くする等して、三元触媒30の上流側部分301に酸性物質が多く添加されるようにしても良い。
【0033】
この場合、吸蔵触媒20から排気にのって飛散してきた吸蔵剤は一般には三元触媒30の上流側部分301を経て下流側部分302へ至り、この際、吸蔵剤の多くは三元触媒30の上流側部分301に多く含まれる酸性物質により効率的に保持される。このため、三元触媒30の上流側部分301において例えば三元触媒層32への吸蔵剤の侵入が防止または抑制される一方、三元触媒30の下流側部分302に到達する吸蔵剤は少なく、従って、吸蔵剤による三元触媒30の性能低下が全体として効率的に防止または抑制される。
【0034】
また、上記実施形態では、NOx吸蔵触媒や三元触媒の担体にハニカム型コージライト担体を用いたが、コージライト以外の材料からなる担体、例えばメタル担体を用いても良い。また、ハニカム型コージライト担体のセル形状は図2に示すものに限定されず、種々の形状に形成可能である。
【0035】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つが吸蔵剤として添加された吸蔵触媒と、機関の排気通路において吸蔵触媒の下流側に設けられた三元触媒とを有し、アルカリトラップ機能を有する酸性物質を三元触媒に添加したので、高温下で吸蔵触媒から飛散して来た吸蔵剤を酸性物質により保持することができ、これにより吸蔵剤による三元触媒の性能低下を効果的に防止または抑制することができる。
【0036】
請求項2に記載の発明は、三元触媒を三元触媒層と酸性物質を含む層とで構成し、酸性物質を含む層を三元触媒層より上層側に形成したので、吸蔵触媒から飛散して三元触媒の上層側に到達した吸蔵剤を、三元触媒の上層側に添加されている酸性物質により効率的に保持して三元触媒層への侵入を防止または抑制し、吸蔵剤による三元触媒の三元性能の低下を効率的に防止または抑制することができる。
【0037】
請求項3に記載の発明は、三元触媒の上流側部分に酸性物質を多く添加したので、吸蔵触媒から飛散してきた吸蔵剤の多くを三元触媒の上流側部分に多く含まれる酸性物質により効率的に保持することができ、吸蔵剤による三元触媒の性能低下を効率的に防止または抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、酸性物質が吸蔵剤と反応して安定物質に変換する材料であるので、吸蔵触媒から飛散してきた吸蔵剤を安定物質に変換することができ、吸蔵剤による三元触媒の性能低下を確実に防止または抑制することができる。
【0038】
請求項5に記載の発明は、酸性物質がシリカ(SiO2)、ゼオライト、リン(P)、チタニア(TiO2)及び珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)のうちの少なくとも一つを含むので、工業的に入手し易い酸性物質を用いて排気浄化装置を安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による排気浄化装置を搭載したエンジンを示す概略図である。
【図2】図1に示した三元触媒を構成する多数のセルの一つの四半部を示す部分拡大断面図である。
【図3】酸性物質とカリウムとの親和性を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例による三元触媒のHC浄化率を比較例のものと比較して示す図である。
【図5】本発明の実施例による三元触媒のHCライトオフ特性を比較例のものと比較して示す図である。
【図6】本発明の変形例による三元触媒を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明の他の変形例による三元触媒を示す概略図である。
【符号の説明】
20 NOx吸蔵触媒
30 三元触媒
31 コージライト担体
32 三元触媒層
33 酸性物質層
34 貴金属及び酸性物質を含む触媒層

Claims (5)

  1. 機関の排気通路に設けられアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも一つが吸蔵剤として添加された吸蔵触媒と、
    上記排気通路内で上記吸蔵触媒の下流側に設けられアルカリトラップ機能を有する酸性物質が添加された三元触媒と
    を備えることを特徴とする排気浄化装置。
  2. 上記三元触媒は、三元触媒層より上層側に上記酸性物質を含む層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
  3. 上記三元触媒の上流側部分に上記酸性物質が多く添加されていることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
  4. 上記酸性物質は、上記吸蔵剤と反応して安定物質に変換する材料であることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
  5. 上記酸性物質は、シリカ(SiO2)、ゼオライト、リン(P)、チタニア(TiO2)及び珪酸ジルコニウム(ZrSiO4)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
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