JP4034948B2 - ブーツ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機密性,液密性の確保や防塵を目的として使用される蛇腹状のブーツ構造に関し、特に自動車のドライブシャフトの等速ジョイント部においてその軸直角方向から包み込むようにして装着できるようにしたブーツの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来のブーツ構造として、例えば特開平9−137864号公報に記載されているものがある。この従来の構造では、図3に示すように、分割面51をもって分割されたブーツ50一方側に幅広部分52を有する複数の周方向突起53を形成し、この周方向突起53を他方側に形成した切欠54と係合させるとともに、その切欠54側に形成した薄肉帯状部55を周方向突起53に重ね合わせた上で、同薄肉帯状部55に形成したフック56と貫通孔57とをスナップ係合させたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の構造では、上記結合部が分割面51をはさんで左右非対称形状となっているため、剛性もしくは強度的なバランスが悪く、特に周方向突起53が形成されている部分とそうでない部分との剛性の差が大きく、回転時において分割面に応力集中が生じやすい。また、周方向突起53に幅広部分52があるために、より小さなピッチで多数の周方向突起53を並設することができず、その結果として周方向突起53が形成されていない部分の結合強度が相対的に小さくなり、実用上好ましくない。
【0004】
その上、周方向突起53のある箇所とそうでない箇所との位置の設定次第で組み付け後の全体の剛性が大きく変わってしまい、ブーツ全体の撓みやすさに大きく影響することから、上記周方向突起53の位置の設定が難しい。
【0005】
また、貫通孔57と係合することになるフック56の先端がその全周にわたって膨らんだ形状となっているため、挿入時の抵抗が大きく結合作業性が悪い。
【0006】
本発明は以上のような課題に着目してなされたもので、とりわけ結合強度および結合作業性に優れたブーツの構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、可撓性材料により蛇腹状に形成されたブーツ本体を軸心方向に延びる単一の分割面をもって分割するとともに、その分割部において双方の分割端末部同士を重ね継手方式にて結合可能としたブーツの構造であって、上記重ね継手の断面形状がブーツ本体の肉厚の範囲内で略クランク状をなしながら且つ千鳥状配置のものとなるように、双方の分割端末部に内側と外側との相対位置関係が交互配置となって且つ周方向に突出する係合片を軸心方向に沿って交互に形成し、上記各係合片には相手側の係止穴に係合するとともに先端に抜け止め用の爪部が局部的に形成されたフック部を形成したことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の記載を前提として、内側となる係合片と外側となる係合片とでは、そのフック部に形成された爪部の向きが周方向で互いに逆向きとなっていることを特徴としている。
【0009】
これら請求項1または2の記載において、請求項3に記載のように、上記各係合片の厚みはブーツ本体の肉厚よりも小さく設定されているとともに、相手側となる分割端末部にはその係合片を受容する凹部が形成されていて、結合状態では各係合片の内外周面がブーツ本体の内外周面と面一状態となるように設定されていることが望ましい。
【0010】
したがって、これらの請求項1〜3に記載の発明では、周方向に突出する係合片が双方の分割端末部に交互に位置していて、それらの係合片が互いに縫合し合うようにして噛み合いながら相手側に係合することになる。そのため、どの部位にも必ず係合片が存在することとなって、結合部となるべき重ね継手が左右でほぼ対称形状のものとなる。
【0011】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、どの部位をとっても必ず係合片が存在する結合構造となっているため、どの部位でもその剛性が高く且つ一定したものとなり、剛性のばらつきによる応力集中等を回避できることから、結合強度の向上と耐久性の向上を図ることができる。また、上記係合片による重ね継手構造に加えて、各係合片に形成した爪部付きのフック部を相手側の係止穴に係合させるようにしたことから、上記結合強度の一層の向上とともに重ね継手部での外れを未然に防止できる。その上、フック部の爪部は全周ではなく局部的に形成されているものであるから、相手側となる係止穴への挿入し易さと抜けにくさとを両立できる利点がある。
【0012】
その上、断面がクランク状をなす重ね継手構造となっているために、例えば接着剤を併用する場合の接触面積を大きく確保することができるだけでなく、フック部と係止穴との係合のために接着剤併用時の仮保持がきわめて容易で、しかもいずれの方向の位置ずれをも確実に阻止できるため、接着剤の併用による結合強度が一段と向上する。
【0013】
特に、請求項2に記載の発明のように、内側となる係合片と外側となる係合片とを比べた場合に、そのフック部に形成された爪部の向きが周方向で互いに逆向きとなっていると、相手側となる係止穴への挿入し易さと抜けにくさとを両立できるのに加えて、その結合保持力が一段と向上する利点がある。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、重ね継手となる係合片と相手側との係合をいわゆるブーツ本体の肉厚内に納まるようないわゆる凹凸係合として、重ね継手の内外周面がブーツ本体の内外周面と面一状態となるようにしたため、重ね継手部が局部的に厚肉になることがなく、その部分で剛性が過剰に高くなるのを未然に防止できるほか、接着剤を併用する場合の接着面積を一段と大きく確保できる利点がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1,2は本発明の好ましい実施の形態として先に述べた自動車の等速ジョイント用のブーツ構造の一例を示している。
【0016】
図1に示すように、ブーツ1の主体となるブーツ本体2は、ゴムあるいは樹脂等の可撓性材料をもってその小径開放端2aから大径開放端2bに向かって漸次その直径が大きくなる蛇腹状のものとして形成されていて、その軸心方向に延びる直線状もしくは単純平面状の単一の分割面3をもっていわゆる口開きさせることができるように分割されている。そして、図2に示すように分割面3をはさんでその両側を分割端末部4,5とすれば、その分割端末部4,5同士は分割面3をもって相互に突き合わされることになるのであるが、本実施の形態では、上記分割面3による突き合わせと併せて、いわゆる重ね継手のかたちで双方の分割端末部4,5同士を結合できるように形成してある。
【0017】
より詳しくは、図2に示すように、分割面3をはさんでその両側に位置することになる双方の分割端末部4,5には、分割面3よりも互いに周方向に突出する矩形状の係合片6,6…または7,7…を互い違いもしくは交互に形成してあるとともに、同じく各係合片6,6…または7,7…が重なり合う部分にはその係合片6,6…または7,7…を受容する凹溝8,8…または9,9…を互い違いもしくは交互に形成してある。例えば、一方の分割端末部4では係合片6,6…と凹溝8,8…とが長手方向(ブーツ本体2の軸心方向)に沿って交互に形成されているものであるが、これらの係合片6,6…と凹溝8,8…との相対位置関係は、他方の分割端末部5を裏返したときにその他方の分割端末部5における係合片7,7…と凹溝9,9…との相対位置関係と同じになっていて、一方の分割端末部4側の係合片6,6…は常に内側に、他方の分割端末部5の係合片7,7…は常に外側に位置するように設定されている。
【0018】
そして、各凹溝8,8…まおよび9,9…には厚み方向に貫通するようにして矩形状の係止穴10または11が形成されている一方、各係合片6,6…および7,7…には上記係止穴11または10に係合可能なフック部12または13が突出形成されていて、上記のように常に内側となる係合片6,6…側のフック部12が上向きに形成されているのに対して、常に外側となる係合片7,7…側のフック部13は下向きに形成されている。これらのフック部12,13は、図2に示すようにその先端の一側面に抜け止め用の爪部12aまたは13aを周方向で互いに逆向きとなるように一体に形成してあり、これらの爪部12aまたは13aは相手側となる係止穴11または10の裏面側に係止されるようになっている。
【0019】
すなわち、本実施の形態では、それぞれの係合片6,6…または7,7…と相手側となる凹溝8,8…または9,9…との嵌合もしくは重ね合わせをもって個々に重ね継手14または15を形成するようになっていて、その重ね継手14,15の断面形状が図2(B)に示すようにブーツ本体2の肉厚の範囲内で略クランク状をなし、しかも各係合片6,6…または7,7…ごとの重ね継手14または15が分割面3をはさんでいわゆる千鳥状の配置となるように、分割面3をはさんで双方の分割端末部4,5に各係合片6,6…または7,7…を交互に且つその内側と外側との相対位置関係が交互になるように形成してある。
【0020】
ここで、上記のように重ね継手14,15の断面形状がブーツ本体2の肉厚の範囲内で略クランク状をなすように形成したことにより、双方の分割端末部4,5の係合片6,6…または7,7…を重ね継手14または15の形態をもって結合したときには、その重ね継手14,15の内外周面はブーツ本体2の内外周面と面一状態となる。
【0021】
また、上記ブーツ本体2はいわゆる蛇腹状のものであるために、係合片6,6…または7,7…の位置の設定にあたっては、その蛇腹の山と谷の関係を考慮することが望ましく、例えば少なくとも蛇腹の山に相当する位置と谷に相当する位置にそれぞれ係合片6または7を設定するとともに、その山に相当する位置と谷に相当する位置との間のいわゆる斜めの壁部に最低でも一つもしくは二つ程度の係合片6または7が位置するように設定する。
【0022】
したがって、本実施の形態によれば、分割面3をもってブーツ1を一旦口開きさせた上で等速ジョイントを包み込むようしてその等速ジョイントの外側に装着する。そして、双方の分割端末部4,5を分割面3にて突き合わせながら各係合片6,6…または7,7…を重ね継手14または15の形態とするべく相手側となる凹溝8,8…または9,9…に重ね合わせるようにしていわゆる凹凸嵌合させ、さらにそれぞれの係合片6,6…または7,7…に形成されているフック部12または13と相手側の係止穴11または10に係合させる。その結果、双方の分割端末部4,5同士がそれぞれの重ね継手14または15をもってあたかも縫合させるかの如きかたちで結合される。この場合、接着剤による接着固定を併用する場合には各接合面に予め接着剤を塗布しておくものとする。
【0023】
そして、上記のように各係合片6,6…または7,7…が相手側の凹溝8,8…または9,9…と凹凸嵌合して重ね継手14または15となり、しかも各係合片6,6…または7,7…のフック部12または13が相手側の係止穴11または10とそれぞれ係合することで、円周方向をはじめ軸心方向ならびに肉厚方向のいずれの方向に対しても双方の分割端末部4,5同士が確実に位置決めされて機械的に結合された状態となり、接着剤の乾燥を待つ間もその状態を確実に自己保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態として自動車の等速ジョイント用ブーツの構造を示す構成説明図。
【図2】(A)は図1の要部の拡大斜視図、(B)は同図(A)のa−a線およびb−b線に沿う拡大断面図。
【図3】従来のブーツの構造を示す図で、(A)はその全体の構成説明図、(B)は同図(A)のB−B線に沿う拡大断面図。
【符号の説明】
1…ブーツ
2…ブーツ本体
3…分割面
4,5…分割端末部
6,7…係合片
8,9…凹溝(凹部)
10,11…係止穴
12,13…フック部
12a,13a…爪部
14,15…重ね継手
Claims (3)
- 可撓性材料により蛇腹状に形成されたブーツ本体を軸心方向に延びる単一の分割面をもって分割するとともに、その分割部において双方の分割端末部同士を重ね継手方式にて結合可能としたブーツの構造であって、
上記重ね継手の断面形状がブーツ本体の肉厚の範囲内で略クランク状をなしながら且つ千鳥状配置のものとなるように、双方の分割端末部に内側と外側との相対位置関係が交互配置となって且つ周方向に突出する係合片を軸心方向に沿って交互に形成し、
上記各係合片には相手側の係止穴に係合するとともに先端に抜け止め用の爪部が局部的に形成されたフック部を形成したことを特徴とするブーツ。 - 内側となる係合片と外側となる係合片とでは、そのフック部に形成された爪部の向きが周方向で互いに逆向きとなっていることを特徴とする請求項1に記載のブーツ。
- 上記各係合片の厚みはブーツ本体の肉厚よりも小さく設定されているとともに、相手側となる分割端末部にはその係合片を受容する凹部が形成されていて、結合状態では各係合片の内外周面がブーツ本体の内外周面と面一状態となるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のブーツ。
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