JP4023887B2 - エステル化合物およびそれを含有する液晶組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶材料として有用なエステル化合物に関し、さらにこのエステル化合物を含有する液晶組成物、ならびにこのエステル化合物を含有する液晶組成物を用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、時計、電卓をはじめワープロ、テレビ等に広く利用されている。これらの液晶表示装置の中で特に多く使用されているのは、液晶材料の光学的異方性および誘電率異方性を利用した液晶表示装置である。
【0003】
液晶表示装置に用いられる液晶材料に要求される特性としては、液晶温度範囲が広いこと、電気光学的に速い応答速度を得るために粘度が小さいこと、広い視野角範囲、高いコントラストを得るために適切な複屈折(△n)をもつこと、低い駆動電圧を得るために誘電率異方性(△ε)が大きいこと、化学的および光学的に安定であることなどが挙げられる。
【0004】
駆動電圧はしきい値電圧Vthの値に依存し、しきい値電圧Vthは誘電率の異方性△εの平方根に反比例する。そのため誘電率の異方性△εが大きい液晶材料を用いるとしきい値電圧Vthを低い値に抑えることができる。
【0005】
また、広視野角、高コントラストを得るためには、液晶層のリターデーション△n・d(△nは液晶材料の複屈折、dは液晶層の厚み)を最適化する必要がある。しかし、実用に使用される液晶表示装置では液晶層の厚みdが、ある限定された範囲で設定されており、かつ応答速度を速くすることが要求されているために、液晶層の厚みdは薄くなる傾向が強まっている。よって、複屈折△nが大きな液晶材料が必要とされている。
【0006】
これまで、種々の液晶化合物が開発され、使用されているが、以上のような特性を全て満足する単一の液晶化合物は未だに見い出されていない。そのためにいろいろな特性をもった数種の液晶化合物を混合したり、あるいは非液晶化合物を混合したりして実用に供しているのが現状であるが、やはり、充分満足できるものではない。
【0007】
このように混合して用いられるエステル系の化合物では、2−フルオロ安息香酸−(3’−フルオロ−4’−シアノフェノール)−エステルが特開昭61−63645号公報、安息香酸−(2’、3’、5’、6’−テトラフルオロ−4’−シアノフェノール)−エステルがZh.Obshch.Khim.49,1872(1979)に記載されているが、特性を満足させるには充分なものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上示したように、これまで、液晶組成物については種々検討されているが、未だ完全と言われるものは見いだされていない。また、液晶組成物に用いられる化合物は、いずれもその特性に一長一短があり、さらに液晶表示装置によって、前記要求される特性の度合いも異なるため、目的に応じた特性を与える新たな液晶化合物および、液晶添加物の出現が待ち望まれている。そこで本発明の目的は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物のしきい値電圧Vthを低くし、複屈折△nを大きくすることのできる新規なエステル化合物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に記載のエステル化合物は下記一般式(I)で表されるものである。
【0010】
【化2】
【0011】
(ただし、A1からA5、およびA7は水素原子であり、A6およびA8はフッ素原子である。)
【0012】
また、本発明の請求項2に記載の液晶組成物は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有するものである。
【0013】
更に、本発明の請求項3に記載の液晶表示装置は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物を搭載してなる液晶表示装置である。
【0014】
本発明の液晶組成物における、本発明のエステル化合物の配合量は、他の液晶化合物の種類、配合比等により、一概に決められるものではないが、一般的には、好ましくは1ないし50重量%、更に好ましくは3ないし20重量%である。
【0015】
本発明のエステル化合物は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物の粘性ηやN−I点をそれほど変えずに、しきい値電圧Vthを低くし、複屈折△nの値を大きくすることのできる優れた化合物である。
【0016】
また、本発明のエステル化合物は多くの液晶化合物と混合し、液晶組成物を製造することができる。本発明のエステル化合物と混合可能な液晶化合物としてはエステル系、シクロヘキシルフェニル系、ビフェニル系、ピリミジン系、ジオキサン系、トラン系などが挙げられる。更に、これらの液晶化合物を複数混合したものに本発明のエステル化合物を混合して用いることもできる。
【0017】
本発明のエステル化合物を含有する液晶組成物は、上述のように、液晶材料として優れた特性を有し、またこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は、温度範囲が広く、広い視野角を持つことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
前述したとおり、本発明の請求項1に記載のエステル化合物は、前記化2における一般式(I)で表されるものである。
【0019】
一般式(I)において、A1からA5、およびA7は水素原子であり、A6およびA8はフッ素原子である。
【0020】
また、本発明の請求項2に記載の液晶組成物は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物である。
【0021】
更に、本発明の請求項3に記載の液晶表示装置は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物を搭載してなる液晶表示装置である。
【0022】
本発明のエステル化合物の製造方法について、化3に例をあげて説明する。なお式中A1からA8は前記した意味を示す。
【0023】
まず、安息香酸(a)に塩化チオニル、五酸化リン等のハロゲン化剤を作用させて酸塩化物(b)を作製する。次に酸塩化物(b)とシアノフェノール(c)とをピリジン等の不活性有機溶媒中で反応させた後、反応混合物を水洗、乾燥、再結晶することにより一般式(I)で表されるエステル化合物を得ることができる。
【0024】
【化3】
【0025】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。また、本実施例におけるしきい値電圧Vthは、液晶組成物をセル厚9μmのTN型液晶表示装置に搭載して測定した値である。
【0026】
(実施例1)
安息香酸12.0gに塩化チオニル24gを加え、還流下で2時間反応させ、反応終了後減圧下で塩化チオニルを留去し、その後20mmHgで減圧蒸留し、安息香酸酸塩化物10gを得た。これをトルエン50mlに溶解し、3、5−ジフルオロ−4−シアノフェノール12gとピリジン8gを加え40℃で3時間反応させた。反応終了後100mlの水を加えて有機層を分離し、希塩酸次いで希アルカリ水溶液の順で洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。次にこの有機層をろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をヘキサンから再結晶し、1mmHgで減圧蒸留を行い、化4記載の化合物11gを得た。この化合物は融点126℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0027】
【化4】
【0028】
(実施例2)
市販のネマティック液晶組成物ZLI−1132(メルク社製)95重量部に、実施例1で製造した本発明のエステル化合物を5重量部加え、液晶組成物を作製した。その液晶組成物の特性はN−I点69.0℃、△n0.139、粘度31.7cP、Vth1.49Vであった。
【0029】
ここで、ZLI−1132のみからなる液晶組成物の特性は、N−I点72.0℃、Δn0.138、粘度27.9cP、Vth1.83Vであった。
【0030】
実施例から明らかなように、本発明のエステル化合物は、それを含有する液晶組成物のしきい値電圧Vthを低くし、複屈折△nを大きくすることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明のエステル化合物は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物の粘性やN−I点をそれほどかえることなく、しきい値電圧Vthを低くし、また複屈折を大きくすることができる。そのため、本発明のエステル化合物を含有する液晶組成物は液晶材料として優れた特性を有し、またこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は、温度範囲が広く、広い視野角を持つ。さらに、本発明のエステル化合物は種々の化合物との充分な相互溶解性が得られ、液晶組成物の構成物質として多くの液晶材料と組み合わせて使用することができ、液晶組成物の特性改良に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを表す図である。
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JP01548898A JP4023887B2 (ja) | 1998-01-28 | 1998-01-28 | エステル化合物およびそれを含有する液晶組成物 |
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