JP4009002B2 - 孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置では、原稿画像の画像情報に基づいて穿孔製版されたマスタを、内部にインキ供給手段を有する多孔性の版胴の外周面に巻着し、版胴の外周面に対して接離自在に設けられた押圧部材で用紙を版胴に押圧して印刷するようになっている。
オペレータは、用紙のセット方向に原稿の向きに合わせてセットした後、製版スタートキーを押して製版作業を開始するようになっている。すなわち、用紙がタテ置きにセットされている場合には、原稿読取部における原稿のセット方向をタテ置きとし、用紙がヨコ置きにセットされている場合には原稿読取部における原稿のセット方向をヨコ置きとしなければならない。
【0003】
版胴の外周面は、多数のインキ通過孔が存在する領域である開孔部と、マスタの先端部を挟持するために必要なクランパー配設領域等の非開孔部とに分けられ、、版胴の周方向における開孔部の長さは印刷される用紙の最大サイズ、例えばA3サイズに合わせて設定されている。
マスタはロール形状から繰り出され、製版画像を形成された後、使用される用紙のサイズに拘わりなく、開孔部の全域を覆う大きさ、すなわち、上記例でいえばA3サイズに対応した長さに画一的に切断され、版胴の外周面に巻着されるようになっている。
【0004】
しかしながら、用紙のサイズに拘わりなくマスタの長さを一律に最大サイズに対応したものとする方式では、例えば最大サイズがA3サイズの場合にA4サイズの印刷物を得るときには、用紙がタテ置きの場合、マスタの約半分は印刷に使用されない余白部分となり、次の原稿での印刷時には使用済みのマスタは版胴から剥離されて廃棄されるため、経済的観点からマスタの無駄遣いが指摘されていた。
また、この場合、版胴の内部から供給されたインキはマスタ全体に供給されるので、マスタの余白部分に付着したインキは何ら印刷に供されることなく廃棄されることになるため、マスタ自体の不経済性と併せてインキの無駄遣いという問題もあった。
【0005】
単純に考えた場合、用紙のセットサイズに対応した長さでマスタを切断すれば上記不経済性の問題を解消できるが、押圧部材は最大サイズに対応した接離制御をされるようになっているため、マスタで覆われない開孔部が押圧部材に直接接触することになり、押圧部材がインキで汚損されることになる。
この問題に対処するために、用紙の各サイズに対応した複数の版胴を用意し、使用する用紙のサイズが異なる毎に適正な版胴、すなわち、開孔部の長さがその使用される用紙の長さに対応した版胴に交換することが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来においては原稿を原稿読取部にセットする場合、オペレータが用紙のセット方向を確認し、これに合わせて原稿をセットする必要があり、オペレータに一定の確認・注意力を強いるものであった。このため、確認作業が面倒であり、オペレータの注意力が散漫な場合には原稿と用紙の向きがずれて印刷ミスを生じる場合もあった。
また、版胴交換方式ではマスタやインキの無駄を回避できるが、設備コストの高騰を招くとともに交換作業が面倒であり、加えて複数の版胴の保管場所も確保しなければならないという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、原稿のセット方向に注意を払わなくても常に原稿と用紙の向きが一致した状態での印刷を行うことができ、また、一つの版胴でマスタやインキの無駄遣いを回避でき、あるいはこれらを同時に満足できる孔版印刷装置の提供を、その目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、原稿画像の画像データ信号を一旦格納し、原稿のセット方向が用紙に対応しない場合には、製版のための画像データ信号の出力順位を調整して画像を自動的に回転させて向きの不一致を修正することとした。
また、用紙のサイズに対応した長さでマスタを切断し、そのマスタの長さに対応して版胴に対する押圧部材の接触範囲ないし接触時間を制御することとした。
【0009】
具体的には、請求項1記載の発明では、外周面にマスタが巻着される版胴と、前記マスタを製版・搬送・切断する製版手段と、前記版胴の外周面に対して接離自在に設けられた押圧部材と、原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段と、用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知手段と、原稿画像の画像データ信号を格納するための画像メモリを有し前記製版手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記原稿サイズ検知手段と用紙サイズ検知手段の検知情報に基づいて原稿と用紙のセット方向を判別し、原稿と用紙のセット方向が異なるときには前記画像メモリからの画像データ信号の出力順位を制御して前記マスタに形成される製版画像を90°回転させるとともに、前記マスタが用紙のセットサイズに対応した長さで切断されるように前記製版手段を制御し、且つ、切断されたマスタの長さに対応して前記押圧部材の前記版胴の外周面への接触範囲を変更する、画像回転モードを実行することを基本とし、原稿と用紙のセット方向が異なる場合であって用紙のセット方向を90°変化させれば製版画像を90°回転させる場合よりもマスタの長さを短くできるときには前記画像回転モードの実行に優先して「用紙の向きを変えればマスタを短くできる」ことを警告し、警告後は用紙の向きが変えられなかったときにのみ前記画像回転モードを実行する、という構成を採っている。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記警告内容が、マスタの節約になることを意味する表現である、という構成を採っている。
【0011】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載孔版印刷装置において、前記警告を出すか否かを任意に設定できる警告設定手段を有している、という構成を採っている。
【0012】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記制御手段は、原稿サイズと用紙サイズの関係が定形変倍になるときのみ製版画像が90°回転するように制御する、という構成を採っている。
【0013】
請求項5記載の発明では、請求項1記載の孔版印刷装置において、原稿サイズに倍率を掛けた計算上の大きさが、用紙サイズ以内である、という構成を採っている。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
まず、本実施例における孔版印刷装置1の概略構成を説明する。
図1に示すように、孔版印刷装置1は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、原稿読取部7等から主に構成されている。本実施例における孔版印刷装置1は、最大対応サイズがA3の構成である。
【0017】
筐体18の中央に配設された印刷部2は、図2に示すように、版胴8、インキ供給手段9、押圧部材としてのプレスローラー10等から主に構成されている。版胴8は、インキ供給パイプを兼ねた支軸11に回転自在に支持された一対のフランジ12,12と、フランジ12,12の外周面に巻装された多孔性支持板8aとから主に構成されており、図示しない駆動手段によって図1の矢印方向に回転駆動される。支軸11は先端部を筐体18の側板に支持され、その表面にはインキ供給手段9にインキを供給するための複数の小さな孔が穿設されており、フランジ12,12は図示しない軸受を介して支軸11に取り付けられている。
【0018】
図2に示すように、ステンレスの薄板等で形成される多孔性支持板8aは開孔部と非開孔部とを有しており、開孔部には多数の開孔8bが穿設され、非開孔部には版胴8の一母線と平行な平面を有するステージ部14が配設されている。ステージ部14の上面には開閉自在なクランパー15が配設されている。また、多孔性支持板8aの外側には、ポリエステルあるいはステンレスの細線等で織られた図示しないメッシュスクリーンが1〜3層程度巻装されている。
【0019】
版胴8の内部であって支軸11の下方には、インキローラー16、ドクターローラー17等から主に構成されるインキ供給手段9が配設されている。インキローラー16は、フランジ12,12間の支軸11上に固着された図示しない一対の側板に支軸16aを回転自在に支持されており、図示しない駆動手段からの回転力をギヤやベルト等の回転力伝達手段によって伝達されて版胴8と同方向に回転する。ドクターローラー17は、その外周面とインキローラー16の外周面との間に僅かな間隙が生じる位置において前記側板間に回転自在に支持されており、駆動手段13からの回転力によりインキローラー16とは反対の方向に回転駆動される。インキローラー16とドクターローラー17の各外周面の近接部において、支軸11より供給されたインキが楔状のインキ溜まり17aを形成する。
【0020】
図3に示すように、版胴8の下方にはプレスローラー10が配設されている。プレスローラー10は、支軸10aの両端を一対のプレスローラーアーム37,37の一端間に回転自在に支持されており、各プレスローラーアーム37,37は、他端を支軸37aにそれぞれ固着されている。
両端を筐体18に回転自在に支持された支軸37aには、プレスローラーアーム37,37の他、一端に回転自在なカムフォロア38aを有する揺動アーム38が固着されている。揺動アーム38には、一端を筐体18に固着された引張バネ39の他端が取り付けられており、支軸37aには図3において時計回り方向への回動付勢力が付与されている。また、揺動アーム38には、後述する係止アーム44の先端が係合するピン38bが固定されている。
【0021】
揺動アーム38の近傍には、4枚のカム板40a,40b,40c,40dを有する多段カム40が配設されている。各カム板40a,40b,40c,40dは、図4に示すように、両端を筐体18に回転自在且つ図4の左右方向に移動自在に支持された支軸41の一端部寄りにそれぞれ間隙をもって固着されており、装置手前側からカム板40a,カム板40b,カム板40c,カム板40dの順に配設されている。各カム板40a,40b,40c,40dは、図3に示すように、支軸41と同心の円板である基部と、それぞれ同一突出量の凸部とを有しており、各凸部の形状は、カム板40aの凸部の右側縁部を基準に、カム板40b、カム板40c、カム板40dの順でそれぞれの凸部が円周方向に大きくなるように形成されている。多段カム40は、図4に示すように、支軸41に取り付けられた駆動ギヤ42及び筐体18に回転自在に支持された支軸48に取り付けられた伝達ギヤ49を介して図示しない駆動手段からの回転力を伝達され、図3に矢印で示す方向に回転駆動される。
【0022】
プレスローラー10は、各カム板40a,40b,40c,40dの何れかの凸部がカムフォロア38aと当接したときに図3に実線で示す位置に移動し、いずれかの凸部との当接が解除されたときに、引張バネ39の付勢力によって版胴8の外周面に当接して押圧する。このとき、各カム板40a,40b,40c,40dの基部とカムフォロア38aとが接触しないように構成されている。
【0023】
各カム板40a,40b,40c,40dの凸部の円周方向の大きさは、プレスローラー10の外周面と版胴8の外周面との接触範囲が、順に用紙のA3サイズのヨコ置き、B4サイズのヨコ置き、A4サイズのヨコ置き、A4サイズのタテ置きでのそれぞれのサイズに対応する必要な長さとなるようにそれぞれ設定されている。
【0024】
図3に示すように、揺動アーム38の近傍には係止アーム44が配設されている。先端44aが鈎型に形成された係止アーム44は、その基端を支軸44bに揺動自在に支持されている。係止アーム44には、筐体18に取り付けられたソレノイド45のプランジャ45aと、一端を筐体18に取り付けられた引張バネ46の他端とが取り付けられており、係止アーム44は、各カム板40a,40b,40c,40dの何れかの凸部がカムフォロア38aと当接し、かつ、ソレノイド45への通電が解除されたときに、図3に示すように先端44aをピン38bに係合させて、プレスローラー10を、その外周面が版胴8の外周面より離間した状態で保持するように構成されている。ソレノイド45の作動は後述する制御手段26により制御される。
【0025】
支軸41の下方近傍には、図4に示すように、移動アーム43と段差カム47が配設されている。ほぼL字状を呈する移動アーム43は、その曲折部において支軸43cに揺動自在に支持されており、一端にはローラー43aが、他端にはカムフォロア43bがそれぞれ回転自在に取り付けられている。また、移動アーム43の他端と曲折部との間の部位には、一端を筐体18に取り付けられた引張バネ50の他端が取り付けられており、移動アーム43には、支軸43cを中心に図4において時計回り方向の回動付勢力が付与されている。
ローラー43aは、支軸41の中程に間隔をおいて固着された円板41a,41b間に配置されており、カムフォロア43bは、引張バネ50の付勢力によりその外周面を段差カム47の周面に当接させている。各円板41a,41b間の間隔は、ローラー43aの直径よりも僅かに大きくなるように設定されている。
【0026】
段差カム47は、その周面に4箇所のカム部47a,47b,47c,47dを有しており、筐体18に回転自在に支持された支軸51に固着されている。支軸51には、筐体18に取り付けられたステッピングモーター52の出力軸に取り付けられたギヤ53と噛合するギヤ54が取り付けられており、ステッピングモーター52の作動により段差カム47は図4の矢印方向に回転される。ステッピングモーター52が作動して段差カム47が回転すると、移動アーム43が支軸43cを中心に揺動して、ローラー43aが円板41aあるいは円板41bを押すことで支軸41が図4の左右方向に移動する。ステッピングモーター52の動作は制御手段26によって制御される。
【0027】
各カム部47a,47b,47c,47dは、カムフォロア43bとカム部47aとが当接したときにカム板40aがカムフォロア38aと当接可能位置となるように、カムフォロア43bとカム部47bとが当接したときにカム板40bがカムフォロア38aと当接可能位置となるように、カムフォロア43bとカム部47cとが当接したときにカム板40cがカムフォロア38aと当接可能位置となるように、カムフォロア43bとカム部47dとが当接したときにカム板40dがカムフォロア38aと当接可能位置となるように支軸41を移動させる形状にそれぞれ形成されている。
【0028】
図1に示すように、印刷部2の右上方には、製版手段としての製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ貯容手段55、プラテンローラー56、サーマルヘッド57、切断手段58、マスタ搬送ローラー対59,60等から主に構成されている。
マスタ貯容手段55は、熱可塑性樹脂フィルムと多孔質支持体とを貼り合わせたマスタ61をロール状に巻成したマスタロール62の芯部62aを回転自在かつ着脱自在に支持する。
マスタ貯容手段55よりもマスタ搬送方向下流側には、プラテンローラー56とサーマルヘッド57が配設されている。プラテンローラー56は筐体18の図示しない側板に回転自在に支持されており、ステッピングモーター63によって回転駆動される。ステッピングモーター63の作動は制御手段26によって制御される。
【0029】
多数の発熱素子を有するサーマルヘッド57は筐体18の図示しない側板に取り付けられており、図示しない付勢手段によって付勢され、プラテンローラー56に圧接されている。サーマルヘッド57は、マスタ61の熱可塑性樹脂フィルム面に接触しつつ発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ61に対して熱溶融穿孔製版を行う。サーマルヘッド57の作動は制御手段26によって制御される。
プラテンローラー56及びサーマルヘッド57よりもマスタ搬送方向下流側には切断手段58が配設されている。固定刃58aと可動刃58bとからなる切断手段58は、筐体18の側板に固定された固定刃58aに対して可動刃58bが回転移動する周知の構成である。
【0030】
切断手段58のマスタ搬送方向下流側にはマスタ搬送ローラー対59,60及びガイド板64,65が配設されている。マスタ搬送ローラー対59,60は、図示しない駆動手段によって同期して回転駆動される駆動ローラー59a、60aと、図示しない付勢手段によって各駆動ローラー59a,60aに圧接された従動ローラー59b,60bとから構成されている。
各マスタ搬送ローラー対59,60間にはガイド板64が、また、マスタ搬送ローラー対60よりマスタ搬送方向下流側にはガイド板65が配設されている。各ガイド板64,65は筐体18の側板に固定されており、各マスタ搬送ローラー対59,60によって搬送されるマスタ61をガイドし、マスタ61の先端を版胴8の外周面へと案内する。
【0031】
製版部3の下方には、給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ66、給紙ローラー67、分離ローラー68、分離コロ69、レジストローラー対70等から主に構成されている。
上面に多数の用紙Pを積載する給紙トレイ66は筐体18に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。また、給紙トレイ66には、用紙サイズ検知手段を構成する反射型のセンサー71a,71b,71c,71d等と、用紙Pをガイドする一対のサイドガイド72が取り付けられている。センサー71a,71b,71c,71dは用紙の搬送方向の長さを検知し、この他に、図示しないが、用紙の搬送方向と直交する方向の長さを検知する反射型のセンサーが用紙サイズ検知手段を構成するセンサーとして給紙トレイ66に設けられている。
用紙サイズ検知手段からの出力信号は制御手段26に出力され、制御手段26は用紙サイズ検知手段からの出力信号によって用紙Pのサイズ及びセット方向を判別する。サイドガイド72は用紙幅方向(用紙Pの搬送方向と直交する方向)に移動自在な周知の構成である。
【0032】
給紙トレイ66の上方には、表面がそれぞれ高摩擦抵抗の部材で形成された給紙ローラー67、分離ローラー68、分離コロ69が配設されている。給紙ローラー67と分離ローラー68は、給紙トレイ66上の用紙Pと所定の圧力で圧接し、ギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段を介して、共通のステッピングモーター73によって図1の矢印方向に回転駆動される。分離コロ69は、所定の圧力で分離ローラー68に圧接されており、分離ローラー68と同方向に間欠回転可能に配設されている。ステッピングモーター73の作動は制御手段26によって制御される。
【0033】
分離ローラー68及び分離コロ69の印刷用紙搬送方向下流側にはレジストローラー対70が配設されている。駆動ローラー70aと従動ローラー70bとからなるレジストローラー対70は、図示しない駆動手段からの回転駆動力を図示しないギヤやカム等の駆動力伝達手段で伝達されることにより駆動ローラー70aが所定のタイミングで回転し、この駆動ローラー70aに圧接された従動ローラー70bとによって用紙Pを印刷部2に向けて給送する。
【0034】
印刷部2の左上方には排版部5が配設されている。排版部5は、上排版部材74、下排版部材75、排版ボックス76、圧縮板77等から主に構成されている。
上排版部材74は、駆動ローラー78、従動ローラー79、無端ベルト80から構成され、図示しない駆動手段によって駆動ローラー78が図1において時計回り方向に回転駆動されることによって無端ベルト80が図の矢印方向に移動する。下排版部材75は、駆動ローラー81、従動ローラー82、無端ベルト83から構成されており、駆動ローラー78を回転駆動する図示しない駆動手段の駆動力を図示しないギヤやベルト等の駆動力伝達手段によって伝達されることで、駆動ローラー81が図1において反時計回り方向に回転駆動されることによって無端ベルト83が図の矢印方向に移動する。また、下排版部材75は図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図1に示す位置と駆動ローラー81の外周面が版胴8の外周面に当接する位置とに選択的に位置決めされる。
【0035】
内部に使用済みマスタを貯容する排版ボックス76は、筐体18に対して着脱自在に設けられている。上排版部材74と下排版部材75とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス76の内部に押し込む圧縮板77は、図示しない昇降手段によって上下動自在に支持されており、図の実線位置と二点鎖線位置との間を上下動する。
【0036】
排版部5の下方には排紙部6が配設されている。排紙部6は、剥離爪84、排紙搬送部材85、排紙トレイ86等から主に構成されている。
【0037】
版胴8の外周面上より印刷済みの印刷用紙Pを剥離する剥離爪84は、支軸84aによって筐体18の側板に揺動自在に支持されており、図示しない揺動手段によって、その先端が版胴8の外周面に近接する位置と、その先端が版胴8の回転によって移動するクランパー15等の障害物と干渉しない位置とに選択的に揺動される。
排紙搬送部材85は、駆動ローラー87、従動ローラー88、無端ベルト89、吸引ファン90等から主に構成されている。駆動ローラー87は図示しないユニット側板に回転自在に支持されており、図示しない駆動手段で回転駆動される。従動ローラー88も同側板に回転自在に支持され、駆動ローラー87と従動ローラー88とには、複数の開孔を有する複数の無端ベルト89が掛け渡されている。駆動ローラー87、従動ローラー88及び無端ベルト89の下方には吸引ファン90が配設されている。排紙搬送部材85は、吸引ファン90の吸引力によって無端ベルト89上に用紙Pを吸引し、駆動ローラー87の回転によって用紙Pを図の矢印方向に搬送する。
排紙搬送部材85によって搬送される印刷済みの用紙Pをその上面に積載する排紙トレイ86は、用紙幅方向に移動自在な一対のサイドフェンス91とエンドフェンス92とを有している。
【0038】
筐体18の上部には原稿読取部7が配設されている。原稿読取部7は、原稿93を積載する原稿受け台94、原稿93を載置するコンタクトガラス95、原稿93を搬送する原稿搬送ローラー対96及び原稿搬送ローラー97、搬送される原稿93をガイドするガイド板98,99、原稿93をコンタクトガラス95に沿って搬送する複数の原稿搬送ベルト100、読み取られた原稿93を積載する原稿トレイ101、コンタクトガラス95を除く上記各部材を支持し、コンタクトガラス95に対して接離自在に設けられた蓋体102、原稿画像を走査して読み取るための反射ミラー103,104及び蛍光灯105、走査された画像を集束するレンズ106、集束された画像を処理するCCD等の画像センサー107等から主に構成されている。
【0039】
上記構成中、原稿受け台94、原稿搬送ローラー対96、原稿搬送ローラー97、各ガイド板98,99、原稿搬送ベルト100、原稿トレイ101によって自動分離搬送装置108が、また、コンタクトガラス95、各反射ミラー103,104、蛍光灯105、レンズ106、画像センサー107によって原稿読取手段132がそれぞれ構成されており、複数の原稿搬送ベルト100の間には、搬送される原稿の長さを検知する原稿長さ検出手段としてのセンサー109が配設されている。
【0040】
センサー71a〜71dと同様の反射型センサーであるセンサー109は、コンタクトガラス95上における反射量の違いにより原稿93の有無を検知する。センサー109からの信号は制御手段26に入力され、この信号と原稿搬送ベルト100の作動時間とにより、制御手段26は原稿93の長さを判定する。また、原稿受け台94の下方には、原稿受け台94上に残存している原稿93を検知するセンサー131が配設されている。センサー131は、原稿受け台94上の原稿93がなくなったときに制御手段26に信号を出力する。
また、図示しないが、原稿読取部7には、用紙サイズ検知手段と同様に、コンタクトガラス95上にセットされた原稿のタテとヨコの長さを検知する原稿サイズ検知手段を構成する複数の反射型センサーが設けられている。原稿サイズ検知手段からの出力信号は制御手段26に出力され、制御手段26は原稿サイズ検知手段からの出力信号によって原稿のサイズ及びセット方向を判別する。
【0041】
次に、本実施例における孔版印刷装置1の原稿セットの容易化制御、マスタ節約のための制御及び制御動作を説明する。
図5に示すように、制御手段26は、マイクロコンピュータとしてのCPU112と、ROM114及びRAM116と、画像処理手段118と、画像メモリ120を有している。操作パネル110には、図6に示すように、マスタの節約ができることをオペレータに警告する表示手段122や、警告を出すか出さないかを任意に設定できる警告設定手段としての警告設定ボタン124、製版スタートキー126等が備えられている。
【0042】
図7は、用紙Pのセット状態がA4サイズのタテ置きであり、原稿読取部7のコンタクトガラス95上にオペレータが原稿Dを用紙Pのセット方向を意識せずに無造作に置いた結果がA4サイズのヨコ置きとなった場合を示している。
原稿Dがセットされると、制御手段26は、原稿サイズ検知手段と用紙サイズ検知手段からの検知情報に基づいて原稿Dと用紙Pのセット方向を判断する。その結果、用紙Pに対して原稿Dの向きが90°異なると判別される。
製版スタートキー126が押されると、制御手段26は原稿読取部7からの画像データ信号を画像処理手段118を介して画像メモリ120に一旦格納し、マスタ上に形成される製版画像が例えば反時計方向へ90°回転するように、画像メモリ120からの画像データ信号の取り出し順位を変え、画像処理手段118を介してサーマルヘッド57へ出力する。これによってマスタに形成される製版画像は反時計方向へ90°回転し、向きが用紙Pの向きと一致する。なお、この画像回転モードの場合には、製版画像の回転制御に要する分、通常よりも若干製版時間は長くなる。
【0043】
本実施例では、上記製版画像の回転制御は、原稿Dと用紙Pが定形変倍の関係にある場合、すなわち、原稿Dと用紙Pが通常使用される定形サイズの場合のみなされるようになっている。これによって用紙Pを気にしないでも間違った印刷をすることを防止することができる。
また、制御手段26は、マスタの長さがA4タテ置きの図7(b)における用紙搬送方向の用紙の長さに対応するように、ステッピングモーター63と切断手段58とを制御する。
【0044】
製版されたマスタは、版胴8に巻着され、図示しない印刷スタートキーを押すことによって印刷が開始される。
マスタはA3サイズ対応の版胴8の開孔部の一部分のみしか覆わない状態で巻着されることになるが、制御手段26によってステッピングモーター52とソレノイド45が制御され、カムフォロア38aを案内するカム板のうち、マスタの長さに対応したもの(この場合カム板40d)が選択される。これによってプレスローラー10の押圧範囲はA4サイズのタテ置きに対応した範囲に制限され、プレスローラー10がマスタで覆われていない露出した開孔部に接触することが防止される。
プレスローラー10の押圧作用によって用紙Pはインキ画像を転写される。印刷済みの用紙Pのその後の排紙動作や版胴8の排版動作は従来のものと同様であるので省略する。
【0045】
無造作に置かれた原稿Dのセット状態が用紙Pのセット状態と一致した場合には、上記製版画像の回転制御は行われず、制御手段26は原稿読取部7からの画像データ信号を順次サーマルヘッド57へ出力して製版を行う。プレスローラー10の制御は上記と同様である。
【0046】
図8は、用紙Pのセット状態がA4サイズのヨコ置きであり、原稿読取部7のコンタクトガラス95上にオペレータが原稿Dを用紙Pのセット状態を意識せずに無造作に置いた結果がA4サイズのタテ置きとなった場合を示している。
この場合、画像データ信号の制御によって製版画像を90°回転させれば用紙Pの向きと一致し、印刷が可能となる。この場合、マスタの長さはA4ヨコ置きでの図8(b)における用紙搬送方向の用紙の長さに対応した長さに制御され、これに対応したカム板(この場合カム板40c)でプレスローラー10も駆動される。
しかしながら、この場合、オペレータが用紙Pのセット方向を90°変えれば、製版画像の回転を要することなく、且つ、より短いA4タテ置きの前述した図7(b)における用紙搬送方向の用紙の長さに対応したマスタ長さで印刷できることになる。
そこで、本実施例では、かかる場合には、制御手段26は原稿Dと用紙Pのセット方向を判別した後、直ちに製版画像を回転させる制御はせず、図6に示すように、表示手段122を介して「用紙の向きを変えるとマスタが節約できます。」と「確認」の文字表現でオペレータに警告をする。
【0047】
この警告をオペレータが無視して製版スタートキー126を押すと、用紙Pとの向きを一致させるべく製版画像を90°回転させる制御が行われ、マスタの長さはA4ヨコ置きでの図8(b)における用紙搬送方向の用紙の長さに対応した長さとなる。この場合、プレスローラー10の接触範囲を変えるカム板が、A3ヨコ置きのサイズと、A4タテ置きのサイズに対応する2種類しかない場合には、A3ヨコ置きでのサイズに対応した長さとなり、マスタの大幅な無駄遣いとなる。
オペレータが警告に従って用紙Pの向きを90°変えてセットすると、原稿Dと用紙Pの向きがA4タテ置きで一致することになり、その後、製版スタートキー126が押されると、制御手段26は製版画像の回転制御をすることなく通常の製版制御を行い、且つ、プレスローラー10の接触範囲がA4タテ置きでのサイズに対応するように制御する。これによって、A4サイズにおけるマスタの消費量を最小限とすることができる。
【0048】
上記警告は、図6に示す警告設定ボタン124をオンにしたときだけ発せられ、この場合には警告設定ボタン124の近傍に設けられたLED124aが点灯するようになっている。上記警告が煩わしいと感じる場合には、警告設定ボタン124をオフにすればよく、この場合には制御手段26による警告はなされない。
マスタが節約できる旨の警告は上記のような文字表示に限らず、例えば音声でもよく、ブザー等の警告音と文字表現との組合せとしてもよい。また、文字表現を点滅させるようにしてもよい。このような警告によって、オペレータは常に印刷作業のコスト低下に結び付くマスタの節約を意識付けられることになる。
【0049】
表1は各サイズの原稿と用紙との間における倍率と製版画像の回転の関係を示すものである。表1において、黒の星印は製版画像の回転が行われることを示している。
【0050】
【表1】
【0051】
上記セット例では原稿Dと用紙Pのサイズが同じ場合を示したが、表1に示すように、原稿Dと用紙Pのサイズが異なる場合(100%以外)にも製版画像の回転制御が行われる。原稿Dと用紙Pのセット方向が異なる場合、原稿Dのサイズに縮小又は拡大の倍率を掛けて計算上の大きさが用紙Pのサイズと同じにされた後、画像回転の制御が行われる。
原稿Dのサイズに倍率を掛けた計算上の大きさが用紙Pのサイズ以内である場合にのみ製版画像の回転、マスタ節約の警告がなされるようにしてもよい。
例えば、原稿DがA5のタテ置き、用紙PがA4のヨコ置きの場合で、原稿Dを拡大しない場合には、用紙Pに余裕があるが、この場合にも用紙Pの向きを90°変えればマスタが節約できる旨の警告が発せられる。
【0052】
上記実施例では多段カム40によってプレスローラー10の接触範囲を制限する構成としたが、常時版胴8に接触するように付勢されたプレスローラー10をソレノイドで任意に離間させ、制御手段26によって接触時間を制御する無段階方式としてもよい。この場合、多段カム構成を要することなく全てのサイズの用紙に対して適正なマスタ長さとすることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、用紙のセット方向を気にすることなく原稿をセットできるので、原稿のセット作業の容易化を図ることができる。
【0054】
本発明によれば、一つの版胴でサイズの異なる用紙に対応することができるとともに、マスタの節約をすることができる。
【0055】
本発明によれば、用紙の向きを変化させればマスタの節約になる旨の警告をする構成としたので、マスタの節約をより一層図れる。
【0056】
本発明によれば、マスタの節約になる旨の表現によって警告する構成としたので、オペレータに対してマスタの節約、ひいては印刷コストの低減意欲を意識付けることができる。
【0057】
本発明によれば、警告を任意に設定できる構成としたので、警告が煩わしいと感じるユーザにも対応できる。
【0058】
本発明によれば、製版画像の回転制御は原稿と用紙が定形変倍の関係にある場合のみなされる構成としたので、用紙を気にしないでも間違った印刷をすることを防止することができる。
【0059】
本発明によれば、原稿サイズに倍率を掛けた計算上の大きさが用紙のサイズ以内となるようにしたので、原稿と用紙間のサイズの同一性がない場合でもマスタの節約をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る孔版印刷装置の概要正面図である。
【図2】印刷部の要部概要図である。
【図3】押圧部材の揺動機構の概要正面図である。
【図4】押圧部材の接触範囲可変機構の側面図である。
【図5】制御ブロック図である。
【図6】操作パネルの一部の概要平面図である。
【図7】原稿と用紙のセット状態を示す平面図である。
【図8】原稿と用紙のセット状態を示す平面図である。
【符号の説明】
8 版胴
3 製版手段としての製版部
10 押圧部材としてのプレスローラー
26 制御手段
120 画像メモリ
124 警告設定手段としての警告設定ボタン
Claims (5)
- 外周面にマスタが巻着される版胴と、前記マスタを製版・搬送・切断する製版手段と、前記版胴の外周面に対して接離自在に設けられた押圧部材と、原稿のサイズを検知する原稿サイズ検知手段と、用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知手段と、原稿画像の画像データ信号を格納するための画像メモリを有し前記製版手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記原稿サイズ検知手段と用紙サイズ検知手段の検知情報に基づいて原稿と用紙のセット方向を判別し、
原稿と用紙のセット方向が異なるときには前記画像メモリからの画像データ信号の出力順位を制御して前記マスタに形成される製版画像を90°回転させるとともに、前記マスタが用紙のセットサイズに対応した長さで切断されるように前記製版手段を制御し、且つ、切断されたマスタの長さに対応して前記押圧部材の前記版胴の外周面への接触範囲を変更する、画像回転モードを実行することを基本とし、
原稿と用紙のセット方向が異なる場合であって用紙のセット方向を90°変化させれば製版画像を90°回転させる場合よりもマスタの長さを短くできるときには前記画像回転モードの実行に優先して「用紙の向きを変えればマスタを短くできる」ことを警告し、警告後は用紙の向きが変えられなかったときにのみ前記画像回転モードを実行することを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1記載の孔版印刷装置において、
前記警告内容が、マスタの節約になることを意味する表現であることを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1又は2記載孔版印刷装置において、
前記警告を出すか否かを任意に設定できる警告設定手段を有していることを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1記載の孔版印刷装置において、
前記制御手段は、原稿サイズと用紙サイズの関係が定形変倍になるときのみ製版画像が90°回転するように制御することを特徴とする孔版印刷装置。 - 請求項1記載の孔版印刷装置において、
原稿サイズに倍率を掛けた計算上の大きさが、用紙サイズ以内であることを特徴とする孔版印刷装置。
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