JP4045112B2 - 伸縮軸及び伸縮軸のコーティング層形成方法 - Google Patents

伸縮軸及び伸縮軸のコーティング層形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリング系に使用されるスプライン軸等の伸縮軸及び伸縮軸のコーティング層形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のステアリング系には、外周に軸心方向のスプライン歯部が周方向に複数個設けられた雄軸と、この雄軸のスプライン歯部に対応する軸心方向のスプライン溝部が周方向に複数個設けられ且つ雄軸の外周に軸心方向に摺動自在に套嵌された雌軸とを備えたスプライン軸等の伸縮軸を採用したものがある。
【0003】
この種のスプライン軸では、その摺動荷重(摺動抵抗)と回転方向のガタとは相反する関係にある。つまり、回転方向のガタを詰めると摺動荷重が大きくなり、逆に摺動荷重を軽くすると回転方向のガタが大きくなる。従って、摺動荷重と回転方向のガタとの両特性の両立が困難である。
【0004】
そこで、従来は、雄軸の外周面に摩擦係数の低減を目的としてナイロンコーティング層を形成した後、このナイロンコーティング層の摺動面側を雌軸の内周側の摺動面の内径寸法に合わせて切削したり、或いは雄軸の外周面に二硫化モリブデン、フッ素樹脂等の摩擦係数の低減に効果のある素材を、ガタ詰めを目的として膜厚管理しながらコーティングしてコーティング層を形成することにより、雄軸と雌軸との回転方向のガタを詰めて両特性を比較的高レベルで両立させる方法を採っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の雄軸の外周面にナイロンコーティング層を形成した後、そのナイロンコーティング層の摺動面側を切削する方法では、コーティング層の形成後にその摺動面側を切削する切削工程が必要であるため、その切削が煩わしく非常なコスト高となり、しかも単にコーティング層を切削しただけであるため、摺動面の耐久性に問題がある。
【0006】
また雄軸の外周面に二硫化モリブデン、フッ素樹脂等を、膜厚管理しながらコーティングする方法では、その膜厚管理が困難でコストがかかると共に、雌軸の内周側の摺動面の内径寸法のバラツキによりガタ詰めも安定せず、しかもコーティング層の表面が柔らかいため、耐久性に劣る欠点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、製作が容易で安価であり、雄軸と雌軸との回転方向のガタがなく、摺動荷重も低減できる伸縮軸及び伸縮軸のコーティング層形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る伸縮軸は、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、前記雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも前記雄軸の前記各摺動面に、該摺動面側の前記コーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを前記両軸の前記摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、前記両軸の前記各歯部の頂面と前記各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けたものである。
また別の本発明に係る伸縮軸は、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、前記雌軸の内周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも前記雌軸の前記各摺動面に、該摺動面側の前記コーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを前記両軸の前記摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、前記両軸の前記各歯部の頂面と前記各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けたものである。
本発明に係る伸縮軸のコーティング層形成方法は、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、前記雄軸の前記各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、前記雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に前記雄軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で前記1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも前記雄軸の前記各摺動面側の前記1次コーティング層を、前記両軸の前記摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまで前記ゲージにより圧縮し凝縮して前記凝縮コーティング層を形成し、次に前記両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させるものである。
また本発明に係る伸縮軸のコーティング層形成方法は、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、前記雌軸の前記各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、前記雌軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に前記雌軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で前記1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも前記雌軸の前記各摺動面側の前記1次コーティング層を、前記両軸の前記摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまで前記ゲージにより圧縮し凝縮して前記凝縮コーティング層を形成し、次に前記両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させるものである。
【0009】
また本発明に係る伸縮軸のコーティング層形成方法は、外周に歯部が周方向に複数個設けられた雄軸と、内周に前記歯部に対応する溝部が周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、その少なくとも一方の軸の摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、前記一方の軸の前記摺動面側に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に該一方の軸を、前記雄軸と前記雌軸との周方向に相対向する摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな間隙に設定されたゲージに圧入して、該ゲージにより前記1次コーティング層を前記一方の軸側に圧縮して凝縮するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0011】
図面は自動車等のステアリング系に使用する自在軸継ぎ手付きのスプライン軸を例示する。図1及び図2において、1 はスプライン軸で、雄軸2と、この雄軸2の外周に軸心方向に摺動自在に嵌合された雌軸3と、雄軸2の外周にコーティングされた凝縮コーティング層4とを備えている。なお、雄軸2及び雌軸3の嵌合側と反対側の端部には、自在軸継ぎ手5,6のヨーク7,8が溶接等によって夫々固定されている。
【0012】
雄軸2の外周には、軸心方向のスプライン歯部9とスプライン溝部10とが周方向に交互に複数個形成されている。また雌軸3の内周には、雄軸2のスプライン歯部9とスプライン溝部10とに対応する軸心方向のスプライン溝部11とスプライン歯部12とが周方向に複数個形成されている。
【0013】
なお、雄軸2のスプライン歯部9とスプライン溝部10は、その軸心方向の略全長にわたって形成されているが、雄軸2の軸心方向の一部に設けても良い。また雌軸3のスプライン溝部11とスプライン歯部12は、自在継ぎ手6と反対側の先端部から軸心方向の中間までの一部に設けられているが、雌軸3の軸心方向の略全長に設けても良い。
【0014】
凝縮コーティング層4は、図3に示すように雄軸2の外周面の略全面、即ちスプライン歯部9の頂面14側からスプライン歯部9の周方向の両側の摺動面15側、及びスプライン溝部10の底面16側の略全体にわたって、スプライン歯部9及びスプライン溝部10の略全面に形成されており、この凝縮コーティング層4を介して雄軸2に雌軸3が軸心方向に摺動自在に嵌合されている。
【0015】
凝縮コーティング層4には、低摩擦係数のコーティング材料、例えば摩擦係数の低減に効果のある二硫化モリブデン、フッ素樹脂等が使用されている。そして、この凝縮コーティング層4は、図5に示すように、雄軸2の外周面に1次コーティング層4aを形成した後、その1次コーティング層4aを雄軸2の外周面側へと圧縮することにより凝縮されている。
【0016】
この1次コーティング層4aの圧縮凝縮は、必要以上の1次コーティング層4aを除肉して摺動荷重を低減すること、及び凝縮コーティング層4の耐久性を向上させることを目的としたものであり、例えば図4(A)(B)に示すように雌ゲージ18を使用して、1次コーティング層4aを形成した後の雄軸2をこの雌ゲージ18内に圧入することにより行われる。
【0017】
圧縮凝縮後における凝縮コーティング層4の厚さt(図4及び図6参照)は、雄軸2側のスプライン歯部9の摺動面15と、この摺動面15と周方向に相対向する雌軸3側のスプライン溝部11の摺動面19との計算上の最大隙間t1(図3参照)を基準にして、その最大隙間t1よりも僅かに大きくなっている。
【0018】
従って、圧縮凝縮後におけるコーティング層4の外径寸法は、雌軸3のスプライン溝部11の摺動面19の内径寸法よりも僅かに大であり、その後に雄軸2の外周に雌軸3を嵌合して設定摺動荷重となるまで両者を摺動させることにより、凝縮コーティング層4を介してナジミ嵌合させるようになっている。
【0019】
なお、圧縮凝縮後における凝縮コーティング層4の厚さtは、雄軸2側のスプライン歯部9の摺動面15と、この摺動面15と周方向に相対向する雌軸3側のスプライン溝部11の摺動面19との間に介在される摺動部分17が最大隙間t1よりも僅かに大となれば良く、またその他の部分では雄軸2のスプライン歯部9の頂面14側の凝縮コーティング層4と雌軸3のスプライン溝部11の底面20との間、雄軸2のスプライン溝部10の底面16側の凝縮コーティング層4と雌軸3のスプライン歯部12の頂面22との間に夫々所定の隙間ができる程度であれば良い。
【0020】
なお、スプライン軸1の雄軸2と雌軸3は、回転時にそのスプライン歯部9とスプライン溝部11との周方向の摺動面15,19側を介して正逆方向に回転力を伝達し、また軸心方向に相対的に摺動するため、雄軸2の外周のコーティング層4の全体の内、少なくとも摺動面15,19間の摺動部分17が、雄軸2のスプライン歯部9の摺動面15側に圧縮し凝縮されておれば十分である。
【0021】
このスプライン軸1を製作する場合には、雄軸2のスプライン歯部9と雌軸3のスプライン溝部11との周方向に相対向する摺動面15,19側が僅かな隙間になるように、その雄軸2及び雌軸3を加工する。そして、次に図5に示すように、雄軸2側のスプライン歯部9及びスプライン溝部10を含む外周面の全体に、二硫化モリブデン、フッ素樹脂等のコーティング材料を用いて膜厚t2(図4及び図5参照)の1次コーティング層4aのコーティングを施す。
【0022】
このときの1次コーティング層4aの膜厚t2は、凝縮後における凝縮コーティング層4の最小の厚さt以上とすれば良く、厳しい膜厚管理は必要としない。
なお、1次コーティング層4aの膜厚は、最も薄い部分が圧縮凝縮後の摺動部分17の最小の厚さt以上であり、その最小厚に若干の除肉厚分を加えた厚さであることが望ましい。
【0023】
次に図4(A)に示すように雄軸2を雌ゲージ18内に圧入して、この雌ゲージ18により雄軸2の外周面の1次コーティング層4aを雄軸2の外周面側に圧縮して凝縮する。
【0024】
このときに使用する雌ゲージ18は、図6に示すように雌軸3と同様に、雄軸2のスプライン歯部9、スプライン溝部10に対応する軸心方向のスプライン溝部23、スプライン歯部24を周方向に交互に複数個備え、そのスプライン溝部23、スプライン歯部24の内径寸法が、雄軸2のスプライン歯部9側と雌軸3のスプライン溝部11側との計算上の最大隙間t1を基準にして、雄軸2の外周面と雌ゲージ18の内周面との隙間が最大隙間t1より僅かに大きく設定されている。
【0025】
また雌ゲージ18のスプライン溝部23及びスプライン歯部24の内面には、図4(B)に示すようにその軸心方向の一端の入り口25側に外広がり状のテーパー案内面26と、このテーパー案内面26の外端側の除肉部29とが形成され、またテーパー案内面26から反対側に勾配の小さい傾斜圧縮面27と、軸心方向と平行な平行圧縮面28とが形成されている。平行圧縮面28はテーパー案内面26、傾斜圧縮面27に比較して十分長くなっている。
【0026】
このような構成の雌ゲージ18の内周に雄軸2を圧入すると、先ず雌ゲージ18の除肉部29が1次コーティング層4aの外周側を削り取って必要以上の肉を除肉する。そして、続いてテーパー案内面26がその除肉後の1次コーティング層4aの外周面側に乗り上がりながら、このテーパー案内面26及び傾斜圧縮面27により1次コーティング層4aを雄軸2の外周面側へと順次圧縮し、その後に平行圧縮面28で1次コーティング層4aを安定的に凝縮して、凝縮コーティング層4を形成する。
【0027】
このように雌ゲージ18を圧入することによって、1次コーティング層4aの外周側の必要以上の肉を容易に除肉でき、しかも凝縮前の1次コーティング層4aの膜厚を略均一にできるため、凝縮後の凝縮コーティング層4の局部的なムラ等の発生を防止できる。
【0028】
また除肉後の1次コーティング層4aを、その摺動部分17の厚さtが雌軸3のスプライン溝部11の摺動面19の内径寸法よりも僅かに大になる程度まで容易に凝縮でき、その後の凝縮コーティング層4の耐久性を向上させることができる。更に雌ゲージ18には、テーパー案内面26、傾斜圧縮面27及び平行圧縮面28があるため、圧縮凝縮に際して雄軸2の外周面の1次コーティング層4aを傷めるようなこともない。
【0029】
そして、最後に現場合わせ、その他で雄軸2と雌軸3とを嵌合し、設定摺動荷重となるまで軸心方向に相対的に摺動させながらナジミ嵌合することにより、摺動面15,19間の隙間が殆どなく、しかも摺動抵抗が低く耐久性に優れたスプライン軸1を容易且つ安価に製作できる。
【0030】
因みに、この実施形態に基づいて製作した本発明に係るスプライン軸1と、雄軸2の外周面にナイロンコーティングを施した従来のスプライン軸とを比較したところ、本発明に係るスプライン軸1は従来に比較して摺動抵抗が約1/2になり、周方向のガタが略0になった。また製作コストは従来の1/3にできた。しかも、本発明に係るスプライン軸1は、従来のナイロンコーティングを施したものでは使用できなかった高温雰囲気での使用が可能となった。
【0031】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、実施形態では雄軸2の外周のスプライン歯部9及びスプライン溝部10の略全面に1次コーティング層4aを施し、その1次コーティング層4aの略全面を雌ゲージ18で雄軸2側に圧縮して凝縮するようにようにしているが、圧縮凝縮は全1次コーティング層4aの内、雄軸2のスプライン歯部9の周方向の摺動面15に対応する摺動部分17のみ、又はこの摺動部分17から周方向の一方又は両側にわたる所定範囲についてのみ行うようにしても良い。
【0032】
要するに雄軸2の外周の1次コーティング層4aの内、少なくとも回転及び摺動時に雄軸2と雌軸3とが接触する部分の1次コーティング層4aを圧縮し凝縮して凝縮コーティング層4とすれば良い。
【0033】
従って、図3に示すように雌軸3のスプライン溝部11の底面20及び/又はスプライン歯部12の頂面22との間に径方向の隙間がある場合には、雄軸2のスプライン歯部9の頂面14側及び/又はスプライン溝部10の底面16側の1次コーティング層4aは、凝縮せずにそのままにして良い。
【0034】
また雄軸2側に凝縮コーティング層4を形成する場合、その凝縮コーティング層4は雄軸2の外周面の内、少なくともスプライン歯部9の周方向の両側の摺動面15に形成すれば良く、他の部分の1次コーティング層4a、凝縮コーティング層4は省略しても良い。
【0035】
更に実施形態では、スプライン軸1を構成する雄軸2と雌軸3との内、その雄軸2の外周面に凝縮コーティング層4を形成する場合を例示しているが、雌軸3の内周面に1次コーティング層4aを形成し、その雌軸3内に雄ゲージを圧入して1次コーティング層4aを雌軸3の内周面側に圧縮し凝縮して凝縮コーティング層4を形成しても良い。
【0036】
この場合にも、雌軸3のスプライン溝部11、スプライン歯部12の内周面の略全面、又は雌軸3のスプライン溝部11の摺動面19に凝縮コーティング層4を形成しても良いし、雌軸3の内周面の略全面に1次コーティング層4aを形成して、その内の雌軸3のスプライン溝部11の摺動面19に対応する部分を凝縮コーティング層4としても良い。
【0037】
また雄軸2の外周面と雌軸3の内周面との両方に凝縮コーティング層4を設けても良し、雄軸2のスプライン歯部9にはその摺動面15の一方に、雌軸3のスプライン溝部11にはその摺動面19の他方に夫々凝縮コーティング層4を形成しても良い。
【0038】
従って、凝縮コーティング層4は、雄軸2のスプライン歯部9と雌軸3のスプライン溝部11との少なくとも周方向に相対向する摺動面15,19が凝縮コーティング層4を介して接触するように、その両者のスプライン歯部9とスプライン溝部11との摺動面15,19の内、少なくとも一方の摺動面15又は摺動面19にあれば十分である。なお、雄軸2側と雌軸3側との両方に互いに接触するように凝縮コーティング層4を形成する場合には、異なるコーティング材料を使用しても良い。
【0039】
更にスプライン軸1の他、雄軸2の外周に軸心方向のセレーション歯部とセレーション溝部とを周方向に複数個形成し、この雄軸2の外周に軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸3の内周に軸心方向のセレーション溝部とセレーション歯部とを周方向に複数個形成してなるセレーション式の伸縮軸の場合にも同様に実施可能である。
【0040】
従って、雄軸2はスプライン歯部9、セレーション歯部等の歯部を備え、また雌軸3はスプライン溝部11、セレーション溝部等の溝部を備えたものであれば十分である。また歯部及び/又は溝部は、その伸縮軸に要求される伸縮範囲に対応して設けておけば好く、必ずしも軸心方向の略全長にわたって設ける必要はない。
【0041】
コーティング材料は二硫化モリブデン、フッ素樹脂等が適当であるが、低摩擦係数の材料であれば、二硫化モリブデン等以外のものを使用することも可能である。また圧縮凝縮後の凝縮コーティング層4の厚さtは、当初から雄軸2と雌軸3との摺動面15,19間の最大隙間t1分に合わせておいても良い。
【0042】
雌ゲージ18は、入り口25側の除肉部29を省略して、テーパー案内面25の入り口25側端の直径を1次コーティング層4aの外径よりも大きくし、1次コーティング層4aの全てを圧縮し凝縮して凝縮コーティング層4とするように構成しても良い。1次コーティング層4aの膜厚が比較的少なく均一な場合には、このような雌ゲージ18を使用しても、圧縮凝縮後の凝縮コーティング層4の厚さのバラツキを防止できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明では、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に雄軸の摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも雄軸の各摺動面に、該摺動面側のコーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを両軸の摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、両軸の各歯部の頂面と各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けているので、伸縮軸の製作が容易で安価であり、しかも雄軸と雌軸との周方向のガタがなく、摺動荷重も低減できる利点がある。特に雌軸の内周面に凝縮コーティング層を形成する場合に比較して容易に製作できる。
【0044】
また別の本発明では、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に雄軸の摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、雌軸の内周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも雌軸の各摺動面に、該摺動面側のコーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを両軸の摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、両軸の各歯部の頂面と各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けているので、伸縮軸の製作が容易で安価であり、しかも雄軸と雌軸との周方向のガタがなく、摺動荷重も低減できる利点がある。
【0045】
更に本発明では、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に雄軸の摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、雄軸の各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に雄軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも雄軸の各摺動面側の1次コーティング層を、両軸の摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまでゲージにより圧縮し凝縮して凝縮コーティング層を形成し、次に両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させるので、伸縮軸の製作が容易で安価であり、しかも雄軸と雌軸との周方向のガタがなく、摺動荷重も低減できる利点がある。
【0046】
また本発明では、周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に雄軸の摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、雌軸の各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、雌軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に雌軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも雌軸の各摺動面側の1次コーティング層を、両軸の摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまでゲージにより圧縮し凝縮して凝縮コーティング層を形成し、次に両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させる伸縮軸の製作が容易で安価であり、しかも雄軸と雌軸との周方向のガタがなく、摺動荷重も低減できる利点がある。
【0047】
しかも入り口側に形成された外広がり状のテーパー案内面を有する雌ゲージを使用するため、雄軸の外周のコーティング層を傷めることなく容易に圧縮し凝縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すスプライン軸の正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すスプライン軸の拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すスプライン軸の要部の拡大断面図である。
【図4】(A)は本発明の一実施形態を示す圧縮凝縮工程の説明図、(B)は(A)の部分拡大図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す1次コーティング状態の拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す圧縮凝縮工程の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 スプライン軸
2 雄軸
3 雌軸
4 凝縮コーティング層
4a 1次コーティング層
9,12 スプライン歯部
10,11 スプライン溝部
15,19 摺動面
18 雌ゲージ
26 テーパー案内面

Claims (5)

  1. 周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、前記雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも前記雄軸の前記各摺動面に、該摺動面側の前記コーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを前記両軸の前記摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、前記両軸の前記各歯部の頂面と前記各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けたことを特徴とする伸縮軸。
  2. 周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸とを備えた伸縮軸において、前記雌軸の内周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングし、少なくとも前記雌軸の前記各摺動面に、該摺動面側の前記コーティング材料を圧縮して凝縮コーティング層を形成し、該凝縮コーティング層の厚さを前記両軸の前記摺動面間の最大隙間よりも僅かに大とし、前記両軸の前記各歯部の頂面と前記各溝部の底面との間に径方向の隙間を設けたことを特徴とする伸縮軸。
  3. 周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、前記雄軸の前記各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、前記雄軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に前記雄軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で前記1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも前記雄軸の前記各摺動面側の前記1次コーティング層を、前記両軸の前記摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまで前記ゲージにより圧縮し凝縮して前記凝縮コーティング層を形成し、次に前記両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させることを特徴とする伸縮軸のコーティング層形成方法。
  4. 周方向の両側に摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられた雄軸と、周方向の両側に前記雄軸の前記摺動面と周方向に対向する摺動面を有する軸心方向の歯部が溝部を介して周方向に複数個設けられ且つ前記雄軸に対して軸心方向に摺動自在に嵌合する雌軸との内、前記雌軸の前記各摺動面側に凝縮コーティング層を形成するに際し、前記雌軸の外周面に低摩擦係数のコーティング材料をコーティングして1次コーティング層を形成し、次に前記雌軸をゲージに圧入して、該ゲージの入り口側の除去部で前記1次コーティング層の必要以上の肉を除去しながら、少なくとも前記雌軸の前記各摺動面側の前記1次コーティング層を、前記両軸の前記摺動面側の最大隙間よりも僅かに大きな厚さまで前記ゲージにより圧縮し凝縮して前記凝縮コーティング層を形成し、次に前記両軸を嵌合して設定摺動荷重となるまで該両軸を摺動させることを特徴とする伸縮軸のコーティング層形成方法。
  5. 入り口側に形成された外広がり状のテーパー案内面を有する前記雌ゲージを使用することを特徴とする請求項3又は4に記載の伸縮軸のコーティング層形成方法。
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