JP4018955B2 - 弾性舗装材の製造方法および弾性舗装材の品質評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性舗装材の製造方法および品質評価方法に関し、さらに詳しくは、車道用として騒音の低減化と水で濡れたときの滑り防止の性能がバランスされた弾性舗装道路の施工に適した弾性舗装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性舗装材は、軟質骨材を含む骨材をバインダーで結合してなる舗装材で、一般的な構造として舗装材内部に空隙を有する多孔質な構造体をいう。この空隙は、使用する骨材やバインダーに依存し、かつ施工の仕方や温度条件によっても異なってくることが知られている。弾性舗装材の物性面の特徴は、使用する材料(特に、軟質骨材)に起因して弾力性が発現することにあり、このために歩行感の良さや高い安全性が得られる。更に、多孔質であることから屋外舗装に使用しても、排水性があり、水が溜まりにくいという特長も有する。
【0003】
こうした特長が好まれて、弾性舗装材は、各種運動施設や歩道、弾力性を必要とする各種舗装に広く用いられてきた。また、近年の様々な研究成果として、弾力性を有し多孔質であることから車両の走行時に騒音が低減され、車道用舗装材としての検討が始まり実用化に向けて一歩踏み出している段階である。
弾性舗装材による舗装は、通常のアスファルト舗装路面に比べて、車両の通常の走行速度(20〜80km/h)において、10dB(デシベル)以上の騒音低減効果が期待されている。ところが、日本全国の道路のうち、各種対策により騒音レベルが65dBまでの環境基準を達成している道路(いわゆる人にやさしい道路)は、約3割に過ぎないという調査結果がある。現在のところ、排水性舗装やその改良タイプにより、通常のアスファルト舗装に比べて、5dB程度の騒音低減を実現しているが、これでは環境基準の約6割程度しか解消できない。しかも、このような対応の仕方では舗装の目詰まりなどで、騒音低減効果が薄れていくことが知られており、実際の対策としては全く不十分であると言える。
【0004】
弾性舗装材が、上記のように10dB以上の騒音低減を可能にするものであって、そのとおりに騒音低減を実現した場合、環境基準の達成率は9割以上になるとされている。
一方、弾性舗装材による舗装は、騒音低減を実現できる反面、軟質骨材としてゴムの粉砕物やポリウレタン等の弾性体が使用されているために、雨などにより舗装が濡れた場合に極めて滑りやすく(ウエット時の滑り)、安全面での問題が生ずる。また、ウエット時の滑りを改善するためには硬質骨材を適宜充填することが必要になるが、騒音低減効果との兼ね合いが問題になってくる。
【0005】
従来の弾性舗装材としては、例えば次の特許文献1〜4に記載のものが知られている。
車道用弾性舗装材として、硬さの差が10以上ある粒状の低硬度弾性骨材と粒状の有機系高硬度骨材とを混合し樹脂バインダーで結合した弾性舗装材を空隙率25〜45%に設定することにより、耐滑り性、強度、透水性の向上に効果があるとされている(特許文献1)。また、加硫ゴムチップからなる骨材をウレタン樹脂バインダーで結合し、前記骨材が表面に露出するように、表面全体に研磨処理を施し、かつ空隙率20〜40%である透水性弾性舗装材は、湿潤時の摩擦力などにおいて優れていると報告されている(特許文献2)。
【0006】
一方、透水性弾性舗装方法として、硬質粒状骨材および軟弾性骨材を用いて樹脂モルタルを調製するに際し、軟弾性骨材の容積比を25〜75%にすることが知られている(特許文献3)。また、硬質材料と軟質材料をバインダー樹脂で結合して形成する舗装材において、前記硬質骨材として大径(10〜5mm)と小径(5〜2.5mm)を混合することにより、接着力を向上することが提案されている(特許文献4)。加硫ゴムチップよりなる多孔質弾性舗装材であって、路面となる硬度の高い第1層とその下層に硬度の低い第2層を備えた、空隙率30〜40%である弾性舗装と、その舗装をウエットスキッド性能、吸音性能等で評価することが知られている(特許文献5)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−248503号公報(請求項1〜5、段落0024、図1)
【特許文献2】
特開2000−273809号公報(請求項1、実施例、段落0035)
【特許文献3】
特開昭63−7404号公報(請求項1および2、第2頁右下欄、第4頁左下欄)
【特許文献4】
特開平8−165606号公報(請求項1、段落0005〜0008)
【特許文献5】
特開2000−319808号公報(請求項、段落0073〜0074)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、これまでに様々な車道用としての弾性舗装材が提案されているが、主として耐騒音性、耐滑り性の面からみたときに基本的にどのような特性を備えていれば実用的に満足し得るかという検討が充分なされていない。つまり、弾性舗装材をどのような品質基準を目標に設定すればよいか未だよくわかっていないために、試行錯誤による作製を余儀なくされている。そして、環境基準に適合した低騒音性の弾性舗装を実現しようとするために、従来は、弾性材料を多くすることや空隙率を大きく取ることが検討されているが、これでは、道路が濡れたときの滑り、目詰まり、あるいは道路の剥離損傷による耐久性が欠如してくることが問題となる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、弾性舗装材を作製するにあたって実用性に即した評価特性値を定めることとし、その特性値を目標に弾性舗装材を製造する方法、およびその特性値を有し、低騒音性と滑り防止性等に優れた弾性舗装材と、さらに弾性舗装材の品質評価方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑みて種々検討を重ねていたところ、同じ舗装材料を用いても、配合の仕方等によって、騒音の低減性能やウエット時の滑りやすさが異なる弾性舗装材が得られるとの知見を得た。そして、そのような弾性舗装材について、耐騒音性と耐滑り性を実車試験により評価すると共に、その評価に関係する測定値として、音圧レベルと濡れ摩擦係数の両方を採用することとし、それらの適切な基準値を特定した。更に、それらの特性値を目標に弾性舗装材を作製したところ、実用上満足すべき弾性舗装材を得ることに成功し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の弾性舗装材の製造方法、および弾性舗装材の品質評価方法に関するものである。
【0012】
1)軟質骨材100重量部と、硬質骨材2〜50重量部とを骨材重量の1/3〜1/10のバインダーで結合する弾性舗装材の製造方法において、前記硬質骨材と前記バインダーを複数回に分けて混合する工程を有し、
前記混合工程が、(1)前記軟質骨材に、バインダーを前記量の略半量を加えて混合する工程と、(2)前記硬質骨材の半量以下と、前記(1)工程後の残量バインダーの半量以下とを追加混合する工程と、(3)残量の硬質骨材と前記(2)工程後の残量バインダーを1回または複数回に分けて追加混合する工程とを含み、最終混合物を転圧調整により成型することにより弾性舗装材を作製し、
前記弾性舗装材の垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをAデシベルとし、密粒アスファルトの垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをBデシベルとするとき、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり[ただし、無響音室内に、コンクリート上に不織布を敷いた下地上に、試験体(50cm×50cm×5cm厚み)を置き、その垂直上方(高さ650mm)からタイヤ(土木研タイヤ、無方向リム、170KPa)を落下させ、そのときの接触音圧をタイヤの正面方向(回転方向)に設置したマイク(試験体から800mmの距離において下地上500mmの高さに設置)により集録する。試験体が弾性舗装材であるときの音圧レベルをAデシベルとし、試験体が密粒アスファルトであるときの音圧レベルをBデシベルとする。 ]、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材を前記の工程により作製した弾性舗装材の中から選別することを特徴とする弾性舗装材の製造方法。
【0013】
2)前記硬質骨材を小分けして追加混合する工程が前記の(2)および(3)工程をあわせて3回以上である上記1)項記載の弾性舗装材の製造方法。
3)前記硬質骨材およびバインダーの小分け追加量が、その前工程の追加量の略半量であり、追加回数が前記の(2)および(3)工程をあわせて4回で全量を投入する上記1)項記載の弾性舗装材の製造方法。
4)前記舗装材の空隙率が50%以下で、かつ厚みが5〜40mmに調整される上記1)項記載の弾性舗装材の製造方法。
【0014】
5)少なくとも軟質骨材および硬質骨材を結合してなる弾性舗装材において、
前記弾性舗装材の垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをAデシベルとし、密粒アスファルトの垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをBデシベルとするとき、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり[ただし、無響音室内に、コンクリート上に不織布を敷いた下地上に、試験体(50cm×50cm×5cm厚み)を置き、その垂直上方(高さ650mm)からタイヤ(土木研タイヤ、無方向リム、170KPa)を落下させ、そのときの接触音圧をタイヤの正面方向(回転方向)に設置したマイク(試験体から800mmの距離において下地上500mmの高さに設置)により集録する。試験体が弾性舗装材であるときの音圧レベルをAデシベルとし、試験体が密粒アスファルトであるときの音圧レベルをBデシベルとする。 ]、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材を選別することを特徴とする弾性舗装材の品質評価方法。
本発明における弾性舗装材は、耐騒音性と走行性に優れていることから車両走行用道路の舗装材として特に有利に使用できるが、各種運動施設や歩道、弾力性を必要とする各種舗装へも利用可能である。
本弾性舗装材は、前記式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり、かつかつ濡れ摩擦係数が0.45以上であることを特徴とする。前記パラメータ値が大きくなるためには、音圧レベルAが小さいことを要し、実車試験との相関関係からこのパラメータ値が0.030以上であるとき実用上、低騒音性レベルであることを意味する。このパラメータ値は、0.045以上であればさらに好ましいが、通常0.1の値を上限とし、それより高くしても騒音を実用上低くすることの意味合いからは大差がなくなる。
一方、濡れ摩擦係数を0.45以上に設定することによって、弾性舗装材の性能として重要な滑り抵抗性が向上し、その結果、安全面からみての走行性がよくなる。滑り抵抗性は、濡れ摩擦係数は、0.45以上であればその値が大きいほどよく、0.5以上であれば非常に好ましくなるが、耐久性の面からみると0.9以下までであることが望まれる。
【0015】
本発明の弾性舗装材は、舗道施工するに際して、空隙率は通常50%以下、好ましくは30〜50%、より好ましくは40〜45%の範囲に、また厚みは5〜40mmの範囲とするのが好ましく、とりわけコスト面からは15〜25mmに調整される。
前記1)項の弾性舗装材は、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上であるように、製造上の諸要因(軟質骨材、硬質骨材およびバインダーの種類、配合割合、配合の仕方など)を選択して製造される。その一つとして、前記3)〜6)項に記載されるように、軟質骨材、硬質材料およびバインダーを特定の配合割合とし、かつ複数回にわけて配合して調製した舗装材の中から、前記二つの特性値を満足するものを選別することにより製造できる。
【0016】
この製造方法によると、新規な軟質骨材、硬質骨材あるいはバインダーを使用しようとする際に、品質目標値が設定されていることから、それらの配合量や配合の仕方に伴う品質変化を容易に知ることができるので、実際に舗道を施工して評価するという手間を必要とせず、試作作業等を時間的、コスト的に極めて効率よく進行させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳述する。
[(B−A)/B値および濡れ摩擦係数の測定]
本発明における(B−A)/B値および濡れ摩擦係数は、以下の方法で測定される。
・(B−A)/B値の測定
このパラメータ値は、図1の測定装置を用いて、次の方法により測定される。
【0018】
すなわち、無響音室内に、コンクリート上に不織布を敷いた下地上に、試験体(50cm×50cm×5cm厚み)を置き、その垂直上方(高さ650mm)からタイヤ(土木研タイヤ、無方向リム、170KPa)を落下させ、そのときの接触音圧をタイヤの正面方向(回転方向)に設置したマイク(試験体から800mmの距離において下地上500mmの高さに設置)により集録する。試験体が弾性舗装材であるときの音圧レベルをAデシベルとし、試験体が密粒アスファルトであるときの音圧レベルをBデシベルとするとき、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値により、弾性舗装材の耐騒音性を表すものとする。
【0019】
このパラメータ値は、実車試験による騒音レベルと高い相関関係があり(図2参照)、この値が大きくなるほど弾性舗装材の騒音性が小さくなることを意味する。本発明の弾性舗装材は、この値が、0.030以上であることを要し、これによって実用上、低騒音性レベルであることが保障される。
・濡れ摩擦係数の測定
ダイナミック・フリクション・テスター(DFテスター)を用いる公知の測定方法に従い、試験体にゆっくりと散水し上部に水膜ができることを確認し、タイヤゴムピースの線速度を90km/hまで上げながら、動的摩擦係数(μ)を測定する。本発明の弾性舗装材は、この測定法において、タイヤゴムピースの線速度を60km/hのときの濡れ摩擦係数が0.45以上であることを要し、これによって安全面からの走行性がよいことが保障される。濡れ摩擦係数が大きいほど、走行上の安全性が高くなるが、一方において舗装面の磨耗が多くなり、耐久性が悪くなることから、通常は0.9以下であることが好ましい。
【0020】
[材料]
・軟質骨材
弾性舗装材は、軟質骨材を含むことを必須とし、これによって舗装面に弾性が付与され、低騒音性の効果が出てくる。本発明において選択し得る軟質骨材としては、各種エラストマーが挙げられ、特にゴム、ウレタンフォームが用い得る。ゴム材料は、天然ゴム、合成ゴムのいずれであってもよく、また単体ゴムであっても混合ゴムであってもよい。合成ゴムとしては、SBR、NBR、EPDM、BRあるいはCRなどが挙げられる。また、上記のゴムを含む材料、例えば上記ゴムでコートした材料または上記ゴムをコートした材料、などのゴム混合物も使用できる。軟質材料は、新規に製造したものであってもよいが、廃ゴムや屑ゴムなどのリサイクルされたゴムを用いることにより、資源の有効利用とコスト低減を図ることができる。
【0021】
軟質骨材の形状は、粒状、不定形塊状、ひじき状など特に限定はされないが、これらのなかでもひじき状ゴムは空隙率を所定の値に調整しやすいという点で特に有利に用いられる。また、粉砕物の場合は切断面に毛羽立ちがあるものが好ましい。
・硬質骨材
本発明において選択し得る硬質材料としては、自然石、木片、クルミ、竹屑、貝殻、けい砂、人口石、スラグ、セラミックス粒子、あるいは硬質プラスチックなどが挙げられる。とりわけ、(1)非常に微小硬度が高い材料、すなわちモース硬度が8以上、好ましくは10以上の材料や、(2)規則正しい結晶格子をもつ材料、例えばセラミック系の材料なかでも人工的に製造されたセラミックスが有利に用いられる。
【0022】
前記(1)の材料は、硬度が高いことによって高負荷が加えられても材料自体が変形せず強固な摩擦効果を発揮し、被接触物への抵抗を大きくすることができる。また、前記(2)の材料は、磨耗時に結晶格子に沿って破壊する傾向があり弾性舗装材を形成したときの「ウエット時の滑り」の低減効果が保たれること、さらに結晶格子に伴うエッジ効果により水膜が破壊されて同様の低減効果が期待できること、などの点で有利である。
【0023】
さらに、前記(1)および(2)の材料を併用すると、その相乗効果により、使用当初からウエット時の滑りが低減できるだけでなく、耐磨耗性に優れ結晶格子面に沿って破壊が生じ、ウエット時の滑り防止が長期にわたって維持できる。
セラミックス系の材料としては、研磨材、研削材に属する材料が用いられ、均一性、価格の面からみて人造品が好ましい。この素材の特徴は、結晶格子の規則性にある。
【0024】
前記(1)および(2)の硬質骨材を含む弾性舗装材は、舗装施工において、均し作業、転圧作業、攪拌作業が容易になり、特に粒径が300μm以下のものを使用するとこれらの作業が極めて容易になる。
硬質骨材の硬さは、引っ掻き硬さの代表値である(新)モース硬度で表わすとき、一般に8以上の硬度であることが望まれ(例えば、べリリア、チタニア、ジルコニア、ムライト、スピネル、一部チタンカーバイト)、10以上の硬度であればより好ましい(例えば、アルミナ、酸化クロム、炭化ケイ素、一部チタンカーバイト、窒化ケイ素)。特に、人造研削材として工業上使用されている材料は、コスト、性能面で有利に使用できるが、その例として褐色アルミナ、白色アルミナ、淡紅色アルミナ、解砕型アルミナ、人造エメリー、アルミナジルコニア、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素などが挙げられる。硬質骨材は、いずれか1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
硬質材料の粒径は、その使用目的などを考慮して適宜選択できる。例えば、500μm以下にすることによりマイクロテクスチチャーの形成が容易になり抵抗が増大され、また前記のように300μm以下にすることにより硬質骨材の露出する表面積が増し、滑り防止などの添加効果が顕著になる。
・バインダー
本発明において選択し得るバインダーとしては、従来のように樹脂系のバインダーが主として挙げられる。その例としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メタアクリル樹脂、アクリルエマルジョン、アスファルトエマルジョンなどが挙げられる。これらの中でも、軟質で、耐候性、耐水性の優れた硬化性樹脂材料または軟質熱可塑性ポリマーが好ましく用いられる。とりわけ、接着性や作業性などの種々の特性を考慮するとき、一液湿気硬化型ポリウレタンが最も好ましく、例えば比較的高強度である10MPa以上の引っ張り強度のものが、ウエット時の摩擦係数を高めることができて有利に使用できる。
【0026】
・その他
本発明の弾性舗装材には、軟質骨材、硬質骨材およびバインダー以外にも、必要に応じて、適宜、他の材料や添加物を加えてもよく、例えば、顔料、耐候安定剤、酸化防止剤、増量剤、オイル、可塑剤、触媒(有機または無機化合物触媒、金属触媒)などが挙げられる。
[配合割合と製造方法]
本発明の弾性舗装材は、少なくとも軟質骨材と硬質骨材を含む材料を結合してなる弾性舗装材であって、前記式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上であることを特徴とする。弾性舗装材の製造にあたっては、上記の特徴を有するように、軟質骨材、硬質骨材およびバインダーの種類と配合割合を決定する。
【0027】
そのために、前述のように、軟質骨材100重量部に対して硬質骨材2〜50重量部の割合とし、バインダーは骨材重量の1/3〜1/10量の割合とする範囲の中から、配合割合を選択する。硬質材料は、弾性舗装の表層近傍に存在せしめることにより、その添加効果が現れやすくなるが、軟質材料100重量部に対して2重量部以上のとき効果が現れはじめ、4重量部以上で効果がより顕著になり、10重量部以上にするとき軟質骨材の露出部分をカバーすることで、ウエット時の滑りがより低減されてくる。一方、50重量部を超えると、弾性舗装として低騒音性の機能が低下してくる。
【0028】
軟質骨材、硬質骨材およびバインダーの配合割合は、最終的に前記の割合とされるが、弾性舗装材を調製する工程において、硬質骨材とバインダーは複数回に分けて混合される。この混合工程が、(1)前記軟質骨材に、バインダーを前記量の略半量を加えて混合する工程と、(2)前記硬質骨材の半量以下と、前記(1)工程後の残量バインダーの半量以下とを追加混合する工程と、(3)残量の硬質骨材と前記(2)工程後の残量バインダーを1回または複数回に分けて追加混合する工程とを含むようにする。
【0029】
かくして得られた最終混合物を、転圧して、通常50%以下の空隙率に調整し、前記の、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値および濡れ摩擦係数を測定するための試験体を成型し、それぞれの特性値が0.030以上および0.45以上である舗装材を選択する。
[舗装の施工方法]
本発明の弾性舗装材は、車両走行用舗道において、低騒音性で滑り防止性を有する舗道の施工に主に使用されるものである。施工方法としては、(1) 下地(基盤)の上に、軟質骨材と硬質骨材にバインダーを配合した混合物を直接、敷設し、転圧後、硬化する方法と、(2) 一旦ブロック体に形成した弾性舗装材を下地の上に敷設する方法、のいずれであっても原則的に採用し得る。
【0030】
上記(2)におけるブロック体は、一片が30cm以上であること好ましく、生産性を考えると一片が50cm以上であることがより好ましく、一方で施工性を考えると200cm角よりも小さいことが好ましい。ブロック体には溝状のパターンなどを形成しておいてもよい。上記の2施工方法の中でも、通常は(1)法、すなわち現場施工の方が望ましいことが多い。その理由は、下地の凹凸や傾斜、カーブなどの施工にも対応し易いためである。
【0031】
下地の形成には、砕石を所定の厚みで敷き詰めた砕石層の上に、アスファルトあるいはコンクリートで構成された中間層を設け、その表面を十分に均してレベル性を出しかつ密にし、プライマー処理を行う。次いで、本発明による弾性舗装材を、敷設し、転圧後、硬化させて、弾性舗装を行う。この場合、配合・混合過程は、その弾性舗装材を選択したときと同様の小分け配合を行う。
【0032】
【実施例】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、以下の弾性舗装材の製造において、次の軟質骨材、硬質骨材およびバインダーを用いた。
<軟質骨材>
ゴムチップ(1): EPDMとSBRのブレンドゴムチップ(住友ゴム工業製「3KA」平均粒径3mm以下)
ゴムチップ(2): EPDMとSBRのブレンドゴムチップ(住友ゴム工業製「1KA」平均粒径3〜5mm)
ゴムチップ(3): 住友ゴム工業製「ひじき状ゴムFR24」
<硬質骨材>
(1)シリカ:住友ゴム工業製の「シリカサンド7号」
(2)アルミナ砥粒:理研コランダム社製「C60」
<バインダー>
MDI系一液硬化型ウレタン樹脂(住友ゴム工業製「グリップコートGB0007」)
実施例1
軟質骨材としてゴムチップ(3)100重量部および硬質骨材として「シリカサンド7号」32重量部とを、バインダー「GB0007」32重量部で結合してなる弾性舗装材を、次の工程により製造した。
【0033】
[1] ゴムチップ(2)100重量部(全量)を万能攪拌樹に投入し、そこに前記バインダーの1/2量(16重量部)を投入しながら混合し、均一な混合物とした。
[2] そこに、硬質骨材「シリカサンド」の1/2量(16重量部)を追加し、残量バインダーの1/2量(5重量部)を加えてよく混合し、均一な混合物とした。
【0034】
[3] 上記[2]で得た混合物に、残量の硬質骨材「シリカサンド」の1/2量(8重量部)と残量バインダーの1/2量(2.5重量部)を追加しよく混合した。
[4] 上記[3]で得た混合物に、残量の硬質骨材「シリカサンド」8重量部を2回に分けて追加し、また残量バインダー2.5重量部を加えてよく混合した。
[5] 上記の混合物を転圧して、空隙率40.5%に調整して弾性舗装材を得た。
【0035】
この舗装材の、50cm×50cm×5cm(厚み)形状物を試験片として用いた。
実施例2
軟質骨材としてゴムチップ(3)100重量部および硬質骨材として「アルミナ砥粒」20重量部とを、バインダー「GB0007」27重量部で結合してなる弾性舗装材を、実施例1におけると同様の配合工程により、各材料を小分け追加する作業手順で、空隙率48%の弾性舗装材を得た。この舗装材の、50cm×50cm×5cm(厚み)形状物を試験片として用いた。
【0036】
比較例1
万能攪拌樹に、軟質骨材としてゴムチップ(1)100重量部、バインダー「GB0007」24重量部、硬質骨材として「シリカサンド」50重量部を、この順に一度の投入し、よく攪拌して均一な混合物を調製した後、転圧して、空隙率35%に調整して、弾性舗装材を得た。この舗装材の、50cm×50cm×5cm(厚み)の形状物を試験片として用いた。
【0037】
比較例2
万能攪拌樹に、軟質骨材としてゴムチップ(2)100重量部、バインダー「GB0007」24重量部、硬質骨材として「シリカサンド」32重量部を、この順に一度に投入し、よく攪拌して均一な混合物を調製した後、転圧して、空隙率35%に調整して、弾性舗装材を得た。この舗装材の、50cm×50cm×5cm(厚み)の形状物を試験片として用いた。
【0038】
比較例3
万能攪拌樹に、軟質骨材としてゴムチップ(1)100重量部、バインダー「GB0007」27重量部、硬質骨材としてアルミナ砥粒95重量部を、この順に一度に投入し、よく攪拌して均一な混合物を調製した後、転圧して、空隙率18%に調整して、弾性舗装材を得た。この舗装材の、50cm×50cm×5cm(厚み)の形状物を試験片として用いた。
【0039】
比較例4
密粒アスファルト(ISO路面)を音圧レベルB測定用として用いた。
評価試験
<音圧比および濡れ摩擦係数の測定>
上記の実施例および比較例で得た、形状50cm×50cm×5cm(厚み)の弾性舗装材を用いて、現場施工し、1週間養生後に均一な表層を得た。この弾性舗装材について、すでに述べた方法により、式:(B−A)/Bのパラメータ値(音圧比)および濡れ摩擦係数(μ)を測定した。濡れ摩擦係数は、タイヤゴムピースの線速度が60km/hであるときの値で表した。それらの測定結果を表1に示す。
【0040】
<実車試験>
上記の実施例および比較例で得た弾性舗装材を用いて、幅3.6m、厚み3cm、50m長の舗装路面を作製して、実車(トヨタのカローラ車、リム4.53、タイヤは土木研標準の縦溝リブタイヤを空気圧170KPaで実施)によるフィーリング試験により走行性および騒音性を評価した。その結果を表1に示す。
・走行性
プロドライバーが自動2輪車で走行し、ブレーキ、ハンドリング時の安全性を次の基準で評価した。
【0041】
◎:アスファルト路面なみに安全である。
○:走行時に安全上の問題がない。
△:走行時に不安が残る。
×:危険を感ずる。
・耐騒音性
四輪自動車を走行したときの惰行騒音(エンジンを切って定速で路面を通過)を7.5m離れた位置で、高さ1.2mに位置したマイクロフォンで聞き取り、次の基準で評価した。
【0042】
◎:とにかく静かである。
○:アスファルト路面に比べて格段に静かである。
△:アスファルト路面に比べて静かである。
×:アスファルト路面と同程度の騒音がある。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果に示されるように、音圧比(B−A)/Bが0.030以上であり、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材(実施例1および2)は、実車試験による走行性および耐騒音性に優れている。これに対して、比較例1の舗装材は、音圧比(B−A)/Bが0.030に達していないことから耐騒音性に問題があり、また比較例2の舗装材は濡れ摩擦係数が0.45に達していないことから走行性に問題があり、いずれの舗装材も弾性舗装材として適当ではなかった。比較例3の舗装材もまた、音圧比(B−A)/Bが0.017を示し、耐騒音性に問題を有していた。比較例4は、通常のアスファルト舗装であるが、音圧比(B−A)/Bは0であり、騒音が高いことを示している。
【0045】
なお、表1の結果から、実車騒音レベル(dB)と音圧比(B−A)/Bとの関係をグラフで表すと、図2のとおり、両測定値には直線関係があり、高い相関関係を有する。すなわち、音圧比(B−A)/Bが騒音レベルを評価するためのパラメータとして適当であることを示すものである。
【0046】
【発明の効果】
上述のように、音圧比(B−A)/Bが0.030以上であり、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材は、耐騒音性と走行性に優れており、車両走行用道路の舗装材として実用上、きわめて有利に使用できる。当該弾性舗装材で施工した道路は、濡れたときの滑り、目詰まり、あるいは道路の剥離損傷による耐久性などが改良されたものとなる。また、音圧比(B−A)/Bは、騒音レベルを評価するために適しており、濡れ摩擦係数と共に、低騒音性で滑りにくい性能を有する弾性舗装材を試作するに際して、簡便なパラメータとして採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】弾性舗装材の耐騒音性を測定するための装置を示す。
【図2】実車騒音レベル(dB)と、図1の騒音性測定装置を用いて測定した音圧比(B−A)/Bとの関係を示すグラフである。
Claims (5)
- 軟質骨材100重量部と、硬質骨材2〜50重量部とを骨材重量の1/3〜1/10のバインダーで結合する弾性舗装材の製造方法において、前記硬質骨材と前記バインダーを複数回に分けて混合する工程を有し、
前記混合工程が、(1)前記軟質骨材に、バインダーを前記量の略半量を加えて混合する工程と、(2)前記硬質骨材の半量以下と、前記(1)工程後の残量バインダーの半量以下とを追加混合する工程と、(3)残量の硬質骨材と前記(2)工程後の残量バインダーを1回または複数回に分けて追加混合する工程とを含み、最終混合物を転圧調整により成型することにより弾性舗装材を作製し、
前記弾性舗装材の垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをAデシベルとし、密粒アスファルトの垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをBデシベルとするとき、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり[ただし、無響音室内に、コンクリート上に不織布を敷いた下地上に、試験体(50cm×50cm×5cm厚み)を置き、その垂直上方(高さ650mm)からタイヤ(土木研タイヤ、無方向リム、170KPa)を落下させ、そのときの接触音圧をタイヤの正面方向(回転方向)に設置したマイク(試験体から800mmの距離において下地上500mmの高さに設置)により集録する。試験体が弾性舗装材であるときの音圧レベルをAデシベルとし、試験体が密粒アスファルトであるときの音圧レベルをBデシベルとする。 ]、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材を前記の工程により作製した弾性舗装材の中から選別することを特徴とする弾性舗装材の製造方法。 - 前記硬質骨材を小分けして追加混合する工程が前記の(2)および(3)工程をあわせて3回以上である請求項1記載の弾性舗装材の製造方法。
- 前記硬質骨材およびバインダーの小分け追加量が、その前工程の追加量の略半量であり、追加回数が前記の(2)および(3)工程をあわせて4回で全量を投入する請求項1記載の弾性舗装材の製造方法。
- 前記舗装材の空隙率が50%以下で、かつ厚みが5〜40mmに調整される請求項1記載の弾性舗装材の製造方法。
- 少なくとも軟質骨材および硬質骨材を結合してなる弾性舗装材において、
前記弾性舗装材の垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをAデシベルとし、密粒アスファルトの垂直上方よりタイヤを落下させた際にタイヤ正面より測定した音圧レベルをBデシベルとするとき、式:(B−A)/Bで求められるパラメータ値が0.030以上であり[ただし、無響音室内に、コンクリート上に不織布を敷いた下地上に、試験体(50cm×50cm×5cm厚み)を置き、その垂直上方(高さ650mm)からタイヤ(土木研タイヤ、無方向リム、170KPa)を落下させ、そのときの接触音圧をタイヤの正面方向(回転方向)に設置したマイク(試験体から800mmの距離において下地上500mmの高さに設置)により集録する。試験体が弾性舗装材であるときの音圧レベルをAデシベルとし、試験体が密粒アスファルトであるときの音圧レベルをBデシベルとする。 ]、かつ濡れ摩擦係数が0.45以上である弾性舗装材を選別することを特徴とする弾性舗装材の品質評価方法。
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