JP4038140B2 - フッ素系媒体中の反応及び分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のフッ素系媒体中で有機反応を行い、該媒体から反応生成物を分離・回収する方法に関する。さらに詳しくは、フッ素/有機両親媒性エーテルを溶媒として用いた系中において均一相で有機反応を行い、得られた反応生成物である有機化合物を有機/フッ素系相分離技術、即ちフッ素基を含有する化合物とフッ素基を含有しない化合物を分離する技術、により分離・回収する、フッ素媒体中での有機反応及び反応生成物の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機合成化学においてさまざまなグリーンケミストリー的な取り組みが模索されてきている。中でも、リサイクル可能な有機溶媒としてフッ素系溶剤が注目され、どのような反応条件で使用可能か、どの程度の回収率で何回くらい繰り返して使用可能であるのかについて検討されている。
【0003】
これまで、フッ素系溶剤としては、パーフルオロデカリンなどの水素原子を含まないパーフルオロ溶剤が利用され、「Phase transfer catalysis」のような概念で炭化水素系溶剤と混じり合わない性質を利用した2相系反応(biphase system)が研究され、反応終了後に速やかに生成物を含む反応相が分離され、フッ素系溶剤と触媒が再利用されてきた(非特許文献1参照)。
【0004】
近年、フッ素系溶剤として有機化合物を溶解できる有機/フッ素系両親媒性溶剤を用い、反応終了後、水などで反応を停止させたのち、生成物を有機溶媒で簡単に抽出する方法が提案されている。この抽出方法は、フッ素相、水および有機溶媒という3相抽出であり、有機溶媒を分離すればフッ素相は水に溶解しないため、その分離は非常に簡単である。有機/フッ素両親媒性溶媒を用いることの利点をまとめると、次の通りである:
1)汎用の有機溶媒に溶解し難いフッ素化合物を溶媒中で取り扱うことができる;
2)溶媒は、有機/フッ素系相分離技術により容易に分離できる;
3)分離した溶媒は、精製することなく再利用可能である。さらに、フッ素化溶媒中では気体の溶解度が高まり、気体を利用する多くの反応をこの溶媒中で行うことができる。
【0005】
有機/フッ素両親媒性溶媒の例として、BTF(ベンゾトリフルオリド)は、ジクロロメタンの代替溶媒として利用できることが報告されている(特許文献1、及び非特許文献2参照)。特に、ジクロロメタンの沸点が40℃であるのに対し、BTFの沸点は102℃であり、融点は−29℃と使いやすい温度範囲である。反応例の中で、酸化反応が良好に進行することが報告されている。
【0006】
そのほか、パーフルオロトリエチルアミン(沸点:68-69℃/743Torr)を用いた方法も提案され(非特許文献3参照)、ルイス酸を触媒としたHosomi-Sakuraiアリル化反応などに有効であることが報告されている。
【0007】
一方、本発明者らは既に、Rf-(CH2)n-O-Rで表されるフッ素/有機両親媒性エーテルがフッ素の有する機能を持ち、しかも各種条件下において安定で、他の溶剤との相溶性に優れ、溶剤をはじめとする広範囲な用途に利用できる新規フッ素化合物であるとして開示している(特許文献2及び特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】
特表2000−514062号公報
【特許文献2】
特開平10−175900号公報
【特許文献3】
特開平10−175901号公報
【非特許文献1】
“グリーンケミストリーと触媒”、北爪智哉著、雑誌「機能材料」、株式会社シーエムシー出版、2000年1月号、Vol.20, No.1、p54-64,
【非特許文献2】
J. Org. Chem., 1997, 62, p.450-451
【非特許文献3】
Green Chemistry, 1999, 1, p.21
【0009】
一方、近年の急速なフルオラスケミストリーの進歩から、BTFやパーフルオロトリエチルアミンを越える、有機及びフッ素化試薬の両方に溶解する両親媒性溶媒の必要性が急務となっている。BTFも優れた溶媒であるが、その物理化学的性質から、常圧で100℃を越える温度での反応、あるいは−30℃以下での低温での反応は実質的に困難である。パーフルオロトリエチルアミンも沸点が低く、さらにはアミンと反応する基質を使用することはできなかった。
【0010】
フルオラスケミストリーのさらなる進歩には、使用温度範囲が広く、有機/フッ素系相分離技術により容易に有機化合物から分離可能な、新しい有機/フッ素系両親媒性溶媒の開発が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記で述べたように、フッ素系媒体中の反応及び生成物の分離システムは、その進歩が期待されながら有用なフッ素/有機両親媒性溶媒がなく、高性能のフッ素/有機両親媒性溶媒を用いたフッ素系媒体中の反応及び生成物の分離システムが望まれていた。
従って、本発明の目的は、高性能のフッ素/有機両親媒性エーテルを反応溶媒として用い、かつ有機化合物を有機/フッ素系相分離技術により分離することを特徴とするフッ素系媒体中の反応及び生成物の分離方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくフッ素/有機両親媒性溶媒を用いたフッ素系反応及び分離システムについて鋭意検討を行った結果、Rf-(CH2)n-O-R(Rf、nおよびRは以下に定義するとおりである)で表されるフッ素/有機両親媒性エーテルを用いることにより、良好なフッ素系反応及び分離方法が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち本発明は、一般式(1)で表されるフッ素/有機両親媒性エーテル:
Rf-(CH2)n-O-R (1)
(式中、Rfは直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基を示し、Rは直鎖又は分岐の炭素数1〜36のアルキル基又は炭素数3〜9のシクロアルキル基を示し、nは0〜8の数を示す。)
を反応溶媒として用いて均一相で有機反応を行い、その後反応混合物にフッ素で少なくとも一部が置換された有機化合物であるフルオラス系溶媒を添加して、反応生成物と該フルオラス系溶媒及び該フッ素/有機両親媒性エーテルとを分離する、フッ素/有機両親媒性媒体を用いた反応及び分離方法を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の前記一般式(1)で表されるフッ素/有機両親媒性エーテルにおいて、Rfは直鎖又は分岐の炭素数1〜20のアルキル基の水素原子の少なくともひとつがフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基を示すが、直鎖又は分岐の炭素数4〜16のアルキル基の水素原子の少なくとも一つがフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基が好ましい。さらに好ましくは、直鎖又は分岐の炭素数4〜16のパーフルオロアルキル基である。また、Rは直鎖又は分岐の炭素数1〜36のアルキル基又は炭素数3〜9のシクロアルキル基を示すが、直鎖又は分岐の炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数6〜9のシクロアルキル基が好ましい。nは0〜8の数を示すが、0〜4が好ましい。
【0015】
上記フッ素/有機両親媒性エーテルの好ましい具体例としては、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル1,3-ジメチルブチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル1,3-ジメチルブチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル1,3-ジメチルブチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシル1,3-ジメチルブチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシルオクチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルオクチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルオクチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシルオクチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシルデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシルデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキシルドデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルドデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルドデシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシルドデシルエーテルが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。特に好ましい具体例として、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル1,3-ジメチルブチルエーテル(F−626)、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル1,3-ジメチルブチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシルオクチルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテル、1H,1H,2H,2H-パーフルオロドデシル3,5,5-トリメチルヘキシルエーテルが沸点も高く、フルオラス系溶剤を添加した後、反応生成物との分離性に優れる。
【0016】
本発明によるRf-(CH2)n-O-Rで表されるフッ素/有機両親媒性エーテルを溶媒として用いることができる反応は、反応基質がフッ素/有機両親媒性エーテルに均一溶解するものであれば特に制限されない。もちろん反応基質には、フッ素が置換された有機化合物もあるが、フッ素/有機両親媒性エーテルに均一溶解するものであれば用いることができる。
【0017】
本発明に使用される反応としては、例えば、リチウムアルミニウムヒドリドによる還元反応、触媒的な水素添加反応、フルオラスな(フッ素含有)ラジカル反応が挙げられる。特に、比較的高温を必要とするため、BTF等の低沸点溶媒の利用が困難であったVilsmeier(フィルスマイヤー)反応(芳香族化合物のホルミル化)、Wolff-Kishner (ウォルフ−キシュナー)還元反応(カルボニル基のメチレン基への還元)、Diels-Alder (ディールス−アルダー)反応([4+2]環化付加反応)が好ましい。本発明が適用される反応は、反応生成物がフルオラス系溶媒に実質的に不溶であることが必要である。
Vilsmeier反応は、芳香族化合物のホルミル化として最も有用な方法のひとつで、ホルミル化ソースとしてジメチルホルムアミドあるいはN-メチルホルムアニリドが使用されている。この反応は、従来o-ジクロロベンゼン(bp.180℃)などの沸点の高い溶媒を用い、100℃以上の温度で行われていた。BTFより沸点の高い、本発明に使用されるフッ素/有機両親媒性エーテルを用いれば、クロルを含有する溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用いることなく反応が可能となる。
【0018】
Wolff-Kishner 還元は、カルボニル基をメチレン基に変換できるよく知られた方法である。この反応は従来、エチレングリコール(bp.196-198℃)あるいはジエチレングリコール(bp.245℃)の存在下、水酸化カリウムとヒドラジンを用いて還流しながら行われていた。
【0019】
Diels-Alder 反応は従来、トルエン(bp.110.6℃)、キシレン(bp.143-145℃)、メシチレン(bp.162-164℃)などの溶媒を用い、通常100℃以上で行われていた。
【0020】
本発明の分離方法とは、反応後、反応混合物にフルオラス系溶媒を加え、反応生成物と、上記一般式(1)のフッ素/有機両親媒性エーテルおよび上記フルオラス系溶媒とを分離する工程をいう。ここで、フルオラス系溶媒とは、一部フッ素で置換された有機化合物をいうが、パーフルオロ炭化水素が好ましく、炭素数4〜12のパーフルオロ炭化水素がより好ましく、炭素数4〜12のパーフルオロアルカンが特に好ましくい。
【0021】
本発明の分離方法を使用すると、容易に反応混合物から反応生成物と上記フッ素/有機両親媒性エーテルとを分離し、それらを回収することができる。また分離した上記フッ素/有機両親媒性エーテル及びフルオラス系溶媒を含む相から、乾燥、濃縮等により上記フッ素/有機両親媒性エーテルを回収して再利用することが可能である。フッ素置換された触媒を用いた場合、触媒はフルオラス系溶媒及び上記フッ素/有機両親媒性エーテルからなる相に移り、反応生成物から分離して回収できる。この場合、回収した触媒を含む上記フッ素/有機両親媒性エーテルも再利用可能である。分離は、有機相とフッ素相の2相分離、又は水を加えれば水相と有機相とフッ素相の3相分離であり、水相中の無機化合物と有機相中の有機化合物とフッ素相中の上記フッ素/有機両親媒性エーテルとに分離できる。これまで、このような溶剤はBTF以外、ほとんど報告されていなかった。図1に、従来法と本発明法の違いを簡単に図示する。
【0022】
本発明の方法を用いれば高温での有機反応が可能で、しかも反応終了後には、有機/フッ素相分離技術により生成物と溶媒を容易に分離することができる。反応スケールが小さい、あるいは生成物が少ない場合、有機/フッ素系溶剤の相分離の時、有機溶剤を添加し、生成物を有機溶剤に溶解させ、フッ素系溶剤相から分離する操作を行ってもよい。
【0023】
以下の実施例に用いたF-626(1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチル1,3-ジメチルブチルエーテル)の物性を記載すると、沸点は214℃(760Torr)、流動点(凝固点)は−110℃であり、BTFに比べて利用範囲が大幅に広いことがわかる。なお、BTFとF-626は下記の式で示される:
【0024】
【化1】
【0025】
また、BTFとF-626の、有機相とフッ素相(パーフルオロヘキサン)への分配状態を、下記の手順により確認した。その結果を表1に示す。評価方法は、Curranらの方法を参考にした(J.Am.Chem.Soc.,1999,121,6607)。
手順
有機溶媒(3mL)とパーフルオロヘキサン(3mL)の2相系混合物に、F-626(300mg)を添加し、10分間激しく攪拌した。5分間静置後、2相を分離し、それぞれの相から溶剤を留去し、各溶剤相に残留したF-626の重量を測定した。数値は、その重量比を表している。BTF系は、重量分析の代わりにガスクロマトグラフから残留量を求めた。
【0026】
【表1】
【0027】
これからわかるように、F-626の大部分はパーフルオロヘキサン相に分配され、BTFに比べて有機/フッ素系相分離技術に適した溶剤であることが確認できた。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
リチウムアルミニウムヒドリドを用いた安息香酸エチルの還元反応
【0029】
【化2】
【0030】
F-626(2mL)にリチウムアルミニウムヒドリド(80mg, 2.1mmol)を分散させた溶液に、0℃で攪拌しながらF-626(1mL)に溶解させた安息香酸エチル(318mg, 2.0mmol)を加えた。反応混合物を35℃に昇温し5時間攪拌した。その後、0℃に冷却し水(2mL)を加えた。沈殿した無機塩をろ過により除き、エーテルで洗浄した。エーテル溶液をパーフルオロヘキサン(5mL)で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを添加して乾燥後、エーテルを留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、目的のベンジルアルコール200mg(収率:93%)を得た。
【0031】
実施例2
1- ドデセンの触媒的水素添加反応
【0032】
【化3】
【0033】
F-626(3mL)に、5%のパラジウムを担持したカーボン(3mg)、1-ドデセン(337mg, 2mmol)を添加し、室温常圧水素雰囲気下3時間攪拌した。ろ過により触媒を除去し、エーテルで洗浄した。ろ液をパーフルオロヘキサン(5mL)で3回洗浄し、エーテル相を減圧にて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘキサン)により精製し、目的のドデカン330mg(収率:98%)を得た。
【0034】
実施例3
フッ素化スズヒドリドを用いた 1- ヨウ化アダマンタンの還元
【0035】
【化4】
【0036】
窒素雰囲気下、F-626(1mL)とtert-ブチルアルコール(1mL)の混合溶液に、1-ヨウ化アダマンタン(262mg, 1.0mmol)、フッ素化スズヒドリド(F-Sn)(68mg, 0.05mmol)、ナトリウムシアノボロヒドリド(94mg, 1.5mmol)、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル(17mg, 0.1mmol)を加え、90℃で3時間攪拌した。冷却後、ジクロロメタン(20mL)で希釈し、水で2回、パーフルオロヘキサンで3回洗浄した。水/ジクロロメタン/パーフルオロヘキサンの3相溶液から、ジクロロメタン相を取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧にて溶剤を留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、目的のアダマンタン134mg(収率:98%)を得た。
(フッ素化スズヒドリドの回収再利用実験)
実施例3の3相溶液からパーフルオロヘキサン相を取り出し、乾燥し濃縮後、フッ素化スズヒドリドを含むF-626(1.45mg)を得た。この回収したフッ素化スズヒドリドを含むF-626を用い、実施例3の反応を繰返したところ、目的のアダマンタン108mg(収率:80%)を得た。
【0037】
実施例4
フッ素化スズヒドリドを用いた 1- ヨウ化アダマンタンのカルボニル化
【0038】
【化5】
【0039】
ガス導入管を備えたオートクレーブに、1-ヨウ化アダマンタン(262mg, 1.0mmol)、フッ素化スズヒドリド(68mg, 0.05mmol)、ナトリウムシアノボロヒドリド(94mg, 1.5mmol)、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル(17mg, 0.1mmol)、F-626(1mL)およびtert-ブチルアルコール(1mL)を入れた。オートクレーブ内に一酸化炭素を導入し(80 atm)、90℃で3時間攪拌した。冷却後、ジクロロメタン(20mL)にて希釈し、水で2回、パーフルオロヘキサンで3回洗浄した。水/ジクロロメタン/パーフルオロヘキサンの3相溶液から、ジクロロメタン相を取り出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、目的のアダマンチルメタノール142mg(収率:85%)を得た。
(フッ素化スズヒドリドの回収再利用実験)
実施例4の3相溶液からパーフルオロヘキサン相を取り出し、乾燥し濃縮後、フッ素化スズヒドリドを含むF-626を回収した。この回収したF-626(フッ素化スズヒドリドを含有)を用い、実施例4の反応を繰返したところ、目的のアダマンチルメタノール133mg(収率:80%)を得た。
【0040】
実施例5〜7
Vilsmeier 反応(芳香族化合物のホルミル化)
F-626(1mL)に溶解させた表2に示す芳香族化合物(1mmol)およびN-メチルホルムアニリド(1.3mmol)に、塩化ホスホリル(1.3mmol)を加えた。反応混合物を100℃で1時間攪拌した。冷却後、上相をデカンテーションにより除き、残留物をベンゼン(10mL)で希釈し、水で2回、パーフルオロヘキサンで3回洗浄した。ベンゼン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ(ベンゼン)により精製し、目的のホルミル化物を得た。実施例5〜7の結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
実施例8〜10
Wolff-Kishner 還元(カルボニル基のメチレン基への還元)
F-626(2mL)、ヒドラジンモノヒドレート(1mL)の混合物に、表3に示すカルボニル化合物(2.5mmol)と粉末状の水酸化カリウム(5mmol)を加え、120℃で2時間攪拌した。さらに、6時間還流(200℃付近)させた。冷却後、反応混合物をベンゼン(10mL)で希釈し、水で2回、パーフルオロヘキサンで3回洗浄した。ベンゼン溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ベンゼン)により精製し、目的の還元物を得た。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例11〜12
Diels-Alder 反応( [4+2] 環化付加反応)
【0045】
【化6】
【0046】
F-626(3mL)にジエン(1.3mmol)とジエノフィル(1.3mmol)を入れ、溶液の色が赤になるまで還流した(約10分)。ろ過により分離した結晶をベンゼン(30mL)で洗浄し、さらに結晶物を減圧にて乾燥させ、目的の[4+2]環化付加反応物を得た。反応は、Diels-Alder反応による[4+2]環化付加反応の後、連続的に一酸化炭素の脱離が生じる。実施例11〜12の結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、高温での有機反応が可能で、反応終了後には、反応生成物と溶媒であるフッ素/有機両親媒性エーテルとを容易に分離することができる。該溶媒は再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は従来の反応・分離方法を示す説明図であり、(B)は本発明による反応・分離方法を示す説明図である。
Claims (4)
1H,1H,2H,2H- パーフルオロデシル 1,3- ジメチルブチルエーテル、
1H,1H,2H,2H- パーフルオロデシルオクチルエーテル、
1H,1H,2H,2H- パーフルオロデシル 3,5,5- トリメチルヘキシルエーテル及び
1H,1H,2H,2H- パーフルオロドデシル 3,5,5- トリメチルヘキシルエーテルから選ばれるフッ素/有機両親媒性エーテルを反応溶媒として用いて均一相で有機反応を行い、その後反応混合物に、フッ素で少なくとも一部が置換された有機化合物であるフルオラス系溶媒を添加して、反応生成物と該フルオラス系溶媒及び該フッ素/有機両親媒性エーテルとを分離する、上記フッ素/有機両親媒性エーテル媒体中の反応及び分離方法。
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