JP4052731B2 - 電子銃 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム等の荷電粒子ビームを用いた露光装置に係り、特に、電子ビーム露光装置において被露光試料(特定的にはウエハ)上にパターンを描画するのに用いる電子ビームを発生する電子銃に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子ビーム露光装置として、可変矩形露光装置やブロック露光装置、ブランキング・アパーチャ・アレイ(BAA)露光装置等が知られている。これらの露光装置においては、電子ビームの断面形状を成形するために矩形状の開口部、繰り返し図形の単位となる任意形状の開口部、マトリクス状に配置された複数の開口部がそれぞれ形成されたマスク或いはブロックマスクが配設されており、各々マスク上の開口部の所望の範囲を照射して電子ビームを成形することで所望のパターンをウエハ上に描画するようにしている。この際、ビーム照射の均一性は、描画されるパターンの線幅に大きな影響を与える。例えば、0.1μm幅のラインを描画する場合の許容線幅精度を0.01μmとすれば、ビーム照射の均一性は数%の変動しか許されない。従って、均一な照射と見なすことができる照射範囲は狭くなり、そのために露光領域が縮小されることになり、スループットを悪化させる要因になっていた。
【0003】
図5には従来技術に係る3極電子銃から放出されるビームの照射の様子が模式的に示される。
図中、Cは負の高加速電圧を印加されて熱電子(エミッション電流IEすなわち電子ビームEB)を放出するカソード、G1はカソードCに対し逆バイアスとなる電圧を印加されて電子ビームEBのクロスオーバ像XO’を結像させるグリッド、AはグリッドG1を通過した電子ビームEBが加速されて集められるアノードを示す。また、各電極を絶縁するために高電圧用絶縁碍子(図示せず)が設けられており、カソードCとグリッドG1はこの絶縁碍子の高圧側に配置され、アノードAは当該絶縁碍子の低圧側(一般にはグランドに接続されている)に配置されている。また、11はアノードAの下流側に配置された矩形アパーチャ又はスリットを有するマスク、12は描画パターンの開口部が形成されたブロックマスク、及び電子ビームの収束、偏向、偏向補正等を行う電子レンズ、偏向器、コイル等を含む手段を模式的に示したものである。13はブロックマスク等を含む手段12の下流側に配置されたラウンドアパーチャを有するマスクを示す。
【0004】
図示の構成において、3極電子銃のカソードCから放出されたエミッション電流IE(すなわち電子ビームEB)は、グリッドG1が作る電界によってクロスオーバ像XO’を形成した後、そのままアノードAの開口部を通過し、矩形アパーチャを有するマスク11上に照射される。マスク11上に照射された電子ビームは、その一部が矩形アパーチャの周囲の領域(ハッチングで示される部分)で遮断され、残りの部分が矩形アパーチャを通過する。矩形アパーチャを通過した電子ビームは、電子レンズ、偏向器、コイル等12により適宜収束、偏向、偏向補正等が行われた後、ラウンドアパーチャを有するマスク13上に照射される。このラウンドアパーチャを通過した電子ビームは、主偏向器や副偏向器等(図示せず)により適宜偏向が行われた後、ウエハ上の所望の位置に露光される(つまりパターンが描画される)。
【0005】
このような3極電子銃に対し、別の形態としてアパーチャカット電子銃が知られている。このアパーチャカット電子銃は、基本的には3極電子銃と同様の構成を有しており、グリッド(すなわちウエーネルト)とアノードの間にアパーチャを有する第2のグリッドが設けられている点で3極電子銃と異なっている。
従来知られているアパーチャカット電子銃においては、ウエーネルト(=グリッド)は高電圧用絶縁碍子の高圧側に配置され、第2のグリッドは当該絶縁碍子の低圧側(一般にはグランドに接続されている)に配置されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の3極電子銃の構成では、エミッション電流IEがそのままアノードAの開口部を通過するため、矩形アパーチャを有するマスク11の受ける熱負荷が相対的に大きくなり、そのためにマスク11における矩形アパーチャの周囲の領域が溶融したり、或いは溶融まで至らずともクラックの発生、金属被覆膜の剥離等の損傷を受けるといった問題があった。また、マスク11の下流側に配置されたブロックマスク等を含む手段12においても、矩形アパーチャを通過してきた電子ビームにより、ブロックマスクにおける描画パターンの開口部の周囲の領域(ビーム遮断部)の受けるエネルギーが相対的に大きいため、当該ビーム遮断部の領域が損傷を受けたり、或いは溶融したりするといった問題があった。さらに、その下流側に配置されたラウンドアパーチャを有するマスク13上では、図5にLB’のハッチングで示すように無駄な電子ビームが多くなるといった不利があった。
【0007】
また、従来の3極電子銃の場合、エミッション電流IEを大きくすることでビーム照射の均一性を改善することはできるが、エミッション電流IEの増大に応じてブロックマスクのビーム遮断部の受けるエネルギーも大きくなるため、当該ビーム遮断部の領域が損傷を受けたり、或いは溶融したりするといった問題が発生し、結局、均一なビーム照射を実現することは極めて困難であった。
【0008】
さらに、典型的な3極電子銃においては、カソードに使用するLaB6 単結晶のチップは、ヒータで加熱することで1500℃近傍まで温度が上昇する。従って、その加熱されたカソードを保持する材料は、高温に耐えるもので、しかも熱的に絶縁され、さらに加熱電流を流すため周辺部分から電気的に絶縁されている必要がある。そのため、ヒータとカソードを組み立てる際には構造上の工夫が必要であり、ビーム放出部であるチップ先端位置を精度良く位置決めすることは、非常に困難であった。特に、カソードのウエーネルト(=グリッド)に対する相対位置は、電子ビームの放出条件を大きく変えることになり、取付けの度に位置の再現性が無く、クロスオーバ条件が変化する。つまり、従来の3極電子銃は、取付けの精度が影響を受け易いといった問題があった。
【0009】
実際のチップ先端サイズは直径数十μm程度で、ウエーネルト(=グリッド)のアパーチャのサイズは直径1mm程度であり、非常に小さなもの同士の位置合わせであるため、僅かな差でも放出される電子ビームに大きく影響することになる。このような状況において、3極電子銃から放出される電子ビームには様々な必要条件があり、3つのパラメータで全てを同時に満足することはできない。満足しなければならない必要条件は、以下の▲1▼〜▲3▼である。
【0010】
▲1▼ エミッション電流IEの大きさ(マスク11の矩形アパーチャ周囲の領域の損傷)
▲2▼ ビーム照射の均一性
▲3▼ クロスオーバ像の大きさ(マスク13のラウンドアパーチャ上のクロスオーバ像の大きさ)
ここに、3極のうちカソード電極とアノード電極に印加される各電圧は固定値であるため、自由に電圧を変えられる電極はグリッド電極(ウエーネルト)1極のみである。従って、1つのパラメータで3つの条件を同時に満たすことは原理的に困難であり、計算上又は実験上理想に近い寸法で部品を設計し電圧を印加することで、エミッション電流IEの大きさを所望の値になるよう、グリッド電極の印加電圧を制御することしかできなかった。すなわち、上記の▲2▼及び▲3▼の条件はその時その時で変化することになる。言い換えると、いずれか1つの条件を正確に満たすと、その他の条件は、組み立て精度や部品精度のずれ分だけ理想から外れることになる。クロスオーバ像の大きさが大きくなることも大きな問題である。各マスクを照射するビームのうち、結果的にマスク13のラウンドアパーチャで遮断されるビームの量が多いと、無駄な電子ビーム(図5にLB’のハッチングで示す部分)がマスクを照射していることになる。
【0011】
例えば、ラウンドアパーチャで遮断される電流と該アパーチャを通過する電流の大きさの比が1:1の場合、マスク上の不要なビーム照射が2倍あるということになる。この場合、ウエハ上の電流密度、例えば30A/cm2 を実現するためには、60A/cm2 相当のビーム照射を行うことになり、上述した溶融問題を一層顕著にすることになる。
【0012】
他方、従来知られているアパーチャカット電子銃の構成では、第1のグリッド(=ウエーネルト)が高電圧用絶縁碍子の高圧側に配置され、第2のグリッドが当該絶縁碍子の低圧側(=グランド側)に配置されているため、以下の問題があった。
先ず、最終的に加速された電子ビームの一部はラウンドアパーチャで遮断されることになるため、当該アパーチャのエネルギー負荷が大きくなり、アパーチャの周囲の領域が溶融したり、或いは溶融まで至らずともクラックの発生等の損傷を受けるといった問題があった。また、電子銃直下に作られるクロスオーバ像をレンズを用いて再結像しなければならないため、電子銃の規模が比較的大型となり、また電子ビームの光路が長くなってクロスオーバ像を2回結像することになるため、クーロン相互作用による収差を増大させることになるといった問題があった。さらに、アパーチャのエネルギー負荷を減らすためには負の電圧を印加することが考えられるが、この場合には、カソードと同じ程度の絶縁レベルを持つ碍子を用いる必要があり、電子銃の規模が更に大型となる。
【0013】
本発明は、上述した従来技術における課題に鑑み創作されたもので、マスクに形成された描画パターンの開口部や矩形アパーチャ等の周囲の領域が受ける損傷を最小限にとどめ、ひいては当該領域の溶融の問題を解消することができる電子銃を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明によれば、負の高加速電圧を印加されて電子ビームを放出するカソードと、該カソードに対し逆バイアスとなる電圧を印加されて前記電子ビームのクロスオーバ像を結像させる第1のグリッドと、該第1のグリッドを通過した電子ビームを集めるアノードを具備し、前記カソード及び前記第1のグリッドを高電圧用絶縁碍子の高圧側に配置し、前記アノードを前記高電圧用絶縁碍子の低圧側に配置してなる電子銃において、前記高電圧用絶縁碍子の高圧側で且つ前記第1のグリッドと前記アノードの間に電子ビームの通過量を制限するアパーチャを有する第2のグリッドを配置し、前記カソードに対し順バイアスとなる電圧を該第2のグリッドに印加し、該第2のグリッドのアパーチャの位置に前記クロスオーバ像を結像させるようにしたことを特徴とする電子銃が提供される。
【0015】
本発明に係る電子銃の構成によれば、第2のグリッドのアパーチャの位置にクロスオーバ像を結像させる(つまり第2のグリッドのアパーチャとクロスオーバ像のアライメントを行う)ようにしているので、たとえエミッション電流(つまりカソードから放出される電子ビーム)を大きくしても、第2のグリッドのアパーチャにより、ガウス分布特性を持つ電子ビームのうち不要な裾の部分のビームが遮断されるため、その下流側に配置された各マスク(矩形アパーチャを有するマスク、描画パターンの開口部が形成されたブロックマスク等)を照射するビームの量を相対的に抑制することができる。つまり、各マスク上で描画パターンの開口部や矩形アパーチャ等の周囲の領域が受ける熱エネルギーを相対的に減少させることができる。これによって、当該領域が受ける損傷を最小限にとどめることができ、ひいては溶融の問題の解消に大いに寄与することができる。
【0016】
また、本発明に係る電子銃において、カソードから第2のグリッドのアパーチャに向けて放出される電子ビームを偏向させるための電磁偏向器を更に具備してもよい。この場合、電磁偏向器は、高電圧用絶縁碍子を介してカソード並びに第1及び第2のグリッドから絶縁された場所で、電子ビームの流れの方向に対してカソードの配置位置とほぼ一致する位置に配置されることが望ましい。
【0017】
かかる電磁偏向器を設けることにより、カソードから第2のグリッドのアパーチャに向けて放出される電子ビームを磁場によって容易に偏向させることができるので、カソードの先端と第2のグリッドのアパーチャとをメカ的に高精度にアライメントすることが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1には本発明の一実施形態に係る4極電子銃の電極部の構造が一部断面図の形で模式的に示され、図2にはその4極電子銃から放出されるビームの照射の様子が模式的に示される。
図1及び図2において、参照符号C、G1、A、IE、EB、11、12及び13で示される要素は、それぞれ図5に用いられた同じ参照符号で示される要素に対応しており、その説明については省略する。
【0019】
本実施形態に係る4極電子銃の構成上の特徴は、▲1▼第1のグリッドG1とアノードAの間に電子ビームEBの通過量を制限するアパーチャAPを有する第2のグリッドG2を配置したこと(図1及び図2参照)、▲2▼第2のグリッドG2を、カソードC及び第1のグリッドG1と同様に、高電圧用絶縁碍子(図1に参照符号1で示す要素)の高圧側に配置したこと、▲3▼第2のグリッドG2に、カソードCの印加電圧(すなわち負の高加速電圧)VCに対し順バイアスとなる電圧VG2(>VC)を印加するようにしたこと(図2参照)、▲4▼第2のグリッドG2のアパーチャAPの位置にクロスオーバ像XOを結像させるようにしたこと(図2参照)、である。本実施形態では、カソードCの先端の径は例えば数十μmに選定され、第2のグリッドG2のアパーチャAPの径は例えば60μmに選定されている。
【0020】
また、更なる構成上の特徴は、カソードCから第2のグリッドG2のアパーチャAPに向けて放出される電子ビームEBを偏向させるために電磁偏向器3a及び3bを設けたことである(図1参照)。電磁偏向器3a及び3bは、高電圧用絶縁碍子1を介してカソードC、第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2から絶縁された場所で、電子ビームEBの流れの方向に対してカソードCの配置位置とほぼ一致する位置に配置されている。
【0021】
なお、図1において2はカソードCを加熱するためのヒータを示し、図2においてIBは第2のグリッドG2のアパーチャAPを通過する電流を示す。また、第1のグリッドG1にはカソードCの印加電圧VCに対し逆バイアスとなる電圧VG1(<VC)が印加されており、アノードAは高電圧用絶縁碍子1の低圧側と共通のグランドに接続されている。
【0022】
かかる本実施形態の構成において、4極電子銃のカソードCから放出されたエミッション電流IEは、第1のグリッドG1の印加電圧VG1と第2のグリッドG2の印加電圧VG2の大きさによって決まる電界により、第2のグリッドG2のアパーチャAPの位置にクロスオーバ像XOを形成する。この時、アパーチャAPの径は比較的小さい60μmであるため、照射されたガウス分布特性を持つ電子ビームのうち裾の部分のビームは遮断される。
【0023】
第2のグリッドG2のアパーチャAPを通過した電子ビームは、アノードAに向かって加速され、そのままアノードAの開口部を通過して、矩形アパーチャを有するマスク11上に照射される。この後、図5に関連して説明したように、マスク11の矩形アパーチャを通過した電子ビームは、電子レンズ、偏向器、コイル等12により適宜収束、偏向、偏向補正等が行われた後、ラウンドアパーチャを有するマスク13上に照射され、さらにラウンドアパーチャを通過した電子ビームは、主偏向器や副偏向器等(図示せず)により適宜偏向が行われた後、ウエハ上の所望の位置に露光される。
【0024】
このように本実施形態の構成によれば、たとえエミッション電流IEを大きくしても、第2のグリッドG2の作用により、ガウス分布特性を持つ電子ビームのうち不要な裾の部分のビームが遮断されるため、従来の3極電子銃の場合と比べて、矩形アパーチャを有するマスク11を照射するビームの量を抑制することができる。つまり、マスク11上で矩形アパーチャの周囲の領域(ビーム遮断部)の受ける熱エネルギーを相対的に減少させることができる。これによって、当該ビーム遮断部が受ける損傷を最小限にとどめ、ひいては溶融の問題を解消することが可能となる。
【0025】
また、カソードCから放出されるエミッション電流IEを大きくすることができるので、矩形アパーチャを有するマスク11に対するビーム照射の均一性も改善されるという利点がある。
さらに、ラウンドアパーチャを有するマスク13上にはクロスオーバ像が投影されるが、このクロスオーバ像を構成するビームは、図2の右側にビーム強度分布曲線として示すように、裾の部分が無いガウス分布特性を呈する。図示の例では、ラウンドアパーチャの周囲の領域で遮断される部分的なビーム(LBのハッチングで示す部分)が存在するが、実際上は第2のグリッドG2のアパーチャAPの大きさでビーム径を調整することができるため、マスク13上で遮断される無駄なビームLBを無くすことができる。
【0026】
また、電子銃本体に各電極を取り付ける際に、カソードCの先端(数十μmの径)に対して第2のグリッドG2のアパーチャAP(60μmの径)をメカ的に高精度にアライメントすることは、実際問題として非常に困難である。つまり、メカ的なアライメント精度の狂いが生じる可能性がある。
しかし本実施形態では、電磁偏向器3a及び3bが設けられているので、カソードCから第2のグリッドG2のアパーチャAPに向けて放出される電子ビームEBを磁場によって適宜偏向させることで、メカ的なアライメント精度の狂いを補正することができる。
【0027】
図3には本実施形態の4極電子銃の電気的及び物理的特性が例示される。
図中、(a)は第1のグリッドG1の印加電圧VG1を一定にした状態(図示の例ではVG1=−500V)で第2のグリッドG2の印加電圧VG2を変化させた時のIB(第2のグリッドG2のアパーチャAPを通過する電流)及びIE(カソードCから放出されるエミッション電流)の変化を示したもので、(b)は同じく印加電圧VG1を一定にした状態で印加電圧VG2を変化させた時のIBとIEとの比(IB/IE)の変化を示したものである。また、(c)は印加電圧VG2を変化させた時に得られる、カソードCから放出される電子ビームの物理的特性を模式的に示したものである。
【0028】
図3(a)に示すように、エミッション電流IEは、第2のグリッドG2の印加電圧VG2に比例して増加する。一方、第2のグリッドG2のアパーチャAPを通過する電流IBについては、極大値を持つ。極大値を持つ理由は、印加電圧VG2の大きさに依存してクロスオーバ像の形成条件が変化するからである。図3(c)に示すようにクロスオーバ像が第2のグリッドG2のアパーチャの位置に形成された時(図中、実線で表示される電子ビーム)、図3(b)に示すようにIB/IEは極大となる。従って、図3(b)においてR2で示す領域が、最も均一なビーム照射を行える条件となる。これは、4極電子銃の基本的な設定条件である。
【0029】
図4には本実施形態の4極電子銃に対する電極電圧制御部の構成が概略的に示される。
図中、20は第2のグリッドG2に印加電圧VG2を供給するための+2kV昇圧回路、30はカソードCに印加電圧VCを供給するためのフィラメント整流回路を示し、両回路とも、カソードCに印加されるべき負の高加速電圧VC(=−50kV)を発生する昇圧回路(図示せず)に接続されている。+2kV昇圧回路20は、−50kVに対し電圧的に+2kVを加算して印加電圧VG2(=−48kV)を生成する+2kV発生回路21と、第2のグリッドG2から流出する電流IG2を検出する電流検出回路22と、後述する差分検出回路の出力に基づいて印加電圧VG2を制御するVG2制御回路23とを有している。一方、フィラメント整流回路30は、−50kVの交流電圧を整流してカソードCに供給する整流回路31と、カソードCから放出されるエミッション電流IEを検出する電流検出回路32とを有している。
【0030】
また、40はフィラメント整流回路30における電流検出回路32で検出された電流(IE)と+2kV昇圧回路20における電流検出回路22で検出された電流(IG2)の差分を算出する差分検出回路を示す。この差分検出回路40の出力はVG2制御回路23に入力される。
図示の構成から明らかなように、カソードCから放出されるエミッション電流IEと第2のグリッドG2から流出する電流IG2の差分は、第2のグリッドG2のアパーチャを通過する電流IBを形成する(IE−IG2=IB)。図示の構成では、差分検出回路40でIBを検出し、その検出結果に基づいてVG2制御回路23により、IBが変化しないように(つまり一定となるように)第2のグリッドG2の印加電圧VG2を制御している。
【0031】
なお、図4の構成例ではIBが一定となるように制御しているが、一定とするべき制御対象はこれに限定されない。例えば、カソードCから放出されるエミッション電流IEを一定とするよう制御してもよいし、或いは第2のグリッドG2から流出する電流IG2を一定に保つよう制御してもよい。
また、図4の構成例では、差分検出回路40の出力は第2のグリッドG2用の昇圧回路20におけるVG2制御回路23に入力されているが、差分検出回路40の出力の帰還先はこれに限定されない。例えば、第1のグリッドG1用の昇圧回路(図示せず)に差分検出回路40の出力を入力して、IBが一定となるように第1のグリッドG1の印加電圧VG1を制御するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電子銃によれば、マスクに形成された描画パターンの開口部や矩形アパーチャ等の周囲の領域が受ける損傷を最小限にとどめることができ、また当該領域の溶融の問題の解消に大いに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る4極電子銃の電極部の構造を一部断面図の形で模式的に示した図である。
【図2】図1の4極電子銃からのビーム照射の様子を示す図である。
【図3】図1の4極電子銃の電気的及び物理的特性を示す図である。
【図4】図1の4極電子銃に対する電極電圧制御部の構成を概略的に示したブロック図である。
【図5】従来技術に係る3極電子銃からのビーム照射の様子を示す図である。
【符号の説明】
A…アノード
AP…第2のグリッドのアパーチャ
C…カソード
EB…電子ビーム
G1…第1のグリッド
G2…第2のグリッド
IE…カソードから放出されるエミッション電流
IB…第2のグリッドのアパーチャを通過する電流
IG2…第2のグリッドから流出する電流
VC…カソードの印加電圧(負の高加速電圧)
VG1…第1のグリッドの印加電圧(<VC)
VG2…第2のグリッドの印加電圧(>VC)
XO…クロスオーバ像
1…高電圧用絶縁碍子
2…ヒータ
3a,3b…電磁偏向器
11…矩形アパーチャ(スリット)を有するマスク
12…描画パターンの開口部が形成されたブロックマスク、及び電子ビームの収束、偏向、偏向補正等を行う電子レンズ、偏向器、コイル等を含む手段
13…ラウンドアパーチャを有するマスク
22,32…電流検出回路
23…VG2制御回路
40…差分検出回路

Claims (2)

  1. 負の高加速電圧を印加されて電子ビームを放出するカソードと、該カソードに対し負となる電圧を印加されて前記電子ビームのクロスオーバ像を結像させる第1のグリッドと、該第1のグリッドを通過した電子ビームを集めるアノードを具備し、前記カソード及び前記第1のグリッドを高電圧用絶縁碍子の高圧側に配置し、前記アノードを前記高電圧用絶縁碍子の低圧側に配置してなる電子銃において、
    前記高電圧用絶縁碍子の高圧側で且つ前記第1のグリッドと前記アノードの間に電子ビームの通過量を制限するアパーチャを有する第2のグリッドを配置し、前記カソードに対しとなる電圧を該第2のグリッドに印加し、該第2のグリッドのアパーチャの位置に前記クロスオーバ像を結像させるようにし、
    前記第2のグリッドのアパーチャの開口は、前記カソードから出射する前記電子ビームのうちの裾の部分の電子ビームを遮断する開口径を備え
    前記第2のグリッドのアパーチャを通過する電流と前記カソードから放出されるエミッション電流との比が最大となるように前記第1及び第2のグリッドの各印加電圧を決定することを特徴とする電子銃。
  2. 請求項1に記載の電子銃において、前記カソードから前記第2のグリッドのアパーチャに向けて放出される電子ビームを偏向させるための電磁偏向器を更に具備し、該電磁偏向器が、前記高電圧用絶縁碍子を介して前記カソード並びに前記第1及び第2のグリッドから絶縁された場所で、前記電子ビームの光軸の方向について前記カソードの配置位置とほぼ一致する位置に配置されていることを特徴とする電子銃。
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