JP4052769B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、合わせガラス用中間膜及びこの中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、少なくとも一対のガラス板の間に、合わせガラス用中間膜が挟着されてなる合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損しても、ガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車のような車輌、航空機、建築物等の窓ガラス等に広く使用されている。このような合わせガラスに用いられる中間膜としては、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂からなる中間膜が、ガラスとの優れた接着性、強靭な引張強度、及び高い透明性を兼ね備えており、特に、自動車等の車輌の窓ガラス等として好適に用いられる。
【0003】
近年、中間膜の品質に対する要求が厳しく、静電気によるほこりや異物等の中間膜への付着等が問題となり、優れた帯電防止性能を有する合わせガラス用中間膜が要望されてきている。
【0004】
しかし、上記可塑化ポリビニルブチラール樹脂からなる合わせガラス用中間膜は、表面抵抗が1013Ω/cm2 程度であり、一般に帯電しにくく、また、ガラス板の間に挟着されて使用されるために、帯電防止性能について考慮されることは少なかった。
【0005】
一方、従来から透明プラスチックに広く用いられている帯電防止剤による帯電防止の方法を、このような合わせガラス用中間膜に適用すると、中間膜とガラスとの接着性や、透明性、耐久性等が損なわれるため、適当な組み合わせが見い出されていなかった。
【0006】
上記の問題点を解決したものとして、例えば、特開平7−223849号公報には、非イオン系帯電防止剤が練り込まれているか、又は塗布されている合わせガラス用中間膜が開示されているが、耐湿性、接着性等の中間膜の基本物性に悪影響を与える可能性が大きいという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決するため、透明性、耐光性、耐候性、耐衝撃性、接着性等の合わせガラス用中間膜として必要な基本性能を損なうことなく、且つ、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周縁部に剥離や白化を起こすことが少なく、さらに帯電防止性に優れた合わせガラスを得るに適する合わせガラス用中間膜及びこの中間膜を用いた合わせガラスを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(以下、発明1という)による合わせガラス用中間膜は、ブチラール化度が62〜72モル% のポリビニルブチラール樹脂(以下、PVBという)100重量部、下記一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部及び下記一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部とを含有することを特徴とする。
R−O−( CH2 CH2 O) n H (1)
(式中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基、n は1〜20の整数を示す)
R−O−( CH2 CH2 CH2 O) n H (2)
(式中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基、n は1〜20の整数を示す)
【0009】
請求項2に記載の発明(以下、発明2という)による合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に、発明1による合わせガラス用中間膜(以下、単に中間膜という)を介在させ、一体化させてなることを特徴とする。
【0010】
発明1による中間膜において用いられるPVBとしては、ブチラール化度が62〜72モル%であることが必要であり、63.5〜70モル%であることが好ましい。ブチラール化度が62モル%未満では、得られる中間膜の吸水性が上がるため合わせガラス周縁部に白化現象を起こし、逆に、ブチラール化度が72モル%を超えると、得られる中間膜の機械的強度が不十分となる。
【0011】
上記PVBの製造方法としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVAという)を熱水に溶解し、得られた水溶液を10〜20℃に保持しておいて、所要のブチルアルデヒドと酸触媒とを加えてアセタール化反応を進行させ、次いで温度を70℃に昇温して保持し反応を完結させた後、中和、水洗及び乾燥を行ってPVB粉末を得る方法等が挙げられる。
【0012】
上記PVAとしては、平均重合度1000〜2500のものが好ましい。この平均重合度が1000未満では、得られる合わせガラスの耐貫通性等が低下することがあり、逆に、平均重合度が2500を超えると、中間膜の製造が困難となることがある。
【0013】
また、上記PVAはポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるもので、その鹸化度は95モル%以上であるものが好ましい。鹸化度が95モル%未満であると、得られる中間膜の透明性、耐熱性、耐光性、耐候性等が不十分となることがある。
【0014】
発明1による中間膜において用いられる一般式(1)の化合物は、中間膜中で静電気即ち電荷を分散、伝導させて帯電を防止する効果を有しており、式(1)中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基であることが必要であり、上記Rの炭素数が25を超えると、中間膜表面に当該化合物のブリード現象が起こるため、得られる中間膜の接着力に悪影響を及ぼすとともに、帯電防止効果が低下する。また、式(1)中、nは1〜20の整数であることが必要であり、上記nが20を超える整数であると、得られる中間膜の耐湿性が低下する。
【0015】
上記一般式(1)の化合物としては、特に限定されず、例えば、ドデシロキシジエチレングリコール、ドデシロキシトリエチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ペンチロキシヘキサエチレングリコール、3,3−ジプロピルブトキシテトラエチレングリコール、2,2−ジエチルブトキシテトラエチレングリコール、フェノキシヘキサエチレングリコール、1,5−ジエチルフェノキシオクタエチレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0016】
また、発明1による中間膜においては、上記一般式(1)の化合物が0.05〜3重量部含有されていることが必要である。上記一般式(1)の化合物の含有量が0.05重量部未満では、得られる中間膜の帯電防止効果が低下し、逆に、3重量部を超えると、得られる中間膜の耐湿性が低下する。
【0017】
発明1による中間膜において用いられる一般式(2)の化合物は、上記一般式(1)の化合物と相互作用し、その帯電防止効果を増大させる役割を持ち、式(2)中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基であることが必要であり、上記Rの炭素数が25を超えると、中間膜表面に当該化合物のブリード現象が起こるため、得られる中間膜の接着力に悪影響を及ぼすとともに、帯電防止効果が低下する。また、式(2)中、nは1〜20の整数であることが必要であり、上記nが20を超える整数であると、得られる中間膜の耐湿性が低下する。
【0018】
上記一般式(2)の化合物としては、特に限定されず、例えば、ドデシロキシトリプロピレングリコール、メトキシテトラプロピレングリコール、ペンチロキシヘキサプロピレングリコール、3,3−ジプロピルブトキシテトラプロピレングリコール、2,2−ジエチルブトキシテトラプロピレングリコール、フェノキシヘキサプロピレングリコール、1,5−ジエチルフェノキシオクタプロピレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0019】
また、発明1による中間膜においては、上記一般式(2)の化合物が0.05〜3重量部含有されていることが必要である。上記一般式(2)の化合物の含有量が0.05重量部未満では、得られる中間膜の帯電防止効果が低下し、逆に、3重量部を超えると、得られる中間膜の耐湿性が低下する。
【0020】
発明1による中間膜において用いられる可塑剤としては、特に限定されず、一般に中間膜に用いられるもの、例えば、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート(3GH)、ジヘキシルアジペート(DHA)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(4GO)等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0021】
上記可塑剤の添加量としては、PVB100重量部に対して20〜60重量部であるのが好ましい。
【0022】
また、発明1による中間膜において用いられる接着力調整剤としては、特に限定されず、例えば、酢酸マグネシウム(C2 Mg)、プロピオン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸(酪酸)マグネシウム(C6 Mg)、2−エチルヘキサン酸マグネシウム等のカルボン酸マグネシウム塩、酢酸カリウム(C2 K)等のカルボン酸カリウム塩等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられる。
【0023】
上記接着力調整剤の添加量としては、PVB100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.2重量部がより好ましい。接着力調整剤の添加量が0.001重量部未満では、高湿度雰囲気下で合わせガラス周辺部の接着力が低下することがあり、逆に、0.5重量部を超えると、ガラスと中間膜との接着力が低くなることがあり、また中間膜の透明性が劣ることがある。
【0024】
さらに、発明1の中間膜には、必要に応じて、中間膜の劣化を防止するための安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を用いることができ、これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0025】
安定剤としては、特に限定されず、例えば、旭電化工業社製の商品名アデカスタブLA−57のようなヒンダードアミン系安定剤等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0026】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、t−ブチルヒドロキシトルエン(例えば、住友化学工業社製、商品名スミライザーBHT)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’−5’−ジt−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(例えば、チバガイギー社製、商品名イルガノックス1010)等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0027】
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、チバガイギー社製、商品名チヌビンP)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジt−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、チバガイギー社製、商品名チヌビン320)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(例えば、チバガイギー社製、商品名チヌビン326)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジアミルフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、チバガイギー社製、商品名チヌビン328)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や旭電化工業社製、商品名アデカスタブLA−57のようなヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは、単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
【0028】
発明1による中間膜の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記PVBに所定量の可塑剤、接着力調整剤、一般式(1)の化合物及び一般式(2)の化合物と、必要に応じて各種添加剤の1種もしくは2種以上とを配合し、この配合物をミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物をプレス成形機、カレンダーロール、押し出し機等でシート状に成形することにより中間膜として得ることができる。
【0029】
次に、発明2による合わせガラスは、少なくとも一対のガラス間に、発明1による合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させてなることを特徴とする。
【0030】
上記ガラスとしては、特に限定されず、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、熱線吸収板ガラス、着色板ガラス等の無機ガラス又はポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板等の有機ガラスが挙げられる。
【0031】
発明2による合わせガラスの製造方法としては、一般に用いられている方法が採用できるが、例えば、発明1の中間膜を二枚のフロートガラスにて挟着し、この挟着体をゴムバックに入れて、真空にしたままオーブン内で90℃で30分間保持し、この挟着体をゴムバックから取り出した後、オートクレーブ内で圧力1.3MPa、温度140℃にて熱圧プレスし、一体化させることにより透明な合わせガラスを得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0033】
(実施例1)
(1)PVBの合成
イオン交換水2900部、平均重合度1700で鹸化度99.2モル%のPVA198部(ビニルアルコール4.5モル相当量)を撹拌装置付き反応器に供給し、撹拌しながら95℃に加熱して溶解した。この溶液を30℃に冷却し、35重量%塩酸208部(2.1モル)とn−ブチルアルデヒド152部(2.1モル)を加え、次いで液温を2℃に下げてこの温度を保持しながら、PVBが析出した後、液温を30℃に昇温して5時間保持した。その後、炭酸水素ナトリウム156部(1.8モル)を加えて中和し、水洗及び乾燥を行いブチラール化度69モル%のPVB粉末を得た。
【0034】
(2)中間膜の調製
(1)で得られたPVB100部、可塑剤として3GOを39部、接着力調整剤としてC6 Mgを0.02部とC2 Mgを0.01部、ドデシロキシジエチレングリコール0.5部及びドデシロキシトリプロピレングリコール0.8部をミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物を、プレス成形機にて150℃、9.8MPaの条件下で30分間プレス成形し、厚さ0.8mmの中間膜を得た。
【0035】
(3)合わせガラスの調製
(2)で得られた中間膜を30cm×30cm、厚さ2.5mmの2枚のフロートガラス間に挟着し、この挟着体をゴムバックに入れて真空度2.7kPaで20分間保持した後、真空にしたままの状態でオーブン内に入れ、90℃で30分間保持した。ゴムバックから取り出した挟着体を、オートクレーブ内で圧力1.3MPa、温度150℃の条件下にて熱圧プレスして合わせガラスを得た。
【0036】
(4)評価
(3)で得られた合わせガラスの性能(パンメル値、耐湿性)及び(2)で得られた中間膜の性能(表面抵抗)を以下の方法で評価した。その結果は表3に示すとおりであった。
【0037】
1.パンメル値
−18±0.6℃の温度に16時間放置して調温した合わせガラスを、頭部が0.45kgのハンマーで叩いて、ガラスの粒子径が6mm以下になるまで粉砕した。次いで、ガラスが部分剥離した後の中間膜の露出度を予めグレード付けした限度見本で判定し、その結果を下記表1に示す判定基準に従ってパンメル値として表した。尚、パンメル値は、初期及び合わせガラスを50℃で4週間放置した後の2条件について測定した。上記パンメル値が大きいほど中間膜とガラスとの接着力が大きく、パンメル値が小さいほど中間膜とガラスとの接着力が小さい。
【0038】
【表1】
【0039】
2.耐湿性
合わせガラスを80℃、相対湿度95%の雰囲気下に2週間放置した後、取り出して直ちに、合わせガラス周縁端部からの白化距離(mm)を測定した。
【0040】
3.表面抵抗
得られた中間膜を、24時間デシケーター中で乾燥させた後、表面抵抗を表面抵抗測定装置( 東亜電波工業社製、DSM−8103)で測定した。表面抵抗が1.0×1013Ω/cm2 未満を良好とし、それ以上を不良とした。
【0041】
(実施例2、3及び比較例1〜4)
中間膜の調製において、表2に示すような種類と組成のPVB、可塑剤、接着力調製剤、一般式(1)の化合物及び一般式(2)の化合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間膜及び合わせガラスを得た。
【0042】
実施例2、3及び比較例1〜4で得られた6種類の合わせガラス及び中間膜の性能を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表3に示すとおりであった。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表3から明らかなように、本発明による実施例の合わせガラスは、初期及び経時後のいずれにおいても適正なパンメル値を持ち、接着性が安定し、耐湿性も優れていた。さらに、本発明による実施例の中間膜は、帯電防止性にも優れていた。
【0046】
これに対して、一般式(1)の化合物及び一般式(2)の化合物を含有しない比較例1の中間膜は、表面抵抗が高く、帯電防止性に劣っていた。また、上記式(2)の化合物を含有しない比較例2の中間膜もまた、表面抵抗が高く、帯電防止性に劣っていた。
【0047】
更に、式(1)中のnが20を超える整数の化合物を用いた比較例3の中間膜を用いた合わせガラスは、耐湿性に劣り、式(2)中のRが炭素数25を超える炭化水素基で、且つnが20を超える整数の化合物を用いた比較例4の中間膜を用いた合わせガラス及び中間膜は、経時後のパンメル値が低下し、接着性が不安定であった。
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の中間膜は、透明性、耐光性、耐候性、耐衝撃性、耐貫通性等の合わせガラス用中間膜としての基本的な性能を満足し、且つ、接着性が安定し、耐湿性にも優れ、また、帯電防止性にも優れている。従って、本発明の中間膜及び合わせガラスは、自動車等の車両や建築物等の窓ガラス用等として好適に用いられる。
Claims (2)
- ブチラール化度が62〜72モル% のポリビニルブチラール樹脂100重量部、下記一般式(1)で表される化合物0.05〜3重量部及び下記一般式(2)で表される化合物0.05〜3重量部とを含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。
R−O−( CH2 CH2 O) n H (1)
(式中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基、n は1〜20の整数を示す)
R−O−( CH2 CH2 CH2 O) n H (2)
(式中、Rは炭素数1〜25の炭化水素基、n は1〜20の整数を示す) - 少なくとも一対のガラス間に、請求項1記載の合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させてなることを特徴とする合わせガラス。
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