JP3204833B2 - クラッチディスク組立体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、クラッチディスク組立
体、特に、入力側回転体から出力側回転体にトルクを伝
達するクラッチディスク組立体に関する。

【０００２】

【従来の技術】クラッチディスク組立体は、一般に、エ
ンジン側のフライホイールとトランスミッション側のメ
インドライブシャフトとの間に配置されている。クラッ
チディスク組立体は、メインドライブシャフトに連結さ
れる円板状プレートと、円板状プレートの外周に固定さ
れた複数のクッショニングプレートと、クッショニング
プレートの両側面に配置されリベットによりクッショニ
ングプレートに固定された円環状摩擦フェーシングとを
備えている。この摩擦フェーシングが、クラッチカバー
組立体のプレッシャプレートによりフライホイールの側
面に押圧されると、フライホイールのトルクが円板状プ
レート側に伝達される。

【０００３】プレッシャプレートが摩擦フェーシングを
押圧しだすと、摩擦フェーシングはクッショニングプレ
ートとともにフライホイール側に移動する。そして、摩
擦フェーシングの側面がフライホイールに当接すると、
次にクッショニングプレートが弾性変形する。このクッ
ショニングプレートの弾性変形により、クラッチ連結の
初期時においてクッショニング特性が得られる。この結
果、クラッチ連結時のショックが吸収される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記従来の構造では、
クッショニングプレートはリベットにより摩擦部材に固
定されている。しかし、たとえばクラッチ連結から生じ
る高温によって摩擦フェーシングが収縮すると、リベッ
トの頭部と摩擦フェーシングとの軸方向間で隙間が生じ
てしまう。すなわち、摩擦フェーシングとクッショニン
グプレートとが軸方向にがたつく。その結果、フェーシ
ングの回りトルクが低下し、それがクラッチディスク組
立体のバースト強度低下にも繋がる。

【０００５】本発明の目的は、摩擦部材とクッショニン
グプレートとの軸方向隙間を生じにくくすることにあ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係るクラッチデ
ィスク組立体は、入力側回転体から出力側回転体にトル
クを伝達するものであり、円板状プレートと複数のクッ
ショニングプレートと２枚の円環状摩擦部材とリベット
とを備えている。円板状プレートは、出力側回転体に連
結される。複数のクッショニングプレートは、円板状プ
レートの外周に固定される。２枚の円環状摩擦部材は、
複数のクッショニングプレートの両側面に配置されると
ともに入力側回転体に連結可能である。リベットは、複
数のクッショニングプレートと２枚の摩擦部材とを固定
する。クッショニングプレートはリベットによって摩擦
部材に固定された座面を有し、座面は摩擦部材に対して
互いに離れる方向に作用する初期荷重を与えている。

【０００７】クッショニングプレートの座面は自由状態
では湾曲しているのが好ましい。

【０００８】

【作用】本発明に係るクラッチディスク組立体では、円
板状摩擦部材が入力側回転体に連結されると、入力側回
転体のトルクが入力される。トルクは、クッショニング
プレートから円板状プレートに伝達され、出力側回転体
に出力される。クッショニングプレートの座面は、摩擦
部材に対して互いに離れる方向に作用する初期荷重を与
えているので、たとえ熱により摩擦部材が収縮したとし
ても、座面と摩擦部材との軸方向間は隙間が生じにく
い。

【０００９】クッショニングプレートの座面が自由状態
では湾曲している場合には、前記作用がより顕著にな
る。

【００１０】

【実施例】図１及び図２は、本発明の一実施例によるク
ラッチディスク組立体１を示している。このクラッチデ
ィスク組立体１は、エンジン側のフライホイール３１か
らトランスミッション側のメインドライブシャフト３２
にトルクを伝達するための装置である。図１において、
Ｏ−Ｏはクラッチディスク組立体１の回転軸線である。

【００１１】このクラッチディスク組立体１の中心に
は、メインドライブシャフト３２に連結されるスプライ
ンハブ２が配置されている。スプラインハブ２は、その
中心部に、図示しないメインドライブシャフト３２のス
プライン歯に噛み合うスプライン孔２ａを有している。
また、スプラインハブ２には、外周側に突出するフラン
ジ部３が一体に形成されている。フランジ部３には、外
周部に所定の間隔でストップピン用切欠き３ａが形成さ
れており、その内周側に５個の窓孔３ｂが円周方向等間
隔に形成されている。各窓孔３ｂには、トーションスプ
リング４が収容されている。スプラインハブ２の外周側
には、概ね円板状の１対のリテーニングプレート６及び
クラッチプレート７が配置されている。両プレート４，
５は、スプラインハブ１に対して相対回転自在に嵌合し
ている。リテーニングプレート６とクラッチプレート７
とはその外周部においてストップピン８によって一体的
に連結されている。ストップピン８は、フランジ部２の
ストップピン用切欠き３ａ内に配置されている。クラッ
チプレート６の外周部には、リベット９により複数のク
ッショニングプレート１６が連結されている。このクッ
ショニングプレート１６の両側面側にはそれぞれ摩擦フ
ェーシング１５が配置されている。摩擦フェーシング１
５はリベット１７によりクッショニングプレート１６に
固定されている。この摩擦フェーシング１５が図示しな
いプレッシャプレートによってフライホイール３１に押
し付けられると、フライホイール３１のトルクがクラッ
チディスク組立体１に入力されることになる。

【００１２】次に、図３を用いてクッショニングプレー
ト１６と摩擦フェーシング１５との連結について詳細に
説明する。図２に示すように、各クッショニングプレー
ト１６は、クラッチプレート７の外周に固定された固定
部１６ａと、固定部１６ａに一体形成されたクッショニ
ング部１６ｂとから構成されている。クッショニング部
１６ｂは、軸方向に段差のついた弾性変形可能なプレー
トである。クッショニング部１６ｂは、一方の摩擦フェ
ーシング１５にリベット１７により固定された第１座面
部１６ｃと、第１座面部１６ｃと異なる平面に位置し他
方の摩擦フェージング１５にリベット１７により固定さ
れた第２座面部１６ｄと、第１座面部１６ｃと第２座面
部１６ｄとを連結する連結部１６ｅと、各座面部１６
ｃ，１６ｄの両端側に斜め方向に延びる傾斜部１６ｆと
から構成されている。リベット１７は、胴部が摩擦フェ
ーシング１５の孔１５ａとクッショニングプレート１６
の孔１６ｇとを貫通している。摩擦フェーシング１５に
は、リベット１７の摩擦フェーシング１５間側の頭部１
７ａに対応する位置に孔１５ｂが形成されている。

【００１３】図４に示すように、組付け前の自由状態に
おいてはクッショニングプレート１６の第１及び第２座
面部１６ｃ，１６ｄは湾曲状態である（第２座面部１６
ｄのみ図示）。そのため、図３のように平坦な摩擦フェ
ーシング１５の表面に当接するように固定されると、第
１及び第２座面部１６ｃ，１６ｄは、それぞれに接する
摩擦フェーシング１５に対して互いに離れる方向に作用
する初期荷重を与えている。すなわち、第１及び第２座
面部１６ｃ，１６ｄの円周方向両端は、接する摩擦フェ
ーシング１５に付勢力を与えている。また、第１及び第
２座面部１６ｃ，１６ｄの円周方向中間部はリベット１
７の頭部１７ａを反対側の摩擦フェーシング１５側に付
勢している。その結果、たとえばクラッチ連結による熱
によって摩擦フェーシング１５が収縮すると、摩擦フェ
ーシング１５が軸方向に収縮するにつれて第１及び第２
座面部１６ｃ，１６ｄの円周方向両端が摩擦フェーシン
グ１５に追従する。そのため、摩擦フェーシング１５と
クッショニングプレート１６の座面１６ｃとの間に軸方
向の隙間が生じにくく、両部材がガタつきにくい。この
結果、摩擦フェーシング１５の回りトルクの低下が防止
され、さらにバースト強度の低下を防止することができ
る。

【００１４】フランジ部３の窓孔３ｂに対応して、リテ
ーニングプレート６には窓孔６ａが、クラッチプレート
７には窓孔７ａが形成されている。この窓孔６ａ，７ａ
はトーションスプリング４を外側から覆うように切り起
こされており、その内部にトーションスプリング４を収
納している。フランジ部３の内周部とリテーニングプレ
ート６の内周部との間には、トランスミッション側か
ら、環状のコーンスプリング１１，フリクションプレー
ト１２及びフリクションワッシャ１３が配置されてい
る。フランジ部３とクラッチプレート７の内周部との間
には、フリクションワッシャ１４が配置されている。こ
れらのフリクションワッシャ１３，１４がフランジ部３
と両プレート６，７との間で摺動することによって、所
定の摩擦力が生じるようになっている。

【００１５】次に、動作について説明する。図示しない
プレッシャプレートが摩擦フェーシング１５をフライホ
イール３１側に押圧する。摩擦フェーシング１５がフラ
イホイール３１側に移動しフライホイール３１に当接す
ると、次に２枚の摩擦フェーシング１５の間でクッショ
ニングプレート１６が弾性変形する。このときのクッシ
ョニング特性により、クラッチ連結時のショックが吸収
される。

【００１６】摩擦フェーシング１５がフライホイール３
１に圧接されると、フライホイール３１のトルクが摩擦
フェーシング１５に入力される。トルクは、摩擦フェー
シング１５からクッショニングプレート１６を通り、ク
ラッチプレート７及びリテーニングプレート６に伝達さ
れる。この伝達されたトルクは、トーションスプリング
４を介してフランジ部３に伝達され、さらにスプライン
ハブ２からメインドライブシャフト３２へと出力され
る。

【００１７】

【発明の効果】本発明に係るクラッチディスク組立体で
は、クッショニングプレートの座面は、摩擦部材に対し
て互いに離れる方向に作用する初期荷重を与えているの
で、熱により摩擦部材が収縮したとしても、座面と摩擦
部材との間は隙間が生じにくい。

【００１８】クッショニングプレートの座面が自由状態
では湾曲している場合には、前記効果がより顕著にな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例によるクラッチディスク組立
体の縦断面概略図。

【図２】図１の一部切欠きII矢視図。

【図３】図１のIII −III 断面図。

【図４】装着前の摩擦フェーシング及びクッショニング
プレートの部分縦断面図。

【符号の説明】

１ クラッチディスク組立体 ７ クラッチプレート １５ 摩擦フェーシング １６ クッショニングプレート １７ リベット ３１ フライホイール ３２ メインドライブシャフト

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】入力側回転体から出力側回転体にトルクを
   伝達するクラッチディスク組立体であって、 前記出力側回転体に連結される円板状プレートと、 前記円板状プレートの外周に固定された複数のクッショ
   ニングプレートと、 前記複数のクッショニングプレートの両側面に配置され
   るとともに前記入力側回転体に連結可能な２枚の円環状
   摩擦部材と、 前記複数のクッショニングプレートと前記２枚の摩擦部
   材とを固定するリベットとを備え、 前記クッショニングプレートは前記リベットによって前
   記摩擦部材に固定された座面を有し、前記座面は前記摩
   擦部材に対して互いに離れる方向に作用する初期荷重を
   与えている、クラッチディスク組立体。
2. 【請求項２】前記クッショニングプレートの前記座面は
   自由状態では湾曲している、請求項１に記載のクラッチ
   ディスク組立体。