JP3963617B2 - スチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境適合性に優れ、かつ難燃性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、及び発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂押出発泡板を得る方法としては、塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、CFCと略す)や塩素原子を部分的に水素化した塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、HCFCと略す)などのフロン類を発泡剤として用いる方法が長く実施されている。CFC及びHCFCに代表される該フロン類は、一般にガス状態の熱伝導率が低く、しかも不燃もしくは燃焼性が低いという特徴を有していることから、これを用いて断熱性及び難燃性に優れた発泡体を得ているが、一方で該フロン類はオゾン層保護、地球環境の保護の観点から、可能ならば代替していくことが望まれるようになっている。
【0003】
該フロン類以外の発泡剤を用いてスチレン系樹脂発泡体を製造する方法としては、例えば発泡剤に炭化水素を用いる方法が提案される。
【0004】
例えば特開平7−53761号公報では、プロパン、ブタンあるいはその混合物を発泡剤として用いて比較的薄い発泡体を製造することを開示している。該開示はさらに1週間〜13週間の長期貯蔵期間を経ることにより、リン酸ハロゲン化アルキル−アリールやポリリン酸アンモニウム、ヘキサブロモシクロドデカンまたは水酸化マグネシウムの添加効果と合わせて防燃性及び加熱時の再発泡を確保するとしている。
【0005】
しかしながら、炭化水素のみを発泡剤として用いた場合、一般的には建築材料などで特に多く期待される厚みが厚い発泡体が得にくいうえ、貯蔵期間の長期化は保管コストの増大と、炭化水素の発泡体からの逸散によって断熱性が低下することが懸念される。さらに該開示には押出機へ注入すべき発泡剤量や、例示された難燃剤の適切な使用量等必要な技術が開示されておらず、工業的に実施するには大きな困難が伴っていた。
【0006】
特開昭10−237210号公報ではプロパン及び/又はブタンと塩化アルキルとを組み合わせ、さらにヘキサブロモシクロドデカンやテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン系難燃剤を1〜3重量%用いて軽量でしかも厚みのある断熱性の発泡体を製造することが提案されている。
【0007】
しかしながら、該公報で得られる発泡体の熱伝導率は、プロパン、ブタンをそれぞれ3.5重量%、2重量%に限定していることから、0.025〜0.034Kcal/mhr℃(0.029〜0.040W/mK)に留まっており、例えば前記フロン類を用いて製造されていたところの熱伝導率0.024Kcal/mhr℃(0.028W/mK)以下の(例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板)高度な断熱性を有する難燃性発泡体を得るには依然不十分であった。プロパン、ブタン類を増量することで断熱性は向上する可能性はものの、開示された難燃剤の種類及び量ではJIS A9511に規定されるような難燃性を断熱性と同時に安定的に実現することは困難である。加えて、塩化アルキルは、1992年度の日本産業衛生学会の勧告では、環境、特に労働環境における許容濃度が定められ、その取り扱いには注意と対策が望まれており、可能ならば代替していくことが好ましい。
【0008】
これら塩化アルキルに代わる物質として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテルより選ばれるエーテル類を用い、ブタン等の飽和炭化水素と共に発泡剤として用いて断熱性の高いスチレン系樹脂発泡体を製造する方法が、特開平11−158317号公報において提案されている。
【0009】
該公報に開示される発明により、厚みがあり断熱性に優れ環境適合性にも優れたスチレン系樹脂発泡体を安定的に製造することが可能となったが、その難燃性の更なる向上がなされるならば、更に工業的価値が向上する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、スチレン系樹脂樹脂押出発泡体を製造するに際して、環境適合性に優れた発泡剤を使用し環境適合性に優れた発泡体としたうえで、厚みが厚く、かつ例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板のような高度な断熱性と、同規定に示されるような高度な難燃性を両立させた優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に製造する方法、及び製造された発泡体を提供することを目的とするものである。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、ダイを通して押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法において、該発泡剤として非ハロゲン系発泡剤を用い、かつハロゲン系難燃剤と窒素原子を分子中に含むリン系難燃剤を併用して発泡体中に共存させることで、厚みが厚く、環境適合性に優れ、かつ、断熱性と難燃性の優れたスチレン系樹脂発泡体を得られることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、1)スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、ダイを通して押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として発泡剤全量に対して70〜30重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して30〜70重量%のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを用い、かつハロゲン系難燃剤と分子中に窒素原子を有するリン系難燃剤を発泡体中に共存させることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、2)スチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤を0.1〜10重量部及び窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤を0.1〜10重量部含むことを特徴とする前記1)項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、3)飽和炭化水素がイソブタンであることを特徴とする前記1)または2)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、4)エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする前記1)〜3)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、5)ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であることを特徴とする前記1)〜4)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、6)ハロゲン系難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする前記1)〜5)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、7)窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤がリン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムより選ばれる1種以上であることを特徴とする前記1)〜6)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0019】
さらに本発明は、8)厚みが15mm以上であることを特徴とする、前記1)〜7)項のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0020】
さらに本発明は、9)発泡板体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることを特徴とする、前記1)〜8)項のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法に関する。
【0021】
さらに本発明は、10)前記1)〜9)項のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡板体に関する。
【0022】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂はスチレン単独重合体特にポリスチレンが最も好ましいが、特に限定されるものではなく、スチレンを50%以上含む共重合体でも良い。スチレンと共重合する他の単量体としては、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上混合して使用することが可能である。
【0023】
本発明では、発泡剤全量に対して70重量%以下、ことに60重量%以下の炭素数3〜5の飽和炭化水素より選ばれた1または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して30重量%以上、ことに40重量%以上の、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを併用することで、エーテルは発泡力は有しているが比較的早期に発泡体から抜けるため、抜けにくく断熱性も発揮しやすい炭化水素と適切に組み合わせることで、高倍率で、特に15mm以上と比較的厚い厚みを有する発泡体が得やすい傾向があり、その一方でまたスチレン系樹脂の可塑性が向上することで、押出圧力を低減し安定的に発泡体の製造が可能となる傾向があり好ましい。
【0024】
本発明で使用される特に好ましい飽和炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3〜5の炭化水素が挙げられる。これら炭化水素は単独または2種以上を混合して使用できる。このうち、常温で主として気体状態であり、スチレン系樹脂に対する透過性が極低く断熱性を長期渡って保持しやすく、しかも安価に入手できるという点からイソブタンが好ましい。
【0025】
本発明で使用される好ましいエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルが挙げられるが、スチレン系樹脂に対する可塑性や、エーテルとしての安定性が優れているという点から、ジメチルエーテルが特に好ましい。
本発明で使用される発泡剤のスチレン系樹脂に対する配合量は、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選択すべきものであるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して4〜20重量部、好ましくは5〜15重量部とするのが好ましい。発泡剤の量が5重量部未満特に4重量部未満では発泡倍率が低く、樹脂発泡体の特性として重要な軽量性が発揮されにくく、一方15重量部より多く、ことに20重量部より多くなると過剰な発泡剤量のため発泡体中にボイドなどの不良を生じることがある。
【0026】
さらに、熱伝導率0.028W/mK以下、例えばJIS A9511に定めるB類3種相当より高度、の断熱性を得ようとする場合、発泡体に残留する飽和炭化水素量を、飽和炭化水素の種類によっても異なるが、例えば炭素原子数3の飽和炭化水素であれば4重量部以上8重量部以下好ましくは4.5重量部以上7重量部以下、炭素原子数4の飽和炭化水素であれば2.5重量部以上8重量以下好ましくは3重量部以上6.5重量部以下最も好ましくは3.5重量部以上5.5重量部以下、炭素原子数5の飽和炭化水素であれば3重量部以上8重量部以下好ましくは3.5重量部以上6重量部以下とすることが好ましい。炭化水素量が少ないと断熱性が得にくい傾向があり、多すぎると本発明の方法をもっても難燃性が得難い傾向がある。
【0027】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は公知の押出発泡法により製造される。すなわち、スチレン系樹脂を押出機中などで加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをダイを通して押出発泡して、スチレン系樹脂押出発泡体を形成することにより製造される。
【0028】
スチレン系樹脂を加熱溶融する際の加熱温度、溶融時間及び溶融手段については特に制限するものではない。加熱温度は、スチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよく、例えば160〜230℃が選択し得る。また、溶融時間は、単位時間あたりの押出量、溶融手段などによって異なるので一概には決定することができないが、該スチレン系樹脂と発泡剤があるいは添加剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また溶融手段としては、例えばスクリュー型の押出機などの通常の押出発泡の際に用いられるものなど同等の機能を有する溶融・混練装置を適宜選択すればよく、特に制限するものではない。
【0029】
発泡剤を注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、例えば押出機の内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0030】
さらに発泡体が押出される雰囲気の温度、圧力も特に制限されるものではなく、良好な発泡体が得られる温度、圧力を適宜選択すればよく、例えば常温、大気圧雰囲気や、必要に応じて常温より高い温度あるいは低い温度、また大気圧大気圧未満の減圧雰囲気や若干の加圧雰囲気が選択し得る。
【0031】
本発明においては、スチレン系樹脂と共に、あるいは別個に、ハロゲン系難燃剤及び窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤、さらに必要に応じて添加剤がスチレン系樹脂に添加される。
【0032】
本発明でのハロゲン系難燃剤としては、通常この分野において使用されるものを限定なく使用することができる。例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3ージブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、1,2ービス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3ージブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、などの臭素系芳香族化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、臭素化ポリスチレン、ハロゲン化リン系化合物、ハロゲン化アクリル系化合物などが挙げられる。これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
本発明ではハロゲン系難燃剤のなかでも臭素原子を分子内に含有する臭素系化合物である臭素系難燃剤、その中でも特にヘキサブロモシクロドデカンが次に示す窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤と組み合わせた場合の難燃性能発揮効率の点から好ましい。
【0034】
さらに本発明で使用される窒素原子を分子中に有するリン酸難燃剤としては、例えば、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムアミド、リン酸アミド、ホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アミド、ポリホスファゼン等が挙げられ、これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。これらは例えばメラミンモノマー、メラミン樹脂、変性メラミン樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる1種以上の化合物などで表面被覆処理をしても好適に使用し得る。
【0035】
本発明では、該窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤としては、前記ハロゲン系難燃剤と組み合わせた場合、難燃効果が最も高く現れやすいことから、リン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムより選ばれる1種以上が好ましい。本発明においてはスチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤、ことにヘキサロモシクロドデカン0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜8重量部、もっとも好ましくは0.2〜5重量部と、窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤、ことにリン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムより選ばれる1種以上を0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜6重量部、もっとも好ましくは0.2〜4重量部を併用することが好ましい。
ハロゲン系難燃剤、ことにヘキサブロモシクロドデカンが0.2重量部、あるいは0.15重量部、ことに0.1重量部より少ないと難燃効果が発揮されにくく、5重量部、さらに8重量部、ことに10重量部より多いと、ダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向がある。また、窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤、ことにリン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムより選ばれる1種以上が0.2重量部、あるいは0.15重量部ことに0.1重量部より少ないと同じく難燃性が得にくい傾向があり、4重量部、あるいは6重量部、ことに10重量部より多いと同じくダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向がある。ハロゲン系難燃剤と窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤を本発明の適量混合することで、燃焼時に発泡体表面に容易に断熱性のある炭化皮膜を形成し、燃焼伝搬を阻害しやすくなる傾向がある。即ち、ハロゲン系難燃剤だけを難燃剤として用いた場合必ずしも安定的に難燃性が得られない傾向があったり、添加量を増加させるとダイより押出された直後に発泡体がむしれたりあるいはちぎれたりして満足に発泡体が得られない傾向があったが、ハロゲン系難燃剤と窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤を併用すると、発泡剤として飽和炭化水素などの非ハロゲン系発泡剤を用いてなる発泡体に対しても、安定的に難燃性や、安定的な成形品が得られるようになる。さらに、ハロゲン系難燃剤だけでは、発泡剤として例えば飽和炭化水素を用いた場合、発泡体の燃焼時に発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、その発泡剤が燃焼することで、燃焼の及んでいない発泡体の他の部分についても該発泡剤の燃焼熱により表面溶解などの不良が生ずる傾向があったが、これらの傾向についても、きわめて軽減させ得るか、ないしは無くすることができ易くなる。
【0036】
しかも窒素原子を分子中に含むリン系難燃剤の配合量は、これを単独で難燃剤として用いる場合に比べて、ハロゲン系難燃剤と組み合わせることで、通常熱可塑性樹脂に対して、該樹脂の種類にもよるが、10重量部〜30重量部以上必要とされていたものが、数重量部程度の極少量の配合で発明の効果を達成し得る。
【0037】
本発明においては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、高分子型ヒンダードフェノール系化合物等の抗酸化剤などの添加剤を含有させることができる。これらは必要に応じて適宜配合量を調整して配合すればよい。
【0038】
【実施例】
次に本発明の熱可塑性樹脂押出発泡体の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0039】
以下の記載において、略記号はそれぞれ下記の物質を表すものである。
DME:ジメチルエーテル
HBCD:ヘキサブロモシクロドデカン
以下に示す実施例1〜4、比較例1〜7の方法で得られた発泡体の特性として、発泡倍率、独立気泡率、平均気泡径、残存ガス量、発泡体の外観、熱伝導率、燃焼性、発泡体の厚みを下記の方法にしたがって調べた。
1)発泡倍率
ポリスチレン樹脂のおおよその密度を1.05(g/cm3)として、次の式:発泡倍率(倍)=1.05/発泡体の密度(g/cm3)
2)独立気泡率
マルチピクノメーター(湯浅アイオニクス(株)製)を用い、ASTM Dー2856に準じて測定した。
3)平均気泡径
押出発泡体の縦断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、S−450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影し、撮影した写真を乾式複写機で複写し、得られた複写物において、気泡部分を黒インキで塗りつぶして1次処理を行い、1次処理した画像を画像処理装置((株)ピアス製、PIAS−II)により処理し、平均気泡径を求めた。
4)残存ガス量
製造20日後の発泡体をガスクロマトグラフ((株)島津製作所製 GC−14A)を使用し、発泡体100gに対する残存量を分析した。分析ではブタン、及びDMEを分析対象とした。
5)発泡体の外観
発泡体の外観は以下の評価基準で評価した。
【0040】
○ 断面に未発泡樹脂塊およびボイドがなく、かつ表面にシワおよび突起がほとんどない。
【0041】
× 断面に未発泡樹脂塊およびボイドが多量に存在するか、および/または、表面にシワおよび突起が顕著に存在する。
6)熱伝導率
JIS A 9511に準じて測定した。測定には製造後10日経過した発泡体について行った。評価基準は
○:熱伝導率が0.028W/mK以下
×:熱伝導率が0.028W/mKを越える
7)燃焼性
JIS A 9511に準じて厚さ10mm、長さ200mm、幅25mmの試験片を用い、n数10で測定し、消炎時間をもって以下の基準で評価した。測定は製造後10日経過した発泡体について行った。評価基準は
◎:消炎時間が10本すべて2秒以内
○:消炎時間が10本すべて3秒以内
△:消炎時間3秒を越える試験片が1本以上、3本以下
×:消炎時間3秒を越える試験片が4本以上、
8)発泡体厚み
発泡体を押し出し方向に直交する断面で切断し、発泡体厚みをノギスを用いて測定し、その平均値を求めた。値は小数点以下は四捨五入し、mm単位とした。
実施例1
ポリスチレン樹脂(新日鐵化学(株)製、商品名:エスチレンG−17、メルトインデックス(MI):3.1)100部に対して、造核剤としてタルク0.5部、難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン3.0部(アルベマールコーポレーション製、SAYTEX HBCD−LM)、ポリリン酸アンモニウム(チッソ(株)製、TERRAJU C60)2.0部、さらにステアリン酸バリウム0.25部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約40kg/hrの割合で供給した。前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。
【0042】
このとき発泡剤として、イソブタン50%、ジメチルエーテル50%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して8部となるように、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた発泡体の特性を表1に示す
実施例2、3
ポリリン酸アンモニウムの量を表1に記載した量とした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
実施例4、5
イソブタン、ジメチルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン及びポリリン酸アンモニウムの配合量を表1に記載した量とした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0043】
【表1】
比較例1
ポリリン酸アンモニウムを添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例2
ヘキサブロモシククロドデカンの配合量を変えた以外は比較例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例3
ヘキサブロモシククロドデカンを添加しない以外は比較例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例4、5
イソブタン、ジメチルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン及びポリリン酸アンモニウムの配合量を表2に記載した量とした以外は、比較例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適合性に優れ、難燃性に優れた熱可塑性樹脂押出発泡体を安定的に製造することが可能となる。
Claims (10)
- スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、ダイを通して押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として発泡剤全量に対して70〜30重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して30〜70重量%のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを用い、かつハロゲン系難燃剤と分子中に窒素原子を有するリン系難燃剤とを発泡体中に共存させることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- スチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤を0.1〜10重量部及び窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤を0.1〜10重量部含むことを特徴とする請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- 飽和炭化水素がイソブタンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- ハロゲン系難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- 窒素原子を分子中に有するリン系難燃剤がリン酸アンモニウム及びポリリン酸アンモニウムより選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- 厚みが15mm以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- 発泡板体の熱伝導率が0.028W/mK未満であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂押出発泡板体の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡板体。
Priority Applications (9)
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