JP4023893B2 - 発光素子アレイ及び発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ダイオード素子等の発光素子アレイ及び発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
発光ダイオード(light emitting diode:LEDという)素子は、発光が鮮やかであること、駆動電圧が低く周辺回路が容易になるなどの理由により従来より表示デバイスとして幅広く使用されている。
【0003】
LEDは、従来、例えば「固体発光素子とその応用;中村哲郎、内丸清、産報、1971」に開示されているように、化合物半導体基板に不純物を拡散してpn接合を形成することにより作製する。
【0004】
図24は従来のLEDの構造を模式的に示す図である。
【0005】
図24において、LEDは、n型GaAs基板11、n型GaAs基板11上にTeをドープしエピタキシャル成長させたn型GaAsP半導体エピタキシャル層12、Znを拡散して形成されたp型GaAsP半導体エピタキシャル層13、Zn拡散のマスク材となるSiO2絶縁膜14、Al電極15及びAu−Ge電極16から構成され、n型GaAsP基板にp型不純物であるZnを拡散してpn接合を形成した構造である。この構造の接合は、一般的に、ホモ接合と呼ばれている。
【0006】
この構造のLEDは作製工程が比較的少なく容易に作製できる利点があるが、接合を通して注入された少数キャリアは多数キャリアと再結合する際に発生する光の波長が基板半導体のエネルギバンドギャップと等しいため、発生した光は光が通過するp型領域での光吸収が、大きく、発光効率が高くならないという問題点があった。
【0007】
上記ホモ接合によるLEDに対して、例えば、「発光ダイオード;奥野保男、産業図書、1994」に記載されているように、異なる結晶を接合して形成されたpn接合(以下、ヘテロ接合という)を用いたLEDがある。ヘテロ接合にすることによりホモ接合よりもLEDの発光効率を向上することができる。
【0008】
図25及び図26はへテロ構造を用いたLEDの構造及びそのエネルギバンドギャップの例を示す図であり、図25は一般的にシングルヘテロ構造(SH構造)と呼ばれるLEDの例を、図26は一般的にダブルヘテロ構造(DH構造)と呼ばれるLEDの例を示す。
【0009】
図25のシングルヘテロ構造と呼ばれるLEDは、p型GaAs基板上にp型のAl0.35Ga0.65As層をエピタキシャル成長し、さらにその上にn型Al0.65Ga0.35As層をエピタキシャル成長した構造である。
【0010】
この構造では図25(b)に示すように、接合を通して注入された正孔はヘテロ接合界面でのエネルギ障壁によって拡散が阻止され再結の割合が増加する。また、発光波長は、Al0.35Ga0.65Asのエネルギバンドギャップと等しく、光取り出しの窓となるn型Al0.65Ga0.35Asのエネルギバンドギャップが、Al0.35Ga0.65Asのエネルギバンドギャップよりも大きいので、発生した光は窓となる半導体領域では吸収されない。したがって、発光効率が増加する。
【0011】
また、図26のダブルヘテロ構造と呼ばれるLEDは、発光領域であるp型
Al0.35Ga0.65As活性層をその層のエネルギバンドギャップよりも大きいp型Al0.65Ga0.35Asクラッド層、n型Al0.35Ga0.65Asクラッド層で挟んだ構造である。この構造では、図26(b)に示すように接合を通して注入された電子、正孔はヘテロ界面のエネルギ障壁によって拡散が阻止され再結合の割合が増加する。また、シングルヘテロLED同様、窓領域での光の吸収もなく、発光効率が増加する。
【0012】
上述したLEDを集積したLEDアレイは、例えばLEDプリンタの光源として使用される。ホモ接合でLEDアレイを作製する場合には、拡散マスク開口部を通して半導体へ拡散を行う選択拡散によってpn接合アレイを容易に作製することができる。この選択拡散によるLEDアレイの作製は工程が容易であり、例えば、1200dpiLEDアレイのような超高密度LEDアレイも作製可能である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のLEDアレイでは、発光効率を向上できるへテロ接合でLEDアレイを作製する場合には、例えば、メサエッチングによって各LEDを素子分離する必要があるので、LEDアレイの高密度化は素子分離プロセス制御に依存することになる。このため、素子分離プロセス制御の限界に対応して、へテロ接合LEDアレイの高密度化に限界があった。
【0014】
本発明は、低コスト高歩留りで量産可能な高発光効率の高密度発光素子アレイ及び発光素子を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明による発光素子アレイは、第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも2層の半導体エピタキシャル層へ第2導電型の不純物を選択的に拡散させて複数の発光素子を作製した発光素子アレイであって、少なくともエネルギバンドギャップが相対的に小さい材料からなり拡散領域のフロントが層内に存在する第1の半導体エピタキシャル層と、エネルギバンドギャップが相対的に大きい材料からなる第2の半導体エピタキシャル層とを積層した構造を備え、前記第2の半導体エピタキシャル層上の少なくとも拡散マスク開口部内又は層間絶縁膜開口部内に、pn接合部分を削除することにより、pn接合が存在しない第2導電型の不純物拡散をされた、電極とオーミックコンタクトを有すると供に該不純物拡散領域内で該電極より広く形成されたGaAs層領域を設けたことを特徴とする。
【0019】
本発明による別の発光素子アレイは、第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも3層の半導体エピタキシャル層へ第2導電型の不純物を選択的に拡散させて複数の発光素子を作製した発光素子アレイであって、少なくともエネルギバンドギャップが相対的に小さい材料からなり拡散領域のフロントが層内に存在する第1の半導体エピタキシャル層と、エネルギバンドギャップが相対的に大きい材料からなる第2の半導体エピタキシャル層と、前記第1の半導体エピタキシャル層に接し、エネルギバンドギャップが前記第1の半導体エピタキシャル層のエネルギバンドギャップより大きい第3の半導体エピタキシャル層とを積層した構造を備え、前記第2の半導体エピタキシャル層上の少なくとも拡散マスク開口部内又は層間絶縁膜開口部内に、pn接合部分を削除することにより、pn接合が存在しない第2導電型の不純物拡散をされた、電極とオーミックコンタクトを有すると供に該不純物拡散領域内で該電極より広く形成されたGaAs層領域を設けたことを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明に係る発光素子アレイ及び発光素子は、単独のLED又はLEDアレイに適用することができる。
【0036】
第1の実施形態
図1は本発明の第1の実施形態に係るLEDの構造を示す断面図、図2は、図1に示すLEDを複数個配置したLEDアレイの構造を示す断面図である。
【0037】
図1及び図2は、エピ層1とエピ層2での拡散速度の差を強調して描かれた図で、拡散領域の断面形状はエピ層1とエピ層2の境界で段差のついた形状に描かれている。ところが実際には、エピ層1とエピ層2のAl組成の選び方(xとyの値)によっては図3に描かれているように、拡散断面形状において、エピ層1とエピ層2の境界で顕著な段差が見えない場合もある。
【0038】
これらの図において、LED100は、n型GaAs基板101、n型GaAs基板101上にGaAsバッファ層110を設け、その上にエピタキシャル成長させた厚さd1のn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)102(x>0)及び厚さd2のn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)(y>0)103、亜鉛(Zn)を拡散して形成されたp型拡散領域104、選択拡散領域104の拡散フロント(基板主面と略平行なpn接合面)105、p側電極106、Zn拡散のマスク材となる例えばSiN絶縁膜からなる層間絶縁膜107、例えばAu合金電極からなる裏面電極108により構成される。
【0039】
ここで、Zn選択拡散領域104は、エピ層2内に形成されたZn拡散領域121とそれと連続しているエピ層1内に形成されたZn拡散領域122である。
【0040】
LED100は、n型GaAs基板101の上にn型GaAsバッファ層を設け、その上に厚さd1のn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)102と厚さd2のn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)103を積層した構造である。ここで、n型GaAsバッファ層は、例えば約1000Åとすることができる。また、混晶比x、yは、x<yの関係を満たす。すなわち、エピ層1のエネルギバンドギャップEg1はエピ層2のエネルギバンドギャップEg2よりも小さい構造である。
【0041】
また、LED100には、p型不純物であるZnを選択的に拡散した拡散領域104が形成されている。ここで、拡散深さXjすなわちエピ層2の表面から拡散フロントまでの距離は、エピ層2の厚さd2に対して、d2<Xj<(d1+d2)の関係を満たす。すなわち、拡散フロント105は、エピ層1に達している。
【0042】
LED100のZn拡散領域側(p型側)の電極、及びGaAs基板裏面側(n型側)の電極に関しては、p側電極106として例えばAl系材料を、n側電極108として例えばΑu合金系材料を、それぞれ使用してオーミック電極を設けてある。p側電極106とn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)103は、層間絶縁膜107によって絶縁されている。層間絶縁膜107は、例えば、SiN膜である。
【0043】
図2は上記LED100を複数個配置した例であり、図に示すように拡散領域104が等ピッチで配列してある。
【0044】
次に、積層構造へ選択的に不純物を拡散して作製するLEDアレイの製造方法について説明する。
【0045】
AlxGa1-xAs(エピ層1)/AlyGa1-yAs(エピ層2)積層構造(x,y>0,y>x)へZnを拡散して作製する場合を例にとり説明する。
【0046】
前記図1及び図2は、積層構造へZnを拡散した場合の一般的な拡散領域の形状を模式的に示している。ここで、Zn選択拡散領域は、n型のエピ層1とn型のエピ層2にZnが拡散して形成された拡散領域である。エピ層2の混晶比yはエピ層1の混晶比xよりも大きい。AlxGa1-xAsへZnを拡散する場合、混晶比xが大きいほど拡散速度が早いことが知られている。したがって、y>xとした場合には横方向の拡散距離はエピ層2の方がエピ層1よりも大きくなる。
【0047】
例として、x=0.1,y=0.35となるように選ぶ場合について図2を参照しながら説明する。
【0048】
例えばx=0.1,y=0.35とすると拡散温度を約640℃としたとき、エピ層2での拡散速度はエピ層1での拡散速度の約4倍となると見積もることができる。例えば、1200dpiのドット密度でLEDを一列に配列する場合には、LEDのピッチは約21.2μmであり、横方向拡散によって隣接LEDがショートしないようにするには、拡散開口部Wlを5μm、隣接した拡散領域の最小間隔(da)minを10μmとした場合には、横方向拡散距離Xlは約3μm以下でなければならない。エピ層1、エピ層2のそれぞれの層厚をd1、d2、拡散深さをΧjとする。本発明者等の実験によれば、単一の混晶比における横方向拡散と拡散深さの比βを約1となるように拡散を実施できる。
【0049】
したがって、エピ層2の上端の横方向拡散フロントまでの距離を横方向拡散距離Xlとし、エピ層1とエピ層2でのエピ層に垂直方向(深さ方向)拡散速度の比をαとすれば、
とすればよい。Lpはドットピッチである。したがって、例えば、
Xlを3μm、Xjを1μm、αを4としたとき、d2は
と設計できる。d2=0.3μm、Xj=1μmとすれば、エピ層1の層厚d1は0.7μm以上にすればよく、例えばd1=1μmとすればよい。
【0050】
ここで逆に例えば、d2=0.3μm、d1=1μmと設計した場合には、Xjは必ずしも1μmである必要はなく、0.3μm<Xj<1.3μm、すなわち、
エピ層厚d2<Xj<(エピ層厚d1+エピ層厚d2)の範囲で、
(Lp-Wl-da)/2≧Xl=[d2+α×(Xj-d2)]×β
を満たすようにXjを決めることができる。
【0051】
このような薄い層厚のエピ層は、例えば、ΜOCVD(有機金属気相エピタキシャル成長法)やΜBE(分子線エピタキシー)法によって精度よく、また、大口径の基板面内で均一に作製することが可能である。
【0052】
図4〜図6は上記LEDアレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【0053】
上述したような積層エピ構造に開口部を有する絶縁膜301を形成した後、Znを含む酸化物膜(拡散源膜)302とZnの飛散を防止するための絶縁膜(キャップ膜)303を膜付けする(図4参照)。
【0054】
次いで、図5に示すように窒素雰囲気の開管アニール炉内にウエハを設置して拡散を実施する。本発明者等の実験によれば、拡散温度は、例えば500℃〜650℃とするのがよい。この温度で拡散をすることによって、所望の拡散深さ制御を精密に実施することができる。拡散時間は所望のXjに応じて適宜設定することができる。
【0055】
次いで、図6に示すように拡散後に拡散源膜302とキャップ膜303を除去した後、拡散領域表面の一部にオーミックコンタクトを有する電極(p側電極)304を形成する。電極材料はAl系の金属をEB蒸着によって膜付けした後、標準的なフォトリソグラフィー、エッチング技術によって電極パターンを形成できる。電極パターン形成後に良好なオーミックコンタクトを得るためにウエハをシンタする。基板裏面にはn側電極としてAu系の金属をEB蒸着で膜付けし、良好なオーミックコンタクトを得るためにウエハをシンタする。
【0056】
以上でLEDアレイが完成する。
【0057】
以下、上述のように構成されたLEDアレイの動作を説明する。
【0058】
図7はLEDに順方向に電圧を印加した時のエネルギバンド図を模式的に示した図である。図7はあくまで動作原理を概念的に示すための模式図であり、エピ層1とエピ層2の界面におけるエネルギバンド不連続などの細かい構造を厳密に示す図ではない。
【0059】
図7において、領域2(エピ層2の領域)のエネルギバンドギャップは領域1(エピ層1の領域)のエネルギバンドギャップよりも大きい。pn接合はエピ層1内、すなわち領域1内に形成されている。
【0060】
領域2のエネルギバンドギャップは領域1のエネルギバンドギャップよりも大きいために領域1と領域2の境界にエネルギ障壁が存在する。したがって、半導体エピタキシャル層の積層面に垂直方向に関しては、Zn拡散領域へ注入された電子はエネルギ的に領域2への拡散が阻止される。このため、基板の主面に垂直な方向(エピ層1とエピ層2の積層方向)では注入キャリアを閉じ込めることができ、領域2が存在しない場合と比較して、領域1へ注入された電子の密度が非常に高くなる。このことにより正孔と再結合する電子の数が増加し、電子−正孔の再結合によって発生する光の強度が増加する。すなわち、LEDの発光効率が増加する。
【0061】
pn接合は拡散領域104の拡散フロント105に位置するので、pn接合は領域1だけではなく、横方向拡散フロントとして領域2にも形成されている。pn接合に順方向の電圧を印加した時の電子電流密度Jeは、
Je=−qKexp[−qVD/kT](exp[qV/kT]−1)
である。ここで、qは電荷、VDは拡散電位、Vは印加電圧、kはボルツマン定数、Tは温度、Kは比例定数である。いま、Vを一定にすれば、拡散電位VDが小さいほどJeが大きい。正孔についても同様に考えられる。
【0062】
ここで、エピ層1に形成されているpn接合の拡散電位VD1とエピ層2に形成されているpn接合の拡散電位VD2とを比較する。n型領域、p型領域ではそれぞれフェルミ準位が伝導帯の底、価電子帯の頂上のエネルギレベルとほぼ同等とすれば、VD1〜Eg1,VD2〜Eg2である。したがって、本実施形態の構造ではVD1<VD2である。つまり、エピ層1内に形成されているpn接合を通って流れる電流密度は、エピ層2内に形成されているpn接合を通って流れる電流密度よりも圧倒的に大きい。このことを次に具体的な数値を使って説明する。
【0063】
例えば、x=0.1,y=0.35とするとEg2-Eg1〜0.3eVであるので、VD2-VD1〜0.3evとして、エピ層1の接合を流れる電子電流密度J1とエピ層2の接合を流れる電子電流密度J2の比を求めると、
と見積もることができる。つまり、実質的にほぼ全電子電流がエピ層1内に形成されたpn接合を通して注入される。したがって、キャリアの注入はほぼ完全にエピ層1内に形成されたpn接合を通して起こり、電子−正孔の再結合は主としてエピ層1における再結合が支配的となるようにすることができる。したがって、発光波長がほぼエピ層1のエネルギバンドギャップEgに等しい光のスペクトルが得られる。エピ層2のエネルギバンドギャップEg2は、エピ層1内で発生する光のエネルギよりも大きいので、エピ層1で発生した光は窓となるエピ層2では吸収されない。つまり、発光効率が減少しない。
【0064】
このような構造にすれば、選択拡散におけるエピ層2でのp型領域の広がりを制限することができ、各LEDの絶縁が確保でき、高密度LEDアレイが実現できる。
【0065】
また、エピ層1を電子の平均自由工程以下となるような薄い厚さとしても電子をエピ層1とエピ層2の界面のエネルギ障壁によって拡散を防止できるので、エピ層2が存在しない時のような発光効率の減少はなく、拡散深さ制御の精度に応じてエピ層1の厚さを薄くすることもできる。エピ層1の厚さを薄くすれば、それに応じて注入電子の密度を高くすることができ、発光効率を上昇させることもできる。
【0066】
以上説明したように、第1の実施形態に係るLEDアレイは、n型GaAs基板101、n型GaAs基板101上にエピタキシャル成長させた厚さd1のn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)(x>0)102、厚さd2のn型の
AlyGa1-yAs層(エピ層2)(y>x)103、Znを拡散して形成されたp型拡散領域104、エピ層1内に存在する拡散領域104の拡散フロント105、p側電極106、層間絶縁膜107及びn側電極108を備え、エピ層1のエネルギバンドギャップEg1はエピ層2のエネルギバンドギャップEg2よりも小さく(Eg1<Eg2)、かつ、(Lp-Wl-da)/2≧Xl=[d2+α×(Xj-d2)]×β及びd2<Xj<(d1+d2)なるエピ層1及びエピ層2の層厚の関係を満たすように層厚の薄いn型のエピ層1、エピ層2を積層した構造にエピ層2の層厚よりも深いp型の拡散領域を選択的に形成するように構成したので、注入電子密度を高くすることができ、発光効率を向上させることができる。また、注入電子をエピ層1とエピ層2の界曲のエネルギ障壁によって閉じこめることができるので、エピ層1を電子の平均自由工程よりも薄くすることもできる。したがって、全体のエピ層を薄くすることが可能となる。
【0067】
このように、選択拡散深さを浅くすることができるのでエピ層2での大きい横方向のZn拡散距離が制限でき、1200dpiのような超高密度LEDアレイでも一列に配列した各LEDがショートすることなくLEDアレイが製造できる。
【0068】
また、Zn固相拡散によって拡散を行うので拡散深さが浅い場合でも精度よく拡散制御が実施できる。
【0069】
第2の実施形態
図8は本発明の第2の実施形態に係るLEDアレイの1素子について構造を模式的に示す図である。本実施形態に係るLEDの構造の説明にあたり前記図1と同一構成部分には同一符号を付している。また、前記図1同様、各層におけるZn拡散スピードの差を強調して拡散断面形状を模式的に描いている。
【0070】
図8において、502は層間絶縁膜、503はp側電極(例えば、Al系電極)、511はn型GaAs層、512はn型GaAs層にZnを選択的に拡散することによって形成されたGaAs層のZn拡散領域、513はn型エピ層2にZnが拡散することによって形成されたエピ層2のZn拡散領域、514はn型エピ層1にZnが拡散することによって形成されたエピ層1のZn拡散領域である。少なくとも、エピ層2のZn拡散領域と電気的に接続している、Znが拡散されたGaAs層にはpn接合が存在しない。もしも、エピ層2のZn拡教領域と電気的に接続している、Znが拡散されたGaAs層内にpn接合が存在する場合には、LEDに順方向電流を印加した時に、GaAs層内に存在するpn接合を通して電流が流れるので、GaAs層からの発光が主となり、エピ層1の半導体のエネルギバンドギャップに対応した所望の発光波長の高発光効率のLEDとして動作しない。
【0071】
図8に図示した実施形態では、エピ層2のZn拡散領域と電気的に接続している、Znが拡散されたGaAs層領域は、島状に形成されており、n型GaAs層と完全に分離されている。すなわち、本実施形態では、エピ層2の上にあるGaAs層内にはpn接合が存在しない構造である。層間絶縁膜開口部領域内の島状のZn拡散領域されているGaAs層の一部の領域又は全領域は、p側電極とオーミックコンタクトを形成している。p側電極としては例えば、Al系電極を使用することができる。
【0072】
GaAs層511及び512は、例えば、約500Åと薄く形成することができる。Zn拡散されたGaAs層領域はZn拡散されていないn型のGaAs層とは接触する領域がなく島状に分離されている。すなわち、Al電極とオーミックコンタクトを形成しているGaAs層には順方向に電圧が印加されるpn接合が存在しない構造である。また、GaAs層511内にはpn接合が存在しない構造である。GaAs層511及び512より下の積層構造は前記第1の実施形態と同様、エピ層2のエネルギバンドギャップがエピ層1のエネルギバンドギャップよりも大きく、拡散領域104の拡散フロントすなわち、基板主面と略平行のpn接合面はエピ層1内にある。
【0073】
次に、上記LEDアレイの製造方法について説明する。
【0074】
図9〜図12は上記LEDアレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【0075】
まず、前記第1の実施形態と同様の製造工程によりZnを選択的に基板に拡散する(図9参照)。図9において、601は拡散マスク、511はn型GaAs層である。512はZnが拡散されたGaAs層領域である。
【0076】
次いで、エピ層2の上にΖnが拡散されたGaAs層領域が島状に残るように、GaAs層内に形成されたpn接合を除去し、GaAs層には順方向に電圧が印加されるpn接合が存在しないようにする。この工程では、
1)拡散領域表面が完全に露出するように、拡散開口部よりも広くGaAs層表面が露出するようにGaAs表面を被覆している絶縁膜を加工する。
【0077】
2)次に、GaAs層内pn接合領域及び、GaAs層内pn接合領域周辺のn型GaAs層領域511の一部の領域とGaAs層内pn接合領域周辺のZnが拡散されているGaAS層領域512の一部の領域をエッチング除去し、エピ層2の上にΖnが拡散された島状のGaAs層領域901を形成する。島状のGaAs領域901は、少なくとも一部の領域が拡散開口部内又は層間絶縁膜開口部内に存在するように形成されている。島状のGaAs領域901の少なくとも一部の領域はp側電極とオーミックコンタクトを形成している。GaAs層内に形成されたpn接合をエッチング除去する工程では、例えば、ウエットエッチングによって加工する場合には、エッチャントとしてリン酸過水を用いることができる。
【0078】
拡散開口部内又は層間絶縁膜開口部内の少なくともオーミックコンタクトを形成する箇所に島状にGaAs層901が残り、島状のZn拡散GaAs層領域がGaAs層内に形成されたpn接合領域と電気的に分離されるように、pn接合領域を含む一部のGaAs層が除去されている(エッチング除去した領域が図10の902である)構造であれば製造方法は問わない。この工程では標準的なフォトリソグラフィの手法を用いる。
【0079】
次いで、図11に示すように電極とn型領域がショートしないように層間絶縁膜502を形成する。
【0080】
次いで、図12に示すようにp側の電極としてAl系の電極パターンを形成し、n側電極605を形成する。
【0081】
以上でLEDアレイが完成する。
【0082】
以下、上述のように構成されたLEDアレイの動作を説明する。
【0083】
エピ層2がいかなるAl組成であっても表面にGaAs層があるために例えばAl電極によって簡単に良好なオーミックコンタクトが得られている。
【0084】
p側電極へプラスの電位を印加することによってpn接合に順方向電圧が印加される。p側電極503とオーミックコンタクトを有するp型GaAs層512及びn型GaAs層511にはpn接合は存在せずGaAsのn型領域からの電子の注入はない。したがって、第1の実施形態で説明したように、電子の注入は主としてエピ層1内に形成されたpn接合を介してp型領域に注入されエピ層1とエピ層2の界面に形成されたエネルギ障壁で、注入された電子がエピ層の積層方向についてエピ層1の領域に閉じこめられることに特徴がある。このLED素子のI−V特性は、エピ層1のpn接合のI−V特性が反映され、表面のGaAs層は影響を与えない。したがって、本素子へ順方向電流を印加した場合には、光はエピ層1内で発生し、光の波長はエピ層1の半導体のエネルギバンドギャップに対応している。
【0085】
以上説明したように、第2の実施形態に係るLEDアレイは、エピ層2の上にオーミックコンタクトを形成する電極と接するGaAs層を設け、このGaAs領域にばpn接合が存在しない構造としたので、接合の電気特性、発光特性に影響を与えない。また、エピ層2の組成に影響されることなく常に良好なオーミックコンタクトが容易に得られる。
【0086】
なお、上記第2の実施形態では、GaAs層を設けるようにしているが、Al混晶比の小さいAlxGa1-xAs層(x>0)でも容易にオーミックコンタクトをとることが可能になるためAl混晶比の小さいAlxGa1-xAs層を使用することもできる。
【0087】
ここで、LEDアレイの層間絶縁膜開口部領域の構造は以下のように構成することができる。
【0088】
図13及び図14は上記LEDアレイの層間絶縁膜開口部領域の構造を模式的に示す図である。また、図14(b)は図14(a)のA−A′矢視断面図である。
【0089】
これらの図において、701a及び701bはGaAsコンタクト領域、702はp側電極で、703は発光領域である。p側電極としては、例えばAl系電極を用いることができる。
【0090】
上記第2の実施形態では、図13に示すように層間絶縁膜開口部704領域のGaAs層をp側電極702直下の領域のみ残すようにしたが、図14(a)に示すようにGaAs層が、層間絶縁膜開口部704領域の他の領域に残存していてもGaAs層を薄くする限りは光の吸収による光量減少は少ない。
【0091】
また、拡散領域内に島状に形成したGaAs層領域と層間絶縁膜開口部704の位置関係に関しては、p側電極702とn型のエピ層がショートすることがないような層間絶縁膜の構造であれば、図13又は、図14(a)に示したような、島状GaAs領域と層間絶縁膜開口部の位置関係には限定されないことは明白である。例えば、図14(b)に示すように、GaAs層内のpn接合を除去した後に新たに設けた層間絶縁膜の一部が島状のGaΑs領域の一部にあってもよい。
【0092】
また、上記第2の実施形態では、層間絶縁膜開口部704領域のGaAs層のみ周囲のGaAs層と分離するようにしたが、図15に示すように分離領域がエピ層2に達していてもよい。
【0093】
第3の実施形態
図16は本発明の第3の実施形態に係るLEDアレイの1素子について構造を模式的に示す図である。本実施形態に係るLEDの構造の説明にあたり前記図1及び図8と同一構成部分には同一符号を付している。
【0094】
図16において、801はn型のAlzGa1-zAs層(エピ層3)(z>0)である。n型GaAs基板101上にn型のGaAsバッファ層を形成し、その上にn型のAlzGa1-zAs層(エピ層3)(z>0)801が形成されている。このAlzGa1-zAs層(エピ層3)801上にエピタキシャル成長させたn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)102及びn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)103が形成されて、n型のエピ構造が3層構造となっている。ここで、x,y,zの大きさの関係は、y>x,z>xである。
【0095】
前記第1の実施形態と同様に選択拡散によって形成された拡散領域は、エピ層1内に拡散フロントがある。
【0096】
エピ層3は、AlzGa1-zAs層で混晶比zはz>xである。例えば、エピ層1及びエピ層2を第1の実施形態と同様に、x=0.1,y=0.35とし、エピ層3をz=0.35とすることができる。エピ層3には拡散によるpn接合はないので、第1の実施形態の場合と同様、光はエピ層1内だけで発生する。また、電気特性はエピ層1に形成された接合の特性が支配的である。
【0097】
また、拡散領域にコンタクトを有するp側電極(Al電極)503と基板裏面にコンタクトを有するn側電極(裏面電極)605が設けられている。
【0098】
本実施形態に係るLEDアレイは、前記第1の実施形態で説明した製造方法と同様の方法によって作製することができる。
【0099】
以下、上述のように構成されたLEDアレイの動作を説明する。
【0100】
図17はLEDに順方向に電圧を印加した時のエネルギバンド図を模式的に示した図である。図17はあくまで動作原理を概念的に示すための模式図であり、エピ層1とエピ層2の界面におけるエネルギバンド不連続などの細かい構造は厳密には示していない。
【0101】
接合に順方向の電圧を印加すると、電子の注入は拡散電位の低いエピ層1に形成されたpn接合を介してp型領域に注入される。正孔も拡散電位の低いエピ層1に形成されたpn接合を介してn型領域に注入される。p型領域に注入された電子は、第1の実施形態の素子同様、基板の主面に垂直な方向、すなわち、エピ層1とエピ層2の積層面に対して垂直な方向には、エピ層1とエピ層2界面に存在するエネルギ障壁によってエピ層2への拡散が阻止される。
【0102】
一方、n型領域へ注入された正孔は、基板の主面に垂直な方向、すなわち、エピ層1とエピ層2の積層面に対して垂直な方向には、エピ層1とエピ層3の界面に存在するエネルギ障壁によって拡散が阻止される。したがって、注入された電子及び正孔の密度はエピ層1内で非常に高くなる。したがって、注入された電子が、多数キャリアである正孔と再結合して光が発生する確率が高くなる。同様に、注入された正孔が、多数キャリアである電子と再結合して光が発生する確率が高くなる。横方向に形成されている接合に関しては、この領域から注入された少数キャリアは、横方向に関しては、障壁はないが、注入された領域は通常平均自由工程に対して同等か数倍の領域が広がっており、平均自由工程内でほぼ全てのキャリアが再結合する。
【0103】
以上説明したように、第3の実施形態に係るLEDアレイは、n型GaAs基板101上にn型GaAsバッファ層を形成し、その上にエピタキシャル成長させたn型のAlzGa1-zAs層(エピ層3)801、このAlzGa1-zAs層(エピ層3)801上にエピタキシャル成長させたn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)102、及びn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)103の層構造とし、エピ層を3層としてエネルギバンドギャップの大きいエピ層2とエピ層3でエネルギバンドギャップの小さいエピ層1を挟んだ構造で、拡散フロントすなわち、基板の主面と略平行なpn接合面をエネルギバンドギャップの小さいエピ層1内にあるようにしたので、注入された電子と正孔はエピ層1とエピ層2及びエピ層1とエピ層3との間のエネルギ障壁で拡散が阻止されてエピ層1内でのキャリア密度が高くなり、エピ層1で高発光効率を実現できる。発光波長はエピ層1の半導体のバンドギャップエネルギで決まる発光波長が得られ、電気特性はエピ層1内に形成されたpn接合で決まる特性が得られる。
【0104】
また、前記第1の実施形態と同様に、n型のエピ積層構造に選択拡散領域により形成したpn接合を有するのでメサエッチングなどの素子分離をする必要がなく、完全なモノリシック構造のLEDアレイを形成できる。したがって、1200dpiのような超高密度LEDアレイも容易に形成することができる。
【0105】
ここで、上記実施形態では、エピ層3は単層として説明したが、必ずしも単層でなくてもよく,エピ層1に接するエピ層をAlzGa1-zAs層として以下、
AlqGa1-qAs/AlrGa1-rAs/…のn型多層構造としてもよい。
【0106】
図18は本実施形態の変形例を示す図である。図18において、前記第2の実施形態で示したように、エピ層2のAlyGa1-yAs層103上にn型のGaAs層802を設け、n型GaAs(エピ層4)/n型AlyGa1-yAs層(エピ層2)/n型AlxGa1-xAs層(エピ層1)/n型AlzGa1-zAs層(エピ層3)の積層構造へ拡散フロントがエピ層1内にあるようにZnを選択拡散して作製したpn接合で、少なくともGaAs層(エピ層4)802に形成されたGaAs層内のpn接合領域をエッチング除去して拡散開口部内に島状のZnが拡散されているGaAs層803を形成し、この島状のGaAs層領域803の一部又は全部の領域に電極コンタクト(オーミックコンタクト)を形成した構造である。層間絶縁膜開口部と島状のZn拡散GaAs層領域の位置関係は、前記第2の実施形態で図13及び図14を用いて変形例を説明したように、同様の変形例が可能である。
【0107】
このような構造にすることにより、AlyGa1-yAs層(エピ層2)103のAl組成がいかなる場合でもp側での良好な電極コンタクトを形成できる、という効果が得られる。
【0108】
第2の実施形態でも述べた通り、Αl組成sが小さい場合にはΖn拡散した
AlsGa1-sAs層(s>0)とp側電極は、LEDアレイとして使用する上で問題のない程度の低コンタクト抵抗のコンタクトを形成することができるので、Znを拡散したAlyGa1-yAs層上にはGaAs層802の代わりに
AlsGa1-sAs層(s>0)を設けることもできる。
【0109】
また、上記各実施形態では、共通電極を基板の裏面に設けているが、共通電極として、p側電極と同一側の面にn型GaAs層の表面にコンタクトを有する電極を設けることもできる。
【0110】
また、上記各実施形態では、p側電極材料としてAl系材料を使用する例を述べたが、オーミックコンタクトを形成できれば、他の材料、例えば、Au系の材料を使用することもできる。
【0111】
第4の実施形態
図19は本発明の第4の実施形態に係るLEDアレイの構造を模式的に示す図、図20は図19のA−A′矢視断面図である。本実施形態に係るLEDの構造の説明にあたり前記図16と同一構成部分には同一符号を付している。
【0112】
図19及び図20において、901は半絶縁性GaAs基板、911は半絶縁性GaAsバッファ層、902は半絶縁性GaAsバッファ層911上にエピタキシャル成長させたn型AlzGa1-zAs層(エピ層3)、903はn型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)、904はn型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)、910は電極とオーミックコンタクトを形成するために設けたn型GaAs層、912は、Ζn拡散によってp型になっているGaAs層領域である。このZn拡散GaAs領域912は、GaAs層910内に形成されたpn接合領域をエッチング除去することによって、n型GaAs層910と電気的に孤立している島状の領域である。p側の電極コンタクトはこのGaAs層領域912の一部の領域又は全部の領域に形成されている。
【0113】
また、905は層間絶縁膜、906はp側電極で例えばAl系電極である。907は層間絶縁膜、908はn側電極で例えばAu合金電極である。909は共通配線である。また、1001,1002は、p側電極906,n側電極908に接続された電極パッドである。
【0114】
本実施形態におけるAlxGa1-xAs層(エピ層1)、AlyGa1-yAs層(エピ層2)、AlzGa1-zAs層(エピ層3)、及びGaAs層(エピ層4)を有する構造を形成するための基板としては、前記、半絶縁性基板GaAs基板901の他にp型GaAs基板、ノンドープGaAs基板又は高抵抗Si基板を使用することも可能である。高抵抗Si基板としては、例えば、1500Ωcm程度の比抵抗の高抵抗Si基板を使用することが可能である。高抵抗Si基板を使用する場合には、図21に示したようにノンドープのGaAs層とノンドープのAltGa1-tAs層(t>0、t>x)の積層構造をバッファ層として設けることによって、Si基板とn型のエピ層(エピ層3/エピ層1/エピ層2/エピ層4)との間の絶縁を確保できる。
【0115】
n型エピ層は、前記第3の実施形態の変形例と同様に4層の積層構造:
GaAs/AlyGa1-yAs/AlxGa1-xAs/AlzGa1-zAsから構成され、x<y,zである。本実施形態では、前記実施形態3の変形例で説明したようにn型のエピタキシャル積層構造へ選択的にZnを拡散して形成したpn接合を有し、拡散領域の拡散フロントすなわち、基板主面と略平行のpn接合面はエピ層1、すなわち2層のエピ層2とエピ層3に挟まれた、エピ層2とエピ層3のエネルギバンドギャップよりも少なくとも小さいエネルギバンドギャップのエピ層1内にある。
【0116】
電極はp型領域に個別電極が、n型領域に共通電極が設けられている。k個のLEDを含むn型領域は、例えば図19に示すように半絶縁性基板に達する分離溝1003で複数のブロックに分割されている。個別配線は、各n型ブロック内の同一順位の配線が共通配線909で結線されている。ここで、p側の電極は必ずしもAl系の材料に限定されることはなくAu系の材料で形成されていてもよい。
【0117】
また、n側電極908及びn側電極パッド1002よりn側電極908に延びる配線を省略し、n側電極パッド1002をn側GaAs層910とオーミックコンタクトを形成するようにして、n側電極パッド1002をn側電極と兼ねるようにしてもよい。
【0118】
以下、上述のように構成されたLEDアレイの動作を説明する。
【0119】
点灯させるLEDの選択は、点灯させるLEDが含まれるn型ブロック内の共通電極と点灯させるLEDの順位の配線を選択して順方向の電圧を印加する。点灯するLEDでは第3の実施形態と同様に、基板の主面に垂直な方向ではエピ層2とエピ層1の界面及び、エピ層3とエピ層1の界面に存在するエネルギ障壁によって、注入されたキャリアがエピ層1内に閉じこめられるので、キャリアの再結合確率が大きくなり高発光効率で発光する。
【0120】
上記各実施形態で説明した通り、本実施形態の素子でも、発光波長はエピ層1の半導体のエネルギバンドギャップで決まり、電流−電圧特性はエピ層1内に形成されたpn接合の特性と同等である。
【0121】
以上説明したように、第4の実施形態に係るLEDアレイは、エネルギバンドギャップが相対的に大きい2層のエピ層に挟まれた相対的にエネルギバンドギャップが小さいエピ層を有する積層エピ構造へ、拡散フロントがエネルギバンドギャップの相対的に小さいエピ層内に存在するように選択的にZnを拡散して形成したLEDアレイであり、n型の積層エピ構造を適当な数の複数のpn接合を含む互いに電気的に絶縁された単位ブロックに分離できるようにn型積層エピ構造を半絶縁性GaAs基板上に形成した構造としたので、マトリクス駆動が可能でかつ高発光効率の発光が得られる。
【0122】
また、選択拡散によって接合を形成するので、メサエッチングなどの素子分離が不要であるため、1200dpiのような超高密度LEDアレイも容易に作製することができる。n型積層エピ構造を互いに電気的に絶縁された複数のブロックに分離する素子分離構造は、n型の積層エピ構造を分離するきわめて単純な構造であり、素子分離構造はきわめて容易に作製することができる。1200dpiのような超高密度にLEDを集積した場合でも、本実施形態では電極配線をマトリクス配線構造とすることが可能なので、電極パッドの密度、すなわち電極パッドのピッチを低減することができる。したがって、LEDアレイを駆動する駆動ICとの接続密度が低減できるので、接続が容易になる。以上の理由から、LEDアレイチップの低価格化も図れる。
【0123】
なお、第3の実施形態の変形例と同様に、低コンタクト抵抗でp側の電極コンタクトを形成できるΑl組成のAlyGa1-yAs層(エピ層2)とした場合には、必ずしもコンタクト層としてGaAs層を設ける必要はない。また、半絶縁性基板あるいは高抵抗Si基板上に形成するn型積層エピ構造は、コンタクト層を形成するためのエピ層4とバッファ層以外の構造について、本実施形態のようなエピ層2/エピ層1/エピ層3の3層ではなく、エピ層2/エピ層1の2層とすることも可能である。
【0124】
また、エピ層1の下又は、エピ層3の下にノンドープの
AlqGa1-qAs/AlrGa1-rAs/…の積層構造を設けてもよい。
【0125】
第5の実施形態
図22及び図23は本発明の第5の実施形態を説明するための図であり、図23は図22のX−X′矢視断面図である。
【0126】
図23において、n型GaAs基板1201上にn型GaAsバッファ層1202を設け、その上にn型AlzGa1-zAs層(エピ層3)1203、n型AlxGa1-xAs層(エピ層1)1204、n型AlyGa1-yAs層(エピ層3)1205及びn型GaAs層(エピ層4)1206をエピタキシャル成長した積層構造を有する。ここで、y,z>x>0である。この積層エピタキシャル構造に選択的にZnを拡散して形成した拡散領域1206を有し、拡散領域の拡散フロントがエピ層1内にある。
【0127】
図23に示すように、p側電極は層間絶縁膜開口部に対して、その層間絶縁膜開口部内を貫く電極構造をしている。p側電極は層間絶縁膜開口部内に島状に形成されたZn拡散領域のGaAs層領域の一部とオーミックコンタクトを有している。p側電極とオーミックコンタクトを形成するために設けた、Znを拡散したGaAs層領域は、周辺のn型GaAs層と分離されており、GaAs層内にはpn接合がない構造である。
【0128】
一例として、拡散深さが極端に浅い例をとって説明する。例えば、エピ層4を0.05μm、エピ層2を0.2μm、エピ層1を0.5μm、エピ層3を0.2μm、GaAsバッファ層を0.1μmとして拡散フロントがエピ層内にくるような拡散深さ、例えば、Χj=0.35μmとする。この場合には、全エピタキシャル層は約1μmと薄くでき、基板コストを低減できる。
【0129】
拡散したZnの濃度をほぼ可能な拡散最高濃度の約1×1020cm-3として、拡散領域の比抵抗ρを見積もるとρ=1/qNμp(qは電子の電荷でq=1.6×10-19C、Νはp型キャリア濃度(Zn拡散濃度)、μpはキャリアの易動度でμp=25cm2/VS)から、ρ=2.5×10-3Ωcmである。この時、拡散領域のシート抵抗ρs=ρ/Xjは、約70Ωである。この場合に3mΑの電流では、電圧降下は約210mVである。拡散深さが例えば、1μmである場合には3mAの電流の時の電圧降下は約70mVで影響が小さかったが、例えば0.35μmでは電圧降下の影響が大きい。このために、例えば、拡散深さが1μmの場合と比較して、拡散深さが0.35μmでは電極から離れた領域での発光効率の減少が大きくなる。一般的な拡散条件では、Zn拡散濃度は1020cm-3よりも低くなるので、電圧降下の影響は前記見積もりより大きくなる。
【0130】
そこで、本実施形態のように電極を拡散開口部を貫くような構造とすれば、接合から電極までの距離を小さくでき拡散開口部内で接合と電極間の距離をほぼ均一にできるので発光面内で均一の高発光強度分布を実現できる。
【0131】
以上説明したように、第5の実施形態では、n型GaAs基板1201上にn型GaAsバッファ層1202を設け、その上にn型AlzGa1-zAs層(エピ層3)1203、n型AlxGa1-xAs層(エピ層1)1204、n型AlyGa1-yAs層(エピ層3)1205及びn型GaAs層(エピ層4)1206をエピタキシャル成長した積層構造(y,z>X>0)に選択的にZnを拡散して形成した拡散領域1206を有し、拡散領域の拡散フロントがエピ層1内にある接合又は接合アレイで、p側の電極を拡散開口部を貫くような構造としたので、発光面内で均一の高発光強度分布を実現するための発光素子の全エピタキシャル層を薄くして、拡散深さを浅くすることができる。したがって、高発光効率の低コストな発光素子又は、発光素子アレイのチップを製造することができる。
【0132】
上記実施形態の変形例として拡散開口部内のGaAs領域とオーミックコンタクトを有する透明導電性膜を形成して電極コンタクトを形成することも可能である。
【0133】
なお、上記各実施形態同様、基板やエピタキシャル層の構成についての変形形態が可能であることは明白である。
【0134】
また、上記各実施形態では、発光層としてn型のAlxGa1-xAs層を用いたLEDアレイの例であるが、第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも2層の半導体エピタキシャル層へ相対的にエネルギバンドギャップが大きい半導体層側から、第2導電型の不純物が選択的に拡散され、拡散の深さ方向の拡散フロントが少なくとも相対的にエネルギバンドギャップが小さい半導体エピタキシャル層内に存在する構造の発光素子アレイであれば、原理的にどのような半導体材料を使用する場合にも適用できることは言うまでもない。
【0135】
また、上記各実施形態では、エピ層の層厚d1=1μm、d2=0.3μmを例にとり説明したが、このような条件は一例であることは勿論である。
【0136】
さらに、上記各実施形態に係る発光素子アレイが、上述した構造をとるものであれば、どのような構成でもよく、その製造プロセス、基板の種類、アレイ等の個数、配置状態等は上記各実施形態に限定されない。
【0137】
また、上記各実施形態では、LEDアレイの構造及び製造方法について示したが、第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも2層の半導体エピタキシャル層へ第2導電型の不純物が選択的に拡散され、拡散フロントが少なくとも相対的にエネルギバンドギャップが小さい半導体エピタキシャル層内に存在する構造及び製造方法が単独の発光素子にも適用できることは言うまでもない。
【0138】
【発明の効果】
本発明に係る発光素子アレイ及び発光素子では、選択拡散領域の拡散フロントが層内に存在する第1の半導体エピタキシャル層と、電極とコンタクトを有する第2の半導体エピタキシャル層とを積層した構造を備え、第1の半導体エピタキシャル層のエネルギバンドギャップEg1が、第2の半導体エピタキシャル層のエネルギバンドギャップEg2より少なくとも小さく、かつ、半導体エピタキシャル層の層厚が、(Lp-Wl-da)/2≧Xl=[d2+α×(Xj-d2)]×βであるように構成したので、低コスト高歩留りで量産可能な高発光効率の高密度発光素子アレイが実現できる。
【0139】
さらに、前記エピ積層構造に加え、p側電極とオーミックコンタクトを形成するためにエピ積層構造の最上層に設けたGaAs層に関しては、Zn選択拡散領域に、Ζnが拡散された島状のGaAs層領域を形成し、GaAs層内にはpn接合がない構造としたので、高発光効率の発光素子アレイが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図2】上記発光素子アレイの構造を示す断面図である。
【図3】上記発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図4】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図5】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図6】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図7】上記発光素子アレイのLEDに順方向に電圧を印加した時のエネルギバンド図を模式的に示した図である。
【図8】本発明を適用した第2の実施形態に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図9】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図10】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図11】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図12】上記発光素子アレイの製造方法を説明するための工程断面図である。
【図13】上記発光素子アレイの開口部領域の構造を模式的に示す図である。
【図14】上記発光素子アレイの開口部領域の構造を模式的に示す図である。
【図15】上記発光素子アレイの開口部領域の構造を模式的に示す図である。
【図16】本発明を適用した第3の実施形態に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図17】上記発光素子アレイのLEDに順方向に電圧を印加した時のエネルギバンド図を模式的に示した図である。
【図18】本発明を適用した第3の実施形態の変形例に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図19】本発明を適用した第3の実施形態に係る発光素子アレイの構造を模式的に示す図である。
【図20】図19のA−A′矢視断面図である。
【図21】本発明を適用した第4の実施形態の変形例に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図22】本発明を適用した第5の実施形態に係る発光素子アレイの基本構造を示す図である。
【図23】図22のX−X′矢視断面図である。
【図24】従来のLEDの構造を模式的に示す図である。
【図25】従来のシングルへテロ構造を用いたLEDの構造及びそのエネルギバンドギャップの例を示す図である。
【図26】従来のダブルへテロ構造を用いたLEDの構造及びそのエネルギバンドギャップの例を示す図である。
【符号の説明】
100 LED、101 n型GaAs基板、102,903 n型のAlxGa1-xAs層(エピ層1)、103,904 n型のAlyGa1-yAs層(エピ層2)、104 拡散領域、105 拡散フロント、106,503 p側電極、107,502,804,905,907 層間絶縁膜、108,605 n側電極、110 n型GaAsバッファ層、511 GaAs層、801,902 n型のAlzGa1-zAs層(エピ層3)、901 半絶縁性GaAs基板、906 p側電極、908 n側電極
Claims (13)
- 第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも2層の半導体エピタキシャル層へ第2導電型の不純物を選択的に拡散させて複数の発光素子を作製した発光素子アレイであって、
少なくともエネルギバンドギャップが相対的に小さい材料からなり拡散領域のフロントが層内に存在する第1の半導体エピタキシャル層と、
エネルギバンドギャップが相対的に大きい材料からなる第2の半導体エピタキシャル層とを積層した構造を備え、
前記第2の半導体エピタキシャル層上の少なくとも拡散マスク開口部内又は層間絶縁膜開口部内に、pn接合部分を削除することにより、pn接合が存在しない第2導電型の不純物拡散をされた、電極とオーミックコンタクトを有すると供に該不純物拡散領域内で該電極より広く形成されたGaAs層領域を設けた
ことを特徴とする発光素子アレイ。 - 第1導電型のエネルギバンドギャップの異なる少なくとも3層の半導体エピタキシャル層へ第2導電型の不純物を選択的に拡散させて複数の発光素子を作製した発光素子アレイであって、
少なくともエネルギバンドギャップが相対的に小さい材料からなり拡散領域のフロントが層内に存在する第1の半導体エピタキシャル層と、
エネルギバンドギャップが相対的に大きい材料からなる第2の半導体エピタキシャル層と、
前記第1の半導体エピタキシャル層に接し、エネルギバンドギャップが前記第1の半導体エピタキシャル層のエネルギバンドギャップより大きい第3の半導体エピタキシャル層とを積層した構造を備え、
前記第2の半導体エピタキシャル層上の少なくとも拡散マスク開口部内又は層間絶縁膜開口部内に、pn接合部分を削除することにより、pn接合が存在しない第2導電型の不純物拡散をされた、電極とオーミックコンタクトを有すると供に該不純物拡散領域内で該電極より広く形成されたGaAs層領域を設けた
ことを特徴とする発光素子アレイ。 - 前記半導体エピタキシャル層が、
エピタキシャル化合物半導体層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子アレイ。 - 前記第1、及び/又は第2の半導体エピタキシャル層は、AlGaAs半導体エピタキシャル層であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子アレイ。
- 前記第1、第2、及び/又は第3の半導体エピタキシャル層は、AlGaAs半導体エピタキシャル層であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子アレイ。
- 拡散開口部内又は層間絶縁膜開口部内の第2導電型不純物を拡散した領域の一部領域又は全部領域とオーミックコンタクトを有する第2導電型側の電極で、拡散開口部又は層間絶縁膜開口部を串刺し状に貫く形状の電極を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の発光素子アレイ。 - 前記第2導電型不純物が、Znであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の発光素子アレイ。
- 前記半導体エピタキシャル層が、
n型AlxGa1-xAs(x>0)で、p型不純物がZnであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の発光素子アレイ。 - 前記半導体エピタキシャル層に、
n型AlxGa1-xAs(x>0)を含み、p型不純物がZnであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の発光素子アレイ。 - 前記第2の半導体エピタキシャル層における横方向拡散距離が、少なくとも
[(発光素子アレイのピッチ)−(開口部幅)]/2
よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の発光素子アレイ。 - 半絶縁性GaAs基板、p型GaAs基板、ノンドープGaAs基板又は高抵抗Si上に成長した半絶縁性GaAs基板を有し、マトリクス配線を備えたことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の発光素子アレイ。
- 請求項1乃至11の何れかに記載の構造を備え、
拡散領域の少なくとも一部の表面が透明導電性膜で被覆されていることを特徴とする発光素子アレイ。 - 請求項1乃至12の何れかに記載の構造を備えたことを特徴とする発光素子。
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