JP4043315B2 - 住宅の気密構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、躯体を構成する構造部材を利用して気密層を連続させた住宅の気密構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅では、建物の屋内側に気密層を形成するのが一般的である(例えば、特開2001−123551号公報)。特に、鉄骨躯体を有する住宅では、躯体を構成する柱及び梁の間に形成された空間、又は梁と梁の間に形成された空間に断熱材を充填すると共に、柱及び梁を含む屋内側の面をポリエチレンシート等の気密シートで覆うことで、建物の外壁と屋根,天井に沿った断熱層と気密層を形成している。
【0003】
建物の屋内側の面に沿って形成された気密層は、柱と柱、梁と梁の間に形成された空間に所定の間隔を持って複数の下地を配置し、この下地に釘やステープル等を利用して気密シートを取り付けることで構成されている。従って、柱,梁を含む屋内側の面には全面にわたって気密シートが設けられることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如くして建物の屋内側の面に沿って気密層を形成する場合、躯体を構成する柱と梁の間に複数の下地を設置する必要があることから、これらの下地を施工する際の手間が掛かるという問題や、柱,梁を含む屋内側の全面に気密シートが施工されることによって、後工程である内壁の下地パネルを設置する作業や天井の下地を設置する作業に支障をきたし易いという問題がある。
【0005】
また気密シートを施工して気密層を形成した場合、複雑な部位断面のため施工が困難な部位や、電線,通信線等の配線類や上下水道管等の配管類或いは設備が貫通する部分の隙間の処理が難しく、また電線類や配管類等を貫通させたとき、この貫通部と気密シートを連続させて気密性を確保するのが困難であるという問題がある。また柱と梁の接合部等に於いて気密シートを先に貼っておく必要が生じ、手間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、躯体を構成する構造部材を利用して気密層を形成する際に、施工が簡単で且つ後工程の作業に支障をきたすことのない住宅の気密構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る代表的な住宅の気密構造は、住宅の外周部に配置された梁に外壁を形成する外壁パネルが取り付けられ、前記外壁パネルの屋内側に沿って気密性を有する断熱材が配置され、前記断熱材は構造部材である鋼材柱の側面と鋼材梁下面のいずれか一方又は両方にその小口面を当接させた状態で配置され、各構造部材と断熱材とが当接した交差部に屋内側から気密テープを貼り付けて当該交差部を塞ぎ、前記断熱材の屋内側の面と構造部材の屋内側の面とが連続している気密面を形成するものである。
【0008】
上記住宅の気密構造では、住宅の外周部に配置された外壁パネルの屋内側に沿って配置された気密性を有する断熱材の小口面を、構造部材である鋼材柱の側面や鋼材梁の下面側面に当接させ、各構造部材と断熱材とが当接した交差部に気密テープを貼り付けて塞ぎ、断熱材の屋内側の面と構造部材の屋内側の面とが連続した気密面を形成することが出来る。
【0009】
また、前記梁は、上下一対のフランジと、該上下一対のフランジを連結し、且つ前記梁の屋内側の面を形成するウェブとを備えていることが好ましい。また、前記梁のウェブには穴が形成されており、前記穴はウェブの屋内側の面に添わせて配置された気密性を有する断熱材により室内側から塞がれていることが好ましい。また、前記梁の下側フランジには、梁の下面側の断熱材と、前記梁の屋内側の面側の断熱材とに連結されてこれら断熱材を連続する断熱性を有する保護材が固定されていることが好ましい。
【0010】
また、住宅の躯体の最上部に配置された梁に屋根パネルが取り付けられて屋根を構成し、前記屋根パネルの屋内側に沿って気密性を有する断熱材が配置され、前記断熱材は鋼材からなる前記梁の屋内側の面にその小口面を当接させた状態で配置され、前記梁と断熱材とが当接した交差部に屋内側から気密テープを貼り付けて当該交差部を塞ぎ、前記断熱材 の屋内側の面と前記梁の屋内側の面とが連続している気密面を形成していることが好ましい。
【0011】
また、前記梁は、上下一対のフランジと、該上下一対のフランジを連結し、且つ前記梁の屋内側の面を形成するウェブとを備えていることが好ましい。また、前記梁のウェブには穴が形成されており、前記穴はウェブの屋内側の面に添わせて配置された気密性を有する断熱材により室内側から塞がれていることが好ましい。また、前記梁の下側フランジには、梁の下面側の断熱材と、前記梁の屋内側の面側の断熱材とに連結されてこれら断熱材を連続する断熱性を有する保護材が固定されていることが好ましい。
【0012】
また、前記柱は、角パイプ状に形成され、前記断熱材の小口面と当接する一対の側面を有していることが好ましい。
【0013】
また、前記外壁パネルの屋内側の面に薄板の断熱材が配置され、前記柱の一対の側面に当接する断熱材はそれぞれ、該薄板の断熱材に接触していることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る気密構造の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る住宅の気密構造は、住宅の躯体を構成する柱や梁等からなる構造部材と、これらの構造部材の周囲に配置された気密性を有する断熱材(以下単に、断熱材という)を気密テープによって接続することで、建物の屋内側に連続した気密層を形成したものである。
【0015】
即ち、外壁に沿って配置された柱や梁に、断熱材の端面を近接又は当接させて両者を気密テープによって接続し、更に、屋根に沿って配置された梁に断熱材の端面を近接又は当接させて両者を気密テープによって接続することで、建物の屋内側に連続した気密層を形成したものである。
【0016】
本発明に係る住宅では、外壁の屋内側の面には該外壁に沿って断熱材と躯体を構成する柱や梁を含む構造部材とを連続させて形成した気密層、屋根の室内側には該屋根面に沿って断熱材と躯体を構成する梁を含む構造部材とを連続させて形成した気密層が構成されている。
【0017】
このように、躯体を構成する構造部材を気密層を構成するための構成部材として利用することによって、該構造部材が熱橋となって断熱性を阻害する虞がある。このため、高い断熱性を確保することが必要となる。
【0018】
例えば、構造部材が柱であるような場合、柱と外壁との間に該柱の幅よりも充分に幅の広い断熱材を配置し、この断熱材と柱の周囲に配置された断熱材とを接続することで、連続した断熱層を形成することが好ましい。また構造部材が梁である場合、梁の屋内側の面に添わせて断熱材を配置し、この断熱材と柱の周囲に配置された断熱材を接続することで、連続した断熱層を形成することが好ましい。
【0019】
特に、1階と2階の間に配置された梁のように、階層間に配置された梁の場合、該梁を構成するウエブに沿わせて断熱材を配置すると共に該断熱材と梁とを気密テープによって接続することで、高い断熱性を有する連続した断熱層を形成することが可能である。即ち、構造部材の外壁側に、或いは室内側に連続した断熱層を形成することが好ましい。更に、より高い断熱性が要求されるような場合、梁を構成するフランジを断熱材によって覆うことが好ましい。
【0020】
上記の如くして躯体を構成する構造部材と、該構造部材の周囲に配置された断熱材を気密テープによって連続させることで、高い気密性と断熱性を持った住宅を実現することが可能である。
【0021】
本発明に於いて、住宅の躯体を構成する構造部材としては、角パイプからなる柱、H形鋼からなる梁、階段等の枠材、更に、窓や扉等の開口部を構成する開口枠、基礎や床スラブ或いは床スラブに固定した床下地材等がある。
【0022】
上記の如き構造部材は、材料となる鋼材が充分に高い気密性を保持しており、これらの材料からなる構造部材を介して気密性を有する断熱材を接続することで、高い信頼性を持った気密層を形成することが可能となる。特に、鉄骨は接着性が良く気密テープの接着を安定した状態で維持することが可能であり、且つ木材の如き径年変化による寸法の狂いがなく、気密性に重大な影響を及ぼすような隙間が形成されることがないため、極めて好ましい。
【0023】
上記構造部材に、該構造部材の周囲に配置された断熱材を接続する場合、構造部材の何れの面を利用するかを限定するものではない。一般的には、柱の場合は縦方向の側面であり、梁の場合は水平方向のフランジ面及びウエブ面である。
【0024】
気密性を有する断熱材としては、材料を特に限定するものではなく、構造部材と接続される際に用いる気密テープとの関係も考慮する必要がある。
【0025】
気密テープが金属フィルムや合成樹脂フィルムの一方の面に接着剤或いは粘着材を塗布して形成されているような場合、断熱材として必ずしも高い硬度を有する必要はない。しかし、このような断熱材として硬質ウレタンフォームや押出発泡ポリスチレン或いはフェノール樹脂発泡体等の成形体や発泡体を含む硬質プラスチック系断熱材を選択的に利用することが可能である。
【0026】
例えば、硬質ウレタンフォームや押出発泡ポリスチレンでは、厚さを選択することによって、住宅として充分な断熱性能と気密性能を発揮させることが可能であり、且つ弾性を有するパッキン材に圧接させて気密性を発揮するに耐える硬度を有している。
【0027】
しかし、硬質ウレタンフォームでは、経時的な断熱性能の低下や、火災時に爆燃性を有することや有毒ガスを発生するという課題を有し、発泡ポリスチレンでは、耐薬品性に劣るため、気密処理材が限定されることや燃え易いという課題も有する。
【0028】
またフェノール樹脂発泡体からなる断熱材としては、本件出願人が開発して既に国際出願(特願2000−558158)した技術(ネオマフォーム(登録商標))があり、断熱材として好ましく使用することが可能で、且つ気密材としても好ましく使用することが可能である。
【0029】
上記技術に係るフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂基体部と、多数の微細気泡から形成される気泡部とを有する密度が10kg/m3 〜100kg/m3 のフェノールフォームであり、前記微細気泡が炭化水素を含有し且つ平均気泡径が5μm〜200μmの範囲にあり、大部分の微細気泡の気泡壁が滑らかなフェノール樹脂基体面で構成されている。そして、発泡剤が炭化水素であるにも関わらず、従来のフロン系発泡剤と遜色のない熱伝導率を持ち、且つ熱伝動率の経時的な変化もなく、圧縮強度等の機械的強度に優れ、脆性が改善される。
【0030】
上記フェノール樹脂発泡体では、高い断熱性と気密性を有し、且つこれらの性能を長期間維持し得る性質を有している。フェノール樹脂発泡体に於ける断熱性は、気泡径が5μm〜200μmの範囲、好ましくは10μm〜150μmと小さく、且つ独立気泡率を80%以上と高く保持することによって確保することが可能である。またフェノール樹脂発泡体は高い耐燃焼性を有しており、火炎が作用したとき、表面が炭化することで、着火することがなく、且つガスが発生することがない。
【0031】
例えば、フェノール樹脂発泡体の密度を27kg/m3 に設定した場合、20℃に於ける熱伝動率は0.02W/m・Kであり、圧縮強さは15N/cm2 、熱変形温度は200℃である。前記フェノール樹脂発泡体の性能は、押出発泡ポリスチレン3種が熱伝動率;0.028W/m・K、圧縮強さ;20N/cm2 、熱変形温度;80℃であることや、硬質ウレタンフォーム2種が熱伝動率;0.024W/m・K、圧縮強さ;8N/cm2 、熱変形温度;100℃であることと比較して充分に高い性能を有する。
【0032】
このため、フェノール樹脂発泡体からなる断熱材では、従来の押出発泡ポリスチレンや硬質ウレタンフォームの約2/3程度の厚さで略同等の断熱性能を発揮することが可能である。
【0033】
またフェノール樹脂発泡体は、比較的脆い材料であるため、少なくとも片面にクラフト紙や不織布からなる保護層を設けるのが一般的である。特に、本件出願人が開発して特許出願している特開平11−198332号公報に開示されたフェノール樹脂発泡体積層板は、保護層を形成する不織布を改良することによって接着性能を向上させたものであり、この不織布によってフェノール樹脂発泡体の強度を改善して、強度、断熱性共に優れた建築用断熱材料として提供されるものである。
【0034】
上記の如くフェノール樹脂発泡体の表裏面に保護層を設けた積層板からなる断熱材は、端面(小口面)はフェノール樹脂基体面が露出した状態となっている。このため、表裏面は保護層を構成する不織布を利用して貼着テープや貼着シートを貼り付けることが可能であるが、小口面は表裏面に比較して他の部材を貼着することが困難である。
【0035】
またフェノール樹脂発泡体の表裏面に不織布による保護層を設けた断熱材では、脆さが改善されて曲げ強度や引っ張り強度が向上する。このため、幅の狭い場所に配置されたとき、自立して、断熱材及び気密材としての機能を充分に発揮することが可能である。特に、幅が1m程度の狭い場所に配置されたとき、端面がパッキン材に圧接して自立することが可能であり有効である。
【0036】
構造部材と該構造部材の周囲に配置された断熱材を接続する気密テープとして、材料を特に限定するものではない。即ち、構造部材と断熱材を気密性を保持して接続する機能を有するものであれば利用することが可能であり、このような気密テープとして、金属フィルムや金属シート、或いは合成樹脂フィルムや合成樹脂シートの一方の面に接着剤或いは粘着材を塗布して形成された気密テープ等があり、夫々構造部材と断熱材との接続部位の寸法や面積或いは形状等の条件に応じて選択することが好ましい。
【0037】
金属フィルムや金属シート、或いは合成樹脂フィルムや合成樹脂シートの一方の面に接着剤或いは粘着材を塗布して形成された気密テープ等は、高い気密性を有し、且つ高い柔軟性と強度及び取り扱いの容易性を兼ね備えている。このため、構造部材と断熱材との接続部位が作業員の手が入らないような部位を除いて如何なる部位でも利用することが可能であり、高い対応性を有している。
【0038】
次に、上記気密構造の好ましい実施例について図を用いて説明する。図1は本実施例に係る気密構造の構成を説明する図である。図2は外壁に沿って配置された断熱材と屋根に沿って配置された断熱材と梁との関係を説明する図である。図3は階層間に於ける梁と断熱材との関係を説明する図である。図4は屋根に沿って配置された断熱材と柱及び梁との関係を説明する図である。図5は屋根に沿って配置された断熱材と梁との関係を説明する図である。図6は参考例であり、外壁に沿って配置された断熱材と床との関係を説明する図である。図7は外壁に沿って配置された断熱材と柱との関係を説明する図である。
【0039】
住宅の躯体は、図1〜図4に示す梁1、図7に示す柱2、図6に示す床スラブ3、及び図示しない基礎や階段等を含んで構成されている。これらの梁1、柱2、床スラブ3及び基礎や階段等の周囲には断熱材4、5が配置されて、夫々最適な気密テープを用いて気密性を保持して接続され、これにより、建物の屋内側に外壁及び屋根に沿った断熱性を有する気密層が形成されている。
【0040】
尚、本実施例では、主として外壁に沿って配置される断熱材4として、表裏面が合成樹脂繊維からなる不織布で形成された厚さ約25mmのフェノール樹脂発泡体の積層体を用いており、主として屋根に沿って配置される断熱材5として前記断熱材と同様に構成され厚さ約40mmのフェノール樹脂発泡体の積層体を用いている。
【0041】
このように、断熱材4、5の厚さは、躯体を構成する構造部材となる梁1のフランジ1aやウエブ1bの寸法、柱2の太さと比較して充分に小さい。このため、断熱材4、5の梁1、柱2に対する対向位置を所望の位置に設定することが可能となり、梁1のせい、柱2の太さの範囲で壁内の空間、天井の空間の寸法を選択することが可能となる。このため、壁内や天井に電線類や配管類を設置する際の自由度を向上させることが可能である。
【0042】
先ず、下層階と上層階の中間に配置された構造部材としての梁1、屋根に沿って配置された構造部材としての梁1の周囲に配置された断熱材4、5を接続する構造について図1〜図5により説明する。
【0043】
建物の外周部に配置された梁1には外壁材が取り付けられており、また建物の最上部に配置された梁1には屋根材が取り付けられている。本実施例では、外壁には外壁用の軽量気泡コンクリート(ALC)パネルからなる外壁パネル6を用いており、複数の外壁パネル6を梁1に取り付けた図示しない自重受け金具やイナズマプレート等の金物を利用して連続して取り付けることで外壁を構成している。また屋根には屋根用のALCパネルからなる屋根パネル7を用いており、複数の屋根パネル7を梁1の上部に敷き並べて図示しない取付金物や鉄筋等を利用して取り付けることで屋根を構成している。
【0044】
上記ALCパネルは、軽量で且つ高い断熱性能を有するため外壁パネル6として好ましく用いることが可能である。特に、外壁にALCパネルを用いると共に屋内側に空気層を形成することによって、高い断熱性能を発揮することが可能であり、且つ共鳴透過現象を防止することが可能となり、遮音性能が向上するという効果も有する。
【0045】
断熱材4は、外壁パネル6の屋内側の面に沿って配置され、図7に示すように、外壁パネル6との間に配置された薄板からなる断熱材8を介して該外壁パネル6に固定されている。従って、外壁パネル6と断熱材4との間には間隙9が形成され、該間隙9が床下から屋根裏空間に至る空気層としての機能を発揮し得るように構成されている。
【0046】
外壁パネル6に沿って配置された断熱材4が、断熱材8を介して外壁パネル6に固定され、且つ断熱材4自体が気密性を有するため従来のように気密シートを施工する必要がなく、後述するように、断熱材4を施工した後、木下地パネル16を取り付ける作業が容易となる。
【0047】
断熱材4の長さは、配置される空間の長さと等しく形成されており、上下両端部が夫々構造部材となる梁1、床スラブ3に接続し得るように形成されている。従って、断熱材4を外壁パネル6に沿って配置すると共に外壁パネル6に固定したとき、上下方向の端面(小口面)は夫々梁1の下側のフランジ1aと床スラブ3に近接又は当接する。
【0048】
梁1の下側のフランジ1aの周囲に配置されて該フランジ1aに断熱材4の小口面が近接或いは当接することによって、該断熱材4の端部表面はフランジ1aに略直交する姿勢を保持する。このため、図に示すように、断熱材4の端部表面とフランジ4aとの交差部に気密テープ10を貼り付けて該交差部を塞ぐことで、断熱材4と梁1を気密性を保持して連続させることが可能である。
【0049】
建物の最上部に配置された梁1には複数の屋根パネル7が敷き並べれて固定されており、この屋根パネル7によって屋根スラブが構成されている。そして隣接する梁1によって構成される空間には、屋根用の断熱材5が配置されている。
【0050】
図2,5に示すように、梁1のウエブ1bに複数の木下地11が所定の間隔を持って取り付けられており、この木下地11の下面側に断熱材5が釘或いはビス等の固定具によって固定されている。そして所定枚数の断熱材5を配置して木下地11に固定したとき、梁1に隣接した断熱材5の小口面がウエブ1bに近接又は当接する。
【0051】
断熱材5の小口面が梁1のウエブ1bに近接又は当接することによって、該断熱材5の端部表面はウエブ1bに対し略直交して交差する。このため、断熱材5の端部表面とウエブ1bとの交差部に気密テープ10を貼り付けて該交差部を塞ぐことで、断熱材5と梁1を気密性を保持して連続させることが可能である。
【0052】
上記の如く、梁1の下側のフランジ1aに近接又は当接した断熱材4との交差部を気密テープ10で塞ぎ、ウエブ1bに近接又は当接した断熱材5との交差部を気密テープ10で塞ぐことで、梁1の周囲に配置された断熱材4,5と気密性を保持して接続することで連続した気密層を構成することが可能である。
【0053】
しかし、梁1の下側のフランジ1a、ウエブ1bが断熱材によって覆われる保証はなく、該梁1が熱橋となる虞があり、また図3に示すように、フランジ1a,ウエブ1bに穴1cが形成される場合、該穴1cを塞がないと気密性を保持し得ない。このため、図1,図3(a)に示すように、下層階と上層階の間に配置された梁1では、ウエブ1bに比較的薄い断熱材12を添わせて穴1cを塞ぎ、該断熱材12を気密テープ10によって貼り付けることで、フランジ1a,ウエブ1bに形成された穴1cを塞いで気密性を保持すると共に断熱性を確保することが可能である。
【0054】
更に、より高い断熱性が要求される場合、図3(b)に示すように、フランジ1aに断熱性を有する保護材13を取り付けて該保護材13を断熱材4,12に接続することで、梁1の屋内側の面を断熱材4,12及び保護材13によって覆うことで、梁1の周囲に連続した気密層と断熱層を形成することが可能である。
【0055】
また屋根パネル7に沿って配置された梁1の間に断熱材5を取り付けたとき、該断熱材5の屋内側の面5aと梁1の下側のフランジ1aとの間に空間が形成されるような場合、図4に示すように、ウエブ1bに於ける前記空間に対応する部位に断熱材12を添わせ、該断熱材12の屋内側の面と断熱材5との交差部に気密テープ10を貼り付けると共に、フランジ1aに断熱性を有する保護材14を取り付けて該保護材14を断熱材4,5に接続することで、梁1の屋内側の面を断熱材4,12及び保護材13によって覆うことで、穴1cを塞いで気密性を確保すると共に、梁1の周囲に連続した気密層と断熱層を形成することが可能である。
【0056】
更に、図5に示すように、外壁から離隔した部位に配置された梁1では、フランジ1aの両側に断熱性を有する保護材15を取り付けて該保護材15を断熱材5及び対向する保護材15に接続することで、梁1を断熱材5及び保護材15によって覆うことで、梁1の周囲に連続した気密層と断熱層を形成することが可能である。
【0057】
尚、図1,図2に於いて、16は石膏ボード等の内装下地17を取り付けるための木下地パネルであり、固定金物18,木下地19を介して断熱材4に固定されている。また20は木下地パネル16の上端部に固定され天井下地であり、下側の面に石膏ボード等の天井内装材21を取り付けている。
【0058】
次に、躯体を構成する構造部材となる床スラブ3に、該床スラブ3の周囲に配置された断熱材4を接続する参考例の構成について図6により説明する。
【0059】
図6(a)は1階の床スラブ3と断熱材4とを接続する構成を説明する図であり、同図(b)は2階以上の階層の床スラブ3と断熱材4とを接続する構成を説明する図である。各図に於いて、床スラブ3は床用のALCパネルからなる床パネル25を利用しており、複数の床パネル25を図示しない基礎梁上に敷き並べると共に固定することで構成されている。また外壁パネル6と床パネル25との間に形成された隙間にはモルタル26が充填されている。
【0060】
同図(a)に示すように、1階の床スラブ3の上面(屋内側の面)であって外壁パネル6に沿った位置には、該外壁パネル6に沿って配置された断熱材4の下側の小口面が近接又は当接している。また断熱材4の内側で木下地パネル16を設置する位置には、該木下地パネル16に沿って合板27が設置され、該合板27よりも屋内側に対応する床スラブ3には略全面にわたって比較的薄い断熱材29が敷き込まれている。
【0061】
従って、外壁パネル6に沿って配置された断熱材4と合板27とは互いに表面が直交するように交差し、合板27と断熱材29は互いに表面が同一平面内に配置される。そして断熱材4と合板27、合板27と断熱材29との継目に気密テープ10を貼り付けることで、各継目が塞がれることで気密性を保持している。
【0062】
上記の如く構成された1階の床スラブ3では、外壁パネル6に沿って配置された断熱材4と床スラブ3に配置された合板27とが気密テープ10によって気密を保持して接続され、更に、床スラブ3上に配置した合板27,断熱材29が夫々継目を気密テープ10で気密を保持して接続されるため、1階の床と1階の外壁パネル6に沿って配置された断熱材4とを連続した気密層として形成することが可能となる。
【0063】
同図(b)に於いて、外壁パネル6に沿って配置され、小口面が床スラブ3を構成する床パネル25に近接又は当接した断熱材4が配置されている。床スラブ3の上面には、セルフレベリング材30が施工され、該セルフレベリング材30によって断熱材4と床パネル25とが気密性を保持して接続されている。
【0064】
上記の如く、躯体を構成する梁1、床面を構成する合板27を気密性を保持して接続する場合、これらの交差部が比較的広い空間に向けて露出しているため、気密テープ10を利用して容易に接続することが可能である。
【0065】
尚、上記実施例では、1階の床スラブ3と2階以上の床スラブ3の仕上仕様が異なる場合としているが、この仕上仕様に限定するものではなく、1階の床3にセルフレベリング材30を施工しても良い。しかし、この場合であっても、セルフレベリング材30の上面に比較的薄い断熱材29を敷き込んで外壁パネル6に沿って配置された断熱材4と接続し、両者の継目に気密テープ10を貼り付けることで気密性を確保することが可能である。
【0066】
また柱2の脚部が凹凸を有する形状で形成されている場合であって、該脚部がモルタル26から露出しているような場合、この脚部の周囲を図示しない気密下地材によって塞ぐと共に、該気密下地材と断熱材4との継目、気密下地材と合板27或いはセルフレベリング材30との継目を夫々気密テープ10を貼り付けて塞ぐことで連続した気密層を形成することが可能である。
【0067】
次に、上記の如く、耐震要素を取り付けた柱2と、該柱2の周囲に配置された断熱材4を接続する構成について図7により説明する。図に於いて、柱2の一方の側面2aには何者も取り付けられず、他方の側面2bには耐震要素35が取り付けられている。
【0068】
柱2の側面2aには、外壁パネル6に沿って配置された断熱材4の小口面が近接又は当接しており、側面2aと断熱材4の端部表面が直交して交差している。従って、この状態は梁1の下側のフランジ1aに対する断熱材4の接続と同様であり、柱2の側面2aと断熱材4との交差部に気密テープ10を貼り付けて塞ぐことで、気密性を保持して接続することが可能である。
【0069】
柱2の側面2bには予め気密性を有するパッキン材36が固着されており、このパッキン材36に断熱材4の小口面を圧接させ、このとき発生する力によって断熱材4が保持されている。パッキン材36はEPDMゴムからなる弾性と高い気密性を持った中空状の部材として形成されており、断熱材4が圧接したとき変形し、このときの力を断熱材4に対する保持力として作用させることとが可能である。
【0070】
上記の如く、パッキン材36を介して断熱材4を柱2の側面2bに接続した場合であっても、パッキン材36が充分な気密性を有し、且つ断熱材4がパッキン材36に圧接することから、高い気密性を発揮することが可能である。
【0071】
また断熱材4の端部が外壁パネル6の内面に配置した断熱材8と接触することで断熱機能を連続させることが可能である。特に、断熱材4の小口面をパッキン材36に圧接させた状態で、端部を断熱材8に当接させると共に断熱材4の屋内側に配置した合板19を介して図示しないビス等を打ち込むことで、断熱材8を介して外壁パネル6に固定することが好ましい。このようにビスを利用して断熱材4を断熱材7を介してALCパネル2に固定することで、柱2を迂回して断熱材4,8を連続させることが可能となり、高い断熱性と気密性を保持することが可能となる。
【0072】
更に、例えば梁1の側面2bにパッキン材36を固着し得ないような場合、該側面36に断熱材4の小口面を近接又は当接させた状態で、交差部に現場発泡の断熱剤を吹き付けて発泡させることで、該交差部を塞いで気密性を保持して接続することが可能である。
【0073】
また躯体の構成部材となる図示しない基礎に断熱材4の小口面を近接又は接近させて直接接続しようとしたとき、コンクリート面に気密テープが接着し得ないことがある。この場合、基礎の表面と断熱材4の小口面との間に形成された隙間にシーリング材を充填することで、該隙間を塞いで気密性を保持して接続することが可能である。
【0074】
上記の如く、住宅の躯体を構成する構造部材となる梁1、柱2、床スラブ3の周囲に配置された断熱材4,5を気密テープ10、パッキン材36、現場発泡の断熱材やシーリング材を利用して接続することで、建物の屋内側に全周にわたる気密層を形成することが可能である。
【0075】
更に、1階を構成する床スラブ3の上面に断熱材28,29が設けられることによって、建物の屋内側に全周にわたる断熱層を形成することが可能である。即ち、本実施例の住宅では、躯体を構成する構造部材を利用して連続した気密層を形成すると共に断熱層を形成することが可能となる。
【0076】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る住宅の気密構造では、住宅の躯体を構成する柱や梁を含む構造部材の周囲に気密性を有する断熱材を配置し、この構造部材と気密性を有する断熱材とを気密性を持った気密テープによって接続することで、構造部材と断熱材とを気密性を確保して連続させることが出来る。このため、建物の屋内側に屋根に沿って且つ外壁に沿って更に床スラブに沿って連続した気密層を形成することが出来る。
【0077】
躯体を構成する構造部材を気密層を形成するための部材として利用することによって、該構造部材に対する断熱材の対向位置を自由に設定することが出来、例えば梁のせい、柱の太さの範囲で壁、天井の空間寸法を選択することが出来る。このため、壁内や天井に電線類や配管類を設置する際の自由度を向上させることが出来る。
【0078】
気密性を有する断熱材を構造部材に接続して気密層を形成することから、従来の気密シートを必要とせず、従って気密層を形成する際の施工が簡単で、且つ後工程となる木下地パネル等の施工に支障をきたすことがない。
【0079】
断熱材としてフェノール樹脂発泡体を含む硬質プラスチック系断熱材を用いることによって、気密性能に合わせて断熱性能を発揮することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る気密構造の構成を説明する図である。
【図2】外壁に沿って配置された断熱材と屋根に沿って配置された断熱材と梁との関係を説明する図である。
【図3】階層間に於ける梁と断熱材との関係を説明する図である。
【図4】屋根に沿って配置された断熱材と梁及び柱との関係を説明する図である。
【図5】屋根に沿って配置された断熱材と梁との関係を説明する図である。
【図6】外壁に沿って配置された断熱材と床との関係を説明する参考例の図である。
【図7】外壁に沿って配置された断熱材と柱との関係を説明する図である。
【符号の説明】
1 梁
1a フランジ
1b ウエブ
1c 穴
2 柱
2a,2b 側面
3 床スラブ
4,5 断熱材
6 外壁パネル
7 屋根パネル
8,12,29 断熱材
9 間隙
10 気密テープ
11 木下地
13〜15 保護材
16 木下地パネル
17 内装下地
18 固定金物
19 木下地
20 天井下地
21 天井内装材
25 床パネル
26 モルタル
27 合板
30 セルフレベリング材
35 耐震要素
36 パッキン材
Claims (10)
- 住宅の外周部に配置された梁に外壁を形成する外壁パネルが取り付けられ、前記外壁パネルの屋内側に沿って気密性を有する断熱材が配置され、前記断熱材は構造部材である鋼材柱の側面と鋼材梁下面のいずれか一方又は両方にその小口面を当接させた状態で配置され、各構造部材と断熱材とが当接した交差部に屋内側から気密テープを貼り付けて当該交差部を塞ぎ、前記断熱材の屋内側の面と構造部材の屋内側の面とが連続している気密面を形成することを特徴とする住宅の気密構造。
- 前記梁は、上下一対のフランジと、該上下一対のフランジを連結し、且つ前記梁の屋内側の面を形成するウェブとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の住宅の気密構造。
- 前記梁のウェブには穴が形成されており、前記穴はウェブの屋内側の面に添わせて配置された気密性を有する断熱材により室内側から塞がれていることを特徴とする請求項2に記載の住宅の気密構造。
- 前記梁の下側フランジには、梁の下面側の断熱材と、ウェブの屋内側の面に添わせて配置された気密性を有する断熱材とに連結されてこれら断熱材を連続する断熱性を有する保護材が固定されていることを特徴とする請求項3に記載の住宅の気密構造。
- 住宅の躯体の最上部に配置された梁に屋根パネルが取り付けられて屋根を構成し、前記屋根パネルの屋内側に沿って気密性を有する断熱材が配置され、前記断熱材は鋼材からなる前記梁の屋内側の面にその小口面を当接させた状態で配置され、前記梁と断熱材とが当接した交差部に屋内側から気密テープを貼り付けて当該交差部を塞ぎ、前記断熱材の屋内側の面と前記梁の屋内側の面とが連続している気密面を形成していることを特徴とする請求項1に記載の住宅の気密構造。
- 前記梁は、上下一対のフランジと、該上下一対のフランジを連結し、且つ前記梁の屋内側の面を形成するウェブとを備えていることを特徴とする請求項5に記載の住宅の気密構造。
- 前記梁のウェブには穴が形成されており、前記穴は前記屋根パネルの屋内側に沿って配置された気密性を有する断熱材の小口面により室内側から塞がれていることを特徴とする請求項6に記載の住宅の気密構造。
- 前記梁の下側フランジには、梁の下面側の断熱材と、前記屋根パネルの屋内側に沿って配置された気密性を有する断熱材とに連結されてこれら断熱材を連続する断熱性を有する保護材が固定されていることを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載の住宅の気密構造。
- 前記柱は、角パイプ状に形成され、前記断熱材の小口面と当接する一対の側面を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の住宅の気密構造。
- 前記外壁パネルの柱と対向する屋内側の面に薄板の断熱材が配置され、前記柱の一対の側面に当接する断熱材はそれぞれ、該薄板の断熱材に接触していることを特徴とする請求項9に記載の住宅の気密構造。
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