JP3291331B2 - エステル誘導体を含有する液晶組成物 - Google Patents

エステル誘導体を含有する液晶組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は液晶材料として有用なエ
ステル誘導体に関し、さらにこのエステル誘導体を含有
する液晶組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は、時計、電卓をはじめワ
ープロ、テレビ等に広く利用されている。これらの液晶
表示装置の中で特に多く使用されているのは、液晶材料
の光学的異方性および誘電異方性を利用したTN型(ね
じれネマティック型)液晶表示装置である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】現在TN型などの液晶
表示装置に用いられている液晶材料に要求される特性と
しては、液晶温度範囲が広いこと、電気光学的な応答速
度が速いこと、視野角範囲が広いこと、駆動電圧が低い
こと、化学的および光学的に安定であることなどが挙げ
られる。
【0004】広視野角、高コントラストを得るために
は、液晶層のリターデーション△n・d(△nは液晶材
料の複屈折、dは液晶層の厚み)を最適化する必要があ
る。しかし、実際に使用されている液晶表示装置では液
晶層の厚みがある範囲内に設定されてしまうため、液晶
材料のΔnの最適化が必要となっていた。
【0005】また、駆動電圧はしきい値電圧Vthの値に
依存し、しきい値電圧Vthを小さくすることにより、よ
り低い電圧で液晶表示装置を駆動させることができる。
よって、しきい値電圧Vthを小さくする液晶材料が必要
となっていた。
【0006】以上のような特性を全て満足する単一の液
晶化合物は未だに見い出されていない。そのためにいろ
いろな特性をもった数種の液晶化合物を混合したり、あ
るいは非液晶化合物を混合したりして実用に供している
のが現状である。
【0007】そこで本発明の目的は、液晶組成物に混合
することによって、Δnおよびしきい値電圧Vthを小さ
くすることのできるエステル誘導体を提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に関わるエステル
誘導体は一般式(I)で表されるものである。
【0009】
【化2】
【0010】(ただし、Rは炭素原子数が1〜10のア
ルキル基、Aはフェニル基またはシクロヘキシル基を示
す。)
【0011】また、本発明の液晶組成物は、一般式
(I)で表されるエステル誘導体を少なくとも一種含有
するものである。
【0012】このエステル誘導体の製造方法について説
明する。化3はその一例を示したものである。なお、式
中R、Aは前記した意味を示す。まず4−アルキルシク
ロヘキサンカルボン酸または4−アルキル安息香酸
(a)に塩化チオニル、五酸化リン等のハロゲン化剤を
作用させて酸塩化物(b)を製造する。次に酸塩化物
(b)と2,3−ジフルオロフェノール(c)とをピリ
ジン等の不活性有機溶媒中で反応させた後、反応混合物
を水洗、乾燥、再結晶することにより一般式(I)で表
されるエステル誘導体を得ることができる。
【0013】
【化3】
【0014】このエステル誘導体は多くの液晶化合物と
混合し液晶組成物を製造することができる。本発明のエ
ステル誘導体と混合可能な液晶化合物としてはエステル
系、シクロヘキシルフェニル系、ビフェニル系、ピリミ
ジン系、ジオキサン系、トラン系などが挙げられる。
【0015】
【実施例】実施例を用いて本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0016】(実施例1)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gに塩化チオニル24gを
加え、還流下で2時間反応させ、反応終了後減圧下で塩
化チオニルを留去し、その後20mmHgで減圧蒸留
し、シクロヘキサンカルボン酸酸塩化物10gを得た。
これをトルエン50mlに溶解し、2,3−ジフルオロ
フェノール8gとピリジン8gを加え40℃で3時間反
応させた。反応終了後100mlの水を加えて有機層を
分離し、希塩酸次いで希アルカリ水溶液の順で洗浄し、
さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを
加えて乾燥させた。次にこの有機層を濾過し、濾液から
溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をエタノール
から再結晶し、1mmHgで減圧蒸留を行い、化4で表
されるトランス−4−エチルシクロヘキサンカルボン酸
−(2,3−ジフルオロ)−フェニルエステル9gを得
た。この化合物は融点26.0℃であった。また、この
化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0017】
【化4】
【0018】(実施例2)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gの代わりにトランス−4
−プロピルシクロヘキサンカルボン酸17.0gを使用
する以外は実施例1と同様の方法で化5で表されるトラ
ンス−4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸−(2,
3−ジフルオロ)−フェニルエステル10gを得た。こ
の化合物は融点38.0℃であった。また、この化合物
の赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
【0019】
【化5】
【0020】(実施例3)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gの代わりにトランス−4
−ブチルシクロヘキサンカルボン酸18.4gを使用す
る以外は実施例1と同様の方法で化6で表されるトラン
ス−4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸−(2,3−
ジフルオロ)−フェニルエステル11gを得た。この化
合物は融点32.8℃であった。また、この化合物の赤
外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0021】
【化6】
【0022】(実施例4)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gの代わりにトランス−4
−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸19.8gを使用
する以外は実施例1と同様の方法で化7で表されるトラ
ンス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸−(2,
3−ジフルオロ)−フェニルエステル12gを得た。こ
の化合物は融点35.5℃であった。また、この化合物
の赤外線吸収スペクトルを図4に示す。
【0023】
【化7】
【0024】(実施例5)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gの代わりに4−プロピル
安息香酸15.0gを使用する以外は実施例1と同様の
方法で化8で表される4−プロピル安息香酸−(2,3
−ジフルオロ)−フェニルエステル9gを得た。この化
合物は融点36.2℃であった。また、この化合物の赤
外線吸収スペクトルを図5に示す。
【0025】
【化8】
【0026】(実施例6)トランス−4−エチルシクロ
ヘキサンカルボン酸15.6gの代わりに4−ペンチル
安息香酸29.2gを使用する以外は実施例1と同様の
方法で化9で表される4−ペンチル安息香酸−(2,3
−ジフルオロ)−フェニルエステル11gを得た。この
化合物は融点46.5℃であった。また、この化合物の
赤外線吸収スペクトルを図6に示す。
【0027】
【化9】
【0028】(実施例7)化10で表される化合物を混
合した液晶組成物90重量部に、実施例1で製造した本
発明のエステル誘導体を10重量部加え液晶組成物を作
製した。その液晶組成物の特性を表1に示す。
【0029】ここで、化10で表される化合物のみから
なる液晶組成物の特性はN−I点72℃、Δn0.13
8、粘度27.9cp、Vth1.68vであった。
【0030】
【化10】
【0031】
【表1】
【0032】(実施例8〜12)実施例7と同様に化1
0で表される化合物を混合した液晶組成物90重量部
に、実施例2〜6で製造したエステル誘導体をそれぞれ
10重量部ずつ加え、液晶組成物を作製した。その液晶
組成物の特性を表1に示す。
【0033】表1から明らかなように、本発明に関わる
エステル誘導体は、Δnおよびしきい値電圧Vthを小さ
くするものである。
【0034】
【発明の効果】本発明に関わるエステル誘導体は、液晶
組成物に混合することによって、Δnおよびしきい値電
圧Vthを小さくすることができる。また、粘度を低下さ
せるものもある。そのため、このエステル誘導体を含有
する液晶組成物は液晶材料として優れた特性を有し、ま
たこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は良好な表示
特性を有する。さらに、このエステル誘導体は種々の化
合物との相互溶解性が大きく、液晶組成物の構成物質と
して多くの液晶材料と組み合わせて使用することがで
き、液晶組成物の特性改良に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。
【図2】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。
【図3】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。
【図4】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。
【図5】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。
【図6】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクト
ルを表す図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I)で表されるエステル誘導体
    を少なくとも一種含有する液晶組成物。 【化1】 (ただし、Rは炭素原子数が1〜10のアルキル基、A
    はフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。)
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