JP4025056B2 - 動力伝達機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カーエアコン用コンプレッサ等に組み付けられる動力伝達機構に関するものであり、特には、過負荷が加わったとき動力伝達が遮断される動力伝達機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の動力伝達機構としては、特開平10−267047号公報に記載されたものがある。この公報に第1の実施の形態として記載された動力伝達機構は、コンプレッサの回転軸に一体回転可能に配設された第1回転部材(ハブ)と、コンプレッサのハウジングに形成された突出部に軸受を介して回転自在に支持された第2回転部材(プーリ)が設けられている。また第1回転部材には、平面視略三角形の形状に形成されたボス部と、ボス部の各角部分から半径方向に延設されたフランジ部と、各フランジ部に支持ピンにより回動自在に支持された係合部材(回動爪)と、第2回転部材の回転方向側となるフランジ部の側面に配設され係合部材を反回転方向側に押圧する第1の板ばねと、第2回転部材の反回転方向側となるフランジ部の側面に配設された第2の板ばねが設けられている。さらに第2回転部材には、第1回転部材のフランジ部の半径方向外側まで延設され外周面にプーリ溝が形成された円筒部と、この円筒部の内周面に固定され係合部材が係止された係止部材(固定爪)が設けられている。
【0003】
このような構成の動力伝達機構は、係合部材と係止部材の係合状態が第1の板ばねの弾性復帰力により維持されるので、第2回転部材から第1回転部材に動力が伝達されコンプレッサが駆動される。また、コンプレッサの回転軸に過負荷が加わると、第1の板ばねの弾性復帰力に抗して第2回転部材に伝達された動力により係合部材は支持ピンを中心に回動するので、係合部材が係止部材から離脱してコンプレッサへの動力伝達が遮断される。さらに、係合部材が係止部材から離脱する寸前に、係合部材に形成された切欠き部(係合肩)に第2の板ばねが係止され、係合部材は第1の板ばねの弾性復帰力により係止部材から離脱した状態に保持される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の動力伝達機構は、係合部材と係止部材の係合状態を維持するための第1の板ばねを、第2回転部材の回転方向側となる第1回転部材のフランジ部の側面に設け、係合部材が係止部材から離脱した状態を維持する第2の板ばねを、第2回転部材の反回転方向側となる第1回転部材のフランジ部の側面に設けた構成を採用していたので、第2回転部材の回転方向が限定されていた。この発明は、駆動側に配設される第2回転部材または第1回転部材の両方向の回転に対応可能な動力伝達機構を提供することを目的とする。
【0005】
このような目的を達成するために、発明1の動力伝達機構は、同軸線上で互いに回転自在に配設された第1回転部材(3)および第2回転部材(7)と、前記第1回転部材(3)または前記第2回転部材(7)に円周方向に間隔をおいて設けられた複数の挟持部(3c)と、前記挟持部(3c)に個々に重合された板厚方向の弾性変形が可能な複数の保持部(16a)が円周方向に間隔をおいて設けられ、前記第1回転部材(3)または前記第2回転部材(7)に固定された保持板(16)と、前記第2回転部材(7)または前記第1回転部材(3)に締結部材(14)により機械的に結合された結合部(15a)と、前記保持部(16a)の弾性復帰力により前記挟持部(3c)と前記保持部(16a)との間に挟持され摩擦結合された被挟持部(15b)とが設けられ、前記保持部(16a)と同数の連結板(15)とを備え、前記第1回転部材(3)または前記第2回転部材(7)に過負荷が加わることにより、前記連結板(15)の被挟持部(15b)は、前記保持部(16a)の弾性復帰力に抗して前記挟持部(3c)と前記保持部(16a)との間から抜け出して動力伝達が遮断され、弾性復帰した前記保持部(16a)と前記連結板(15)とが衝突することにより、前記連結板(15)は、前記締結部材(14)による前記第2回転部材(7)または前記第1回転部材(3)との結合力に抗して、前記締結部材(14)を中心に回動するとともに前記結合力により回動後の状態で前記第2回転部材(7)または前記第1回転部材(3)に保持されることを特徴とする。
【0006】
また発明2の動力伝達機構は、発明1の動力伝達機構において、保持板(16)の保持部(16a)に形成された係合凹部(16b)と連結板(15)の被挾持部(15b)に形成された係合凸部(15c)とを係合させたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1〜図5は、この発明の実施の形態として図示した動力伝達機構であり、図1は動力伝達機構の正面図、図2は図1の断面図、図3〜図5は作動を説明するために図示した上半分のみの正面図であり、図3は第2回転部材に過負荷が加わった直後の状態を示した上半分のみの正面図、図4は連結板の被挾持部が保持板の保持部と第1回転部材の挾持部との間から抜け出した状態を示した上半分のみの正面図、図5は連結板が保持板の保持部と衝突した状態を示した上半分のみの正面図である。これら図面の動力伝達機構は、カーエアコン用コンプレッサに組み付けられ、コンプレッサの回転軸に過負荷が加わったときにコンプレッサへの動力伝達を遮断する安全装置(トルク制限装置)として使用される。
【0008】
コンプレッサ1の回転軸2には、第1回転部材として設けられた機械構造用炭素鋼鋼材製のハブ3が装着されている。ハブ3は、段付き状の貫通穴が形成された円筒状のボス部3aと、このボス部3aの外周面から半径方向外側に延設された円板状のフランジ部3bが設けられ、ボス部3aの小径穴に形成されたスプライン穴を回転軸2の軸端に形成されたスプライン溝に嵌合するとともに、ボス部3aの大径穴に嵌合された突き当て板4を回転軸2の軸端に突き当て、ボルト5を突き当て板4の貫通穴から挿入して回転軸2のネジ穴に螺合することにより、ハブ3は回転軸2に一体回転可能に装着されている。またハブ3のフランジ部3bには、円周方向を3等分した位置において外周面から半径方向外側に延設された挾持部3cが形成されている。なお、回転軸2の軸端と突き当て板4との間には、ハブ3と後述するプーリ7との間の隙間寸法を微調整するための隙間調整用シムが介在される。
【0009】
コンプレッサ1の円筒状のハウジング1aには、軸受6を介して第2回転部材としてのプーリ7が回転自在に支持されている。プーリ7は、内周面に軸受6が圧入嵌合されている内側円筒部7aと、外周面にベルト溝が転造加工された外側円筒部7bと、これら内側円筒部7aと外側円筒部7bとを連結した円板部7cが形成され、コンプレッサ1側に開口した環状溝7dが設けられている。またプーリ7の環状溝7d内には、環状溝7dと同方向に開口する環状溝8aが形成された断面コ字状で環状のゴム収容部材8が嵌合されている。またゴム収容部材8は、合成樹脂材により製造され複数のリベット9によりプーリ7に固定されている。
【0010】
ゴム収容部材8には、円周方向を3等分した位置に、このゴム収容部材8の内周壁部と外周壁部および円周方向に間隔をおいて形成され内周壁部と外周壁部を連結した一対の径方向壁部で囲まれたゴム収容部8bが設けられている。またゴム収容部8bは、軸線方向に貫通した正面視略扇形の貫通穴に形成され、回転軸2の突出側の開口部がプーリ7の円板部7cによりふさがれている。さらに各収容部8bには、断面略扇形で角柱形状に設けられ、中央には円筒状の貫通穴が形成されたダンパゴム10が圧入嵌合されている。
【0011】
ダンパゴム10は、ゴム保持部材11と介装部材13をネジ12で固定することによりゴム収容部8bに保持され、ゴム収容部8bからの脱落が防止されている。ゴム保持部材11は、ダンパゴム10の貫通穴からプーリ7の円板部7cに形成された貫通穴7eに挿入された一方の端部が介装部材13の側面に当接した円筒部11aと、この円筒部11aの他方の端部に形成されゴム収容部8bに嵌合されたフランジ部11bが設けられている。またゴム保持部材11の円筒部11aには、介装部材13側に開口したネジ穴が形成されているとともに、ゴム保持部材11のフランジ部11bは、ゴム収容部材8の内周壁と外周壁に嵌合された径方向内側と外側の円弧状の周面と、ゴム収容部材8の径方向壁部と間隔をおいて対向した円周方向両側の周面が形成され、ゴム保持部材11は、ネジ12を円筒部11aのネジ穴に螺合するときに回転しないようにゴム収容部8bに組み付けられている。
【0012】
介装部材13は、圧延鋼板により製造され、プーリ7と同軸線上に設けられた環状の部材であり、ネジ12によりゴム保持部材11に固定された固定部13aと、この固定部13aより軸線方向に変位した支持部13bとが、円周方向に交互に形成され、かつ固定部13aと支持部13bとが傾斜部13cにより連結されている。また介装部材13の各支持部13bには、締結部材としてのリベット14により連結板15が固定されている。リベット14は、支持部13bと連結板15の貫通穴に挿入され、一方の端部がカシメ加工により塑性変形している。
【0013】
連結板15は、薄い金属の板材から製造され、中心の貫通穴にリベット14が挿入された円板状の結合部15aと、この結合部15aの外周面から延設され介装部材13の支持部13bの内周面から突出した被挾持部15bが形成されている。また連結板15の被挾持部15bには、プーリ7側に突出した係合凸部15cが形成されているとともに、各被挾持部15bは、ハブ3の挾持部3cと保持板16の保持部16aとの間に挾持されている。
【0014】
保持板16は、圧延鋼板をプレスにより打ち抜き加工することにより製造され、ハブ3のボス部3aの外側に嵌合された内周面と、ハブ3のフランジ部3bの外径寸法と略同一の外径寸法の外周面と、この外周面の円周方向を3等分する位置において外周面から半径方向外側に延設された保持部16aが形成されている。また保持板16は、複数のネジ17でハブ3のフランジ部3bに固定されているとともに、保持部16aは、連結板15の被挾持部15bを介在して挾持部3cに重合され、その板厚方向に弾性変形している。すなわち、保持板16をハブ3のフランジ部3bに固定することにより、保持部16aの弾性復帰力により連結板15の被挾持部15bとハブ3の挾持部3cとが摩擦結合されている。また、保持板16の保持部16aには、その板厚方向に貫通した穴からなる係合凹部16bが形成され、この係合凹部16bと連結板15の係合凸部15cとが係合されている。
【0015】
以上のように構成された動力伝達機構は、ゴム収容部材8やダンパゴム10、軸受6が組み付けられたプーリ7をコンプレッサ1のハウジング1aに装着した後、保持板16や連結板15、介装部材13が組み付けられたハブ3をコンプレッサ1の回転軸2に装着するとともに、介装部材13の固定部13aとゴム保持部材11とをネジ12で固定することにより、コンプレッサ1に組み付けられる。また動力伝達機構は、プーリ7と図示せぬ駆動側のプーリとにベルトが掛け渡され、コンプレッサ1を駆動するための動力が伝達される。
【0016】
次に、図3〜図5により、コンプレッサ1に異常が発生してハブ3に過負荷が加わったときの作動について説明する。動力伝達機構は、過負荷が加わりハブ3が制動された直後の状態において、駆動側からプーリ7に伝達されている動力により、リベット14による介装部材13との結合力および保持板16の保持部16aの弾性復帰力によるハブ3の挾持部3cとの摩擦結合力に抗して、連結板15がリベット14を中心に回動する(図3参照)。
【0017】
また、ハブ3の制動状態が続くと、連結板15の係合凸部15cと保持板16の係合凹部16bとの係合が離脱して、連結板15の被挟持部15bがハブ3の挟持部3cと保持板16の保持部16aとの間から抜け出る(図4参照)ので、プーリ7からハブ3への動力伝達が遮断される。さらに動力伝達機構は、保持板16の保持部16aが弾性復帰してハブの挟持部3cに当接するとともに、回転方向の先行側の保持部16aと連結板15の被挟持部15bとが衝突して、その衝撃力により、連結板15はリベット14を中心に回動する(図5参照)。なお連結板15は、リベット14による結合力により、図5のような状態で介装部材13の支持部13bに保持される。
【0018】
以上、この発明の実施の形態として動力伝達機構を説明したが、この発明の動力伝達機構は、ハブ1側に連結板15の結合部15aをリベット14で固定して、プーリ7の円板部7cに保持板16をネジ17で固定するとともに、プーリ7側に固定された保持板16の保持部16aの弾性復帰力により、連結板15の被挾持部15bとプーリ7の円板部7cとを摩擦結合した構成に設計を変更することもできる。またこの発明の動力伝達機構は、回転軸2の突出側となるハブ3のフランジ部3bの側面に保持板16を固定した構成に設計を変更することもできる。さらにこの発明の動力伝達機構は、締結部材としてリベット14を設けたが、ネジとナットによる機械的結合手段等でもよい。
【0019】
【発明の効果】
発明1の動力伝達機構は、第1回転部材または第2回転部材に過負荷が加わることにより、連結板の被挾持部が挾持部と保持部との間から抜け出して、弾性復帰した保持部と連結板とが衝突するとともに、締結部材による第2回転部材または第1回転部材との結合力に抗して、連結板は締結部材を中心に回動する構成にしたので、駆動側に配設される第1回転部材または第2回転部材の回転方向に関係なく、駆動側機器または従動側機器に組み付けて使用することができる。
【0020】
発明2の動力伝達機構は、保持板の保持部に形成された係合凹部と連結板の被挾持部に形成された係合凸部とを係合させた構成にしたので、第1回転部材または第2回転部材と連結板との結合力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態として図示された動力伝達機構の正面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】第1回転部材に過負荷が加わった直後の状態を示した上半分のみの正面図である。
【図4】連結板の被挟持部が保持板の保持部と第1回転部材の挟持部との間から抜け出した状態を示した上半分のみの正面図である。
【図5】連結板が保持板の保持部と衝突した状態を示した上半分のみの正面図である。
【符号の説明】
3 ハブ(第1回転部材)
3c 挟持部
7 プーリ(第2回転部材)
14 リベット(締結部材)
15 連結板
15b 被挟持部
15c 係合凸部
16 保持板
16a 保持部
16b 係合凹部

Claims (2)

  1. 同軸線上で互いに回転自在に配設された第1回転部材および第2回転部材と、前記第1回転部材または前記第2回転部材に円周方向に間隔をおいて設けられた複数の挟持部と、前記挟持部に個々に重合された板厚方向の弾性変形が可能な複数の保持部が円周方向に間隔をおいて設けられ、前記第1回転部材または前記第2回転部材に固定された保持板と、前記第2回転部材または前記第1回転部材に締結部材により機械的に結合された結合部と、前記保持部の弾性復帰力により前記挟持部と前記保持部との間に挟持され摩擦結合された被挟持部とが設けられ、前記保持部と同数の連結板とを備え、前記第1回転部材または前記第2回転部材に過負荷が加わることにより、前記連結板の被挟持部は、前記保持部の弾性復帰力に抗して前記挟持部と前記保持部との間から抜け出して動力伝達が遮断され、弾性復帰した前記保持部と前記連結板とが衝突することにより、前記連結板は、前記締結部材による前記第2回転部材または前記第1回転部材との結合力に抗して、前記締結部材を中心に回動するとともに前記結合力により回動後の状態で前記第2回転部材または前記第1回転部材に保持されることを特徴とする動力伝達機構。
  2. 請求項1に記載された動力伝達機構において、保持板の保持部に形成された係合凹部と連結板の被挟持部に形成された係合凸部とを係合させたことを特徴とする動力伝達機構。
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