JP4031165B2 - スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境適合性に優れ、かつ難燃性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、及び発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂発泡体を得る方法として、スチレン系樹脂を押出機等にて加熱溶融し、これに発泡剤を注入混合し、更にこの混合物を良好な発泡体を得るに適する温度まで冷却し、該冷却物をダイより押出すことによりスチレン系樹脂発泡体を連続的に製造する方法は、たとえば特公昭31−5393号公報や、特公昭42−19195号公報において開示された公知の技術である。
【0003】
これらの公知技術に対して、発泡剤として塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、CFCと略す)を使用した方法が例えば特公昭41−672号公報に、また塩素原子を部分的に水素化した塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、HCFCと略す)を用いた方法が例えば特公昭57−7175号公報において開示されている。CFC、HCFCに代表されるフロン類は一般にガス状態の熱伝導率が低いことから、これを用いて押出発泡体を製造することで、断熱性に優れた押出発泡体を得ることが期待できる。
【0004】
しかもこれら発泡体に用いられることが多い該フロン類は不燃、もしくは燃焼性が低いという特徴を有していることが多いために、これらを主たる発泡剤として用いて製造した押出発泡体においては、主として樹脂自身の燃焼性のみを考え、樹脂に対して好適な難燃剤であるとされているハロゲン系難燃剤を単独、もしくは2種以上併用するだけで、多くは難燃性の優れたスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができていた。
【0005】
しかしCFC及びHCFCに代表される該フロン類は、オゾン層保護、地球環境の保護の点から、可能ならば代替していくことが望まれるようになっている。
【0006】
該フロン類以外の発泡剤を用い断熱性に優れたスチレン系樹脂発泡体を製造する方法としては、プロパン及び/又はブタンと塩化アルキルとを組み合わせ、さらにヘキサブロモシクロドデカンやテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン系難燃剤を1〜3重量%用いて軽量でしかも厚みのある断熱性の発泡体を製造する方法が、特開平10−237210号公報に開示されている。
【0007】
しかしながら、該公報で得られる発泡体は、発泡剤であるプロパン、ブタンをそれぞれ3.5重量%、2重量%に限定し、その熱伝導率は0.025〜0.034Kcal/mhr℃(0.029〜0.040W/mK)に留まっている。従って、例えば前記フロン類を用いて製造していた、熱伝導率0.024Kcal/mhr℃(0.028W/mK)以下(例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板相当)の優れた断熱性を有し、且つ優れた難燃性を有する発泡体を得るまでには至っていない。プロパン、ブタン類を増量することで断熱性は向上する可能性はあるが、開示された難燃剤の種類及び量ではJIS A9511に規定されるような難燃性を断熱性と同時に安定的に実現することは困難である。加えて、該公報で使用される発泡剤である塩化アルキルは、1992年度の日本産業衛生学会の勧告では、環境、特に労働環境における許容濃度が定められ、その取り扱いには注意と対策が望まれており、可能ならば代替していくことが好ましい。
【0008】
これら塩化アルキルに代わる物質として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテルより選ばれるエーテル類を用い、ブタン等の飽和炭化水素と共に発泡剤として用いて断熱性の高いスチレン系樹脂発泡体を製造する方法が、特開平11−158317号公報において提案されている。
【0009】
該公報に開示される発明により、厚みがあり断熱性に優れ環境適合性にも優れたスチレン系樹脂発泡体を安定的に製造することが可能となったが、その難燃性の更なる向上がなされるならば、更に工業的価値が向上する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、断熱材として好適に使用しうるスチレン系樹脂押出発泡体を製造するに際して、環境適合性に優れた発泡剤を使用することで環境適合性に優れた発泡体とし、かつ例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板のような高度な断熱性と、高度な難燃性を両立させた優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に製造する方法、及び製造された発泡体を提供することを目的とするものである。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究してきた結果、スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、ダイ等を通して押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法において、該発泡剤として非ハロゲン系発泡剤を用い、かつハロゲン系難燃剤とテトラゾール化合物を併用して発泡体中に共存させることで、環境適合性に優れ、かつ、難燃性の優れたスチレン系樹脂発泡体を得られることを見いだし本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、1)スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として非ハロゲン系発泡剤を使用し、且つ、スチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤を0.1〜10重量部及びテトラゾール化合物を0.1〜10重量部含むことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、2)非ハロゲン系発泡剤が主として、発泡剤全量に対して90〜10重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して10〜90重量%の発泡作用を有するエーテル1種または2種以上とを含むものを使用する前記1)項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、3)飽和炭化水素がイソブタンであることを特徴とする前記2)項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。さらに本発明は、4)エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする前記2)または3)項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、5)ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であることを特徴とする前記1)〜4)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、6)ハロゲン系難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする前記1)〜5)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。さらに本発明は、7)テトラゾール化合物が、その熱分解温度が250℃以上であるテトラゾール化合物であることを特徴とする前記1)〜6)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、8)発泡板体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることを特徴とする、前記1)〜7)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。さらに本発明は、9)前記1)〜8)項のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
【0019】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂はスチレン単独重合体、特にポリスチレンが最も好ましいが、特に限定されるものではなく、スチレンを50%以上含む共重合体でも良い。スチレンと共重合する他の単量体としては、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上混合して使用することが可能である。
【0020】
本発明では、非ハロゲン系発泡剤を使用することを特徴とする。前記非ハロゲン系発泡剤とは、ハロゲンを分子中に含有しない発泡剤をいう。この非ハロゲン系発泡剤としては、例えば炭化水素が用いられる。これには炭素数1から6の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルに例示されるカルボン酸エステル類などの非ハロゲン系有機発泡剤などを用いることができる。これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能である。
【0021】
本発明で使用される特に好ましい飽和炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3〜5の炭化水素が挙げられる。これら炭化水素は単独または2種以上を混合して使用できる。このうち、常温で主として気体状態であり、スチレン系樹脂に対する透過性が低く断熱性を長期渡って保持しやすく、しかも安価に入手できるという点からイソブタンが好ましい。
【0022】
本発明で使用される好ましいエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルが挙げられるが、スチレン系樹脂に対する可塑性や、エーテルとして化学的に安定であることから、ジメチルエーテルが特に好ましい。
【0023】
本発明のより好ましい発泡剤としては、発泡剤全量に対して90重量%以下、ことに80重量%以下の炭素数3〜5の飽和炭化水素より選ばれた1または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して10重量%以上、ことに20重量%以上の、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを併用することが好ましい。
【0024】
飽和炭化水素単独では厚みのある発泡体が得にくい傾向があるが、エーテルは可塑性能と発泡力を有しているため比較的厚い発泡体が得やすい傾向がある。さらにエーテルは比較的早期に発泡体から抜けて燃焼性ガスとして残留しないため、抜けにくく断熱性も発揮しやすい炭化水素と適量組み合わせることで、厚みが厚い上に、難燃性も発揮しやすい条件を持った発泡体が得やすい傾向がある。さらにまたエーテルと飽和炭化水素を併用することでスチレン系樹脂の可塑性が向上、押出圧力を低減し安定的に発泡体の製造が可能となる傾向があり好ましい。
【0025】
本発明において使用される発泡剤のスチレン系樹脂に対する配合量は、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選択すべきものであるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して4〜20重量部とするのが好ましい。発泡剤の量が前記範囲未満では発泡倍率が低く、樹脂発泡体の特性として重要な軽量性が発揮されにくく、一方前記範囲を越えると過剰な発泡剤量のため製造安定性が悪化し発泡体中にボイドなどの不良を生じることがある。
【0026】
さらに、熱伝導率0.028W/mK以下、例えばJIS A9511に定めるB類3種相当の、より優れた断熱性を得ようとする場合、発泡体に残留する飽和炭化水素量を、飽和炭化水素の種類によっても異なるが、例えば炭素原子数3の飽和炭化水素であれば4重量部以上、8重量部以下、好ましくは4.5重量部以上、7重量部以下が好ましい。炭素原子数4の飽和炭化水素であれば2.5重量部以上、8重量以下、好ましくは3重量部以上、6.5重量部以下、最も好ましくは3.5重量部以上、5.5重量部以下が好ましい。炭素原子数5の飽和炭化水素であれば3重量部以上、8重量部以下、好ましくは3.5重量部以上、6重量部以下とすることが好ましい。飽和炭化水素量が少ないと断熱性が得にくい傾向があり、多すぎると本発明の方法をもってしても難燃性が得難い傾向がある。
【0027】
本発明におけるスチレン系樹脂発泡体は公知の押出発泡法により製造される。すなわち、例えばスチレン系樹脂を押出機中などで加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをダイを通して低圧域に押出発泡して、スチレン系樹脂押出発泡体を形成することにより製造される。本発明では、例えば、約10mm以上、更には約15mm以上の厚みの厚いスチレン系樹脂押出発泡板体を良好に製造しうる。
【0028】
スチレン系樹脂を加熱溶融する際の加熱温度、溶融時間及び溶融手段については特に制限するものではない。加熱温度は、スチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよく、例えば160〜230℃が選択し得る。また、溶融時間は、単位時間あたりの押出量、溶融手段などによって異なるので一概には決定することができないが、該スチレン系樹脂と発泡剤があるいは添加剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また溶融手段としては、例えばスクリュー型の押出機などの通常の押出発泡の際に用いられるものなど同等の機能を有する溶融・混練装置を適宜選択すればよく、特に制限するものではない。
【0029】
発泡剤を注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、例えば押出機の内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0030】
さらに発泡体が押出される雰囲気の温度、圧力も特に制限されるものではなく、良好な発泡体が得られる温度、圧力を適宜選択すればよく、例えば常温、大気圧雰囲気や、必要に応じて常温より高い温度あるいは低い温度、また大気圧未満の減圧雰囲気や若干の加圧雰囲気が選択し得る。
【0031】
本発明においては、スチレン系樹脂と共に、あるいは別個に、ハロゲン系難燃剤及びテトラゾール化合物、さらに必要に応じて添加剤がスチレン系樹脂に添加される。
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤は、通常難燃剤として使用されるものであれば特に限定なく使用できる。例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタンなどの臭素系芳香族化合物、ブロモスチレン、クロロスチレン、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物などが挙げられる。これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0032】
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤のなかでも、スチレン系樹脂に対しては、臭素原子を分子内に有する化合物である臭素系難燃剤、その中でも特にヘキサブロモシクロドデカンが、次に示すテトラゾール化合物と組み合わせた場合にスチレン系樹脂発泡体に対する難燃効果が高いことから好ましい。
【0033】
さらに本発明で使用されるテトラゾール化合物としては、例えば、テトラゾールグアニジン塩、テトラゾールピペラジン塩、テトラゾールアンモニウム塩等のテトラゾールアミン塩類、また、テトラゾールナトリウム塩、テトラゾールマンガン塩等のテトラゾール金属塩類が挙げられ、これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0034】
本発明で使用されるテトラゾール化合物としては、前記ハロゲン系難燃剤と組み合わせた場合、難燃効果が最も高く現れやすくなることから、その熱分解温度が250℃以上であるようなテトラゾール化合物が好ましい。該テトラゾール化合物としては、例えば5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩、5,5’−ビステトラゾール2アンモニウム塩、5,5’−ビステトラゾール2アミノグアニジン塩、5,5’−ビステトラゾールピペラジン塩が好ましく、中でも5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩が最も好ましい。熱分解温度が250℃以上のテトラゾール化合物を使用することにより、スチレン系樹脂加工時には熱分解せず、スチレン系樹脂燃焼時に熱分解して効果的に不燃ガスを発生することができる。ここで熱分解温度とは、一般的に示差熱重量分析により測定される重量減少開始温度より得られる。
【0035】
本発明においてはスチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤、特にヘキサブロモシクロドデカン0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜8重量部、もっとも好ましくは0.2〜5重量部と、テトラゾール化合物、特に250℃以上で熱分解するテトラゾール化合物を0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜6重量部、もっとも好ましくは0.2〜4重量部を併用することが好ましい。
【0036】
ハロゲン系難燃剤、特にヘキサブロモシクロドデカンが0.2重量部、あるいは0.15重量部、さらに0.1重量部より少ないと難燃効果が発揮されにくく、5重量部あるいは8重量部、さらに10重量部より多いと、スチレン系樹脂が劣化したり、ダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向がある。また、テトラゾール化合物、特に250℃以上で熱分解するテトラゾール化合物が0.2重量部、あるいは0.15重量部、更に0.1重量部より少ないと同じく難燃性が得にくい傾向があり、4重量部、あるいは6重量部、更に10重量部より多く添加する場合、同じくダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向があり、またこれ以上添加しても難燃性は殆ど向上しない。
【0037】
ハロゲン系難燃剤とテトラゾール化合物を本発明の適量混合することで、その難燃に対する寄与機構は未だ定かではないが、おそらくはスチレン系樹脂発泡体燃焼時に発生するラジカルをハロゲンにより捕捉し、またテトラゾール化合物の分解により発生する不燃ガスが燃焼箇所周辺の酸素濃度を低下させる、及び炭化発泡皮膜の形成により断熱層を形成するといった燃焼阻害の相乗効果があるものと推察され、高い難燃性が得られ易くなる傾向がある。
【0038】
即ち、ハロゲン系難燃剤だけを難燃剤として用いた場合、少量添加では必ずしも安定的に難燃性が得られない傾向がある。また、添加量を増量するとダイより押出された直後に発泡体がむしれたり、あるいはちぎれたりして満足に発泡体が得られない傾向がある。また、特に発泡剤として飽和炭化水素などの非ハロゲン難燃剤を用いた場合、発泡体の燃焼時に発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、該発泡剤が燃焼することで、該発泡剤の燃焼熱により発泡体の表面溶解が生じて延焼する傾向があった。しかしながら、これらの傾向についても、ハロゲン系難燃剤とテトラゾール化合物を併用することにより、該テトラゾール化合物の熱分解時に発生する多量の窒素ガスにより残留発泡剤の燃焼を阻害することで、極めて軽減させ得るか、ないしは無くすることができるといった優れた効果が得られ、適量を使用することで優れた難燃性と成形加工の安定性を有する発泡成形品が得られるようになる。
【0039】
また、テトラゾール化合物から発生する不燃ガスは窒素であり、腐食性がなく一般的には人体にも極めて無害であり、環境適合性に優れている特徴を有する。
【0040】
本発明においては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸バリウム等の脂肪酸金属塩、酸化亜鉛、酸化チタン、高分子型ヒンダードフェノール系化合物等の、造核剤、内外滑剤、抗酸化剤などの添加剤を含有させることができる。これらは必要に応じて適宜配合量を調整して配合すればよい。
【0041】
【実施例】
次に本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0042】
以下に示す実施例1〜4、比較例1〜7の方法で得られた発泡体の特性として、発泡倍率、独立気泡率、平均気泡径、残存ガス量、発泡体の外観、発泡体の色、熱伝導率、燃焼性を下記の方法にしたがって調べた。
1)発泡倍率
ポリスチレン樹脂のおおよその密度を1.05(g/cm3)として、次の式:発泡倍率(倍)=1.05/発泡体の密度(g/cm3)
2)独立気泡率
マルチピクノメーター(ベックマン・ジャパン(株)社製)を用い、ASTMD−2856に準じて測定した。
3)平均気泡径
押出発泡体の縦断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、S−450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影し、撮影した写真を乾式複写機で複写し、得られた複写物において、気泡部分を黒インキで塗りつぶして1次処理を行い、1次処理した画像を画像処理装置((株)ピアス製、PIAS−II)により処理し、平均気泡径を求めた。
4)残留発泡剤量
製造20日後の発泡体を、ガスクロマトグラフ((株)島津製作所製 GC−14A)を使用して分析することで、発泡体100gに対する残存量を測定した。分析ではイソブタン、及びジメチルエーテルを分析対象とした。
5)発泡体の外観
発泡体の外観は以下の評価基準で評価した。
【0043】
○ 断面に未発泡樹脂塊およびボイドがなく、かつ表面にシワおよび突起がほとんどない。
【0044】
△ 断面に未発泡樹脂塊およびボイド、および/または、表面にシワおよび突起が少量存在する。
【0045】
× 断面に未発泡樹脂塊およびボイドが多量に存在するか、および/または、表面にシワおよび突起が顕著に存在する。
6)熱伝導率
JIS A 9511に準じて、熱伝導率測定装置HC−072(英弘精機社製)を使用し測定した。測定には製造後20日経過した発泡体について行った。評価基準は
○:熱伝導率が0.028W/mK以下
×:熱伝導率が0.028W/mKより大きい
7)燃焼性
JIS A 9511に準じて厚さ10mm、長さ200mm、幅25mmの試験片を用い、n数10で測定し、消炎時間をもって以下の基準で評価した。測定は製造後20日経過した発泡体について行った。評価基準は
◎:消炎時間が10本すべて2秒以内
○:消炎時間が10本すべて3秒以内
△:消炎時間3秒を越える試験片が1本以上、3本以下
×:消炎時間3秒を越える試験片が4本以上、
実施例1
ポリスチレン樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名:エスチレンG−17、メルトインデックス(MI):3.1)100部に対して、造核剤としてタルク0.5部、難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン3.0部、5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩(東洋化成工業(株)製、BHT−2GAD)2.0部、さらにステアリン酸バリウム0.25部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを直列連結した二段押出機へ約40Kg/hrの割合で供給した。
【0046】
前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡板体を得た。このとき発泡剤として、イソブタン50%、ジメチルエーテル50%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して8部となるように、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた45mm厚みの発泡板体の特性を表1に示す。
実施例2、3、4
ヘキサブロモシクロドデカン及び5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩の量を表1に記載した構成、及び量とした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡板体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0047】
【表1】
比較例1
5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩を添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡板体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例2
5,5’−ビステトラゾール2グアニジン塩の配合量を変えた以外は実施例1と同様の条件で押出発泡板体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例3
ヘキサブロモシクロドデカンの配合量を変えた以外は実施例1と同様の条件で押出発泡板体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例4
ヘキサブロモシクロドデカンを添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡板体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適合性に優れ、難燃性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に製造することが可能となる。
Claims (9)
- スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として非ハロゲン系発泡剤を使用し、且つ、スチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤を0.1〜10重量部及びテトラゾール化合物を0.1〜10重量部含むことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 非ハロゲン系発泡剤が主として、発泡剤全量に対して90〜10重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して10〜90重量%の発泡作用を有するエーテル1種または2種以上とを含むものを使用する請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 飽和炭化水素がイソブタンであることを特徴とする請求項2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする請求項2または3に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- ハロゲン系難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- テトラゾール化合物が、熱分解温度が250℃以上であるテトラゾール化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 発泡板体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体。
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