JP3680247B2 - 空燃比センサのヒータ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空燃比センサのヒータ制御装置に関し、特に、内燃機関の始動前に空燃比センサをプリヒートする機能を有する空燃比センサのヒータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関では、排気通路の空燃比に基づいて燃料噴射量を補正することにより、空燃比を理論空燃比に向けて制御する空燃比フィードバック制御が実行される。空燃比フィードバック制御を行うことで触媒コンバータによる排気ガスの浄化性能が高く維持されると共に、燃費の悪化が防止される等の効果が得られる。かかる空燃比フィードバック制御を実現すべく、排気通路には空燃比を検出する空燃比センサが設けられる。一般に、空燃比センサは、数百度以上の活性化温度まで加熱されて活性した状態で、酸素濃度に応じた信号を出力する特性を有している。このため、空燃比センサには、活性化温度まで加熱するためのヒータが内蔵される。空燃比センサのヒータへの通電が開始された後、センサ温度が活性化温度に達するまで、すなわち、空燃比センサの出力信号に基づく空燃比フィードバック制御が可能となるまでには、ある程度の時間が必要とされる。そこで、従来より、内燃機関の始動直後から空燃比フィードバック制御を開始できるように、内燃機関の始動前にヒータへの通電を開始するプリヒートを行う装置が知られている。
【0003】
例えば、特開平5−202785号公報に開示される空燃比制御装置では、車両ドアのオープンが検出された場合に内燃機関の始動を予測し、空燃比センサのヒータへのプリヒートを開始する。この空燃比制御装置において、内燃機関の温度が低くなるほど、プリヒートにおける目標温度は高く設定される。かかる手法によれば、低温始動時においても、始動直後に速やかに空燃比センサの温度を活性化温度まで上昇させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、必ずしも車両ドアのオープン操作後に内燃機関が始動されるとは限らない。例えば、運転者が単に車両内の荷物を取り出すためにドアの開閉を行う場合には、内燃機関は始動されない。従って、上記従来例のように、車両ドアのオープンが検出された時に、内燃機関の温度のみに応じた目標温度を設定し、センサ温度Tが目標温度となるようにプリヒートを開始する構成では、ドアのオープン操作後に内燃機関が始動されない場合にプリヒートで消費する電力が無駄になる。特に、上記従来例では、内燃機関の温度が低くなるほど、プリヒートにおける目標温度は高く設定されるので、内燃機関の温度が低くなるほど、内燃機関が始動されない場合にプリヒートで無駄になる電力量が大きくなる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、不必要にプリヒートが行われるのを防止して、省電力化を図ることが可能な空燃比センサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、内燃機関に設けられた空燃比センサが備えるヒータに対して機関始動前に通電を行うプリヒート手段を有する空燃比センサのヒータ制御装置であって、
内燃機関が始動される可能性を推定する始動可能性推定手段と、
該推定された始動可能性に応じて前記プリヒート手段による前記ヒータへの通電量を設定する通電量設定手段とを備え、
前記始動可能性推定手段は、複数の始動準備動作を検出する始動準備動作検出手段を有し、各始動準備動作の有無に応じて始動可能性を推定することを特徴とする空燃比センサのヒータ制御装置により達成される。
【0007】
請求項1記載の発明において、プリヒート手段が機関始動前にヒータへの通電を開始することで、空燃比センサは機関始動に先立ってヒータへの通電量に応じた温度まで加熱される。始動可能性推定手段は、内燃機関が始動される可能性を推定する。そして、通電量設定手段は、内燃機関が始動される可能性の大きさに応じてヒータへの通電量を設定する。本発明では、推定される機関始動の可能性に応じてヒータへの通電量が設定されるので、不必要に大きな電力がヒータに供給されることが防止され、省電力化が達成される。
【0008】
内燃機関が始動される可能性がより正確に推定されるようにするという観点から、前記始動可能性推定手段は、複数の始動準備動作を検出する始動準備動作検出手段を有し、各始動準備動作の有無に応じて始動可能性を推定する構成とする。
【0009】
内燃機関の始動は、一連の複数の始動準備動作が行われた後にイグニッションスイッチがオンポジションとされることにより行われる。内燃機関が始動される可能性は、一連の始動準備動作が進行するほど高くなる。そこで、始動可能性推定手段が各始動準備動作の有無に応じて内燃機関が始動される可能性を推定する構成にすることで、内燃機関が始動される可能性がより正確に推定される。
【0010】
通常、内燃機関の始動は、ドアロックの解除、ドアの開操作、運転者の着座、ドアの閉操作、及び、キーシリンダへのイグニッションキーの差し込みという一連の始動準備動作が行われた後にイグニッションスイッチがオンポジションとされることにより行われる。そこで、上記複数の始動準備動作を特定するという観点から、請求項2に記載する如く、前記複数の始動準備動作は、車両ドアロックの解除、車両ドアの開操作、運転者の運転席への着座、及び、キーシリンダへのイグニッションキーの差し込みのうち、少なくとも二つの動作を含む構成としてもよい。
【0011】
内燃機関が始動される可能性は、各始動準備動作が行われてから次の始動準備動作が行われるまでの経過時間によっても異なる。例えば、車両ドアが開状態とされた状態が所定時間τ以上経過した場合は、車両ドアが開状態とされてからの経過時間がτ未満の場合に比して、内燃機関が始動される可能性が低いと判断できる。そこで、請求項3に記載する如く、
請求項1記載の空燃比センサのヒータ制御装置であって、
各始動準備動作が検出された後の経過時間を測定する時間測定手段を有し、
前記始動可能性推定手段は、更に、検出された経過時間に基づいて内燃機関が始動される可能性を推定する構成としてもよい。
【0012】
始動準備動作の検出後の経過時間を含めて内燃機関が始動される可能性が推定されるので、より正確に機関始動の可能性が推定される。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である空燃比センサのヒータ制御装置が適用された内燃機関のシステム構成図を示す。本実施例の内燃機関は、電子制御ユニット (以下、ECUと称す)10により制御される。図1に示す如く、内燃機関は、シリンダブロック12を備えている。シリンダブロック12の内部には、シリンダ14およびウォータジャケット16が形成されている。ウォータジャケット16には、水温センサ18が配設されている。水温センサ18はウォータジャケット16の内部を流れる冷却水の温度(以下、水温THWと称す)に応じた信号をECU10に向けて出力する。ECU10は水温センサ18の出力信号に基づいて水温THWを検出する。
【0014】
シリンダ14の内部にはピストン20が配設されている。ピストン20は、シリンダ14の内部を、図1における上下方向に摺動することができる。シリンダブロック12の上部には、シリンダヘッド22が固定されている。シリンダヘッド22には、吸気ポート24および排気ポート26が形成されている。
シリンダヘッド22の底面、ピストン20の上面、および、シリンダ14の側壁は、燃焼室28を画成している。上述した吸気ポート24および排気ポート26は、共に燃焼室28に開口している。燃焼室28には、点火プラグ30の先端が露出している。点火プラグ30はECU10から点火信号を供給されることにより、燃焼室28内の燃料に点火する。
【0015】
内燃機関は、また、吸気弁34及び排気弁36を備えている。吸気ポート24及び排気ポート26の燃焼室28への開口部には、それぞれ、吸気弁34及び排気弁36に対する弁座が形成されている。吸気弁34及び排気弁36は、各弁座に離着座することにより、それぞれ吸気ポート24及び排気ポート26を開閉させる。
【0016】
吸気ポート24には、吸気マニホールド38が連通している。吸気マニホールド38には、燃料噴射弁40が配設されている。燃料噴射弁40はECU10から付与される指令信号に応じて燃料を吸気マニホールド38内に噴射する。
吸気マニホールド38の上流側には、サージタンク42が連通している。サージタンク42の更に上流側には、吸気管44が連通している。吸気管44には、スロットルバルブ46が配設されている。スロットルバルブ46の近傍には、スロットル開度センサ48が配設されている。
【0017】
吸気管44の上流側にはエアクリーナ50が配設されている。吸気管44にはエアクリーナ50により濾過された外気が流入する。
一方、内燃機関の排気ポート26には、排気通路52が連通している。排気通路52には、触媒コンバータ54が配設されている。触媒コンバータ54は、排気ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び、酸化窒素(NOx)を反応させることにより排気ガスを浄化する。触媒コンバータ54の上流側及び下流側には、それぞれ、空燃比センサ56、58が配設されている。本実施例では、空燃比センサ56、58の構成は同一とされているが、異なるものとしてもよい。
【0018】
内燃機関は、また、回転数センサ60を備えている。回転数センサ60は内燃機関が所定のクランク角だけ回転する毎にパルス信号をECU10に向けて出力する。ECU10は、回転数センサ60の出力信号に基づいて内燃機関の回転数を検出する。
ECU10には、イグニッションスイッチセンサ64、着座センサ65、ドアセンサ66、ドアロックセンサ67が接続されている。イグニッションスイッチセンサ64は、イグニッションスイッチのスイッチポジションに応じた信号を出力する。ECU10は、イグニッションスイッチセンサ64の出力信号に基づき、イグニッションスイッチのスイッチポジションを検出する。また、着座センサ65は、運転席のシートクッション内に配置され、シートに対する荷重に応じた信号を出力する。ECU10は、着座センサ65の出力信号に基づき運転者の運転席への着座を検出する。また、ドアセンサ66は、車両ドアの開閉状態に応じた信号を出力する。ECU10は、ドアセンサ66の出力信号に基づきドアの開閉状態を検出する。更に、ドアロックセンサ67は、車両ドアのロック状態に応じた信号を出力する。ECU10は、ドアロックセンサ67の出力信号に基づきドアのロック状態を検出する。
【0019】
図2は、空燃比センサ56、58の内部構成を、ECU10との接続回路と共に示す。図2に示す如く、空燃比センサ56、58は、その内部に、例えばジルコニア等の材料により構成されたセンサ素子68と、センサ素子68を加熱するためのヒータ69とを備えている。
センサ素子68の一方の端子は定電圧源70に接続され、また、他方の端子はECU10に接続されていると共に抵抗器72を介して接地されている。かかる状態でセンサ素子68に流れる電流(以下、センサ電流Iと称す)は、センサ素子68の温度(以下、センサ温度Tと称す)が所定の活性化温度Te(例えば650゜Cから700゜C)以上の場合に、図1に示す排気通路52内の酸素濃度に応じて変化する。ECU10には、センサ電流Iに応じた電圧が入力され、この入力電圧に基づいて、排気ガス中の酸素濃度、すなわち、空燃比が検出される。
【0020】
一方、ヒータ69は、通電制御回路74を介してECU10に接続されている。通電制御回路74は、ECU10から供給される制御信号に応じて、車載バッテリー75を電源として、ヒータ69への通電電流をデューティ制御する。ヒータ69には、また、ヒータ電圧検出回路76及びヒータ電流検出回路78が接続されている。ヒータ電圧検出回路76は、ヒータ69に印可される電圧に応じた信号をECU10に向けて出力する。また、ヒータ電流検出回路78は、ヒータ69に流れる電流に応じた信号をECU10に向けて出力する。ECU10は、これらの信号に基づいてヒータ69の抵抗値(以下、ヒータ抵抗Rと称す)を検出する。
【0021】
ECU10は、内燃機関の運転中に、センサ温度Tの値が、活性化温度Te以上、かつ、センサ素子68に損傷を与えない程度の温度となるように、ヒータ69への通電量を制御する。なお、ヒータ抵抗Rはヒータ69の温度に応じて変化する。そこで、ECU10はヒータ抵抗Rに基づいてヒータ69の温度を求め、このヒータ温度をセンサ温度Tとして用いる。
【0022】
上述の如く、センサ温度Tが活性化温度Te以上に維持された状態では、センサ電流Iは、空燃比に応じて変化する。従って、ECU10は、上記の如くヒータ69への通電量を制御することで、センサ電流Iに基づいて空燃比を検出することができる。そして、ECU10は、検出した空燃比に基づいて燃料噴射量をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御を実行する。
【0023】
この空燃比フィードバック制御では、空燃比が理論空燃比よりもリッチ側である場合には燃料噴射量が減量され、リーン側である場合には燃料噴射量が増量されることにより、空燃比が理論空燃比近傍の所定範囲内に維持される。上記した触媒コンバータ54は、空燃比が理論空燃比近傍である場合に、排気ガスに対して高い浄化性能を発揮する。
【0024】
従って、空燃比フィードバック制御を実行することにより、排気ガス中のHC、CO、及び、NOxを触媒コンバータ54により効果的に除去することができる。また、空燃比フィードバック制御によれば、空燃比が過度にリッチ又はリーンになることがないため、燃費の悪化及び燃焼状態の不安定化を共に防止することができる。
【0025】
ところで、内燃機関の始動は、ドアロックの解除、ドアの開操作、運転者の着座、ドアの閉操作、及び、キーシリンダへのイグニッションキーの差し込みという一連の動作(以下、始動準備動作と称す)が行われた後にイグニッションスイッチがオンポジションとされることにより行われる。
本実施例では、何れかの始動準備動作が検出された時に、センサ素子68を活性化させるための目標温度Tcが設定され、センサ温度Tが目標温度Tcとなるように空燃比センサ56、58内のヒータ69への通電が開始される。以下、内燃機関の始動前に行われるヒータ69への通電をプリヒートと称する。始動準備動作の検出時にプリヒートを行う構成にすることで、内燃機関の冷間始動時であっても、プリヒートによってほぼ外気温まで低下したセンサ温度Tが目標温度Tcになるまで加熱されるので、内燃機関の始動直後から空燃比フィードバック制御を実行することができる。
【0026】
しかし、必ずしも始動準備動作の実行後に内燃機関が始動されるとは限らない。例えば、運転者が単に車両内の荷物を取り出すためにドアの開閉を行う場合や車両内で休憩するために運転席に着座する場合等には、内燃機関は始動されない。このため、始動準備動作の検出時に、最初から高い目標温度Tcを設定して、センサ温度Tが目標温度Tcになるようにヒータ69への通電量を制御する構成にすると、内燃機関が始動されない場合にヒータ69へ不必要に大きな電力が供給されることとなり、消費電力量が大きくなる。
【0027】
そこで、本実施例は、検出された始動準備動作の内容に基づき、機関始動の可能性を推定し、機関始動の可能性の大きさに応じたレベルの目標温度Tcを設定する点に特徴を有している。内燃機関が始動される可能性は、上記した一連の始動準備動作が進行するほど高くなる。例えば、ドアロック解除の検出時よりもイグニッションキーの差し込みの検出時の方が、その後内燃機関が始動される可能性は高い。本実施例では、より後に行われる始動準備動作の検出時ほど、内燃機関が始動される可能性がより高いと判断され、より高い目標温度Tcが設定される。以下、本実施例のプリヒートの際にECU10が実行するルーチンを説明する。
【0028】
図3は、プリヒートにおける目標温度Tcを決定すべくECU10が実行するルーチンを説明するためのフローチャートである。図3に示すルーチンは、例えば、所定時間間隔で起動される定時割り込みルーチンである。図3に示すルーチンが起動されると、先ず、ステップ100の処理が実行される。
ステップ100では、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれているか否かが判別される。この判別は、図1に示すイグニッションスイッチセンサ64の出力信号に基づいて行われる。ステップ100において、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていると判断される場合、次に、ステップ102の処理が実行される。一方、ステップ100において、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていない場合、イグニッションキーが差し込まれている場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ104の処理が実行される。
【0029】
ステップ102では、プリヒートにおける目標温度Tcが最も高いT1に設定される。そして、次に、ステップ106の処理が実行される。
ステップ104では、運転者が運転席に着座しているか否かが判別される。この判別は、図1に示す着座センサ65の出力信号に基づいて行われる。ステップ104において、運転者が運転席に着座していると判断される場合、次に、ステップ108の処理が実行される。一方、ステップ104において、運転者が運転席に着座していない場合、運転者が着座している場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ110の処理が実行される。
【0030】
ステップ108では、プリヒートにおける目標温度TcがT2(<T1)に設定される。そして、次に、ステップ106の処理が実行される。
ステップ110では、ドアが開状態(ドアオープン)であるか否か、及び、所定時間内にドアの開操作が行われた履歴があるか否かの判別が行われる。これらの判別は、図1に示すドアセンサ66の出力信号に基づいて行われる。ステップ110において、ドアが開状態であると判断される場合、又は、ドアの開操作が行われた履歴があると判断される場合、次に、ステップ112の処理が実行される。一方、ステップ110において、ドアが閉状態であり、かつ、所定時間内にドアの開操作が行われた履歴が無い場合、ドアの開操作が行われた場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ114の処理が実行される。
【0031】
ステップ112では、プリヒートにおける目標温度TcがT3(<T2)に設定される。そして、次に、ステップ106の処理が実行される。
ステップ114では、ドアロックが解除中であるか否か、及び、所定時間内にドアロックが解除された履歴があるか否かの判別が行われる。これらの判別は、図1に示すドアロックセンサ67の出力信号に基づいて行われる。ステップ114において、ドアロックが解除中であると判断される場合、又は、所定時間内にドアロックが解除された履歴があると判断される場合、次に、ステップ116の処理が実行される。一方、ステップ114において、ドアロックがロック状態であり、かつ、所定時間内にドアロックが解除された履歴が無い場合、内燃機関は始動されないと判断され、目標温度Tcは設定されずに今回のルーチンは終了される。
【0032】
ステップ116では、プリヒートにおける目標温度Tcが最も低いT4(<T3)に設定される。そして、次に、ステップ106の処理が実行される。
ステップ106では、プリヒート許可フラグFが「1」にセットされる。そして、今回のルーチンは終了される。プリヒート許可フラグFが「1」にセットされることでプリヒートの実行が許可される。なお、プリヒート許可フラグFは図3「0」に初期化されているものとする。
【0033】
続いて、センサ温度Tを上記ルーチンで決定された目標温度Tcに向けて制御すべく行われるプリヒートについて説明する。図4は、プリヒートを行うべくECU10が実行するルーチンのフローチャートである。
図4に示すルーチンが起動されると、先ず、ステップ200の処理が実行される。
【0034】
ステップ200では、プリヒートの実行が許可されているか否かが判別される。かかる判別は、プリヒート許可フラグFの状態に基づき行われる。ステップ200において、プリヒート許可フラグFが「0」にセットされている場合、プリヒートの実行が許可されていないと判断され、次に、ステップ202の処理が実行される。一方、プリヒート許可フラグFが「1」にセットされている場合、プリヒートの実行が許可されていると判断され、次に、ステップ204の処理が実行される。
【0035】
ステップ202では、空燃比センサ56、58のヒータ69への通電制御におけるデューティ比HTdutyが「0」に設定されることで、ヒータ69への通電が停止される。ステップ202の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
ステップ204では、ヒータ抵抗Rに基づき現在のセンサ温度Tが検出される。そして、次に、ステップ206の処理が実行される。
【0036】
ステップ206では、センサ温度Tが図3のルーチンにより設定された目標温度Tcを上回っているか否かが判別される。この結果、T>Tcが成立するならば、次に、ステップ208において、デューティ比HTdutyが所定値αだけ減少されることにより、ヒータ69への通電量が減少される。そして、今回のルーチンは終了される。一方、ステップ206において、T>Tcが不成立ならば、次に、ステップ210において、デューティ比HTdutyが所定値αだけ増加されることにより、ヒータ69への通電量が増加される。そして、今回のルーチンは終了される。ステップ208、210において、ヒータ69への通電量が適宜増減されることにより、センサ温度Tが目標温度Tcに収束していく。
【0037】
図3を用いて説明したように、本実施例では、より後で行われる始動準備動作の検出時ほど、機関始動の可能性が高いと判断され、より高い目標温度Tcが設定される。すなわち、内燃機関が始動される可能性が低い時ほど、より低い目標温度Tcが設定される。そして、図4を用いて説明したように、センサ温度Tが設定された目標温度Tcとなるようにヒータ69への通電量が制御される。このため、ヒータ69に対して不必要に大きな電力が供給されることが防止され、消費電力量が低減する。この結果、バッテリー容量の削減、バッテリー寿命の延長、及び、省電力化による燃費向上等が実現される。
【0038】
ところで、内燃機関が始動される可能性は、各始動準備動作が行われてから次の始動準備動作が行われるまでの経過時間によっても異なる。例えば、車両ドアが開状態とされた状態が所定時間τ以上経過した場合は、車両ドアが開状態とされてからの経過時間がτ未満の場合に比して、内燃機関が始動される可能性が低いと判断できる。そこで、始動準備動作の実行後の経過時間を含めて内燃機関が始動される可能性の大きさを推定し、内燃機関が始動される可能性の大きさに応じたレベルの目標温度Tcを設定する構成としてもよい。
【0039】
図5は、上記機能を実現すべく、ECU10が実行するルーチンのフローチャートである。図5に示すルーチンは、例えば、所定時間間隔で起動される定時割り込みルーチンである。図5に示すルーチンが起動されると、先ず、ステップ300の処理が実行される。
ステップ300では、イグニッションスイッチセンサ64の出力信号に基づきキーシリンダにイグニッションキーが差し込まれているか否かが判別される。この判別の結果、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていると判断される場合、次に、ステップ302の処理が実行される。一方、ステップ300において、キーシリンダにイグニッションキーが差し込まれていない場合、イグニッションキーが差し込まれている場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ304の処理が実行される。
【0040】
ステップ304では、着座センサ65の出力信号に基づき運転者が運転席に着座しているか否かが判別される。ステップ304において、運転者が運転席に着座していると判断される場合、次に、ステップ306の処理が実行される。一方、ステップ304において、運転者が運転席に着座していない場合、運転者が着座している場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ308の処理が実行される。
【0041】
ステップ306では、運転者が運転席に着座してから時間τ1以上が経過したか否かが判別される。この判別の結果、運転者が運転席に着座してからの経過時間がτ1未満であると判断される場合、次に、ステップ302の処理が実行される。一方、ステップ306において、運転者が運転席に着座してから時間τ1以上が経過している場合、運転者が着座してからの経過時間がτ1未満の場合に比して内燃機関が始動される可能性が低い判断され、次に、ステップ310の処理が実行される。
【0042】
ステップ308では、ドアセンサ66の出力信号に基づきドアが開状態(オープン)であるか否かの判別と、所定時間内にドアの開操作が行われた履歴があるか否かの判別が行われる。これらの判別の結果、ドアが開状態であると判断される場合、又は、ドアの開操作が行われた履歴があると判断される場合、次に、ステップ312の処理が実行される。一方、ステップ308において、ドアが閉状態であり、かつ、所定時間内にドアの開操作が行われた履歴が無い場合、ドアの開操作が行われた場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ314の処理が実行される。
【0043】
ステップ312では、ドアが開状態とされてから時間τ2以上が経過したか否かが判別される。この判別の結果、ドアが開状態とされてからの経過時間がτ2未満であると判断される場合、次に、ステップ302の処理が実行される。一方、ステップ312において、ドアが開状態とされてから時間τ2以上が経過している場合、ドアが開状態とされてからの経過時間がτ2未満の場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ316の処理が実行される。
【0044】
ステップ314では、ドアロックセンサ67の出力信号に基づきドアロックが解除中であるか否かの判別と、所定時間内にドアロックが解除された履歴があるか否かの判別が行われる。これらの判別の結果、ドアロックが解除中であると判断される場合、又は、所定時間内にドアロックが解除された履歴があると判断される場合、次に、ステップ318の処理が実行される。一方、ステップ314において、ドアロックがロック状態であり、かつ、所定時間内にドアロックが解除された履歴が無い場合、内燃機関は始動されないと判断され、目標温度Tcは設定されずに今回のルーチンは終了される。
【0045】
ステップ318では、ドアロックが解除されてから時間τ3以上が経過したか否かが判別される。この判別の結果、ドアロックが解除されてからの経過時間がτ3未満であると判断される場合、次に、ステップ302の処理が実行される。一方、ステップ318において、ドアロックが解除されてから時間τ3以上が経過している場合、ドアロックが解除されてからの経過時間がτ3未満の場合に比して内燃機関が始動される可能性が低いと判断され、次に、ステップ320の処理が実行される。
【0046】
ステップ302では、プリヒートにおける目標温度Tcが最も高いT1に設定される。そして、次に、ステップ322の処理が実行される。
ステップ310では、プリヒートにおける目標温度TcがT2(<T1)に設定される。そして、次に、ステップ322の処理が実行される。
ステップ316では、プリヒートにおける目標温度TcがT3(<T2)に設定される。そして、次に、ステップ322の処理が実行される。
【0047】
ステップ320では、プリヒートにおける目標温度Tcが最も低いT4(<T3)に設定される。そして、次に、ステップ322の処理が実行される。
ステップ322では、プリヒート許可フラグFが「1」にセットされる。そして、今回のルーチンは終了される。プリヒート許可フラグFが「1」にセットされることでプリヒートの実行が許可される。なお、プリヒート許可フラグFは「0」に初期化されているものとする。
【0048】
図5に示すルーチンの実行により目標温度Tcが決定されると、次に、図4に示すルーチンが実行されることにより、センサ温度Tが目標温度Tcとなるようにヒータ69への通電量が制御される。
以上のように、本実施例では、実行された始動準備動作の経過時間を含めて内燃機関が始動される可能性が推定される。このため、機関始動の可能性がより正確に推定される。より正確に推定された機関始動の可能性に応じてヒータ69への通電量が制御されるので、ヒータ69へ不必要に大きな電力が供給されることが防止され、消費電力量が更に低減する。この結果、更なるバッテリー容量の削減、バッテリー寿命の延長、及び、省電力化による燃費向上等が実現される。
【0049】
なお、上記実施例では、ヒータ抵抗Rに基づいてヒータ69 の温度を求め、この温度をセンサ温度Tとして用いることとしたが、センサ温度Tを求める手法はこれに限られるものではない。例えば、センサ素子68は、センサ温度Tが高くなるほど、インピーダンスが低くなる特性を有している。このため、センサ素子68に所定周波数の交流電圧を印可し、その印可電圧と電流との関係からセンサ素子68のインピーダンスを測定することによりセンサ温度Tを求めることとしてもよい。
【0050】
また、内燃機関の停止中は排気通路58内の酸素濃度は一定(大気圧中の酸素濃度に等しい値)に維持されている。一方、酸素濃度が一定に維持された状況化でのセンサ電流Iは、センサ温度Tが活性化温度に達するまでは、センサ温度Tの上昇に応じて増加する。従って、機関始動前のセンサ電流Iに基づいてセンサ温度Tを求めることもできる。
【0051】
また、上記実施例では、センサ電流Iが空燃比に応じて連続的に変化する空燃比センサ56、58により酸素濃度を検出するものとしたが、本発明は、これに限らず、空燃比センサ56、58の一方または両方に変えて、空燃比に応じてリッチ/リーンの2段階の信号を出力するO2 センサを用いてもよい。
また、上記実施例では、ヒータ69への通電量をデューティ制御するものとしたが、これに限らず、電流値をリニアに変化させることで通電量を制御してもよい。
【0052】
更に、ECU10が検出する始動準備動作は、上記実施例のものに限らない。例えば、ECU10がトランクフードの開閉、ATシフトポジション、ブレーキペダル操作、及び、クラッチペダル操作等を始動準備動作として検出する構成としてもよい。
上記実施例において、ECU10が図4のルーチンを実行することにより特許請求の範囲に記載の「プリヒート手段」が、図3のステップ100、104、110、114、及び、図5のステップ300、304、306、308、312、314、318の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載の「始動可能性推定手段」及び「始動準備動作検出手段」が、それぞれ実現されている。また、ECU10が図3のステップ102、108、112、116、及び、図5のステップ302、310、316、320の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載の「通電量設定手段」が、運転者の着座状態、ドアの開状態、及び、ドアロックの解除の検出後のそれぞれの経過時間を測定する処理を実行することにより特許請求の範囲に記載の「時間測定手段」が、それぞれ実現されている。
【0053】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明では、内燃機関が始動される可能性が推定され、内燃機関が始動される可能性の大きさに応じてヒータへの通電量が設定される。このため、不必要に大きな電力がヒータに供給されることが防止される。従って、本発明によれば、省電力化を達成することができる。
【0054】
また、請求項2及び3記載の発明では、各始動準備動作の有無に応じて内燃機関が始動される可能性が推定される。このため、内燃機関が始動される可能性がより正確に推定される。そして、不必要に大きな電力がヒータに供給されることがより確実に防止される。従って、本発明によれば、更なる省電力化を達成することができる。
【0055】
更に、請求項4記載の発明では、始動準備動作の検出後の経過時間を含めて内燃機関が始動される可能性が推定される。このため、内燃機関が始動される可能性がより正確に推定される。そして、不必要に大きな電力がヒータに供給されることがより確実に防止される。従って、本発明によれば、更なる省電力化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空燃比センサのヒータ制御装置が適用された内燃機関のシステム構成図である。
【図2】本実施例のシステムが備える空燃比センサの内部構成をECUとの接続回路と共に示す図である。
【図3】プリヒートにおける目標温度を決定すべくECUが実行するルーチンを説明するためのフローチャートである。
【図4】プリヒートを行うべくECUが実行するルーチンのフローチャートである。
【図5】プリヒートにおける目標温度を決定すべくECUが実行するルーチンを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU
54 触媒コンバータ
56、58 空燃比センサ
64 イグニッションスイッチセンサ
65 着座センサ
66 ドアセンサ
67 ドアロックセンサ
68 センサ素子
69 ヒータ
75 車載バッテリー
Claims (3)
- 内燃機関に設けられた空燃比センサが備えるヒータに対して機関始動前に通電を行うプリヒート手段を有する空燃比センサのヒータ制御装置であって、
内燃機関が始動される可能性を推定する始動可能性推定手段と、
該推定された始動可能性に応じて前記プリヒート手段による前記ヒータへの通電量を設定する通電量設定手段とを備え、
前記始動可能性推定手段は、複数の始動準備動作を検出する始動準備動作検出手段を有し、各始動準備動作の有無に応じて始動可能性を推定することを特徴とする空燃比センサのヒータ制御装置。 - 請求項1記載の空燃比センサのヒータ制御装置であって、
前記複数の始動準備動作は、車両ドアロックの解除、車両ドアの開操作、運転者の運転席への着座、及び、キーシリンダへのイグニッションキーの差し込みのうち、少なくとも二つの動作を含むことを特徴とする空燃比センサのヒータ制御装置。 - 請求項1記載の空燃比センサのヒータ制御装置であって、
各始動準備動作が検出された後の経過時間を測定する時間測定手段を有し、
前記始動可能性推定手段は、更に、検出された経過時間に基づいて内燃機関が始動される可能性を推定することを特徴とする空燃比センサのヒータ制御装置。
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