JP4073129B2 - スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 - Google Patents

スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境適合性に優れ、難燃性に優れ、かつ断熱性の優れたスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法、及び発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂押出発泡体を得る方法としては、塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、CFCと略す)や塩素原子を部分的に水素化した塩素原子含有ハロゲン化炭化水素(以下、HCFCと略す)などのフロン類を発泡剤として用いる方法が長く実施されている。CFC及びHCFCに代表される該フロン類は、一般にガス状態の熱伝導率が低く、しかも不燃もしくは燃焼性が低いという特徴を有していることから、これを用いて断熱性及び難燃性に優れた発泡体を得ているが、一方で該フロン類はオゾン層保護、地球環境の保護の観点から、可能ならば代替していくことが望まれるようになっている。
【0003】
該フロン類以外の発泡剤を用いてスチレン系樹脂発泡体を製造する方法としては、例えば発泡剤に炭化水素類を用いる方法が提案される。
【0004】
特開昭10−237210号公報ではプロパン及び/又はブタンと塩化アルキルとを組み合わせ、さらにヘキサブロモシクロドデカンやテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン系難燃剤を1〜3重量%用いて軽量でしかも厚みのある断熱性の発泡体を製造することが提案されている。
【0005】
しかしながら、該公報で得られる発泡体の熱伝導率は、プロパン、ブタンをそれぞれ3.5重量%以下、2重量%以下に限定していることから、0.025〜0.034Kcal/mhr℃(0.029〜0.040W/mK)に留まっており、例えば前記フロン類を用いて製造されていたところの熱伝導率0.024Kcal/mhr℃(0.028W/mK)以下の(例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板)高度な断熱性を有する難燃性発泡体を得るには依然不十分であった。プロパン、ブタン類を増量することで断熱性は向上する可能性はあるものの、開示された難燃剤の種類及び量ではJIS A9511に規定されるような難燃性と高度な断熱性とを同時に安定的に実現することは困難である。加えて、塩化アルキルは、1992年度の日本産業衛生学会の勧告では、環境、特に労働環境における許容濃度が定められ、その取り扱いには注意と対策が望まれており、可能ならば代替していくことが好ましい。
【0006】
これら塩化アルキルに代わる物質として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテルより選ばれるエーテル類を用い、ブタン等の飽和炭化水素と共に発泡剤として用いて断熱性の高いスチレン系樹脂発泡体を製造する方法が、特開平11−158317号公報において提案されている。
該公報に開示される発明により、断熱性に優れ、環境適合性にも優れたスチレン系樹脂発泡体を安定的に製造することが可能となったが、その難燃性の更なる向上がなされるならば、更に工業的価値が向上する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、スチレン系樹脂押出発泡体を製造するに際して、環境適合性に優れた発泡剤を使用し、環境適合性に優れた発泡体としたうえで、例えばJIS A9511に規定されるB類3種保温板のような高度な断熱性と、同規定に示されるような高度な難燃性を両立させた優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に製造する方法、及び製造された発泡体を提供することを目的とするものである。
【0008】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意研究の結果、スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、ダイ等を通して押出発泡してなるスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法において、該発泡剤として非ハロゲン系発泡剤を用い、かつハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩の三種を発泡体中に共存させることで、環境適合性に優れ、かつ難燃性の優れたスチレン系樹脂押出発泡体を得るのみならず、ハロゲン系難燃剤単独、あるいはハロゲン系難燃剤と脂肪酸金属塩を混合した場合に比し、熱伝導率が低下し、断熱性が向上するという驚くべき効果を有するスチレン系樹脂押出発泡体を得ることを見い出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は
(1)スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として、非ハロゲン系発泡剤を用い、かつハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩の三種を発泡体中に共存させることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、(2)ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤である前記(1)記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、(3)非ハロゲン系発泡剤が主として、炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを含むものを使用する(1)〜(2)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、(4)非ハロゲン系発泡剤が、発泡剤全量に対して90〜10重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して10〜90重量%のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを含む(3)記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、(エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする(3)または(4)記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、(スチレン系樹脂100重量部に対して臭素系難難燃剤を0.1〜10重量部、ホウ酸金属塩を0.1〜10重量部、さらには脂肪酸金属塩を0.01〜2重量部含むことを特徴とする(2)〜(5)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0015】
さらに本発明は、(7)臭素系難難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする(2)〜(6)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、(8)ホウ酸金属塩がホウ酸亜鉛であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。さらに本発明は、(9)脂肪酸金属塩がステアリン酸バリウムであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
さらに本発明は、(10)発泡体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【0017】
さらに本発明は、(11)(1)〜(10)のいずれか記載の方法により製造されたスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
【0018】
【発明の実施形態】
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、特に、スチレン単独重合体であるポリスチレンが最も好ましいが、特に限定されるものではなく、スチレンを50%以上含む共重合体でも良い。スチレンと共重合する他の単量体としては、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、これらを単独もしくは2種以上混合して使用することが可能である。
【0019】
本発明では、発泡剤に非ハロゲン系発泡剤を使用することを特徴とする。
【0020】
前記非ハロゲン系発泡剤とはハロゲンを分子中に含有しない発泡剤をいう。この非ハロゲン系発泡剤としては、例えば炭化水素が用いられる。これには炭素数1から6の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルに例示されるカルボン酸エステル類などの非ハロゲン系有機発泡剤などを用いることができる。これらは単独又は2種以上混合して使用することが可能である。
【0021】
このうち本発明では炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを用いることが好ましい。
【0022】
本発明で使用される特に好ましい飽和炭化水素は、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンより選ばれる1種または2種以上の飽和炭化水素であり、このうち、常温で主として気体状態であり、スチレン系樹脂に対する透過性が極低く、断熱性を長期に渡って保持しやすく、しかも安価に入手できるという点からi−ブタンが特に好ましい。
【0023】
本発明で使用される好ましいエーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルが挙げられるが、スチレン系樹脂に対する可塑性や、エーテルとしての安定性が優れているという点から、ジメチルエーテルが特に好ましい。
【0024】
さらに発泡剤全量に対して90〜10重量%、好ましくは80〜20重量%、更に好ましくは70〜30重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、また発泡剤全量に対して10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、更に好ましくは30〜70重量%のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0025】
発泡剤として良好な可塑化効果を有するエーテルを、10重量%以上、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上含有させることにより、可塑性が向上して押出圧力が低減し、安定的に発泡体の製造が可能となるので好ましい。またエーテルが90重量%を超える場合、可塑性が高すぎ、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなる傾向がある。この点から、エーテルは90重量%以下、より好ましく80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下であるのが好ましい。
【0026】
本発明で使用される発泡剤のスチレン系樹脂に対する配合量は、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選択すべきものではあるが、通常、発泡剤の合計量をスチレン系樹脂100重量部に対して4〜20重量部、好ましくは5〜15重量部とするのが好ましい。発泡剤の量が4重量部未満では発泡倍率が低く、樹脂発泡体としての軽量性が発揮されにくく、一方、20重量部を越えると過剰な発泡剤量のため発泡体中にボイドなどの不良を生じることがある。
【0027】
さらに、熱伝導率0.028W/mK以下、例えばJIS A9511に定めるB類3種相当より高度な断熱性を得ようとする場合、発泡体に残留する飽和炭化水素量を、飽和炭化水素の種類によっても異なるが、例えば炭素原子数3の飽和炭化水素であれば4重量部以上8重量部以下、好ましくは4.5重量部以上7重量部以下、炭素原子数4の飽和炭化水素であれば2.5重量部以上8重量以下、好ましくは3重量部以上6.5重量部以下、最も好ましくは3.5重量部以上5.5重量部以下、炭素原子数5の飽和炭化水素であれば3重量部以上8重量部以下、好ましくは3.5重量部以上6重量部以下とすることが好ましい。炭化水素量が少ないと断熱性が得にくい傾向があり、多すぎると本発明の方法をもっても難燃性が得難い傾向がある。
【0028】
本発明のスチレン系樹脂発泡体は公知の押出発泡法により製造される。すなわち、スチレン系樹脂を押出機中などで加熱溶融させ、該スチレン系樹脂の加熱溶融の前か後に、後に説明するハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩を添加して混練し、更に、非ハロゲン系発泡剤を該スチレン系樹脂に注入して流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをダイを通して押出発泡して、スチレン系樹脂押出発泡体を形成することにより製造される。
【0029】
スチレン系樹脂を加熱溶融する際の加熱温度、溶融時間及び溶融手段については特に限定するものではない。加熱温度は該スチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよく、例えば160〜230℃が選択し得る。また溶融時間は、単位時間当たりの押出量、溶融手段などによって異なるので一概には決定することができないが、該スチレン系樹脂と発泡剤があるいは添加物が均一に分散混合するのに要する時間が便宜選ばれる。また溶融手段としては、例えばスクリュー型の押出機などの通常の押出発泡の際に用いられるものなどと同様の機能を有する溶融、混練装置を適宜選択すればよく、特に限定するものではない。
発泡剤を注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機の内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0030】
さらに発泡体が押出される雰囲気の温度、圧力も特に制限されるものではなく、良好な発泡体が得られる温度、圧力を適宜選択すればよく、例えば常温、大気圧雰囲気や、必要に応じて常温より高い温度あるいは低い温度、また大気圧未満の減圧雰囲気や若干の加圧雰囲気が選択し得る。
【0031】
本発明においては、スチレン系樹脂中に、ハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩の三種、さらに必要に応じて通常使用される他の添加物を添加して混合しておき、こうしたスチレン系樹脂混合物を押出機中などに供給して加熱溶融させて、押出成形するのが好ましい。又は、スチレン系樹脂を押出機などに供給した後に、ハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩などを添加することもできる。
【0032】
本発明で使用されるハロゲン系難燃剤としては、通常、熱可塑性樹脂を難燃化するについて使用されるハロゲン系難燃剤を特に限定することなく使用することができる。例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3ージブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリブロモフェノール付加物などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、デカブロモジフェニルエタン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、1,2ービス(ペンタブロモフェニル)エタン、2,3ージブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、などの臭素系芳香族化合物、塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環状化合物、臭素化ポリスチレン、ハロゲン化リン系化合物、ハロゲン化アクリル系化合物などが挙げられる。これら化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
本発明では、ハロゲン系難燃剤のなかでも臭素原子を分子内に含有する臭素系難燃剤を使用している。スチレン系樹脂においては特にヘキサブロモシクロドデカンが好適であり、またホウ酸金属塩と組み合わせた場合の難燃性能発揮効率が大きい点から好ましい。
【0034】
本発明で使用されるホウ酸金属塩としては、例えばホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸スズ、硼砂が挙げられる。
本発明では、該ホウ酸金属塩としては、前記ハロゲン系難燃剤と組み合わせた場合、難燃効果が最も高く現れやすいことから、ホウ酸亜鉛が好ましい。
【0035】
本発明で使用される脂肪酸金属塩としては、通常この分野において使用されるものを限定なく使用することができる。例えばステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。本発明で使用される特に好ましい脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸バリウムが挙げられる。
【0036】
さらに、ハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩の三種を該スチレン系樹脂中に混合し、押出機中等で加熱溶融させると、詳細は明らかではないが、何らかの化学反応が押出機内で進行すると考えられ、スチレン系樹脂押出発泡体の色が灰色調の色になる。該発泡体の熱伝導率を測定すると、前記三種を共存させない場合に比し、熱伝導率が下がり、断熱性の良好な発泡体を得ることができた。
【0037】
本発明においてはスチレン系樹脂100重量部に対し、ハロゲン系難燃剤、ことにヘキサブロモシクロドデカン0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜8重量部、もっとも好ましくは0.2〜5重量部と、ホウ酸金属塩、ことにホウ酸亜鉛を0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.15〜6重量部、もっとも好ましくは0.2〜4重量部と、脂肪酸金属塩、ことにステアリン酸バリウムを0.01〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1.5重量部、もっとも好ましくは0.1〜1.0重量部を併用することが好ましい。
【0038】
ハロゲン系難燃剤、ことにヘキサブロモシクロドデカンが0.1重量部より少ないと難燃効果が発揮されにくく、10重量部より多いと、ダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向がある。
【0039】
また、ホウ酸金属塩、ことにホウ酸亜鉛が0.1重量部より少ないと同じく難燃性が得にくい傾向があり、10重量部より多いと同じくダイから押出されたスチレン系樹脂発泡体がちぎれやすくなり、成形しにくくなる傾向がある。
【0040】
また脂肪酸金属塩、ことにステアリン酸バリウムが0.01重量部より少ない、もしくは2.0重量部より多いと押出が安定せず、良好なスチレン系発泡体を得ることができない。
【0041】
ハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩を本発明の適量混合することで、詳細は明らかではないが、燃焼時に発泡体表面に容易に断熱性のある皮膜を形成し、燃焼伝搬を阻害しやすくなる傾向があるものと思われる。
【0042】
即ち、ハロゲン系難燃剤だけを難燃剤として用いた場合、必ずしも安定的に難燃性が得られない傾向があったり、添加量を増加させるとダイより押出された直後に発泡体がむしれたり、あるいはちぎれたりして満足に発泡体が得られない傾向があったが、ハロゲン系難燃剤とホウ酸金属塩と脂肪酸金属塩を併用すると、発泡剤として飽和炭化水素などの非ハロゲン系発泡剤を用いてなる発泡体に対しても、安定的に難燃性や、断熱性の良好な成形体が得られるようになる。
【0043】
さらに、ハロゲン系難燃剤だけでは、発泡剤として例えば飽和炭化水素を用いた場合、発泡体の燃焼時に発泡体から残留発泡剤が大気中に放出され、その発泡剤が燃焼することで、燃焼の及んでいない発泡体の他の部分についても該発泡剤の燃焼熱により表面溶解などの不良が生ずる傾向があったが、これらの傾向についても、きわめて軽減させ得るか、ないしは無くすることができ易くなる。
【0044】
しかもホウ酸金属塩の配合量は、これを単独で難燃剤として用いる場合に比べて、ハロゲン系難燃剤と組み合わせることで、通常スチレン系樹脂に対して、10重量部〜30重量部以上必要とされていたものが、数重量部程度の極少量の配合で発明の効果を達成し得る。
【0045】
また本発明において、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、高分子型ヒンダードフェノール系化合物等の抗酸化剤などの添加剤を含有させることができる。これらは必要に応じて適宜配合量を調整して配合することができる。
【0046】
【実施例】
次に本発明のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、特に断らない限り「部」は重量部を、「%」は重量%を表す。
【0047】
以下の記載において、略記号はそれぞれ下記の物質を表すものである。
DME:ジメチルエーテル
HBCD:ヘキサブロモシクロドデカン
St−Ba:ステアリン酸バリウム
以下に示す実施例1〜4、比較例1〜6の方法で得られた発泡体の特性として、発泡倍率、独立気泡率、平均気泡径、残存ガス量、発泡体の外観、発泡体の色、熱伝導率、燃焼性を下記の方法にしたがって調べた。
【0048】
a)発泡倍率:ポリスチレン樹脂のおおよその密度を1.05(g/cm3)として、次の式:発泡倍率(倍)=1.05/発泡体の密度(g/cm3)にもとずいて求めた。
【0049】
b)独立気泡率:マルチピクノメーター(ベックマン・ジャパン(株)製)を用い、ASTM Dー2856に準じて測定した。
【0050】
c)平均気泡径:押出発泡体の縦断面を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製、Sー450)にて30倍に拡大して発泡体の縦断面を写真撮影し、撮影した写真を乾式複写機で複写し、得られた複写物において、気泡部分を黒インキで塗りつぶして1次処理を行い、1次処理した画像を画像処理装置((株)ピアス製、PIAS−II)により処理し、平均気泡径を求めた。
【0051】
d)残存ガス量:製造20日後の発泡体をガスクロマトグラフ((株)島津製作所製 GC−9A)を使用し、発泡体100gに対する残存量を分析した。分析ではブタン、及びDMEを分析対象とした。
【0052】
e)発泡体の外観:以下の評価基準で評価した。
○ 断面に未発泡樹脂塊およびボイドがなく、かつ表面にシワおよび突起がほとんどない。
△ 断面に未発泡樹脂塊およびボイド、および/または、表面にシワおよび突起が少量存在する。
× 断面に未発泡樹脂塊およびボイドが多量に存在するか、および/または、表面にシワおよび突起が顕著に存在する。
【0053】
f)発泡体の色:目視による評価を行った。
【0054】
g)熱伝導率:JIS A 9511に準じて測定した。測定には製造後20日経過した発泡体について行った。評価基準は
◎:熱伝導率が0.027W/mK未満
○:0.027W/mK以上、0.028W/mK未満
△:0.028W/mK以上、0.029W/mK未満
×:0.029W/mK以上
h)燃焼性についてはJIS A 9511に準じて厚さ10mm、長さ200mm、幅25mmの試験片を用い、n数10で測定し、消炎時間をもって以下の基準で評価した。測定は製造後20日経過した発泡体について行った。評価基準は、
◎:消炎時間が10本すべて2秒以内
○:消炎時間が10本すべて3秒以内
△:消炎時間3秒を越える試験片が1本以上、3本以下
×:消炎時間3秒を越える試験片が4本以上、
実施例1
ポリスチレン樹脂(新日鐵化学(株)製、エスチレンG−17、メルトインデックス(MI):3.1)100部に対して、造核剤としてタルク0.5部、難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカン3.0部(アルベマールコーポレーション製、SAYTEX HBCD−LM)、ホウ酸亜鉛(ユーエスボラックス、ファイアーブレークZB)2.0部、さらにステアリン酸バリウム0.25部とからなる樹脂混合物をドライブレンドし、得られた樹脂混合物を口径65mmと口径90mmのものを縦に連結した押出機へ約40kg/hrの割合で供給した。
【0055】
前記口径65mmの押出機に供給した樹脂混合物を、200℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、これに連結された口径90mmの押出機で樹脂温度を120℃に冷却し、口径90mmの押出機の先端に設けた厚さ方向2mm、幅方向50mmの長方形断面の口金より大気中へ押し出し、直方体状の押出発泡体を得た。このとき発泡剤として、発泡剤全量に対してi−ブタン50%、DME50%からなる発泡剤をポリスチレン樹脂100部に対して8部となるように、それぞれ別のラインから、前記口径65mmの押出機の先端付近(口径90mmの押出機の口金と反対側の端部側に接続される側の端部)から前記樹脂中に圧入した。得られた発泡体の特性を表1に示す。
実施例2
発泡剤の量を表1に記載した構成、及び量とした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
実施例3,4
ホウ酸亜鉛の量を表1に記載した構成、及び量とした以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0004073129
比較例1
ヘキサブロモシクロドデカンを添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例2
ホウ酸亜鉛を添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例3
ステアリン酸バリウムを添加しない以外は実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例4
ホウ酸亜鉛とステアリン酸バリウムを添加しない以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例5
ヘキサブロモシクロドデカンとステアリン酸バリウムを添加しない以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
比較例6
ヘキサブロモシクロドデカンとホウ酸亜鉛を添加しない以外は、実施例1と同様の条件で押出発泡体を得た。得られた発泡体の特性を表2に示す。
【0057】
【表2】
Figure 0004073129
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、環境適合性に優れ、難燃性に優れ、かつ断熱性の優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に製造することが可能となる。

Claims (11)

  1. スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に注入し、押出発泡してなるスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、該発泡剤として、非ハロゲン系発泡剤を用い、かつハロゲン系難燃剤、ホウ酸金属塩、脂肪酸金属塩の三種を発泡体中に共存させることを特徴とするスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  2. ハロゲン系難燃剤が臭素系難燃剤である請求項1記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  3. 非ハロゲン系発泡剤が主として、炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを含むものを使用する請求項1または2記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  4. 非ハロゲン系発泡剤が、発泡剤全量に対して90〜10重量%の炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種または2種以上の飽和炭化水素と、発泡剤全量に対して10〜90重量%のジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテルよりなる群から選ばれた1種または2種以上のエーテルとを含む請求項3記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  5. エーテルがジメチルエーテルであることを特徴とする請求項3または4記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  6. スチレン系樹脂100重量部に対して、臭素系難燃剤を0.1〜10重量部、ホウ酸金属塩を0.1〜10重量部、さらには脂肪酸金属塩を0.01〜2重量部含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  7. 臭素系難難燃剤がヘキサブロモシクロドデカンであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  8. ホウ酸金属塩がホウ酸亜鉛であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  9. 脂肪酸金属塩がステアリン酸バリウムであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  10. 発泡体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたスチレン系樹脂押出発泡体。
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