JP4034846B2 - 結晶性粉末糖質とその製造方法並びに用途 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は結晶性粉末糖質とその製造方法並びに用途に関し、詳細には、トレハロースを、トレハロース存在下で晶出しうる他の糖質とともに晶出させた結晶性粉末糖質とその製造方法、並びに該結晶性粉末糖質を含有せしめた飲食物、化粧品、医薬品等の各種組成物への用途に関する。
【０００２】
【従来の技術】
トレハロースは、特開平７−２１３２８３号公報に開示されるように、澱粉を原料として製造されるグルコース重合度が３以上の還元性澱粉部分分解物に、その末端にトレハロース構造を生成する非還元性糖質生成酵素と該トレハロース構造を遊離させるトレハロース遊離酵素とを作用させることにより、澱粉から直接製造することができる。また、マルトースを原料としてトレハロースを製造する方法も知られており、例えば、特開平７−１７０９７７号公報に開示されるマルトース・トレハロース変換酵素を利用する方法や特開昭５８−２１６６９５号公報や特開平８−１３１１８２号公報などに開示されるマルトース・ホスホリラーゼとトレハロース・ホスホリラーゼとを利用する方法が知られている。これらの方法で製造されるトレハロースは、その生成率の点で完璧とは行かず、原料の澱粉及び／又はマルトースに対して、無水物換算で、せいぜい５０乃至９０ｗ／ｗ％（以下、本明細書においては、特にことわらない限り、ｗ／ｗ％を％と略記する）程度で、他に夾雑する糖質として、通常、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース等を含有する。
【０００３】
一方、特開平７−２１３２８３号公報、特開平７−１７０９７７号公報等に開示されるように、トレハロースは比較的容易に晶出するものの、共存する他の糖質については、一般に、トレハロースが共存する他の糖質の晶出防止性を有していることが知られていることから、その晶出の困難なことが予測されていた。従って、トレハロースを製造するに際しては、通常、澱粉及び／又はマルトースから生成したトレハロース高含有溶液を脱色、脱塩して精製した後、濃縮し、これにトレハロースの種晶を加えて晶出し、トレハロース含水結晶とともに夾雑糖質を含有する含蜜粉末糖質を採取するか、又は分蜜して夾雑糖質を除去し、高純度のトレハロース含水結晶を採取する。しかしながら、トレハロース含水結晶とともに夾雑糖質を含有する含蜜粉末糖質は、吸湿性が強く、固結し易く、流動性を失い易い重大な欠点を有していることが判明した。
【０００４】
又、夾雑糖質を除去する分蜜工程を採用する場合には、吸湿性の低い、きわめて安定で取扱い易い高品質のトレハロース含水結晶が製造できるものの、同時に多量の夾雑糖質を含有する蜜が副生し、この蜜の有効活用が望まれる。これに関係して、本出願人は、先にヨーロッパ特許出願公開第７３９９８６号公報で開示したように、トレハロースの晶出を抑制したトレハロース高含有シラップを確立しており、この蜜は、その原料として有利に利用できる。しかしながら、シラップ原料としての利用は、あくまで便法であり、本質的には、トレハロース含水結晶とともに夾雑糖質を含有する含蜜粉末糖質の物性を根本的に改善し、高品質の粉末糖質を確立することが強く望まれる。同様に、トレハロースとともに多量の夾雑糖質を含有している蜜を安定な粉末糖質に仕上げることも強く望まれる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、澱粉及び／又はマルトースを原料として生成する、トレハロースとともにグルコース、マルトース、マルトトリオース及びマルトテトラオース等夾雑糖質を含有する溶液から得られる、吸湿性の低い安定な結晶性粉末糖質とその結晶性粉末糖質の製造方法並びに用途を提供することを課題とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、粉末糖質の晶出性に着目し、とりわけ、トレハロース存在下での夾雑糖質の晶出性について鋭意研究を続けてきた。その結果、意外にも、トレハロース存在下においても、夾雑糖質のうちのある種の糖質は、トレハロースとともに晶出しうることを見いだし、更にこのように共に晶出させ粉末化した結晶性粉末糖質は、吸湿性が低く安定な粉末であることを見いだし、加えて、その製造方法並びに各種組成物への用途を確立して本発明を完成した。本発明の結晶性粉末糖質は、トレハロースをトレハロース存在下で晶出しうる他の糖質とともに晶出させ、トレハロース結晶と他の糖質の結晶とを併せ含有する結晶性粉末糖質である。
【０００７】
【発明の実施の形態】
トレハロース存在下で晶出しうる他の糖質としては、トレハロースを製造する過程で原料の澱粉及び／又はマルトースに由来する夾雑糖質であるか、又は、更にこれを水素添加するなど還元処理して生成する糖質が適しているが、特にそれらに限られるものではなく、別途調製された糖質を用いてもよいことは勿論である。具体的には、グルコース、マルトース、ソルビトール、マルチトール等が好適であり、とりわけ、グルコース、マルトースの場合には、含水結晶で晶出させるのが、また、ソルビトール、マルチトールの場合には、無水結晶で晶出させるのが好適である。本発明の結晶性粉末糖質に含まれるトレハロースとトレハロース存在下で晶出しうる他の糖質との割合は、両者が共に晶出しうる割合であればよく、望ましくは、無水物換算で９：１乃至１：９の範囲、更に望ましくは、８：２乃至２：８の範囲が好適である。また、本発明の結晶性粉末糖質は、その結晶化度が、粉末Ｘ線回折法により測定して、約４０％以上のものが、吸湿性低く、安定で、取扱い容易であることが判明した。
【０００８】
本発明の粉末糖質を製造するための糖質含有溶液は次のような代表例から適宜選択できる。（１）澱粉を原料にする場合には、例えば、特開平７−２１３２８３号公報に開示されるように、澱粉にαーアミラーゼを作用させ得られる液化澱粉に澱粉枝切酵素、非還元性糖質生成酵素及びトレハロース遊離酵素を作用させて、トレハロースとともにグルコース、マルトース等の夾雑糖質を含有する溶液を製造する。（２）マルトースを原料にする場合には、例えば、特開平７−１７０９７７号公報に開示されるように、マルトースにマルトース・トレハロース変換酵素を作用させるか、又は、特開昭５８−２１６６９５号公報や特開平８−１３１１８２号公報等に開示されるように、マルトースにマルトース・ホスホリラーゼとトレハロース・ホスホリラーゼとを作用させてトレハロースとともにグルコース、マルトース等夾雑糖質を含有する溶液を製造する。（３）還元処理を採用する場合には、前記（１）又は（２）の製造方法で得られる糖質含有溶液を、例えば、特開平８−７３４８２号公報に開示されるように高圧水素添加方法により還元性を示す糖質を糖アルコールに変換せしめて、トレハロースとともにソルビトール、マルチトール等夾雑糖質を含有する溶液を製造する。このようにして製造される糖液のトレハロース含量は、通常、無水物換算で約１０乃至９０％の範囲にある。
【０００９】
本発明は、トレハロースとともにトレハロース存在下で晶出しうる他の糖質を含有する溶液からトレハロースを晶出させるとともに他の糖質を晶出含有せしめ粉末化して、実質的に難吸湿性の粉末糖質が製造できればよく、望ましくは、粉末Ｘ線回折法で結晶化度４０％以上、更に望ましくは５０％以上を示す粉末が好適である。従って、本発明において粉末糖質を製造するには、例えば、マスキットを噴霧乾燥する方法、高濃度溶液を助晶しながら流動造粒する方法、マスキットをブロック状に晶出固化させたブロックを粉砕する方法などの粉末化方法を採用して、できるだけ結晶化度を高めた粉末糖質を採取するのが望ましい。噴霧乾燥方法の場合には、通常、濃度が６５乃至８０％、トレハロース及びトレハロース存在下で晶出しうる糖質の晶出率５乃至３０％程度のマスキットを高圧ポンプでノズルから噴霧し、結晶含有粉末糖質が融解しない温度、例えば、６０乃至９０℃の熱風で乾燥し、次いで３０乃至６０℃の温風で約１乃至２４時間、晶出、熟成して、結晶化度を４０％以上にすれば、実質的に難吸湿性の粉末糖質が得られる。また、ブロック粉砕方法は、通常、濃度８０乃至９５％、トレハロース及びトレハロース存在下で晶出しうる糖の晶出率１０乃至３０％程度のマスキットをバットにとり約１乃至２０日間静置し、全体をブロック状に晶出固化させ、これを粉砕又は切削等の方法により粉末化し、乾燥して結晶化度約４０％以上にすれば、実質的に難吸湿性の粉末糖質が得られる。
【００１０】
また、トレハロースとともにトレハロース存在下で晶出しうる糖質を含有する溶液を、常法に従い、濃度９０％以上に加熱濃縮して溶融状態とした過飽和溶液に、種晶として、無水結晶及び／又は含水結晶を融点以下の温度で混捏し、これを微粉、粗粉、顆粒等適宜の形状に粉末化し、無水結晶及び／又は含水結晶を晶出させ、熟成して結晶化度約４０％以上にして、実質的に難吸湿性の粉末糖質を得ることも有利に実施できる。このように、本発明の結晶性粉末糖質の製造方法においては、晶出及び粉末化は、いずれが先に行われても良く、また並行して行われても良い。更には、晶出及び粉末化の工程は、必要に応じて多段階で行っても良く、いずれにしても結果として本発明の結晶性粉末糖質が得られれば良い。
【００１１】
このようにして得られる本発明の結晶性粉末糖質は、トレハロース結晶と他の糖質の結晶とを併せ含有しており、その結晶化度の程度によって多少変動するものの、結晶化度が４０％以上であれば、実質的に難吸湿性であって、固結せず、流動性良好であるので、取扱い容易であり、その包装、輸送、貯蔵等の管理に要する物的、人的経費が大幅に削減できる。
【００１２】
また、本発明の結晶性粉末糖質は、実質的に難吸湿性の粉末であるので、従来きわめて困難とされていた粉末混合甘味料、固形混合甘味料、チョコレート、チューインガム、即席ジュース、即席スープ、顆粒、錠剤等の製造がきわめて容易に、有利に実施できる。
【００１３】
更に、本発明の結晶性粉末糖質は、従来、水溶液で使用されていた場合と同様に、糖質の持つ性質、例えば、甘味性、ボディー付与性、照り付与性、保湿性、他糖の晶出防止、粘性等の性質を兼備しているので、広く、飲食物、化粧品、医薬品等に有利に利用できる。
【００１４】
本発明の結晶性粉末糖質を甘味料として利用する場合には、例えば、粉飴、グルコース、マルトース、異性化糖、シュクロース、蜂蜜、メープルシュガー、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α―グリコシルステビオシド、ラカンカ甘味物、グリチルリチン、Ｌ−アスパルチル−Ｌ−フェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニン等のような他の甘味料の一種又は二種以上の適量と混合して使用してもよく、またデキストリン、澱粉、乳糖等のような増量剤と混合して使用することもできる。
【００１５】
また、本発明の結晶性粉末糖質は、そのままで、又は必要に応じて増量剤、賦形剤、結合剤等と混合して顆粒、球状、錠剤、棒状、板状、立方体等に成形して使用することも随意である。
【００１６】
本発明の結晶性粉末糖質の甘味は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味等の他の呈味を有する各種の物質とよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので上に述べた場合だけでなく、普通一般の飲食物の甘味付、呈味改良に、また品質改良等に有利に利用できる。
【００１７】
例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー等各種調味料への甘味料として、また、呈味改良剤、品質改良剤等として有利に利用できる。
【００１８】
また、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉等の各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンデー等の各種洋菓子、アイスクリーム、シャーベット等の氷菓子、果実のシロップ漬、氷蜜等のシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト等のペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓等の果実、野菜の加工食品類、パン類、麺類、米飯類、人造肉等の穀類加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬等の漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素等の漬物の素類、ハム、ソーセージ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷら等の魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、ふぐのみりん干し等の各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝等で製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻等の惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰め、缶詰類、合成酒、果実酒、洋酒、リキュール等の酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料等の清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス等のプレミックス粉類、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープ等即席飲食品等の各種飲食物への甘味料として、また、呈味改良剤、品質改良剤等として有利に利用できる。
【００１９】
また、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、魚等の飼育動物のために飼料、餌料等の嗜好性を向上させる目的で使用することもできる。その他、タバコ、練歯磨き、口紅、リップクリーム、内服薬、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香錠、うがい薬等各種固形状、ペースト状、液状の嗜好物、化粧品、医薬品等への呈味改良剤、矯味剤として、さらには品質改良剤等として有利に利用できる。
【００２０】
更に、本発明の結晶性粉末糖質に、例えばビタミン剤、抗生物質、乳酸菌等を混合して各種形状に成形、例えば顆粒成型機にかけて顆粒に、打錠機にかけて錠剤にし、各種用途に使用することも自由である。
【００２１】
以上述べたような飲食品、嗜好物、飼料、餌料、化粧品、医薬品等の各種組成物に本発明の結晶性粉末糖質を含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程で本発明の結晶性粉末糖質を０．１％以上、望ましくは０．５％以上含有せしめればよく、例えば、混和、混捏、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶出、固化等の公知の方法が適宜選ばれる。
【００２２】
以下、本発明を実験で詳細に説明する。
【００２３】
【実験１】
〈トレハロース存在下で晶出しうる糖質の探索及び該糖質の晶出による粉末糖質の物性に与える影響〉
澱粉及び／又はマルトースを原料として、トレハロースを製造する過程で夾雑しうる他の糖質をトレハロースとともに溶解共存させ、それらの糖質がトレハロース存在下でトレハロースとともに晶出しうるかどうかを調べ、加えて、該糖質の晶出による粉末糖質の吸湿性、固結性、流動性等の物性に与える影響を調べた。糖質は、いずれも試薬級市販品を用いた。トレハロース５０％水溶液にグルコース、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、マルトトリイトール及びマルトテトライトールから選ばれる糖質を、無水物換算で、トレハロースと等量加え、加熱溶解し、減圧濃縮して濃度約８０％にし、次いで、これをポリエチレン製バットにとり、相対湿度約５０％、２５℃の室内に２０日間放置後、粉末化して各種粉末糖質を得た。粉末糖質の結晶化度は、Ｘ線回折装置（理学電機株式会社販売、商品名ガイガーフレックスＲＡＤ−ＩＩＢ、ＣｕＫα線使用）を用いて、粉末Ｘ線回折図形に基づくＲｕｌａｎｄの方法（アクタ クリスタログラフィカ：Ａｃｔａ Ｃｒｙｓｔａｌｌｏｇｒａｐｈｉｃａ、第１４巻、第１１８０頁、１９６１年）により求めた。なお、粉末糖質の代表的粉末Ｘ線回折図形を図１乃至図６に示した。また、これら粉末糖質をアルミ製容器にとり、相対湿度９０％、温度２５℃の環境に４日間放置して、その吸湿性の程度（重量増加）、流動性の可否、固結の有無を観察した。なお、流動性については、アルミ製容器を傾斜させた際の粉末糖質の流動状態を観察し、良、可、否の３段階で判定した。そのうち、抵抗なく容易に流れ出すものを良とし、やや抵抗があるものの流動可能なものを可とし、固結して流動性を示さないものを否とした。これらの結果は表１にまとめた。
【００２４】
【表１】

【００２５】
表１の結果から明らかなように、グルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールは、意外にも、トレハロース存在下でトレハロースとともに晶出し、結晶化度が著しく高くなることが判明した。即ち、粉末Ｘ線回折図のうち、対照のトレハロース含水結晶のＸ線回折パターンを示す図１と比較して図２、図３、図５及び図６においては、トレハロース含水結晶のそれに加えて、それぞれ、グルコース含水結晶、マルトース含水結晶、ソルビトール無水結晶、マルチトール無水結晶のＸ線回折パターンが認められることから、これら糖質がトレハロース存在下でトレハロースとともに晶出していることは明らかである。また、このようにこれら糖質がトレハロース存在下でトレハロースとともに晶出した粉末糖質は、結晶化度が高く、また吸湿性が低く、固結せず、流動性のある安定な粉末糖質であることが判明した。なお、トレハロース存在下で晶出しなかった糖質は、イソマルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、イソマルチトール、マルトトリイトール及びマルトテトライトールで、これらの場合には、トレハロース部分のみが晶出することから糖質全体に対する結晶化度は低く、Ｘ線回折パターンがいずれも類似していたことから、これらの代表としてイソマルトースを用いた場合を図４で示した。
【００２６】
【実験２】
〈トレハロースと他の糖質とを含有する粉末糖質の物性に与える結晶化度の影響〉
トレハロースと他の糖質とを含有する粉末糖質の物性に与える結晶化度の影響を調べた。実験１の方法に準じて、トレハロースと他の糖質とを無水物換算で等量になるように、トレハロースとともに他の糖質としてグルコース及び／又はマルトースを含有させた濃度約８５％水溶液を調製し、これに種晶として、トレハロース含水結晶とともにグルコース含水結晶及び／又はマルトース含水結晶を全糖質に対して０．２％ずつ加え、混捏し、２５℃に放置し、経時的にその一部を採取し、これを４０℃、１６時間真空乾燥し、粉末化して、粉末糖質を調製した。そしてこれら粉末糖質を、それぞれ、実験１の方法に準じて、粉末Ｘ線回折法により結晶化度を測定した。また、これら粉末糖質を、それぞれ、実験１の方法に準じて、相対湿度９０％、２５℃に放置し、４日後の吸湿性の程度（重量増加）を求め、流動性の可否、固結の有無を観察した。これらの結果を表２にまとめた。
【００２７】
【表２】

【００２８】
表２の結果から明らかなように、トレハロースと他の糖質とを含有する粉末糖質は、結晶化度約３０％以上で吸湿性が比較的低くなり、流動可能であり、結晶化度４０％以上では吸湿性が更に低減し、流動性良好で、固結も見られず安定な粉末糖質になることが判明した。
【００２９】
【実験３】
〈急性毒性試験〉
マウスを使用して、後で述べる実施例Ａ−１、Ａ−２、Ａ−３、Ａ−４、Ａ−５及びＡ−６の方法で得られた結晶性粉末糖質を経口投与して急性毒性試験を行った。その結果、いずれの粉末糖質も低毒性で、投与可能な最大投与量においても死亡例は認められなかった。従って、それらのＬＤ₅₀値は、５０ｇ／ｋｇ（マウス体重）以上と推定された。
【００３０】
以下、本発明の結晶性粉末糖質の製造方法を実施例Ａで、該糖質を含有せしめた組成物を実施例Ｂで示す。
【００３１】
【実施例Ａ−１】
とうもろこし澱粉の３０％懸濁液に最終濃度で０．１％になるように炭酸カルシウムを加えた後ｐＨ６．５に調整し、これにα−アミラーゼ（ノボ社製造、商品名ターマミール６０Ｌ）を澱粉当たり０．２％になるように加え、９５℃で１５分間反応させた。この反応液をオートクレーブ（１２０℃）で１０分間加熱した後、５５℃に冷却し、これに特開昭６３−２４０７８４号公報に開示されているマルトテトラオース生成アミラーゼ（株式会社林原生物化学研究所製造）を澱粉グラム当たり５単位加えて６時間反応させ、これにα−アミラーゼ（エイチビィアイ株式会社製造、商品名α−アミラーゼ２Ａ）を澱粉グラム当たり３０単位加え、更に６５℃で４時間反応させた。この反応液を、オートクレーブ（１２０℃）で１０分間加熱し、次いで４５℃に冷却し、これに特開平７−２１３２８３号公報に開示されている非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり２単位加え、６４時間反応させた。次いで、１００℃に１０分間保って酵素を失活させた。本反応液を濃度約２０％まで希釈し、グルコアミラーゼ（ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名グルコチーム）を澱粉グラム当たり１０単位加え、温度５０℃で４０時間反応させ、糖組成でトレハロースを約２５％含有する反応液を得た。本反応液を加熱して酵素を失活させ、次いで、常法に従って活性炭で脱色濾過し、Ｈ型及びＯＨ型イオン交換樹脂で脱塩して精製糖液とし、減圧濃縮して濃度約７５％にし、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶及びグルコース含水結晶をそれぞれ約１％ずつ混合し徐冷して、晶出率約２５％のマスキットを得た。本マスキットを噴霧乾燥し、熟成して、結晶性粉末糖質 を、原料澱粉に対して無水物換算で約９０％の収率で得た。本品は、無水物換算でトレハロース約２５％、グルコース約７２％、その他の糖質約３％を含有する結晶化度約６６％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤等として各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３２】
【実施例Ａ−２】
馬鈴薯澱粉の１０％懸濁液にα−アミラーゼ（ナガセ生化学工業株式会社製、商品名スピターゼＨＳ）を澱粉グラム当たり２単位加えて攪拌下、加熱糊化、液化させ、直ちにオートクレーブ（１２０℃）で１０分間加熱した後、温度５０℃、ｐＨ５．０に調整した。これにβ−アミラーゼ（ナガセ生化学工業株式会社製）を澱粉グラム当たり２０単位及びイソアミラーゼ（株式会社林原生物化学研究所製）を澱粉グラム当たり５００単位加え、２４時間反応させ、糖組成でマルトースを約９２％含有する反応液を得た。この反応液を１００℃で２０分間保った後、冷却し、温度１０℃、ｐＨ７．０に調整し、これに特開平７−１７０９７７号公報に開示されているマルトース・トレハロース変換酵素をマルトースグラム当たり約１単位加え、９６時間反応させ、糖組成でトレハロースを約６９％含有する反応液を得た。この反応液を加熱して酵素を失活させ、次いで、実施例Ａ−１の方法に準じて、脱色、脱塩して精製糖液とし、減圧濃縮して濃度約８５％にし、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶及びマルトース含水結晶をそれぞれ約１％ずつ混捏してマスキットとした後、バットにとり、相対湿度約６０％、２０℃で５日間静置して晶出固化させ、次いで切削機にて粉砕して、結晶性粉末糖質を、原料澱粉に対して、無水物換算で約９０％の収率で得た。本品は、無水物換算で、トレハロース約６９％、マルトース約２３％、その他の糖質約８％を含有する結晶化度約５８％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤等として、各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３３】
【実施例Ａ−３】
実施例Ａ−２の方法で得た糖組成でトレハロースを約６９％含有する反応液に、グルコアミラーゼを固形物グラム当たり５単位加え、温度５０℃で４０時間反応させた後、加熱して酵素を失活させた。本反応液を、実施例Ａ−１の方法に準じて脱色、脱塩して精製糖液とし、減圧濃縮して、濃度約７０％にし、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶を約１％混合して冷却晶出させ、次いで遠心分離機で分蜜し、高純度トレハロース含水結晶と母液とを採取した。さらに、得られた母液を減圧濃縮して濃度約８５％にし、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶及びグルコース含水結晶をそれぞれ約１％ずつ混捏してマスキットとした後、バットにとり、相対湿度約６０％、２５℃で４日間静置して晶出固化させ、次いで、切削機にて粉砕して、結晶性粉末糖質を原料の母液に対して、無水物換算で約９５％の収率で得た。本品は、無水物換算で、トレハロース約６０％、グルコース約３５％、その他の糖質約５％を含有する結晶化度約６４％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤等として、各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３４】
【実施例Ａ−４】
マルトース・トレハロース変換酵素産生能を有するサーマス・アクアティカス（ＡＴＣＣ３３９２３）を特開平７−１７０９７７号公報に開示されている方法で培養し、遠心分離して得た湿菌体２５０ｇ（約７，５００単位）をアルギン酸ナトリウム溶液と塩化カルシウム溶液とを用いて、アルギン酸固定化菌体とし、本固定化菌体を、直径５．４ｃｍ、長さ１００ｃｍのジャケット付きガラス製カラムに充填し、温度を６０℃に保温した。この固定化カラムにｐＨ６．５のマルトース４０％溶液をＳＶ０．２にて下降法で通液して、トレハロース約６６％、マルトース約２８％及びグルコース約６％を含有する反応液を得た。本溶液を、実施例Ａ−１の方法に準じて、脱色、脱塩して精製し、減圧濃縮して濃度約７５％にし、次いで、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶及びマルトース含水結晶をそれぞれ約１％ずつ加えて徐冷し、晶出率約２５％のマスキットを得た。本マスキットを実施例Ａ−１と同様に噴霧乾燥、熟成して結晶性粉末糖質 を原料のマルトースに対して、無水物換算で約９２％の収率で得た。本品は、無水物換算で、トレハロース約６６％、マルトース約２８％及びグルコース約６％を含有する結晶化度約６０％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改善剤、安定剤、賦形剤等として各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３５】
【実施例Ａ−５】
実施例Ａ−３の方法で得た母液を濃度約５０％に調整し、これをオートクレーブに入れ、ラネーニッケル１０％を添加し、攪拌しながら温度を９０乃至１２０℃に上げ、水素圧を２０乃至１２０ｋｇ／ｃｍ² に上げて水素添加を完了させた後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、減圧濃縮して濃度約７５％にし、次いで、これを助晶機にとり、種晶として、トレハロース含水結晶及びソルビトール無水結晶をそれぞれ約２％ずつ混合し徐冷して、晶出率約３０％のマスキットを得た。本マスキットを噴霧乾燥し、熟成して、結晶性粉末糖質を、原料の母液に対して、無水物換算で約９５％の収率で得た。本品は、無水物換算で、トレハロース約６０％、ソルビトール約３５％、その他の糖質約５％を含有する結晶化度約６０％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改善剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤等として各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３６】
【実施例Ａ−６】
実施例Ａ−４において、実施例Ａ−１の方法に準じて、脱色、脱塩された精製糖液を濃度約５０％に濃縮し、これを実施例Ａ−５の方法に準じて、水素添加し、精製し、減圧濃縮して濃度約８５％にし、次いで、これを助晶機にとり、種晶としてトレハロース含水結晶及びマルチトール無水結晶をそれぞれ約１％ずつ混捏してマスキットとした後、バットにとり、相対湿度約５０％、２５℃で５日間静置して晶出固化させ、次いで切削機にて粉砕して、結晶性粉末糖質を、原料の精製糖液に対して、無水物換算で約９５％の収率で得た。本品は、無水物換算でトレハロース約６６％、マルチトール約２８％及びソルビトール約６％を含有する。結晶化度約６０％の安定な粉末糖質で、吸湿性低く、流動性良好であり、甘味料、呈味改善剤、安定剤、賦形剤等として各種飲食物、化粧品、医薬品等各種組成物に有利に利用できる。
【００３７】
【実施例Ｂ−１】
〈甘味料〉
シュクロース４重量部に実施例Ａ−６の方法で得た結晶性粉末糖質６重量部を均一に混合して粉末混合甘味料を得た。本品は、甘味質が良好な低う蝕性甘味料である。
【００３８】
【実施例Ｂ−２】
〈甘味料〉
実施例Ａ−５の方法で得た結晶性粉末糖質１重量部に、α−グリコシルステビオシド、東洋精糖株式会社販売「αＧスイート」０．０１重量部及びＬ−アスパルチル−Ｌ−フェニルアラニンメチルエステル、味の素株式会社販売「アスパルテーム」０．０１重量部を均一に混合し、顆粒成型機にかけて、顆粒状甘味料を得た。本品は、甘味の質が優れ、蔗糖の約２倍の甘味度を有し、甘味度当たりカロリーは、蔗糖の約１／２に低下している。本甘味料は、それに配合した高甘味度甘味物の分解もなく、安定性に優れており、低カロリー甘味料として、カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者等のための低カロリー飲食物等に対する甘味付けに好適である。また、本甘味料は、虫歯誘発菌による酸の生成が少なく、不溶性グルカンの生成も少ないことより、虫歯を抑制する飲食物等に対する甘味付けにも好適である。
【００３９】
【実施例Ｂ−３】
〈クリームウェファース〉
実施例Ａ−１の方法で得た結晶性粉末糖質２，０００重量部、ショートニング１，０００重量部、レシチン１重量部、レモンオイル１重量部及びバニラオイル適量を、常法により配合し、得たクリームを加温して４０〜４５℃に保ち、ウェファースに挟んでクリームウェファースを製造した。本品は、風味良好なクリームウェファースである。
【００４０】
【実施例Ｂ−４】
〈カスタードクリーム〉
コーンスターチ５００重量部、実施例Ａ−２の方法で得た結晶性粉末糖質５００重量部、シュクロース４００重量部及び食塩５重量部を、篩を通して充分に混合し、鶏卵１，４００重量部を加えて攪拌し、これに沸騰した牛乳５，０００重量部を徐々に加え、さらに、これをとろ火にかけて攪拌を続け、コーンスターチが完全に糊化して全体が半透明になったときに火を止め、これを冷却して少量のバニラ香料を加えることによりカスタードクリームを製造した。本品は、なめらかで光沢を有し、甘味が強すぎずに美味である。
【００４１】
【実施例Ｂ−５】
〈チョコレート〉
カカオペースト４０重量部、カカオバター１０重量部、実施例Ａ−３の方法で得た結晶性粉末糖質５０重量部を混合してレファイナーに通して粒度を下げた後、コンチェに入れて５０℃で２昼夜練り上げる。この間にレシチン０．５重量部を添加して充分に分散させた。次いで、温度調節機で３１℃に調節し、バターの固まる直前に型に流し込み、震動機でアワ抜きを行った後、１０℃の冷却トンネルを２０分間で通過し固化させた。これを型抜きして包装し製品を得た。本品は、吸湿性がなく、色、光沢共に良く、内部組織も良好であり、口中でなめらかに溶け、上品な甘味とまろやかな風味を有する。
【００４２】
【実施例Ｂ−６】
〈チューインガム〉
ガムベース２５重量部及び実施例Ａ−６の方法で得たマスキット４０重量部とを、６０℃でミキサーにより混練し、次いで、実施例Ａ−５の方法で得た結晶性糖質３０重量部、リン酸カルシウム１．５重量部及びｌ−メントールβ−シクロデキストリン包接化合物０．１重量部を混合し、最後に調味料少量を混合して充分に混練し、ロール加工、裁断して製品を得た。本品は、低う蝕性チューインガムとして好適である。
【００４３】
【実施例Ｂ−７】
〈即席ジュース〉
噴霧乾燥により製造したオレンジ果汁粉末３３重量部に対し、実施例Ａ−１の方法で得た結晶性粉末糖質６０重量部、無水クエン酸０．６重量部、リンゴ酸０．１重量部、Ｌ−アスコルビン酸０．１重量部、クエン酸ソーダ０．１重量部、粉末香料０．６重量部、プルラン０．５重量部をよく混合攪拌し、これを流動層造粒機に仕込み、排風温度４０℃、風量毎分１５０立方メートルとし、これに実施例Ａ−２の方法で得たトレハロース高含有糖質濃縮液をコーティング液またはバインダーとして毎分１００ミリリットルの割合でスプレーし、３０分間造粒することにより即席ジュースを製造した。本品は、果汁含有率３０％の即席ジュースである。また、本品は、異味、異臭がなく、吸湿固結も起こさず、長期に安定であった。
【００４４】
【実施例Ｂ−８】
〈ういろうの素〉
米粉９０重量部に、コーンスターチ２０重量部、実施例Ａ−２の方法で得た結晶性粉末糖質１２０重量部、プルラン４重量部を均一に混合してういろうの素を製造した。ういろうの素２００グラムと抹茶粉末１グラムとに水を加えてよく混練した後、これを容器に入れて６０分間蒸して抹茶ういろうを製造した。本品は、照り、口当りも良好で、風味もよかった。また、澱粉の老化も抑制され、長期間安定であった。
【００４５】
【実施例Ｂ−９】
〈べったら漬の素〉
実施例Ａ−５の方法で得た結晶性粉末糖質４重量部、甘草製剤０．０５重量部、リンゴ酸０．００８重量部、グルタミン酸ナトリウム０．０７重量部、ソルビン酸カリウム０．０３重量部およびプルラン０．２重量部を均一に混合してべったら漬の素を製造した。大根３０キログラムを常法に従って食塩により下漬し、次いで砂糖で中漬したものを、本べったら漬の素４キログラムで調製した調味液に漬けてべったら漬を製造した。本品は、色、艶、香気共に良好で、適度の甘味を有し歯切れもよかった。また、本品は酸敗しにくく長期間安定であった。
【００４６】
【実施例Ｂ−１０】
〈乳酸菌飲料〉
脱脂粉乳１７５重量部、実施例Ａ−３の方法で得た結晶性粉末糖質８０重量部及び特開平４−２８１７９５号公報で開示されているラクトスクロース高含有粉末５０重量部を水１，２００重量部に溶解し、６５℃で３０分間殺菌し、４０℃に冷却後、これに、常法に従って、乳酸菌のスターターを３０重量部植菌し、３７℃で８時間培養して乳酸菌飲料を得た。本品は、風味良好な乳酸菌飲料である。また、本品は、オリゴ糖を含有し、乳酸菌を安定に保持するだけでなく、ビフィズス菌増殖促進作用をも有する。
【００４７】
【実施例Ｂ−１１】
〈パン〉
小麦粉１００重量部、イースト２重量部、砂糖５重量部、実施例Ａ−２の方法で得た結晶性粉末糖質１重量部及び無機フード０．１重量部を、常法に従って、水でこね、中種を２６℃で２時間発酵させ、その後３０分間熟成し、焼き上げた。本品は、色相、すだちともに良好で適度な弾力、温和な甘味を有する高品質のパンである。
【００４８】
【実施例Ｂ−１２】
〈ハム〉
豚もも肉１，０００重量部に食塩１５重量部及び硝酸カリウム３重量部を均一にすり込んで、冷室に１昼夜堆積する。これを水５００重量部、食塩１００重量部、硝酸カリウム３重量部、実施例Ａ−５の方法で得た結晶性粉末糖質４０重量部及び香辛料からなる塩漬液に冷室で７日間漬け込み、次いで、常法に従い、冷水で洗浄し、ひもで巻き締め、燻煙し、クッキングし、冷却包装して製品を得た。本品は、色合いもよく、風味良好な高品質のハムである。
【００４９】
【実施例Ｂ−１３】
〈化粧用クリーム〉
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール２重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン５重量部、実施例Ａ−６の方法で得た結晶性粉末糖質２重量部、α−グリコシル ルチン１重量部、流動パラフィン１重量部、トリオクタン酸グリセリル１０重量部及び防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これにＬ−乳酸２重量部、１，３−ブチレングリコール５重量部及び精製水６６重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。本品は、抗酸化性を有し、安定性が高く、高品質の日焼け止め、美肌剤、色白剤などとして有利に利用できる。
【００５０】
【実施例Ｂ−１４】
〈練歯磨〉
配合
第２リン酸カルシウム ４５．０％
プルラン ２．９５％
ラウリル硫酸ナトリウム １．５％
グリセリン ２０．０％
ポリオキシエチレンソルビタンラウレート ０．５％
防腐剤 ０．０５％
実施例Ａ−５の方法で得た結晶性粉末糖質 １２．０％
マルチトール ５．０％
水 １３．０％
上記の材料を常法に従って混合し、練歯磨を得た。本品は、適度の甘味を有しており、特に子供用練歯磨として好適である。
【００５１】
【実施例Ｂ−１５】
〈糖衣錠〉
重量１５０ｍｇの素錠を芯剤とし、これに実施例Ａ−４の方法で得た結晶性粉末糖質４０重量部、プルラン（平均分子量２０万）２重量部、水３０重量部、タルク２５重量部及び酸化チタン３重量部からなる下掛け液を用いて錠剤重量が約２３０ｍｇになるまで糖衣し、次いで、実施例Ａ−４の方法得た結晶性粉末糖質６５重量部、プルラン１重量部及び水３４重量部からなる上掛け液を用いて、糖衣し、更に、ロウ液で艶出しして光沢の在る外観の優れた糖衣錠を得た。本品は、耐衝撃性にも優れており、高品質を長期間維持する。
【００５２】
【実施例Ｂ−１６】
〈外傷治療用膏薬〉
実施例Ａ−４の方法で得た結晶性粉末糖質２００重量部及びマルトース３００重量部に、ヨウ素３重量部を溶解したメタノール５０重量部を加え混合し、更に１０ｗ／ｖ％プルラン水溶液２００重量部を加えて混合し、適度の延び、付着性を示す外傷治療用膏薬を得た。本品は、ヨウ素による殺菌作用のみならず、トレハロース及びマルトースによる生体組織へのエネルギー補給剤としても作用することから、治癒期間が短縮され、創面もきれいに治る。
【００５３】
【発明の効果】
上記から明らかなように、本発明の結晶性粉末糖質は、トレハロースを、トレハロース存在下で晶出しうる他の糖質とともに晶出させ、トレハロース結晶と他の糖質の結晶とを併せ含有する結晶性粉末糖質であって、望ましくは、結晶化度４０％以上の結晶性粉末糖質であって、吸湿性低く、流動性良好であり、取扱い容易である。従って、本発明の結晶性粉末糖質の確立は、トレハロースと他の糖質とを含有する粉末糖質の商品価値を著しく向上することとなった。これが与える影響は、澱粉及び／又はマルトースを原料としてトレハロースを生産する製糖産業に大きく貢献できることはもちろんのこと、本発明の結晶性粉末糖質を利用する食品産業、化粧品産業、医薬品産業、農水畜産業等広範にわたり、その産業的意義は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図１】対照のトレハロースのみの粉末Ｘ線回折パターンを示す図である。
【図２】他の糖質として、グルコースを含む場合の粉末Ｘ線回折パターンを示す図である。
【図３】他の糖質として、マルトースを含む場合の粉末Ｘ線回折パターンを示す図である。
【図４】他の糖質として、イソマルトースを含む場合の粉末Ｘ線回折パターンを示す図である。
【図５】他の糖質として、ソルビトールを含む場合の粉末Ｘ線回折パターン示す図である。
【図６】他の糖質として、マルチトールを含む場合の粉末Ｘ線回折パターンを示す図である。

Claims (6)

1. トレハロースを、トレハロース存在下で晶出しうるグルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる糖質とともに晶出させて得られ、トレハロースとグルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる糖質の割合が、無水物換算で、９：１乃至１：９の範囲にある結晶性粉末糖質。
2. 結晶性粉末糖質が、粉末Ｘ線回折法で結晶化度４０％以上の粉末糖質である請求項１記載の結晶性粉末糖質。
3. トレハロースとともにトレハロース存在下で晶出しうるグルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる糖質を含有し、トレハロースとグルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる糖質の割合が、無水物換算で、９：１乃至１：９の範囲にある水溶液から糖質を晶出及び粉末化し、これを採取することを特徴とする結晶性粉末糖質の製造方法。
4. 晶出に際して、水溶液にトレハロースの種晶とともにトレハロース存在下で晶出しうるグルコース、マルトース、ソルビトール及びマルチトールから選ばれる糖質の種晶を共存させることを特徴とする請求項３記載の結晶性粉末糖質の製造方法。
5. 晶出及び粉末化工程が、噴霧乾燥方法、流動造粒方法及びブロック粉砕方法から選ばれる工程を含むことを特徴とする請求項３又は４記載の結晶性粉末糖質の製造方法。
6. 結晶性粉末糖質が、粉末Ｘ線回折法で結晶化度４０％以上の粉末糖質である請求項３乃至５のいずれかに記載の結晶性粉末糖質の製造方法。

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