JP4763943B2 - エステル化合物およびそれを含有する液晶組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶材料として有用なエステル化合物に関し、さらにこのエステル化合物を含有する液晶組成物、ならびにこのエステル化合物を含有する液晶組成物を用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、時計、電卓をはじめワープロ、テレビ等に広く利用されている。これらの液晶表示装置の中で、特に多く使用されているのは液晶材料の光学的異方性および誘電率異方性を利用した液晶表示装置である。
【0003】
液晶表示装置に用いられる液晶材料に要求される特性としては、液晶温度範囲が広いこと、電気光学的に速い応答速度を得るために粘度が小さいこと、広い視野角範囲、高いコントラストを得るために適切な複屈折(△n)を持つこと、低い駆動電圧を得るために誘電率異方性(△ε)が大きいこと、化学的および光学的に安定であることなどが挙げられる。
【0004】
駆動電圧はしきい値電圧Vthの値に依存し、しきい値電圧Vthは誘電率異方性△εの平方根に反比例する。そのため誘電率異方性△εが正の液晶材料を用いると、しきい値電圧Vthを低い値に抑えることができる。
【0005】
また、これまで、実用されている液晶組成物は通常、室温付近に液晶相を有する化合物と、室温より高い温度領域に液晶相を有する化合物とを混合して調整される。液晶表示装置が屋外で使用し得るためには−40℃〜90℃の温度範囲で安定に存在しなければならず、また誘電率異方性、屈折率異方性の温度依存性を考慮すると、N−I点(ネマティック−等方相転移温度)付近では急激な変化が起こるので、N−I点の高い液晶材料が必要となる。
【0006】
これまで種々の液晶化合物が開発され、使用されているが、以上のような特性を全て満足する単一の液晶化合物は未だに見い出されていない。そのためにいろいろな特性を持った数種の液晶化合物を混合したり、あるいは非液晶化合物を混合したりして実用に供しているのが現状である。このように混合して用いられるエステル系の化合物では、4’−アルキル安息香酸−4−トリフルオロメチルフェニルエステルなどが、特公昭59−10652号公報に記載されているが、特性を完全に満足させるには充分ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上示したように、これまで液晶組成物については種々検討されているが、その特性には改良の余地がある。とくに液晶組成物に用いられる化合物は、いずれもその特性に一長一短があり、さらに液晶表示装置によって、要求される各特性の度合いも異なるため、目的に応じた特性を与える新たな液晶化合物および、液晶添加物の出現が待ち望まれている。
【0008】
そこで本発明の目的は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物のN−I点を高くし、しきい値電圧Vthを低くすることのできる新規なエステル化合物を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のエステル化合物は下記一般式(I)で表されるものである。
【0010】
【化2】
Figure 0004763943
【0011】
(ただし、Rはアルキル基を表す。)
【0012】
また、本発明の液晶組成物は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有するものである。
【0013】
また、本発明の液晶表示装置は、前記一般式(I)で表されるエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物を搭載してなる液晶表示装置である。
【0014】
本発明の液晶組成物における、本発明のエステル化合物の配合量は、他の液晶化合物の種類、配合比等により、一概に決められるものではないが、一般的には、好ましくは1ないし50重量%、さらに好ましくは3ないし20重量%である。
【0015】
本発明のエステル化合物は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物のN−I点を高くし、しきい値電圧Vthを低くすることのできる優れた化合物である。
【0016】
また、本発明のエステル化合物は多くの液晶化合物と混合し、液晶組成物を製造することができる。本発明のエステル化合物と混合可能な液晶化合物としてはエステル系、シクロヘキシルフェニル系、ビフェニル系、ピリミジン系、ジオキサン系、トラン系などが挙げられる。さらに、これらの液晶化合物を複数混合したものに本発明のエステル化合物を混合して用いることもできる。
【0017】
本発明のエステル化合物を含有する液晶組成物は、上述のように、液晶材料として優れた特性を有し、またこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は、温度範囲が広く、広い視野角を持つことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
前述したとおり、本発明のエステル化合物は、化2における一般式(I)で表されるものである。一般式(I)において、Rはアルキル基を表す。
【0019】
本発明のエステル化合物の製造方法について、化3に例を挙げて説明する。なお、式中のRは前記した意味を示す。
【0020】
まず、カルボン酸(a)に塩化チオニル、五酸化リン等のハロゲン化剤を作用させて酸塩化物(b)を作製する。次にこの酸塩化物(b)と置換フェノール(c)とをピリジン等の不活性有機溶媒中で反応させた後、反応混合物を水洗、乾燥、再結晶することにより一般式(I)で表されるエステル化合物を得ることができる。
【0021】
【化3】
Figure 0004763943
【0022】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。また、本実施例におけるしきい値電圧Vthは、液晶組成物をセル厚9μmのTN型液晶表示装置に搭載して測定した値である。
【0023】
(実施例1)
4−プロピルシクロヘキシルフェニル安息香酸29.5gに塩化チオニル24gを加え、環流下で2時間反応させ、反応終了後塩化チオニルを留去し、その後20mmHgで減圧蒸留し、酸塩化物21.2gを得た。これをトルエン60mlに溶解し、4−トリフルオロメチルフェノール13.0gとピリジン8gを加え、還流下で3時間反応させた。反応終了後100mlの水を加えて有機層を分離し、希塩酸次いで希アルカリ水溶液の順で洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。次にこの有機層をろ過し、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をヘキサンから再結晶し、化4記載の化合物19.5gを得た。この化合物はネマティック液晶相を有し、C−N点(結晶−ネマティック相転移温度)が95℃、N−I点が115℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0024】
【化4】
Figure 0004763943
【0025】
(実施例2)
市販のネマティック液晶組成物ZLI−1132(メルク社製)90重量部に、実施例1で製造した本発明のエステル化合物を10重量部加え、液晶組成物を作製した。
【0026】
実施例2および、ZLI−1132のみからなる液晶組成物を比較例として、それぞれのN−I点、Δn、粘度、Vthを測定した。その結果を次表に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004763943
【0028】
実施例2から明らかなように、本発明のエステル化合物は、それを含有する液晶組成物のしきい値電圧Vthを低くし、N−I点を高くすることができる。
【0029】
【発明の効果】
本発明のエステル化合物は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物のN−I点を高くし、しきい値電圧Vthを低くし、また複屈折を小さくすることができる。そのため、本発明のエステル化合物を含有する液晶組成物は液晶材料として優れた特性を有し、またこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は、温度範囲が広く、広い視野角を持つ。さらに、本発明のエステル化合物は種々の化合物との充分な相互溶解性が得られ、液晶組成物の構成物質として多くの液晶材料と組み合わせて使用することができ、液晶組成物の特性改良に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを表す図である。

Claims (3)

  1. 一般式(I)で表されるエステル化合物。
    Figure 0004763943
    (ただし、Rはアルキル基を表す。)
  2. 請求項1記載のエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物。
  3. 請求項1記載のエステル化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物を搭載してなる液晶表示装置。
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