JP4052531B2 - 自動二輪車用エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動二輪車用エアバッグ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車用エアバッグ装置としては、特開平9−328087号公報「自動二輪車用エアバッグ装置」が知られている。
上記技術は、エアバッグの圧縮変形の他に、エアバッグを移動させることにより乗員の衝撃を効果的に緩和する自動二輪車用エアバッグ装置に関するものであり、図7に示される通り、車体フレーム1と、この車体フレーム1の前方に操舵自在に取付けたフロントフォーク2と、このフロントフォーク2の先端に回転自在に取付けた前車輪Wfと、車体フレーム1から燃料タンク4の上方に渡した移動フレーム10と、この移動フレーム10の上部に取付けたエアバッグモジュールMと、このエアバッグモジュールMを構成するエアバッグ16と、車体フレーム1の前部に設けた衝撃検知センサーSとを備えるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記技術では、自動二輪車が他の車両等に衝突した場合、衝撃は、前車輪Wf及びフロントフォーク2を介して車体フレーム1に伝わり、衝撃検知センサーSで検知し、この検知信号がエアバッグモジュールMに伝わり、エアバッグ16が展開する。
【0004】
従って、エアバッグ装置の性能として、上記衝撃を検知するまでの伝達経路をできるだけ短くし、より迅速にエアバッグ16を展開して、乗員の衝撃を緩和することが要求される。
本発明の目的は、衝突時の衝撃をより迅速に検知することができる自動二輪車用エアバッグ装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、車体フレームの前部に設けたヘッドパイプと、このヘッドパイプに操舵自在に取付けたフロントフォークと、このフロントフォークの先端に回転自在に支持した前輪と、エアバッグを作動させるためのセンサとを備えた自動二輪車において、路面の凹凸によって長手方向にストロークする前記フロントフォークの先端近傍に前記センサを配置し、このセンサでフロントフォークの長手方向及び前輪の車軸の軸方向の両方に対して垂直な方向の加速度を検知し、この加速度が所定値を越えたときにエアバッグを作動させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
自動二輪車が他の車両等に衝突した場合、このときのフロントフォークの長手方向及び前輪の車軸の軸方向の両方に対して垂直な方向の加速度を、前輪を介してフロントフォークの先端近傍に配置したセンサで直ちに検知する。そして、この加速度が所定値を越えたときにエアバッグを作動させる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るエアバッグ装置を搭載した自動二輪車の側面図であり、自動二輪車1は、車体フレーム2と、この車体フレーム2の前部に設けたヘッドパイプ3と、このヘッドパイプ3に操舵自在に取付けたフロントフォーク4と、このフロントフォーク4の先端に回転自在に支持した前輪6と、フロントフォーク4の上部に取付けたハンドル7及びクラッチレバー8と、車体フレーム2の上部に取付けた燃料タンク11とからなる。
【0008】
また、自動二輪車1は、燃料タンク11の両側の車体フレーム2から車体前方に延ばしたスライド機構12,12(奥側は省略)と、これらのスライド機構12,12から燃料タンク11の上方に渡した移動フレーム13と、この移動フレーム13の上部に配置したエアバッグとしてのエアバッグモジュール14と、このエアバッグモジュール14が車体前方へ移動するときにこの移動を遅らせるために車体フレーム2と移動フレーム13との間に介設した衝撃吸収機構15,15(奥側は省略)と、エアバッグモジュール14に信号を送って作動させるための衝突判断ユニット16とからなる。
【0009】
ここで、17はフロントフェンダ、18はスクリーン付きアッパフェアリング、21はフロントフェアリング、22はシート、23はリヤフェアリング、24はサイドスタンド、25はメインスタンド、26はスイングアーム、27は後輪、28はリヤフェンダである。
上記したスライド機構12,12、移動フレーム13、エアバッグモジュール14、衝撃吸収機構15,15、衝突判断ユニット16及び後述する加速度センサでエアバッグ装置30を構成する。
【0010】
スライド機構12,12は、車体フレーム2に固定した左右一対の案内用レールと、この案内用レール上をスライドできる一対のスライドレールとからなるものである。
移動フレーム13は、スライド機構12,12のスライドレールに取付けたものである。
エアバッグモジュール14は、折り畳んで収納したエアバッグと、このエアバッグを展開するためのガスを発生させるインフレータとからなるものである。
【0011】
衝撃吸収機構15,15は、塑性変形可能な材料で成形したシリンダ部材に、このシリンダ部材の内径よりわずかに外径の大きな大径部を持つロッド部材を内蔵したものであり、シリンダ部材を車体フレーム2に取付け、ロッド部材を移動フレーム13に取付けたものである。
この衝撃吸収機構15,15により、移動フレーム13が車体前方に移動する時にロッド部材がシリンダ部材の内径を強制的に広げながら動くことで移動フレーム13の移動を遅らせ、移動フレーム13に加わった衝撃を吸収する。
【0012】
図2は本発明に係るエアバッグ装置を搭載した自動二輪車のフロントフォーク先端部拡大図であり、フロントフォーク4は、先端の側方に突起4aを備え、また、先端に、車軸31と、この車軸31内に配置したセンサとしての加速度センサ32と、この加速度センサ32を車軸31に取付けるためのセンサ取付けボルト33とを配置したものである。なお、34はフロントフォーク4先端の割り部分を締めるボルト、35,35(奥側は省略)はディスクブレーキのディスク、36はホイール、37はタイヤである。
【0013】
車軸31は、フロントフォーク4の突起4aに臨ませることでフロントフォーク4に対する取付け角度を一定に保つ外周切欠き部31aを備える。
加速度センサ32は、フロントフォーク4の長手方向及び車軸31の軸方向の両方に対して垂直な矢印(1)の方向の加速度を検知することで、自動二輪車1(図1参照)が他の車両等へ衝突した時の衝撃の程度を検知するためのものである。 加速度センサ32としては、ひずみゲージ式、ピエゾ式等の電子式センサ、マスの動きで電気接点を閉じる形式のセンサが好適である。
【0014】
このように、加速度センサ32の加速度検知方向をフロントフォーク4の長手方向及び車軸方向に対して垂直な方向にすることで、例えば、路面の凹凸によってフロントフォーク4が長手方向にストロークしても、このストローク方向と加速度センサ32の検知する方向が直角なので、加速度センサ32がストローク方向の加速度を検知することはない。
【0015】
図3は図2の3−3線断面図であり、フロントフォーク4は、左フォーク4Lと、右フォーク4Rとからなる。
車軸31は、車軸取付けボルト38でフロントフォーク4に取付けたものである。
【0016】
加速度センサ32は、センサ本体32aと、加速度を検知するためにセンサ本体32a内に設けた検知部32bとからなり、車軸31の中空部31cに挿入し、センサ取付けボルト33で抜け止めしたものである。
センサ本体32aは、外周にキー溝32cを備え、このキー溝32cと車軸31の内周に形成したキー溝31bとにキー39を差込むことで、車軸31との位置決めを行うものである。
【0017】
従って、フロントフォーク4に対して車軸31を位置決めし、この車軸31に対して加速度センサ32を位置決めすることで、加速度センサ32の検知方向をフロントフォーク4の長手方向及び車軸31の軸方向の両方に対して垂直な方向にすることができる。
検知部32bは、左・右フォーク4L,4R間の中央部になるように配置したものである。
ここで、41,41は軸受、42,43はオイルシールである。
【0018】
図4は本発明に係るエアバッグ装置の検知部の位置を示す模式図であり、ヘッドパイプ3内のフロントフォーク操舵軸Cの軸方向から見たものである。ここで、紙面上側が車体前側、紙面下側が車体後側を示す。
加速度センサ32(図3参照)の検知部32bは、左・右フォーク4L,4R間の中央部に配置したものであり、ヘッドパイプ3内にあるフロントフォーク4の操舵軸Cに対して非常に近い位置にある。
また、検知部32bは、矢印(2)のような前輪6(図1参照)の前後方向の加速度のみを検知するものである。本発明の実施例では、前輪6を操舵した場合には、その操舵した前輪6の向いてる方向の加速度を検知する。
【0019】
以上に述べたエアバッグ装置30の作用を次に説明する。
図5は本発明に係るエアバッグ装置の作用を説明する作用図(前半)であり、自動二輪車1が他の車両Vに衝突して、フロントフォーク4に衝撃が加わった状態を示す。
図6は本発明に係るエアバッグ装置の作用を説明する作用図(後半)であり、衝突時に加速度センサ32(図5参照)が検知する加速度の状態を実施例と比較例とで示す。
図5において、例えば、自動二輪車1が走行中に他の車両Vに衝突した場合、まず、前輪6を介してフロントフォーク4に衝撃が伝わる。
【0020】
これにより、前輪6の車軸31(図3参照)に設けた加速度センサ32の検知部32b(図3参照)がこの時の加速度を感知し、衝撃判断ユニット16に加速度信号を送る。
衝撃判断ユニット16は、加速度信号に基づいて、加速度が所定値を越えた時にエアバッグモジュール14に作動信号を送る。
【0021】
エアバッグモジュール14は、作動信号に基づいてエアバッグ(省略)を展開し、運転者Dを受け止める。
更に、エアバッグモジュール14を取付けた移動フレーム13がスライド機構12,12(奥側は省略)によって前方へ移動するときに、衝撃吸収機構15によって衝撃を吸収する。
【0022】
以上に示したように、エアバッグ装置30(図1参照)を、図5に示した前輪6を支持するフロントフォーク4の先端近傍に加速度センサ32を配置したものとしたことにより、自動二輪車1が他の車両V等に衝突した場合、その時の衝撃が前輪6を介してフロントフォーク4の車軸31(図3参照)内の加速度センサ32に短い距離で伝わるので、衝突時の加速度を直ちに加速度センサ32で検知することができ、エアバッグモジュール14の作動をより迅速に行うことができる。
【0023】
図6において、自動二輪車1(図5参照)が他の車両V(図5参照)に衝突した直後にハンドル7(図5参照)が切れてフロントフォーク4の向きが変わる場合がある。(ハンドル7の切れ角をθとする。)
この場合、本発明の実施例において、衝突のみによって加速度センサ(図5参照)の検知部32bが検知する加速度をα、衝突時にハンドル7(図5参照)が切れることによって検知する加速度をα1とすると、検知部32bの操舵軸Cからの距離R1が小さいため、加速度α1は小さい。
また、加速度α1は、検知部32bの検知方向(左・右フォーク4L,4R間を結ぶ直線に直角な方向)の成分がないため、加速度αに影響しない。
【0024】
一方、例えば、加速度センサの検知部S(この検知部は検知部32bと同一のものであるが、便宜上、実施例のものと区別した。)を左フォーク4Lの内側に配置した比較例において、衝突のみによって加速度センサ(図5参照)の検知部Sが検知する加速度をα、衝突時にハンドル7(図5参照)が切れることによって検知する加速度をα2とすると、検知部Sの操舵軸Cからの距離R2が大きいため、加速度α2は大きくなる。
【0025】
更に、加速度αと加速度α2との向きがほぼ反対になるため、これらの合力である検知部Sが実際に検知する加速度は小さくなる。
従って、本発明の実施例のように、検知部32bを操舵軸Cに近づけることで、検知部32bで加速度をより精度よく検知することができる。
【0026】
尚、本発明の実施の形態では、図3において、加速度センサ32の検知部32bの位置を左・右フォーク4L,4R間の中央部としたが、これに限るものではなく、車軸31内の任意の位置、車軸31の両端部、フロントフォーク4先端部で外面又は内部でも差し支えない。
【0027】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1の自動二輪車用エアバッグ装置は、前輪を支持するフロントフォークの先端近傍にセンサを配置したものなので、自動二輪車が他の車両等に衝突した場合、その時の衝撃が前輪を介してフロントフォークの先端近傍のセンサに短い距離で伝わるため、衝突時の加速度を直ちにセンサで検知することができ、エアバッグの作動をより迅速に行うことができる。
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエアバッグ装置を搭載した自動二輪車の側面図
【図2】 本発明に係るエアバッグ装置を搭載した自動二輪車のフロントフォーク先端部拡大図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 本発明に係るエアバッグ装置の検知部の位置を示す模式図
【図5】 本発明に係るエアバッグ装置の作用を説明する作用図(前半)
【図6】 本発明に係るエアバッグ装置の作用を説明する作用図(後半)
【符号の説明】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、3…ヘッドパイプ、4…フロントフォーク、6…前輪、14…エアバッグ(エアバッグモジュール)、30…エアバッグ装置、31…車軸、32…センサ(加速度センサ)、32b…検知部。
Claims (1)
- 車体フレームの前部に設けたヘッドパイプと、このヘッドパイプに操舵自在に取付けたフロントフォークと、このフロントフォークの先端に回転自在に支持した前輪と、エアバッグを作動させるためのセンサとを備えた自動二輪車において、路面の凹凸によって長手方向にストロークする前記フロントフォークの先端近傍に前記センサを配置し、このセンサでフロントフォークの長手方向及び前輪の車軸の軸方向の両方に対して垂直な方向の加速度を検知し、この加速度が所定値を越えたときにエアバッグを作動させるようにしたことを特徴とする自動二輪車用エアバッグ装置。
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