JP4017731B2 - レジストの洗浄除去用溶剤、及び電子部品用基材の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジスト形成用塗布組成物又はレジストを洗浄除去するための新規な洗浄除去用溶剤、及び電子部品用基材の製造法に関する。より詳細には、特に半導体素子などの微細加工に使用される電子部品用基材を製造するに際して、ウエーハなどの基板の周辺部、縁辺部、裏面部などに付着した不要のレジスト形成用塗布組成物やレジストを洗浄除去するために有用な洗浄除去用溶剤、および前記不要の塗布組成物やレジストを確実に除去して高品質の電子部品用基材を簡単に且つ効率的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子等の微細加工に使用される電子部品用基材は、通常、ウエーハなどの基板上にレジスト形成用塗布組成物をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥してレジストを形成した後、回路パターンの描かれたマスクを通して露光し、必要に応じて焼成した後、現像して、マスクパターンを基板上に転写し、次いでエッチングすることにより製造される。
上記の製造工程のうち、基材にレジスト形成用塗布組成物をスピンナー等により塗布する工程においては、遠心力により前記塗布組成物が基板上で拡散するため、基板表面の中央部では均一な膜厚が得られるものの、基板の周辺部においては中心部に比し厚膜となりやすく、また基板の縁辺部や裏面部にもレジストが付着したりする。このようなレジストは、後の工程での熱処理によってもろくなり、基板の輸送中に小鱗片状に剥離し、これが装置のゴミ発生の原因になったり、基板上のレジスト表面に付着し、高品質の半導体素子を製造する上で大きな問題となっている。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、基板の周辺部、縁辺部及び裏面部の不要のレジスト成分を洗浄除去する方法が提案されている(例えば、特開昭63−69563号公報など)。そして、上記不要のレジスト成分を洗浄除去するための洗浄除去用溶剤として、従来より、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;又はこれらの混合物などが知られている。
しかし、これらの溶剤は、何れも、特にエステル化度の高いキノンジアジド系感光性物質を含有するポジ型ホトレジストに対する溶解性が良好でないため、スピンナーカップ洗浄時に残渣が残留したり、析出物が生じたりする。また、乾燥性の高い溶剤を裏面洗浄に使用した場合には、基板が冷却されるために膜厚のバラツキが生じやすい。一方、乾燥性の低い溶剤を使用した場合にはウエーハ端面の洗浄性が良好でなく、また、スピンナーカップ洗浄後の乾燥性が良好でないため作業性や操作性が低下する。また、エチレングリコール誘導体系の溶剤には毒性の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、広範なレジスト形成用塗布組成物又はレジスト(以下、レジスト等と称する場合がある)に対して優れた溶解性を示すレジスト等の洗浄除去用溶剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、エステル化度の高いキノンジアジド系感光性物質を含有するポジ型ホトレジストに対しても優れた溶解性を示すレジスト等の洗浄除去用溶剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、レジスト成分に対する溶解性が経時的に安定しており、洗浄操作中にレジスト成分が析出したり、レジスト成分の残渣が残存することのないレジスト等の洗浄除去用溶剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、適度な乾燥性を有し、基板上のレジスト等の膜厚を効率よく均一化できるレジスト等の洗浄除去用溶剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、安全性の高いレジスト等の洗浄除去用溶剤を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、レジストの膜厚が均一で、しかも不要な部位にレジストが形成されていない高品質の電子部品用基材を簡単に効率よく得ることのできる電子部品用基材の製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、炭酸エステルを含む洗浄除去用溶剤を用いると、エステル化度の高いキノンジアジド系感光性物質を含有するポジ型ホトレジストを基板上に形成する場合であっても、基板に付着した不要のレジスト成分を容易に除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、レジスト形成用塗布組成物又はレジストを洗浄除去するための溶剤であって、炭酸エステルを含む洗浄除去用溶剤を提供する。
本発明は、また、(1)基板上にレジスト形成用塗布組成物を塗布する塗布工程と、(2)基板上に塗布した塗布組成物を乾燥してレジストを形成する乾燥工程とを含む電子部品用基材の製造法であって、前記塗布工程(1)の後、又は前記乾燥工程(2)の後に、基板上に付着した不要の塗布組成物又はレジストを上記の洗浄除去用溶剤で洗浄して除去する洗浄工程を含む電子部品用基材の製造法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
[炭酸エステル]
本発明のレジスト等の洗浄除去用溶剤の主たる特徴は、炭酸エステルを含む点にある。
炭酸エステルとしては、脂肪族炭酸エステル、脂環式炭酸エステル、芳香族炭酸エステルの何れであってもよく、また、モノエステル及びジエステルの何れであってもよい。好ましい炭酸エステルには、下記式(1)で表される化合物が含まれる。
【0008】
【化2】
(式中、R1及びR2は、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基又は複素環基を示し、a及びbは、同一又は異なって、1〜6の整数を示し、x及びyは、同一又は異なって、0又は正の整数を示す)
炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、イコシル、トリアコンチル基などのアルキル基;アリル、ブテニル、ペンテニル、ドデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニルなどのアルケニル基;プロピニル、ヘキシニル基などのアルキニル基などの直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15、特に1〜10(例えば、1〜6)程度である。脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニルなどのシクロアルケニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜30、好ましくは3〜15、さらに好ましくは5〜8程度である。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜30、好ましくは6〜14程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0009】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。脂肪族炭化水素基の有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アリール基(ハロゲン原子、アルキル基(例えば、炭素数1〜6程度のアルキル基)などの置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基など)、複素環基(フリル、テトラヒドロフリル、チエニル、ピロリル、ピロリジニル、ピリジル、ピペリジノ、モルホリニルなどの酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員の複素環基など)などが挙げられる。脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、前記ハロゲン原子、炭素数1〜12程度(例えば、炭素数1〜6程度)のアルキル基などが挙げられる。芳香族炭化水素が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜12程度(例えば、炭素数1〜6程度)のアルキル基、炭素数1〜5程度のアルコキシ基、前記ハロゲン原子、ニトロ基などが挙げられる。
【0010】
置換基を有する炭化水素基の具体例として、ハロアルキル基(トリフルオロエチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシルなど)、アラルキル基(ベンジル、アルキルフェニルメチルなど)、複素環基を有するアルキル基(フルフリル、テトラヒドロフルフリル、ピリジルメチルなど)、アルキル基を有するシクロアルキル基(メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシルなど)、1〜5個のアルキル基を有するフェニル基(トルイル、クレジル、ノニルフェニルなど)などが挙げられる。
【0011】
R1、R2における複素環基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した複素環基などが挙げられる。この複素環基は、置換基、例えば、前記芳香族炭化水素が有していてもよい置換基と同様の置換基を有していてもよい。
好ましいR1、R2には、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基又はアルケニル基、シクロアルキル基、アルキルフェニル基、ベンジル基、アルキルベンジル基などが含まれる。さらに好ましいR1、R2には、フッ素原子又は塩素原子で置換されていてもよい炭素数1〜30程度(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15程度)のアルキル基が含まれる。
【0012】
前記a、bは、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜4の整数である。a、bが6を越えると、その化合物の製造工程が煩雑となる。x、yは、好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1である。
前記式(1)で表される炭酸エステルは、(1-1)x及びyが共に0である化合物(オキシアルキレン基を有しない化合物)と、(1-2)x及びyの少なくとも一方が正の整数(例えば、1)である化合物(オキシアルキレン基を有する化合物)とに分類される。化合物(1-2)は、一般に、化合物(1-1)と比較して引火点が上昇し、安全性が向上する。
【0013】
前記化合物(1-1)の具体例として、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)カーボネート、ジラウリルカーボネート、ジトリデシルカーボネート、ジテトラデシルカーボネート、ジヘキサデシルカーボネート、ジ(ヘキシルデシル)カーボネート、ジオクタデシルカーボネート、ジエイコサニルカーボネート、ジドコサニルカーボネート、ジ(オクチルドデシル)カーボネート、ジテトラコサニルカーボネート、ジ(トリフルオロエチル)カーボネート、ジ(パーフルオロペンチルカーボネート)、ジ(パーフルオロヘキシルカーボネート)、メチルエチルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、メチルへプチルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、メチルノニルカーボネート、メチルデシルカーボネート、メチルドデシルカーボネート、オクチルデシルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジブテニルカーボネート、ジドデセニルカーボネート、ジオレイルカーボネート、ジエライジルカーボネート、ジリノレイルカーボネート、ジリノレニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジクレジルカーボネート、ジ(ブチルフェニル)カーボネート、ジ(ノニルフェニル)カーボネート、ジベンジルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジ(メチルシクロヘキシル)カーボネート、ジフルフリルカーボネート、ジ(テトラヒドロフルフリル)カーボネートなどを挙げることができる。
【0014】
また、前記化合物(1-2)としては、例えば、メチル(メトキシプロピル)カーボネート、ジ(メトキシプロピル)カーボネート、メチル(エトキシプロピル)カーボネート、ジ(エトキシプロピル)カーボネート、ジ(ブトキシエチル)カーボネート、ブチル(ブトキシエチル)カーボネート、ブチル(ブトキシブチル)カーボネート、ブトキシエチル(ブトキシプロピル)カーボネート、ジ(プロポキシプロピル)カーボネート、ジ(ブトキシプロピル)カーボネートなどが挙げられる。
上記炭酸エステルは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
洗浄除去用溶剤は、炭酸エステル単独で構成されていてもよいが、炭酸エステルと他の溶剤とで構成されていてもよい。炭酸エステルと他の溶剤とを併用することにより、レジストに対する溶解性、溶解速度、及び蒸発速度のコントロールが可能となり、装置や基材サイズに適合した溶剤調製が簡単にできるという利点が生じる。
前記他の溶剤として、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
洗浄用溶剤中の炭酸エステルの割合は、好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に50〜100重量%程度であり、60〜100重量%(例えば、70〜100重量%)程度である場合が多い。
【0017】
[レジスト形成用塗布組成物及びレジスト]
本発明の洗浄除去用溶剤は、広範なレジスト形成用塗布組成物及びレジストに適用できる。レジスト形成用塗布組成物としては、通常使用されている塗布組成物、例えば、感光性物質と被膜形成物質と溶剤とを含み、且つアルカリ水溶液により現像可能なレジストを形成しうる塗布組成物などが挙げられる。レジストとして、特に有利なものは、最近の超微細加工に十分適応しうる諸要求特性を備えたポジ型ホトレジストである。なかでも、特にキノンジアジド系感光性物質と被膜形成物質とで構成されているレジストが好ましい。
【0018】
キノンジアジド系感光性物質には、例えば、(1)キノンジアジドスルホン酸エステル類(スルホン酸エステル基を有するキノンジアジド類)、(2)キノンジアジドスルホン酸アミド類(スルホン酸アミド基を有するキノンジアジド類)などが含まれる。
【0019】
(1)キノンジアジドスルホン酸エステル類としては、例えば、キノンジアジドスルホン酸類又はその反応性誘導体(例えば、酸ハライド誘導体など)とフェノール酸水酸基を有する化合物(フェノール類)との反応により生成するエステル化合物(部分エステル化合物も含む)などが挙げられる。また、(2)キノンジアジドスルホン酸アミド類としては、前記キノンジアジドスルホン酸類又はその反応性誘導体(例えば、酸ハライド誘導体など)とアミノ基を有する化合物(アミン類)との反応により生成するアミド化合物(部分アミド化合物も含む)などが挙げられる。
【0020】
前記キノンジアジドスルホン酸類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸などのo−ベンゾキノンジアジドスルホン酸;ナフトキン-1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸などのo−ナフトキノンジアジドスルホン酸;アントラキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸などのo−アントラキノンジアジドスルホン酸などが挙げられる。
前記フェノール類としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン;没食子酸;フェノール性水酸基の一部がエステル化又はエーテル化された没食子酸誘導体;没食子酸アルキル、没食子酸アリールなど没食子酸エステル;フェノール;フェノール樹脂;p−メトキシフェノールなどのアルコキシフェノール;ジメチルフェノールなどのアルキルフェノール;ヒドロキノン、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール−1,3−ジメチルエーテルなどのポリヒドロキシベンゼン又はその部分アルキルエーテル体;ナフトールなどのモノ又はポリヒドロキシナフタレン;ビスフェノールA等のポリヒドロキシジフェニルアルカン、ポリヒドロキシジフェニルアルケン、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル)]ベンゼン、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン又はそのメチル置換体などの、複数のヒドロキシフェニル基を有するアルカン又はアルケンなどが挙げられる。
前記アミン類としては、アニリン、p−アミノジフェニルアミンなどのアニリン誘導体等の芳香族アミンなどが挙げられる。
【0021】
好ましいキノンジアジド系感光性物質には、ポリヒドロキシベンゾフェノンとナフトキノン-1,2−ジアジド−5−スルホン酸又はナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸との完全エステル化物又は部分エステル化物などが含まれ、特に、平均エステル化度が70%以上のものが好ましい。
キノンジアジド系感光性物質は単独であってもよく、2種以上が併用されていてもよい。
【0022】
前記被膜形成物質には、アルカリ現像液に対して親和性を示す官能基、例えばフェノール性水酸基、カルボキシル基などの酸性官能基を有する物質などが含まれる。
このような被膜形成物質として、例えば、(1)酸性官能基及び重合性二重結合を有する単量体の重合性二重結合が開いた繰り返し単位を有するビニル系樹脂(単独重合体及び共重合体を含む)、(2)酸性官能基を有する縮合系繰り返し単位を有する縮合系樹脂などが挙げられる。
【0023】
前記ビニル系樹脂(1)を構成する酸性官能基及び重合性二重結合を有する単量体としては、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシ−α−メチルスチレン、ビニル安息香酸、カルボキシメチルスチレン、カルボキシメトキシスチレンなどの酸性官能基を有するスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸などのα,β−不飽和カルボン酸などが例示できる。
【0024】
ビニル系樹脂(1)は、前記酸性官能基及び重合性二重結合を有する単量体に対応する繰り返し単位のみで構成されていてもよいが、必要に応じて他の繰り返し単位を有していてもよい。このような他の繰り返し単位に対応する単量体として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物;(メタ)アクリロニトリルなどのα、β−不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミドなどのα、β不飽和アミド;ビニルアニリン、ビニルピリジンなどの他のビニル系単量体などの重合性二重結合を有する単量体などが挙げられる。
【0025】
前記縮合系樹脂(2)には、ノボラック樹脂に代表される、少なくとも1種のフェノール類と少なくとも1種のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂などが含まれる。前記フェノール類としては、フェノールのほか、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノールなどが挙げられる。前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドのほか、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどを挙げることができる。
【0026】
好ましい被膜形成物質には、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール類とアルデヒド類とから得られるノボラック樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリ(ヒドロキシスチレン)[ポリビニルフェノール]、ポリ(ビニルヒドロキシベンゾエート)、ポリ(ビニルヒドロキシベンザル)などのアルカリ可溶性樹脂などが含まれ、中でも、クレゾールノボラック樹脂などが特に好ましい。また、好ましいノボラック樹脂には、低分子領域をカットした重量平均分子量が2000〜20000、好ましくは5000〜15000程度のノボラック樹脂が含まれる。
被膜形成物質は、単独であってもよく、2種以上併用されていてもよい。
【0027】
ポジ型ホトレジストにおいては、前記感光性物質の量は、前記被膜形成物質100重量部に対して、通常10〜40重量部、好ましくは15〜30重量部程度である。感光性物質の量が多すぎると感度が低下しやすくなり、逆に少なすぎると好ましいパターン形状が得られにくくなる。
【0028】
レジスト形成用塗布組成物を構成する溶剤としては、慣用の溶剤、例えば、前記洗浄除去用溶剤において他の溶剤として例示した溶剤(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類等)などを使用できる。また、レジスト形成用塗布組成物を構成する溶剤として、前記洗浄除去用溶剤として例示した溶剤なども使用できる。
【0029】
レジスト形成用塗布組成物には、必要に応じて、相溶性を有する慣用の添加剤、例えば、染料(例えば、クマリン染料、アゾ染料など)、レジスト膜の性能などを改良するための付加的樹脂、可塑剤、安定剤、現像して得られるパターンをより一層可視的にするための着色料、増感効果を向上させるための増感剤、コントラスト向上剤、界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0030】
[電子部品用基材の製造]
半導体素子等の微細加工に使用される電子部品用基材は、通常、(1)基板上にレジスト形成用塗布組成物を塗布する塗布工程、及び(2)基板上に塗布した塗布組成物を乾燥してレジストを形成する乾燥工程を経て製造される。
【0031】
塗布工程(1)では、シリコンウエーハ、酸化膜で被覆されたシリコンウエーハなどの基板上にレジスト形成用塗布組成物をスピンナーなどの慣用の塗布手段を用いて塗布する。なお、塗布には、狭義の塗布のほか、噴霧、浸漬などにより塗膜を形成する場合も含まれる。基板上にレジスト形成用塗布組成物を塗布する際、基板の表面に均一な塗膜が形成されないことが多い。また、基板の縁辺部や裏面部など、レジストを形成すべきでない部位にまで前記塗布組成物が付着することも多い。
【0032】
例えば、塗布手段としてスピンナーを用いる場合、スピンヘッド上で回転させる回転板の上に、ウエーハ等の基板を保持し、その中心部にレジスト形成用塗布組成物を適用して回転板を回転させると、塗布組成物は回転板の遠心力により放射方向に拡散し、基板の表面全体に塗膜が形成される。図1は、スピンナーによりレジスト形成用塗布組成物を基板1に塗布した際の基板の状態を示す概略部分断面図である。スピンナーにより基板1上に塗布組成物を塗布すると、基板1の表面では、例えば、周辺部が中央部よりも盛り上がり、周辺部の塗膜3の膜厚が中央部の塗膜2の膜厚よりも大きくなる。また、基板1の縁辺部や裏面部などの塗布の不要な部位にも塗布組成物が付着する。符号4及び5は、それぞれ、基板1の縁辺部及び裏面部に付着した塗布組成物を示す。
【0033】
乾燥工程(2)では、基板上に塗布した塗布組成物(塗膜)を、加熱等により乾燥して、レジストを形成する。この場合、前記塗布工程の後、不要の塗布組成物を洗浄除去することなく、直ちに乾燥工程に移行すると、レジストの膜厚も不均一となり、例えば、基板表面の周辺部の膜厚は中央部の膜厚よりも大きくなる。また、基板の縁辺部や裏面部などの不要な部位にレジストが形成される。
【0034】
本発明の方法の特徴は、前記塗布工程(1)の後、又は前記乾燥工程(2)の後に、基板上に付着している不要の塗布組成物又はレジストを前記洗浄除去用溶剤で洗浄、除去する洗浄工程を含む点にある。
この洗浄工程では、基板の周辺部、縁辺部、裏面部に付着している不要の塗布組成物又はレジストを、例えば基板を回転させながら、前記洗浄除去用溶剤により洗浄処理して取り除く。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、洗浄除去用溶剤を、ノズルを用いて、基材の周辺部などに滴下したり、吹き付けたり、好ましくはバックリンスを施したりすることにより洗浄処理を行うことができる。
【0035】
洗浄除去用溶剤の使用量は、レジストの種類、基板の回転数、膜厚などにより適宜選択できるが、ノズルから供給する場合、通常10〜100ml/分、好ましくは30〜50ml/分程度である。また、洗浄処理の処理時間や処理回数も、レジストの種類等により適宜設定できる。 洗浄は、塗布工程(1)の後、又は乾燥工程(2)の後の何れか一方の時点で行ってもよく、また、塗布工程(1)の後、及び乾燥工程(2)の後の両時点で行ってもよい。
【0036】
上記のように、電子部品用基材の製造プロセスにおいて、本発明の洗浄除去用溶剤を用いる洗浄工程を設けることにより、均一な膜厚のレジストが形成された高品質の電子部品用基材を容易に得ることができる。
なお、本発明の洗浄用溶剤は、広範なレジスト形成用塗布組成物やレジストに対して優れた溶解性を示すため、上記のように、基板に付着した塗布組成物やレジストの除去だけでなく、塗布工程などで使用する器具類(例えば、スピンナーカップなど、レジスト形成用塗布組成物と接触する器具類)に付着または固着した前記塗布組成物又はレジストの洗浄、除去にも極めて有用である。
【0037】
【発明の効果】
本発明の洗浄用溶剤は、広範なレジスト形成用塗布組成物又はレジストに対して優れた溶解性を示す。特に、エステル化度の高いキノンジアジド系感光性物質を含有するポジ型ホトレジストに対しても優れた溶解性を示す。また、レジスト成分に対する溶解性が経時的に安定しており、洗浄操作中にレジスト成分が析出したり、レジスト成分の残渣が残存することがない。さらに、適度な乾燥性を有し、基板上のレジスト等の膜厚を効率よく均一化できるとともに、安全性に優れる。
本発明の電子部品用基材の製造法によれば、レジストの膜厚が均一で、しかも不要な部位にレジストが形成されていない高品質の電子部品用基材を簡単に効率よく得ることができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0039】
実施例1〜3、比較例1〜4
2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド4モルとのエステル化反応生成物(平均エステル化度90%)7.5g、およびクレゾールノボラック樹脂30gをエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート70gに溶解してポジ型ホトレジスト形成用塗布組成物を調製した。
得られた塗布組成物を、7枚の3インチシリコンウエーハ上に、スピンナーにより、乾燥膜厚が10μmとなるように塗布したのち、ホットプレート上で、120℃で90秒間加熱することによって、表面上にレジスト膜が形成されたシリコンウエーハを得た。
次いで、表1に示す各溶剤をビーカーに入れ、上記7枚のシリコンウエーハをそれぞれの溶剤に浸せきし、レジスト膜がシリコンウエーハ表面から完全に溶解除去されるまでの時間(溶解時間)を測定した。その結果を表1に示す。
一方、上記のポジ型ホトレジスト形成用塗布組成物を、6インチシリコンウエーハ上に、回転塗布装置(ミカサ(株)製;1H−360)を用いて、3000rpm、20秒間で塗布し、膜厚1.3μmの塗布膜を形成した。次いで、回転数を1000rpmに下げ、同装置のウエーハ裏面噴射用洗浄ノズルから、表1に示す各溶剤を40ml/分の流量で、2秒間、5秒間及び10秒間噴射し、それぞれの噴射時間におけるシリコンウエーハのエッジ部レジストの溶解状態について観察し、下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。
○:エッジ部レジストが完全に溶解している
△:エッジ部レジストが部分的に残存している
×:エッジ部レジストのほとんどが残存している
なお、エッジ部レジストとはシリコンウエーハの縁辺部及び裏面部に付着したレジスト、及びシリコンウエーハ表面の中央部の膜厚よりも盛り上がった不要の周辺部レジストを意味する。また、表中の各略号は下記化合物を意味する。
DMC :ジメチルカーボネート
DEC :ジエチルカーボネート
MEK :メチルエチルケトン
MMPGAC:プロピレングリオールモノメチルエーテルアセテート
EMEGAC:エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
BA :酢酸ブチル
【表1】
実施例4〜6、比較例5〜8
エステル化反応生成物として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド1.2モルとのエステル化反応生成物(平均エステル化度40%)7.5gを用いた以外は、実施例1〜3と同様の操作を行い、各溶剤を用いた場合の溶解時間及び溶解状態について調べた。その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はスピンナーによりレジスト形成用塗布組成物を基板に塗布した際の基板の状態を示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 基板表面の中央部に形成された塗膜
3 基板表面の周辺部に形成された塗膜
4 基板の縁辺部に付着した塗布組成物
5 基板の裏面部に付着した塗布組成物
Claims (3)
- レジスト形成用塗布組成物又はレジストを洗浄除去するための溶剤であって、炭酸エステルを含む洗浄除去用溶剤。
- (1)基板上にレジスト形成用塗布組成物を塗布する塗布工程と、(2)基板上に塗布した塗布組成物を乾燥してレジストを形成する乾燥工程とを含む電子部品用基材の製造法であって、前記塗布工程(1)の後、又は前記乾燥工程(2)の後に、基板上に付着した不要の塗布組成物又はレジストを請求項1記載の洗浄除去用溶剤で洗浄して除去する洗浄工程を含む電子部品用基材の製造法。
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