JP4011167B2 - 化粧金属板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築材、家電製品等の表面化粧に用いる化粧金属板およびその製造方法に関し、特に、ユニットバス等の壁面や、冷蔵庫等の家電製品のハウジングに使用される耐久性、高加工性の要求される化粧金属板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、前記の用途に使用される化粧金属板としては、鋼板等の金属板上に装飾処理された塩化ビニル樹脂をラミネートしたものが、広く使用されてきた。
しかしながら、塩化ビニル樹脂は焼却時に熱分解され、塩化水素等の塩素化物ガスが発生したり、或いは化粧シート使用時に可塑剤が溶出(ブリードアウト)して、表面に汚れが付着し易くなったり、金属板と化粧シートとの接着が低下する等の問題がある。
【0003】
また、樹脂廃材のリサイクルを行う場合、塩化ビニル樹脂よりもオレフィン系樹脂の方が容易とされている。従って、塩化ビニル樹脂を他の樹脂に代替した化粧金属板が要望されていた。
【0004】
塩化ビニル樹脂部分が他の樹脂に代替された化粧金属板として、これまで鉄板、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板に、オレフィン樹脂からなるフィルムをドライラミネート法により貼り合わせた化粧金属板が知られている。
【0005】
図3に、従来のオレフィン樹脂からなる化粧金属板を壁面材として用い、壁面材の繋ぎ目にコーキング剤を充填して封じる場合の断面図を示す。
この化粧金属板においては、金属板31上に接着剤層32が形成され、その上層に厚さ50〜150μm程度のオレフィン系樹脂層33が形成されている。
【0006】
上記のようなオレフィン樹脂を貼着させた化粧金属板は、塩化ビニル樹脂を用いた化粧金属板のような焼却時の塩素化物ガスの発生や、可塑剤の溶出がなく、また、さらにリサイクルをすすめる上でも適している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなオレフィン樹脂を鋼板にラミネートした化粧金属板を、ユニットバスの表面材等、鋼板を屈曲加工させて表面同士を接着させる箇所に使用した場合、繋ぎ目部分に充填するコーキング材の密着性が劣るという問題がある。
【0008】
鋼板を屈曲加工させて表面同士を接着させる場合、図3に示した状態図のように、通常、繋ぎ目にシリコン樹脂系のコーキング剤34が充填される。
オレフィン系樹脂層33表面は塩化ビニル樹脂に比較して接着性に劣り、また、オレフィン系樹脂層33とコーキング剤34は、両樹脂間の極性が大きく相違するため、境界面の濡れ、相溶性、化学的親和性に乏しく、接着強度が不十分となる。
【0009】
さらに、樹脂によっては化粧金属板を曲げ加工する際、屈曲部の稜線部分の樹脂が破断することがある。また、曲げ加工の際、樹脂の延びが不均一となり、樹脂層が部分的に薄くなる(ネッキング現象)こともある。
【0010】
ネッキング現象が生じると下地の隠蔽が不十分となり外観上問題となるだけでなく、鋼板の劣化が進行しやすくなる。従って、ネッキングの少ない樹脂を化粧金属板に使用する必要がある。
【0011】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、オレフィン樹脂が鋼板にラミネートされた化粧金属板であって、コーキング剤との密着性に優れると共に曲加工適性を有した化粧金属板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明の化粧金属板は、金属板上に接着剤層を介して化粧シートが貼着された化粧金属板であって、前記化粧シートは、少なくとも1層のオレフィン系樹脂層と、前記オレフィン系樹脂層上に形成され、イソシアネートにより反応硬化せずにコーキング剤との密着性を高める非硬化型重合体を含有し、アクリルポリオールとイソシアネート化合物とを混合硬化させた二液硬化型アクリルウレタン重合体であるアクリルウレタン樹脂層とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の化粧金属板は、好適には、前記非硬化型重合体は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする。
【0015】
また、上記の目的を達成するため本発明の化粧金属板の製造方法は、オレフィン系樹脂層上に、予め、イソシアネートにより反応硬化せずにコーキング剤との密着性を高める非硬化型重合体を含有させたアクリルポリオールとイソシアネート化合物の混合物を塗布する工程と、前記アクリルポリオールとイソシアネート化合物の混合物を硬化させて二液硬化型アクリルウレタン重合体の層とし、化粧シートを形成する工程と、金属板上に接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層を介して、前記金属板と前記化粧シートを貼着させる工程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧金属板は、金属板上に接着剤層を有し、その上層に化粧シートが貼着された構成となっている。金属板と接着剤層の間には、接着性を高めるための易接着層(プライマー層)が形成されていてもよい。
【0017】
次に、本発明の化粧金属板に貼着すべき化粧シートの構成を説明する。
本発明の化粧金属板の化粧シートは、少なくとも1層のオレフィン系樹脂層と、前記オレフィン系樹脂層上に形成されたアクリルウレタン樹脂層を有し、前記アクリルウレタン樹脂層には非硬化型重合体が含有されている。
【0018】
前記オレフィン系樹脂層が2層以上形成される場合、オレフィン系樹脂層は共押出加工等に熱融着されるか、或いは接着剤層を介して積層される。オレフィン系樹脂層と接着剤層との間にプライマー層が形成されていてもよい。
或いはオレフィン系樹脂層の接着剤層側にコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着化処理が施されていてもよい。
【0019】
本発明の化粧金属板を構成する各層について、以下に詳細に説明する。
金属板は必要に応じて、表面に亜鉛メッキ等の防錆処理を施した、鉄又はステンレス鋼等の鉄合金、アルミニウム又はジュラルミン等のアルミニウム合金、チタン又はチタン合金、銅等を材料として用いて形成する。
【0020】
金属板の膜厚は、通常0.1mm〜1mm程度とする。
金属板表面には必要に応じて、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等からなるプライマー層を形成してもよい。
【0021】
前記金属板上には、接着剤層が設けられる。接着剤層は、金属板上、又は化粧シート上のいずれか一方又は両方に、スプレーコート、ロールコート、カーテンフローコート等の塗布法によって設ける。
【0022】
接着剤層は、感熱型接着剤、電離放射線硬化型接着剤等の中から適宜接着剤を選択し、通常1〜20μm程度の膜厚で形成することができる。
感熱型接着剤は加熱により接着性が発現する型であり、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いられる。
【0023】
感熱型接着剤として用いられる熱可塑性樹脂としては例えば、ポリスチレン等のスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のアクリル樹脂((メタ)アクリルとはアクリル又はメタアクリルの意味)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のビニル重合体、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチルゴム等のゴム系樹脂、塩化ポリプロピレン等の塩化ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の、1種又は2種以上の混合物があげられる。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエポキシ樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂等の1種又は2種以上の混合物があげられる。
【0025】
電離放射線硬化型接着剤は、紫外線、電子線等の電離放射線の照射によりラジカルを発生させ、ラジカルにより分子の架橋・重合を開始、促進させるか、或いはカチオン重合によって分子の架橋・重合を開始、促進させる型である。
【0026】
例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートプレポリマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロペントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体のラジカル重合型のもの、ビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等のカチオン重合型のものが挙げられる。
【0027】
この他には、ガラス転移温度が0〜250℃であるポリマーの中にラジカル重合性不飽和基を有する化合物や、融点が20〜250℃でありラジカル重合性不飽和基を有するトリアジン(メタ)アクリレートプレポリマー等の化合物からなる樹脂が用いられる。
【0028】
化粧シートの接着剤層側にプライマー層を設ける場合は、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、二液硬化型ウレタン樹脂、塩化ポリプロピレン、塩化ポリエチレン等の塩化ポリオレフィン樹脂のうち、1種または2種以上を混合して用いる。
【0029】
接着剤層上には、化粧シートのオレフィン系樹脂層が形成される。
オレフィン系樹脂層に用いられるオレフィン系樹脂は、熱可塑性オレフィン系エラストマー及び非エラストマーオレフィン系樹脂の両方を包含するが、化粧金属板に利用されることから、曲げ加工等の加工性が必要とされるため、特に熱可塑性オレフィン系エラストマーが好ましい。
【0030】
具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンのうち1種のオレフィンからなる単独重合体、及び2種以上のオレフィンからなる共重合体をいい、例えば、ポリエチレン(低密度又は高密度)、エチレン−プロピレン共重合体やエチレン−1−ブテン共重合体等のエチレン−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレンランダム及びブロック共重合体等が挙げられる。
【0031】
共重合に用いられるオレフィンとしては、上記の他、炭素数2〜8のオレフィン、例えば、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち、特に好ましい熱可塑性エラストマーの例を挙げると、
(1)特公平6−23278号掲載の(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25,000以上、且つ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%、との混合物からなる軟質ポリプロピレン。
【0033】
この種のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、ネッキングを生じ難く、加熱、加圧を用いて各種形状に成形したりエンボス加工する際に適性良好なものとしては、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比が5重量%以上50重量%以下のものである。
【0034】
包装容器等、従来公知の用途に用いられるポリプロン系のオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合、強度が重視されるため、ソフトセグメントとなるアタクチックポリプロピレンの重量比が5重量%未満のものが使用されることが多い。
【0035】
しかしながら、本発明のようにエンボス加工等の表面処理が施される場合、包装容器等に用いられるものと同様な組成とするとネッキングを生じて良好な加工が不可能となる。
【0036】
そこで、アタクチックポリプロピレンの重量比を5重量%以上として、折曲加工或いは三次元形状、乃至は凹凸形状に加工する際のネッキングの問題を解消する。
特に、アタクチックポリプロピレンの重量比が20重量%以上の場合に加工性良好となる。
【0037】
一方、アタクチックポリプロピレンの重量比が過剰となると、シート自体が変形し易くなり、シートを印刷機に通したときにシートが変形し、絵柄が歪んだり、多色刷りの場合に見当(レジスタ)が合わなくなる等の問題が発生する。又、成形時にも破れ易くなり好ましくない。
【0038】
アタクチックポリプロピレンの重量比の上限としては、輪転グラビア印刷等の通常の輪転印刷機を用いて絵柄層を印刷し、又、シートのエンボス加工、真空成形、Vカット加工(折り曲げ加工の箇所で楔型に樹脂に切り込みを入れる加工)、射出成形同時ラミネート等を採用する場合は50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0039】
(2)エチレン・プロピレン・ブテン共重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、ブテンとしては1−ブテン、2−ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム重合体であって、非晶質の部分を一部含む。
【0040】
上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体の好ましい具体例としては次の(A)〜(C)が挙げられる。
(A)特開平9−111055号公報記載のもの。これは、エチレン・プロピレン・ブテンの3元共重合体によるランダム共重合体である。単量体成分の重量比はプロピレンが90重量%以上とする。メルトフローレートは230℃、2.16kgで1〜50g/10分のものが好適である。
【0041】
このような3元ランダム共重合体100重量部に対して、リン酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を熔融混練してなるものである。
【0042】
(B)特開平5−77371号公報記載のもの。これは、エチレン・プロピレン・1−ブテンの3元共重合体であって、プロピレン成分含有率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるものである。
【0043】
(C)特開平7−316358号公報記載のもの。これは、エチレン・プロピレン・1−ブテンの3元共重合体であって、プロピレン及び/又は1−ブテン含有量が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に対して、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%混合した組成物100重量部に対して、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5重量%添加してなるものである。
【0044】
上記のエチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、上記(A)〜(C)に必要に応じ更に他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0045】
上記のオレフィン系樹脂には、透明造核剤として、上記のリン酸アリールエステル化合物の他に、タルクや安息香酸アルミニウムが添加されてもよい。また、特に高い透明性が要求される場合は、ソルビトール系の透明造核剤が添加されてもよい。
【0046】
さらに、透明造核剤の樹脂中での分散性を向上させるため、有機カルボン酸アルカリ金属塩、β−ジケトナートアルカリ金属塩及びβ−ケト酢酸エステルアルカリ金属塩の中から選ばれた少なくとも1種の分散剤が添加されてもよい。
【0047】
オレフィン系樹脂層には、共通に紫外線吸収剤、又は光安定剤のいずれか一方又は両方を添加することができる。添加量は紫外線吸収剤、光安定剤ともに通常0.5〜5重量%程度であり、一般には紫外線吸収剤と光安定剤とを併用する。
【0048】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、または0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることができる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤を用いることができる。
【0049】
オレフィン系樹脂層を形成するオレフィン系樹脂フィルムの厚さは、通常50〜200μmとし、好ましくは50〜150μmとする。
オレフィンフィルムの厚さが150μmを超えると、曲加工等の成形加工が難しくなり、又それ以上厚みを増加させても、金属板の表面保護性能の向上効果も飽和してくる為、厚さは150μm以下に抑える。
【0050】
オレフィン系樹脂フィルムの厚さを約50μmより薄くした場合、下地金属板の隠蔽が不十分となったり、或いは成形加工時に破れ易くなるため、オレフィン系樹脂層の厚さは50μm以上とするのが好ましい。
【0051】
前記オレフィン系樹脂層は、顔料乃至は染料等の着色剤により着色(透明または不透明着色)されていてもよく、また、前記オレフィン系樹脂層表面に絵柄印刷、エンボス加工(加熱プレス等による凹凸模様の賦形)等の装飾処理が施されていてもよい。
【0052】
顔料乃至は染料添加に用いられる着色剤としては、チタン白、亜鉛華、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、アニリンブラック等の有機染料、二酸化チタン被覆雲母等からなる真珠光沢(パール)顔料等がある。
【0053】
模様の印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等、公知の印刷法を用いて行う。
印刷の塗料は、バインダーとしてポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース樹脂等の1種または2種以上を混合して用いる。
【0054】
オレフィン樹脂に直接印刷する場合は、バインダーとして塩化ポリオレフィン、二液硬化型ウレタン樹脂を用いるのが接着性の点で好ましい。
エンボス加工はオレフィン樹脂を加熱軟化させ、エンボス版で加圧賦形後、冷却固定することにより行い、公知の枚葉式・輪転式のエンボス機を用いることができる。
【0055】
オレフィン系樹脂フィルムの金属板側表面又はアクリルウレタン樹脂層側表面のいずれか片方又は両方には、オレフィン系樹脂フィルムのラミネート性(易接着性)や接着剤塗布性を向上させるための表面処理が施されていてもよい。
【0056】
表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、酸処理等が挙げられ、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。
【0057】
これらの方法のうち、連続処理が可能であり、フィルムの製造過程の巻き取り工程前に容易に実施可能であることから、プラズマ処理、火炎処理及びコロナ放電処理が好ましく、簡便さの点からコロナ放電処理が特に好ましい。
【0058】
オレフィン系樹脂層上に、表面の耐磨耗性等の耐久性、曲加工等の成形加工適性が良好であり、且つシリコン樹脂系コーキング剤との接着性も良好な表面層としてウレタン樹脂層を形成する。
【0059】
ウレタン樹脂層としては、アクリルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン等の層が用いられるが、中でもアクリルウレタン樹脂層が好ましい。
【0060】
アクリルウレタン樹脂層は、アクリルウレタン重合体のプレポリマーを塗料化し、グラビアコート等の既知の方法を用いて塗工した後、樹脂を架橋、硬化させることにより形成されている。
【0061】
本発明で使用される二液硬化型アクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。
アクリルポリオールとしては、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体と、分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール(多価アルコール)との縮合生成物が用いられる。
【0062】
ポリオールとしては、例えば、分子量500〜3000のポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール等を用いることができる。
【0063】
イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが用いられる。
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)メタン、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の芳香族イソシアネート、またはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートが用いられるが、熱変色防止及び耐候性の観点からは、脂肪族イソシアネートを用いることが望ましい。
【0064】
ポリイソシアネートとしては、又、付加体、多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0065】
本発明の化粧金属板において、前記アクリルウレタン樹脂層は非硬化型重合体を含有することを特徴とする。ここで非硬化型重合体とは、アクリルウレタン樹脂の架橋剤であるイソシアネートにより反応硬化しない樹脂であり、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。
【0066】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、シリコン系等のコーキング剤との親和性が大きく、また、アクリルウレタン樹脂層中に未反応のまま残る。従って、アクリルウレタン樹脂層に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含有させることにより、コーキング剤との間で良好な接着性を得ることができる。
【0067】
前記アクリルウレタン樹脂層の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリルポリオールとの樹脂混合比率(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体:アクリルポリオール)は、5:95〜80:20の範囲にあることが好ましい。
【0068】
アクリルウレタン樹脂層の樹脂混合比率を上記の範囲内とすることにより、オレフィン系樹脂層及びコーキング剤の双方と接着性が良好なアクリルウレタン樹脂層を形成することができる。
【0069】
塩化ビニル−酢酸ビニル重合体樹脂が5重量%以下の場合は、コーキング剤との密着性に劣り、80重量%以上の場合はオレフィン層との接着性に劣り、また、アクリルポリオールとイソシアネートとの架橋も不十分となる。
アクリルウレタン樹脂層には、上記のオレフィン系樹脂層と同様に紫外線吸収剤や光安定剤を添加することができる。
【0070】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の化粧金属板の製造方法について説明する。
本発明の化粧金属板の製造方法は、オレフィン系樹脂層上に予め非硬化型重合体を含有させたアクリルウレタン樹脂層を塗布する工程と、前記アクリルウレタン樹脂層のアクリルウレタン樹脂を硬化させて化粧シートを形成する工程と、金属板上、或いは化粧シートの接着面上のいずれか一方又は両方に接着剤層を形成する工程と、前記接着剤層を間に介して金属板と前記化粧シートを貼着させる工程とを少なくとも有することを特徴とする。
【0071】
各工程について以下に説明する。
オレフィン系樹脂層を形成するオレフィンフィルムを易接着性とするため、例えば、表面にコロナ放電処理を施す。オレフィン系樹脂の臨界表面張力は、通常、室温において30(dyne/cm)程度であるが、コロナ放電処理によりフィルム表面の濡れを大きくすると50(dyne/cm)程度となる。
【0072】
次に、オレフィン系樹脂層上に二液硬化型アクリルウレタン樹脂層を形成する。二液硬化型ウレタン樹脂を塗料化して、グラビアコート等の既知の方法により塗工し、アクリルウレタン層を形成する。
【0073】
二液硬化型ウレタン樹脂の塗布量は0.5〜10g/m2 (dry)程度とし、好適には、5g/m2 (dry)とする。
アクリルウレタン樹脂の硬化反応を促進するため、必要に応じて塗工後に加熱してもよい。イソシアネート硬化ウレタン系樹脂の場合、通常40〜60℃で1〜2日程度である。
【0074】
アクリルウレタン樹脂層の硬化後、例えば、エンボス加工等の表面装飾処理を行ってもよい。
上記の工程により、1層のオレフィン系樹脂層を有する化粧シートが形成される。2層以上のオレフィン系樹脂層を有する化粧シートを形成する場合は、さらに接着剤層を介して、裏打基材となるオレフィン系樹脂層と、1層構成の化粧シートの裏面とを接着する。また、必要に応じて適宜プライマー層を形成してもよい。
【0075】
次に、例えば、金属板上に接着剤層をグラビアコート法、リバースロールコート法、カーテンフローコート法等の既知の方法により形成する。
続いて、前記接着剤層上に前記化粧シートの非化粧面(オレフィン系樹脂層のアクリルウレタン樹脂層に接していない面)をラミネートする。
【0076】
通常、オレフィン層を有する積層体の形成方法としては、予めオレフィンフィルムを所定の厚さに成膜しておき、そのフィルムを金属板等の基材上にウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等の接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法と、接着層として溶融オレフィンを用いて基材とオレフィンフィルムをサンドラミネートするポリサンド法がある。
【0077】
しかしながら、ポリサンド法でオレフィン層を十分に接着させるには300℃程度の加熱工程が必要であり、高分子の一部が分解する可能性がある。そのため、オレフィン層を異種の樹脂層と接着させるにはドライラミネート法が最も確実である。
【0078】
以上の製造工程により、化粧金属板表面とコーキング剤との接着性が良好な、所望の化粧金属板を得ることができる。従って、化粧金属板を屈曲加工させて表面同士を接着させる際に、繋ぎ目の密閉性を高くすることができる。
また、化粧シートが主にオレフィン系樹脂からなるため、主に塩化ビニル樹脂からなる場合のように、焼却時に塩素化物ガスを発生しない。
【0079】
【実施例】
以下に、本発明の化粧金属板およびその製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら下記に説明する。
【0080】
(実施例1)
図1は、本実施例の化粧金属板の断面図である。
金属板11の上層に接着剤層12が形成されている。その上層に、オレフィン系樹脂層13とアクリルウレタン樹脂層14からなる化粧シート15が形成されている。
【0081】
上記の本実施例の化粧金属板の製造方法について説明する。
まず、オレフィン系熱可塑性エラストマーフィルムからなるオレフィン系樹脂層13の表裏両面にコロナ放電処理を施して、フィルム表裏両面の濡れを大きくし、臨界表面張力を50(dyne/cm)程度とする。
【0082】
オレフィン系熱可塑性エラストマーフィルムは、アイソタクチックポリプロピレンからなるハードセグメントとアタクチックポリプロピレンからなるソフトセグメントとを80:20重量比で混合した組成のものを用いる。また、フィルムの膜厚は80μmとする。
尚、オレフィン系樹脂層13には、チタン白と弁柄とからなる顔料により、予め不透明に着色しておく。
【0083】
次に、二液硬化型ウレタン樹脂を塗料化して、前記オレフィン系樹脂層13上に、グラビアコート法により5g/m2 (dry)塗工してアクリルウレタン樹脂層14を形成する。
【0084】
アクリルウレタン樹脂を形成する塗料としては、アクリルポリオールと塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とを75:25重量比で混合してなる主剤に、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる架橋剤を、主剤:架橋剤=100:10重量比で混合したものを用いた。
【0085】
アクリルウレタン樹脂層14の硬化反応を促進するため、40℃で2日加熱した後、アクリルウレタン樹脂層14表面に、砂目調エンボス加工を施すことにより、表面に砂目調凹凸を有するオレフィン化粧シートが得られる。
【0086】
次に、0.4mm厚の溶融亜鉛メッキ鋼板11を用意し、オレフィン樹脂系接着剤を2μm厚となるよう塗工して、200℃に加熱し、接着剤層12を形成する。
【0087】
オレフィン系樹脂層13とアクリルウレタン樹脂層14とからなる前記化粧シートの、非化粧面(砂目調エンボス加工を施していない面)を、ラミネーターを用いてオレフィン樹脂系接着剤層12を間に介して熔融亜鉛メッキ鋼板11上にラミネートする。
ラミネートは、ヒートシーラーを用いて、シール圧力2kg/cm2 、シール時間0.5秒の条件で行うことができる。
【0088】
上記のオレフィン系樹脂層13及びアクリルウレタン樹脂層14には、共通に紫外線吸収剤と光安定剤を添加する。添加量は、オレフィン系樹脂層13及びアクリルウレタン樹脂層14それぞれに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤からなる光安定剤を、ともに0.5重量%程度とすることができる。
【0089】
上記の本発明の化粧金属板は、表面の耐磨耗性、防錆性等の耐久性に優れるとともに、コーキング剤との接着性が高く、曲げ加工等の加工性に優れ、化粧金属板を屈曲させて図3の如く表面同士を接着させる際の繋ぎ目の密閉性も高い。
【0090】
本実施例では、着色されたオレフィンフィルムを用いることにより、オレフィン系樹脂層に着色される。一方、予め顔料または染料を二液硬化型ウレタン樹脂に混和させることにより、アクリルウレタン樹脂層に着色することもできる。
【0091】
(実施例2)
実施例1は、下地鋼板を外観上隠蔽する層が、オレフィン系樹脂層単層であるのに対し、本実施例は、下地鋼板を外観上隠蔽するオレフィン系樹脂層を2層(複層)とし、さらに、ウレタン系樹脂インキからなる絵柄印刷層を設けた例である。
【0092】
図2に、本実施例の化粧金属板の断面図を示す。
図2に示す化粧金属板は、金属板21の上層に第1接着剤層22を有し、その上層に第1オレフィン系樹脂層23が形成されている。さらに、その上層に絵柄印刷層24、第2接着剤層25、第2オレフィン系樹脂層26を有し、表面にアクリルウレタン樹脂層27が形成された構造を有する。
【0093】
上記の化粧金属板の製造方法について説明する。
まず、第1オレフィン系樹脂層23とウレタン系樹脂インキを用いた絵柄印刷層24とからなる第1の(下層となる)化粧シートを作製する。
【0094】
第1オレフィン系樹脂層23には、エチレン・プロピレン・1−ブテンの3元共重合体からなるオレフィン系熱可塑性エラストマーのフィルムを用いる。実施例1のオレフィン化粧シートと同様の、着色された厚さ80μmのオレフィンフィルム23の表裏両面にコロナ放電処理を施し、表裏両面を易接着性とする。その上層に、ウレタン系樹脂インキを用いて絵柄印刷層24を設ける。
【0095】
絵柄印刷層24を形成するウレタン系樹脂インキとしては、ウレタン−アクリルブロック共重合体を用いる。ウレタン−アクリルブロック共重合体を用いることにより、アクリルの耐光性・硬度とポリウレタンの密着性という、2つの樹脂の特性を合わせ持つ樹脂層を形成することができる。
【0096】
次に、絵柄印刷層24の上層に、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとからなる二液硬化型ウレタン樹脂の第2接着剤層25を、5g/m2 で設ける。
【0097】
その上層に、アイソタクチックポリプロピレンのハードセグメントとアタクチックポリプロピレンのソフトセグメントとを80:20重量比で混合してなるオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂の無色透明フィルムを、ドライラミネート法により貼り合わせ、第2オレフィン系樹脂層26とする。
【0098】
透明フィルム上にコロナ処理を施して表面を易接着性とした後、ウレタン系樹脂塗料を実施例1と同様に、グラビアコート法を用いて5g/m2 (dry)となるように塗工する。これにより、アクリルウレタン樹脂層27が形成される。
【0099】
本実施例の化粧金属板は、実施例1同様にコーキング剤との接着性が高く、化粧金属板を屈曲加工させて、図3の如く表面同士を接着させる際の繋ぎ目の密閉性も高いものとなっている。
なお、本発明の化粧金属板において、オレフィン系樹脂層の積層数に特に制限はなく、3層以上の積層体とすることもできる。
【0100】
(実施例3)
実施例1で得られた化粧金属板に、図3に示すような90℃曲げ加工を行ったところ、屈曲部分において化粧シート部の白化や亀裂は起こらず、外観上問題となるようなネッキング現象も生じなかった。
また、接着部分にシリコン系コーキング剤を充填する場合の、化粧金属板とコーキング剤との接着性も良好であった。
【0101】
本発明の化粧金属板およびその製造方法は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、化粧シートの構成をオレフィン系樹脂層と、オレフィン系樹脂層上に選択的(局所的)にアクリルウレタン樹脂を用いて形成された絵柄印刷層と、最上層の全面に形成されたアクリルウレタン樹脂層の積層体とすることもできる。
【0102】
上記の化粧シートの構成を変更した例において、絵柄印刷層とアクリルアクリルウレタン樹脂層との間に、プライマー層を設けることもできる。これにより、絵柄印刷層の施されていない部分のオレフィン系樹脂層とアクリルウレタン樹脂層との間で、良好な接着性を得ることができる。
【0103】
あるいは、透明なオレフィン系樹脂層のオレフィンフィルムの裏面(鋼板側の面)に、アクリルウレタン樹脂からなる絵柄印刷層を設け、さらに不透明インクにより全面に印刷層を形成する(バックプリント法)こともできる。バックプリント法により裏面に絵柄印刷層が形成された化粧シートを鋼板に貼着させてもよい。
【0104】
また、各樹脂層の厚さや積層数は適宜変更できる他、各樹脂層間の接着方法も変更できる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0105】
本発明の化粧金属板は建築材等に用いることができ、特に、ユニットバス等の壁面や、冷蔵庫等の家電製品のハウジング等、高い加工性及び耐久性が要求される箇所に用いることができる。
【0106】
【発明の効果】
本発明の化粧金属板は、ユニットバスの表面材等、鋼板を屈曲加工させて表面同士を接着させる箇所の繋ぎ目部分において、充填するコーキング材との良好な接着性を有するものである。
【0107】
また、従来の化粧金属板と比較して、塩化ビニル樹脂の含有量が少ないため、焼却時に発生する塩素化物ガスを低減できる他、廃材から樹脂を回収してリサイクルすることも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に示す化粧金属板の断面図である。
【図2】本発明の実施例2に示す化粧金属板の断面図である。
【図3】従来の化粧金属板の断面図である。
【符号の説明】
11…金属板、12…接着剤層、13…オレフィン系樹脂層、14…アクリルウレタン樹脂層、15…化粧シート、21…金属板、22…第1接着剤層、23…第1オレフィン系樹脂層、24…絵柄印刷層、25…第2接着剤層、26…第2オレフィン系樹脂層、27…アクリルウレタン樹脂層、31…鋼板、32…接着剤層、33…オレフィン系樹脂層、34…コーキング剤。
Claims (3)
- 金属板上に、接着剤層を介して化粧シートが貼着された化粧金属板であって、
前記化粧シートは、少なくとも1層のオレフィン系樹脂層と、前記オレフィン系樹脂層上に形成され、イソシアネートにより反応硬化せずにコーキング剤との密着性を高める非硬化型重合体を含有し、アクリルポリオールとイソシアネート化合物とを混合硬化させた二液硬化型アクリルウレタン重合体であるアクリルウレタン樹脂層とを有することを特徴とする
化粧金属板。 - 前記非硬化型重合体は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体である
請求項1記載の化粧金属板。 - オレフィン系樹脂層上に、予め、イソシアネートにより反応硬化せずにコーキング剤との密着性を高める非硬化型重合体を含有させたアクリルポリオールとイソシアネート化合物の混合物を塗布する工程と、
前記アクリルポリオールとイソシアネート化合物の混合物を硬化させて二液硬化型アクリルウレタン重合体の層とし、化粧シートを形成する工程と、
金属板上又は化粧シートの非塗布面上のいずれか一方又は両方に、接着剤層を形成する工程と、
前記接着剤層を介して、前記金属板と前記化粧シートを貼着させる工程とを少なくとも有する
化粧金属板の製造方法。
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