JP4246372B2 - 電子ビーム生成装置及び電子ビーム露光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置に関する。特に、複数の電子ビームを生成し、ウェハを露光する電子ビーム露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子ビーム生成装置は、熱電子を生成するカソードと、カソードが生成した熱電子を集束させ、1本の電子ビームを生成するグリッドと、カソード及びグリッドを固定する碍子とを有する電子銃を1つ備えていた。そして、1つの電子銃より生成した電子ビームによりウェハを露光していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年の半導体素子の需要の拡大に伴い、半導体素子の生産速度の向上が望まれているが、従来の電子ビーム露光装置では、1本の電子ビームによりウェハを露光し、半導体素子を生成していたため、十分な生産速度を得ることが困難であった。また、上記した電子銃を単に複数備え、複数の電子ビームを生成した場合には、複数の電子銃を個別に制御することが困難であり、また、複数の電子ビームを生成した場合に生じる多量の熱電子による放電を押さえることが困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、複数の電子ビームを生成する電子ビーム生成装置であって、熱電子を発生させる複数のカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電源部と、複数のカソードのそれぞれに対応し、複数のカソードのそれぞれから放出された熱電子をそれぞれ集束させ、複数の電子ビームを形成する複数のグリッドと、複数のカソード及び複数のグリッドが設けられた碍子とを備えることを特徴とする電子ビーム生成装置を提供する。
【0005】
本発明の第1の形態においては、カソード電源部は、複数のカソード電源を有し、複数のカソード電源のそれぞれは、複数のカソードに、負電圧を印加してよい。また、複数のカソードはマトリクス状に設けられ、同一のカソード電源から電圧が印加される複数のカソードには、マトリクスの中心からの距離に基づいた電圧が印加されてよい。また、複数のグリッドの最外周のグリッドより更に外側の、複数のグリッドが設けられた面と略同一面内に、複数のグリッドが設けられた面と略垂直な方向において、最外周のグリッドと略等しい高さの第1ダミー電極を更に備えてよい。
【0006】
第1ダミー電極は、複数のグリッドが設けられた面から、複数のグリッドが設けられた方向と略逆方向に突出する突出部を含んでよい。また、碍子は、碍子の外面の少なくとも一部を覆う高抵抗膜と、高抵抗膜の上部と電気的に接続された第1電極と、高抵抗膜の下部と電気的に接続された第2電極とを有し、第2電極は、複数のグリッドの内の1つと、第1ダミー電極を介して電気的に接続され、接続されたグリッドと略同一の電位が与えられ、第2電極は、略零電位が与えられてよい。また、碍子により複数のカソード及び複数のグリッドと絶縁された空間に設けられ、第1ダミー電極と電気的に接続される第2ダミー電極を更に備えてよい。また、第2ダミー電極は、カソードとカソード電源部とを接続する接続部を囲むように設けられてよい。
【0007】
複数のグリッドは、所定のグリッドと所定のグリッドに隣接するグリッドとの空間距離に基づく絶縁耐圧が、碍子の所定のグリッドと所定のグリッドに隣接するグリッドとが設けられた碍子沿面に基づく絶縁耐圧より低くなるように配置されてよい。また、それぞれのカソードに対応して設けられ、それぞれのカソードに印加される電圧を、カソード電源が生成する電圧の分解能より細かい分解能で、それぞれ調整する複数のカソード電圧微調整部を更に備えてよい。また、それぞれのグリッドに対応するカソードの電位に対して、それぞれのグリッドに電圧を印加する、複数のグリッド電源を更に備えてよい。
【0008】
また、複数のカソードがそれぞれ生成した熱電子量に基づいて、それぞれのカソードに流れるエミッション電流を検出し、検出したエミッション電流をそれぞれ略一定値に保つように、複数のグリッド電源をそれぞれ制御する複数のグリッド制御部を更に備えてよい。また、複数のカソードに、カソードを加熱するためのフィラメント電流をそれぞれ与える複数のフィラメント電流源と、それぞれのカソードにおけるフィラメント電流の電流値を調整する複数の加熱電流調整部と、
複数のグリッドが形成するべき複数の電子ビームの電流量に基づいて、それぞれの加熱電流調整部が調整するフィラメント電流の電流値を制御する加熱電流制御部とを更に備えてよい。また、1つのカソード電源が負電圧を印加する複数のカソードに、それぞれフィラメント電流を与えるための複数のカソードケーブルと、1つのカソード電源が負電圧を印加する複数のカソードにそれぞれ対応した複数のグリッドと複数のグリッド電源とを電気的に接続する複数のグリッドケーブルと、複数のグリッドケーブルをそれぞれ絶縁するための絶縁部と、絶縁部を囲むように設けられ、カソードのいずれかに与えられた電位と略等電位に保たれるシールド部とを有する高圧ケーブル部を更に備えてよい。
【0009】
また、カソードの表面積は、3.5平方ミリ以下であり、カソードの体積は、0.2立方ミリ以上であることが好ましい。また、碍子により、複数のカソード及び複数のグリッドから絶縁された空間に、絶縁ガス又は絶縁冷媒を還流させる還流部を更に備えてよい。また、碍子の温度を略一定温度に保つように、還流部における絶縁ガス又は絶縁冷媒の還流量を制御する温度制御部を更に備えてよい。
【0010】
本発明の第2の形態においては、電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、電子ビームを生成する電子ビーム生成装置と、電子ビームをウェハの所望の位置に偏向させる偏向器と、ウェハを載置するステージとを備え、電子ビーム生成装置は、熱電子を発生させる複数のカソードと、カソードに負電圧を印加し、カソードから熱電子を放出させるカソード電源部と、複数のカソードのそれぞれに対応し、複数のカソードのそれぞれから放出された熱電子をそれぞれ集束させ、複数の電子ビームを形成する複数のグリッドと、複数のカソード及び複数のグリッドが設けられた碍子とを有することを特徴とする電子ビーム露光装置を提供する。電子ビーム生成装置、偏向器、及びステージを格納するチャンバと、チャンバ内を減圧する減圧手段とを更に備え、チャンバ内の、減圧手段により減圧された空間である真空領域は、高抵抗膜又は導電体で囲まれていてよい。
【0011】
尚、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又、発明となりうる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。電子ビーム露光装置300は、電子ビームによりウェハ392に所定の露光処理を施す露光部350と、露光部350に含まれる各構成の動作を制御する制御系340とを備える。
【0014】
露光部350は、チャンバ352内部において複数の電子ビームを発生し、電子ビームの断面形状を所望に成形する電子ビーム成形手段360と、複数の電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替える照射切替手段370と、ウェハ392に転写されるパターンの像の向き及びサイズを調整するウェハ用投影系380を含む電子光学系を備える。また、露光部350は、パターンを露光すべきウェハ392を載置するウェハステージ396と、ウェハステージ396を駆動するウェハステージ駆動部とを含むステージ系を備える。
【0015】
電子ビーム成形手段360は、複数の電子ビームを発生させる電子ビーム生成装置100と、電子ビームを通過させることにより、照射された電子ビームの断面形状を成形する複数の開口部を有する第1成形部材362および第2成形部材372と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第1多軸電子レンズ364と、第1成形部材362を通過した複数の電子ビームを独立に偏向する第1成形偏向部366および第2成形偏向部368とを有する。
【0016】
電子ビーム生成装置100は、熱電子を発生させる複数のカソード10と、カソード10に負電圧を印加し、カソード10から熱電子を放出させるカソード電源部(図示せず)と、複数のカソード10のそれぞれに対応し、複数のカソード10のそれぞれから放出された熱電子をそれぞれ集束させ、複数の電子ビームを形成する複数のグリッド20と、それぞれのグリッド20に対応するカソード10の電位に対して、それぞれのグリッド20に電圧を印加する複数のグリッド電源(図示せず)と、複数のカソード10及び複数のグリッド20が設けられた碍子40とを有する。碍子40は、外面の少なくとも一部が、高抵抗膜で覆われていることが好ましい。また、当該高抵抗膜の上部は、チャンバ352と接続され、チャンバ352は接地されていることが好ましい。また、高抵抗膜の下部は、グリッド20と電気的に接続されていることが好ましい。グリッド20には、グリッド電源から負電圧が印加され、高抵抗膜の下部には、グリッド20と略同電位が与えられる。高抵抗膜の上部と高抵抗膜の下部との電位差により、高抵抗膜に微小な電流が流れ、カソード10から放出された熱電子が碍子40沿面に蓄積されるの防ぐことができる。
【0017】
照射切替手段370は、複数の電子ビームを独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第2多軸電子レンズ374と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に偏向させることにより、それぞれの電子ビームをウェハ392に照射するか否かを、それぞれの電子ビームに対して独立に切替えるブランキング電極アレイ376と、電子ビームを通過させる複数の開口部を含み、ブランキング電極アレイ376で偏向された電子ビームを遮蔽する電子ビーム遮蔽部材136とを有する。他の例においてブランキング電極アレイ376は、ブランキング・アパーチャ・アレイ・デバイスであってもよい。
【0018】
ウェハ用投影系380は、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、電子ビームの照射径を縮小する第3多軸電子レンズ378と、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束し、複数の電子ビームの焦点を調整する第4多軸電子レンズ384と、複数の電子ビームをウェハ392の所望の位置に、それぞれの電子ビームに対して独立に偏向する偏向部386と、ウェハ392に対する対物レンズとして機能し、複数の電子ビームをそれぞれ独立に集束する第5多軸電子レンズ388とを有する。
【0019】
制御系340は、統括制御部330及び個別制御部320を備える。個別制御部320は、電子ビーム制御部332と、多軸電子レンズ制御部334と、成形偏向制御部336と、ブランキング電極アレイ制御部338と、偏向制御部340と、ウェハステージ制御部342とを有する。統括制御部330は、例えばワークステーションであって、個別制御部320に含まれる各制御部を統括制御する。
【0020】
電子ビーム制御部332は、電子ビーム生成装置100を制御する。多軸電子レンズ制御部334は、第1多軸電子レンズ364、第2多軸電子レンズ374、第3多軸電子レンズ378、第4多軸電子レンズ384および第5多軸電子レンズ388に供給する電流を制御する。成形偏向制御部336は、第1成形偏向部366および第2成形偏向器368を制御する。ブランキング電極アレイ制御部338は、ブランキング電極アレイ376に含まれる偏向電極に印加する電圧を制御する。偏向制御部344は、偏向部386に含まれる複数の偏向器が有する偏向電極に印加する電圧を制御する。ウェハステージ制御部342は、ウェハステージ駆動部398を制御し、ウェハステージ396を所定の位置に移動させる。
【0021】
図2は、電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。電子ビーム生成装置100は、複数のカソード10、複数のグリッド20、複数のフィラメント電流源12、複数の加熱電流調整部26、複数の電流検出部16、グリッド制御部18、グリッド電源24、カソード微調整部48、及びカソード電源部30を有する。カソード電源部30は、複数のカソード電源32を有し、複数のカソード電源32のそれぞれは、図2に示すように、複数のカソード10に負電圧を印加する。つまり、1つのカソード電源40を、複数のカソード10が共有する。以下、一対のカソード10及びグリッド20に接続される電源系と、電源系の制御について説明する。
【0022】
電子ビーム制御部332は、それぞれのカソード電源32が複数のカソード10に印加する電圧を制御する。カソード10には、カソード電源32とカソード微調整部48とが印加する電圧の和である加速電圧が印加される。カソード微調整部48は、カソード電源32が生成することのできる電圧の分解能より小さい分解能で電圧を生成し、カソード10に印加する。また、カソード微調整部48は、複数のカソード10の抵抗値等の個体差に基づいてカソード10に印加する電圧を変動させるのが好ましい。電子ビーム制御部332は、カソード微調整部48がカソード10に印加する電圧をそれぞれ制御してよい。また、複数のカソード電源32は、それぞれが略等しい速度で、同時にカソード10に印加する電圧を昇圧及び降圧させることが好ましい。複数のカソード電源32の昇圧及び降圧速度を制御することにより、装置起動時等における放電等を防ぐことができる。
【0023】
グリッド電源24は、グリッド20に、それぞれのグリッド20が対応するカソード10の電位に対して更に電圧を印加した電位を与える。グリッド20には、カソード電源32が印加する電圧と、グリッド電源24が印加する電圧との和が印加される。例えば、カソード電源32は、50kVの負電圧を発生し、グリッド電源24は、2kVの負電圧を発生した場合、カソード10には略50kVの負電圧が印加され、グリッド20には略52kVの負電圧が印加される。
【0024】
カソード10は、フィラメント電流源12から供給されるフィラメント電流により加熱されることにより、熱電子を発生させる。発生した熱電子は、カソード10に印加される負電圧によりカソード10から放出される。例えば、第1成形部材362やステージ396等を接地させてアノードとし、カソード10と当該アノードとの間に電位差を生じさせることにより、熱電子をウェハ方向に放出させるのが望ましい。加熱電流調整部26は、フィラメント電流源12がカソード10に供給するフィラメント電流を制御する。フィラメント電流を制御することにより、カソードから放出された熱電子量を制御することができるため、電子ビームの電流量を制御することができる。電子ビーム制御部332は、加熱電流調整部26に、生成すべき電子ビームの電流量の情報を与えてよく、加熱電流調整部26は、当該電子ビームの電流量の情報に基づいて、フィラメント電流源がカソード10に供給するフィラメント電流を制御してよい。また、電子ビーム生成装置100は、グリッド20が形成するべき電子ビームの電流量に基づいて、加熱電流調整部26が調整するフィラメント電流の電流値を制御する加熱電流制御部を更に有してもよい。カソード10には、生成した熱電子量に基づいたエミッション電流が流れる。カソード10から放出された熱電子は、カソード10より更に負電圧を印加されたグリッド20により集束される。また、カソード10に印加される負電圧の電圧値に基づいて、カソード10から放出される熱電子の量、即ち電子ビームの電流量が変化する。
【0025】
電流検出部16は、カソード10に流れるエミッション電流を検出する。グリッド制御部18は、電流検出部16が検出したエミッション電流に基づいて、グリッド電源24がグリッド20に印加する電圧を制御し、電子ビームの電流量を制御する。グリッド制御部18は、例えば検出したエミッション電流をそれぞれ略一定値に保つように、グリッド電源24をそれぞれ制御してよい。電子ビーム制御部332は、生成されるべき電子ビームの電流量に基づいて、グリッド制御部18を制御する。例えば、電子ビーム制御部332は、予め定められた電子ビームの電流量を保つように、グリッド制御部18が制御するグリッド電源24における電圧値を制御する。グリッド制御部18は、例えば複数のカソード10に流れるエミッション電流のそれぞれを略一定値に保つように、グリッド電源24における電圧値を制御する。複数のカソード10に流れるエミッション電流のそれぞれを略一定値に保つように、グリッド電源24における電圧値を制御することにより、それぞれの電子ビームの電流量を、フィラメント電流量の1パラメータを制御することにより調整することができる。
【0026】
以上、一対のカソード10及びグリッド20に接続される電源系と、電源系の制御について説明したが、他のカソード10及びグリッド20の対に接続される電源系と、電源系の制御も同様の機能を有し、又同様の動作を行う。以上説明した電子ビーム生成装置100によれば、複数のカソード10が放出する熱電子量及び、複数のグリッドが形成する電子ビームの電流量を、複数のカソード及び複数のグリッド毎に制御することができる。また、それぞれのカソード電源が複数のカソードに電圧を印加し、複数のカソード10に、電圧を微調整するカソード微小電圧源がそれぞれ接続されているため、複数のカソード10にそれぞれ大容量の電源を接続する必要が無く、電子ビーム生成装置100が備えるべき電源の容量を小さくすることができる。以下、それぞれのカソード電源32が、それぞれ電圧を印加するカソード10及びグリッド20の配置について説明する。
【0027】
図3は、碍子40に設けられた複数のカソード10及び複数のグリッド20の配置の一例の説明図である。図3(a)は、碍子40の断面図であり、図3(b)は、複数のカソード及び複数のグリッドが設けられた碍子40の底面を示す。図3(a)に示すように、碍子40の底面に設けられた複数のカソード10及び複数のグリッド20は、図3(b)に示すように、マトリクス状に設けられる。本例においては、図3(b)において点線で囲まれた同一の領域にあるカソード10及びグリッド20に、同一のカソード電源32から電圧が印加される。つまり、マトリクスの中心から略等距離にある複数のカソード10及び複数のグリッド20に、1つのカソード電源から略等しい電圧が印加される。
【0028】
図3(b)に示すように、同一のカソード電源32から電圧が印加される複数のカソード10には、マトリクスの中心からの距離に基づいた電圧が印加される。例えば、碍子40の底面において、温度分布に偏りがある場合であっても、マトリクスの中心からの距離に基づいて、電圧を印加することにより、温度分布の偏りの影響を排除し、電子ビームの電流量を制御することができる。
【0029】
また、電子ビーム生成装置100は、複数のグリッド20の最外周のグリッド20より更に外側の、複数のグリッド20が設けられた碍子40の底面と略同一面内に、碍子40の底面と略垂直な方向において、最外周のグリッド20と略等しい高さの第1ダミー電極34を更に備えることが好ましい。第1ダミー電極は、図3(b)に示すように、複数のカソード10及び複数のグリッド20の外周に、複数のカソード10及び複数のグリッド20を囲むように設けられていることが好ましい。最外周のグリッド20と略等しい高さの第1ダミー電極34を備えることにより、複数のカソード10及び複数のグリッド20に印加される電圧に基づいて、最外周のグリッド20周辺に発生する電界と、他のグリッド20周辺に発生する電界との均一性を保つことができる。グリッド20周辺に発生する電界との均一性を保つことにより、複数のカソード10及び複数のグリッド20から照射される複数の電子ビームの電流量を精度よく制御することができる。また、電界の均一性を保つことにより、電界集中による放電を防ぐことができる。第1ダミー電極34は、複数のグリッド20が設けられた面から、複数のグリッド20が設けられた方向と略逆方向に突出する突出部を含むことが好ましい。図3(a)に示すように、第1ダミー電極34が突出部を有し、当該突出部が碍子40の側面の一部を覆うため、カソード10から放出された熱電子が碍子40の側面に到達し、碍子40の側面における熱電子の蓄積を防ぎ、熱電子の蓄積による放電を抑制することができる。
【0030】
また、碍子40は、碍子の外面の少なくとも一部を覆う高抵抗膜42と、高抵抗膜42の上部と電気的に接続された第1電極36と、高抵抗膜42の下部と電気的に接続された第2電極38とを有し、第2電極38は、複数のグリッド20の内の1つと、第1ダミー電極34を介して電気的に接続され、接続されたグリッド20と略同一の電位が与えられ、第2電極38は、略零電位が与えられることが好ましい。第2電極38と第1電極36との電位差により高抵抗膜42に微小な電流が流れ、碍子40の側面に到達する熱電子の蓄積を防ぐことができ、熱電子の蓄積による放電を防ぐことができる。高抵抗膜の抵抗値は、グリッド電圧源24に対して過負荷とならない程度の電流を流す抵抗値であることが好ましい。例えば、グリッド30に50kVの負電圧が与えられた場合、高抵抗膜20の上部と高抵抗膜20の下部との間の抵抗値を0.5GΩから500GΩ程度にすることが好ましい。この場合、高抵抗膜の上部と下部の間には、0.1μAから100μA程度の電流が流れ、高抵抗膜20における熱電子による電荷の蓄積を防ぎ、且つグリッド電圧源24に過負荷とはならない。また、高抵抗膜20は、酸化インジウム等の金属酸化物を含むことが好ましい。この場合、高抵抗膜20は、硝子質物質に酸化インジウム略均等に混合したものであってよい。高抵抗膜20が酸化インジウムを含むことにより、高抵抗膜20の上部と高抵抗膜20の下部との間の抵抗値を0.5GΩから500GΩ程度である高抵抗膜20を容易に生成することができる。
【0031】
また、電子ビーム生成装置100は、碍子40により複数のカソード10及び複数のグリッド20と絶縁された空間に設けられ、第1ダミー電極34と電気的に接続される第2ダミー電極50を更に備えることが好ましい。第2ダミー電極50は、カソード10とカソード電源部30とを接続する接続部44を囲むように設けられていることが好ましい。接続部44は、カソード電源部30のカソード電源32がカソード10に電圧を印加するためのケーブルと、カソード10が電圧を受け取るためのケーブルとを接続する。例えば接続部44は、コネクタ等であってよい。接続部44は、それぞれのカソード10に対応して複数設けられてよく、また、1つの接続部44が、1つのカソード電源32と複数のカソード10とを接続してよい。また、第2ダミー電極50は、当該ケーブルを通過させるためのケーブル通過部52を有してよい。第2ダミー電極50を設けることにより、碍子40における電界集中を緩和することができ、また、接続部44周辺の電界を緩和することができる。
【0032】
また、1つのカソード電源32が負電圧を印加する複数のカソードに、それぞれフィラメント電流を与えるための複数のカソードケーブルと、1つのカソード電源32が負電圧を印加する複数のカソード10にそれぞれ対応した複数のグリッド20と複数のグリッド電源24とを電気的に接続する複数のグリッドケーブルとは、1本の高圧ケーブル54に含まれるのが好ましい。この場合、高圧ケーブルは、複数のグリッドケーブルをそれぞれ絶縁する絶縁部と、絶縁部を囲むように設けられ、当該複数のカソードケーブルに接続された複数のカソード10のいずれかに与えられた電位と略等電位に保たれるシールド部とを有することが好ましい。
【0033】
また、複数のカソード10のそれぞれの表面積は、3.5平方ミリ以下であり、それぞれの体積は、0.2立方ミリ以上であることが好ましい。例えば、それぞれのカソード10は、熱電子を放出する熱電子放出材料と、熱電子放出材料の両側面に設けられた2個のヒータを有する場合、複数のカソード10のそれぞれの表面積は、3.5平方ミリ以下であり、それぞれの体積は、0.2立方ミリ以上にすることにより、加熱のための消費電力を2W以下とすることができる。このため、電子ビーム生成装置100を低発熱で動作させることができ、温度上昇による、チャンバ352内部の真空度の劣化を防ぎ、電子ビームを精度よく制御することができる。また、カソード10の寸法を上記寸法にすることにより、カソード10を機械的に保持することが可能となり、また、保持するための接触圧力の増加及び電気的な接触抵抗の増加等の問題を回避することができる。
【0034】
また、電子ビーム生成装置100は、碍子40により複数のカソード10及び複数のグリッド20から絶縁された空間に、絶縁ガス又は絶縁冷媒を還流させる還流部64を更に備えることが好ましい。還流部64は、例えば、フッ素系不活性液体等の冷媒や、6フッ化硫黄等の絶縁ガスを還流させる。また、還流部64は、6フッ化硫黄等の絶縁ガスを加圧し、還流させることが好ましい。また、電子ビーム生成装置100は、碍子40の温度を略一定温度に保つように、還流部64における絶縁ガス又は絶縁冷媒の還流量を制御する温度制御部46を更に備えることが好ましい。碍子40内部の空間を略一定温度に保つことにより、カソード10等が設けられた碍子40の底面の熱膨張等を小さくすることができ、電子ビームの光軸を安定させることができる。
【0035】
また、複数のグリッド20は、所定のグリッド20と所定のグリッド20に隣接するグリッド20との空間距離に基づく絶縁耐圧が、碍子40の所定のグリッド20と所定のグリッド20に隣接するグリッド20とが設けられた碍子40沿面に基づく絶縁耐圧より低くなるように配置されていることが好ましい。
【0036】
図4は、所定のグリッド20と、所定のグリッド20に隣接するグリッド20との絶縁耐圧の説明図である。図4において、所定のグリッド20aと所定のグリッド20bとの空間距離をL1とする。それぞれのカソード10は、絶縁部58に設けられ、絶縁部58と碍子40の底面との間に、コネクタ部56が設けられている。カソード10及びグリッド20は、コネクタ部56を介してカソード電源32及びグリッド電源24と電気的に接続されている。本例においては、空間距離L1に基づく絶縁耐圧が、図4の点線60で示される、碍子40、コネクタ部56、及び絶縁部58の沿面の絶縁耐圧より小さくなるよう、複数のグリッド20が配置されている。点線60で示される経路における絶縁耐圧より、空間距離L1に基づく絶縁耐圧を小さくすることにより、放電時に、それぞれのグリッド20間の碍子40、コネクタ部56、及び絶縁部58の沿面における絶縁破壊を防ぐことができる。また、それぞれのグリッド間の距離L1を、それぞれの絶縁部58間の距離L2より小さくすることが好ましい。また、図4に示すように、グリッド20の先端部はフレンジ状であることが好ましい。
【0037】
図5は、本発明における電子ビーム露光装置300の簡略図である。電子ビーム生成装置300は、電子ビーム生成装置100、偏向器である第1成形偏向部366、偏向器である第2成形偏向部368、及びステージ396を格納するチャンバ352と、チャンバ352内を減圧する減圧手段62とを更に備え、チャンバ352内の、減圧手段62により減圧された空間である真空領域は、高抵抗膜又は導電体で囲まれている。減圧手段62は、チャンバ352の真空領域を7.5×10−11Pa(1×10−8torr)程度に減圧できることが好ましい。
【0038】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0039】
【発明の効果】
上記説明から明らかなように、本発明の電子ビーム生成装置100及び電子ビーム露光装置300によれば、複数の電子ビームを生成し、ウェハを効率よく露光することができる。また、複数の電子ビームをそれぞれ独立して精度よく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る電子ビーム露光装置300の構成を示す。
【図2】 電子ビーム生成装置100の電源系の構成の一例を示す。
【図3】 1つの碍子40に設けられた複数のカソード10及び複数のグリッド20の配置の一例の説明図である。
【図4】 所定のグリッド20と、所定のグリッド20に隣接するグリッド20との絶縁耐圧の説明図である。
【図5】 本発明における電子ビーム露光装置300の簡略図である。
【符号の説明】
10・・・カソード、12・・・フィラメント電流源
16・・・エミッション電流検出部、18・・・グリッド制御部
20・・・グリッド、24・・・グリッド電源
26・・・加熱電流調整部、30・・・カソード電源部
32・・・カソード電源、34・・・第1ダミー電極
36・・・第1電極、38・・・第2電極
40・・・碍子、42・・・高抵抗膜
44・・・接続部、46・・・温度制御部
48・・・カソード微調整部、50・・・第2ダミー電極
52・・・ケーブル通過部、54・・・高圧ケーブル
56・・・コネクタ部、58・・・絶縁部
62・・・減圧手段、64・・・還流部、100・・・電子ビーム生成装置
300・・・電子ビーム露光装置、320・・・個別制御部
330・・・統括制御部、332・・・電子ビーム制御部
334・・・多軸電子レンズ制御部、336・・・成形偏向制御部
338・・・ブランキング電極アレイ制御部、340・・・制御系
342・・・ウェハステージ制御部、344・・・偏向制御部
350・・・露光部、352・・・チャンバ
360・・・電子ビーム成形手段、362・・・第1成形部材
364・・・第1多軸電子レンズ、366・・・第1成形偏向部
368・・・第2成形偏向部、370・・・照射切替手段
372・・・第2成形部材、374・・・第2多軸電子レンズ
376・・・ブランキング電極アレイ、378・・・第3多軸電子レンズ
380・・・ウェハ用投影系、382・・・電子ビーム遮蔽部材
384・・・第4多軸電子レンズ、386・・・偏向部
388・・・第5多軸電子レンズ、392・・・ウェハ
396・・・ウェハステージ、398・・・ウェハステージ駆動部
Claims (17)
- 複数の電子ビームを生成する電子ビーム生成装置であって、
熱電子を発生させる複数のカソードと、
前記カソードに負電圧を印加し、前記カソードから前記熱電子を放出させるカソード電源部と、
前記複数のカソードのそれぞれに対応し、前記複数のカソードのそれぞれから放出された前記熱電子をそれぞれ集束させ、前記複数の電子ビームを形成する複数のグリッドと、
前記複数のカソード及び前記複数のグリッドが設けられた碍子と
を備え、
前記カソード電源部は、複数のカソード電源を有し、
前記複数のカソード電源のそれぞれは、複数の前記カソードに、負電圧を印加し、
前記複数のカソードはマトリクス状に設けられ、
同一の前記カソード電源から電圧が印加される複数の前記カソードには、前記マトリクスの中心からの距離に基づいた電圧が印加されることを特徴とする電子ビーム生成装置。 - 前記複数のグリッドの最外周の前記グリッドより更に外側の、前記複数のグリッドが設けられた面と略同一面内に、前記複数のグリッドが設けられた面と略垂直な方向において、最外周の前記グリッドと略等しい高さの第1ダミー電極を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記第1ダミー電極は、当該第1ダミー電極における前記複数のグリッドが設けられた前記碍子の底面と略同一面から、前記複数のグリッドが設けられた方向と略逆方向に突出する突出部を含み、
前記突出部は、前記碍子の側面の一部を覆うように設けられることを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記碍子は、
前記碍子の外面の少なくとも一部を覆う高抵抗膜と、
前記高抵抗膜の上部と電気的に接続された第1電極と、
前記高抵抗膜の下部と電気的に接続された第2電極と
を有し、
前記第2電極は、複数の前記グリッドの内の1つと、前記第1ダミー電極を介して電気的に接続され、接続された前記グリッドと略同一の電位が与えられ、
前記第2電極は、略零電位が与えられることを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム生成装置。 - 前記碍子により複数の前記カソード及び複数の前記グリッドと絶縁された空間に前記カソードと前記カソード電源とを接続する接続部を囲むように設けられ、前記第1ダミー電極と電気的に接続される第2ダミー電極を更に備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記第2ダミー電極は、前記カソードと前記カソード電源部とを接続する接続部を囲むように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記複数のグリッドは、所定の前記グリッドと前記所定のグリッドに隣接するグリッドとの空間距離に基づく絶縁耐圧が、前記碍子の前記所定のグリッドと前記所定のグリッドに隣接するグリッドとが設けられた碍子沿面に基づく絶縁耐圧より低くなるように配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。
- それぞれの前記カソードに対応して設けられ、それぞれの前記カソードに印加される電圧を、前記カソード電源が生成する電圧の分解能より細かい分解能で、それぞれ調整する複数のカソード電圧微調整部を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。
- それぞれの前記グリッドに対応する前記カソードの電位に対して、それぞれの前記グリッドに電圧を印加する、複数のグリッド電源を更に備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。
- 予め定められた電子ビームの電流量を保つように、前記複数のグリッド電源における電圧値をそれぞれ制御する複数のグリッド制御部を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の電子ビーム生成装置。
- 前記複数のカソードに、前記カソードを加熱するためのフィラメント電流をそれぞれ与える複数のフィラメント電流源と、
それぞれの前記カソードにおける前記フィラメント電流の電流値を調整する複数の加熱電流調整部と、
前記複数のグリッドが形成するべき複数の前記電子ビームの電流量に基づいて、それぞれの前記加熱電流調整部が調整する前記フィラメント電流の電流値を制御する加熱電流制御部と
を更に備えることを特徴とする請求項10に記載の電子ビーム生成装置。 - 1つの前記カソード電源が負電圧を印加する複数の前記カソードに、それぞれフィラメント電流を与えるための複数のカソードケーブルと、
1つの前記カソード電源が負電圧を印加する複数の前記カソードにそれぞれ対応した複数の前記グリッドと複数の前記グリッド電源とを電気的に接続する複数のグリッドケーブルと、
前記複数のグリッドケーブルをそれぞれ絶縁するための絶縁部と、
前記絶縁部を囲むように設けられ、前記カソードのいずれかに与えられた電位と略等電位に保たれるシールド部と
を有する高圧ケーブル部を更に備えることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。 - 前記カソードの表面積は、3.5平方ミリ以下であり、前記カソードの体積は、0.2立方ミリ以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。
- 前記碍子により、複数の前記カソード及び複数の前記グリッドから絶縁された空間に、絶縁ガス又は絶縁冷媒を還流させる還流部を更に備えることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の電子ビーム生成装置。
- 前記碍子の温度を略一定温度に保つように、前記還流部における前記絶縁ガス又は前記絶縁冷媒の還流量を制御する温度制御部を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の電子ビーム生成装置。
- 電子ビームによりウェハを露光する電子ビーム露光装置であって、
前記電子ビームを生成する電子ビーム生成装置と、
前記電子ビームを前記ウェハの位置に偏向させる偏向器と、
前記ウェハを載置するステージと
を備え、
前記電子ビーム生成装置は、
熱電子を発生させる複数のカソードと、
前記カソードに負電圧を印加し、前記カソードから前記熱電子を放出させるカソード電源部と、
複数の前記カソードのそれぞれに対応し、複数の前記カソードのそれぞれから放出された前記熱電子をそれぞれ集束させ、複数の前記電子ビームを形成する複数のグリッドと、
複数の前記カソード及び複数の前記グリッドが設けられた碍子と
を有し、
前記カソード電源部は、複数のカソード電源を有し、
前記複数のカソード電源のそれぞれは、複数の前記カソードに、負電圧を印加し、
前記複数のカソードはマトリクス状に設けられ、
同一の前記カソード電源から電圧が印加される複数の前記カソードには、前記マトリクスの中心からの距離に基づいた電圧が印加されることを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 前記電子ビーム生成装置、前記偏向器、及び前記ステージを格納するチャンバと、
前記チャンバ内を減圧する減圧手段と
を更に備え、
前記チャンバ内の、前記減圧手段により減圧された空間である真空領域は、高抵抗膜又は導電体で囲まれていることを特徴とする請求項16に記載の電子ビーム露光装置。
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