JP2000011932A - 電子銃 - Google Patents

電子銃

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章夫 山田
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    • H01J37/02Details
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    • HELECTRICITY
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  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Electron Beam Exposure (AREA)
  • Electron Sources, Ion Sources (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子ビーム露光装置における電子銃におい
て、マスクに形成された描画パターンの開口部や矩形ア
パーチャ等の周囲の領域が受ける損傷を最小限にとど
め、当該領域の溶融の問題を解消することを目的とす
る。 【解決手段】 カソードCと第1のグリッドG1が高電
圧用絶縁碍子の高圧側に配置され、アノードAが該絶縁
碍子の低圧側に配置された電子銃において、高電圧用絶
縁碍子の高圧側で且つ第1のグリッドG1とアノードA
の間に電子ビームEBの通過量を制限するアパーチャA
Pを有する第2のグリッドG2を配置し、カソードCに
対し順バイアスとなる電圧を第2のグリッドG2に印加
し、該第2のグリッドのアパーチャAPの位置にクロス
オーバ像XOを結像させるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子ビーム等の荷
電粒子ビームを用いた露光装置に係り、特に、電子ビー
ム露光装置において被露光試料(特定的にはウエハ)上
にパターンを描画するのに用いる電子ビームを発生する
電子銃に関する。
【0002】
【従来の技術】電子ビーム露光装置として、可変矩形露
光装置やブロック露光装置、ブランキング・アパーチャ
・アレイ(BAA)露光装置等が知られている。これら
の露光装置においては、電子ビームの断面形状を成形す
るために矩形状の開口部、繰り返し図形の単位となる任
意形状の開口部、マトリクス状に配置された複数の開口
部がそれぞれ形成されたマスク或いはブロックマスクが
配設されており、各々マスク上の開口部の所望の範囲を
照射して電子ビームを成形することで所望のパターンを
ウエハ上に描画するようにしている。この際、ビーム照
射の均一性は、描画されるパターンの線幅に大きな影響
を与える。例えば、0.1μm幅のラインを描画する場
合の許容線幅精度を0.01μmとすれば、ビーム照射
の均一性は数%の変動しか許されない。従って、均一な
照射と見なすことができる照射範囲は狭くなり、そのた
めに露光領域が縮小されることになり、スループットを
悪化させる要因になっていた。
【0003】図5には従来技術に係る3極電子銃から放
出されるビームの照射の様子が模式的に示される。図
中、Cは負の高加速電圧を印加されて熱電子(エミッシ
ョン電流IEすなわち電子ビームEB)を放出するカソ
ード、G1はカソードCに対し逆バイアスとなる電圧を
印加されて電子ビームEBのクロスオーバ像XO’を結
像させるグリッド、AはグリッドG1を通過した電子ビ
ームEBが加速されて集められるアノードを示す。ま
た、各電極を絶縁するために高電圧用絶縁碍子(図示せ
ず)が設けられており、カソードCとグリッドG1はこ
の絶縁碍子の高圧側に配置され、アノードAは当該絶縁
碍子の低圧側(一般にはグランドに接続されている)に
配置されている。また、11はアノードAの下流側に配
置された矩形アパーチャ又はスリットを有するマスク、
12は描画パターンの開口部が形成されたブロックマス
ク、及び電子ビームの収束、偏向、偏向補正等を行う電
子レンズ、偏向器、コイル等を含む手段を模式的に示し
たものである。13はブロックマスク等を含む手段12
の下流側に配置されたラウンドアパーチャを有するマス
クを示す。
【0004】図示の構成において、3極電子銃のカソー
ドCから放出されたエミッション電流IE(すなわち電
子ビームEB)は、グリッドG1が作る電界によってク
ロスオーバ像XO’を形成した後、そのままアノードA
の開口部を通過し、矩形アパーチャを有するマスク11
上に照射される。マスク11上に照射された電子ビーム
は、その一部が矩形アパーチャの周囲の領域(ハッチン
グで示される部分)で遮断され、残りの部分が矩形アパ
ーチャを通過する。矩形アパーチャを通過した電子ビー
ムは、電子レンズ、偏向器、コイル等12により適宜収
束、偏向、偏向補正等が行われた後、ラウンドアパーチ
ャを有するマスク13上に照射される。このラウンドア
パーチャを通過した電子ビームは、主偏向器や副偏向器
等(図示せず)により適宜偏向が行われた後、ウエハ上
の所望の位置に露光される(つまりパターンが描画され
る)。
【0005】このような3極電子銃に対し、別の形態と
してアパーチャカット電子銃が知られている。このアパ
ーチャカット電子銃は、基本的には3極電子銃と同様の
構成を有しており、グリッド(すなわちウエーネルト)
とアノードの間にアパーチャを有する第2のグリッドが
設けられている点で3極電子銃と異なっている。従来知
られているアパーチャカット電子銃においては、ウエー
ネルト(=グリッド)は高電圧用絶縁碍子の高圧側に配
置され、第2のグリッドは当該絶縁碍子の低圧側(一般
にはグランドに接続されている)に配置されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、従来
の3極電子銃の構成では、エミッション電流IEがその
ままアノードAの開口部を通過するため、矩形アパーチ
ャを有するマスク11の受ける熱負荷が相対的に大きく
なり、そのためにマスク11における矩形アパーチャの
周囲の領域が溶融したり、或いは溶融まで至らずともク
ラックの発生、金属被覆膜の剥離等の損傷を受けるとい
った問題があった。また、マスク11の下流側に配置さ
れたブロックマスク等を含む手段12においても、矩形
アパーチャを通過してきた電子ビームにより、ブロック
マスクにおける描画パターンの開口部の周囲の領域(ビ
ーム遮断部)の受けるエネルギーが相対的に大きいた
め、当該ビーム遮断部の領域が損傷を受けたり、或いは
溶融したりするといった問題があった。さらに、その下
流側に配置されたラウンドアパーチャを有するマスク1
3上では、図5にLB’のハッチングで示すように無駄
な電子ビームが多くなるといった不利があった。
【0007】また、従来の3極電子銃の場合、エミッシ
ョン電流IEを大きくすることでビーム照射の均一性を
改善することはできるが、エミッション電流IEの増大
に応じてブロックマスクのビーム遮断部の受けるエネル
ギーも大きくなるため、当該ビーム遮断部の領域が損傷
を受けたり、或いは溶融したりするといった問題が発生
し、結局、均一なビーム照射を実現することは極めて困
難であった。
【0008】さらに、典型的な3極電子銃においては、
カソードに使用するLaB6 単結晶のチップは、ヒータ
で加熱することで1500℃近傍まで温度が上昇する。
従って、その加熱されたカソードを保持する材料は、高
温に耐えるもので、しかも熱的に絶縁され、さらに加熱
電流を流すため周辺部分から電気的に絶縁されている必
要がある。そのため、ヒータとカソードを組み立てる際
には構造上の工夫が必要であり、ビーム放出部であるチ
ップ先端位置を精度良く位置決めすることは、非常に困
難であった。特に、カソードのウエーネルト(=グリッ
ド)に対する相対位置は、電子ビームの放出条件を大き
く変えることになり、取付けの度に位置の再現性が無
く、クロスオーバ条件が変化する。つまり、従来の3極
電子銃は、取付けの精度が影響を受け易いといった問題
があった。
【0009】実際のチップ先端サイズは直径数十μm程
度で、ウエーネルト(=グリッド)のアパーチャのサイ
ズは直径1mm程度であり、非常に小さなもの同士の位
置合わせであるため、僅かな差でも放出される電子ビー
ムに大きく影響することになる。このような状況におい
て、3極電子銃から放出される電子ビームには様々な必
要条件があり、3つのパラメータで全てを同時に満足す
ることはできない。満足しなければならない必要条件
は、以下の〜である。
【0010】 エミッション電流IEの大きさ(マス
ク11の矩形アパーチャ周囲の領域の損傷) ビーム照射の均一性 クロスオーバ像の大きさ(マスク13のラウンドア
パーチャ上のクロスオーバ像の大きさ) ここに、3極のうちカソード電極とアノード電極に印加
される各電圧は固定値であるため、自由に電圧を変えら
れる電極はグリッド電極(ウエーネルト)1極のみであ
る。従って、1つのパラメータで3つの条件を同時に満
たすことは原理的に困難であり、計算上又は実験上理想
に近い寸法で部品を設計し電圧を印加することで、エミ
ッション電流IEの大きさを所望の値になるよう、グリ
ッド電極の印加電圧を制御することしかできなかった。
すなわち、上記の及びの条件はその時その時で変化
することになる。言い換えると、いずれか1つの条件を
正確に満たすと、その他の条件は、組み立て精度や部品
精度のずれ分だけ理想から外れることになる。クロスオ
ーバ像の大きさが大きくなることも大きな問題である。
各マスクを照射するビームのうち、結果的にマスク13
のラウンドアパーチャで遮断されるビームの量が多い
と、無駄な電子ビーム(図5にLB’のハッチングで示
す部分)がマスクを照射していることになる。
【0011】例えば、ラウンドアパーチャで遮断される
電流と該アパーチャを通過する電流の大きさの比が1:
1の場合、マスク上の不要なビーム照射が2倍あるとい
うことになる。この場合、ウエハ上の電流密度、例えば
30A/cm2 を実現するためには、60A/cm2
当のビーム照射を行うことになり、上述した溶融問題を
一層顕著にすることになる。
【0012】他方、従来知られているアパーチャカット
電子銃の構成では、第1のグリッド(=ウエーネルト)
が高電圧用絶縁碍子の高圧側に配置され、第2のグリッ
ドが当該絶縁碍子の低圧側(=グランド側)に配置され
ているため、以下の問題があった。先ず、最終的に加速
された電子ビームの一部はラウンドアパーチャで遮断さ
れることになるため、当該アパーチャのエネルギー負荷
が大きくなり、アパーチャの周囲の領域が溶融したり、
或いは溶融まで至らずともクラックの発生等の損傷を受
けるといった問題があった。また、電子銃直下に作られ
るクロスオーバ像をレンズを用いて再結像しなければな
らないため、電子銃の規模が比較的大型となり、また電
子ビームの光路が長くなってクロスオーバ像を2回結像
することになるため、クーロン相互作用による収差を増
大させることになるといった問題があった。さらに、ア
パーチャのエネルギー負荷を減らすためには負の電圧を
印加することが考えられるが、この場合には、カソード
と同じ程度の絶縁レベルを持つ碍子を用いる必要があ
り、電子銃の規模が更に大型となる。
【0013】本発明は、上述した従来技術における課題
に鑑み創作されたもので、マスクに形成された描画パタ
ーンの開口部や矩形アパーチャ等の周囲の領域が受ける
損傷を最小限にとどめ、ひいては当該領域の溶融の問題
を解消することができる電子銃を提供することを目的と
する。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述した従来技術の課題
を解決するため、本発明によれば、負の高加速電圧を印
加されて電子ビームを放出するカソードと、該カソード
に対し逆バイアスとなる電圧を印加されて前記電子ビー
ムのクロスオーバ像を結像させる第1のグリッドと、該
第1のグリッドを通過した電子ビームを集めるアノード
を具備し、前記カソード及び前記第1のグリッドを高電
圧用絶縁碍子の高圧側に配置し、前記アノードを前記高
電圧用絶縁碍子の低圧側に配置してなる電子銃におい
て、前記高電圧用絶縁碍子の高圧側で且つ前記第1のグ
リッドと前記アノードの間に電子ビームの通過量を制限
するアパーチャを有する第2のグリッドを配置し、前記
カソードに対し順バイアスとなる電圧を該第2のグリッ
ドに印加し、該第2のグリッドのアパーチャの位置に前
記クロスオーバ像を結像させるようにしたことを特徴と
する電子銃が提供される。
【0015】本発明に係る電子銃の構成によれば、第2
のグリッドのアパーチャの位置にクロスオーバ像を結像
させる(つまり第2のグリッドのアパーチャとクロスオ
ーバ像のアライメントを行う)ようにしているので、た
とえエミッション電流(つまりカソードから放出される
電子ビーム)を大きくしても、第2のグリッドのアパー
チャにより、ガウス分布特性を持つ電子ビームのうち不
要な裾の部分のビームが遮断されるため、その下流側に
配置された各マスク(矩形アパーチャを有するマスク、
描画パターンの開口部が形成されたブロックマスク等)
を照射するビームの量を相対的に抑制することができ
る。つまり、各マスク上で描画パターンの開口部や矩形
アパーチャ等の周囲の領域が受ける熱エネルギーを相対
的に減少させることができる。これによって、当該領域
が受ける損傷を最小限にとどめることができ、ひいては
溶融の問題の解消に大いに寄与することができる。
【0016】また、本発明に係る電子銃において、カソ
ードから第2のグリッドのアパーチャに向けて放出され
る電子ビームを偏向させるための電磁偏向器を更に具備
してもよい。この場合、電磁偏向器は、高電圧用絶縁碍
子を介してカソード並びに第1及び第2のグリッドから
絶縁された場所で、電子ビームの流れの方向に対してカ
ソードの配置位置とほぼ一致する位置に配置されること
が望ましい。
【0017】かかる電磁偏向器を設けることにより、カ
ソードから第2のグリッドのアパーチャに向けて放出さ
れる電子ビームを磁場によって容易に偏向させることが
できるので、カソードの先端と第2のグリッドのアパー
チャとをメカ的に高精度にアライメントすることが可能
となる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1には本発明の一実施形態に係
る4極電子銃の電極部の構造が一部断面図の形で模式的
に示され、図2にはその4極電子銃から放出されるビー
ムの照射の様子が模式的に示される。図1及び図2にお
いて、参照符号C、G1、A、IE、EB、11、12
及び13で示される要素は、それぞれ図5に用いられた
同じ参照符号で示される要素に対応しており、その説明
については省略する。
【0019】本実施形態に係る4極電子銃の構成上の特
徴は、第1のグリッドG1とアノードAの間に電子ビ
ームEBの通過量を制限するアパーチャAPを有する第
2のグリッドG2を配置したこと(図1及び図2参
照)、第2のグリッドG2を、カソードC及び第1の
グリッドG1と同様に、高電圧用絶縁碍子(図1に参照
符号1で示す要素)の高圧側に配置したこと、第2の
グリッドG2に、カソードCの印加電圧(すなわち負の
高加速電圧)VCに対し順バイアスとなる電圧VG2
(>VC)を印加するようにしたこと(図2参照)、
第2のグリッドG2のアパーチャAPの位置にクロスオ
ーバ像XOを結像させるようにしたこと(図2参照)、
である。本実施形態では、カソードCの先端の径は例え
ば数十μmに選定され、第2のグリッドG2のアパーチ
ャAPの径は例えば60μmに選定されている。
【0020】また、更なる構成上の特徴は、カソードC
から第2のグリッドG2のアパーチャAPに向けて放出
される電子ビームEBを偏向させるために電磁偏向器3
a及び3bを設けたことである(図1参照)。電磁偏向
器3a及び3bは、高電圧用絶縁碍子1を介してカソー
ドC、第1のグリッドG1及び第2のグリッドG2から
絶縁された場所で、電子ビームEBの流れの方向に対し
てカソードCの配置位置とほぼ一致する位置に配置され
ている。
【0021】なお、図1において2はカソードCを加熱
するためのヒータを示し、図2においてIBは第2のグ
リッドG2のアパーチャAPを通過する電流を示す。ま
た、第1のグリッドG1にはカソードCの印加電圧VC
に対し逆バイアスとなる電圧VG1(<VC)が印加さ
れており、アノードAは高電圧用絶縁碍子1の低圧側と
共通のグランドに接続されている。
【0022】かかる本実施形態の構成において、4極電
子銃のカソードCから放出されたエミッション電流IE
は、第1のグリッドG1の印加電圧VG1と第2のグリ
ッドG2の印加電圧VG2の大きさによって決まる電界
により、第2のグリッドG2のアパーチャAPの位置に
クロスオーバ像XOを形成する。この時、アパーチャA
Pの径は比較的小さい60μmであるため、照射された
ガウス分布特性を持つ電子ビームのうち裾の部分のビー
ムは遮断される。
【0023】第2のグリッドG2のアパーチャAPを通
過した電子ビームは、アノードAに向かって加速され、
そのままアノードAの開口部を通過して、矩形アパーチ
ャを有するマスク11上に照射される。この後、図5に
関連して説明したように、マスク11の矩形アパーチャ
を通過した電子ビームは、電子レンズ、偏向器、コイル
等12により適宜収束、偏向、偏向補正等が行われた
後、ラウンドアパーチャを有するマスク13上に照射さ
れ、さらにラウンドアパーチャを通過した電子ビーム
は、主偏向器や副偏向器等(図示せず)により適宜偏向
が行われた後、ウエハ上の所望の位置に露光される。
【0024】このように本実施形態の構成によれば、た
とえエミッション電流IEを大きくしても、第2のグリ
ッドG2の作用により、ガウス分布特性を持つ電子ビー
ムのうち不要な裾の部分のビームが遮断されるため、従
来の3極電子銃の場合と比べて、矩形アパーチャを有す
るマスク11を照射するビームの量を抑制することがで
きる。つまり、マスク11上で矩形アパーチャの周囲の
領域(ビーム遮断部)の受ける熱エネルギーを相対的に
減少させることができる。これによって、当該ビーム遮
断部が受ける損傷を最小限にとどめ、ひいては溶融の問
題を解消することが可能となる。
【0025】また、カソードCから放出されるエミッシ
ョン電流IEを大きくすることができるので、矩形アパ
ーチャを有するマスク11に対するビーム照射の均一性
も改善されるという利点がある。さらに、ラウンドアパ
ーチャを有するマスク13上にはクロスオーバ像が投影
されるが、このクロスオーバ像を構成するビームは、図
2の右側にビーム強度分布曲線として示すように、裾の
部分が無いガウス分布特性を呈する。図示の例では、ラ
ウンドアパーチャの周囲の領域で遮断される部分的なビ
ーム(LBのハッチングで示す部分)が存在するが、実
際上は第2のグリッドG2のアパーチャAPの大きさで
ビーム径を調整することができるため、マスク13上で
遮断される無駄なビームLBを無くすことができる。
【0026】また、電子銃本体に各電極を取り付ける際
に、カソードCの先端(数十μmの径)に対して第2の
グリッドG2のアパーチャAP(60μmの径)をメカ
的に高精度にアライメントすることは、実際問題として
非常に困難である。つまり、メカ的なアライメント精度
の狂いが生じる可能性がある。しかし本実施形態では、
電磁偏向器3a及び3bが設けられているので、カソー
ドCから第2のグリッドG2のアパーチャAPに向けて
放出される電子ビームEBを磁場によって適宜偏向させ
ることで、メカ的なアライメント精度の狂いを補正する
ことができる。
【0027】図3には本実施形態の4極電子銃の電気的
及び物理的特性が例示される。図中、(a)は第1のグ
リッドG1の印加電圧VG1を一定にした状態(図示の
例ではVG1=−500V)で第2のグリッドG2の印
加電圧VG2を変化させた時のIB(第2のグリッドG
2のアパーチャAPを通過する電流)及びIE(カソー
ドCから放出されるエミッション電流)の変化を示した
もので、(b)は同じく印加電圧VG1を一定にした状
態で印加電圧VG2を変化させた時のIBとIEとの比
(IB/IE)の変化を示したものである。また、
(c)は印加電圧VG2を変化させた時に得られる、カ
ソードCから放出される電子ビームの物理的特性を模式
的に示したものである。
【0028】図3(a)に示すように、エミッション電
流IEは、第2のグリッドG2の印加電圧VG2に比例
して増加する。一方、第2のグリッドG2のアパーチャ
APを通過する電流IBについては、極大値を持つ。極
大値を持つ理由は、印加電圧VG2の大きさに依存して
クロスオーバ像の形成条件が変化するからである。図3
(c)に示すようにクロスオーバ像が第2のグリッドG
2のアパーチャの位置に形成された時(図中、実線で表
示される電子ビーム)、図3(b)に示すようにIB/
IEは極大となる。従って、図3(b)においてR2で
示す領域が、最も均一なビーム照射を行える条件とな
る。これは、4極電子銃の基本的な設定条件である。
【0029】図4には本実施形態の4極電子銃に対する
電極電圧制御部の構成が概略的に示される。図中、20
は第2のグリッドG2に印加電圧VG2を供給するため
の+2kV昇圧回路、30はカソードCに印加電圧VC
を供給するためのフィラメント整流回路を示し、両回路
とも、カソードCに印加されるべき負の高加速電圧VC
(=−50kV)を発生する昇圧回路(図示せず)に接
続されている。+2kV昇圧回路20は、−50kVに
対し電圧的に+2kVを加算して印加電圧VG2(=−
48kV)を生成する+2kV発生回路21と、第2の
グリッドG2から流出する電流IG2を検出する電流検
出回路22と、後述する差分検出回路の出力に基づいて
印加電圧VG2を制御するVG2制御回路23とを有し
ている。一方、フィラメント整流回路30は、−50k
Vの交流電圧を整流してカソードCに供給する整流回路
31と、カソードCから放出されるエミッション電流I
Eを検出する電流検出回路32とを有している。
【0030】また、40はフィラメント整流回路30に
おける電流検出回路32で検出された電流(IE)と+
2kV昇圧回路20における電流検出回路22で検出さ
れた電流(IG2)の差分を算出する差分検出回路を示
す。この差分検出回路40の出力はVG2制御回路23
に入力される。図示の構成から明らかなように、カソー
ドCから放出されるエミッション電流IEと第2のグリ
ッドG2から流出する電流IG2の差分は、第2のグリ
ッドG2のアパーチャを通過する電流IBを形成する
(IE−IG2=IB)。図示の構成では、差分検出回
路40でIBを検出し、その検出結果に基づいてVG2
制御回路23により、IBが変化しないように(つまり
一定となるように)第2のグリッドG2の印加電圧VG
2を制御している。
【0031】なお、図4の構成例ではIBが一定となる
ように制御しているが、一定とするべき制御対象はこれ
に限定されない。例えば、カソードCから放出されるエ
ミッション電流IEを一定とするよう制御してもよい
し、或いは第2のグリッドG2から流出する電流IG2
を一定に保つよう制御してもよい。また、図4の構成例
では、差分検出回路40の出力は第2のグリッドG2用
の昇圧回路20におけるVG2制御回路23に入力され
ているが、差分検出回路40の出力の帰還先はこれに限
定されない。例えば、第1のグリッドG1用の昇圧回路
(図示せず)に差分検出回路40の出力を入力して、I
Bが一定となるように第1のグリッドG1の印加電圧V
G1を制御するようにしてもよい。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る電子
銃によれば、マスクに形成された描画パターンの開口部
や矩形アパーチャ等の周囲の領域が受ける損傷を最小限
にとどめることができ、また当該領域の溶融の問題の解
消に大いに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る4極電子銃の電極部
の構造を一部断面図の形で模式的に示した図である。
【図2】図1の4極電子銃からのビーム照射の様子を示
す図である。
【図3】図1の4極電子銃の電気的及び物理的特性を示
す図である。
【図4】図1の4極電子銃に対する電極電圧制御部の構
成を概略的に示したブロック図である。
【図5】従来技術に係る3極電子銃からのビーム照射の
様子を示す図である。
【符号の説明】
A…アノード AP…第2のグリッドのアパーチャ C…カソード EB…電子ビーム G1…第1のグリッド G2…第2のグリッド IE…カソードから放出されるエミッション電流 IB…第2のグリッドのアパーチャを通過する電流 IG2…第2のグリッドから流出する電流 VC…カソードの印加電圧(負の高加速電圧) VG1…第1のグリッドの印加電圧(<VC) VG2…第2のグリッドの印加電圧(>VC) XO…クロスオーバ像 1…高電圧用絶縁碍子 2…ヒータ 3a,3b…電磁偏向器 11…矩形アパーチャ(スリット)を有するマスク 12…描画パターンの開口部が形成されたブロックマス
ク、及び電子ビームの収束、偏向、偏向補正等を行う電
子レンズ、偏向器、コイル等を含む手段 13…ラウンドアパーチャを有するマスク 22,32…電流検出回路 23…VG2制御回路 40…差分検出回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 章夫 東京都練馬区旭町1丁目32番1号 株式会 社アドバンテスト内 (72)発明者 安田 洋 東京都練馬区旭町1丁目32番1号 株式会 社アドバンテスト内 Fターム(参考) 5C030 BB05 BB17 BC06 5F056 CB02 EA02 EA04

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 負の高加速電圧を印加されて電子ビーム
    を放出するカソードと、該カソードに対し逆バイアスと
    なる電圧を印加されて前記電子ビームのクロスオーバ像
    を結像させる第1のグリッドと、該第1のグリッドを通
    過した電子ビームを集めるアノードを具備し、前記カソ
    ード及び前記第1のグリッドを高電圧用絶縁碍子の高圧
    側に配置し、前記アノードを前記高電圧用絶縁碍子の低
    圧側に配置してなる電子銃において、 前記高電圧用絶縁碍子の高圧側で且つ前記第1のグリッ
    ドと前記アノードの間に電子ビームの通過量を制限する
    アパーチャを有する第2のグリッドを配置し、前記カソ
    ードに対し順バイアスとなる電圧を該第2のグリッドに
    印加し、該第2のグリッドのアパーチャの位置に前記ク
    ロスオーバ像を結像させるようにしたことを特徴とする
    電子銃。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の電子銃において、前記
    カソードから前記第2のグリッドのアパーチャに向けて
    放出される電子ビームを偏向させるための電磁偏向器を
    更に具備し、該電磁偏向器が、前記高電圧用絶縁碍子を
    介して前記カソード並びに前記第1及び第2のグリッド
    から絶縁された場所で、前記電子ビームの流れの方向に
    対して前記カソードの配置位置とほぼ一致する位置に配
    置されていることを特徴とする電子銃。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の電子銃におい
    て、前記第2のグリッドのアパーチャを通過する電流を
    前記カソードから放出されるエミッション電流と前記第
    2のグリッドから流出する電流の差分から算出する回路
    を更に具備し、該算出された電流を一定に保つように前
    記第1及び第2のグリッドの各印加電圧の少なくとも一
    方を制御することを特徴とする電子銃。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載の電子銃におい
    て、前記カソードから放出されるエミッション電流を一
    定に保つように前記第1及び第2のグリッドの各印加電
    圧の少なくとも一方を制御することを特徴とする電子
    銃。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2に記載の電子銃におい
    て、前記第2のグリッドから流出する電流を一定に保つ
    ように前記第1及び第2のグリッドの各印加電圧の少な
    くとも一方を制御することを特徴とする電子銃。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2に記載の電子銃におい
    て、前記第2のグリッドのアパーチャを通過する電流と
    前記カソードから放出されるエミッション電流との比が
    最大となるように前記第1及び第2のグリッドの各印加
    電圧を決定することを特徴とする電子銃。
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