図1は、本発明の実施の一形態である車両用遠隔始動装置を含む車両の電子装置1の構成を示すブロック図である。遠隔始動装置は、たとえば内燃機関3の暖機運転を実施するときに、内燃機関3を車両外部から遠隔操作で始動させるために用いられる。遠隔始動装置を用いた遠隔始動動作で始動された内燃機関3は、車両が無人である間アイドル状態を保ち、車両に運転者が乗込む時点で停止される。この状態から、運転者は再度内燃機関を始動させて、車両の走行を開始させる。
電子装置1によって制御される内燃機関3は、たとえば4気筒の4サイクルガソリン機関であり、車両に装備される。電子装置1は、たとえば、内燃機関3の燃料噴射量、燃料の噴射タイミング、および混合気への点火タイミングを制御する。
内燃機関3のシリンダ4内に吸入される混合気は、吸入管路6内で、スロットル弁7によって吸入管路6への吸入量が調整された吸入空気と、燃料噴射弁8から吸入管路6に噴射される燃料とが混合されて生成される。スロットル弁7は、吸入管路6内で、燃料噴射弁8の設置場所よりも空気流れの上流側に設置され、車室内のアクセルペダル9の踏込み量に対応してその弁開度が決定される。燃料噴射弁8から噴射される燃料は、燃料槽10に貯留される。
内燃機関3は、シリンダ4を複数本有し、各シリンダ4毎に、吸入された混合気に点火するための点火プラグ12が設置される。この点火プラグ12に関連して、イグナイタ13、イグニッションコイル14、およびディストリビュータ15が設けられる。イグニッションコイル14は、図面では「IGC」と略称する。ディストリビュータ15は、図面では「D」と略称する。が設けられる。イグナイタ13は、イグニッションコイル14に付随して設置され点火装置であり、該コイル14への電力の供給および遮断タイミングを制御する。ディストリビュータ15は、イグニッションコイル14と各気筒の点火プラグ12との間に介在される点火時期制御装置であり、各気筒間の点火タイミングを制御する。これらの部品13〜15の詳細は後述する。
内燃機関3からの排気ガスは、触媒17が配設される排出管路16を介して車両外部に排出される。触媒17は、触媒17内部を通過する排気ガスから、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、および窒素化合物(NOx)を除去する。
内燃機関3は、シリンダ4を含む構成部品を冷却するための水冷式の冷却装置19、および内燃機関3の構成部品に潤滑油を供給する圧送式の潤滑装置20を備える。内燃機関3のクランク軸22の回転は、自動変速機23を介して車輪24に伝達され、車両の駆動力となる。さらにクランク軸22には、内燃機関3の始動装置であるスタータモータ26が取付けられる。
前述の電子装置1は、スタータ制御回路31、電源32、イグニッションスイッチ33、受信回路39、切換回路45〜47、センサ51〜62、内燃機関制御回路64、および警告灯66〜70を含んで構成される。
スタータ制御回路31は、内燃機関の遠隔始動動作を実施するために、後述の各部品を制御する。内燃機関3の遠隔始動動作では、車両の運転者は、電源32と車両の電気部品との間に介在されるイグニッションスイッチ33が遮断されている状態で、車両外部の送信機34から内燃機関3の始動を指示する。指示が与えられると、スタータ制御回路31は、後述の切換回路45〜47を用い、該スイッチ33を遮断したまま、車両内の各電気部品に電力を強制的に供給して、内燃機関3を始動させる。
送信機34には、始動スイッチ36、停止スイッチ37、および送信回路38が備えられる。この送信機34は、たとえば車両の運転者が所有する遠隔指示手段であり、電子装置1に対して無線通信で内燃機関3の始動および停止を指示する。たとえば、運転者が始動スイッチ36を操作するとき、送信回路38は、内燃機関3の始動を指示するための指示信号を送信する。また、停止スイッチ37が操作されたとき、始動中またはアイドル状態を保つ内燃機関3を停止させる停止信号を送信する。送信回路38から送信される指示信号および停止信号は、アンテナを含む受信回路39によって受信された後、スタータ制御回路31に与えられる。
前述したイグニッションスイッチ33は、イグニッションキーを挿入するべきキーシリンダを有し、OFF接点、ACC接点、IG接点、およびST接点を含む。各接点は、キーシリンダに挿入されたイグニッションキーを回動させることによって導通される。ACC接点、IG接点、およびST接点には、それぞれ導線41〜43が接続される。
イグニッションスイッチ33のACC接点が導通されるとき、導線41を介して、たとえば音響装置であるような車室内の電気機器に、電源32から電力が供給される。IG接点が導通されるとき、導線42を介して、後述する内燃機関制御回路64を含む内燃機関制御のための車両の電気部品に、電源32から電力が供給される。ST接点が導通されるとき、導線43を介して、スタータモータ26に電源32から電力が供給される。スタータモータ26は、電力が供給されると同時に作動して、その回転力をクランク軸22に伝達し、内燃機関3を始動させる。
導線41〜43には、イグニッションスイッチ33をバイパスして、電源32から電力を供給するための切換回路45〜47がそれぞれ接続される。この切換回路45〜47は、スタータ制御回路31によって制御される。切換回路45〜47の詳細については後述する。
スタータ制御回路31には、前述の内燃機関3の周辺部品に設置された複数のセンサ51〜59から、内燃機関3の作動状態に対応して変動する物理量を各センサ51〜59が計測した計測結果を表す計測信号が与えられる。またスタータ制御回路31には、該周辺部品以外の車両部品に設置されたセンサ60〜62から、車両およびその周囲の状況を表す物理量を表す計測信号が与えられる。
上述のセンサ51〜62のうち、吸気温センサ51は、吸入管路6のスロットル弁7の取付け位置よりも空気流れの上流側に設置され、吸入空気の温度を計測する。弁開度センサ52は、スロットル弁7の弁体に関連して設置され、スロットル弁7の弁開度を計測する。さらに弁開度センサ52は、内燃機関3がアイドル状態および高負荷状態のいずれの状態であるかを計測する。吸気圧センサ53は、吸入管路6内のスロットル弁7と燃料噴射弁8との取付け位置の間に設置され、吸入量調整後の吸入空気の圧力を計測する。燃料残量センサ54は燃料槽10内部に設置され、燃料槽10内の燃料残量を計測する。
排気温センサ55は、排出管路16内の触媒17の取付け位置よりも排気ガス流れの上流側に設置され、内燃機関3から配置された直後の排気ガスの排気温度を計測する。冷却水温センサ56は、冷却装置19のうち、たとえばシリンダブロック内のウォータジャケットから流出する冷却水の経路に設置され、冷却水の水温を計測する。油圧センサ57は、潤滑装置20内に設置され、装置20内の潤滑油の油圧を計測する。
クランク角センサ58は、内燃機関3のクランク軸22近傍に設けられ、クランク軸22の回転角度を直接計測する。車速センサ59は、自動変速機23から車輪24に回転力を伝達する伝達経路、または車輪近傍に設置され、車両が走行する計測速度を検出する。これらセンサ51〜59の計測信号は、スタータ制御回路31における内燃機関3の遠隔始動動作のフェールセーフ動作のためだけでなく、後述の内燃機関制御回路64での内燃機関3の作動制御動作にも用いられる。
排気ガス濃度センサ60は、車両の車室内または車両外部の予め定める空間内に貯留される排気ガスの濃度を計測する。予め定める空間は、たとえば車両を格納する車庫内部、または車室である。排気ガス濃度センサ60は、たとえば車庫内部、車両の外壁、または車室内に設置される。排気ガス濃度センサ60は、たとえば一酸化炭素濃度センサで実現される。また排気ガス濃度センサ60は、排気ガスに含まれる成分の濃度を検出するセンサであれば、上述のセンサ以外のセンサを用いてもよい。
物体侵入センサ61は、車両の車室内に外部から侵入した物体の有無を検出する。物体侵入センサ61は、たとえばレーダセンサ、超音波センサ、および赤外線センサのうちの少なくとも1つで実現される。これらセンサは、車両の車室内に設置される。振動センサ62は車体に設置され、車体に加えられる振動の有無を検出する。
スタータ制御回路31は、これらのセンサ51〜62からの計測信号から、内燃機関3およびその周辺部品、ならびに車両の現在の状態を推定し、後述するフェルセーフ動作を行う。
内燃機関制御回路64は、いわゆるエレクトロニック・コントロール・ユニットで実現される。該制御回路64には、内燃機関3の周辺部品に設置される前述のセンサ51〜59からの計測信号が与えられる。また、前述のイグナイタ13から、IGf信号が与えられる。IGf信号は、内燃機関3のシリンダ4内の混合気に対する点火プラグ12の点火タイミングを確認するための点火確認信号である。また、該制御回路64には、ディストリビュータ15内に設置されるNeおよびG信号生成回路111,112から、Ne信号およびG信号が与えられる。Ne信号は、内燃機関3のクランク軸22の回転角度を検出するためのクランク角度信号である。またG信号は、シリンダ4内のピストンの上死点位置を検出するためのクランク角度基準位置信号である。各信号の生成回路および生成手法については後述する。
内燃機関制御回路64は、センサ51〜59からの計測信号、IGf信号、Ne信号、およびG信号に基づいて、内燃機関3およびその周辺部品の現在の作動状態を推測し、推測された作動状態に基づいて、IGt信号および噴射信号を生成する。IGt信号は、点火プラグ12がシリンダ4内の混合気に点火する点火タイミングを制御するための点火信号であり、イグナイタ13に与えられる。噴射信号は、燃料噴射弁8からの燃料の燃料噴射量および噴射タイミングを制御するための信号であり、燃料噴射弁8に与えられる。IGt信号および噴射信号は、前述の推測した現在の内燃機関3およびその周辺部品の現在の作動状態が、予め定める理想の作動状態に近付くように決定される。
さらに内燃機関制御回路64は、推測された内燃機関3およびその周辺部品の現在の作動状態から、内燃機関3およびその周辺部品の異常作動の有無を検出する。異常作動が検出されたときには、車室内のインストルメントパネルに取付けられる警告灯66〜70を点灯すると同時に、内燃機関3およびその周辺部品に対するフェールセーフ動作を行う。
警告灯66〜70のうち、燃料残量警告灯66は、燃料残量センサ54で計測される燃料槽10内の燃料残量が、予め定める距離だけ走行可能な規定残量未満になったとき点灯される。排気温異常警告灯67は、排気温センサ55で計測された排気ガスの排気温度が、触媒17の作動可能温度範囲の上限値以上であるときに点灯される。油圧異常警告灯68は、油圧センサ57で計測された潤滑油の油圧が、内燃機関3への潤滑油の供給に必要な予め定める規定油圧未満であるとき点灯される。水温異常警告灯69は、冷却水温センサ56で計測される冷却水の水温が、内燃機関3の冷却に充分な予め定める規定水温以上であるときに点灯される。チェックエンジン警告灯70は、センサ51〜53,58,59からの計測信号が各センサで計測すべき物理量の異常を表すとき、および後述する回転数推測手法によって内燃機関3のクランク軸22の回転数が推測できないときに点灯される。また、チェックエンジン警告灯70は、センサ51〜59の故障が検出されたときにも点灯される。
図2は、上述した切換回路46の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。切換回路46は、補助リレー回路71、制御リレー回路72、およびトランジスタT1,T2を含んで構成される。
補助リレー回路71のスイッチSW1の一方端子は、電源32からイグニッションスイッチ33に至る電源ラインから分岐した導線73と接続される。制御リレー回路72のスイッチSW2の一方端子は、IG接点の導線42から分岐した導線74と接続される。さらにスイッチSW1,SW2の他方端子は直列に接続される。これによって、導線73、スイッチSW1,SW2、および導線74は、この順でイグニッションスイッチ33をバイパスして、電源32と導線42とを接続するバイパス回路を形成する。
補助および制御リレー回路71,72のコイルL1,L2の一方端子は、電源32とそれぞれ接続される。コイルL1,L2の他方端子は、トランジスタT1,T2のコレクタ端子にそれぞれ接続される。トランジスタT1,T2のエミッタ端子は接地され、ベース端子はスタータ制御回路31と接続される。さらに、導線74は、途中で分岐してスタータ制御回路31とも接続される。
補助および制御リレー回路71,72は、トランジスタT1,T2が電流を通過させるオン状態であるときだけ、コイルL1,L2が励磁してスイッチSW1,SW2を導通させる。スタータ制御回路31は、トランジスタT1,T2の状態をオン状態または電流を遮断するオフ状態に切換えることによって、リレー回路71,72のスイッチSW1,SW2を導通または遮断させる。
補助リレー回路71は、後述する切換回路46の故障時のフェールセーフ動作のために用いられ、切換回路46が正常作動するときだけスイッチSW1が導通される。制御リレー回路72は、内燃機関3の遠隔始動動作のために用いられ、受信回路39で送信機34からの指示信号が受信されるとき、スイッチSW2が導通される。スイッチSW1,SW2がともに導通されるとき、電源32から前述のバイパス回路を介して、導線42以後の構成部品に電力が供給され、スイッチSW1,SW2の少なくとも一方が遮断されるとき、導線42以後の構成部品に電力は供給されない。
切換回路45,47は、切換回路46と類似の構造を有し、導線74が、導線41,43とそれぞれ接続されている点だけが異なり、他の構造および各部品の動作は等しい。また、上述の切換回路45〜47は、以下に示す切換回路76と置換えてもよい。
図3は、切換回路76の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。切換回路76は、補助リレー回路71およびトランジスタT1の代わりに、制御リレー回路72とは異なる構造のスイッチング素子を用いる点だけが切換回路46と異なり、他の構成部品および各部品の動作は等しい。図3の切換回路76の構成部品のうち、切換回路46と同一の構成部品には同一の符号を付し、説明は省略する。
このスイッチング素子には、たとえばパワー制御用の電界効果トランジスタ77が用いられる。スタータ制御回路31は、電界効果トランジスタ77のゲート端子と直列接続される。電界効果トランジスタ77は、制御リレー回路72が故障するときにバイパス回路の電流を遮断するように、スタータ制御回路31によって直接制御される。このように、制御リレー回路72とフェールセーフ用のスイッチング素子とに異なる構造の素子を用いるとき、制御リレー回路72とフェールセーフ用のスイッチング素子との故障率を相互に異ならせることができる。これによって、制御リレー回路72とスイッチング素子が同時に故障する確率を減少させることができる。
図4は、図1のスタータ制御回路31での内燃機関3の遠隔始動動作を説明するためのフローチャートである。
スタータ制御回路31は、たとえば車両が停車し、イグニッションキーがイグニッションスイッチ33から抜取られているとき、常に電源32から電力が供給されて作動している。スタータ制御回路31が作動開始すると、ステップa1からステップa2に進み、受信回路39が送信機34からの指示信号を受信したか否かが判断される。ステップa2の判断は、受信回路39が指示信号を受信するまで繰返される。指示信号が受信されると、ステップa2からステップa3に進む。
ステップa3では、スタータ制御回路31によって、切換回路45〜47が正常に作動するか否かが判定される。切換回路45〜47の作動状態の検査手法を、図2に示す切換回路46を例として以下に説明する。
先ず、スタータ制御回路31は、イグニッションスイッチ33のACC接点、IG接点、およびST接点を全て遮断した状態で、補助リレー回路71を導通して、かつ制御リレー回路72を遮断する。この状態で、導線74に電源32からの基準電圧が印加されているか否かを判定し、印加されているときには制御リレー回路72が故障し、電力の遮断ができないと判断する。導線74に基準電圧が印加されておらず、制御リレー回路72が正常作動して電力を遮断していると判断されるときは、次いで補助リレー回路71を遮断し制御リレー回路72を導通して、上述の判定を行う。この状態で導線74に基準電圧が印加されているとき、補助リレー回路71が故障し、電力の遮断ができないと判断する。リレー回路71,72の少なくとも一方が故障していると判断されたとき、切換回路46が異常作動すると判定する。リレー回路71,72が共に正常作動しているときだけ、切換回路46が正常作動していると判定する。
切換回路45〜47を上述の検査手法でそれぞれ検査し、いずれか1つの回路が異常作動していると判定されたとき、ステップa3からステップa4に進む。ステップa4では、スタータ制御回路31に対して、内燃機関3の遠隔始動動作を禁止して、そのまま当該フローチャートの処理動作を終了する。
ステップa4で遠隔始動動作が禁止されると、以後、受信回路39で指示信号が受信されても遠隔始動動作は実施されない。これによって、たとえば各リレー回路71,72内のスイッチSW1,SW2の少なくとも一方が溶着するような故障が生じるとき、内燃機関の暖機運転を確実に停止させることができる。ゆえに、たとえば、各リレー回路71,72の一方回路が溶着しているときにそのまま暖機運転を実施した場合であって、暖気運転中に各リレー回路71,72の他方回路がさらに溶着して、後述のフェールセーフ動作で電力供給の遮断ができなくなることを未然に防止することができる。
再び図4を参照する。ステップa3で全ての切換回路45〜47が正常作動していると判定されるとき、ステップa5に進む。ステップa5では、スタータ制御回路31は、切換回路45〜47の制御リレー回路72のスイッチSW2を導通させる。これによって、イグニッションスイッチ33のIG接点およびST接点が遮断されたまま、スタータモータ26および内燃機関制御回路64に電源32から電力を供給されるので、モータ26および回路64が作動開始する。
したがって、まずスタータモータ26がクランク軸22を強制的に回転させると同時に、内燃機関制御回路64によって、燃料噴射弁8からの燃料噴射および点火プラグ12における混合気への点火が開始される。内燃機関3が始動した後は、回路31はスタータモータ26への電力を遮断することによってモータ26を停止させ、内燃機関制御回路64だけによって、内燃機関3の駆動状態がアイドル状態を保つように、燃料噴射量、噴射タイミングおよび点火タイミングを制御させる。
このような一連の遠隔始動動作のうち、少なくとも切換回路45〜47のスイッチSW2が導通されると、ステップa5からステップa6に進む。ステップa6〜ステップa16は、内燃機関3の遠隔始動動作におけるいわゆるフェールセーフ動作である。このフェールセーフ動作は、たとえば、内燃機関3の遠隔始動動作中の車両走行、および内燃機関3の異常作動であるような、遠隔始動動作の不都合を事前に発見し、不都合が生じたときに内燃機関3を停止するために実施される。たとえば、ステップa6〜a16のうち、ステップa7〜a10は、内燃機関3の異常作動の有無を検出するための判定項目である。ステップa11〜a13は、無人の車両における暖機運転の異常作動の有無を検出するための判定項目である。各項目の判定動作を以下に詳細に説明する。
ステップa6では、燃料残量センサ54で計測される燃料槽10内に残留する燃料の残量が予め定める規定残量未満であるか否かが判定される。予め定める規定残量は、たとえば車両の停車位置から最寄りのガソリンスタンドまで、車両が走行するために必要な燃料残量である。具体的には、高速道路において、50km間隔でガソリンスタンドが設置されていることから、たとえば車両が50km走行するために必要な燃料残量を規定残量とする。
この規定残量未満に燃料が減少すると、遠隔始動動作を終了して運転者が車両を走行させようとするとき、走行中に燃料不足が生じて走行不可能になる可能性がある。ステップa6の判定は、このような燃料不足によって車両走行が不可能になることを事前に防止するために実施される。ステップa6では、計測される残量が規定残量未満であるときには遠隔始動動作を停止させるべきと判断し、規定残量以上であるときだけ、ステップa7に進む。
ステップa7では、内燃機関3およびその周辺部品に設置されるセンサ51〜59からの計測信号に異常が生じているか否かが判定される。前述したように、内燃機関制御回路64は、センサ51〜59からの計測信号に基づいて内燃機関3の現在の作動状態を推定し、推定の作動状態に基づいて燃料噴射弁8および点火プラグ12の動作を制御する。たとえば、燃料噴射弁8からの燃料噴射量および噴射タイミング、ならびに混合気への点火タイミングが制御される。これらセンサ51〜59のうちの少なくとも1つが故障しているとき、内燃機関3の作動状態に付随して変動する物理量が、故障のセンサで計測される分だけ得られなくなるので、その分だけ内燃機関制御回路64における推定の駆動状態に誤差が生じる。したがって、内燃機関制御回路64は、現在の駆動状態に適合した燃料噴射量および燃料噴射タイミングならびに点火タイミングを決定することが困難になる。ステップa7の判定は、このような内燃機関制御回路64の異常作動によって、内燃機関3が異常作動することを事前に防止するために実施される。
また内燃機関制御回路64では、イグナイタ13からのIGf信号が得られないとき、内燃機関制御回路64がイグナイタ13に対してIGt信号を与えても、部品12〜15の故障によって失火が生じたことを推定することが困難になる。また、ディストリビュータ15からのNe信号およびG信号が内燃機関制御回路64に与えられないとき、該回路64は内燃機関3のクランク軸22の現在の回転数および回転角度を推定することが困難になる。回転数および回転角度が推測できないと、前述の噴射タイミングおよび点火タイミングを決定して、内燃機関3を適確に制御することが困難になる。
このようなことから、スタータ制御回路31は、イグナイタ13およびディストリビュータ15からの各信号が得られないときにも、内燃機関3の遠隔始動動作を停止させるべきと判断する。これによって、内燃機関制御回路64での現在の内燃機関3の駆動状態の推定が困難となり、制御が不安定となって内燃機関3が異常作動することを事前に防止することができる。
さらにスタータ制御回路31は、ステップa6の判定動作および後述のステップa8〜ステップa11の判定動作で判定されない物理量であって、内燃機関3の駆動状態に付随して変動する物理量が予め定める規定範囲よりも逸脱しているとき、内燃機関3の異常作動を引起こす可能性があると判断して、同様に遠隔始動動作を停止させる。該物理量には、たとえば吸入空気の温度および圧力、また、排出管路16内の触媒17よりもガス流れ上流側に設けられる酸素濃度センサで計測される排気ガス内の酸素濃度が挙げられる。
前述のセンサ51〜59はセンサ自体が故障したとき、規定範囲を逸脱するような物理量を表す計測信号を出力するように設計されていることが多い。ゆえに、計測信号が表す物理量が予め定める規定範囲内にあるか否かを判断することによって、内燃機関3の異常作動とセンサ51〜59の故障とを同時に判断することができる。
このような動作によって、内燃機関制御回路64が内燃機関3を制御できなくなることを防止することができる。センサ51〜59が全て正常に作動していると判断されるときだけ、ステップa7からステップa8に進む。
ステップa8では、排気温センサ55で計測される排気ガスの排気温度が、予め定める規定温度以上であるか否かが判定される。前述の触媒17は、予め定める作動温度範囲の上限値を超えた温度の排気ガスが流入すると、上述の物質を除去することが困難になるので、該排気ガスは物質が充分に除去されないまま車外に排出される。また、排気ガスの排気温度が上昇すると、触媒17が破壊される可能性がある。ステップa8の判定は、これらの不都合を事前に防止するために行われる。
予め定める規定温度は、触媒17が正常に作動して一酸化炭素、炭化水素、および窒素化合物を除去することができる作動温度範囲の上限値以下に設定される。具体的には、規定温度は、たとえば900°に設定される。スタータ制御回路31は、排気温度が規定温度以上であるときには遠隔始動動作を停止させるべきと判定し、規定温度未満であるときには、ステップa8からステップa9に進む。このように、排気温度が規定温度以上であるときに遠隔始動動作を停止させることによって、たとえば、暖機運転中に、排気温度が上限温度以上の排気ガスが触媒を通過して、前記物質が除去されないまま排気ガスが排出されること、および触媒が故障することを、事前に防止することができる。
ステップa9では、油圧センサ57によって計測される潤滑油の油圧が予め定める規定油圧未満であるか否かが判断される。予め定める規定油圧は、たとえば潤滑装置20において、潤滑油を内燃機関3およびその構成部品に充分に供給することが可能な油圧の下限値以上に設定される。圧送式の潤滑装置20では、予め定める圧力を潤滑油に加えて、潤滑装置20および内燃機関3内で潤滑油を潤滑される。ゆえに、潤滑油の油圧が低下すると、潤滑油の循環が不良になり、内燃機関3およびその構成部品への潤滑油の供給が不充分になる。このとき、構成部品の摩擦力が増大するような、内燃機関3の異常作動の原因が生じる。ステップa9の判定は、このような潤滑油不足に起因する内燃機関3の異常作動を事前に防止するために行われる。
スタータ制御回路31は、計測された油圧が規定圧力未満であるときには遠隔始動動作を停止させるべきと判定し、規定圧力以上であるときだけステップa9からステップa10に進む。このように、潤滑油の油圧が規定圧力以下のときに内燃機関を停止させることによって、たとえば、暖気運転時に、潤滑油の供給不足に起因する内燃機関の異状動作が生じることを、事前に自動的に防止することができる。
ステップa10では、冷却水温センサ56によって計測された冷却水の水温が予め定める規定温度以上であるか否かが判定される。前述の内燃機関3は、シリンダ4内で混合気が燃焼することによって加熱されるので、その構成部品は常に水冷式の冷却装置19によって冷却されている。これら構成部品が充分に冷却されないとき、構成部品の膨張およびの強度劣化、ならびに構成部品間の潤滑不良が生じ、内燃機関3の異常作動の原因となる。ステップa10の判定は、内燃機関3の冷却不足に起因する内燃機関3の異常作動を防止するために実施される。
予め定める規定温度は、冷却装置19において内燃機関3の構成部品およびその周辺部品を充分に冷却することが可能な冷却水水温の上限値未満に設定される。規定温度は、具体的には、たとえば105°に設定される。スタータ制御回路31は、計測された冷却水の水温が規定水温以上であるときには遠隔始動動作を停止させるべきと判断し、規定温度未満であるときだけステップa11に進む。このように、冷却水の水温が規定水温以上のときに内燃機関を停止させることによって、たとえば、たとえば暖機運転中に、内燃機関の過熱に起因する内燃機関の異常動作が生じることを、事前に自動的に防止することができる。
ステップa11では、アクセルペダル9が操作されたか否かが判定される。この内燃機関3の遠隔始動動作では、始動後の内燃機関3はアイドル状態を維持するように、内燃機関制御回路64によって制御される。たとえば、車両の車室内で、運転席の足元にある物がアクセルペダル9を押しているような状態で、アクセルペダル9が踏込まれているような場合、スロットル弁7の弁開度がアイドル状態に対応した最小弁開度よりも大きくなるので、内燃機関3の回転数が上昇し、アイドル状態を超えることがある。ステップa11の判定は、このように、内燃機関3がアイドル状態を超えて作動することを防止するために実施される。
アクセルペダル9の操作の有無の判定は、たとえば、弁開度センサ52によって計測されるスロットル弁7の弁開度がアイドル状態に対応した最小弁開度を超えたか否かを判断することで実施される。この場合、計測される最小弁開度を超えるとき、アクセルペダル9が操作されていると判断される。また、内燃機関3の現在の回転数を計測し、計測された回転数がアイドル状態に対応した最小回転数を超えたか否かを判断することで実施される。この場合、計測された回転数がアイドル回転数を超えたとき、アクセルペダル9が操作されていると判断する。
内燃機関3の回転数は、クランク角センサ58によって、クランク軸22の回転から直接計測してもよい。また、内燃機関制御回路64から内燃機関3の周辺部品に与えられる制御信号、および該周辺部品から内燃機関制御回路64に与えられる信号のうちの内燃機関3のサイクルに対応して変動する信号から、回転数を推測するようにしてもよい。この信号には、たとえば前述の噴射信号、IGt信号、IGf信号、Ne信号、およびG信号が挙げられる。これらの信号の詳細および信号からの回転数の推測手法については後述する。これらの信号のうちの少なくともいずれか1つの信号を用いれば、回転数を推測することができる。また、上述の信号のうちの複数の信号からそれぞれ回転数を推測し、各信号から推測された回転数の平均値を求めて、該平均値をアクセルペダル9の操作の有無の判定に用いることが好ましい。
アクセルペダル9の操作の有無は、このような複数の手法によって判定することができる。ステップa11の判定では、上述の手法の少なくとも1つを用いて判定を行う。また、これらの手法のうち複数の手法を用いてそれぞれの手法でアクセルペダル9の操作の有無を判定し、すべての手法でアクセルペダル9が操作されていないと判定されるときだけ、ステップa11におけるアクセルペダル9の操作がないと判定するようにしてもよい。スタータ制御回路31は、このような判定手法によって、アクセルペダル9が操作されていると判定されるときには、内燃機関3の遠隔始動動作を停止するべきと判断し、アクセルペダル9が操作されていないと判定されるときだけ、ステップa11からステップa12に進む。このように、アクセルペダル9が操作されているときに暖機運転を停止させることによって、たとえば、暖気運転中に、内燃機関3の実際の回転数が最小回転数を越えて上昇することを予測することができる。ゆえに、回転数の増加によって内燃機関3が過熱することを未然に防止することができる。
ステップa12では、車両が走行しているか否かが判断される。内燃機関3の暖機運転は車両が停車していることが前提条件であるが、たとえば誤ってブレーキが解除されているとき、遠隔始動動作で内燃機関3を始動させたことによって、車両が走行を開始してしまうことがある。ステップa12の判定は、この車両走行を防止するために実施される。車両の走行の有無は、たとえば車速センサ59によって計測された車両の車速が時速0kmを超えたか否かを判断し、超えたときには車両が走行しているとみなす。スタータ制御回路31は、車両が走行を開始するときには内燃機関3の遠隔始動動作を停止するべきと判定し、車両が停車しているときだけだけ、ステップa12からステップa13に進む。これによって、暖気運転中に誤って車両が走行を開始したときには、速やかに内燃機関3を自動的に停止させて、車両の走行を中止することができる。
ステップa13では、車両の車室内および車両を含む予め定める空間内に排気ガスが充満しているか否かが判定される。遠隔始動動作を用いた暖機運転では、遠隔始動動作を指示してから内燃機関3が充分に暖機されたと予測されるころ、車両の運転者は暖機運転中の車両に車両外部から近付くが、このとき車両周辺に排気ガスが充満していると、車両に近付くのが困難になる。ステップa13の判定は、このような遠隔始動動作を用いた暖機運転中の内燃機関3から排出された排気ガスによって、運転者が車両に近付けなくなることを事前に防止するために実施される。
上述の判定は、具体的には、前述の排気ガス濃度センサ60によって計測される予め定める空間内の排気ガスの濃度が、予め定める濃度未満であるかを判定することで実施される。この場合、濃度が予め定める濃度未満であるときだけ、排気ガスが充満していないと判定する。予め定める空間は前述のように車室または車庫であるが、運転者は車両外部から車両に接近するので、車両外部の空間の排気ガス充満の有無を判定することが好ましい。スタータ制御回路31は、該空間内に排気ガスが充満しているときには、内燃機関3の遠隔始動動作を停止させるべきと判定し、充満していないと判定されるときだけ、ステップa13からステップa14に進む。このように、上述のような状況で暖機運転を停止させることによって、暖機運転中に、車両付近にいる他者および運転者に排気ガスによる影響を与えることを未然に防止することができる。
ステップa14では、物体侵入センサ61によって車両の車室内への物体侵入が検出されたか否かが判定される。上述の遠隔始動動作は無人の車両において実施されることが前提条件である。たとえば遠隔始動動作中に車両の運転者とは別の他者が車両のイグニッションキーを持たずに車室内に侵入したとき、イグニッションキーを用いてイグニッションスイッチ33を導通しなくても、ブレーキを解除するだけで車両を走行させることができる可能性がある。ステップa14の判定は、このように他者が運転者に無断で車両を走行させることを防止するために実施される。スタータ制御回路31は、侵入した物体があるときには内燃機関3の遠隔始動動作を停止させるべきと判定し、侵入物体がないと判断されるときだけステップa14からステップa15に進む。
ステップa15では、車両に異常振動が加えられたか否かが判定される。車両の車室内に人が侵入しようとするとき、たとえば車両のドアの開閉によって、車両自体に振動が加わる。このような振動を車両の異常振動とみなして、振動センサ62で計測することによって、前述の侵入センサ61と同様に車室内への人の侵入を検出することができる。ステップa15の判定は、ステップa14の判定と同様の理由から、他者が運転者に無断で車両を走行させることを防止するために実施される。
このような振動の有無を用いた物体侵入の検出は、内燃機関3の始動動作終了後であって内燃機関3の回転がたとえばアイドル状態を保つように安定したときに実施される。これは、内燃機関3の始動動作時には、アイドル状態を維持するときとは別の振動が加わるので、加わった振動が物体が侵入したために生じたものか内燃機関3の始動動作によって生じたものかを判別することが困難になるためである。ゆえに、振動センサ60は、内燃機関3の回転が安定すると、内燃機関3のアイドル状態の維持によって車両に加わる振動以外の異常振動を計測する。スタータ制御回路31は、車両の異常振動を計測したときには内燃機関3の遠隔始動動作を停止させるべきと判定し、異常振動がないと判断されたときだけステップa15からステップa16に進む。このように、物体検出と振動の有無の2種類のパラメータで判定された上述のような状況で暖機運転を停止することによって、暖機運転を実施したために他者によって車両の走行が開始されることを未然に防止することができる。
ステップa16では、イグニッションスイッチ33に付随するキーシリンダに、車両のイグニッションキーが挿入されたか否かが判定される。イグニッションキーの挿入の有無を検出するために、たとえば、キーシリンダ内には、該キーシリンダにイグニッションキーを挿入したときに導通される検出スイッチが設置される。上述の判定は、具体的には、この検出スイッチが導通されたか否かを計測することによって実施される。
内燃機関3の遠隔始動操作は、いわゆる暖機運転に用いられるが、車両の運転者が車両走行させようとするとき、切換回路45〜47を含むバイパス回路と、イグニッションスイッチ33との重複を防止するために、一旦内燃機関3を停止させる。ステップa16の判定は、この内燃機関の停止の有無を決定するために実施される。また、運転者が車室内に入るときは、上述のステップa14,ステップa15の判定によって、物体侵入ありと判断されるので、この時点で内燃機関3の停止させるようにしてもよい。ステップa16でイグニッションキーが挿入されていないと判断されるときは、再びステップa6に戻り、ステップa6〜ステップa16のフェールセーフ動作のための判定を繰返す。
ステップa6〜a16の判定動作は、いずれかのステップで判定条件が満たされ、遠隔始動動作を停止するべきと判断されるまで繰返される。ステップa6〜ステップa16のいずれか1つの判断において、内燃機関3の遠隔始動動作を停止するべきと判定されたときには、ステップa6〜ステップa16からステップa17に進む。ステップa17〜ステップa19のステップでは、遠隔始動動作の停止動作が行われる。
ステップa17では、スタータ制御回路31は、トランジスタT2を介して、切換回路45〜47の制御リレー回路72を遮断させる。これによって、スタータモータ26および内燃機関制御回路64が作動停止する。内燃機関3の燃料噴射弁8の燃料噴射動作および点火プラグ12の点火動作は、内燃機関制御回路64が作動中だけ実施されるので、回路64を停止させると連動して内燃機関3も停止される。また、スタータモータ26も同時に停止させることによって、たとえば内燃機関3の始動動作中に上述の判定項目の判定条件が満たされたとき、始動動作を途中停止させることができる。制御リレー回路72を遮断させるとステップa17〜ステップa18に進む。内燃機関制御回路64は、停止手段として機能する。
ステップa18では、スタータ制御回路31で、制御リレー回路72が故障しているか否かが判定される。制御リレー回路72の故障判定は、たとえば、ステップa17で回路31が制御リレー回路72を遮断するように制御した後に、導線74に電力が供給されているか否かを判断することによって実施される。この場合、導線74に電力が供給されるときに故障していると判定する。制御リレー回路72の故障原因としては、たとえばスイッチSW2の溶着が考えられる。
また、上述の判定は、制御リレー回路72の遮断制御後の内燃機関3の回転数を計測または推定し、遮断制御後にも内燃機関3の回転が持続しているか否かによって判定してもよい。この場合、回転が持続しているとき、まだスタータモータ26および内燃機関制御回路64に電力が供給されていると見なして、制御リレー回路72が故障していると判定する。このように、制御リレー回路72が故障しているときだけ、ステップa18からステップa19に進む。
ステップa19では、トランジスタT1を介して、切換回路45〜47の補助リレー回路71を遮断して、強制的にスタータモータ26および内燃機関制御回路64への電力供給を禁止する。これによって、制御リレー回路72が故障しているときでも、補助リレー回路71によって、確実に遠隔始動動作を停止させることができる。ステップa18で制御リレー回路72が正常作動していると判断されるとき、およびステップa19で補助リレー回路71を遮断した後には、ステップa20へ進み当該フローチャートの処理動作を終了する。
このような一連の処理動作によって、フェールセーフ動作を含む遠隔始動動作実施することができる。またステップa6〜ステップa16のフェールセーフ動作の判定項目は、上述の項目の一部だけを行ってもよいし、さらに他の項目を付加えてもよい。フェールセーフ動作を確実に実施するには、多数の項目にわたって判定動作を行うことが好ましい。
また、上述のステップa6〜ステップa10の判定は、スタータ制御回路31で実施されているが、内燃機関制御回路64においても、前述した警告灯66〜70の点灯の有無の判定として、同様の判定が実施されている。ゆえに、これらの判定は、スタータ制御回路31および内燃機関制御回路64でそれぞれ別個に行われてもよいし、いずれか一方の回路だけで実施して他方の回路はその判定結果だけを導入するようにしてもよい。たとえば、スタータ制御回路31に内燃機関制御回路64での警告灯66〜70の点灯の有無の判定の判定結果を導入して、警告灯を点灯させると判定されるときに、該警告灯に対応した項目が異常であると判断するようにしてもよい。したがって前記スタータ制御回路31および内燃機関制御回路64の少なくともいずれか一方は、判定手段として機能する。
またステップa6〜ステップa16の判定動作は、上述のステップだけでなく、ステップa5のスタータモータ26起動動作の前にも実施するようにしてもよい。スタータモータ26起動前に上述のフェールセーフ動作の判定項目についての判定を行うことによって、内燃機関3の始動前に上述の項目のいずれか1つに異常が生じているとき、遠隔始動動作の実施を事前に停止して、内燃機関3の異常作動をより確実に防止することができる。
本発明の遠隔始動装置を含む別の例の電子装置を以下に説明する。この電子装置は、上述の図1の電子装置1の切換回路45〜47を、以下に説明する切換回路78に置換えた点だけが異なり、他の構造は等しい。等しい構造についての説明は省略する。
図5は、切換回路78の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。切換回路78は、切換回路46の補助リレー回路71の代わりに、ヒューズ79を取付けた点だけが異なり、他の構造は切換回路46と等しい。切換回路78のうち、切換回路46と等しい構造の構成部品には同一の符号を付し、説明は省略する。
ヒューズ79は、スイッチSW1の代わりに、導線73とスイッチSW2との間に介在される。ヒューズ79と制御リレー回路72との間の導線には、トランジスタT1のコレクタ端子が接続される。トランジスタT1のゲート端子はスタータ制御回路31と接続され、エミッタ端子は接地される。スタータ制御回路31は、上述のフローチャートのステップa18で制御リレー回路72が故障していると判断されるとき、トランジスタT1をオン状態に切換える。これによって、ヒューズ79には電源32からヒューズの容量以上の異常電流が流れるので、ヒューズが溶断される。これによって、制御リレー回路72が故障がしたときにも、切換回路78を用いた電力の供給を停止することができる。
ヒューズ79は一旦溶断するとヒューズ自体を交換するまで、バイパス回路の電力供給を復帰させることができないので、前述のフローチャートのステップa3における切換回路の故障判定を実施することはできない。したがって、本例の電子装置を用いた内燃機関3の遠隔始動動作では、図4のフローチャートにおいてステップa3の判定動作だけを飛ばし、ステップa2で指示信号を受信されたことが判定されると、そのままステップa5に進んでスタータモータを起動させる。以後の処理動作は、図4のフローチャートと等しい。
このように、制御リレー回路72とフェールセーフ用の手段とを異なる構造のものとすることによって、フェールセーフ用の手段と制御リレー回路72とが同時に故障することを防止することができる。また、電力供給の遮断を可逆的に実施可能なリレー回路および電界効果トランジスタと比較して、電力供給の遮断を非可逆的に行うヒューズ79は、可逆的な上述の構成部品よりも構造が簡単なので、装置の構造を簡略化することができる。
以下に、スタータ制御回路31における内燃機関3の回転数推測手法を説明する。前述の内燃機関制御回路64は、内燃機関3の作動状態を制御するために、燃料噴射弁8およびイグナイタ13に制御信号を与えている。また、内燃機関3の制御のために、イグナイタ13およびディストリビュータ15からの信号が回路64に与えられる。スタータ制御回路31は、これら信号を内燃機関3と内燃機関制御回路64との間の伝達経路である導線から分岐して導入し、該信号から内燃機関3の回転数を推測する。これによって、少なくとも回路64の入出力端子の前後から信号を導入することができるので、回転数の推測のために、内燃機関3およびその周辺部品近傍に新たな計測手段を設ける必要がなくなる。
以下に、上述の信号の生成手法、および各信号からの回転数推測手法を説明する。以下の説明では、内燃機関3は、4気筒の4サイクルガソリン機関と仮定する。
図6は、燃料噴射弁8、および内燃機関制御回路64内の燃料噴射制御部81の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。
前述の燃料噴射弁8は、たとえば内燃機関3の各気筒の前段の吸入管路6にそれぞれ設けられる。各燃料噴射弁8は、内部のソレノイドコイルL3に電力が供給されて励磁する間だけ弁が開放されることによって、燃料が噴射される。
燃料噴射制御部81は、処理回路83、作動回路84、抵抗R1およびトランジスタT3,T4を含んで構成される。
燃料噴射弁8のコイルL3の一方端子は、イグニッションスイッチ33のIG接点、ライン42、制御リレー回路85および補助リレー回路86を介して、前述の電源32と接続される。コイルL3の他方端子は、燃料噴射制御部81のトランジスタT3のコレクタ端子に接続され、トランジスタT3および抵抗R1を介して接地される。また、コイルL3の一方端子は、逆起電力遮断用のトランジスタT4のコレクタ端子と接続される。トランジスタT3のコレクタ端子とトランジスタT4のエミッタ端子とは、ダイオードD1を介し、ダイオードD1の順方向出力側端子が該エミッタ端子と接続されるように、接続される。さらにトランジスタT3,T4のベース端子は、それぞれ燃料噴射弁駆動回路84と接続される。
リレー回路85,86は作動回路84によって制御され、イグニッションスイッチ33のIG接点が導通されたときに、連動して導通される。処理回路83は、たとえばマイクロコンピュータで実現され、前述のセンサ51〜59からの計測信号に基づいて、燃料噴射量および噴射タイミングを決定し、燃料噴射量および噴射タイミングを表す前述の噴射信号を、駆動回路84に与える。
駆動回路84は、与えられた噴射信号と内燃機関3のサイクルの進行とに基づき、サイクルが噴射開始タイミングに至ると、トランジスタT3を電流を通過可能なオン状態にする。これによって、コイルL3に電力が供給されるので、燃料噴射が開始される。燃料噴射開始後、駆動回路84は、トランジスタT3のエミッタ端子と抵抗R1との接続点P1の電位を検出し、電位が予め定める値以上に上昇すると、トランジスタT3を電流を遮断するオフ状態に切換える。この動作を、処理回路83が定めた燃料噴射量だけ燃料を噴射し終わるまで、複数回繰返す。またこのとき、トランジスタT4は、トランジスタT1をオン状態およびオフ状態に切換えるときに生じるコイルL3の逆起電力を吸収し、コイルL3に流れる電流の急激な減少を抑える。このように、燃料噴射制御部81は、ソレノイドコイルL3への電力供給タイミングおよび供給時間を制御することによって、燃料噴射量および噴射タイミングを制御する。
図1で説明した噴射信号は、処理回路83から駆動回路84に与えられる噴射信号に該当するが、該噴射信号は内燃機関制御回路64内部の信号なので、中途から分岐して取出すことは困難である。ゆえに図6の回路の燃料噴射弁8を有する電子装置1において、スタータ制御回路31は、燃料噴射制御部81外部の信号のうち、燃料噴射中だけコイルL3の電力供給側の一方端子に流れる電流の有無から、内燃機関3のクランク軸の回転数を推測する。
燃料噴射は、4サイクルのガソリン機関では、クランク軸22が2回転するたびに1回行われるので、上述のコイルL3の一方端子に電流が流始めた流入タイミングのうちの連続する2回の該タイミング間の経過時間が、クランク軸22が2回転するのに要する時間と一致する。ゆえにスタータ制御回路31は、この経過時間を計測し、単位時間当たりの回転数の値として、該経過時間の2倍の値の逆数を求める。
図7は、前述のイグナイタ13、イグニッションコイル14、および内燃機関制御回路64の点火制御部91の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。
点火制御部91は、入力回路93、処理回路94、定電圧電源回路95、およびトランジスタT5を含んで構成される。点火制御部91は、前述のディストリビュータ15からのNe信号およびG信号に基づいて、点火プラグ12における混合気への点火タイミングを決定する。
Ne信号およびG信号は、先ず、入力回路93で整流およびレベル変換がなされた後に処理回路94に与えられる。処理回路94は、マイクロコンピュータで実現され、Ne信号およびG信号を基準にして、クランク軸22の角度およびピストンの上死点位置を推測する。次いで、推測された現在の角度および上死点位置から、次回のサイクルの点火タイミングを定める。
処理回路94は、定めた点火タイミングに基づき、トランジスタT5のオン状態とオフ状態とを切換える。このトランジスタT5のエミッタ端子には、抵抗を介して定電圧電源回路95が接続され、コレクタ端子には導線96が接続される。この導線96は、内燃機関制御回路64からイグナイタ13に与えられる前述のIGt信号を伝達する導線である。処理回路94は、トランジスタT5の状態を切換えることで、回路95から導線96への電力を供給または遮断して、IGt信号を生成する。処理回路95は、具体的には、点火タイミングよりも所定時間だけ早いタイミングでトランジスタT5をオン状態に切換え、さらに点火タイミングに至るとトランジスタT5をオン状態からオフ状態に切換える。ゆえに、導線96のIGt信号は、点火タイミング前に立上り、所定時間だけハイレベルを維持して点火タイミングと同時に立下るような、方形波の信号である。
前述したイグナイタ13は、ドライブ回路101、閉角度制御回路102、過電流防止回路103、定電流制御回路104、ロック防止回路105、およびIGf信号発生回路106ならびにトランジスタT6を含んで構成される。前述のイグニッションコイル14の制御用端子は、トランジスタT6のコレクタ端子に接続され、トランジスタT6および抵抗を介して接地される。また、イグニッションコイル14の接続用端子は、ディストリビュータ15を介して内燃機関3の複数の気筒のうちいずれか1つの点火プラグと接続される。ドライブ回路101は、トランジスタT6のオン状態およびオフ状態を切換えるために、ベース端子に与える信号を生成する回路であり、回路102〜105からの信号に基づいて作動する。また、トランジスタT6のエミッタ端子は、IGf信号発生回路102と接続される。
前述のIGt信号は、閉角度制御回路102に与えられる。IGt信号のハイレベルの継続時間は常に一定であるので、閉回路制御回路102は、IGt信号に基づいて、該信号の方形パルスが立上るとき、現在の内燃機関の回転数と1周期前の点火タイミングとに基づいて、イグニッションコイル14に1次電流を流始める通電開始タイミングを決定する。通電の遮断タイミングは、IGt信号の立下がりタイミングと一致する。
ドライブ回路101は、閉角度制御回路102によって決定された通電開始タイミングから、トランジスタT6をオン状態に切換えてイグニッションコイルに1次電流を流し、遮断タイミングでトランジスタT6をオフ状態に切換えて、1次電流を遮断する。この動作でイグニッションコイル14の2次コイルに発生する高電圧を、ディストリビュータ15を介して接続される点火プラグに与えることで、シリンダ4内の混合気に点火させる。
過電流防止回路103,定電流制御回路104,ロック防止回路105は、イグニッションコイル14およびトランジスタT6の保護の為に設けられる回路であり、該コイル14およびトランジスタT6に予め定める時間以上に長く電流が流続けるとき、ドライブ回路101にトランジスタT6を強制的にオフ状態に切換えさせる。
IGf信号発生回路106は、トランジスタT6がオフ状態に切換えられることで1次電流が遮断されたとき、イグニッションコイル14に生じる逆起電力を検出して、前述したIGf信号を生成する。IGf信号は、点火タイミングとほぼ同期して、パルスが立上るパルス信号である。このIGf信号は、点火制御部91の処理回路94に与えられる。
前述の処理回路94は、IGf信号のパルスの立上りが、内燃機関が1〜2回転するべき間に連続して検出されないとき、失火ありと判断して、失火した気筒の燃料噴射を停止するフェールセーフ動作を行う。また、ある気筒の失火が判断された後、さらに内燃機関の1回転する間にIGf信号のパルスの立上りが検出されないとき、全気筒で連続して失火が生じたと判断する。
複数の気筒を有する4サイクルの内燃機関3では、クランク軸22が2回転する間に、各気筒の点火プラグ12が時期をほぼ等間隔にずらして、1回ずつ点火される。ゆえに、4気筒の4サイクルガソリン機関では、IGt信号の方形パルス、およびIGf信号のパルスは、内燃機関3のクランク軸22が2回転する間に4回立上がる。スタータ制御回路31は、たとえば各信号の連続する2回のパルスの立上がりの間隔時間を計測し、計測された時間と上述の関係とから、前述の噴射信号における演算手法と類似の手法によって、クランク軸22の回転数を逆算する。
図8は、ディストリビュータ15内に備えられるNe信号発生回路111、G信号発生回路112、および内燃機関制御回路64の具体的な電気的構成を示す等価回路図である。この等価回路図では、図6および図7で説明した燃料噴射制御部81および点火制御部91の各回路部品のうち、処理回路83,94および入力回路93だけを表し、他の回路は出力回路108として省略して表す。また、入力回路93は、回路111,112毎に分割し、それぞれ入力回路93a,93bとする。
Ne信号発生回路111およびG信号発生回路112は、それぞれタイミングロータ114,115とピックアップコイルL4,L5とを含んで構成される。ピックアップコイルL4の一方端子は、入力回路93a,93bに接続され、他方端子はコンデンサC1を介して接地される。また、入力回路93a,93bの接地端子は、ダイオードD2を介して接地される。
ディストリビュータ15は、たとえば円形に配置される各気筒の点火プラグ12の接続端子と、イグニッションコイル14の接続用端子とを順次的に接続して、各気筒毎の点火時期を制御する。ディストリビュータ15内には、上述の接点の移動に連動して回転する回転軸が備えられる。タイミングロータ114,115は、この回転軸に固定されて、回転軸の回転と同期して回転する。
タイミングロータ114,115は、回転軸の中心軸線に沿って、異なる高さの位置に固定される。タイミングロータ114,115の外周には、1または複数の突起が等間隔に配列される。ピックアップコイルL4,L5は、タイミングロータ114,115の外周に近接し、対応するタイミングロータ114,115と同じ高さの位置に設置される。
Ne信号およびG信号発生回路111,112で生成されたNe信号およびG信号は、入力回路93a,93bで整流され、レベル変換された後に、補助回路117を介して処理回路83,94に与えられて、前述の処理に用いられる。補助回路117は、処理回路83,94が故障して、IGt信号の生成ができなくなったときに、補助的にIGt信号を生成するためのバックアップ回路である。
前述のディストリビュータ15の回転軸が回転すると、タイミングロータ114,115の突起とピックアップコイルL4,L5との間隔が回転に連動して変化するので、コイルL4,L5に交流信号のNe信号およびG信号がそれぞれ発生する。Ne信号およびG信号は、ピックアップコイルL4,L5の数、およびタイミングロータ114,115の構造によって、以下に示す関係で、クランク軸22の回転と対応する。
図9は、Ne信号発生回路111のタイミングロータ114およびピックアップコイルL4を示すためのディストリビュータ15の断面図である。このタイミングロータ114の外周には、等間隔に24個の突起が形成され、ピックアップコイルL4は1つだけ設置される。このような構造のNe信号発生回路111から出力されるNe信号は、図10に示すように、回転軸119が1回転する間に24回振動する。すなわち、Ne信号の1周期分の時間W1は、ディストリビュータ15の回転軸119が15°回転するために必要な時間と等しい。4サイクルのガソリン機関では、回転軸119が1回転する間にクランク軸22が2回転するので、時間W1はクランク軸22が30°回転するための時間と等しい。前述のスタータ制御回路31は、この時間W1とクランク軸の回転数または回転角度との関係から、Ne信号を用いてクランク軸22の回転数を推測する。
図11は、G信号発生回路112の具体的な構造を説明するためのディストリビュータ15の断面図である。該回路112のタイミングロータ115は、ロータの円中心を挟んで対向する位置に配置される2つの突起を有し、ピックアップコイルL5は一つだけ設置される。またタイミングロータ115は、各突起がピックアップコイルL5と最接近するタイミングが、内燃機関3のピストンが上死点位置に至るタイミングと一致するように、回転軸119に取付けられる。
このG信号発生回路112から出力されるG信号は、図12に示すように、ディストリビュータ15の回転軸119が1回転する時間W2の間に、2回交流波形が生じる信号であり、信号レベルが最大レベルに至るとき、シリンダ4内でピストンが上死点位置に至る。内燃機関3が4サイクルのガソリン機関であるとき、ディストリビュータ15の回転軸119の1回転がクランク軸22の2回転に相当するので、連続する2回の交流波形の最大レベルの間隔は、クランク軸22の1回転に要する時間に相当する。前述のスタータ制御回路31は、G信号が最大レベルに至るタイミングを検出し、このタイミングと前述の回転数との関係に基づいて、クランク軸22の回転数を逆算する。
また、G信号発生回路112は、図11に示す構造に限らず他の構造であってもよい。たとえば、タイミングロータ115が図13に示すように、タイミングロータ115が等間隔に4つの突起を有し、ピックアップコイルL5が1つである構造が考えられる。この構造のG信号発生回路112aからは、図14に示すように、前記時間W2が経過する間に4回交流波形が生じるG信号が得られる。この信号の波形の間隔の時間は、クランク軸22が半回転する時間に相当する。
また、図15に示すように、タイミングロータ115が突起を一つだけ有し、ピックアップコイルL5a,L5bが、回転軸119を挟んで対向する位置に2つ設けられる構成が考えられる。この構造のG信号発生回路112bの各ピックアップコイルL5a,L5bからは、図16に示すように、時間W2の間に1回ずつ交流波形が生じ、かつ交流波形の発生タイミングが相互に半周期ずつずれる2つの信号から構成されるG信号が得られる。このG信号は、各信号を重ね合わせたとき、図12に示すG信号と一致する。このような構造のG信号発生回路112a,112bを有する電子装置では、図12に示すG信号からの回転数推測手法と同様に、各G信号のパルス間の間隔を計測し、計測された時間と上述のクランク軸22の回転との対応関係から、回転数を逆算する。
このように、内燃機関制御回路64に入出力する各種の信号から、内燃機関3の回転数を推測することができる。また、これらの信号を用いた回転数推測手法は、並列して実施することができるので、複数の信号からそれぞれ回転数を推測し、それぞれの手法で推測された回転数の平均値を求めて、該平均値を以後の処理に用いる回転数の値としてもよい。また、この回転数推測手法は、スタータ制御回路31だけに限らず、内燃機関制御回路64において実施されてもよい。また、回転数を制御のパラメータとして用いる各種の制御回路において実施されてもよい。