図1は、本発明の一実施例である空燃比センサのヒータ制御装置が適用された内燃機関のシステム構成図を示す。本実施例の内燃機関は、電子制御ユニット
(以下、ECUと称す)10により制御される。図1に示す如く、内燃機関は、シリンダブロック12を備えている。シリンダブロック12の内部には、シリンダ14およびウォータジャケット16が形成されている。ウォータジャケット16には、水温センサ18が配設されている。水温センサ18はウォータジャケット16の内部を流れる冷却水の温度(以下、水温THWと称す)に応じた信号をECU10に向けて出力する。ECU10は水温センサ18の出力信号に基づいて水温THWを検出する。
シリンダ14の内部にはピストン20が配設されている。ピストン20は、シリンダ14の内部を、図1における上下方向に摺動することができる。シリンダブロック12の上部には、シリンダヘッド22が固定されている。シリンダヘッド22には、吸気ポート24および排気ポート26が形成されている。
シリンダヘッド22の底面、ピストン20の上面、およびシリンダ14の側壁は、燃焼室28を画成している。上述した吸気ポート24および排気ポート26は、共に燃焼室28に開口している。燃焼室28には、点火プラグ30の先端が露出している。点火プラグ30はECU10から点火信号を供給されることにより、燃焼室28内の燃料に点火する。
内燃機関は、また、吸気弁34及び排気弁36を備えている。吸気ポート24及び排気ポート26の燃焼室28への開口部には、それぞれ、吸気弁34及び排気弁36に対する弁座が形成されている。吸気弁34及び排気弁36は、各弁座に離着座することにより、それぞれ吸気ポート24及び排気ポート26を開閉させる。
吸気ポート24には、吸気マニホールド38が連通している。吸気マニホールド38には、燃料噴射弁40が配設されている。燃料噴射弁40はECU10から付与される指令信号に応じて燃料を吸気マニホールド38内に噴射する。
吸気マニホールド38の上流側には、サージタンク42が連通している。サージタンク42の更に上流側には、吸気管44が連通している。吸気管44には、スロットルバルブ46が配設されている。吸気管44の上流側にはエアクリーナ52が連通している。吸気管44にはエアクリーナ52により濾過された外気が流入する。
一方、内燃機関の排気ポート26には、排気通路54が連通している。排気通路54には、触媒コンバータ56が配設されている。触媒コンバータ56は、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び酸化窒素(NOX )を反応させることにより排気ガスを浄化する。触媒コンバータ56の上流側及び下流側には、それぞれ、空燃比センサ58、60が配設されている。空燃比センサ58、60は同様の構成を有しており、これらの構成については後述する。なお、空燃比センサ58、60の構成を異なるものとしてもよい。
内燃機関は、回転数センサ62を備えている。回転数センサ62は内燃機関が所定のクランク角だけ回転する毎にパルス信号をECU10に向けて出力する。ECU10は、回転数センサ62の出力信号に基づいて内燃機関の回転数(以下、機関回転数NEと称す)を検出する。更に、内燃機関は、スタータ64を備えている。スタータ64はECU10からオン信号を供給されることにより、内燃機関のクランキング始動を実現する。
図2は、空燃比センサ58、60の内部構成を、ECU10との接続回路と共に示す。図2に示す如く、空燃比センサ58、60は、その内部に、例えばジルコニア等の材料により構成されたセンサ素子66と、センサ素子66を加熱するヒータ68とを備えている。
センサ素子66の一方の端子は定電圧源70に接続され、また、他方の端子はECU10に接続されていると共に抵抗器72を介して接地されている。このようにセンサ素子66に定電圧が印可された状態では、センサ素子66に流れる電流(以下、センサ電流Iと称す)は、センサ素子66の温度(以下、センサ温度Tと称す)が所定の活性化温度Te(例えば650゜Cから700゜C)以上である場合に、排気通路54内の酸素濃度に応じて変化する。ECU10には、このセンサ電流Iに応じた電圧が入力される。
一方、ヒータ68は、通電制御回路74を介してECU10に接続されている。通電制御回路74はECU10から供給される制御信号に応じて、バッテリー75を電源として、ヒータ68への通電電流をデューティ制御する。ヒータ68には、また、ヒータ電圧検出回路76及びヒータ電流検出回路78が接続されている。ヒータ電圧検出回路76は、ヒータ68に印可される電圧に応じた信号をECU10に向けて出力する。また、ヒータ電流検出回路78は、ヒータ68を流れる電流に応じた信号をECU10に向けて出力する。ECU10は、これらの信号に基づいてヒータ68の抵抗値(以下、ヒータ抵抗Rと称す)を検出する。
ECU10には、ドアロックスイッチ80、フューエルリッドスイッチ82、及びエンジンフードスイッチ84が接続されている。ドアロックスイッチ80は、車両ドアがアンロックされた状態でのみオンとなるスイッチである。また、フューエルリッドスイッチ82及びエンジンフードスイッチ84は、それぞれ、車両のフューエルリッド及びエンジンフードが開かれている場合にのみオンとなるスイッチである。ECU10には、更に、車速スイッチ86が接続されている。車速スイッチ86は車速に応じた信号をECU10に向けて出力する。
ECU10は、内燃機関の運転中に、センサ温度Tの温度が、活性化温度Te以上、かつ、センサ素子66に損傷を与えない程度の温度となるように、ヒータ68への通電量を制御する。なお、ヒータ抵抗Rはヒータ68の温度に応じて変化する。そこで、ECU10はヒータ抵抗Rに基づいてヒータ68の温度を検出し、この温度をセンサ温度Tとして用いる。
上述の如く、センサ温度Tが活性化温度Te以上に維持された状態では、センサ素子66に流れる電流は、酸素濃度に応じて変化する。従って、ECU10は、上記の如くヒータ68への通電量を制御することで、センサ電流Iに基づいて、排気通路54内の酸素濃度、すなわち、空燃比を検出することができる。そして、ECU10は、空燃比に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御を実行する。
空燃比フィードバック制御では、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側である場合には燃料噴射量が減量され、リーン側である場合には燃料噴射量が増量されることにより、空燃比が理論空燃比近傍の所定範囲内に維持される。上記した触媒コンバータ56は、空燃比が理論空燃比近傍である場合に、高い浄化性能を発揮する。従って、空燃比フィードバック制御によれば、排気ガス中のHC、CO、及びNOxを触媒コンバータ56により効果的に除去することができる。また、空燃比フィードバック制御によれば、空燃比が過度にリッチ又はリーンになることがないため、燃費の悪化及び燃焼状態の不安定化を共に防止することができる。
内燃機関の冷間始動時には、センサ温度Tはほぼ外気温まで低下しているため、センサ温度Tが活性化温度Teまで加熱されるまでには、ある程度の時間が必要となる。そこで、内燃機関の始動後、速やかに空燃比フィードバックの実行を開始すべく、例えば、車両ドアのアンロック操作が検出された場合に、内燃機関の始動を予想し、空燃比センサ58、60のヒータ68への通電を開始することが考えられる。以下、機関始動前に行われるヒータ68への通電を、空燃比センサ58、60のプリヒートと称する。なお、空燃比センサ58、60が異なる構成とされ、例えば空燃比センサ58のみがヒータ68を有する構成とされている場合には、プリヒートは空燃比センサ58に対してのみ行われることとなる。
しかしながら、ドアがアンロックされた場合でも、必ずしも内燃機関が始動されるとは限らない。従って、ドアのオープンが検出された場合に常に空燃比センサ58、60のプリヒートを行うものとすると、内燃機関が始動されなかった場合には、バッテリー75が不必要に放電されることとなる。
これに対して、本実施例のシステムは、プリヒートが開始された後、運転者に内燃機関を始動する意志がないと判断された時点で、プリヒートを中止することにより、バッテリー75が不必要に放電されるのを防止し得る点に特徴を有している。以下、本実施例においてECU10が実行する具体的な処理の内容について説明する。
図3は、空燃比センサ58、60のプリヒートを開始させるべくECU10が実行するルーチンのフローチャートである。また、図4は、運転者が内燃機関を始動する意志が無いと判断された場合にプリヒートを中止すべくECU10が実行するルーチンのフローチャートである。なお、図3及び図4に示すルーチン、及び、以下に示す各実施例において実行されるルーチンは、内燃機関の始動前において所定時間間隔で起動される定時割り込みルーチンである。
先ず、図3に示すルーチンについて説明する。図3に示すルーチンが起動されると、ステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、ドアがロック状態からアンロック状態に変化したか否かが判別される。その結果、肯定判別された場合は、ドアのアンロック操作が行われたと判断されて、次にステップ102の処理が実行される。一方、ステップ100において、否定判別された場合は、以後何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。なお、ステップ100において、ドアのアンロックを検出することに代えて、ドアがオープンされたことを検出してもよい。
ステップ102では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされる。なお、プリヒート許可フラグF1は「0」に初期化されているものとする。後述する如く、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされている場合に、プリヒートの実行が許可される。従って、ステップ100及びステップ102の処理によれば、ドアのアンロック操作が行われた時点で、プリヒートが開始される。ステップ102の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
次に、図4に示すルーチンについて説明する。図4に示すルーチンが起動されると、ステップ104の処理が実行される。
ステップ104では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、F1=1が不成立であれば、次に、ステップ105の処理が実行される。一方、ステップ104において、F1=1が成立する場合は、次にステップ106の処理が実行される。
ステップ105では、ヒータ68への通電制御におけるデューティ比HTdutyが「0」に設定されることで、ヒータ68への通電が停止される。ステップ105の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
ステップ106ではセンサ温度Tが検出され、続くステップ108において、センサ温度Tが目標温度Tcを上回っているか否かが判別される。なお、目標温度Tcは、センサ素子66の活性化温度Teよりも高温で、かつ、センサ素子66の損傷を招かない程度の温度に設定されている。ステップ106において、T>Tcが成立する場合は、次にステップ110において、デューティ比HTdutyがαだけ減少されることにより、ヒータ68への通電量が小さくされた後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ108においてT>Tcが不成立であれば、次にステップ112においてデューティ比HTdutyがαだけ増加されることにより、ヒータ68への通電量が大きくされた後、今回のルーチンは終了される。ステップ108、110、112の処理によれば、センサ温度Tは目標温度Tcに向けて制御される。なお、デューティ比HTdutyの変更幅αは、センサ温度Tと目標温度Tcとの差の大きさに応じて可変としてもよい。
次に、図5に示すルーチンについて説明する。図5に示すルーチンが起動されると、ステップ150の処理が実行される。
ステップ150では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、F1=1が不成立であれば、プリヒートの実行中ではないと判断されて、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ150においてF1=1が成立する場合は、次にステップ152の処理が実行される。
ステップ152では、エンジンフードが開かれているか否かが検出される。その結果、エンジンフードが開かれていれば、エンジンルーム内の点検中であると判断される。この場合、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断されて、次にステップ154において、プリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止される。ステップ154の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ152において、エンジンフードが開かれていなければ、次にステップ156の処理が実行される。
ステップ156では、フューエルリッドが開かれているか否かが判別される。その結果、フューエルリッドが開かれていれば、給油中であると判断される。この場合、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断されて、次に上記ステップ154の処理が実行されることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ156において、フューエルリッドが開かれていなければ、次にステップ158の処理が実行される。
ステップ158では、車速Vが所定値V0以上であるか否かが判別される。その結果、V>V0が成立する場合は、機関停止中に車両が動いている、すなわち、手押し移動中であると判断される。この場合、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断されて、次に上記ステップ154の処理が実行されることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ158においてV>V0が不成立であれば、次にステップ160の処理が実行される。
ステップ160では、ドアオープン状態が維持されたまま所定時間が経過したか否かが判別される。その結果、肯定判別された場合は、車内の点検掃除等が行われていると判断される。この場合、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断されて、次に上記ステップ154の処理が実行されることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ160において否定判別された場合は、プリヒートを中止することは不要であると判断されて、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、図3に示すルーチンによれば、ドアのアンロック操作が検出された時点で内燃機関の始動が予想され、プリヒートが開始される。一方、図4に示すルーチンでは、プリヒートが開始された後、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断された場合に、プリヒートは中止される。従って、本実施例によれば、運転者に内燃機関を始動する意志がない場合に、プリヒートが継続されることがないため、バッテリー75が不必要に放電されることが防止される。すなわち、本実施例によれば、内燃機関が始動される蓋然性が高い場合にのみプリヒートが行うことで、機関始動後に速やかに空燃比センサ58、60を活性化して空燃比フィードバック制御を開始することを可能としつつ、バッテリー75の放電を必要最小限に抑制することができる。
また、本実施例では、バッテリー75の放電が抑制されるので、バッテリー75の長寿命化を図ることができると共に、バッテリー75への充電を行うオルタネータの負荷が軽減されることにより燃費の向上を図ることができる。また、バッテリー容量を小さくすることができるため、システムの低コスト化を図ることもできる。
なお、上記実施例においては、エンジンルームの点検中、給油中、手押し移動中、及び車内の点検掃除の場合に、運転者に始動意志がないと判断するものとしたが、始動意志がないと判断できる状況はこれらに限られるものではない。例えば、ドアが閉じられた後、カーラジオがオンされたまま一定時間経過しても内燃機関が始動されない場合には、同乗者待ちの状態であるとして、運転者に始動意志は無いと判断してもよい。また、運転者の動きを運転者席に設けた着座センサ等で検知し、運転者の動きが検知されない場合に、運転者が乗り込んでおらず、又は、同乗者待ちの状態であるとして、運転者に始動意志は無いと判断してもよい。
また、上記実施例においては、運転者に内燃機関を始動する意志が無いと判断された時点でプリヒートを中止するものとしたが、これに限らず、始動の意志が無いと判断された時点で、例えば目標温度Tcを下げること等によりプリヒートにおける通電量を減少させることとしてもよい。
次に、本発明の第2実施例について説明する。
上述の如く、ヒータ68への通電はバッテリー75を電源として実行される。このため、プリヒートが実行されるとバッテリー75が放電し、その充電量は次第に減少する。一方、内燃機関のクランキング始動の際には、バッテリー75からスタータ64へ大きな電力を供給することが必要となる。本実施例のシステムは、ドアのアンロック操作が検出されても、バッテリー75の容量が十分でない場合は、プリヒートの実行を禁止することにより、バッテリー75の放電を抑制して内燃機関の確実な始動を保証し得る点に特徴を有している。
図6は、本実施例におけるECU10への各種センサ等の接続図である。図6に示す如く、本実施例のシステムは、上記第1実施例のハードウェア構成において、更に、吸気温センサ88、及びバッテリーバッテリー比重センサ90を設けた構成を有している。
吸気温センサ88は吸気管44に配設されており、吸気温THAに応じた信号をECU10に向けて出力する。また、バッテリー比重センサ90はバッテリー75に配設されており、バッテリー液の比重(以下、バッテリー比重BSと称す)に応じた信号をECU10に向けて出力する。ECU10はこれらセンサの出力信号に基づいて、それぞれ、吸気温THA及びバッテリー比重BSを検出する。また、本実施例において、ECU10は、内燃機関が停止された後の経過時間(以下、停止後経過時間Taと称す)をカウントするタイマーCTを備えており。このタイマーの値に基づいて停止後経過時間Taを検知する。
内燃機関が低温状態にある場合は、潤滑油の粘性が高いためにフリクションが大きくなり、内燃機関を始動すべくスタータ64に供給すべき電力は増大する。従って、この場合、機関始動時にバッテリー75に十分な電力が蓄えていなければ、スタータ64に供給し得る電力が不足し、機関始動性が悪化してしまう。
図7は、内燃機関が低温状態にある場合に、ドアのアンロック操作が検出された時点でのバッテリー比重BSと、内燃機関の始動に要する時間(以下、始動時間Teと称す)との関係を概略的に示す。なお、図7において、プリヒートが実行された後、内燃機関が始動された場合の関係を実線で、また、プリヒートが実行されることなく内燃機関が始動された場合の関係を破線で、それぞれ示す。
図7に示す如く、バッテリー比重BSが大きいほど(すなわち、バッテリー75の充電容量が大きいほど)、スタータ64に供給し得る電力が小さくなることで、始動時間Teは長くなる。また、プリヒートが行われた場合(実線)と行われない場合(破線)とを比較すると、プリヒートが行われた場合には、プリヒートによる電力消費分だけスタータ64に供給し得る電力は小さくなるため、始動時間Teは長くなる。始動時間Teが長くなると、始動性の悪化により排気ガス中のエミッションの増大を招き、更に、始動時間Teが一定値を超えると、点火プラグ30に燃料が付着することに起因して機関始動が不可能になってしまう。
そこで、本実施例では、ECU10は、内燃機関が低温状態にある場合に、機関始動時のスタータ64の消費電力が大きいと判断する。そして、この場合に、バッテリー比重BSが所定の基準値BS0よりも小さければ、プリヒートを行うと機関始動性が悪化し、又は始動が不可能になると判断してプリヒートを禁止する。
本実施例において、ECU10は上記図4に示すルーチンと共に、図8に示すルーチンを実行する。以下、図8に示すルーチンについて説明する。図8に示すルーチンが起動されると、ステップ200の処理が実行される。
ステップ200では、ドアがロック状態からアンロック状態へ変化したか(つまり、ドアのアンロック操作が行われたか否か)が判別される。その結果、アンロック操作が検出されなければ、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ200において、アンロック操作が検出された場合は、次にステップ201の処理が実行される。
ステップ201では、水温THWが所定の基準値THW0未満であるか否かが判別される。その結果、THW<THW0が成立する場合は、次にステップ202の処理が実行される。
ステップ202では、吸気温THAが所定の基準値THA0未満であるか否かが判別される。その結果、THA<THA0が成立する場合は、次にステップ204の処理が実行される。
ステップ204では、停止後経過時間Taが所定の基準値Ta0を超えているか否かが判別される。その結果、Ta>Ta0が成立する場合は、内燃機関の停止後の時間の経過により内燃機関は十分に冷却されていると判断される。この場合、機関は低温状態にある、すなわち、機関始動時のスタータ64の消費電力は大きいと判断される。この場合、次にステップ206の処理が実行される。
ステップ206では、バッテリー比重BSが上記基準値BS0未満であるか否かが判別される。その結果、BS<BS0が成立する場合は、次にステップ208において、プリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが禁止された後、今回のルーチンは終了される。
一方、上記ステップ201〜206の何れかにおいて否定判別された場合は、次にステップ210において、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされることによりプリヒートが許可された後、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、図8に示すルーチンによれば、(1)水温THWが基準値THW0より小さく、(2)吸気温THAが基準値THA0より小さく、かつ、(3)停止後経過時間Taが所定の基準値よりも小さい場合に、内燃機関は低温状態にあって、スタータ64の消費電力は大きいと判断される。そして、更に、(4)バッテリー比重BSが基準値BS0より小さい場合には、良好な機関始動性を実現するうえでバッテリー75の充電容量が不足していると判断され、プリヒートの実行が禁止される。このように、本実施例では、機関始動時におけるスタータ64の消費電力の大小を考慮してプリヒートの可否を判断することにより、機関始動性の悪化を防止しつつ、バッテリー75の容量に余裕がある場合にはプリヒートによる機関始動後の空燃比センサ58、60の速やかな活性化を実現することができる。
また、上記第1実施例の場合と同様に、バッテリー75の放電を抑制できるため、バッテリー75の小容量化によるコストダウン、バッテリー75の長寿命化、及び、オルタネータの負荷低減による燃費の向上を図ることができる。
なお、上記第2実施例においては、上記(1)〜(4)の上記が全て成立した場合にプリヒートを禁止することとしたが、例えば極低温状態では、(1)〜(4)のうち何れかの条件が成立した場合に、始動不良が生ずる可能性がある。そこで、かかる場合には、上記(1)〜(4)の条件のうち何れか一の条件が成立した場合に、プリヒートを禁止することとしてもよい。この場合、上記第2実施例に比してプリヒートが禁止され易くなるので、各基準値THW0、THA0、Ta0、BS0を上記第2実施例の場合よりも小さな値として、プリヒートが過度に禁止されるのを防止することとしてもよい。
また、上記第2実施例では、(1)〜(4)の条件が成立する場合にプリヒートを禁止するものとしたが、これに限らず、(1)〜(4)の条件が成立する場合には、目標温度Tcを下げること等によりプリヒートでの通電量を減少させることとしてもよい。
次に、本発明の第3実施例について説明する。
本実施例のシステムは、上記第2実施例の図1、図2及び図6に示すハードウェア構成において、ドアのアンロック操作が検出された場合でも、運転者に機関始動の意志がないと判断される場合には、プリヒートを禁止することで、不必要な電力消費を防止し得る点に特徴を有している。
本実施例において、ECU10は、上記図3又は図8に示すルーチンと共に図9及び図10に示すルーチンを実行する。先ず、図9に示すルーチンについて説明する。図9に示すルーチンが起動されると、ステップ300の処理が実行される。
ステップ300では、エンジンフードが開かれているか否かが判別される。その結果、エンジンフードが開かれていれば、エンジンルーム内の点検中であり、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断される。この場合、次にステップ302において第2許可フラグF2が「0」にリセットされた後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ300において、エンジンフードが閉じられていれば、次にステップ304の処理が実行される。
ステップ304では、フューエルリッドが開かれているか否かが判別される。その結果、フューエルリッドが開かれていれば、給油中であり、運転者に内燃機関を始動する意志はないと判断される。この場合、第2許可フラグF2が「0」にリセットされた後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ304においてフューエルリッドが閉じられていれば、次にステップ306において、第2許可フラグF2が「1」にセットされた後、今回のルーチンは終了される。
次に、図10に示すルーチンについて説明する。なお、図10に示すルーチンにおいて、上記図4に示すルーチンと同様の処理を実行するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。図8に示すルーチンでは、ステップ104において、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされている場合は、次にステップ350の処理が実行される。
ステップ350では、第2許可フラグF2が「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、F2=1が成立する場合は、ステップ106以降においてプリヒートを行うための処理が実行された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ350においてF2=1が不成立であれば、ステップ114において、デューティ比HTdutyが「0」に設定されることによりプリヒートが禁止された後、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例では、ドアのアンロック操作が検出され(F1=1)、かつ、運転者に内燃機関を始動する意志があると判断される(F2=1)場合にのみプリヒートが実行される。このため、運転者に始動の意志がない場合にプリヒートが行われることがないので、バッテリー75の電力が不必要に消費されるのを防止することができる。従って、本実施例によれば、プリヒートによる機関始動後の空燃比センサ58、60の速やかな活性化を実現しつつ、バッテリー75の放電を抑制し、これにより、バッテリー75の小容量化によるコストダウン、バッテリー75の長寿命化、及び、オルタネータの負荷低減による燃費の向上を図ることができる。
なお、上記第3実施例では、エンジンルーム点検中又は給油中であると判断された場合にプリヒートを禁止することとしたが、上記第1実施例の場合と同様に、手押し移動中又は同乗者待ちであると判断された場合等にも、内燃機関を始動する意志はないと判断してプリヒートを禁止することとしてもよい。
また、上記第3実施例では、運転者が内燃機関を始動する意志は無いと判断された場合にプリヒートを禁止するものとしたが、これに限らず、始動意志が無いと判別された場合には、例えば目標温度Tcを下げること等によりプリヒートにおける通電量を減少させることとしてもよい。
次に、本発明の第4実施例について説明する。本実施例のシステムは、セキュリティシステムを備えた車両に搭載されるものであり、上記第2実施例の図1、図2、及び図6に示すハードウェア構成において、更に、ECU10にセキュリティシステムを接続することにより実現される。
上述の如く、プリヒートは、機関始動後、速やかに空燃比センサ58、60を活性化させるべく機関始動前に予めヒータ68に通電するための処理である。従って、空燃比センサ58、60に異常が生じている場合には、プリヒートを行っても無意味である。また、車両への侵入者を検知するセキュリティシステムが搭載された車両において、侵入者が検出されると内燃機関の始動は禁止される。従って、セキュリティシステムの作動中にプリヒートを行うことも無意味である。本実施例のシステムは、このような場合にプリヒートを禁止することで、バッテリー75が不必要に放電されるのを防止し得る点に特徴を有している。
なお、セキュリティシステムは、例えば、車両ドアに大きな振動が検出された場合や、車両ドアがキーでロックされた後、車両内側からアンロックされた場合等に、車両への侵入者を検知して内燃機関の始動を禁止する。すなわち、前者の場合には、正規のキーを用いることなくドアが無理にオープンされたと考えられ、また、後者の場合には、例えば開いたドアウインドウから車内に手を入れてアンロックされたと考えられるため、何れの場合にも侵入者が存在すると判断できるのである。上記の如く、セキュリティシステムはECU10に接続されており、ECU10側でセキュリティシステムの作動状態を監視することができる。
本実施例のシステムにおいて、ECU10は上記図3又は図8に示すルーチン、及び図9に示すルーチンと共に、図11に示すルーチンを実行する。以下、図11に示すルーチンについて説明する。なお、図11に示すルーチンにおいて、上記図10に示すルーチンと同様の処理を実行するステップには同一の符号を付してその説明を省略する。図11に示すルーチンでは、ステップ350で第2フラグF2が「1」にセットされている場合には、次にステップ400の処理が実行される。
ステップ400では、セキュリティシステムが作動中であるか否かが判別される。その結果、セキュリティシステムが作動中であれば、内燃機関の始動は禁止されていることになる。この場合、次にステップ105の処理が実行されることによりプリヒートが禁止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ400において、セキュリティシステムが作動中でなければ、次にステップ402の処理が実行される。
ステップ402では、空燃比センサ58、60のセンサ素子66に異常が生じているか否かが判別される。ECU10は、内燃機関の運転中に、例えば燃料カットが実行されているにもかかわらず空燃比センサ58、60がリッチを示す信号を出力した場合や、燃料噴射量が増量されているにもかかわらず空燃比センサ58、60がリーンを示す信号を出力した場合に、センサ素子66に異常が生じたと判断し、その旨を記憶する。ステップ402では、前回の機関運転時における上記の記憶に基づいて空燃比センサ58、60の異常の有無が判別される。ステップ402において、センサ素子66に異常が生じている場合には、ステップ114の処理が実行されることによりプリヒートが禁止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ402において、センサ素子66に異常が生じていなければ、次にステップ404の処理が実行される。
ステップ404では、ヒータ68に断線や短絡等の異常が生じているか否かが判別される。本実施例において、内燃機関の運転中に、ヒータ68へ供給される電流が規定値に対して過小又は過大となった場合に、ヒータ68の断線又は短絡を検出し、その旨を記憶する。ステップ404では、前回の運転時における上記の記憶に基づいてヒータ68の異常の有無が判別される。ステップ404において、ヒータ68に異常が生じている場合には、ステップ114の処理が実行されることによりプリヒートが禁止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ404において、ヒータ68に異常が生じていなければ、ステップ106以降において、プリヒートが実行された後、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例によれば、ドアのアンロック操作が検出され(F1=1)、かつ、運転者による内燃機関の始動意志があると判断され(F2=1)た場合であっても、セキュリティシステムが作動中である場合、又は、空燃比センサ58、60に異常が生じている場合には、プリヒートを実行しても無意味であると判断され、プリヒートの実行は禁止される。従って、本実施例のシステムによれば、プリヒートが無用に実行されないことでバッテリー75の不必要な放電を防止することができ、これにより、バッテリー75の小容量化、バッテリー75の長寿命化、及び燃費の向上等の効果を得ることができる。
次に、本発明の第5実施例について説明する。
上述の如く、内燃機関の始動を円滑に行うためには、スタータ64に十分な電力を供給することが必要である。一方、プリヒートが長時間実行されるほど、クランキング始動時にバッテリー75の充電量は減少する。本実施例のシステムは、ドアオープンが検出された時点でのバッテリー75の充電状態に応じてプリヒートの実行時間を変化させることにより、クランキング始動を円滑に行ううえで十分な電力を確保し得る点に特徴を有している。
本実施例のシステムは、上記第2実施例の図1、図2及び図6に示すハードウェア構成において、バッテリー液温センサを設けた構成を有している。バッテリー液温センサは、バッテリー75に配設され、バッテリー液の温度(以下、バッテリー液温BTHと称す)に応じた信号をECU10に出力する。
本実施例において、ECU10は、上記図4に示すルーチンと共に、図12に示すルーチンを実行する。以下、図12に示すルーチンについて説明する。なお、図12に示すルーチンにおいて、上記図8に示すルーチンと同様の処理を行うステップには同一の符号を付して、その説明を省略する。図12に示すルーチンでは、ステップ200において肯定判別された場合は、次にステップ500の処理が実行される。
ステップ500では、バッテリー比重BS及びバッテリー液温BTHに基づいて、プリヒートを行う時間長(以下、プリヒート許可時間δと称す)が決定される。図13は、上記ステップ500においてプリヒート許可時間δを決定すべく参照されるマップの一例である。上記第2実施例において述べたように、バッテリー比重BSが高いほど、バッテリー75の充電量は大きい。また、バッテリー比重BSが同じである場合、バッテリー液温BTHが低いほどバッテリー75の充電量は大きい。一方、バッテリー75の充電量が大きいほど、内燃機関の始動性を悪化させることなくプリヒートを長時間実行することができる。このため、図13に示す如く、プリヒート許可時間δは、バッテリー比重BSが高いほど、また、バッテリー液温BTHが低いほど、長くなるように設定される。ステップ500の処理が終了すると、次にステップ201の処理が実行される。
また、図12に示すルーチンでは、ステップ208においてプリヒート許可フラグF1が「1」にセットされた後、ステップ502の処理が実行される。
ステップ502では、タイマーTIMERがプリヒート許可時間δを上回っているか否かが判別される。タイマーTIMERは、単位時間が経過する毎にカウントアップされるタイマーであり、プリヒート実行許可フラグF1が「1」にセットされた時点、すなわち、プリヒートが開始された時点で「0」にリセットされる。従って、タイマーTIMERはプリヒート開始後の経過時間を表すことになる。ステップ502においてTIMER≧δが成立する場合は、プリヒートはプリヒート許可時間δだけ実行されたと判断される。この場合、次にステップ210において、プリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ502において、TIMER≧δが不成立であれば、プリヒートを継続すべきと判断されて、ステップ210の処理が実行されることなく今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例によれば、プリヒート開始前のバッテリー75の充電状態に応じてプリヒートの実行時間を定めることで、内燃機関の始動に必要な電力を確保することができる。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関の始動性の悪化によるエミッションの増大等の不都合を防止しつつ、始動性に影響を与えない範囲で、プリヒートによる所期の効果を得ることができる。また、バッテリー75の放電を抑制できるため、バッテリー75の小容量化によるコストダウン、バッテリー75の寿命向上、及び、オルタネータの負荷低減による燃費の向上等を実現することもできる。
次に、本発明の第6実施例について説明する。
本実施例のシステムは、プリヒートの開始後、バッテリー75の残存容量が所定値以下になった場合にプリヒートを中止することで、内燃機関のクランキング始動に必要な電力を確保し得る点に特徴を有している。
本実施例のシステムは、上記第5実施例のハードウェア構成において、ECU10が上記図4に示すルーチンと共に、図14及び図15に示すルーチンを実行することにより実現される。なお、図14に示すルーチンは、上記図8に示すルーチンにおいて、ステップ206を省略することにより実現されるものであるため、その説明は省略する。以下、図15に示すルーチンについて説明する。図15に示すルーチンが起動されると、ステップ600の処理が実行される。
ステップ600では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、F1=1が不成立であれば、プリヒート実行中ではないと判断されて、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ600においてF1=1が成立する場合は、次にステップ602の処理が実行される。
ステップ602では、スタータ64がオンされているか否かが判別される。その結果、スタータ64がオンされていれば、クランキング始動中であると判断され、次にステップ604において、プリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ602において、スタータ64がオンされていなければ、次にステップ606の処理が実行される。
ステップ606では、バッテリー比重BS及びバッテリー液温BTHに基づいて、バッテリー75の充電量Wが検出される。
ステップ606に続くステップ607では、クランキング始動を行うために必要なバッテリー75の充電量(以下、クランキング必要充電量Wsと称す)が水温THWに基づいて求められる。図16は、本ステップ607において、水温THWに基づいてクランキング必要充電量Wsを求めるべく参照されるマップの一例である。上述の如く、内燃機関が低温であるほど、フリクションの増大により、クランキング始動の際のスタータ64の消費電力は増加する。そこで、図16に示す如く、クランキング必要充電量Wsは、水温THWが低温になるほど大きな値となるように設定される。なお、クランキング必要充電量Wsを、吸気温THAに基づいて求めることとしてもよい。
ステップ607に続くステップ608では、バッテリー75の充電量Wから、クランキング必要充電量Wsを減ずることにより、プリヒートに使用し得る電力(以下、プリヒート使用可能電力Waと称す)が求められる。ステップ608の処理が終了すると、ステップ610へ進む。
ステップ610では、使用可能電力Waが所定の基準値W0未満であるか否かが判別される。その結果、Wa<W0が成立する場合は、プリヒートを継続すると、スタータ64に供給し得る電力が不足して始動性が悪化する可能性があると判断される。この場合、次に上記ステップ604において、プリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ610においてWa<W0が不成立であれば、プリヒートを継続したまま今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例によれば、プリヒートの実行中にプリヒート使用可能電力Waが所定値を下回った場合にプリヒートを中止することで、内燃機関の始動時に十分な電力を確保することができる。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関の始動性の悪化によるエミッションの増大等の不都合を防止しつつ、始動性に影響を与えない範囲でプリヒートによる所期の効果を得ることができる。
次に、本発明の第7実施例について説明する。
本実施例のシステムは、上記第5実施例において、バッテリー比重センサ92に代えてバッテリー75の端子電圧(以下、バッテリー電圧VBと称す)を検出するバッテリー電圧センサを設け、バッテリー電圧VBに基づいてバッテリー75の充電量を推定する点に特徴を有している。図17は、バッテリー電圧VBとバッテリー75の充電量Wとの関係を示す。図17に示す如く、バッテリー75は、充電量Wが小さくなるほどバッテリー電圧VBが低下する特性を有している。そこで、本実施例では、プリヒートの実行中にバッテリー電圧VBが所定値を下回った場合にバッテリー75の充電量Wが十分でないと判断して、プリヒートを中止する。
また、バッテリー75が劣化すると、一定の放電量に対するバッテリー電圧VBの低下量は大きくなる。そこで、プリヒート開始後のバッテリー電圧VBの低下量が所定値を超えた場合にも、バッテリー75が劣化している可能性があると判断し、プリヒートを中止する。
本実施例のシステムにおいて、ECU10は図18及び図19に示すルーチンを実行する。先ず、図18に示すルーチンについて説明する。図18に示すルーチンは、上記図14に示すルーチンにおいてステップ208の直前にステップ700を追加したものである。ステップ700では、現在のバッテリー電圧VBの値、すなわち、プリヒートが開始される時点でのバッテリー電圧VBが初期値VBsとして記憶される。
次に、図19に示すルーチンについて説明する。なお、図19に示すルーチンにおいて、上記図15に示すルーチンと同様の処理を実行するステップには同一の符号を付してその説明を省略する。図19に示すルーチンでは、ステップ602において、スタータ64がオンされていなければ、次にステップ710の処理が実行される。
ステップ710では、バッテリー電圧VBが検出される。
ステップ710に続くステップ712では、バッテリー電圧VBが所定の基準値VB0未満であるか否かが判別される。その結果、VB<VB0が成立する場合は、プリヒートを継続すると、クランキング始動に必要な電力を確保できなくなる可能性があると判断され、次にステップ604においてプリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止される。一方、ステップ712において、VB<VB0が不成立であれば、次にステップ714の処理が実行される。
ステップ714では、プリヒート開始後の電圧低下量ΔV(=VBs−VB)が所定の基準値ΔV0を上回っているか否かが判別される。その結果、ΔV>ΔV0が成立する場合は、バッテリー75が劣化している可能性があると判断されて、次にステップ604においてプリヒート許可フラグF1が「0」にリセットされることによりプリヒートが中止される。一方、ステップ714において、ΔV<ΔVが不成立であれば、プリヒートを継続したまま今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例によれば、プリヒートの実行中にバッテリー電圧VB又は電圧低下量ΔVに基づいて、内燃機関の始動に十分な電力がバッテリー75に残存しているか否かが判断され、バッテリー75に残存する電力が十分でない場合にプリヒートが中止されることで、内燃機関の始動時に十分な電力が確保される。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関の始動性の悪化によるエミッションの増大等の不都合を防止しつつ、始動性に影響を与えない範囲で、プリヒートによる所期の効果を得ることができる。
次に、本発明の第8実施例について説明する。
本実施例のシステムは、プリヒートの開始前に、バッテリー75の充電量Wとクランキング必要充電量Wsに基づいて、プリヒート使用可能電力Waを求めると共に、プリヒートの実行中にプリヒートのために消費された電力を積算し、その積算された電力(以下、プリヒート積算電力Wdと称す)が、プリヒート開始前に求めたプリヒート使用可能電力Waを超えた時点でプリヒートを中止する点に特徴を有している。
本実施例のシステムは、上記第5実施例のハードウェア構成において、ECU10が上記図4に示すルーチンと共に、図20及び図21に示すルーチンを実行することにより実現される。
先ず、図20に示すルーチンについて説明する。なお、図20に示すルーチンは、上記図18に示すルーチンと同様の処理を行うステップには同一の符号を付してその説明を省略する。図20に示すルーチンでは、図18に示すルーチンのステップ70の処理に代えて、ステップ800〜804の処理が実行される。
ステップ800では、バッテリー比重BS及びバッテリー液温BTHに基づいて、バッテリー75の充電量Wが検出される。ステップ800の処理が終了するとステップ802へ進む。
ステップ802では、上記図15と同様のマップを参照することにより、水温THWに基づいてクランキング必要充電量Wsが求められる。
ステップ802に続くステップ804では、バッテリー75の充電量Wからクランキング必要充電量Wsを減ずることにより、プリヒート開始前におけるプリヒート使用可能電力Waが求められる。ステップ804の処理が終了すると、ステップ208の処理が実行される。
また、本ルーチンでは、ステップ200において、ドアがロック状態からアンロック状態へ変化したことが検出されなければ、次に、ステップ806の処理が実行される。
ステップ806では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされているか否か、すなわち、プリヒートの実行中であるか否かが判別される。その結果、F1=1が不成立であれば、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ806においてF1=1が成立する場合は、次に、ステップ808の処理が実行される。
ステップ808では、プリヒートにおけるヒータ68の消費電力を積算して、プリヒート積算電力Wdを求める処理が実行される。ステップ808の処理が終了すると今回のルーチンは終了される。
次に、図21に示すルーチンについて説明する。なお、図21に示すルーチンは、上記図19に示すルーチンと同様の処理を行うステップには同一の符号を付してその説明を省略する。図21に示すルーチンでは、ステップ602においてスタータ64がオンされていなければ、次にステップ850の処理が実行される。
ステップ850では、プリヒート使用可能電力Waがプリヒート積算電力Wdよりも小さいか否かが判別される。その結果、Wa<Wdが成立する場合は、プリヒートが継続されたまま今回のルーチンは終了される。一方、ステップ850において、Wa<Wdが不成立であれば、次にステップ604の処理が行われることによりプリヒートが中止された後、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、本実施例では、プリヒートの開始前にプリヒート使用可能電力Waを予め求めておくと共に、プリヒートの実行中にプリヒート積算電力Wdがプリヒート使用可能電力Waに達した場合には、プリヒートが中止されることで、内燃機関の始動時に十分な電力が確保される。従って、本実施例のシステムによれば、内燃機関の始動性の悪化によるエミッションの増大等の不都合を防止しつつ、始動性に影響を与えない範囲で、プリヒートによる所期の効果を得ることができる。
次に、本発明の第9実施例について説明する。本実施例のシステムは、遠隔始動システムを備える車両に搭載されている。図22は、本実施例のシステムにおけるECU10と遠隔始動システムとの接続関係を示す図である。図22に示す如く、遠隔始動システムは、遠隔始動信号受信機900及び遠隔始動信号送信機902により構成されている。遠隔始動信号受信機900はECU10に接続されている。また、遠隔始動信号送信機902は、例えば車両の所有者等により携帯される。
遠隔始動信号送信機902に対して所定の始動操作(以下、遠隔始動送信機902に対する始動操作を、以下、遠隔始動操作と称す)が行われると、遠隔始動信号送信機902は始動指令信号を無線送信する。遠隔始動受信機900はこの始動指令信号を受信すると、ECU10に対して、内燃機関を始動すべき旨の要求を発生する。ECU10は、この始動要求の有無により、遠隔始動操作の有無を検出する。
遠隔始動操作が行われた場合は、その後、ある程度の時間が経過した後、運転者が車両に乗り込むことになる。このため、内燃機関の始動後、車両が走行を開始するまでにある程度の時間が存在するので、その間の空燃比センサ58、60の自己発熱による温度上昇を期待することができる。そこで、本実施例においては、遠隔始動操作が行われた場合には、通常の場合(すなわち、ドアのアンロック操作によりプリヒートが開始される場合)に比べて、目標温度Tcを低く設定することにより、バッテリー75の放電電力を低減することとしている。
本実施例において、ECU10は、上記図4に示すルーチンと共に図23及び図24に示すルーチンを実行する。先ず、図23に示すルーチンについて説明する。
図23に示すルーチンは、プリヒートの許可/禁止を行うべく実行される。図23に示すルーチンが起動されると、先ずステップ910の処理が実行される。
ステップ910では、遠隔始動操作が検出されたか判別される。その果、遠隔始動操作が検出された場合は、次にステップ912において、遠隔始動フラグFrが「1」にセットされた後、ステップ914の処理が実行される。ステップ914では、プリヒート許可フラグF1が「1」にセットされることによりプリヒートが許可される。
一方、ステップ910において、遠隔始動操作が検出されない場合は、次にステップ916の処理が実行される。
ステップ916では、運転準備操作(例えば、ドアのアンロック操作)が検出されたか否かが判別される。その結果、肯定判別された場合には、次にステップ918において遠隔始動フラグFrが「0」にリセットされた後、上記ステップ914の処理が行われることによりプリヒートが許可される。一方、ステップ916において否定判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンは終了される。なお、プリヒート許可フラグF1は「0」に初期化されているものとする。
ステップ914に続くステップ920では、遠隔始動フラグFrが「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、Fr=1が不成立であれば、運転準備操作によりプリヒートが許可されたと判断されて、次にステップ922の処理が実行される。一方、ステップ920においてFr=1が成立する場合は、遠隔始動操作によりプリヒートが許可されたと判断されて、次にステップ924の処理が実行される。
ステップ922では、プリヒートにおける目標温度Tcが所定値Tc1に設定される。ステップ924の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
ステップ924では、プリヒートにおける目標温度Tcが上記所定値Tc1よりも小さいTc2に設定される。なお、Tc2は、固定値であってもよく、あるいは、水温THW、バッテリー75の充電状態等に応じて変化させることとしてもよい。ステップ924の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
次に、図24に示すルーチンについて説明する。図24に示すルーチンは、遠隔始動操作が行われた後、内燃機関を始動させるべく実行される。図24に示すルーチンが起動されると、先ずステップ950の処理が実行される。
ステップ950では、遠隔始動フラグFrが「1」にセットされているか否かが判別される。その結果、Fr=1が不成立であれば、以後何ら処理が行われることなく今回のルーチンは終了される。この場合は、以後、通常の始動手順に従って(つまり、イグニッションスイッチによる通常の始動操作が行われることにより)内燃機関の始動が許可されることになる。一方、ステップ950において、Fr=1が成立する場合は、次にステップ952の処理が実行される。
ステップ952では、センサ温度Tが目標温度Tcに達しているか否かが判別される。その結果、T≧Tcが成立する場合は、次にステップ954において、内燃機関の始動が許可された後、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ952においてT≧Tcが不成立であれば、次にステップ956において内燃機関の始動が禁止された後、今回のルーチンは終了される。
上述の如く、図23のルーチンによれば、遠隔始動操作によりプリヒートが許可される場合の目標温度Tcは、運転準備操作によりプリヒートが許可される場合の目標温度Tcよりも低い温度に設定される。すなわち、本実施例によれば、遠隔始動操作時には、機関始動後における空燃比センサ58、60の自己発熱を見込んで、目標温度Tcが低く設定されるため、プリヒートに要する電力を低減することができる。従って、本実施例のシステムによれば、車両走行開始後に速やかに空燃比センサ58、60を活性化することを可能としつつ、バッテリー75の放電量を小さく抑制することができる。
なお、上記第1乃至第9実施例においては、バッテリ比重センサ92が特許請求の範囲に記載したバッテリー状態検出手段に、遠隔始動信号送信機900及び遠隔始動信号送信機902が特許請求の範囲に記載した遠隔始動手段に、それぞれ相当している。また、ECU10が図4、図10、又は図11に示すルーチンを実行することにより特許請求の範囲に記載したプリヒート手段が、図5に示すルーチンのステップ152、156、158、160又は図9に示すルーチンのステップ300、304の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した始動意志判別手段が、図8に示すルーチンのステップ201、202、204、図15に示すルーチンのステップ607、又は図20に示すルーチンのステップ802の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載したスタータ電力予想手段が、図11に示すルーチンのステップ400、402、及び404の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した状態検出手段が、図11に示すルーチンのステップ105の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載したプリヒート禁止手段が、図23及び図24に示すルーチンを実行することにより特許請求の範囲に記載した遠隔操作時始動手段が、それぞれ実現されている。
ところで、上記第1〜第9実施例では、ヒータ抵抗Rに基づいてヒータ68の温度を求め、この温度をセンサ温度Tとして用いることとしたが、センサ温度Tを求める手法はこれに限られるものではない。例えば、センサ素子66は、センサ温度Tが高くなるほど、インピーダンスが低くなる特性を有している。このため、センサ素子66に所定周波数の交流電圧を印可し、その印可電圧と電流との関係からセンサ素子66のインピーダンスを測定することによりセンサ温度Tを求めることとしてもよい。また、機関停止中は排気通路58内の酸素濃度は一定(大気圧中の酸素濃度に等しい値)に維持されている。一方、酸素濃度が一定に維持された状況下でセンサ素子66を流れる電流は、センサ温度Tが活性化温度に達するまでは、センサ温度Tの上昇に応じて増加する。従って、機関始動前のセンサ電流Iに基づいてセンサ温度Tを求めることもできる。
また、上記実施例では、センサ電流Iが空燃比に応じて連続的に変化する空燃比センサ62、64により酸素濃度を検出するものとしたが、本発明はこれに限らず、空燃比センサ62、64の一方又は双方に代えて、空燃比に応じてリッチ/リーンの2段階の信号を出力するO2 センサを用いてもよい。
また、上記実施例では、ヒータ68への通電量をデューティ制御するものとしたが、これに限らず、電流値をリニアに変化させることで通電量を制御してもよい。