JP4042045B2 - 内燃機関用点火コイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関用点火コイル(以下、単に「点火コイル」という。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、点火プラグへの高電圧供給は、機械式デストリビュータからハイテンションコードを介して行われていた。現在では、内燃機関(エンジン)の各気筒毎に独立して設けられた点火コイル(イグニッションコイル)から、直接点火プラグへ高電圧が供給される型式が主流となりつつある。
独立型の点火コイルの場合、そのケース内に配設された各部材間の絶縁性を確保すると共に、それらを安定的に保持するために、エポキシ樹脂等の樹脂絶縁材が内部に充填、封入されている。
【0003】
ここで、このタイプの点火コイルは、エンジンのプラグホール内に装着されため、エンジンから直接的に熱や振動等を受け易い。そのため、その点火コイル内の樹脂絶縁材は、冷熱サイクルに伴う熱応力等が作用し易い環境にあり、樹脂絶縁材にクラック等を生じ易い。そして、樹脂絶縁材にクラックが発生すると、絶縁距離の短縮による絶縁破壊等を招き、好ましくない。
そこで従来は、一次巻線が巻回される一次スプールの外周側に剥離テープを巻回等して、樹脂絶縁材に作用する熱応力を逃すようにして、樹脂絶縁材にクラック等の発生するのを防止していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのような剥離テープの巻回等は、部品点数や組付工数等を増やし、コスト高要因となる。そこで、より低コスト化を図るために、一次スプール等を前記樹脂絶縁材に対して剥離性のある樹脂材料で成形することを発案し、本願出願人は既に出願済みである。
【0005】
ところが、一次スプール等の全体を剥離性のある樹脂材料で成形した場合、本来は樹脂絶縁材と密着している方が好ましいと思われる部分(例えば、一次コイルの下部等)まで周囲の樹脂絶縁材と剥離することになってしまった。その結果、そのような部分において、新たに樹脂絶縁材のクラック等を生じる結果となってしまった。なお、従来の一次スプール等は、全体が樹脂絶縁材に対して接着性(密着性)の良い樹脂材料で成形され、一次巻線等との間のみに剥離テープが巻回されていたため、このような問題を生じなかったと考えられる。
【0006】
本発明の内燃機関用点火コイルは、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、一次スプール等を樹脂絶縁材に対して剥離性のある樹脂材料で成形した場合でも、その下部付近にクラック等を生じない内燃機関用点火コイルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
そこで、本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、外側スプール(例えば、一次スプール)の下部に形成される、内側スプールに巻回される内側巻線と外側スプールに巻回される外側巻線との間の絶縁距離を確保するために設けられたスカートの長さ(スカート長)を適切な範囲に調整することにより、樹脂絶縁材にクラック等が発生することを防止できることを新たに見い出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の内燃機関用点火コイルは、磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルにほぼ同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、前記外側スプールは、前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔と該外側巻線用鍔の下面から軸方向下方へ延在した筒状のスカートとを有し、
該スカートは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり、該スカートの下端は、前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から該高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の60%以下となる位置に存在することを特徴とする(請求項1)。
【0008】
また、本発明の内燃機関用点火コイルは、そのスカートの下端位置が、前記基準長の90%以上となる位置に存在するようにしても良い(請求項2)。
このように、外側スプールのスカートの下端位置を適切な範囲内にすることで、外側スプールの少なくともスカート部分が樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなる場合でも、スカートの下端部付近における樹脂絶縁材にクラックが発生することを抑制、防止できた。
【0009】
もっとも、この理由は現状必ずしも明らかではないが、現状、次のように考えることができる。
タワーケース部内に充填された樹脂絶縁材自体に着目すると、スカートの下端周辺部で、樹脂絶縁材はその形状が大きく変化している。このため、スカートの下端部分、特に、その角部に相当するところは、応力集中が生じ易く、クラックが発生し易い。
但し、従来のように、その樹脂絶縁材がスカートに対して密着性を有する場合なら、樹脂絶縁材がスカートに拘束されてスカートと一体的に変形していたため、クラックは生じ難かったと考えられる。
【0010】
ところが、樹脂絶縁材をスカートに対して剥離性を有するものとした場合、樹脂絶縁材はスカートの拘束力から解放されて、樹脂絶縁材が独自に変形できるようになった。このため、前述したように、スカートの下端位置、特にその角部に相当する樹脂絶縁材(特に、その隅部)に、熱応力等が集中して、そこでクラックを生じるようになったと考えられる。
しかし、本発明者が、外側スプールのスカート長を種々変更して解析したところ、スカート長がある適切な長さであるとき、言い換えるなら、スカートの下端位置がある領域にあるときは、樹脂絶縁材に生じるクラックを抑制、防止できることが解った。これは次のように考えることができる。
【0011】
先ず、外側スプールの内側には、樹脂絶縁材よりも熱変形量の小さい内側巻線や中心コアが存在する。このため、外側スプールのスカート内側に充填された樹脂絶縁材は、それらの存在によって、少なくとも径方向の熱収縮が抑制される。そこで、このような熱変形の抑制効果が及ぶ領域にスカートの下端位置があると、すなわち、スカートが短いと、応力集中し易い部分の樹脂絶縁材の熱変形も抑制されて、クラックの発生が防止される。
【0012】
次に、その領域を越えてスカート長が長くなると、スカート下端周辺の樹脂絶縁材に及ぶ上記抑制効果が少なくなる。その結果、スカートの下端位置周辺にある樹脂絶縁材にクラックが生じ易くなる。
しかし、さらにスカートが長くなると、今度は、スカート下端周辺の樹脂絶縁材が、タワーケース部の下方筒状部の上端側に設けた高圧金具の影響を受けるようになる。すなわち、この高圧金具も、樹脂絶縁材よりも熱変形量が小さいため、少なくとも樹脂絶縁材の径方向の熱変形抑制に効果を発揮する。その結果、スカートの下端位置にある樹脂絶縁材に作用する熱応力等が低減されて、その部分にクラックが生じることが抑制、防止される。
【0013】
そこで、具体的には、前述の通り、スカートの下端位置を、中心コアの下面位置を基準位置として、その基準位置から測定した長さが基準長(基準位置から高圧金具の主部位置までの軸方向の長さ)の60%以下または90%以上となる領域にくるようにすると良いことが解った。なお、高圧金具の主部とは、スカート下端周辺の樹脂絶縁材の熱変形量を抑制するに足る、高圧金具のいずれかの部分の上面である。例えば、スカート下端に最も近い高圧金具の主たる上面である。その具体的な位置は、高圧金具の形状によって異なるため一概には特定できない。一例を挙げれば、高圧金具がカップ状の場合ならカップ上面がその主部となり、カップ上面位置がその主部位置となる。
ここで、スカート長を短くする場合なら、基準長の50%以下、さらには40%以下となる領域にスカートの下端位置がくるようにするとより好ましい。逆に、スカート長を長くする場合なら、基準長の95%以上となる領域にスカートの下端位置がくるようにするとより好ましい。
【0014】
なお、外側スプールにスカートを設けるのは、沿面距離を大きくして、内側コイルと外側コイルとの間等の短絡(放電)を防止するためである。従って、スカートを短くする場合でも、少なくとも、その目的に沿った長さを確保する必要がある。そこで、外側巻線用鍔を内側巻線用鍔の上方に配置したときに、最低限、外側巻線用鍔の下面から内側巻線用鍔の上面位置までスカートを軸方向に延在させると好適である。
【0015】
また、本発明で重要なのは、中心コアや高圧金具との相対位置関係により決定される、外側スプールのスカートの下端位置である。このため、スカート長自体が重要な訳ではないことを念のために述べておく。ちなみに、スカート長とは、外側巻線用鍔の下面位置からスカートの下端位置までの軸方向長さである。
【0016】
さらに本発明者は、上記の内容を発展させて次のような発明も完成させた。
すなわち、本発明の内燃機関用点火コイルは、磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルに同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、前記内側スプールは、前記内側巻線の下端側を保持する内側巻線用鍔を備え、
前記外側スプールは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔を備え、該外側巻線用鍔の下面は、該内側巻線用鍔の上面よりも下方に位置することを特徴とする。
【0017】
本発明の点火コイルは、外側巻線用鍔の下面を内側巻線用鍔の上面よりも下方に配置したものである。これにより、外側コイルによる樹脂絶縁材の拘束力が大きくなり、樹脂絶縁材にクラックが発生し難くなる。しかも、内側コイルと外側コイルとの間の沿面距離も確保されて、両者間での短絡(放電)も防止される。ところで、この外側巻線用鍔が下方にくると、その外周端周辺では、前述したスカート下端周辺と同様、タワーケース部の上方筒状部に充填された樹脂絶縁材にクラック等が生じ易くなる。
【0018】
そこで、前記外側巻線用鍔の下面も、前述したスカート下端の場合と同様に、前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から前記高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の60%以下となる位置に存在するようにすれば好適である。また同様に、前記外側巻線用鍔の下面を、その基準長の90%以上となる位置に存在させても好適である。そしてこれらの外側スプールの場合、前述の場合と異なって、スカートを有する必要はない。
【0019】
なお、本発明の場合、外側コイルと内側コイルとは、どちらが一次コイルでも二次コイルでも良い。そこで、例えば、前記外側コイルを一次スプールに一次巻線が巻回された一次コイルとし、前記内側コイルを二次スプールに二次巻線が巻回された二次コイルとすることもできる。
【0020】
また、本明細書中でいう上下関係は、点火コイル側を上方とし、点火プラグ側を下方とする便宜的なものである。従って、本発明でいう上下関係と、内燃機関用点火コイルの実際の取付位置等とはなんら無関係である。
さらに、本明細書では、便宜上、コイルケース部とタワーケース部とを分けて説明したが、両者の結合により点火コイルのケース全体が構成される。従って、例えば、コイルケースとタワーケースとが一体樹脂成形されて点火コイルのケースを構成しても良い。
【0021】
また、「二次側端子」とは、内側巻線と外側巻線との内、高圧側となる方の巻線に接続される二次側端子という意味である。
また、樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料は、樹脂絶縁材との相関によって決定されるものである。例えば、樹脂絶縁材をエポキシ樹脂とした場合、スカートを結晶性ポリスチレン(SPS)で成形すると良い。このSPSは、従来の非晶性ポリスチレンとは異なり、主鎖に対して側鎖が交互に反対方向に配位した構造を有するものである。ここで、本発明の場合、少なくともスカートや外側巻線用鍔がそのような樹脂材料からなれば足るが、通常は、外側スプール全体がその樹脂材料で一体成形される。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、実施形態を挙げ、本発明について具体的に説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態である内燃機関用点火コイル100(以下、点火コイル100という。)を図1に示す。点火コイル100は、いわゆるスティックタイプの点火コイルであり、図示しないエンジンブロックのプラグホール内に気筒毎に装着される。
この点火コイル100は、大別して、制御部1と、コイル部2と、高圧タワー部3とからなる。
【0023】
制御部1は、コネクタ13内にインサート成形されたターミナル12と、このターミナル12に接続されたイグナイタ11とからなる。そして、ECU(図示せず)から受けた点火信号はターミナル12を介してイグナイタ11に伝わる。イグナイタ11は、その点火信号に基づいて、後述の一次巻線23に供給する一次電流をスイッチングし、点火プラグで断続的な放電を生じさせる。
【0024】
コイル部2は、外殻を形成するコイルケース20と、その内部に外側から順次配設された一次スプール21に一次巻線23の巻回された一次コイルと、二次スプール22に二次巻線24の巻回された二次コイルと、中心部に配設された中心コア26と、さらにコイルケース20の内側に嵌装された外周コア25とから主に構成される。
【0025】
そして、これらによって開磁路が形成され、一次コイルに供給されたバッテリ電圧(約12V)は、点火プラグで放電可能な高電圧(30kV程度)まで二次コイルにおいて昇圧される。
高圧タワー部3は、コイルケース20の下端側に固定される段付き円筒状のタワーケース30と、タワーケース30の下端側に冠着されその内部中央に配設される点火プラグを密着保持するゴム製のプラグキャップ36と、二次巻線24の一端に接続された二次側端子32と、この二次側端子32に導通可能に接触しタワーケース30の内部中央に配設された高圧金具31と、その高圧金具31とプラグ端子(図示せず)に弾性接触可能に保持された高圧スプリング33(弾性金具)とからなる。
【0026】
次に、本実施形態の高圧タワー部3について、図1およびその部分拡大図である図2を参照しつつさらに詳しく説明する。
タワーケース30は、内部が段付き形状となった円筒状部材である。具体的には、一次スプール21や二次スプール22の下部を収納し樹脂絶縁材5の充填される内部空間を形成した上方円筒部30a(上方筒状部)と、この上方円筒部30aの下方に連なり上方円筒部30aよりも内径が小さく、点火プラグのプラグ端子側(図示せず)を収納する下方円筒部30b(下方筒状部)とからなる。
【0027】
一次スプール21の下部には、一次巻線23の下端を保持すると共に外周コア25に対して位置決め機能を有する外環状の鍔21a(外側巻線用鍔)が形成されている。さらに、その鍔21aの下方には円筒状のスカート21bが連なる。このスカート21bは、一次巻線23の巻回される部分と内外径が同一である。そして、このスカート21bによって、二次スプール22の下部の外全周が覆われる。なお、スカート21bの長さについては後述する。
二次スプール22も一次スプール21と同様に、二次巻線24の下端を保持すると共に一次スプール21に対して位置決め機能を有する外環状の鍔22a(内側巻線用鍔)を下部に有する。なお、二次スプール22の鍔22aは、前述した一次スプール21の鍔21aよりも下方に位置している。
【0028】
さらに、その鍔22aの下部には段付鍔22bが形成されており、その内部中央には二次スプール22の上方へ連通する連通孔22cが軸方向に延びている。なお、段付鍔22bに設けた横孔(図示せず)から連通孔22cを通じて、後述の樹脂絶縁材5が二次スプール22の内部へも浸入して、中心コア26等を絶縁および固定する。
【0029】
また、一次スプール21および二次スプール22は共に樹脂一体成形品である。もっとも、一次スプール21の材質はSPSであり、二次スプール22の材質はPPE(剥離性のない樹脂材料)である。
二次側端子32は、その段付鍔22bの下端面に取り付けられた環状金具であり、その内周端は連通孔22c内に向けて折返されている。
【0030】
高圧金具31の上部には、二次側端子32の内周端に接触しつつ二次スプール22の連通孔22cに挿入される柱状突起31aが形成されている。また、高圧金具31の下部には、タワーケース30の下方円筒部30bの上端開口部の内周側に圧入される有底円筒状のカップ31bが形成されている。そして、このカップ31bが下方円筒部30bの上端開口部を覆う。このとき、両者間の圧入面がシール面となり、タワーケース30の上部空間に充填される樹脂絶縁材5の外部への漏出が防止される。
【0031】
次に、本発明の特徴部分について、図2および図3を参照しつつ説明する。
先ず、軸方向の長さを表す際の基準位置として、中心コア26の下面位置を採用し、この基準位置から高圧金具31のカップ31bの上面位置(主部位置)までの距離を基準長(l0)とする。また、その基準位置からスカート21bの下端位置までの長さをlとする。なお、本実施形態では、一次スプール21の鍔21aの下面位置と中心コア26の下面位置とは、ほぼ同位置であったため、スカート長は実質的にlに等しい。
【0032】
次に、スカート21bの長さを種々変更した一次スプール21を用意し、それらを上記点火コイル100に組込んだ場合について、スカート21bの下端内周位置の樹脂絶縁材5(エポキシ樹脂)に生じるエポキシ樹脂歪(ε)をそれぞれの場合について解析して求めた。この結果を図3に示す。
図3中の縦軸は、エポキシ樹脂歪(ε)をそのエポキシ樹脂の破断歪(ε0)に対する割合(ε/ε0)で表示したものであり、横軸は、基準位置からスカート21bの下端位置までの実寸距離(スカート長l)を基準長(l0)に対する割合(l/l0)で表示したものである。なお、本実施形態では、l0=14mmとした。
【0033】
さて、種々の実験から、エポキシ樹脂は、その歪εが破断歪以下なら、クラック等を生じない十分な耐久性を有する。そこで、スカート21bの下端内周位置に生じる樹脂絶縁材5(エポキシ樹脂)の歪εが、破断歪以下となるように、スカート21bの長さを決定すれば良い。
すると、図3のグラフから、スカート長の割合がl/l0=60〜85%でなければ、εがほぼ破断歪以下となり、クラックの発生が防止されることが解った。そして、本発明でいうように、l/l0が60%以下または90%以上となるように、スカートの下端位置を決定すればより好ましい。
【0034】
なお、本実施形態では、外周コア25がコイルケース20の内側に嵌装されるタイプの点火コイル100を示したが、これに限らず、外周コアがコイルケース20の外側に嵌装されるタイプの点火コイルとしても良い。これにより、さらなる点火コイル100の低コスト化を図れる。
また、本実施形態では、コイルケース20とタワーケース30とを別体としたが、両者を一体としても良い。
【0035】
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態である点火コイル200の要部を示す断面図を図4に示す。上記第1実施形態と実質的に同様の部材には同じ符合を付して示してある。
本実施形態は、第1実施形態の一次スプール21を一次スプール221に変更したものである。すなわち、一次スプール221が、二次スプール22の鍔22aと軸方向(上下縦方向)のほぼ同位置に鍔221aをもつようにした。この場合、鍔221aの下面は当然に鍔22aの下方ともなっている。
この一次スプール221の採用により、第1実施形態の場合とスカート221bの長さが異なるが、その下端位置は上記基準長の60%以下または90%以上である。その他は、第1実施形態の場合と同様である。
【0036】
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態である点火コイル300の要部を示す断面図を図5に示す。上記第1実施形態と実質的に同様の部材には同じ符合を付して示してある。
本実施形態は、第1実施形態の一次スプール21を一次スプール321に変更したものである。すなわち、一次スプール321が、二次スプール22の鍔22aよりも軸方向(上下縦方向)の下方に鍔321aをもつようにした。この場合、鍔321aの下面は当然に鍔22aの下方ともなっている。
この一次スプール321の採用により、第1実施形態の場合とスカート321bの長さが異なるが、その下端位置も上記基準長の60%以下または90%以上である。その他は、第1実施形態の場合と同様である。
【0037】
(第4実施形態)
本発明に係る第4実施形態である点火コイル400の要部を示す断面図を図6に示す。上記第1実施形態と実質的に同様の部材には同じ符合を付して示してある。
本実施形態は、第1実施形態の一次スプール21を一次スプール421に変更したものである。すなわち、一次スプール421が、二次スプール22の鍔22aよりも軸方向(上下縦方向)の下方に鍔421aをもつようにすると共にスカート21bを無くした。この場合、鍔421aの下面は当然に鍔22aの下方ともなっている。しかも、その鍔421aの外周下面が、上記基準長の60%以下または90%以上にくるようにした。その他は、第1実施形態の場合と同様である。
【0038】
(第5実施形態)
本発明に係る第5実施形態である点火コイル500の要部を示す断面図を図7に示す。上記第1実施形態と実質的に同様の部材には同じ符合を付して示してある。
本実施形態は、第1実施形態の高圧金具31を高圧金具531に変更したものである。この高圧金具531は、カップ状ではなく略短円柱状をしている。そして、その上面側には柱状突起31aと同様の柱状突起531aを有し、その下面側には高圧スプリング33が係止する係止片531cを有する。その他は、第1実施形態の場合と同様である。
【0039】
(第6実施形態)
本発明に係る第6実施形態である点火コイル600の要部を示す断面図を図8に示す。上記第1実施形態と実質的に同様の部材には同じ符合を付して示してある。
本実施形態は、第1実施形態の高圧金具31を高圧金具631に、二次側端子32を二次側端子632に変更したものである。
高圧金具631は、逆カップ状であり、その上側に受部631aを有し、その下側に高圧スプリング33が係止する係止片631cを有する。
【0040】
二次側端子632は、銅板等を板金加工して形成した略ロの字型をしている。その上側に位置する取付面632aで段付鍔22bの下端面に固定され、その下側に位置する接触部632bで高圧金具631の受部631aに弾性保持される。なお、この場合の主部位置は、受部631aの環状に開口した上端部の位置となる。その他は、第1実施形態の場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である点火コイルの全体を示す縦断面図である。
【図2】その高圧タワー部の拡大断面図である。
【図3】その点火コイルに用いられる一次スプールのスカート長と樹脂絶縁材の歪との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態である点火コイルの高圧タワー部の拡大断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態である点火コイルの高圧タワー部の拡大断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態である点火コイルの高圧タワー部の拡大断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態である点火コイルの高圧タワー部の拡大断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態である点火コイルの高圧タワー部の拡大断面図である。
【符号の説明】
5 樹脂絶縁材
20 コイルケース
21 一次スプール(外側スプール)
21a 鍔
21b スカート
22 二次スプール(内側スプール)
23 一次巻線(外側巻線)
24 二次巻線(内側巻線)
30 タワーケース
100 内燃機関用点火コイル
Claims (5)
- 磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルに同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、
前記外側スプールは、前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔と該外側巻線用鍔の下面から軸方向下方へ延在した筒状のスカートとを有し、
該スカートは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり、
該スカートの下端は、前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から該高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の60%以下となる位置に存在することを特徴とする内燃機関用点火コイル。 - 磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルに同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、
前記外側スプールは、前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔と該外側巻線用鍔の下面から軸方向下方へ延在した筒状のスカートとを有し、
該スカートは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり、
該スカートの下端は、前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から該高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の90%以上となる位置に存在することを特徴とする内燃機関用点火コイル。 - 磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルに同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、
前記内側スプールは、前記内側巻線の下端側を保持する内側巻線用鍔を備え、
前記外側スプールは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔を備え、
該外側巻線用鍔の下面は、該内側巻線用鍔の上面よりも下方に位置すると共に前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から前記高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の60%以下となる位置に存在し、さらに前記外側スプールの最下端面を形成することを特徴とする内燃機関用点火コイル。 - 磁性材料からなる中心コアを中央に内包する内側スプールへ内側巻線を巻回してなる内側コイルと、該内側コイルに同心的に配設され外側スプールへ外側巻線を巻回してなる外側コイルと、該内側コイルおよび該外側コイルを収納するコイルケース部と、該コイルケース部の下方に連なり該内側スプールの下部と該外側スプールの下部とを収納するタワーケース部とを備え、該内側コイルと該外側コイルとの間で供給電圧を高電圧に昇圧して点火プラグに印加する内燃機関用点火コイルにおいて、
前記タワーケース部は、樹脂絶縁材が充填される上方筒状部と該上方筒状部の下方に連なり前記点火プラグの少なくともプラグ端子を中央に収納すると共に前記高電圧の印加される二次側端子から該プラグ端子へ該高電圧を導通させる高圧金具を上端側に有する下方筒状部とからなり、
前記内側スプールは、前記内側巻線の下端側を保持する内側巻線用鍔を備え、
前記外側スプールは、該上方筒状部内に充填される樹脂絶縁材に対して剥離性を有する樹脂材料からなり前記外側巻線の下端側を保持する外側巻線用鍔を備え、
該外側巻線用鍔の下面は、該内側巻線用鍔の上面よりも下方に位置すると共に前記中心コアの下面位置を基準位置として該基準位置から測定した長さが、該基準位置から前記高圧金具の主部位置までの軸方向の長さである基準長の90%以上となる位置に存在し、さらに前記外側スプールの最下端面を形成することを特徴とする内燃機関用点火コイル。 - 前記外側コイルは、一次スプールに一次巻線が巻回された一次コイルであり、
前記内側コイルは、二次スプールに二次巻線が巻回された二次コイルである請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関用点火コイル。
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