JP4036532B2 - ギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、本革等のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
車両のドアライニングにおいて、豪華な感じを与えるために本革等のギャザー縫いされた表皮を有するパッドを設けたものがある。
【０００３】
図８は従来のギャザー付き表皮を有するパッドの構成例を示したものである。即ち、このドアライニングパッド８０は、表皮８１のギャザー縫い８２が施された周縁部を、柔軟材であるウレタン８３が貼り付けられた一枚物のペーパーボード８４の周縁部に本縫い８５した後、これら表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を、樹脂製取付ベース８６の周縁部に対し、巻き込むようにして折り返し８７してから接着したものである。
【０００４】
また、図９は従来のギャザー付き表皮を有するパッドの異なる構成例を示したものである。即ち、このドアライニングパッド９０は、表皮９１のギャザー縫い９２が施された周縁部に、複数に分割された帯状のペーパーボード９３，９３を本縫い９４，９４した後、こうして表皮９１の帯状ペーパーボード９３，９３が本縫い９４，９４された周縁部を、ウレタン９５が貼り付けられた樹脂製取付ベース９６の周縁部に対し、巻き込むようにして折り返し９７してから接着したものである。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上のような従来のドアライニングパッドでは、次のような製造上の問題があった。
【０００６】
即ち、図８に示した従来のドアライニングパッド８０では、樹脂製取付ベース８６の周縁部に対し、表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を巻き込むようにして折り返し８７してから接着する際、デザイン上の理由から樹脂製取付ベース８６の周縁部は曲線部をなしているので、表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を樹脂製取付ベース８６の曲線状周縁部に巻き込むようにして折り返し８７するのが必ずしもうまく行かず、周縁部の形状が綺麗に出ないものとなっていた。
そして、樹脂製取付ベース８６の曲線状周縁部を挟んでのペーパーボード８４の折り曲げ時に皺が発生し、表皮８１に表れる縦ギャザーの形状が不安定になってしまう。
【０００７】
また、図９に示した従来のドアライニングパッド９０では、上下の帯状ペーパーボード９３，９３の位置が揃わないと、表皮９１に表れる縦ギャザーの形状が不安定になってしまうが、部品のバラツキや製造時の手作業により、上下の帯状ペーパーボード９３，９３の位置を正確に揃えるのは難しいものとなっていた。
【０００８】
そこで、本発明の目的は、ギャザーを簡易に入れられて部品組付が早く行え、安定したギャザーが得られるようにしたギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決すべく請求項１記載の発明は、周縁部をギャザー縫いされた表皮と、この表皮の周縁部が周縁部に本縫いされる板状の基材と、この基材と表皮との間に挿入される柔軟材と、を備えるギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記表皮の周縁部が前記基材の周縁部に対し、裏面側で本縫いした一部と対向する部分が表面側で本縫いされていて、前記基材の表面側に前記表皮を本縫いした周縁部分が裏面側に折り返して固着されている構成、を特徴としている。
【００１０】
ここで、車両用内装部品としては、ドアライニングパッドが代表的であるが、例えば、車体パネルに取り付けられるサイドライニングパッド等、他の内装部品であっても良い。
表皮としては、本革が代表的であるが、人工皮革でも繊維でも良い。
板状の基材としては、ペーパーボードが代表的であるが、薄い樹脂や比較的硬質の樹脂であっても良い。
柔軟材としては、ウレタン等の発泡樹脂が代表的であるが、他の素材を用いても良い。
【００１１】
以上のように、請求項１記載の発明によれば、ギャザー縫いした表皮の周縁部が、柔軟材を挿入する板状の基材の周縁部に対し、裏面側に本縫いした周縁一部と対向する部分で表面側に本縫いした周縁部分を裏面側に折り返して固着したギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であり、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いので、ギャザーが簡易に入れられるとともに、部品組付が早く行え、しかも、基材と表皮との間に柔軟材を挿入するので、挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーが得られる。
【００１２】
請求項２記載の発明は、請求項１記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記柔軟材は、車体側に固定するための板状の取付ベース上に貼り付けられている構成、を特徴としている。
例えば、板状の取付ベースとしては、ポリプロピレンが代表的であるが、他の硬質の樹脂であっても良い。
【００１３】
このように、請求項２記載の発明によれば、請求項１記載の柔軟材が、車体側固定用の板状の取付ベース上に貼り付けられているので、この取付ベースを利用して車体側への取り付けが行える。
【００１４】
請求項３記載の発明は、請求項１または２記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記柔軟材の表面には、前記表皮を滑りやすくする層が形成されている構成、を特徴としている。
例えば、滑りやすくする層としては、不織布やナイロン布帛等によるスパンボンドが挙げられるが、他の素材によるものやコーティングによる層であっても良い。
【００１５】
このように、請求項３記載の発明によれば、請求項１または２記載の柔軟材の表面に、表皮を滑りやすくする層が形成されているので、表皮が柔軟材に対し滑りやすくなって、安定したギャザーに維持できる。
【００１６】
また、請求項４記載の発明は、ギャザー付き表皮を有する車両用内装部品において、表皮の周縁部をギャザー縫いする第１工程、前記表皮の周縁部を板状の基材の周縁部に対し、一部を裏面側に本縫いしてその一部と対向する部分を表面側に本縫いすることにより、前記表皮と前記基材を袋状に形成する第２工程、前記袋状内に柔軟材を挿入する第３工程、前記基材の表面側に前記表皮が本縫いされた周縁部分を裏面側に折り返して固着する第４工程からなる製造方法、を特徴としている。
ここで、ギャザー縫いや本縫いは、ミシンにより行われる。
例えば、固着は、タッカー止めやステープル止めにより行うのが代表的であるが、接着により行っても良い。
【００１７】
このように、請求項４記載の発明によれば、ギャザー縫いした表皮の周縁部を、板状の基材の周縁部に対し、裏面側に本縫いした一部と対向する部分を表面側に本縫いして、表皮と基材を袋状に形成しておき、その袋状内に、柔軟材を挿入してから、基材の表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を裏面側に折り返して固着する方法であり、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いので、ギャザーが簡易に入れられるとともに、部品組付が早く行え、しかも、基材と表皮とにより形成した袋状内に柔軟材を挿入するので、袋状内挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーが得られる。
【００１８】
請求項５記載の発明は、請求項４記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法であって、前記基材には、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分の裏面側への折り返しを容易とする折り目を予め形成しておくこと、を特徴としている。
【００１９】
このように、請求項５記載の発明によれば、請求項４記載の基材には、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分の裏面側への折り返しを容易とする折り目を予め形成してあるので、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を折り目に沿って裏面側へ容易に折り返せる。
【００２０】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法の実施の形態例を図１から図７に基づいて説明する。
先ず、図１は本発明を適用した車両用内装部品の一例としてのドアライニングパッドの部品を示すもので、図１（ａ）は袋状物を表皮側から示した正面図、図１（ｂ）は袋状物を基材側から示した背面図であり、図２は図１（ａ）の矢印Ａ−Ａ線に沿った断面図である。
これらの図１及び図２において、１０は表皮（本革）、１１は先細り前部、１２は上縁部、１３は下縁部、１４は後縁部、１５はギャザー縫い部、１６は上縁折り返し部、１７はギャザー、２０はペーパーボード（基材）、２１は先細り前部、２２は上縁部、２３は下縁部、２４は後縁部、２５は折り目、２６は本縫い部、２７，２８は穴部である。
【００２１】
この実施の形態例においては、図示のように、本革による表皮１０は、先細り前部１１から後方へ連続する上縁部１２及び下縁部１３が後縁部１４で連続している。
即ち、表皮１０は、先端に突出する小突片１１ａを備える先細り前部１１上から後方へ円弧状に連続する上縁部１２を有するとともに、先細り前部１１下から後方へ第１斜め縁部１３ａ及び一段下がった第２斜め縁部１３ｂを経てさらに一段下がって直線状に連続する下縁部１３を有して、これら上縁部１２及び下縁部１３に連続する後縁部１４を有する形状のものである。
そして、上縁部１２に沿ってギャザー縫い（ギャザー縫い部１５参照）が施されるとともに、第１斜め縁部１３ａ及び第２斜め縁部１３ｂを除いた直線状の下縁部１３に沿ってギャザー縫い（ギャザー縫い部１５参照）が施されている。
【００２２】
また、板状の基材であるペーパーボード２０は、先細り前部２１上から後方へ円弧状に連続する上縁部２２を有するとともに、先細り前部２１下から後方へ斜め縁部２３ｂを経て一段下がって直線状に連続する下縁部２３を有して、これら上縁部２２及び下縁部２３に連続する後縁部２４を有する形状のものである。
そして、斜め縁部２３ｂ及び直線状の下縁部２３の上方に沿って円弧状をなす折り目２５が形成されている。
【００２３】
このようなペーパーボード２０に対し表皮１０は、ペーパーボード上縁部２２の裏面側に表皮上縁部１２が本縫い（本縫い部２６参照）されてから、上方からペーパーボード２０表面側に折り返して（上縁折り返し部１６参照）、ペーパーボード下縁部２３の表面側に表皮下縁部１３が本縫い（本縫い部２６参照）されている。
ここで、ペーパーボード斜め縁部２３ｂと表皮第２斜め縁部１３ｂも本縫い（本縫い部２６参照）されている。
以上の表皮１０及びペーパーボード２０により、後縁部１４，２４が開口部となった袋状物が構成される。そして、表皮１０には上下方向に沿った多数のギャザー１７，１７，１７，…が形成される。
なお、ペーパーボード２０には、多数の穴部２７，２７，…，２８，２８が形成されている。
【００２４】
図３は以上のような袋状物内に挿入する柔軟材３０を示したもので、この柔軟材３０は、例えば、厚さが８ｍｍ程度のウレタンであり、このような柔軟材３０の表面には、不織布またはナイロン布帛による表層としてのスパンボンド３１が接着等により形成されている。
また、柔軟材３０は、例えば、ポリプロピレン等の硬質樹脂製で板状の取付ベース３２が接着等により一体化されている。この取付ベース３２の裏面には、図示しないフックが一体に多数備えられている。
このようなスパンボンド３１及び取付ベース３２を表裏に備える柔軟材３０は、前述した表皮１０及びペーパーボード２０による袋状ものの内部に充填される形状をなしている。
【００２５】
以上のようなスパンボンド３１及び取付ベース３２を表裏に備える柔軟材３０を、図４に示すように、表皮１０及びペーパーボード２０による袋状物の内部に、後縁部１４，２４による開口部から挿入する。この時、ペーパーボード２０の各穴部２７，２７，…，２８，２８には、取付ベース３２裏面のフック（図７のフック３３参照）がそれぞれ突出している。
そして、表皮１０及びペーパーボード２０の下縁部１３，２３を、図５に示すように、ペーパーボード２０に設けた折り目２５に沿って裏面側に折り返して（下縁折り返し部２９参照）から、タッカー（またはステープル）３４により止める。
【００２６】
なお、表皮１０の後縁部１４もペーパーボード２０の後縁部２４の裏面側に折り返してタッカー（またはステープル）により止める。
また、表皮１０の先細り前部１１の小突片１１ａもペーパーボード２０の先細り前部２１の裏面側に折り返してタッカー（またはステープル）により止める。
こうしてドアライニングパッド４０を製造する。
【００２７】
以上のドアライニングパッド４０は、図６及び図７に示すように、ドアライニング６０に組み付けられる。
即ち、ドアライニング６０は、下部にスピーカ６１及びドアポケット６２を有するもので、そのドアポケット６２の上方に沿ってパッド取付凹部６３が形成されている。なお、ドアライニング６０の上縁部に沿ってインナーシール６４が設けられている。
このようなドアライニング６０のパッド取付凹部６３にドアライニングパッド４０を合わせて、ドアライニングパッド４０の裏面側に突出するフック３３，３３，…を、パッド取付凹部６３に形成したスライド穴部から突出させる。
そして、ドアライニングパッド４０を前後何れかにスライドさせて、フック３３，３３，…をドアライニング６０にタッピングビス止めまたは溶着カシメ止めにより固定する。
【００２８】
以上の通り、この実施の形態例のドアライニングパッド４０によれば、特に、表皮１０及びペーパーボード２０による袋状物の内部に柔軟材３０を挿入するので、以下に列挙する効果が得られる。
（１）表皮１０にギャザー１７を簡易的に入れることができる。
（２）表皮１０、ペーパーボード２０及び柔軟材３０からなる部品組付が早い。
（３）柔軟材３０により表皮１０に働くテンションが一定になる。
（４）ギャザー１０のバラツキが小さい。
（５）部品組付時のバラツキが小さく、ギャザー１７の均一性が図れる。
【００２９】
なお、以上の実施の形態例においては、本革によるギャザー付き表皮としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、人工皮革や繊維によるギャザー付き表皮であってもよい。
また、基材や柔軟材及び取付ベースと表層の材質等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【００３０】
【発明の効果】
以上のように、請求項１記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いため、ギャザーを簡易に入れることができるとともに、部品組付も早く行うことができ、しかも、基材と表皮との間に柔軟材を挿入するため、挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーを得ることができる。
【００３１】
請求項２記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、請求項１記載の発明により得られる効果に加えて、柔軟材を板状の取付ベース上に貼り付けたため、この取付ベースにより車体側への取り付けを行うことができるといった利点が得られる。
【００３２】
請求項３記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、請求項１または２記載の発明により得られる効果に加えて、柔軟材表面に表皮を滑りやすくする層を形成したため、表皮を柔軟材に対し滑りやすいものにして、安定したギャザーを維持することができるといった利点が得られる。
【００３３】
また、請求項４記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法によれば、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いため、ギャザーを簡易に入れることができるとともに、部品組付も早く行うことができ、しかも、基材と表皮とにより形成した袋状内に柔軟材を挿入するため、袋状内に挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザー得ることができる。
【００３４】
請求項５記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法によれば、請求項４記載の発明により得られる効果に加えて、予め基材に折り目を形成したため、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を折り目に沿って裏面側へ容易に折り返すことができるといった利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を適用した車両用内装部品の一例としてのドアライニングパッドの部品を示すもので、（ａ）は袋状物を表皮側から示した正面図、（ｂ）は袋状物を基材側から示した背面図である。
【図２】図１（ａ）の矢印Ａ−Ａ線に沿った断面図である。
【図３】図１の袋状物内に挿入する柔軟材を示した縦断面図である。
【図４】図１の袋状物内に図３の柔軟材を入れる状態を示した斜視図である。
【図５】ドアライニングパッドの完成状態を示した縦断面図である。
【図６】ドアライニングパッドのドアライニングへの取付例を示した概略正面図である。
【図７】図６の矢印Ｂ−Ｂ線に沿った断面図である。
【図８】従来のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の構成例を示した縦断面図である。
【図９】従来のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の構成例を示すもので、図８とは異なる構成例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
１０ 表皮
１１ 先細り前部
１２ 上縁部
１３ 下縁部
１４ 後縁部
１５ ギャザー縫い部
１６ 上縁折り返し部
１７ ギャザー
２０ 基材
２１ 先細り前部
２２ 上縁部
２３ 下縁部
２４ 後縁部
２５ 折り目
２６ 本縫い部
２７，２８ 穴部
２９ 下縁折り返し部
３０ 柔軟材
３１ 表層
３２ 取付ベース
３３ フック
３４ タッカー（またはステープル）
４０ ドアライニングパッド（車両用内装部品）
６０ ドアライニング
６１ スピーカ
６２ ドアポケット
６３ パッド取付凹部
６４ インナーシール
【発明の属する技術分野】
本発明は、本革等のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
車両のドアライニングにおいて、豪華な感じを与えるために本革等のギャザー縫いされた表皮を有するパッドを設けたものがある。
【０００３】
図８は従来のギャザー付き表皮を有するパッドの構成例を示したものである。即ち、このドアライニングパッド８０は、表皮８１のギャザー縫い８２が施された周縁部を、柔軟材であるウレタン８３が貼り付けられた一枚物のペーパーボード８４の周縁部に本縫い８５した後、これら表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を、樹脂製取付ベース８６の周縁部に対し、巻き込むようにして折り返し８７してから接着したものである。
【０００４】
また、図９は従来のギャザー付き表皮を有するパッドの異なる構成例を示したものである。即ち、このドアライニングパッド９０は、表皮９１のギャザー縫い９２が施された周縁部に、複数に分割された帯状のペーパーボード９３，９３を本縫い９４，９４した後、こうして表皮９１の帯状ペーパーボード９３，９３が本縫い９４，９４された周縁部を、ウレタン９５が貼り付けられた樹脂製取付ベース９６の周縁部に対し、巻き込むようにして折り返し９７してから接着したものである。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上のような従来のドアライニングパッドでは、次のような製造上の問題があった。
【０００６】
即ち、図８に示した従来のドアライニングパッド８０では、樹脂製取付ベース８６の周縁部に対し、表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を巻き込むようにして折り返し８７してから接着する際、デザイン上の理由から樹脂製取付ベース８６の周縁部は曲線部をなしているので、表皮８１及びペーパーボード８４の周縁部を樹脂製取付ベース８６の曲線状周縁部に巻き込むようにして折り返し８７するのが必ずしもうまく行かず、周縁部の形状が綺麗に出ないものとなっていた。
そして、樹脂製取付ベース８６の曲線状周縁部を挟んでのペーパーボード８４の折り曲げ時に皺が発生し、表皮８１に表れる縦ギャザーの形状が不安定になってしまう。
【０００７】
また、図９に示した従来のドアライニングパッド９０では、上下の帯状ペーパーボード９３，９３の位置が揃わないと、表皮９１に表れる縦ギャザーの形状が不安定になってしまうが、部品のバラツキや製造時の手作業により、上下の帯状ペーパーボード９３，９３の位置を正確に揃えるのは難しいものとなっていた。
【０００８】
そこで、本発明の目的は、ギャザーを簡易に入れられて部品組付が早く行え、安定したギャザーが得られるようにしたギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決すべく請求項１記載の発明は、周縁部をギャザー縫いされた表皮と、この表皮の周縁部が周縁部に本縫いされる板状の基材と、この基材と表皮との間に挿入される柔軟材と、を備えるギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記表皮の周縁部が前記基材の周縁部に対し、裏面側で本縫いした一部と対向する部分が表面側で本縫いされていて、前記基材の表面側に前記表皮を本縫いした周縁部分が裏面側に折り返して固着されている構成、を特徴としている。
【００１０】
ここで、車両用内装部品としては、ドアライニングパッドが代表的であるが、例えば、車体パネルに取り付けられるサイドライニングパッド等、他の内装部品であっても良い。
表皮としては、本革が代表的であるが、人工皮革でも繊維でも良い。
板状の基材としては、ペーパーボードが代表的であるが、薄い樹脂や比較的硬質の樹脂であっても良い。
柔軟材としては、ウレタン等の発泡樹脂が代表的であるが、他の素材を用いても良い。
【００１１】
以上のように、請求項１記載の発明によれば、ギャザー縫いした表皮の周縁部が、柔軟材を挿入する板状の基材の周縁部に対し、裏面側に本縫いした周縁一部と対向する部分で表面側に本縫いした周縁部分を裏面側に折り返して固着したギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であり、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いので、ギャザーが簡易に入れられるとともに、部品組付が早く行え、しかも、基材と表皮との間に柔軟材を挿入するので、挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーが得られる。
【００１２】
請求項２記載の発明は、請求項１記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記柔軟材は、車体側に固定するための板状の取付ベース上に貼り付けられている構成、を特徴としている。
例えば、板状の取付ベースとしては、ポリプロピレンが代表的であるが、他の硬質の樹脂であっても良い。
【００１３】
このように、請求項２記載の発明によれば、請求項１記載の柔軟材が、車体側固定用の板状の取付ベース上に貼り付けられているので、この取付ベースを利用して車体側への取り付けが行える。
【００１４】
請求項３記載の発明は、請求項１または２記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品であって、前記柔軟材の表面には、前記表皮を滑りやすくする層が形成されている構成、を特徴としている。
例えば、滑りやすくする層としては、不織布やナイロン布帛等によるスパンボンドが挙げられるが、他の素材によるものやコーティングによる層であっても良い。
【００１５】
このように、請求項３記載の発明によれば、請求項１または２記載の柔軟材の表面に、表皮を滑りやすくする層が形成されているので、表皮が柔軟材に対し滑りやすくなって、安定したギャザーに維持できる。
【００１６】
また、請求項４記載の発明は、ギャザー付き表皮を有する車両用内装部品において、表皮の周縁部をギャザー縫いする第１工程、前記表皮の周縁部を板状の基材の周縁部に対し、一部を裏面側に本縫いしてその一部と対向する部分を表面側に本縫いすることにより、前記表皮と前記基材を袋状に形成する第２工程、前記袋状内に柔軟材を挿入する第３工程、前記基材の表面側に前記表皮が本縫いされた周縁部分を裏面側に折り返して固着する第４工程からなる製造方法、を特徴としている。
ここで、ギャザー縫いや本縫いは、ミシンにより行われる。
例えば、固着は、タッカー止めやステープル止めにより行うのが代表的であるが、接着により行っても良い。
【００１７】
このように、請求項４記載の発明によれば、ギャザー縫いした表皮の周縁部を、板状の基材の周縁部に対し、裏面側に本縫いした一部と対向する部分を表面側に本縫いして、表皮と基材を袋状に形成しておき、その袋状内に、柔軟材を挿入してから、基材の表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を裏面側に折り返して固着する方法であり、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いので、ギャザーが簡易に入れられるとともに、部品組付が早く行え、しかも、基材と表皮とにより形成した袋状内に柔軟材を挿入するので、袋状内挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーが得られる。
【００１８】
請求項５記載の発明は、請求項４記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法であって、前記基材には、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分の裏面側への折り返しを容易とする折り目を予め形成しておくこと、を特徴としている。
【００１９】
このように、請求項５記載の発明によれば、請求項４記載の基材には、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分の裏面側への折り返しを容易とする折り目を予め形成してあるので、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を折り目に沿って裏面側へ容易に折り返せる。
【００２０】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品とその製造方法の実施の形態例を図１から図７に基づいて説明する。
先ず、図１は本発明を適用した車両用内装部品の一例としてのドアライニングパッドの部品を示すもので、図１（ａ）は袋状物を表皮側から示した正面図、図１（ｂ）は袋状物を基材側から示した背面図であり、図２は図１（ａ）の矢印Ａ−Ａ線に沿った断面図である。
これらの図１及び図２において、１０は表皮（本革）、１１は先細り前部、１２は上縁部、１３は下縁部、１４は後縁部、１５はギャザー縫い部、１６は上縁折り返し部、１７はギャザー、２０はペーパーボード（基材）、２１は先細り前部、２２は上縁部、２３は下縁部、２４は後縁部、２５は折り目、２６は本縫い部、２７，２８は穴部である。
【００２１】
この実施の形態例においては、図示のように、本革による表皮１０は、先細り前部１１から後方へ連続する上縁部１２及び下縁部１３が後縁部１４で連続している。
即ち、表皮１０は、先端に突出する小突片１１ａを備える先細り前部１１上から後方へ円弧状に連続する上縁部１２を有するとともに、先細り前部１１下から後方へ第１斜め縁部１３ａ及び一段下がった第２斜め縁部１３ｂを経てさらに一段下がって直線状に連続する下縁部１３を有して、これら上縁部１２及び下縁部１３に連続する後縁部１４を有する形状のものである。
そして、上縁部１２に沿ってギャザー縫い（ギャザー縫い部１５参照）が施されるとともに、第１斜め縁部１３ａ及び第２斜め縁部１３ｂを除いた直線状の下縁部１３に沿ってギャザー縫い（ギャザー縫い部１５参照）が施されている。
【００２２】
また、板状の基材であるペーパーボード２０は、先細り前部２１上から後方へ円弧状に連続する上縁部２２を有するとともに、先細り前部２１下から後方へ斜め縁部２３ｂを経て一段下がって直線状に連続する下縁部２３を有して、これら上縁部２２及び下縁部２３に連続する後縁部２４を有する形状のものである。
そして、斜め縁部２３ｂ及び直線状の下縁部２３の上方に沿って円弧状をなす折り目２５が形成されている。
【００２３】
このようなペーパーボード２０に対し表皮１０は、ペーパーボード上縁部２２の裏面側に表皮上縁部１２が本縫い（本縫い部２６参照）されてから、上方からペーパーボード２０表面側に折り返して（上縁折り返し部１６参照）、ペーパーボード下縁部２３の表面側に表皮下縁部１３が本縫い（本縫い部２６参照）されている。
ここで、ペーパーボード斜め縁部２３ｂと表皮第２斜め縁部１３ｂも本縫い（本縫い部２６参照）されている。
以上の表皮１０及びペーパーボード２０により、後縁部１４，２４が開口部となった袋状物が構成される。そして、表皮１０には上下方向に沿った多数のギャザー１７，１７，１７，…が形成される。
なお、ペーパーボード２０には、多数の穴部２７，２７，…，２８，２８が形成されている。
【００２４】
図３は以上のような袋状物内に挿入する柔軟材３０を示したもので、この柔軟材３０は、例えば、厚さが８ｍｍ程度のウレタンであり、このような柔軟材３０の表面には、不織布またはナイロン布帛による表層としてのスパンボンド３１が接着等により形成されている。
また、柔軟材３０は、例えば、ポリプロピレン等の硬質樹脂製で板状の取付ベース３２が接着等により一体化されている。この取付ベース３２の裏面には、図示しないフックが一体に多数備えられている。
このようなスパンボンド３１及び取付ベース３２を表裏に備える柔軟材３０は、前述した表皮１０及びペーパーボード２０による袋状ものの内部に充填される形状をなしている。
【００２５】
以上のようなスパンボンド３１及び取付ベース３２を表裏に備える柔軟材３０を、図４に示すように、表皮１０及びペーパーボード２０による袋状物の内部に、後縁部１４，２４による開口部から挿入する。この時、ペーパーボード２０の各穴部２７，２７，…，２８，２８には、取付ベース３２裏面のフック（図７のフック３３参照）がそれぞれ突出している。
そして、表皮１０及びペーパーボード２０の下縁部１３，２３を、図５に示すように、ペーパーボード２０に設けた折り目２５に沿って裏面側に折り返して（下縁折り返し部２９参照）から、タッカー（またはステープル）３４により止める。
【００２６】
なお、表皮１０の後縁部１４もペーパーボード２０の後縁部２４の裏面側に折り返してタッカー（またはステープル）により止める。
また、表皮１０の先細り前部１１の小突片１１ａもペーパーボード２０の先細り前部２１の裏面側に折り返してタッカー（またはステープル）により止める。
こうしてドアライニングパッド４０を製造する。
【００２７】
以上のドアライニングパッド４０は、図６及び図７に示すように、ドアライニング６０に組み付けられる。
即ち、ドアライニング６０は、下部にスピーカ６１及びドアポケット６２を有するもので、そのドアポケット６２の上方に沿ってパッド取付凹部６３が形成されている。なお、ドアライニング６０の上縁部に沿ってインナーシール６４が設けられている。
このようなドアライニング６０のパッド取付凹部６３にドアライニングパッド４０を合わせて、ドアライニングパッド４０の裏面側に突出するフック３３，３３，…を、パッド取付凹部６３に形成したスライド穴部から突出させる。
そして、ドアライニングパッド４０を前後何れかにスライドさせて、フック３３，３３，…をドアライニング６０にタッピングビス止めまたは溶着カシメ止めにより固定する。
【００２８】
以上の通り、この実施の形態例のドアライニングパッド４０によれば、特に、表皮１０及びペーパーボード２０による袋状物の内部に柔軟材３０を挿入するので、以下に列挙する効果が得られる。
（１）表皮１０にギャザー１７を簡易的に入れることができる。
（２）表皮１０、ペーパーボード２０及び柔軟材３０からなる部品組付が早い。
（３）柔軟材３０により表皮１０に働くテンションが一定になる。
（４）ギャザー１０のバラツキが小さい。
（５）部品組付時のバラツキが小さく、ギャザー１７の均一性が図れる。
【００２９】
なお、以上の実施の形態例においては、本革によるギャザー付き表皮としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、人工皮革や繊維によるギャザー付き表皮であってもよい。
また、基材や柔軟材及び取付ベースと表層の材質等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【００３０】
【発明の効果】
以上のように、請求項１記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いため、ギャザーを簡易に入れることができるとともに、部品組付も早く行うことができ、しかも、基材と表皮との間に柔軟材を挿入するため、挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザーを得ることができる。
【００３１】
請求項２記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、請求項１記載の発明により得られる効果に加えて、柔軟材を板状の取付ベース上に貼り付けたため、この取付ベースにより車体側への取り付けを行うことができるといった利点が得られる。
【００３２】
請求項３記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品によれば、請求項１または２記載の発明により得られる効果に加えて、柔軟材表面に表皮を滑りやすくする層を形成したため、表皮を柔軟材に対し滑りやすいものにして、安定したギャザーを維持することができるといった利点が得られる。
【００３３】
また、請求項４記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法によれば、表皮の基材裏面側に本縫いした周縁一部と対向する周縁部分を基材表面側に本縫いしてから基材裏面側に折り返して固着すれば良いため、ギャザーを簡易に入れることができるとともに、部品組付も早く行うことができ、しかも、基材と表皮とにより形成した袋状内に柔軟材を挿入するため、袋状内に挿入した柔軟材により表皮に働くテンションが一定となって、安定したギャザー得ることができる。
【００３４】
請求項５記載の発明に係るギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法によれば、請求項４記載の発明により得られる効果に加えて、予め基材に折り目を形成したため、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分を折り目に沿って裏面側へ容易に折り返すことができるといった利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明を適用した車両用内装部品の一例としてのドアライニングパッドの部品を示すもので、（ａ）は袋状物を表皮側から示した正面図、（ｂ）は袋状物を基材側から示した背面図である。
【図２】図１（ａ）の矢印Ａ−Ａ線に沿った断面図である。
【図３】図１の袋状物内に挿入する柔軟材を示した縦断面図である。
【図４】図１の袋状物内に図３の柔軟材を入れる状態を示した斜視図である。
【図５】ドアライニングパッドの完成状態を示した縦断面図である。
【図６】ドアライニングパッドのドアライニングへの取付例を示した概略正面図である。
【図７】図６の矢印Ｂ−Ｂ線に沿った断面図である。
【図８】従来のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の構成例を示した縦断面図である。
【図９】従来のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の構成例を示すもので、図８とは異なる構成例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
１０ 表皮
１１ 先細り前部
１２ 上縁部
１３ 下縁部
１４ 後縁部
１５ ギャザー縫い部
１６ 上縁折り返し部
１７ ギャザー
２０ 基材
２１ 先細り前部
２２ 上縁部
２３ 下縁部
２４ 後縁部
２５ 折り目
２６ 本縫い部
２７，２８ 穴部
２９ 下縁折り返し部
３０ 柔軟材
３１ 表層
３２ 取付ベース
３３ フック
３４ タッカー（またはステープル）
４０ ドアライニングパッド（車両用内装部品）
６０ ドアライニング
６１ スピーカ
６２ ドアポケット
６３ パッド取付凹部
６４ インナーシール
Claims (5)
- 周縁部をギャザー縫いされた表皮と、この表皮の周縁部が周縁部に本縫いされる板状の基材と、この基材と表皮との間に挿入される柔軟材と、を備え、前記表皮の周縁部が前記基材の周縁部に対し、裏面側で本縫いした一部と対向する部分が表面側で本縫いされていて、前記基材の表面側に前記表皮を本縫いした周縁部分が裏面側に折り返して固着されていること、を特徴とするギャザー付き表皮を有する車両用内装部品。
- 前記柔軟材は、車体側に固定するための板状の取付ベース上に貼り付けられていること、を特徴とする請求項１記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品。
- 前記柔軟材の表面には、前記表皮を滑りやすくする層が形成されていること、を特徴とする請求項１または２記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品。
- 表皮の周縁部をギャザー縫いする第１工程、前記表皮の周縁部を板状の基材の周縁部に対し、一部を裏面側に本縫いしてその一部と対向する部分を表面側に本縫いすることにより、前記表皮と前記基材を袋状に形成する第２工程、前記袋状内に柔軟材を挿入する第３工程、前記基材の表面側に前記表皮が本縫いされた周縁部分を裏面側に折り返して固着する第４工程からなること、を特徴とするギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法。
- 前記基材には、表面側に表皮が本縫いされた周縁部分の裏面側への折り返しを容易とする折り目を予め形成しておくこと、を特徴とする請求項４記載のギャザー付き表皮を有する車両用内装部品の製造方法。
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