JP4214616B2 - 電子銃、電子線露光転写装置及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

電子銃、電子線露光転写装置及び半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、半導体集積回路等のリソグラフィーに用いられる電子線露光装置に使用する電子銃、それを使用した電子線露光転写装置、及びその電子線露光転写装置を使用した半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体に要求される回路パターンの寸法が0.1μm以下となるに伴ない、従来の光学方式の露光転写装置の使用が限界に達し、これを克服するものとして電子線露光装置の開発が進められている。従来、一般的に使用されていた電子線露光装置は、電子線により描画を行うものや、可変成形方式、セルプロ方式などの転写方式のもので、スループットが著しく低いという問題点を有していた。
【0003】
そこで、近年新たに、露光の高解像と高スループットの両方を兼ね備えた電子線露光方式の検討が進められている。このような方式の内で最近注目をあつめている方式は、1ダイまたは複数ダイを一度に露光するのではなく、サブフィールドと呼ばれる小さな領域に分割して転写露光するという方式である。この分割転写方式の小領域は数100μm角以上であることが要求され、従来の可変成形方式やセルプロ方式の数10倍以上の大きさである。
【0004】
発明者は、このような広い領域を一様照明可能な電子銃を発明し、その内容は特開平10−223165号公報に公開されている。これは、温度制限領域において動作するもので、カソードの先端が、径1mm以上の平で仕事関数のそろった面を有し、カソードの先端が、ウェネルト電極と同電位か、又はウェネルト電極よりアノード側に突出しているものである。この電子銃は、低輝度(103A/cm2・sr以下)、高エミッタンス(100kVにおいて数1000μm・mrad)という特性を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−223165号公報に記載された電子銃では、露光に寄与しない電子ビームが多いので、かなり大きな容量の電源が必要であるという問題点があった。さらに、無駄な電流による発熱を押さえるために、冷却機構も不必要に大きなものが要求されるという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、無駄な電子ビームをエネルギーが大きくならないうちに吸収し、大きな容量の電源や大きな冷却機構を必要としない電子銃及びそれを利用した電子線露光転写装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための第1の手段は、温度制限領域で動作させる電子銃において、カソードより下流にできる第1のクロスオーバ面にクロスオーバの形状を制限するためのアパーチャーが設けられていることを特徴とする電子銃(請求項1)である。
【0008】
本手段においては、電子ビームのエネルギーが大きくない第1のクロスオーバー面において無駄な電子ビームをカットしてしまうので、それ以後の加速により高エネルギーとされて電子線光学系を流れる電子ビームは、ほとんど有効な電子ビームのみになる。よって、必要な高電圧の電源の容量は小さくて済み、かつ、高電圧の電流の有するエネルギーが小さくなるので、冷却装置の容量も小さくて済むようになる。設けられるアパーチャーで遮られる電子ビームの電流を吸収するためには別の電源が必要であるが、第1クロスオーバー面においては、まだ電子は十分に加速されておらず、そのエネルギーが小さいので、高電圧の電源を必要としない。
【0009】
アパーチャーをクロスオーバー面に設けるのは以下の理由による。すなわち、電子線露光装置の光学系は、クロスオーバー面上での電流分布が、そのまま被露光面上での電流の入射角に対する強度分布となるように設計されている。よって、クロスオーバー面上で、その外側に位置する電流をアパーチャーによりカットすれば、被露光面上で、中心となる入射角から離れた入射角の電子ビームがカットされることになる。特に、被露光面に入射する電子ビームがテレセントリックなものである場合は、入射角の大きな電子ビームがカットされることになり、露光転写上好ましい。また、このことにより、投影光学系から発生する幾何収差を低減させることが可能である。
【0010】
また、本手段において、電子銃を温度制限領域で用いるものに制限しているのは、空間電荷制限領域で使用する場合は、クロスオーバーをカソードに近い位置にせざるを得ず、アパーチャーをこの位置に設けると、電子銃全体の設計が困難になるからである。
【0011】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記第1のクロスオーバーが、引き出し電極内に形成されるようにされていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0012】
第1のクロスオーバーを引き出し電極より手前(カソード側)に形成すると、電子ビームの形状が形成される場所にアパーチャーが置かれることになり、その分電子銃の設計が困難になる。第1のクロスオーバーを引き出し電極より後に形成すると、すでに電子線が十分加速された後に、その一部をアパーチャーによりカットする必要があり、高圧の電源が必要となって本発明の効果が低減してしまう。本手段においては、前記第1のクロスオーバーが、引き出し電極内に形成されるようにされているので、このような不都合が生じない。
【0013】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段又は第2の手段であって、前記アパーチャーにより反射された電子を吸収する反射防止板を有することを特徴とするもの(請求項3)である。
【0014】
前記アパーチャーに入射した電子の一部は反射電子となってカソード側に戻り、電子線の形状が形成される部分の電場を乱す恐れがある。本手段においては、アパーチャーにより反射された電子を吸収する反射防止板が設けられているので、このようなことが防止される。
【0015】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、カソードから放出される電子ビームのエネルギーが100kV あり、カソードと前記アパーチャーの電位差が20kV以下であることを特徴とするもの(請求項4)である。
【0016】
電子ビームのエネルギーが100kV程度の電子銃の場合、カソードとアパーチャーの電位差が20kV以下とすれば、アパーチャー用の電源の製造も容易であり、かつ、この引き出し電極部でむだ電流を除去すれば、100kVでアースに対して流れる電流が減少し、その分だけ100kV電源の容量を小さくすることができる。
【0017】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段に係る電子銃を有してなることを特徴とする電子線露光転写装置(請求項5)である。
【0018】
本手段においては、前記第1の手段か第4の手段に係る電子銃を有しているので、高電圧大容量電源や、大きな冷却装置を必要としない。また、投影光学系から発生する幾何収差を低減させることが可能である。
【0019】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第5の手段である電子線露光転写装置を用いて、マスク又はレチクル上に形成されたパターンを、ウェハーに転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法(請求項6)である。
【0020】
本手段においては、高電圧大容量電源や、大きな冷却装置を必要としない電子線露光転写装置を用いているので、安価に半導体デバイスを製造できると共に、幾何収差の少ない電子線露光転写装置を用いているので、パターン幅の小さい半導体デバイスを製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の一例である電子銃の構成を示す概要図である。図1において、1はカソード、2はカソードから放出された電子ビーム、2’はカソードの端面から放出された電子ビーム、3は引き出し電極、4はカソード−引き出し電極間電圧印加電源、5はウェネルト電極、6はカソード−ウェネルト間電圧印加電源、7はカソード−アース間電圧印加電源、8はアパーチャー、9はアパーチャーを通過した電子ビーム、10は反射電子防止板である。
【0022】
カソード1から放出された電子ビーム2は、引き出し電極3に印加されたカソードに対して正の電圧により加速されて、電子銃から放出される。引き出し電極3には、カソード−引き出し電極間電圧印加電源4により、カソード1に対して正の電圧が印加されている。カソード1の周囲にはウェネルト電極5が設けられ、カソード−ウェネルト間電圧印加電源6により印加された、カソード1に対して負の電圧により、電子ビーム2が外側に広がるのを防止し、電子ビームが集中するクロスオーバーを作り出している。電子銃から放出された電子ビームは、カソード−アース間電圧印加電源7でさらに加速され、電子線露光転写等に使用される。
【0023】
本実施の形態においては、最初のクロスオーバー(第1のクロスオーバー)は引き出し電極3内に形成されるようになっており、その位置にアパーチャー8が設けられ、カソードの端面から放出された電子ビーム2’を遮蔽して吸収する。アパーチャー8は引き出し電極3に接続されて、引き出し電極3と同電位にされており、遮蔽された電子ビーム2’の電流は、カソード−引き出し電極間電圧印加電源4に吸収される。アパーチャー8を通過した電子ビーム9のみが露光転写等に使用される。
【0024】
本実施の形態においては、アパーチャー8よりカソード側に、反射防止板10が設けられている。反射防止板10は、アパーチャー8で反射された反射電子を吸収するもので、引き出し電極3から見てカソード1側の電場を乱さない位置に設けられ、図に示す例では、引き出し電極3に接続、支持されている。反射防止板10そのものは、電子ビーム2の流れを遮ることがないように、十分大きな開口を有している。
【0025】
図2は、第1のクロスオーバ面上での電子ビームの電流分布を示す図であり、Aが全電流分布、A’がアパーチャー8でカットされる部分の電流分布を示している。電子線露光装置の電子線光学系は、クロスオーバ面上の電流分布が、そのまま被露光面上での電流の角強度分布となるように設計される。すなわち、クロスオーバー面において光軸から離れた部分を通過する電子ビームは、被露光面で入射光の光軸に対して、クロスオーバー面での光軸からの距離に対応した傾きを持って入射する。
【0026】
また、被露光面に入射する電子ビームはテレセントリックになるように電子線光学系が設計されているので、クロスオーバー面において光軸から離れた部分を通過する電子ビームは、それに応じた入射角で被露光面に入射することになる。よって、図2は、被露光面での電子ビームの入射角分布を示す図でもある。図2に示すように引き出し電極内のアパーチャ8により、入射角分布の裾がカットされ、9で示された部分のみ透過させているので、この裾部分から発生する幾何収差を低減させる効果も生じることになる。
【0027】
多くの電子線露光装置においては、カソード−アース間電圧印加電源は100kV程度の電圧を印加する。この場合には、アパーチャー8とカソード1間の電圧、すなわち図1の場合はカソード−引き出し電極間電圧印加電源4の電圧は20kV以下とすると、アパーチャー8用の電源として、特別な高圧電源とならない範囲で電源装置を製造することができ、かつ、この引き出し電極部でむだ電流を除去すれば、100kVでアースに対して流れる電流が減少し、その分だけ100kV電源の容量を小さくすることができる。
【0028】
アパーチャー8及び反射防止板10を構成する材料としては高融点金属が適当であり、例えば、タングステンやモリブデンが使用できる。また、導電性で高融点であることに加え、反射電子が少ない材料として、炭素を使用することも可能である。
【0029】
図3は、本発明の実施の形態の一例である電子線露光転写装置の構成の概要を示す図である。図3において、11は図1に示された電子銃、12は電子ビーム、13a、13bは照明レンズ、14はマスク、15は第1投影レンズ、16は第2投影レンズ、17はウェハー、18はアパーチャー、19、20は偏向器である。
【0030】
図1に示されたような電子銃11から放出された電子ビームは、照明レンズ13a、13bでテレセン性を有する照明とされ、マスク14上に電子銃のカソード面の像を作ることにより、マスク14面を一様に照明する。マスク14上に形成された回路パターンは、第1投影レンズ15と第2投影レンズ16により、ウェハー17の表面に結像する。マスク14で散乱された電子を除去するため、アパーチャー18が設けられている。
【0031】
偏向器19は、マスク14の照明位置を変化させ、偏向器20は、マスクからの電子ビームの、ウェハー面での結像位置を変化させるのに使用される。マスク14、ウェハー17、アパーチャー18はアース電位に保たれている。
【0032】
従来の電子線露光装置においては、露光に使用されない電子ビームは、主としてアパーチャー18で吸収された。この位置では電子ビームのエネルギーが高いので、吸収する電源として高電圧大電流のものが必要であった。
【0033】
この装置においては、電子銃11において、露光に使用されない電子ビームがカットされているので、アパーチャー18で吸収される電子ビームは少なく、よって、電源として高電圧小電流のもので対処可能である。また、これに伴ない、冷却装置の容量も小さくて済むようになる。さらに、電子銃11中のアパーチャーにより、マスク17に入射するときに開き角の大きな電子線が初めからカットされているので、レンズ系の幾何収差を低減することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係るものにおいては、電子ビームのエネルギーが大きくない第1のクロスオーバー面において、無駄な電流をカットしてしまうので、必要な高電圧の電源の容量は小さくて済み、かつ、冷却装置の容量も小さくて済むようになる。また、投影光学系から発生する幾何収差を低減させることが可能である。
【0035】
請求項2に係る発明においては、第1のクロスオーバーが、引き出し電極内に形成されるようにされているので、電子銃の設計が困難にならず、かつ、電子線のエネルギーが大きくならないうちに吸収することができる。
【0036】
請求項3に係る発明においては、アパーチャーにより反射された電子を吸収する反射防止板が設けられているので、カソード側に戻った反射電子により、カソードがダメージを受けたり、多重散乱による絶縁物のチャージアップが発生したりするのを回避することができる。
【0037】
請求項4に係る発明においては、アパーチャー用の電源の製造も容易であり、かつ、第1のクロスオーバーの位置を電子銃の設計上適当な位置に設定することができる。
【0038】
請求項5に係る発明においては、本発明に係る電子銃を使用しているので、高電圧大容量電源や、大きな冷却装置を必要とせず、さらに、投影光学系から発生する幾何収差を低減させることが可能である。
【0039】
請求項6に係る発明においては、安価に半導体デバイスを製造できると共に、パターン幅の小さい半導体デバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例である電子銃の構成を示す概要図である。
【図2】図2は、第1のクロスオーバ面上での電子ビームの電流分布を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例である電子線露光転写装置の構成の概要を示す図である。
【符号の説明】
1…カソード、2…カソードから放出された電子ビーム、2’…カソードの端面から放出された電子ビーム、3…引き出し電極、4…カソード−引き出し電極間電圧印加電源、5…ウェネルト電極、6…カソード−ウェネルト間電圧印加電源、7…カソード−アース間電圧印加電源、8…アパーチャー、9…アパーチャーを通過した電子ビーム、10…反射電子防止板、11…図1に示された電子銃、12…電子ビーム、13a、13b…照明レンズ、14…マスク、15…第1投影レンズ、16…第2投影レンズ、17…ウェハー、18…アパーチャー、19、20…偏向器、A…全電流分布、A’…アパーチャーでカットされる部分の電流分布

Claims (6)

  1. 温度制限領域で動作させる電子銃において、カソードより下流にできる第1のクロスオーバ面にクロスオーバの形状を制限するためのアパーチャーが設けられていることを特徴とする電子銃。
  2. 請求項1に記載の電子銃であって、前記第1のクロスオーバーが、引き出し電極内に形成されるようにされていることを特徴とする電子銃。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電子銃であって、前記アパーチャーより前記カソード側に、前記アパーチャーにより反射された電子を吸収する反射防止板を有することを特徴とする電子銃。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の電子銃であって、前記カソードから放出される電子ビームのエネルギーが100kV あり、前記カソードと前記アパーチャーの電位差が20kV以下であることを特徴とする電子銃。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれかに記載の電子銃を有してなることを特徴とする電子線露光転写装置。
  6. 請求項5に記載の電子線露光転写装置を用いて、マスク又はレチクル上に形成されたパターンを、ウェハーに転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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