JP3636485B2 - エステル誘導体を含有する液晶組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は液晶材料として有用なエステル誘導体に関し、さらにこのエステル誘導体を含有する液晶組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、時計、電卓をはじめワープロ、テレビ等に広く利用されている。これらの液晶表示装置の中で特に多く使用されているのは、液晶材料の光学的異方性および誘電異方性を利用したTN型(ねじれネマティック型)液晶表示装置である。
【0003】
現在TN型などの液晶表示装置に用いられる液晶材料に要求される特性としては、液晶温度範囲が広いこと、電気光学的な応答速度が速いこと、視野角範囲が広いこと、駆動電圧が低いこと、化学的および光学的に安定であることなどが挙げられる。
【0004】
また、高速化のためには液晶材料に低粘性が望まれる。電圧印加時の立ち上がり時間τonと電圧遮断時の立ち下がり時間τoff は
τon=ηiid2 (ε0 ΔεV2 −Kπ2 )-1
τoff =ηiid2 /π2 K
で与えられる。ここで、ηiiは粘性のパラメータ、dは液晶層の厚み、ε0 は真空中の誘電率、Δεは誘電率の異方性、Vは印加電圧、Kは弾性率によるパラメータで、K=k11+(k33−2k22)/4である(k11、k22、k33は、それぞれスプレイ、ツイスト、ベンド弾性率である)。よって、応答速度をより速くするためには液晶材料が低粘性であること、つまり低粘性の液晶化合物が不可欠となっていた。
【0005】
さらに液晶パネルの駆動電圧はしきい値電圧Vthの値に依存し、しきい値電圧Vthを小さくすることにより、より低い電圧で液晶表示装置を駆動させることができる。よって、しきい値電圧Vthを小さくする液晶材料が必要となっていた。
【0006】
これまで、種々の液晶化合物が開発され、使用されているが、以上のような特性を全て満足する単一の液晶化合物は未だに見い出されていない。そのためにいろいろな特性をもった数種の液晶化合物を混合したり、あるいは非液晶化合物を混合したりして実用に供しているのが現状であるが、やはり、充分満足できるものではない。
【0007】
また、この様な液晶化合物に、エステル誘導体を混合して用いる例もある。エステル誘導体には種々のものがあるが、液晶の添加物として用いられるものには、特願平5−192981号に開示されているn−アルキルカルボン酸−(4−フルオロ)−フェニルエステル、n−アルキルカルボン酸−(4−トリフルオロメチル)−フェニルエステル等がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上示したように、これまで、液晶組成物については種々検討されているが、未だ完全と言われるものは見いだされていない。そこで、新たな液晶化合物および、液晶添加物の出現が待ち望まれている。そこで本発明の目的は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物の粘性としきい値電圧Vthを小さくすることのできる新規なエステル誘導体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のエステル誘導体は一般式(I)で表されるものである。
【0010】
【化2】
【0011】
(ただし、Xはハロゲン原子またはシアノ基を示し、Yはハロゲン原子または水素原子を示し、nは1または2であるものとする。)
【0012】
また、本発明の液晶組成物は、一般式(I)で表されるエステル誘導体を少なくとも一種含有するものである。
【0013】
本発明のエステル誘導体の製造方法について、化3に例をあげて説明する。なお式中X、Y、nは前記した意味を示す。まずカルボン酸に塩化チオニル、五酸化リン等のハロゲン化剤を作用させて酸塩化物(b)を製造する。次に酸塩化物(b)と置換フェノール(c)とをピリジン等の不活性有機溶媒中で反応させた後、反応混合物を水洗、乾燥、再結晶することにより一般式(I)で表されるエステル誘導体を得ることができる。
【0014】
【化3】
【0015】
本発明のエステル誘導体は多くの液晶化合物と混合し液晶組成物を製造することができる。本発明のエステル誘導体と混合可能な液晶化合物としてはエステル系、シクロヘキシルフェニル系、ビフェニル系、ピリミジン系、ジオキサン系、トラン系などが挙げられる。
【0016】
【作用】
本発明のエステル誘導体は、通常の液晶化合物と比べて、分子の大きさが小さいため、粘性が低く、液晶化合物に混合することにより、液晶組成物の粘度を下げることができる。また、本発明のエステル誘導体は、末端にハロゲン原子等の電子吸引性の高い基が付いているために、このエステル誘導体を混合した液晶組成物のしきい値電圧Vthを下げることができる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
2−ブテン酸8.6gに塩化チオニル11.8gを加え、還流下で2時間反応させ、反応終了後減圧下で塩化チオニルを留去し、その後20mmHgで減圧蒸留し、2−ブテン酸塩化物8.3gを得た。これをトルエン50mlに溶解させ、p−シアノフェノール9.5gとピリジン300gを加え40℃で3時間反応させた。反応終了後100mlの水を加えて有機層を分離し、希塩酸次いで希アルカリ水溶液の順で洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。次にこの有機層を濾過し、濾液から溶媒を減圧留去した。得られた反応生成物をエタノールから再結晶し、1mmHgで減圧蒸留を行い、化4記載の化合物である2−ブテン酸−(4−シアノ)−フェニルエステル11gを得た。この化合物は融点52.9℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図1に示す。
【0019】
【化4】
【0020】
(実施例2)
p−シアノフェノール9.5gの代わりにp−フルオロフェノール9.0gを使用する以外は実施例1と同様の方法で化5記載の化合物である2−ブテン酸−(4−フルオロ)−フェニルエステル10gを得た。この化合物は融点15.5℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図2に示す。
【0021】
【化5】
【0022】
(実施例3)
p−シアノフェノール9.5gの代わりに3,4−ジフルオロフェノール10.4gを使用する以外は実施例1と同様の方法で化6記載の化合物である2−ブテン酸−(3,4−ジフルオロ)−フェニルエステル12gを得た。この化合物は融点15.5℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図3に示す。
【0023】
【化6】
【0024】
(実施例4)
2−ブテン酸8.6gの代わりに2,4−ヘキサジエン酸11.2gを、p−シアノフェノール9.5gの代わりに3,4−ジフルオロフェノール10.4gを使用する以外は実施例1と同様の方法で化7記載の化合物である2,4−ヘキサジエン酸−(3,4−ジフルオロ)−フェニルエステル13gを得た。この化合物は融点52.7℃であった。また、この化合物の赤外線吸収スペクトルを図4に示す。
【0025】
【化7】
【0026】
(実施例5)
市販のネマティック液晶組成物ZLI−1132(メルク社製)90重量部に、実施例1で製造した本発明のエステル誘導体を10重量部加え液晶組成物を作製した。その液晶組成物の特性を表1に示す。
【0027】
ここで、比較のためにZLI−1132のみからなる液晶組成物の特性を測定したところ、N−I点72℃、Δn0.138、粘度27.9cP、Vth1.73Vであった。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例6〜8)
実施例5と同様にZLI−1132を90重量部に、実施例2〜4で製造したエステル誘導体をそれぞれ10重量部ずつ加え、液晶組成物を作製した。その液晶組成物の特性を表1に併せて示す。
【0030】
表1から明らかなように、本発明のエステル誘導体は、それを含有する液晶組成物の粘性を小さくするとともに、しきい値電圧Vthも小さくするものである。
【0031】
【発明の効果】
本発明のエステル誘導体は、液晶組成物に混合することによって、液晶組成物の粘性を小さくし、またしきい値電圧Vthも小さくすることができる。そのため、本発明のエステル誘導体を含有する液晶組成物は液晶材料として優れた特性を有し、またこの液晶組成物を搭載した液晶表示装置は、応答速度が速くなり、駆動電圧が低くなって、良好な表示特性を有する。さらに、本発明のエステル誘導体は種々の化合物との充分な相互溶解性が得られ、液晶組成物の構成物質として多くの液晶材料と組み合わせて使用することができ、液晶組成物の特性改良に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクトルを表す図である。
【図2】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクトルを表す図である。
【図3】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクトルを表す図である。
【図4】本発明のエステル誘導体の赤外線吸収スペクトルを表す図である。
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JP09127494A JP3636485B2 (ja) | 1994-04-28 | 1994-04-28 | エステル誘導体を含有する液晶組成物 |
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1994
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