JP3966785B2 - 帳壁構造及び断熱材の施工方法 - Google Patents

帳壁構造及び断熱材の施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の躯体に複数の外壁パネルを連続させて取り付けると共に屋内側に断熱材を構成した帳壁構造と、この帳壁構造を施工する際の断熱材の施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅では、建物の外壁に沿って屋内側に断熱層を形成するのが一般的である。特に、鉄骨躯体を有する住宅では、柱,梁を含む屋内側の面に内装下地となる枠体を取り付けた後、この枠体によって形成された空間にグラスウール等の繊維系断熱材を充填して断熱層を形成し、更に、断熱層の屋内側にポリエチレンシート等の気密シートで覆うことで気密層を形成した後、石膏ボード,クロス等の内壁材を取り付けるのが一般的である。
【0003】
上記断熱構造では、繊維系断熱材の連続性が枠材によって遮断され、且つ枠材の断熱性能が繊維系断熱材の断熱性能よりも劣る。
【0004】
一方、断熱気密材料として気密性と断熱性を併せ持った断熱材が提供されており、この断熱材を外壁に沿って屋内側に配置して気密層及び断熱層を形成すると共に、屋内側の面に沿って内壁を施工することで、住宅に断熱性と気密性を付与して居住性を向上させ、且つ省エネルギー化を実現し得るようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如き断熱材を外壁の屋内側の面に沿って取付施工する場合、従来のように、柱,梁を含む面に枠体を取り付けると共に該枠体に断熱材を取り付けるのでは、断熱欠損が生じ易いという問題がある。また外壁パネルと内壁との間に形成された空間にさや管等を含む設備配管や配線を設置することになるが、該空間に於ける断熱材の位置によっては、配管工事や配線工事を行う際に該断熱材を切り欠く必要が生じ、断熱層の連続性を保持し難くなるという問題も生じる。
【0006】
このため本件発明者等は、上記問題を解決する断熱構造を開発した。この技術は、外壁パネルの略中央部に縦方向に薄板を配置すると共に該薄板を介して断熱材を外壁パネルに固定し、更に、断熱材の屋内側に所定の距離を保持して内壁の下地を形成するものである。この構造では、外壁パネルに沿って薄板の厚さに対応した空間が空気層としての機能を発揮し、且つ断熱材と内壁の下地との間に設備配管や配線を設置するのに充分な空間を形成することが出来る。
【0007】
しかし、断熱材が不透明な板材として形成されているため、この断熱材を薄板に当接させたとき、屋内側から薄板の位置を視認することが出来ないという問題が派生した。即ち、薄板が配置されていない部分に釘やビス等を打ち込んだとき、該断熱材と外壁パネルとの間に空気層が形成されることから、断熱材を支持するものがなく、このため、断熱材が空気層をつぶしてしまうことがある。
【0008】
また断熱材を外壁パネルに固定した後、配管工事や配線工事を行う際に、例えば水栓ボックスやさや管等の部材を設置することがあるが、この場合、前記部材を断熱材を介して外壁パネルに固定しようとしても、薄板の配置位置を視認することが出来ないという問題がある。特に、配管工事や配線工事を行う際には、前記部材を容易に設置し得るように構成することが好ましい。
【0009】
本発明の目的は、スペーサーを介して断熱材を外壁パネルに固定する際に、スペーサーが隠れている場合であっても、外壁パネルに於ける釘やビルを打ち込んでも良い位置に配置されたスペーサーの位置を確実に判断し得るようにし、且つ設備配管や配線を構成する部材を固定し得るようにした帳壁構造と、断熱材の施工方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る帳壁構造は、外壁パネルの幅方向に於ける予め設定された位置に上下方向の所定範囲にスペーサーを配置すると共に、視認し得る位置で且つ前記スペーサーに対応する位置にマーキングを形成し、前記スペーサー面に断熱材を配置した後、前記スペーサーを介して外壁パネルに断熱材を取り付けたものである。
【0011】
上記帳壁構造では、外壁パネルの幅方向の予め設定された位置、即ち、外壁パネルに於ける釘やビスを打ち込むことを許容された位置であって且つ設備配管や配線に要する部材を取り付けるための下地を確実に固定し得る位置、例えば外壁パネルに於ける両端から所定寸法内側に入った範囲である略中央に上下方向の所定範囲にスペーサーを配置したとき、作業員が視認し得る位置(例えば床面或いは天井裏や梁等)にスペーサーに対応させてマーキングを形成しておくことで、該スペーサーが断熱材によって覆われて直接視認し得なくなったとしても、マーキングを目標としてスペーサーの位置を確認することが出来る。
【0012】
このため、外壁に配置されたスペーサー面に断熱材を配置した後、マーキングに従って釘やビス等の固定具を打ち込むことで、該断熱材をスペーサーを介して外壁パネルに固定することが出来る。
【0013】
上記帳壁構造に於いて、スペーサー面に配置された断熱材に対し横方向に桟を配置すると共に、該桟を断熱材又は断熱材及びスペーサーを介して外壁パネルに取り付けることが好ましい。帳壁構造をこのように構成することによって、断熱材の屋内側の面に桟が設けられることとなり、この桟を利用して設備配管や配線を行う際にこれらの部材或いは部品、例えば配管を止めるサドルや水栓ボックス等を設置することが出来る。
【0014】
また桟に釘やビス等の固定具を打ち込むことで該桟を断熱材を介して外壁パネルに固定することによって、該固定具に作用する力は桟によって分散された状態で断熱材に作用することとなり、接触面圧を小さくして良好な固定を行うことが出来る。更に、桟を固定する固定具の打ち込み位置がスペーサーの配置位置となり、上記した設備配管や配線を工事する際に固定具を打ち込む際の目標(マーキング)として機能させることが出来る。
【0015】
また本発明に係る断熱材の施工方法は、外壁パネルの幅方向に於ける予め設定された位置に上下方向の所定範囲にスペーサーを配置すると共に、視認し得る位置で且つ前記スペーサーに対応する位置にマーキングし、前記スペーサー面に断熱材を配置した後、前記マーキングに対応する位置であって視認し得る位置に固定具を施工して断熱材をスペーサーを介して外壁パネルに取り付けることを特徴とするものである。
【0016】
上記断熱材の施工方法では、外壁パネルの所定位置にスペーサーを配置してマーキングを形成し、スペーサーに対向させて断熱材を配置してマーキングに対応する位置に固定具を施工することで、スペーサーを介して断熱材を外壁パネルに取り付けることが出来る。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下上記帳壁構造の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る帳壁構造は、建物の外壁を構成する外壁パネルの屋内側に沿って断熱材を取り付ける際に、断熱材と外壁パネルとの間に配置されたスペーサーの位置をマーキングによって作業員に視認し得るように構成したものである。従って、スペーサーの位置を作業員が視認しつつ、断熱材をスペーサーを介して外壁パネルに取り付けることによって、固定具を施工する位置を確実にスペーサーの位置に対応させることを可能としたものである。
【0018】
このため、断熱材をスペーサー面に配置したとき、該断熱材によってスペーサーが隠されてしまう場合であっても、断熱材を損傷することなく、確実な固定が可能となる。
【0019】
またスペーサー面に配置された断熱材の屋内側に横方向に桟を配置し、この桟を断熱材とスペーサーを介して外壁パネルに取り付けて断熱材の屋内側の面に露出させた状態とすることで、該桟をさや管等の設備配管や配線を行う際に必要な部材や部品を固定する下地として利用し得るように構成したものである。尚、桟の取付方向は必ずしも水平でなくとも良く、斜めに傾斜して取り付けても良い。
【0020】
本発明に於いて、建物の外壁を構成する外壁パネルとして特に限定するものではなく、住宅建築で一般的に用いられる軽量気泡コンクリート(ALC)パネルやプレキャストコンクリート(PC)パネル等のパネルを選択的に用いることが可能である。
【0021】
特に、ALCパネルの場合、軽量で且つ高い断熱性能を有するため好ましく用いることが可能である。また外壁に用いたALCパネルの屋内側に空気層を形成することによって高い断熱性能を発揮することが可能となり、且つ共鳴透過現象を防止して遮音性能が向上するため好ましい。
【0022】
またALCパネルの場合、釘やビスによって他の部材を固定することが可能であるが、これらの釘やビスを打ち込むことが許容される範囲は予め設定されている。従って、スペーサーを配置した場合や桟を固定する際に、釘やビスを打ち込むべき部位は幅方向の両端部分を除いた略中央部位に設定される。
【0023】
また断熱材としては、材料を特に限定するものではなく、長期間にわたって経時的な形状の変化を生じることがなく、適度な硬度と充分に高い断熱性を有し、且つ適度な気密性をするものであることが好ましい。このような断熱材としては、硬質ウレタンフォームや押出発泡ポリスチレン或いはフェノール樹脂発泡体等の成形体や発泡体を含む硬質プラスチック系断熱材があり、何れも利用することが可能である。
【0024】
例えば、硬質ウレタンフォームや押出発泡ポリスチレンでは、厚さを選択することによって、住宅として充分な断熱性能を発揮させることが可能であり、且つ適度な硬度を有している。
【0025】
しかし、硬質ウレタンフォームでは、経時的な断熱性能の低下や、火災時に爆燃性を有することや有毒ガスを発生するという課題を有し、発泡ポリスチレンでは、耐薬品性に劣るため、気密処理材が限定されることや燃え易いという課題も有する。
【0026】
またフェノール樹脂発泡体からなる断熱材としては、本件出願人が開発して既に国際出願(特願2000−558158)した技術(ネオマフォーム(登録商標))があり、断熱材として好ましく使用することが可能で、且つ気密材としても好ましく使用することが可能である。
【0027】
上記技術に係るフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂基体部と、多数の微細気泡から形成される気泡部とを有する密度が10kg/m3〜100kg/m3のフェノールフォームであり、前記微細気泡が炭化水素を含有し且つ平均気泡径が5μm〜200μmの範囲にあり、大部分の微細気泡の気泡壁が滑らかなフェノール樹脂基体面で構成されている。そして、発泡剤が炭化水素であるにも関わらず、従来のフロン系発泡剤と遜色のない熱伝導率を持ち、且つ熱伝動率の経時的な変化もなく、圧縮強度等の機械的強度に優れ、脆性が改善される。
【0028】
上記フェノール樹脂発泡体では、高い断熱性と気密性を有し、且つこれらの性能を長期間維持し得る性質を有している。フェノール樹脂発泡体に於ける断熱性は、気泡径が5μm〜200μmの範囲、好ましくは10μm〜150μmと小さく、且つ独立気泡率を80%以上と高く保持することによって確保することが可能である。またフェノール樹脂発泡体は高い耐燃焼性を有しており、火炎が作用したとき、表面が炭化することで、着火することがなく、且つガスが発生することがない。
【0029】
例えば、フェノール樹脂発泡体の密度を27kg/m3に設定した場合、20℃に於ける熱伝動率は0.02W/m・Kであり、圧縮強さは15N/cm2、熱変形温度は200℃である。前記フェノール樹脂発泡体の性能は、押出発泡ポリスチレン3種が熱伝動率;0.028W/m・K、圧縮強さ;20N/cm2、熱変形温度;80℃であることや、硬質ウレタンフォーム2種が熱伝動率;0.024W/m・K、圧縮強さ;8N/cm2、熱変形温度;100℃であることと比較して充分に高い性能を有する。
【0030】
このため、フェノール樹脂発泡体からなる断熱材では、従来の押出発泡ポリスチレンや硬質ウレタンフォームの約2/3程度の厚さで略同等の断熱性能を発揮することが可能である。
【0031】
またフェノール樹脂発泡体は、比較的脆い材料であるため、少なくとも片面にクラフト紙や不織布からなる保護層を設けるのが一般的である。特に、本件出願人が開発して特許出願している特開平11−198332号公報に開示されたフェノール樹脂発泡体積層板は、保護層を形成する不織布を改良することによって接着性能を向上させたものであり、この不織布によってフェノール樹脂発泡体の強度を改善して、強度、断熱性共に優れた建築用断熱材料として提供されるものである。
【0032】
上記の如く、フェノール樹脂発泡体の表裏面に不織布による保護層を設けた断熱材では、脆さが改善されて曲げ強度や引っ張り強度が向上する。このため、幅の狭い場所に配置されたとき、自立して、断熱材及び気密材としての機能を充分に発揮することが可能である。
【0033】
上記断熱材では、外壁パネルの屋内側の面に沿って配置されると共に隣接する断熱材どうしが接続されることで、屋内に連続した断熱層を形成することが可能である。
【0034】
スペーサーは、外壁パネルと断熱材との間に介在して両者の間隔を保持させることで、空気層を形成する機能を有するものである。スペーサーを構成する材料は特に限定するものではないが、建物の断熱性を確保するには、高い断熱性を有することが好ましく、更に、該スペーサーを介して断熱材が外壁パネルに取り付けられることから、該断熱材を取り付ける際に作用する力に対し充分に対抗し得る強度を有することが好ましい。このような条件を満足する材料として、断熱材を構成するのと同一の硬質プラスチック系断熱材を用いることが好ましい。
【0035】
またスペーサーの厚さも特に限定するものではなく、外壁パネルと断熱材との間に空気層として機能するに充分な距離を保持し得るものであれば良い。
【0036】
スペーサーは外壁パネルの幅方向に於ける予め設定された位置に且つ上下方向の所定範囲に配置される。外壁パネルの幅方向に於いて、スペーサーは略中央に配置される。
【0037】
マーキングは、外壁パネルに配置されたスペーサーの位置に対応して形成される。このマーキングは、スペーサーが断熱材によって覆われたときに該スペーサーの位置を示すものであり、作業員が容易に視認し得るものであることが必要である。従って、マーキングの形成条件としては、作業員に確実に視認されることであり、形状や色、形成すべき位置を限定するものではない。
【0038】
例えば、マーキングを形成する位置として、例えば床面の下地となる床スラブがあり、該床スラブに簡単に消去し得ない染料等によって線或いは矢印を形成することでマーキングとすることが可能である。また躯体を構成する梁がH形鋼によって形成されているような場合、該H形鋼の下側のフランジに線或いは矢印を形成してマーキングとすることも可能である。
【0039】
上記マーキングでは、床スラブ上に所定の床面を構成し、梁に断熱材等を施工したとき、外部から視認し得なくなる。このため、断熱材を外壁パネルに取り付ける際に釘やビスを使用することで、断熱材の屋内側の面に露出している釘やビスの頭部をマーキングとして利用することも可能である。
【0040】
桟は、設備配管や配線を行う際に、これらの配管,配線を構成する部材或いは部品を固定するための下地としての機能を有し、これらの部材や部品を固定するのに充分な強度を有することが必要となる。このような桟を構成する材料として、特に限定するものではなく、取り扱い性や経時的な形状の変化がなく、品質の劣化がないこと、等の観点から適度な幅と厚さとを持った合板を用いることが好ましい。
【0041】
従って、断熱材に対する桟の配置数や高さ等は特に限定するものではない。例えば、設備配管や配線を対象としたとき、横方向に2個所以上設けることが好ましい。特に、一方の桟は水栓ボックスを設置するのに必要な高さ、或いは木下地パネルを固定するのに適した高さに設置することが好ましい。
【0042】
桟の取付方向は水平方向であることが好ましいが、必ずしも水平である必要はなく、例えば、ブレースや筋交い等の部材が配置されている部位では、これらの部材に従って斜め方向であっても良い。即ち、桟は斜めの状態を含む横方向に配置されていれば充分である。
【0043】
更に、断熱材の屋内側の面に桟を当接させることで、該桟が断熱材の押さえ機能を発揮することが可能となる。このため、1階層に於ける上部の梁と床の間にわたって断熱材が配置されているような場合、この断熱材を屋内側から押さえて変形を防止することが可能となる。
【0044】
次に、本発明に係る帳壁構造の好ましい実施例について施工方法を説明しつつ図を用いて説明する。図1はスペーサーとマーキングの関係を説明する図である。図2は外壁パネルの幅方向に於けるスペーサーの配置位置を説明する図である。図3は断熱材の屋内側の面に桟を固定した状態を説明する図である。図4は図3の要部断面図である。
【0045】
建物の躯体を構成する柱1は上端部が上部に配置された梁2に接続され、下端部は床スラブ3に隠されて図示されない基礎梁或いは下部に配置された梁に接続されている。梁2と柱1、耐震要素4を組み立てる工程は通常の躯体の組立工程と同一であり、且つ外壁パネル9を躯体に取り付ける構造及び工程も通常の施工方法と同一である。
【0046】
外壁パネル9の幅方向の略中央にスペーサー10が配置されている。スペーサー10は、屋内側の面に対向させて配置した断熱材11を外壁パネル9に固定する際に、断熱材11の取付下地となるものであり、且つ両者の離隔距離を保持して間に空気層(空気層14)を形成する機能を有するものである。
【0047】
このため、スペーサー10としては、目的の空気層の寸法に対応した厚さを有する板状の部材によって形成されている。またスペーサー10を単に断熱材11を外壁パネル9に固定する際の下地として考慮したとき、該スペーサー10としては合板や通常の木材を用いることが可能であるが、スペーサー10に断熱性を発揮させることによって、住宅により確実で性能の高い断熱性能を発揮させることが可能となる。本実施例では、スペーサー10としてフェノール樹脂発泡体の表裏面に不織布による保護層を設けた断熱材を用いている。
【0048】
外壁パネル9の所定位置にスペーサー10を配置したとき、このスペーサー10を仮固定することが必要であるが、如何なる手段で仮固定するかは、限定するものではない。例えば、スペーサー10の長手方向の端部を気密テープを用いて梁2のフランジ2aに貼り付けることで仮固定することも可能である。本実施例では、スペーサー10を釘を用いて直接外壁パネル9に取り付けている。
【0049】
床スラブ3の上面であってスペーサー10と対応する位置に、スペーサー10の面に断熱材11を配置したとき、該スペーサー10の位置を示すマーキング12が形成されている。マーキング12は、作業員が視認してスペーサー10の位置を判断し得るものであれば良く、線の太さや線の形状,色、或いは線の数を限定するものではない。
【0050】
例えば、マーキング12として、染料,顔料等のインキによって描いた線や、テープを貼り付けて、或いは他の手段で形成することが可能である。またマーキング12は、床スラブ3の上面にのみ形成し得るものではなく、梁2のフランジ2aに形成しても良い。この場合であっても、インキによって描いた線やテープを貼り付けてマーキング12としての機能を発揮させることが可能である。
【0051】
マーキング12は、スペーサー10に対応して形成される。従って、図2に実線で示すように1本の線で形成したマーキング12、或いは点線で示すように複数本の線で形成したマーキング12等であることが可能である。要するに、外壁パネル9に断熱材11を取り付ける際に、作業員が確実にスペーサー10の位置を判断し得るものであれば良い。
【0052】
また柱1,4aの配置位置では、断熱材11の小口面が柱1,4aの側面に近接し或いは当接する。このため、断熱材11の幅方向の端部を外壁パネル9に固定する必要が生じ、この部位が外壁パネル9の幅方向の略中央以外の部位であってもスペーサー10が配置される。この場合、スペーサー10と柱1,4aが同一位置となるため、該柱1,4aをスペーサー10の目標とすることが可能となり、マーキング12を形成する必要はない。
【0053】
上記の如く、外壁パネル9に配置したスペーサー10に対応する位置にマーキング12を形成することによって、スペーサー10の位置は床スラブ3或いは梁2に置き換えられたこととなり、以後の作業はマーキング12を目標として進行させることが可能となる。
【0054】
スペーサー10に対応する位置にマーキング12を形成した後、外壁パネル9に沿って配置された複数のスペーサー10の屋内側の面に、複数の断熱材11が互いに連続して配置される。
【0055】
即ち、柱1,4aに隣接した断熱材11は、小口面が柱1,4aの側面に近接又は当接し、該小口面に対応する端部が柱1,4aと対応して配置されたスペーサー10に当接する。この断熱材11に他の断熱材11が隣接し、両者の小口面が互いに近接又は当接すると共に端部がスペーサー10に当接している。
【0056】
隣接する柱1の間或いは柱1と柱4aの間に複数の断熱材11を連続して配置したとき、スペーサー10は断熱材11によって隠されることになる。従って、断熱材11のマーキング12に対応する位置であって上下方向に、屋内側の面から釘やビス等の固定具13を打ち込むことで、スペーサー10を介して外壁パネル9に固定することが可能である。
【0057】
上記の如くして、連続させた複数の断熱材11をスペーサー10を介して外壁パネル9に固定したとき、外壁パネル9と断熱材11との間にはスペーサー10の厚さに対応した隙間が形成され、この隙間が空気層14としての機能を発揮する。
【0058】
またスペーサー10を介して断熱材11を外壁パネル9に固定することによって、断熱材11の面にはスペーサー10の位置に対応して固定具13の頭部が露出する。このため、建築工事の進行に伴って、床スラブ3に形成したマーキング12が視認し得なくなった場合、断熱材11の屋内側の面に露出した固定具13の頭部を新たなマーキングとして利用することが可能となる。
【0059】
上記実施例では、スペーサー10を介して断熱材11を外壁パネル9に固定するに際し、断熱材11に直接固定具13を打ち込んで施工したが、図3,図4に示すように、スペーサー10の面に配置した断熱材11の屋内側の面に合板からなる桟15を当接させて固定具13で固定することも可能である。
【0060】
尚、この場合であっても、桟15に固定具13を打ち込む位置は、マーキング12と対応する位置で且つ上下方向であることは同じである。
【0061】
桟15は、設備配管や配線を構成する際に用いられる部材や部品を固定するための下地としての機能を有するものであり、桟15の数や床面からの高さは限定するものではない。従って、桟15の幅や厚さは、前記機能を発揮するのに充分な寸法であることが必要である。
【0062】
本実施例では、断熱材11の上下方向に於ける2箇所に夫々横方向に配置している。特に、下側の桟15は高さが約700mm〜1200mm程度の範囲に、上側の桟15は高さが約2100mm〜2300mmm程度の範囲の位置に配置されている。また桟15は幅約3cm〜10cm、厚さが約9mm〜20mm程度の合板によって構成されている。
【0063】
桟15の取付方向は途中に障害物がない場合は略水平方向に設定される。しかし、耐震要素4のように、筋交い状の斜め部材4bが存在する場合には、該斜め部材4bに沿って斜め方向に設定しても良い。図3に示すように、斜め部材4bの中間部位に桟15を水平方向に配置し得る空間が存在する場合には、該空間に配置しても良い。
【0064】
上記の如く、断熱材11の屋内側の面に配置した桟15を利用して断熱材11をスペーサー10を介して外壁パネル9に固定した場合、桟15には固定具13の頭部が露出する。このため、床面に形成されたマーキング12が視認し得なくなった場合、スペーサー10の位置を固定具13の頭部の上下方向の延長線として判断することが可能となる。即ち、マーキング12を桟15に露出した固定具13の頭部に置き換えたことになる。
【0065】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る帳壁構造では、外壁パネルの幅方向の略中央に配置したスペーサーに対応させて、作業員が容易に視認し得る位置にマーキングを形成したので、スペーサーの面に断熱材を配置することによって、スペーサーが覆われて直接視認し得なくなった場合でも、形成されたマーキングを目標としてスペーサーの位置を確認することが出来る。従って、スペーサー面に断熱材を配置した後、マーキングに従って釘やビス等の固定具を打ち込むことで、該断熱材をスペーサーを介して外壁パネルに固定することが出来る。
【0066】
また断熱材に対し横方向に桟を配置すると共に、該桟を断熱材又は断熱材及びスペーサーを介して外壁パネルに取り付けることによって、断熱材の屋内側の面に設けた桟を利用して、設備配管や配線を行う際に設備配管や配線を止める部材や水栓ボックス等の部品を設置することが出来る。
【0067】
また断熱材を外壁パネルに固定する固定具、桟を固定する固定具の頭部が屋内側の面に露出することとなり、これらの頭部がスペーサーの配置位置となる。このため、設備配管や配線のメンテナンスを行う際に、固定具の頭部をスペーサーに対するマーキングとして機能させることが出来る。
【0068】
また本発明に係る断熱材の施工方法では、外壁パネルの所定位置にスペーサーを配置してマーキングを形成し、スペーサーに対向させて断熱材を配置してマーキングに対応する位置に固定具を施工することで、スペーサーを介して断熱材を外壁パネルに取り付けることが出来る。
【0069】
上記したように、作業員が屋内側から見たとき、外壁パネルの割付状態が判明しないような場合であっても、マーキングを基準として固定具を施工することが出来る。このため、外壁パネルに対して固定具を使用しても良い範囲が判断し得るため、特別に作業員に固定具の使用可能範囲を知らしめる必要がなく、簡単に且つ確実な作用を進行させることが出来る。このため、実用価値が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】スペーサーとマーキングの関係を説明する図である。
【図2】外壁パネルの幅方向に於けるスペーサーの配置位置を説明する図である。
【図3】断熱材の屋内側の面に桟を固定した状態を説明する図である。
【図4】図3の要部断面図である。
【符号の説明】
1 柱
2 梁
2a フランジ
3 床スラブ
4 耐震要素
4a 柱
4b 斜め部材
9 外壁パネル
10 スペーサー
11 断熱材
12 マーキング
13 固定具
14 空気層
15 桟

Claims (3)

  1. 外壁パネルの幅方向に於ける予め設定された位置に上下方向の所定範囲にスペーサーを配置すると共に、視認し得る位置で且つ前記スペーサーに対応する位置にマーキングを形成し、前記スペーサー面に断熱材を配置した後、前記スペーサーを介して外壁パネルに断熱材を取り付けたことを特徴とする帳壁構造。
  2. スペーサー面に配置された断熱材に対し横方向に桟を配置すると共に、該桟を断熱材又は断熱材及びスペーサーを介して外壁パネルに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載した帳壁構造。
  3. 外壁パネルの幅方向に於ける予め設定された位置に上下方向の所定範囲にスペーサーを配置すると共に、視認し得る位置で且つ前記スペーサーに対応する位置にマーキングし、前記スペーサー面に断熱材を配置した後、前記マーキングに対応する位置であって視認し得る位置に固定具を施工して断熱材をスペーサーを介して外壁パネルに取り付けることを特徴とする帳壁構造に於ける断熱材の施工方法。
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