JP4052780B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に帯電防止性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
少なくとも二枚のガラス板の間に樹脂中間膜が挟着されてなる合わせガラスは、物体により衝撃を受けた際に、貫通しにくく、またガラスの破片が飛び散らず安全であるため、自動車、航空機、建築物などの窓ガラスに広く使用されている。
【0003】
この種の合わせガラスに用いられる樹脂中間膜のうち、可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜は、ガラスとの接着性に優れ、強靱な引張強度及び高い透明性を兼ね備えており、特に車輌の窓ガラスとして好適である。
【0004】
しかし、上記可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜は、表面抵抗が1013Ω/cm2 程度で一般に帯電しにくい方の樹脂であって、しかもガラス板の間に挟み込んで使用するため、特に帯電防止性能についてはあまり考慮されなかった。
【0005】
近年、品質に対する要求が厳しくなり、静電気による埃や異物等の付着が問題とされるようになり、優れた帯電防止性能を有する合わせガラス用中間膜が要望されている。
【0006】
そこで、従来の透明プラスチックに広く用いられているような帯電防止剤を中間膜に含有させることが考えられるが、このような帯電防止剤を含有させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜にあっては、ガラスとの接着性、透明性、耐久性等が損なわれるため、適当な組み合わせの帯電防止剤は見い出されていない。
【0007】
例えば、特開平7−223849号公報には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性帯電防止剤を含有させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜が開示されているが、特に、ガラスとの接着性や耐湿性の点で充分に満足のいくものではなく、改善の余地がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、帯電防止性に優れ、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも、合わせガラスの周縁部に剥離や白化を起こすことが少なく耐湿性に優れ、さらに、透明性、耐貫通性及びガラスの飛散防止性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、ブチラール化度62〜72モル%の可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、下記の一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部、下記の一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部及び下記の一般式(3)で表される化合物0.05〜3重量部が含有されていることを特徴とする合わせガラス用中間膜及びそれを用いた合わせガラスによって達成することができる。
R−O−(CH2 CH2 O)n H ……(1)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数)
R−O−(CH2 CH2 CH2 O)n H ……(2)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数)
R−O−(CH2 CH2 CH2 CH2 O)n H ……(3)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数)
【0010】
本発明において、中間膜を構成する樹脂として、従来の合わせガラス用中間膜に用いられているポリビニルブチラール樹脂が用いられる。このポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は、低くなると吸湿しやすくなって合わせガラスの周縁部に白化が起こりやすくなり、逆に高くなると中間膜の機械的強度が低下するので、62〜72モル%、好ましくは63.5〜70.0モル%とされる。なお、残存アセチル基量は中間膜の透明性、耐熱性、耐候性の点から5モル以下とするのが好ましい。
【0011】
また、上記ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度は、小さくなると得られる中間膜の耐貫通性能が劣り、逆に大きくなると得られる中間膜の耐衝撃強度が高くなりすぎるため、1000〜2500のものを用いるのが好ましい。
【0012】
このようなポリビニルブチラール樹脂は公知の合成方法で製造される。例えば、平均重合度1000〜2500のポリビニルアルコールを熱水に溶解し、得られる水溶液を0〜50℃に保持しておいて、これにブチルアルデヒドと酸触媒を加えてブチラール化反応を進行させ、次いで反応系の温度を上げて熟成して反応を完結させ、その後、中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルブチラール樹脂粉末を得る方法で製造することができる。
【0013】
上記ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるのもので、そのケン化度は、得られる中間膜の透明性、耐熱性、耐候性を良好にするために、95モル%以上が好ましい。なお、平均重合度は1000〜2500のものを用いるのが好ましい。
【0014】
こうして得られるポリビニルブチラール樹脂に可塑剤が含有され、可塑化ポリビニルブチラール樹脂とされる。可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノソエート、トリエチレングリコールジカプリレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキソエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジカプリレート等が好適である。
【0015】
その中でも、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含有するポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜は、低温柔軟性がよく、優れた予備圧着性が得られ、しかも作業環境や合わせ加工の際のトリムカット性に優れている。これ等の可塑剤は、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、一般に30〜50重量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0016】
しかして、本発明においては、上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、前記の一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部、前記の一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部及び前記の一般式(3)で表される化合物0.05〜3重量部が含有される。
【0017】
一般式(1)で表される化合物は、膜中で静電気(電荷)を分散、伝導させて帯電性を防止する効果を有する。ここで、炭化水素基Rの炭素数は、大きくなると膜表面へのブリードが起こり、ガラスとの接着性に悪影響を及ぼし、且つ帯電防止性能が低下するので、1〜25に限定される。また、nの値は、大きくなると膜の耐湿性が低下するので、1〜20に限定される。
【0018】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ドデシロキシジエチレングリコール、ドデシロキシトリエチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ペンチロキシヘキサエチレングリコール、3,3−ジプロピルブトキシテトラエチレングリコール、2,2−ジエチルブトキシテトラエチレングリコール、フェノキシヘキサエチレングリコール、1,5−ジエチルフェノキシオクタエチレングリコール等が挙げられる。これ等の化合物は単独で用いてもよく、いずれか2種以上を併用してもよい。
【0019】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、少なくなると膜の帯電防止性能が低下し、逆に多くなると膜の耐湿性が低下するので、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部とされる。
【0020】
また、上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物と相互作用して、その帯電防止性能を向上させる役割を担う。ここで、炭化水素基Rの炭素数は、大きくなると膜表面へのブリードが起こり、ガラスとの接着性に悪影響を及ぼし、且つ帯電防止性能が低下するので、1〜25に限定される。また、nの値は、大きくなると膜の耐湿性が低下するので、1〜20に限定される。
【0021】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、ドデシロキシトリプロピレングリコール、メトキシテトラプロピレングリコール、ペンチロキシヘキサプロピレングリコール、3,3−ジプロピルブトキシテトラプロピレングリコール、2,2−ジエチルブトキシテトラプロピレングリコール、フェノキシヘキサプロピレングリコール、1,5−ジエチルフェノキシオクタプロピレングリコール等が挙げられる。これ等の化合物は単独で用いてもよく、いずれか2種以上を併用してもよい。
【0022】
一般式(2)で表される化合物の含有量は、少なくなると膜の帯電防止性能が低下し、逆に多くなると膜の耐湿性が低下するので、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部とされる。
【0023】
また、一般式(3)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物と相互作用して、その帯電防止性能を向上させる役割を担う。ここで、炭化水素基Rの炭素数は、大きくなると膜表面へのブリードが起こり、ガラスとの接着性に悪影響を及ぼし、且つ帯電防止性能が低下するので、1〜25に限定される。また、nの値は、大きくなると膜の耐湿性が低下するので、1〜20に限定される。
【0024】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ドデシロキシテトラブチレングリコール、メトキシテトラブチレングリコール、ペンチロキシヘキサブチレングリコール、3,3−ジプロピルブトキシテトラブチレングリコール、2,2−ジエチルブトキシテトラブチレングリコール、フェノキシヘキサブチレングリコール、1,5−ジエチルフェノキシオクタブチレングリコール等が挙げられる。これ等の化合物は、単独で用いてもよく、いずれか2種以上を併用してもよい。
【0025】
一般式(3)で表される化合物の含有量は、少なくなると膜の帯電防止性能が低下し、逆に多くなると膜の耐湿性が低下するので、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、0.05〜3重量部とされる。
【0026】
こうして、本発明の合わせガラス用中間膜が得られる。なお、中間膜には、必要に応じて接着力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などの種々の公知の添加剤を適量含有させてもよい。
【0027】
特に、ガラスとの接着力を適度に調整するために、接着力調整剤を含有させる場合が多い。このような接着力調整剤としては、一般に酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、2−エチル酪酸マグネシウム等のモノカルボン酸又はジカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が用いられる。このような接着力調整剤は、一般に0.01〜1重量部の範囲で含有される。
【0028】
本発明の合わせガラス用中間膜は、従来と同様な方法で製造される。例えば、ポリビニルブチラール樹脂に所定量の可塑剤、一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物、必要に応じて接着力調整剤、その他の公知の添加剤を混合し、この混合物をミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物を押出機、カレンダーロール、プレス成形機等でシート状に成形することにより製造される。中間膜の厚さは、従来の中間膜と同程度で、例えば0.2〜3mmとされる。
【0029】
本発明の中間膜を用いて合わせガラスを製造するには、通常の合わせガラスの製法が採用される。例えば、少なくとも二枚の透明なガラス板の間に中間膜を挟み、この積層体をゴムバックに入れ、ゴムバッグを排気系に接続して吸引減圧しするか或いはロールにより圧着して予備接着し、次いでオートクレーブを用いるか或いはプレスを用いて本接着を行うことにより製造される。
【0030】
なお、上記ガラス板としては、無機ガラス板のみならず、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板などの有機ガラス板も使用することができる。また、合わせガラスの積層構成は、ガラス板/中間膜/ガラス板の三層構成のみならず、例えば、ガラス板/中間膜/ガラス板/中間膜/ガラス板のような多層構成とすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。
(実施例1〜3及び比較例1〜6)
<ポリビニルブチラール樹脂の合成>
攪拌装置付きの反応器に、イオン交換水2900重量部、平均重合度1700、ケン化度99.2モル%のポリビニルアルコール198重量部を供給し、攪拌しながら95℃に加熱して溶解した。この水溶液を30℃に冷却し、これに35%塩酸208重量部とn−ブチルアルデヒド152重量部を加え、次いで液温を2℃に下げてこの温度を保持して反応を進行させ、ポリビニルブチラール樹脂が析出した後、液温を30℃に昇温して5時間保持して熟成した。その後、重炭酸ナトリウム156重量部を加えて中和し、水洗及び乾燥を行って、実施例1に用いる粉末状のポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度69モル%、残存アセチル基0.8モル%、平均重合度1700)を得た。
同様な方法により表1、2に示すような、実施例2、3及び比較例1〜6に用いる粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。
【0032】
<合わせガラス用中間膜の作製>
上記各ポリビニルブチラール樹脂100重量部に、可塑剤(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート又はテトラエチレングリコールジヘプタノエート)39重量部、前記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物及び接着力調整剤(2−エチル酪酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム)を表1に示す割合で配合し、これをミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物をプレス成形機で150℃、9.8Mpa(100kgf/cm2 )の条件で30分間プレス成形し、10種類(実施例1〜3及び比較例1〜6)の合わせガラス用中間膜(厚さ0.8mm)を作製した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
<合わせガラスの作製>
上記各合わせガラス用中間膜を縦300mm×横300mmに裁断し、これを縦300mm×横300mm×厚さ2.5mmの二枚のフロートガラスの間に挟み、この挟着体を真空バッグに入れ真空度20Torr(20mmHg)で20分間保持し、真空にしたままオーブン内で90℃で30分間保持した。真空バッグから取り出してこれをオートクレーブ内で150℃、1.27Mpa(13kgf/cm2 )の条件で熱プレスして、10種類(実施例1〜3及び比較例1〜6)の透明な合わせガラスを得た。
【0036】
上記各合わせガラスについて、下記の方法でパンメル試験、耐湿性試験及び表面抵抗値の測定を行った。これ等の結果をまとめて表3、4に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
(1)パンメル試験(積水法)
合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度に16時間調整し、この合わせガラスの中央部(縦150mm×横150mmの部分)を頭部が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を、表5によってパンメル値(積水法)で示した。なお、初期値と50℃で4週間放置後の値を示した。
【0040】
【表5】
【0041】
パンメル値3.5〜5の範囲の合わせガラスが、耐貫通性及びガラスの飛散防止性が優れるので最も好ましい。パンメル値が3以下では接着力が低くなり、衝撃等によるガラスの飛散防止性が低下する。逆に、パンメル値が6以上になると接着力が高くなり、衝撃等による合わせガラスの耐貫通性が低下する。
【0042】
(2)耐湿性試験
合わせガラスを温度80℃、相対湿度95%の条件で2週間保管し、その後合わせガラスを取り出して直ぐに、端縁からの白化距離(mm)を測定した。
【0043】
(3)表面固有抵抗値
合わせガラス用中間膜を24時間デシケーター中で乾燥させ、その後合わせガラスを取り出して直ぐに、表面抵抗測定装置(東亜電波工業社製のDSM−8103)を用いて、表面固有抵抗値を測定した。
【0044】
【発明の効果】
上述の通り、ブチラール化度62〜72モル%の可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、前述の一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部、前述の一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部及び前述の一般式(3)で表される化合物0.05〜3重量部が含有されていることにより、帯電防止性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスが得られる。
【0045】
しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも、合わせガラスの周縁部に剥離や白化を起こすことが少なく耐湿性に優れる。さらに、透明性、耐貫通性及びガラスの飛散防止性に優れる。したがって、本発明で得られる合わせガラスは、水分や湿気の多い環境下でも問題なく使用することができる。
Claims (2)
- ブチラール化度62〜72モル%の可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる合わせガラス用中間膜であって、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、下記の一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部、下記の一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部及び下記の一般式(3)で表される化合物0.05〜3重量部が含有されていることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
R−O−(CH2 CH2 O)n H ……(1)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数)
R−O−(CH2 CH2 CH2 O)n H ……(2)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数)
R−O−(CH2 CH2 CH2 CH2 O)n H ……(3)
(Rは炭素数1〜25の炭化水素基、nは1〜20の整数) - 少なくとも二枚のガラス板の間に、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜が挟着されていることを特徴とする合わせガラス。
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