JPH0615137Y2 - クラツチデイスク - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は自動車の動力伝達装置等に施用されるクラッチ
デイスクに関する。

従来の技術 クラッチデイスクはエンジン側の駆動軸と被駆動軸との
間に介装され、これら両軸間でトルクの断続を司どるた
めのものであり、フエーシングがプレッシヤプレートと
フライホイールとにより挾圧された際に生じる摩擦力で
回転力を伝達している。

第６図はこのような従来のクラッチデイスクのうち、特
にクラッチ切れ不良を有効に防止することができるクラ
ッチデイスクを示すもので、ハブ３０のボス部３１とド
ライブプレート３２ａ，３２ｂとの間に、ボス部３１外
周に回動自在に嵌挿された内環３４と、この内環３４の
外周に形成された球面３５に摺接揺動自在に外嵌された
外環３６とからなる球面軸受３３を配設し、フエーシン
グ37をフライホイール２０やプレッシヤプレート２１に
対して容易に平行状態に是正できるようにしてある。こ
れによつて、ハブ３０とドライブプレート３２ａ，３２
ｂの成形誤差及び組付誤差等に起因するフエーシング摩
擦面３７ａのハブ３０のスプライン３８に対する振れを
防止して、クラッチ切れ不良が発生しないようにしてい
る。３９は摩擦板であり、この摩擦板３９とハブ３０の
プレート部４０又はフリクションプレート４１との摺動
によつて生じる摩擦力により、クラッチデイスクの捩り
振動を減衰している。これと類似する構造は例えば実開
昭５９−１２５６２３号公報に開示されている。

考案が解決しようとする問題点 以上のように、従来のクラッチデイスクは、クラッチ切
れ不良を防止するために、ハブ３０のボス部３１とドラ
イブプレート３２ａ，３２ｂとの間に、ボス部３１外周
に回動自在に嵌挿された内環３４と、該内環３４の外周
に形成された球面35に摺接揺動自在に外嵌された外環３
６とからなる球面軸受３３を配設してある。そのため、
部品点数が増加すると共に、クラッチデイスクの製品価
格の増加を招来するという問題を有している。

そこで、本考案は、部品点数の増加及び製品価格の増加
を招来することなく、クラッチ切れ不良等を有効に防止
し得るクラッチデイスクを提供することを目的とする。

問題点を解決するための手段 ハブのプレート部両側に対峙する一対のドライブプレー
トの各内周端にハブの中心軸線上の一点を共通の中心点
とする球面座をそれぞれ湾曲形成すると共に、前記プレ
ート部の両側に前記各球面座に摺接するシート部を設け
て、ドライブプレートをハブに対して揺動可能に組付け
てある。

作用 フライホイールに対してドライブプレートが非平行状態
に組付けられたとしても、クラッチ使用時にプレッシヤ
プレートの押圧力が作用すると、球面座とシート部とが
摺動するので、フエーシング及びドライブプレートはフ
ライホイールに対して平行状態になるまで揺動する。そ
して、この平行状態は、プレッシヤプレートの押圧力を
解除しても球面座とシート部との間に生じる摺接抵抗力
（摩擦力）により維持されるので、フエーシングの振れ
を生じることがなく、クラッチ切れ不良を防止する。

実施例 以下、本考案の一実施例を図面に基づき詳述する。

第１図〜第３図は本考案のクラッチデイスクを示すもの
であり、１は内周にスプライン４を刻設され図外の被駆
動軸に嵌合されるボス部２と、このボス部２から径方向
外方に向かつて延出するプレート部３とからなるハブで
ある。５ａ，５ｂはハブ１のプレート部３の両側に対峙
して配設した一対のドライブプレートであり、これらド
ライブプレート５ａ，５ｂの各内周端にハブ１の中心軸
線上の一点を共通の中心点とする半径R₁,R₂の球面座６
ａ，６ｂをそれぞれ湾曲形成してある（第４図，第５図
参照）。そして、これらハブ１のプレート部３とドライ
ブプレート５ａ，５ｂには円周方向の各対応する位置に
複数の窓７，８を形成し、この各窓７，８内に圧縮ばね
９を収容し、この圧縮ばね９によつてドライブプレート
５ａ，５ｂとハブ１とを弾性的に相対回動可能に結合し
てある。１０はプレート部３の一側に隣接して配設した
摩擦板１１ａとドライブプレート５ａとの間に介装した
フリクシヨンプレートであり、このフリクションプレー
ト１０の内周端部に略半円環状のシート部１２を屈曲形
成し、このシート部１２を一方のドライブプレート５ａ
の球面座６ａに摺動可能な状態に当接してある。１３は
プレート部３の他側に隣接して配設した摩擦板１１ｂを
フリクシヨンプレート１４を介してプレート部３側へ押
圧する皿ばねであり、この皿ばね１３の内周端部が他方
のドライブプレート５ｂの球面座６ｂに摺接するシート
部１５を構成している。１６はプレート部３の両側のド
ライブプレート５ａ，５ｂを連結固定するストップピン
であり、１７はクッシヨニングプレート１８を介して、
一方のドライブプレート５ａにリベット１９固定される
フエーシングである。

以上の実施例構造によれば、第２図仮想線で示したよう
にフライホイール２０に対してドライブプレート５ａ，
５ｂが非平行状態に組付けられたとしても、実際の使用
においてプレッシャプレート２１の押圧力がフェーシン
グ１７及びドライブプレート５ａ，５ｂに作用すると、
フェーシング１７及びドライブプレート５ａ，５ｂは、
ドライブプレート５ａ，５ｂの球面座６ａ，６ｂがシー
ト部１２，１５に案内され（摺接し）つつハブ１の中心
軸線上の一点を中心とする同心円上を移動することとな
り、フェーシング１７の側面全体がフライホイール２０
に均一に押し付けられるまで円滑に揺動するため、プレ
ッシャプレート２１やフライホイール２０に対して自ず
と平行になる。一方、クラッチを切り、プレッシャプレ
ート２１の押圧力が解除された場合、皿ばね１３のばね
力で球面座６ａ，６ｂがシート部１２，１５に押圧され
ている。そのため球面座６ａ，６ｂとシート部１２，１
５との間に摩擦力を生じ、この摩擦力により、フエーシ
ング１７及びドライブプレート５ａ，５ｂがプレッシヤ
プレート２１やフライホイール２０に対して平行な状態
に維持される。従つて、フエーシング17の振れはなくな
り、この振れが原因で起るクラッチ切れ不良を生じるこ
とがない。

尚、本実施例において、プレート部３の一側に配設され
るフリクシヨンプレート１０及びプレート部３の他側に
配設される皿ばね１３にそれぞれシート部１２又はシー
ト部１５を設ける態様を示したが、これに限られるもの
でなく、皿ばね１３を使用しないで、左右一対のドライ
ブプレート5a，５ｂの弾性力のみでプレート部３を挾持
するような場合には、プレート部３両側に配設されるフ
リクションプレート１０，１４にシート部を形成する態
様にしてもよい。又、シート部１２，１５は、本実施例
のように全周に渡り球面座６ａ，６ｂに摺接させる態様
でなく、複数個の突起を円周方向に配設して、シート部
と球面座とを円周方向の複数箇所で摺接させる態様とし
てもよい。

考案の効果 以上のように本考案によれば、ハブのプレート部両側に
対峙する一対のドライブプレートの各内周端にハブの中
心軸線上の一点を共通の中心点とする球面座をそれぞれ
湾曲形成すると共に、プレート部の両側に各球面座に摺
接するシート部を設けて、ドライブプレートをハブに対
して揺動可能に組付けてあるため、従来例のようにハブ
のボス部とドライブプレートとの間に球面軸受等の部品
を介在させることなく、クラッチデイスクのスプライン
に対するフエーシング摩擦面の振れにより生じるクラッ
チ切れ不良を容易に防止することができる。

従つて、部品点数の増加及び製品価格の増加を招来する
ことなく、簡便にクラッチデイスクの性能を向上できる
という実用上多大な効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示すクラッチデイスクの正
面図、第２図は第１図のII−II断面図、第３図は第２図
のＡ部拡大図、第４図は一方のドライブプレートの断面
図、第５図は他方のドライブプレートの断面図、第６図
は従来のクラッチデイスクの断面図である。 １…ハブ、２…ボス部、３…プレート部、５ａ，５ｂ…
ドライブプレート、６ａ，６ｂ…球面座、７，８…窓、
９…圧縮ばね、１２，１５…シート部、１７…フエーシ
ング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ボス部とプレート部を有するハブ及び前記
   ボス部に外嵌された状態で前記プレート部の両側に対峙
   する一対のドライブプレートが、それらに形成した複数
   の窓内に収容した圧縮ばねによって弾性的に相対回動可
   能に結合されていると共にこれらのドライブプレートの
   少なくともいずれか一方の外周にフェーシングを取付け
   てなるクラッチディスクにおいて、前記両ドライブプレ
   ートの内周端にハブの中心軸上の一点を共通の中心点と
   する球面座をそれぞれ湾曲形成すると共に、前記プレー
   ト部の両側に前記各球面座に摺接するシート部を設け
   て、ドライブプレートをハブに対して揺動可能に組付け
   たことを特徴とするクラッチディスク。