以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された両面印刷可能な孔版印刷装置を示す。同図において孔版印刷装置は、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7、補助トレイ8、再給紙手段9、切換部材10等を備えている。
印刷部2は、孔版印刷装置の装置本体11の略中央に配設されていて、印刷ドラムとなる版胴12と印圧部材となるプレスローラ13とを有している。版胴12は、インキ供給パイプを兼ねた支軸14に回転自在に支持された図示しない一対のフランジと、各フランジの外周面に巻装された図示しない多孔性支持板と、図示しない多孔性支持板の外周面に巻装された図示しないメッシュスクリーンとから主に構成されている。版胴12は、版胴駆動手段121(図6参照)によって回転駆動されると共に装置本体11に対して着脱可能に構成されている。本形態において版胴12は、片面印刷時において最大でA3サイズの印刷物を得ることが可能な外周面の大きさを有している。
版胴12の内部にはインキ供給手段15が配設されている。インキ供給手段15は、支軸14、インキローラ16、ドクターローラ17を備えており、支軸14から供給されたインキがインキローラ16とドクターローラ17との近接部に形成される断面楔形状の空間に溜まることにより形成されるインキ溜まり18から版胴12の内周面にインキを供給する。版胴12の外周面上には、ステージ部が形成されており、この上には版胴12の外周面上にマスタの先端を保持させるクランパ19が配設されている。クランパ19は、版胴12が所定の位置まで回転されたときに図示しない開閉手段によって開閉される。
版胴12の下方にはプレスローラ13が配設されている。プレスローラ13は金属製の芯部13aにゴム等の弾性体を巻成して構成されており、版胴12の軸方向に延在して設けられている。プレスローラ13は、図2に示すように芯部13aの両端部をプレスローラ支持部材としての一対のアーム部材20によって回転自在に支持されている。略L字形状を呈する各アーム部材20は、その曲折部近傍の部位に取り付けられた揺動軸21によってそれぞれ一体化されており、揺動軸21は装置本体11によって回動自在に支持されている。各アーム部材20間には、プレスローラ13の他、再給紙案内部材22、再給紙レジスト部材としての再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、再給紙搬送部材25、クリーニング部材としてのクリーニングローラ26、ガイド板27等が設けられている。
図2に示すように、プレスローラ13の右方近傍に配設された再給紙案内部材22は、各支軸28a,29a,30a上にそれぞれ一体的に設けられそれぞれの周面をプレスローラ13の周面に圧接させた複数のころ状のローラ28,29,30と、印刷用紙としての用紙Pをプレスローラ13の周面に沿わせるための曲面状に形成された用紙ガイド板31とを有している。各支軸28a,29a,30aはそれぞれの両端部を各アーム部材20に回転自在に支持されており、図示しない付勢手段によってそれぞれ芯部13aに向けて付勢されている。各ローラ28,29,30は、対応する支軸28a,29a,30aに、プレスローラ13のほぼ全幅にわたってそれぞれ所定の間隔をもって一体的に取り付けられている。用紙ガイド板31はプレスローラ13の周面から各ローラ28,29,30の半径よりも小さな距離である所定距離だけ離れた位置に配設されており、その両端部を各アーム部材20に固着されている。用紙ガイド板31は芯部13aを中心とした曲面となるように形成されており、用紙ガイド板31には各ローラ28,29,30の周面をプレスローラ13の周面に当接させるための複数の開口部が形成されている。
プレスローラ13の下方には再給紙レジストローラ23が配設されている。コロ状の再給紙レジストローラ23は支軸23aに回転自在に支持されており、支軸23aは再給紙レジスト支持部材としての揺動アーム32の一端に取り付けられている。略へ字形状を呈する揺動アーム32は各アーム部材20間に固設された支軸32aにその曲折部を揺動自在に支持されており、その配設位置は再給紙レジストローラ23がプレスローラ13の幅方向のほぼ中央部に位置し、かつ自身が各ローラ30の配設位置の中間に位置するように定められている。揺動アーム32の他端には、図示しないブラケットを介して一方のアーム部材20に取り付けられたソレノイド33のプランジャ33aと、一端を一方のアーム部材20に固着され揺動アーム32に対して支軸32aを中心に図2において反時計回り方向への回動付勢力を付与する引張ばね34の他端とが取り付けられている。この構成より再給紙レジストローラ23は、ソレノイド33が作動されるとその周面を所定の圧接力でプレスローラ13の周面に圧接する図2に実線で示す圧接位置を占め、ソレノイド33の作動が解除されると引張ばね34の付勢力によってその周面がプレスローラ13の周面から離間する図2に二点鎖線で示す離間位置を占める。ソレノイド33と引張ばね34とによって再給紙レジスト接離機構40が構成されている。
再給紙レジストローラ23の上方近傍には再給紙位置決め部材24が配設されている。再給紙位置決め部材24は断面L字形状を呈する板材からなり、その幅はプレスローラ13の幅とほぼ同じ幅となるように形成されていて、その曲折端部24aが上方を向く態様で両端部を各アーム部材20に固着されている。再給紙位置決め部材24には、再給紙レジストローラ23が揺動時に衝突しないための図示しない切欠部が形成されている。
プレスローラ13の下方であって再給紙位置決め部材24の左方には再給紙搬送部材25が配設されている。再給紙搬送部材25は、搬送部材本体35、駆動ローラ36、従動ローラ37、無端ベルト38、吸引ファン39等を有しており、その上面に補助トレイ8を一体的に有している。
上面が開放され、その幅が各アーム部材20間の間隔よりも若干小さくなるように形成された筐体である搬送部材本体35は、用紙搬送方向上流側及び下流側の両側面に図示しない軸受を有しており、図示しない各軸受は駆動軸36a及び従動軸37aをそれぞれ回転自在に支持している。駆動軸36aはその両端部が搬送部材本体35の両側面を貫通しており、貫通した両端部は装置本体11に設けられた図示しない軸受部材によって回転自在に支持されている。また、駆動軸36aの一端には図示しない駆動ギヤが取り付けられており、駆動軸36aは装置本体11に設けられた搬送部材駆動モータ122によって回転駆動される。従動軸37aはその両端部が搬送部材本体35の両側面を貫通しないように構成されている。搬送部材本体35の用紙搬送方向上流側端部の両側面外側にはボス35aがそれぞれ一体的に設けられており、各ボス35aは各アーム部材20に形成された図示しない長穴にそれぞれ嵌合されている。この構成より搬送部材本体35は、後述するプレスローラ接離機構55によりプレスローラ13が版胴12に対して接離される際に、各アーム部材20の揺動に伴って駆動軸36aを中心とした揺動が可能となっている。
コロ状をなす複数の駆動ローラ36はそれぞれ駆動軸36aに一体的に取り付けられており、各駆動ローラ36間にはそれぞれ所定の間隔が設けられている。駆動ローラ36と同形状である複数の従動ローラ37は、各駆動ローラ36と同間隔でそれぞれ従動軸37aに一体的に取り付けられている。各駆動ローラ36とこれに対応した各従動ローラ37との間には、図示しない複数の穴部を有する無端ベルト38が所定の張力で掛け渡されている。摩擦抵抗部材からなる無端ベルト38は、搬送部材駆動モータ122によって駆動軸36aが回転駆動されることにより図2に矢印で示す方向に移動される。
搬送部材本体35の下面には吸引ファン39が一体的に取り付けられており、搬送部材本体35の上面には補助トレイ8が一体的に取り付けられている。補助トレイ8には各無端ベルト38を用紙搬送面に臨ませるための図示しない複数の開口部が形成されており、その用紙搬送方向下流側端部には搬送される用紙Pを受け止めるためのフェンス8aが一体的に形成されている。吸引ファン39の取付面である搬送部材本体35の下面には図示しない穴部が設けられており、これにより吸引ファン39が作動することで筐体である搬送部材本体35の内部に負圧を発生させ、移動する各無端ベルト38の上面に用紙Pを吸引させる。吸引ファン39の吸引力及び無端ベルト38の摩擦抵抗力は、用紙Pの先端が再給紙位置決め部材24の曲折端部24aに当接した際に、用紙Pと各無端ベルト38との間で滑りが発生する程度の強さにそれぞれ設定されている。これら再給紙案内部材22、再給紙レジストローラ23、再給紙位置決め部材24、及び再給紙搬送部材25によって再給紙手段9が構成されている。
プレスローラ13の近傍であって再給紙搬送部材25の上方に位置する部位には、プレスローラ13の周面をクリーニングするクリーニングローラ26が配設されている。プレスローラ13の幅とほぼ同じ幅を有するクリーニングローラ26は、少なくともその表面が和紙やスポンジ等の吸湿性の高い材質によって構成されており、その中心に芯部26aを一体的に有している。クリーニングローラ26は芯部26aを各アーム部材20に形成された図示しない長穴に嵌合されることで回転自在に支持されており、この長穴内に設けられた図示しない付勢手段によってプレスローラ13に向けて付勢され、その周面をプレスローラ13の周面に所定の圧接力で常時圧接されている。クリーニングローラ26は、一方のアーム部材20に設けられた図示しないクリーニングローラ駆動手段によって、プレスローラ13の回転時においてプレスローラ13と同方向に、プレスローラ13の周速度の10分の1程度の周速度で回転駆動される。
クリーニングローラ26の左上方にはガイド板27が配設されている。板材であるガイド板27はその両端部を各アーム部材20に固設されており、プレスローラ13によって版胴12に圧接された用紙Pがクリーニングローラ26に触れないように、かつ補助トレイ8に向かうように案内する。ガイド板27はプレスローラ13及びクリーニングローラ26の周面に近接する位置に配設されている。
各アーム部材20のプレスローラ13が支持された一端側と対向する他端側には、それぞれ回転自在なカムフォロア41が互いに外側を向く態様で配設されている。また、各アーム部材20のカムフォロア41が配設された位置の近傍には、一端を装置本体11に固着された印圧ばね42の他端がそれぞれ取り付けられている。これにより各アーム部材20は、揺動軸21を中心に図において時計回り方向への回動付勢力をそれぞれ付与されている。
各カムフォロア41の左方近傍には、3枚のカム板43A,43B,43Cを有する多段カム43がそれぞれ配設されている。各カム板43A,43B,43Cは、両端を装置本体11に回転自在かつ図2の紙面方向に移動自在に支持されたカム軸44にそれぞれ所定の間隙をもって固着されており、装置手前側からカム板43B、カム板43A、カム板43Cの順に配設されている。各カム板43A,43B,43Cは、カム軸44と同心の円板である基部とそれぞれ同一突出量の凸部とを有している。多段カム43は、図3に示すように、カム軸44に取り付けられた駆動ギヤ45及び装置本体11に回転自在に支持された支軸46に取り付けられた伝達ギヤ47を介して版胴駆動手段121からの回転力を伝達され、図2において時計回り方向に回転駆動される。
プレスローラ13は、各カム板43A,43B,43Cの何れかの凸部がカムフォロア41と当接したときにその周面が版胴12の周面より離間する図2に示す離間位置を占め、何れかの凸部とカムフォロア41との当接が解除されたときに印圧ばね42の付勢力によってその周面が版胴12の周面に圧接する図3に示す圧接位置を占める。各カム板43A,43B,43Cは、プレスローラ13が圧接位置を占めたときにその基部とカムフォロア41とが接触しないように構成されている。各カム板43A,43B,43Cの凸部の形状は、プレスローラ13と版胴12との接触範囲が、カム板43Aでは図1に示す表面領域と中間領域と裏面領域とを全て合わせた範囲となるように、カム板43Bでは表面領域と同じ範囲となるように、カム板43Cでは表面領域の下流側部分と中間領域と裏面領域とを合わせた範囲となるようにそれぞれ形成されている。また、各カム板43A,43B,43C間の間隔は、アーム部材20の板厚よりも十分に大きくなるように設定されている。
図2において各アーム部材20の右方近傍には、プレスローラ13が離間位置を占めた状態で各アーム部材20の揺動を禁止する、図示しないプレスローラ係止手段が配設されている。図示しないプレスローラ係止手段は図示しないソレノイドを有しており、この図示しないソレノイドのオン・オフの切り換えによって各アーム部材20を保持する状態と保持を解除する状態とが選択的に切り換えられる。図示しないソレノイドは、カムフォロア41が各カム板43A,43B,43Cの何れかの凸部と当接した状態で作動される。
カム軸44の下方近傍には、図3に示すように移動アーム48と段差カム49とが配設されている。ほぼL字形状を呈する移動アーム48は、装置本体11に回転自在に支持された支軸48aにその曲折部を取り付けられており、移動アーム48の一端にはローラ48bが、また他端にはカムフォロア48cがそれぞれ回転自在に取り付けられている。さらに移動アーム48の他端と曲折部との間の部位には、一端を装置本体11に取り付けられた引張ばね50の他端が取り付けられており、移動アーム48には支軸48aを中心に、図において時計回り方向への回動付勢力が付与されている。
ローラ48bはカム軸44の中程に間隔をおいて固着された円板44a,44b間に配置されており、カムフォロア48cは引張ばね50の付勢力によりその周面を段差カム49の周面に当接させている。各円板44a,44b間の間隔は、ローラ48bの直径よりも僅かに大きくなるように設定されている。
段差カム49はその周面に3箇所のカム部49a,49b,49cを有しており、装置本体11に回転自在に支持された支軸51に固着されている。支軸51には、装置本体11に取り付けられたステッピングモータ52の出力軸に取り付けられたギヤ53と噛合するギヤ54が取り付けられており、ステッピングモータ52の作動により段差カム49は図3の矢印方向に回転駆動される。この構成より、ステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転すると移動アーム48が支軸48aを中心に揺動し、ローラ48bが円板44aあるいは円板44bを押すことでカム軸44が図3の左右方向に移動する。
各カム部49a,49b,49cは、カムフォロア48cとカム部49aとが当接したときにカム板43Bがカムフォロア41と当接可能位置となるように、カムフォロア48cとカム部49bとが当接したときにカム板43Aがカムフォロア41と当接可能位置となるように、カムフォロア48cとカム部49cとが当接したときにカム板43Cがカムフォロア41と当接可能位置となるようにカム軸44を移動させる形状にそれぞれ形成されている。
上述したカムフォロア41、印圧ばね42、多段カム43、図示しないプレスローラ係止手段、移動アーム48、段差カム49によってプレスローラ接離機構55が構成されており、このプレスローラ接離機構55の作動によってプレスローラ13は図2に示す離間位置と図3に示す圧接位置とを選択的に占める。
図1に示すように、版胴12とプレスローラ13との接触位置の左方であって用紙Pの搬送経路上には、用紙Pの搬送経路を切り換える切換部材10が配設されている。版胴12及びプレスローラ13と略同じ幅を有する板材からなる切換部材10は、その用紙搬送方向下流側端部を従動ローラ88と同軸上に回転自在に支持されており、図6に示すソレノイド123が作動することによって断面鋭角状に形成された用紙搬送方向上流側端部を図1に符号10aで示す第1の位置と符号10bで示す第2の位置とに選択的に位置決めされる。切換部材10は、第1の位置10aを占めたときにその先端がプレスローラ13の周面に近接すると共に版胴12上のクランパ19と干渉しない位置に置かれ、第2の位置10bを占めたときにその先端が版胴12の周面に近接する位置に置かれる。版胴12とプレスローラ13との間を通過した用紙Pは、切換部材10が第1の位置10aを占めたときに排紙部6へと案内され、切換部材10が第2の位置10bを占めたときにガイド板27と装置本体11に固着されたガイド板56との間を通って補助トレイ8へと案内される。
装置本体11の右上部には製版部3が配設されている。製版部3は、マスタ保持部材57、プラテンローラ58、穿孔手段としてのサーマルヘッド59、切断手段60、マスタストック部61、テンションローラ対62、反転ローラ対63等を有している。製版部3は画像信号に応じてサーマルヘッド59の発熱部となる複数の発熱素子を発熱させて後述するマスタ64の熱可塑性樹脂フィルムを選択的に溶融穿孔して画像信号に応じた穿孔パターンを形成して、図4に示すような第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとを有する両面印刷用マスタ65、あるいは第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとの2面分の画像量域を有する第3製版画像66Aを有する片面印刷用マスタ66を製版する。第1製版画像65Aは、両面印刷用マスタ65が版胴12の外周面上に巻装されたときに、図1に示す表面領域と対応する位置に形成され、第2製版画像65Bは裏面領域と対応する位置に形成される。図4、版胴12に巻きつけた状態を展開してフィルム面から見た図である。
本形態では、図4に示すように、第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとの間に所定の空白部SKが設けられるように製版する。このため、両面印刷用マスタ65は片面印刷用マスタ66よりも全長が若干長くなる。
マスタ保持部材57は、装置本体11の図示しない側板対にそれぞれ設けられており、マスタ64をロール状に巻成してなるマスタロール64aの芯部64bの両端を回転自在かつ着脱自在に支持している。マスタ64は、多孔性支持体である和紙上に厚さ:1.6μmの熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせた厚み:40μmのものを用いている。
マスタ保持部材57の左方に設けられたプラテンローラ58は、装置本体11の図示しない側板に回転自在に支持されており、製版駆動手段124によって回転駆動される。製版駆動手段124にはステッピングモータが用いられている。
プラテンローラ58の下方に位置し、主走査方向に配列されている多数の微小な発熱素子を有するサーマルヘッド59は、装置本体11の図示しない側板に取り付けられており、図示しない付勢手段の付勢力によってその発熱素子面をプラテンローラ58に圧接されている。サーマルヘッド59は、図示しないサーマルヘッド駆動回路と接続されている。このサーマルヘッド駆動回路は、画像信号となるイメージデータ信号に応じて、マスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に接触するサーマルヘッド59の発熱素子を選択的に発熱させ、マスタ64に対して熱溶融穿孔製版を行う。
図1に示すように、プラテンローラ58及びサーマルヘッド59の左方にはマスタ64を切断する周知の切断手段60が配設されている。切断手段60のマスタ搬送方向下流側下方にはマスタストック部61が配設されている。両面印刷用マスタ65あるいは片面印刷用マスタ66を一時的に貯容する空間であるマスタストック部61は、複数の板部材によってその内部を仕切られており、その最奥部には図示しない吸引ファンが配設されている。この吸引ファンが作動することにより密閉された空間であるマスタストック部61の内部に負圧が発生し、製版して搬送されてきた両面印刷用マスタ65あるいは片面印刷用マスタ66はマスタストック部61の最奥部に向けて貯容される。切断手段60とマスタストック部61との間の部位にはテンションローラ対62が配設されている。マスタストック部61のマスタ搬送方向下流側には反転ローラ対63が配設されている。テンションローラ対62及び反転ローラ対63の片側のローラは、図示しない駆動モータによって回転駆動されることで、マスタストック部61内のマスタを版胴12に向かって給版している。
マスタ上の画像の元となるデジタル画像信号は、装置本体11の上部に配設された画像読取部7で原稿を読み取って形成される場合と、孔版印刷装置がパソコン等の外部処理装置と接続されている場合には、コンピュータ上に作成されたデジタル原稿の出力で形成される場合とがある。
図1に示すように、画像読取部7は、破線で示す原稿91A、91Bの読取が行われる。すなわち、原稿載置台92に載置された各原稿は、分離ローラ93、前原稿搬送ローラ対94及び後原稿搬送ローラ対95のそれぞれの回転により矢印Y1方向に搬送されつつ露光読み取りに供される。このとき、原稿が多数枚あるときは、分離ブレード96の作用でその最下部の原稿のみが搬送される。後原稿搬送ローラ対95の一方のローラは、原稿駆動手段となる原稿搬送ローラ用モータ128によって回転駆動される。前原稿搬送ローラ対94は、後原稿搬送ローラ対95の駆動と連動して回転駆動される。原稿91A、91Bの画像読み取りは、画像読取手段となるコンタクトガラス97上を搬送されつつ、光源となる蛍光灯99により照明された原稿の表面からの反射光を、ミラー98で反射させレンズ100を通して、CCD(電荷結合素子)等から成る画像センサ101に入射させることにより行われる。画像が読み取られた原稿は、図示しない原稿トレイ80上に排出される。画像センサ101で光電変換された電気信号は、装置本体キャビネット50内の図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に入力されデジタル画像信号に変換されて画像メモリ135に記憶される。
本形態では、装置本体11に着脱自在とされている版胴12に対して、孔版印刷装置に設けた製版部3で製版した両面印刷用マスタ65や片面印刷用マスタ66を巻着する構成としているが、孔版形成装置と個別に設けた製版装置で各マスタ65、66を製版し、これら各マスタ65、66を選択的に巻着した版胴12を装置本体11に装着するものであっても良い。製版部3をもうない場合には、画像読取部7も不要となる。
製版部3の下方には給紙部4が配設されている。給紙部4は、給紙トレイ67、給紙ローラ68、分離ローラ69、分離パッド70、レジストローラ対71等を有している。上面に多数の用紙Pを積載可能な給紙トレイ67は装置本体11に上下動自在に支持されており、昇降手段を含む給紙駆動手段125(図6参照)によって上下動される。A3サイズの用紙Pを縦置き可能な給紙トレイ67の上面には、図示しないレール部材によって用紙搬送方向と直行する用紙幅方向に移動自在に支持された一対のサイドフェンス72が設けられている。給紙トレイ67の自由端部側には、積載され、給紙される用紙Pのサイズを検知する複数の用紙サイズ検知センサ73が設けられている。用紙Pは、基本的には第1の画像領域4と第2の画像領域5の大きさに適応した用紙サイズがセットされる。つまり片面印刷時の最大印刷サイズがA3サイズである場合は、両面印刷の場合の最大印刷サイズは大よそA4サイズとなり最大通紙用紙もA4なる。通紙方向は短手方向に通紙することとになるが、片面印刷時と両面印刷時において異なるサイズや向きでセットされてしまうこともある。
給紙トレイ67の上方には、表面に高摩擦抵抗部材を有する給紙ローラ68が配設されている。給紙ローラ68は装置本体11に揺動自在に支持された図示しないブラケットに回転自在に支持されており、給紙トレイ67が図示しない昇降手段によって上昇されたときに所定の圧接力で給紙トレイ67上の最上位の用紙Pに圧接する。給紙ローラ68は給紙駆動手段125によって回転駆動される。
給紙ローラ68の左方には、表面にそれぞれ高摩擦抵抗部材を有する分離ローラ69と分離パッド70とが配設されている。分離ローラ69はタイミングベルト69aを介して給紙ローラ68に駆動連結されており、給紙ローラ68の回転駆動時にこれと同期して同方向に回転駆動される。分離パッド70は図示しない付勢手段の付勢力によって分離ローラ69に圧接されている。
分離ローラ69及び分離パッド70の左方にはレジストローラ対71が配設されている。駆動ローラ71aと従動ローラ71bとからなるレジストローラ対71は、版胴駆動手段121からの回転駆動力をギヤやカム等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで駆動ローラ71aが版胴12と同期した所定のタイミングで回転し、駆動ローラ71aに圧接された従動ローラ71bとによって用紙Pを印刷部2に向けて所定のタイミングで給送する。
印刷部2の左上方には排版部5が配設されている。排版部5は、上排版部材74、下排版部材75、排版ボックス76、圧縮板77等を有している。上排版部材74は、駆動ローラ78、従動ローラ79、無端ベルト80等を有し、排版駆動手段126(図6参照)によって駆動ローラ78が図の時計回り方向に回転駆動されることにより無端ベルト80が図1の矢印方向に移動する。下排版部材75は、駆動ローラ81、従動ローラ82、無端ベルト83等を有し、駆動ローラ78を回転駆動する排版駆動手段126の駆動力をギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達手段によって伝達されることで駆動ローラ81が図の反時計回り方向に回転駆動されることにより、無端ベルト83が図1の矢印方向に移動する。また、下排版部材75は排版駆動手段126に含まれる図示しない移動手段によって移動自在に設けられており、図に示す位置と従動ローラ82の外周面上に位置する無端ベルト83が版胴12の外周面に当接する位置とを選択的に占める。
内部に使用済みマスタを貯容する排版ボックス76は、装置本体11に対して着脱自在に設けられている。上排版部材74と下排版部材75とによって運ばれた使用済みマスタを排版ボックス76の内部に押し込む圧縮板77は装置本体11に上下動自在に支持されており、排版駆動手段126に含まれる図示しない昇降手段によって上下動される。
排版部5の下方には排紙部6が配設されている。排紙部6は、エアーナイフ装置150、剥離爪84、排紙搬送部材85、排紙トレイ86等を有している。剥離爪84は版胴12の幅方向に複数配置され、装置本体11に揺動自在に支持された支軸にそれぞれ一体的に取り付けられている。複数の剥離爪84は図示しない爪揺動手段によって揺動され、その先端が版胴12の周面に近接する図に示す位置と、クランパ19等の障害物を回避するためにその先端が版胴12の外周面から離間する位置とを選択的に占める。図示しない爪揺動手段は、図6に示す版胴駆動手段121からの駆動力を図示しない駆動力伝達手段により伝達され、版胴12の回転と同期して剥離爪84を揺動させる。エアーナイフ装置150は、剥離爪84による用紙Pの剥離をアシストするためのもので、送風ファン151と、このファン151から出るエアーを排紙爪84近傍の版胴12に薄い層状に導くためのダクト152とを備えている。
剥離爪84の下方であって切換部材10の左方に配設された排紙搬送部材85は、駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89、吸引ファン90等を有している。コロ状の駆動ローラ87は図示しないユニット側板に回転自在に支持された図示しない支軸に所定の間隔で複数取り付けられており、排紙駆動手段127(図6参照)によってそれぞれ一体的に回転駆動される。従動ローラ88も同側板に回転自在に支持された図示しない支軸に各駆動ローラ87と等間隔で複数設けられており、各駆動ローラ87及びこれと対応する各従動ローラ88には複数の孔を有する無端ベルト89がそれぞれ掛け渡されている。駆動ローラ87、従動ローラ88、無端ベルト89の下方には吸引ファン90が配設されている。排紙搬送部材85は、吸引ファン90の吸引力によって各無端ベルト89上に用紙Pを吸引し、各駆動ローラ87の回転によって用紙Pを図1の矢印方向に搬送する。
排紙搬送部材85によって搬送された用紙Pをその上面に積載する排紙トレイ86は、用紙搬送方向に移動自在な1個のエンドフェンス91と、用紙幅方向に移動自在な一対のサイドフェンス92とを有している。
図1に示すように、版胴12を構成する図示しないフランジの外面には位相タイミング検知板となるドグ133が取り付けられており、版胴12の周囲近傍には装置本体11に取り付けられたフォトインタラプタで構成されたホームポジションセンサ134が配設されている。ホームポジションセンサ134は、クランパ19がプレスローラ13と対向する位置を版胴12が占めたときにドグ133を検知して制御手段160に向けて位相タイミング信号を出力する。
剥離爪84の近傍には、版胴12に巻着されている両面印刷用マスタ65または片面印刷用マスタ66の何れかの後端を検出する後端検出手段としての後端検出センサ170が配設されている。本形態において、後端検出センサ170は、版胴12が図1に示す所定の位置となるホームポジションを占めた時に、両面印刷用マスタ65の後端65Cを検出する位置に配設されている。後端検出センサ170は、版胴外周面に向かって光を照射する照射部と受光部とを備えた光学反射型の周知のセンサであって、両面印刷用マスタ65の後端65Cを検知している場合には、Low信号を出力し、マスタが存在しないときにはHi信号を出力するようになっている。本形態では、製版が開始されると、後端検出センサ170から検出光が版胴12に向かって照射される。
図5は孔版印刷装置の操作パネル103を示している。同図において、装置本体11の上部前面に設けられた操作パネル103は、その上面に、印刷スタートキー104、ストップキー105、テンキー106、用紙サイズキー107、製版スタートキー108、両面印刷キー110、片面印刷キー111、LEDならなる表示手段113、114,115、LCDからなる表示装置116等を有している。
スタートキー104は孔版印刷装置に製版動作と印刷動作を行わせる際に押下され、スタートキー104が押下されると排版動作及び原稿読取動作が行われた後に製版動作が行われ、その後、版付け動作、印刷動作が行われて孔版印刷装置は印刷待機状態となる。ストップキー104は装置の動作を停止させる際に押下され、テンキー106は印刷枚数などの数値入力時に押下される。製版スタートキー108は製版動作を行わせるる時に押下され、用紙サイズキー107は用紙サイズを任意で入力する際に押下され、用紙サイズキー107で入力された用紙サイズは用紙サイズ検知センサ73によって検知された用紙サイズに優先される。両面印刷キー110は孔版印刷装置に両面印刷動作を行わせる際に、印刷スタートキー104の押下前に押下される。片面印刷キー111は孔版印刷装置に片面印刷動作を行わせる際にスタートキー104の押下前に押下される。表示装置116には、制御手段160で判断された各種結果が表示される。
図6は、孔版印刷装置1に用いられる制御系のブロック図を示している。同図において制御手段160は、周知のマイクロコンピュータで構成されていて、その内部にCPU161、ROM162、RAM163を有し、装置本体11の内部に設けられている。
CPU161は、操作パネル103からの各種信号及び装置本体11に設けられた各種センサからの検知信号及びROM131から呼び出された動作プログラムに基づいて、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7に設けられた各駆動手段、再給紙手段9に設けられた再給紙レジスト接離機構40及び切換部材10を作動させるソレノイド123の作動等を制御し、孔版印刷装置1全体の動作を制御する。ROM162には孔版印刷装置全体の動作プログラムが記憶されており、この動作プログラムはCPU161によって適宜呼び出される。ROM162にはマスタ種類情報、用紙サイズや向き情報、マスタ情報と用紙サイズ情報との組み合わせによる印刷可能状態がデータとして記憶されている。マスタ種類とは両面印刷用マスタ65か片面印刷用マスタ66であるかということである。RAM163は、CPU161の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル103上の各種キー及び各種センサから設定及び入力されたデータ信号及びオン/オフ信号を随時記憶する機能等を有している。
制御手段160は、ホームポジションセンサ134からの位相タイミング信号と、版胴駆動手段121が一定角度回転するごとに発生する回転パルス信号を用いて、版胴12の回転位相位置(タイミング)をリアルタイムで検知認識するようになっている。制御手段160は、後端検出センサ170からの検出情報に基づき、版胴12に巻着されているマスタの種類を判別する機能と、判別したマスタの種類を表示装置160に表示する機能を備えている。
このような構成の孔版印刷装置1の動作について説明する。本形態では載置台92に2枚の原稿91A、91Bがセットされていて、原稿91Aを第1原稿となる表面原稿、原稿91Bを第2原稿となる裏面原稿とする。オペレーターにより両面印刷キー110を押下して製版スタートキー108が押下されると、図7に示すマスタ判定処理がスタートする。
ステップS1では製版が開始される。ここでは、画像読取部7では原稿搬送ローラ用モータ128が駆動されて、1枚目(第1原稿91A)の原稿画像が読み取られる。読み取られた原稿画像は画像メモリ135内に表面画像のデジタル画像信号として格納されるとともに、後端検出センサ170が作動されて検知光が版胴12の外周面に向かって照射される。1枚目の原稿91Aの読取動作が完了してデジタル画像信号が画像メモリ135内に格納されると、連続して2枚目の原稿(第2原稿91B)の読取動作が1枚目の原稿と同様な速度で行われる。読み取られた原稿画像は画像メモリ135内に裏面画像のデジタル画像信号として格納される。第1原稿91Aに対する画像読取動作と並行して、排版部5では排版動作が行われる。外周面上より使用済みマスタを剥離された版胴12は給版待機位置で停止し、図示しない開閉手段によってクランパ19が開放される。
製版部3では、マスタ64の熱可塑性樹脂フィルム面に第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとを形成すべく、メモリ135に格納されていたデジタル画像信号に基づきサーマルヘッド59の発熱体を加熱するとともにマスタ送りモータ124Bが駆動されて感熱性孔版マスタ64が搬送され、第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとがそれぞれ製版されて両面印刷用マスタ65が形成される。
各製版画像65A,65Bが形成された両面印刷用マスタ65はマスタストック部61内に貯容され、排版動作が完了して孔版印刷装置1が給版待機状態となると、反転ローラ対63の作動によって開放されているクランパ19に向けて搬送される。その後、版胴12が間欠回転され、両面印刷用マスタ65の版胴12への巻装が行われる。そして、画像メモリ135から2枚分の画像データが全て送られると、切断手段60が作動して両面印刷用マスタ65が切断される。切断された両面印刷用マスタ65は版胴12の回転によって製版部3より引き出され、版胴12がホームポジションで停止して製版動作及び給版動作が完了する。
ステップS2における製版終了は、例えば切断手段60の駆動の有無で判断する。製版終了となるとステップS3に進んで、マスタ後端検出が検知されたか否かを後端検出センサ170からの出力変化で判断する。このステップは版胴12がホームポジションで停止している最中に行われる。版胴12の停止状態において、後端検出センサ170からの信号がLowの場合には、マスタ後端65Cを検出しているので、ステップS4に進んで両面印刷用マスタ65が製版されて巻着されているものと判断しステップS6に進む。ステップS6では版胴12に巻着されているマスタが両面印刷用マスタ65であることを表示装置116に表示する。
ステップS3において後端検出センサ170からの信号がHiの場合には、マスタ後端65Cが検知されていない状態であるので、ステップS5に進んで片面印刷用マスタ66が巻着されているものと判断してステップS6に進む。この場合、表示装置116には、版胴12に巻着されているマスタが片面印刷用マスタ66であることを表示する。
このように製版終了後に版胴12に巻着されているマスタの種類をセンシングすることで、版胴12に巻着されたマスタの種類を判別することができる。また、製版されたマスタ種類が表示装置116上に表示されるので、誤った選択による製版が実行された場合でも、製版内容を視覚的に確認することができるので、ミス製版したマスタによる印刷を防止するとこができる。
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴12がホームポジションで停止すると図3のステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転されると共に図示しないプレスローラ係止手段が作動され、カム部49aをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動されてカム軸44がカム板43Bをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。
その後、給紙ローラ68、分離ローラ69、各駆動ローラ36,87、各吸引ファン39,90がそれぞれ駆動されると共に版胴駆動手段121の駆動により版胴12が低速で図1の時計回り方向に回転駆動され、給紙トレイ67上から1枚目の用紙P1が引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、クランパ19が切換部材10と対応する位置を通過するとソレノイド123が作動して切換部材10が第2の位置に位置決めされ、その後、版胴12上に巻装された両面印刷用マスタ65の版胴回転方向における第1製版画像65Aの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達する所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動されることで、引き出された用紙P1は版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
上記所定のタイミングにおいて、カムフォロア41と当接可能である位置に移動されたカム板43Bはその凸部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。これによりプレスローラ13と用紙P1と両面印刷用マスタ65の第1製版画像65A形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部より滲出し、版胴12に巻装された図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、及び両面印刷用マスタ65の多孔性支持体に充填された後に第1製版画像65Aの穿孔部を介して用紙P1に転写され、両面印刷用マスタ65のうちの第1製版画像65Aが形成された部分の版付けが行われる。
版付けにより第1製版画像65Aに応じた画像をその表面に印刷された用紙P1は、切換部材10の先端によってその先端部から版胴外周面上の両面印刷用マスタ65から剥離されつつ、第2の位置を占めた切換部材10によって再給紙手段9へと案内される。切換部材10によって下方へと導かれた用紙P1は、各ガイド板27,56間を通ってその先端をフェンス8aに当接させ、補助トレイ8上に載置される。補助トレイ8上に搬送された用紙P1は、吸引ファン39の駆動により発生する吸引力によって搬送部材駆動モータ122の駆動により回転移動する無端ベルト38とに保持されつつ図1の矢印方向に搬送され、その先端(第1製版画像65Aの印刷時における後端)を曲折端部24aに当接させる。このとき用紙P1と無端ベルト38との間で滑りが発生するので、用紙P1はその先端を曲折端部24aに当接させた状態で停留される。なお、用紙P1の先端が曲折端部24aに当接したときにこれを検知する図示しないセンサを設け、この図示しないセンサが用紙P1の先端を検知したときに駆動ローラ36及び吸引ファン39の作動を停止させる構成としてもよい。
用紙P1が補助トレイ8上に案内されている間も版胴12は回転を継続しており、プレスローラ13は版胴12の表面領域との接触を終えるとカム板43Bの凸部がカムフォロア41に当接することで離間位置を占める。このカム板43Bの働きにより、用紙Pが存在しない状態で版胴12の裏面領域とプレスローラ13とが圧接することがなく、プレスローラ13の周面へのインキの転移を防止できる。このとき図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13を離間位置で保持した後、ステッピングモータ52が作動して段差カム49が回転され、そのカム部49bをカムフォロア48cに当接させる。これにより移動アーム48が支軸48aを中心に揺動され、カム軸44がカム板43Aをカムフォロア41に対して当接可能となる位置に移動される。
上述の動作とほぼ同時に給紙ローラ68及び分離ローラ69が駆動され、給紙トレイ67上から2枚目の用紙P2が引き出されてその先端をレジストローラ対71に挟持される。そして、上述と同様の所定のタイミングで駆動ローラ71aが回転駆動され、引き出された用紙P2は版胴12とプレスローラ13との間に向けて給送される。
プレスローラ接離機構55では、移動されたカム板43Aの凸部がカムフォロア41と当接可能な位置までカム軸44が回転すると、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。このときカム軸44と同期して回転している版胴12は、表面領域及び裏面領域及び中間領域以外の部位である非開口部がプレスローラ13と対向する位置を占めている。また、版胴12の表面領域がプレスローラ13との対向部を通過し、クランパ19が再び切換部材10と対応する位置を占めるまでの間にソレノイド123が作動され、切換部材10が第2の位置から第1の位置に変位される。
用紙P2がレジストローラ対71によって給送される所定のタイミングにおいて、カム板43Aがその凸部をカムフォロア41から離脱させることによりプレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。これによりプレスローラ13と用紙P2と両面印刷用マスタ65の第1製版画像65A形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部、図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、第1製版画像65Aの穿孔部を介して用紙P2に転写される。
第1製版画像65Aに応じた画像を印刷された用紙P2は、第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送部材85へと案内されると共に、剥離爪84によってその先端部から版胴外周面上の両面印刷用マスタ65より剥離される。剥離された用紙P2は下方へと落下して排紙搬送部材85へと送られた後に排紙トレイ86上に排出される。
レジストローラ対71によって用紙P2が給送された後、両面印刷用マスタ65の版胴回転方向における第2製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早いタイミングである所定のタイミングでソレノイド33が作動され、揺動アーム32が支軸32aを中心に図2における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動され、先端を曲折端部24aに当接させた状態で停留されていた用紙P1が版胴12と当接して従動回転しているプレスローラ13の周面に当接される。
再給紙レジストローラ23によりプレスローラ13の周面に当接された用紙P1は、プレスローラ13の回転力によってその回転方向下流側へと搬送され、用紙ガイド板31及び各ローラ28,29,30によってプレスローラ13の周面に密着した状態で版胴12との当接部に向けて搬送される。このとき用紙P1の表面には第1製版画像65Aに応じた画像が印刷されているが、再給紙案内部材22の働きによって用紙P1がプレスローラ13の周面に密着されているので、一度プレスローラ13の周面に接触した用紙P1がずれることがなく、擦れ汚れあるいは画線の太りといった不具合の発生が防止される。そして、用紙P2の後端及び中間領域がプレスローラ13と対応する位置を通過した後、裏面領域の先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するタイミングで用紙P1が版胴12とプレスローラ13との当接部に送り込まれる。
これによりプレスローラ13と用紙P1と両面印刷用マスタ65の第2製版画像65B形成部と版胴12とが圧接し、インキローラ16によって版胴12の内周面に供給されたインキが版胴12の開口部、図示しない多孔性支持板及び図示しないメッシュスクリーン、第2製版画像65Bの穿孔部を介して用紙P1に転写され、両面印刷用マスタ65のうちの第2製版画像65Bが形成された部分の版付けが行われる。
第1製版画像65Aに応じた画像を表面に、第2製版画像65Bに応じた画像を裏面にそれぞれ印刷された用紙P1は、第1の位置を占めた切換部材10によって排紙搬送部材85へと案内されると共に、エアーナイフ152から噴射される空気と剥離爪84の作用によってその先端部から版胴外周面上の両面印刷用マスタ65より剥離される。剥離された用紙P1は下方へと落下して排紙搬送部材85へと送られた後に排紙トレイ86上に排出され、これにより両面印刷用マスタ65の版付け動作が完了して、印刷動作へと移る。
版付け時において、両面印刷用マスタ65の第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとの間に所定の空白部Sが設けられ、両面印刷用マスタ65が版胴12の外周面上に巻装された際に中間領域が形成されるので、給紙部4から送られた用紙P2の後端と再給紙手段9から送られた用紙P1の先端とが重合することが防止され、良好な版付けを行うことができる。また、再給紙手段9からの用紙P1の再給紙時において、用紙P1の印刷面と接触することでプレスローラ13の表面に用紙P1からのインキが再転移するが、プレスローラ13の周面が撥インキ性を有すると共にクリーニングローラ26がプレスローラ13の周面をクリーニングするので、用紙P1からプレスローラ13の周面への再転移インキ量が減少されると共にプレスローラ13の周面からの再転移インキの除去が促進され、以下の印刷時においてプレスローラ13から用紙Pの裏面へのインキの再転移を防止できる。
版付け動作が終了すると、孔版印刷装置1は印刷待機状態となり、印刷スタートキー104の押下が待たれる。テンキー106に印刷枚数が設定され、印刷スタートキー104が押下されると、印刷動作が開始する。印刷動作では、版付け時と同様にカム板43Bがカムフォロア41に対して当接可能となる位置にカム軸44が移動された後に印刷速度で版胴12が回転駆動され、切換部材10が第2の位置に位置決めされる。版胴12の回転開始後に給紙部4から1枚目の用紙P1が給送され、給送された用紙P1はレジストローラ対71で一時停留された後に試し刷り時と同じタイミングで給送される。用紙P1はプレスローラ13によって両面印刷用マスタ65の第1製版画像65Aに圧接されることで、その表面に第1製版画像65Aに対応した画像を印刷される。表面に画像を印刷された用紙P1は、第2の位置を占めた切換部材10によって剥離案内されて補助トレイ8上に搬送され、先端を曲折端部24aに当接させた状態で停留される。
その後、図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、カム板43Aがカムフォロア41に対して当接可能となる位置にカム軸44が移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。また、この動作とほぼ同時に給紙部4から2枚目の用紙P2が給送され、用紙P2はレジストローラ対71で一時停留された後に用紙P1と同じタイミングで印刷部2に向けて給送される。切換部材10はクランパ19との衝突を回避すべく第1の位置に位置決めされた後、クランパ19の通過後に再び第2の位置に位置決めされる。
給送された用紙P2はプレスローラ13によって両面印刷用マスタ65の第1製版画像65Aに圧接され、表面に第1製版画像65Aに対応した画像を印刷された後、第2の位置を占めた切換部材10によって剥離案内されて補助トレイ8上に搬送される。このとき試し刷り時と同じタイミングでソレノイド33が作動され、補助トレイ8上に停留されていた用紙P1がプレスローラ13の回転力によって印刷部2へと搬送される。用紙P1は用紙P2の後端が版胴12とプレスローラ13との当接部を抜けきった後、版胴12の中間領域がプレスローラ13と対向する位置を通過して裏面領域がプレスローラ13と対向するタイミングで版胴12とプレスローラ13との当接部に送られ、プレスローラ13によって両面印刷用マスタ65の第2製版画像65Bに圧接されることでその裏面に第2製版画像65Bに対応した画像を印刷される。
上述の動作中、版胴12の中間領域がプレスローラ13と対向する位置を占める直前にソレノイド123が作動され、切換部材10が第2の位置から第1の位置に変位される。これにより切換部材10によって案内されていた用紙P2の後端は、切換部材10の下面10aとプレスローラ13の周面との間の僅かな隙間を通って補助トレイ8上に案内され、これに続いて搬送された用紙P1の先端は、切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送部材85へと案内される。用紙P1は、剥離爪84によって両面印刷用マスタ65より剥離された後に排紙搬送部材85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。
給紙部4から3枚目の用紙P3が給送され、用紙P3はレジストローラ対71で一時停留された後に用紙P1と同じタイミングで印刷部2に向けて給送される。切換部材10はクランパ19との衝突を回避すべく第1の位置に位置決めされ、クランパ19の通過後に再び第2の位置に位置決めされる。給送された用紙P3は表面に第1製版画像65Aに対応した画像を印刷された後、切換部材10によって補助トレイ8上に案内される。そして所定のタイミングでソレノイド33が作動され、補助トレイ8上に停留されていた用紙P2が印刷部2へと搬送される。用紙P2は上述の用紙P1と同様のタイミングで版胴12とプレスローラ13との当接部に送られ、その裏面に第2製版画像65Bに対応した画像を印刷される。切換部材10は上述と同様のタイミングで第2の位置から第1の位置に変位され、用紙P3の後端は切換部材10の下面10aとプレスローラ13の周面との間の僅かな隙間を通って補助トレイ8上に案内される。また、これに続いて補助トレイ8上より搬送された用紙P2の先端は切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送部材85へと案内され、用紙P2は剥離爪84によって両面印刷用マスタ65より剥離された後に排紙搬送部材85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。
以下、上述と同様の印刷動作が(N―1)枚目まで行われる。そして、N枚目の用紙PNが給紙部4から給送されその表面に第1製版画像65Aに対応した画像を印刷されて補助トレイ8上に案内された後、(N−1)枚目の用紙P(N−1)がその裏面に第2製版画像に対応した画像を印刷されて排紙トレイ86上に排出されると、図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、カム板43Cをカムフォロア41に対して当接可能となる位置にカム軸44が移動された後、図示しないプレスローラ係止手段の作動が解除される。このとき切換部材10は第1の位置を占めた状態を維持している。
そして、両面印刷用マスタ65の版胴回転方向における第2製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりも早い第1のタイミングでカムフォロア41と当接可能である位置に移動されたカム板43Cはその凸部をカムフォロア41から離脱させ、プレスローラ13が印圧ばね42の付勢力によってその周面を版胴12の外周面に圧接させる。その後、両面印刷用マスタ65の版胴回転方向における第2製版画像65Bの画像領域先端部がプレスローラ13と対応する位置に到達するよりもやや早い第2のタイミングでソレノイド33が作動され、揺動アーム32が支軸32aを中心に図2における時計回り方向に揺動される。これにより再給紙レジストローラ23が離間位置から圧接位置に揺動され、先端を曲折端部24aに当接させた状態で停留されていた用紙PNが版胴12と当接して従動回転しているプレスローラ13の周面に当接される。
用紙PNは用紙P1と同様のタイミングで版胴12とプレスローラ13との当接部に送られ、その裏面に第2製版画像65Bに対応した画像を印刷される。画像を印刷された用紙PNは切換部材10の上面10bに沿って排紙搬送部材85へと案内され、剥離爪84によって両面印刷用マスタ65より剥離された後に排紙搬送部材85によって搬送され、排紙トレイ86上に排出される。その後、プレスローラ13は版胴12の裏面領域との接触を終えるとカム板43Cの凸部がカムフォロア41に当接することで離間位置を占める。このカム板43Cの働きにより、用紙Pが存在しない状態で版胴12の表面領域とプレスローラ13とが圧接することがなく、プレスローラ13の周面へのインキの転移を防止できる。このとき図示しないプレスローラ係止手段が作動してプレスローラ13が離間位置で保持され、その後に版胴12がホームポジションで停止して孔版印刷装置1は印刷動作を終えて再び印刷待機状態となる。
上述の印刷時において、両面印刷用マスタ65の第1製版画像65Aと第2製版画像65Bとの間に所定の空白部SKが設けられ、両面印刷用マスタ65が版胴12の外周面上に巻装された際に中間領域が形成されるので、給紙部4から送られた用紙Pの後端と再給紙手段9から送られた用紙Pの先端とが重合することが防止され、切換部材10の切換によって給紙部4からの用紙Pを補助トレイ8に、再給紙手段9からの用紙Pを排紙トレイ86にそれぞれ確実に搬送することができる。また、再給紙手段9からの用紙Pの再給紙時において、用紙Pの印刷面及び版胴12の外周面と接触することでプレスローラ13の表面に用紙Pからのインキ及び版胴外周面からのインキが再転移するが、プレスローラ13の周面が撥インキ性を有すると共にクリーニングローラ26がプレスローラ13の周面をクリーニングするので、用紙Pからプレスローラ13の周面への再転移インキが減少されると共にプレスローラ13の周面からの再転移インキの除去が促進され、以下の印刷時においてプレスローラ13から用紙Pの裏面へのインキの再転移を防止することができる。
この孔版印刷装置1によれば、片面印刷時には製版部3が片面印刷用マスタ66を作成してこれを版胴12に巻装し、給紙部4より用紙Pを給送して、これをプレスローラ13によって版胴12に圧接させるので、マスタ64を無駄に使用することなく通常の孔版印刷装置と同様に片面印刷を行うことができる。両面印刷時には製版部3が両面印刷用マスタ65を作成してこれを版胴12に巻装し、給紙部4より1枚目の用紙P1を給送し、この表面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に補助トレイ8上に排出し、給紙部4より2枚目の用紙P2を給送して、この表面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に補助トレイ8上に排出すると共に、再給紙手段9によって1枚目の用紙P1を反転給送して、この裏面をプレスローラ13によって版胴12に圧接させた後に排紙トレイ86上に排出するので、用紙Pに印刷される表面画像及び裏面画像が共にプレスローラ13により版胴12から転移されるインキによって形成され、良好な両面印刷物を得ることができる。
次に図8〜図10に示すフローチャートを用いて、制御手段160によるマスタ判定処理から印刷までの別な処理動作について説明する。図9のフローチャートは図8に示す端子Aに接続するもので、図10のフローチャートは図8に示す端子Bに接続するものである。この形態において、制御手段160は、後端検出センサ170からの検出情報からマスタの種類を判断し、その判断結果をマスタ種類情報としてRAM163に記憶し、この記憶したマスタ種類情報と用紙サイズ検知センサ73からの用紙サイズ情報に基づき、片面印刷または両面印刷の何れかの印刷が可能であるかを判断するとともに、判断した印刷可能状態に応じて表示手段113,114,115の表示状態を制御する。表示手段113は表示部113A,113Bを有し、両面印刷可能である場合には表示部113Aが点灯され、両面印刷が不可能である場合には表示部113Bが点灯される。表示手段114は表示部114A,114Bを有し、制御手段160と接続されている。制御手段160は、片面印刷可能である場合には表示部114Aを点灯し、片面印刷が不可能である場合には表示部114Bを点灯する。表示手段115は表示部115A,115Bを有し、制御手段160と接続されている。表示部113A、114A、115Aは有効表示部をなし、表示部113B、114B、115Bは無効表紙部を成す。
制御手段160は、両面印刷可能である場合には表示部115Aを点灯し、両面印刷不可能である場合には表示部115Bを点灯する。制御手段160は、表示部113B、114B、115Bが点灯している場合には、これら表示部に対応する片面印刷キー110、両面印刷キー111、スタートキー104をそれぞれ操作しても、キー操作を無効にする機能を備えている。
このような構成の制御手段160による孔版印刷装置の動作を説明する。図8のステッT1〜T5までは図7のステップS1〜S5までと同一内容であるので、ここではその説明は省略する。製版動作が終了後、後端検出センサ170によりマスタ後端65Cが検出されると、両面印刷用マスタ65と判断してステップT6において、マスタ種類情報(両面印刷用マスタ)としてRAM163に記憶し、図9のステップT8に進む。ステップT3でマスタ後端65Cが検出されなければ、片面印刷用マスタ66と判断してステップT7において、マスタ種類情報(片面印刷用マスタ)としてRAM163に記憶する。
ステップT6を終えるとステップT8に進み、給紙台67の用紙Pが両面印刷可能な用紙か否かの判断をする。ここでは、用紙サイズ検知センサ73からの用紙サイズ情報を用紙サイズキー107からの用紙サイズ情報よりも優先して取り込み、用紙Pのサイズと向きを判断する。本形態では、両面印刷可能な用紙の種類として、用紙サイズはJIS規格A4またはB4以下で、かつ、用紙の向きは用紙搬送方向に縦搬送できる載置向きとする。なお、A6サイズの場合には、用紙版双方向に横長に搬送できる載置向きとする。
ステップT8において、両面印刷可能な用紙がセットされている場合には、ステップT9に進んで片面印刷キー110、両面印刷キー111、印刷スターキー104の操作を有効としステップT10に進む。ステップT10では表示手段113,114,115の表示部113A、114A,115Aを点灯させる。この状態において、ステップT11において点灯している表示部113A、114A,115Aに対応するキーを選択して操作すると、操作されたキーに対応する表示部113A、115Aまたは表示部114A,115AがステップT12で消灯し、ステップT13に進んで両面印刷動作がスタートする。そして、ステップT14において、例えば用紙切れなどによって印刷が停止した場合には、補給される用紙Pのサイズや向きを検知すべくステップT8に戻る。
給紙台67の用紙がA4横やA3サイズの場合、ステップT8において、両面印刷不可能な用紙がセットされているものとしてステップT15に進む。ステップT15では、片面印刷に必要な片面印刷キー110と印刷スタートキー104の操作のみが有効とされる。そして、ステップT16において片面印刷に必要な表示手段113,115の表示部113A、115Aを点灯させる。この状態において、ステップT11において点灯している表示部113A、115Aに対応するキーを選択して操作すると、操作されたキーに対応する表示部113A、115AがステップT12で消灯し、ステップT13に進んで片面印刷動作がスタートする。そして、ステップT14において、例えば用紙切れなどによって印刷が停止した場合には、補給される用紙Pのサイズや向きを検知すべくステップT8に戻る。
一方、図8のステップT7を終えると図10のステップT17に進み、給紙台67の用紙Pが片面印刷可能な用紙か否かの判断をする。ここでは、用紙サイズ検知センサ73からの用紙サイズ情報を用紙サイズキー107からの用紙サイズ情報よりも優先して取り込み、用紙Pのサイズと向きを判断する。本形態では、片面印刷可能な用紙の種類として、用紙サイズはJIS規格A4横やA3サイズとする。
ステップT17において、片面印刷可能な用紙がセットされている場合には、ステップT18に進んで片面印刷キー110、印刷スターキー104の操作を有効としステップT19に進む。ステップT19では表示手段113、115の表示部113A、115Aを点灯させる。この状態において、ステップT20において点灯している表示部113A、115Aに対応するキーを選択して操作すると、操作されたキーに対応する表示部113A,115AがステップT21において消灯し、ステップT22で片面印刷動作がスタートする。そして、ステップT23において、例えば用紙切れなどによって印刷が停止した場合には、補給される用紙Pのサイズや向きを検知すべくステップT17に戻る。
給紙台67の用紙がA4横やA3サイズでない場合、ステップT17において片面印刷不可能な用紙がセットされているものとしてステップT24に進む。ステップT24では、両面印刷に必要な片面印刷キー110、両面印刷キー111、印刷スタートキー104の操作が有効とされる。そして、ステップT25において両面印刷に必要な表示手段113、114、115の表示部113A、114A、115Aを点灯させる。この状態においてステップT20に進み、点灯している表示部113A、114A、115Aに対応するキーを選択して操作すると、操作されたキーに対応する表示部113A、115Aまたは、表示部114A、115AがステップS21で消灯し、ステップT22に進んで両面印刷動作がスタートする。そして、ステップT23において、例えば用紙切れなどによって印刷が停止した場合には、補給される用紙Pのサイズや向きを検知すべくステップT8に戻る。
このように、給紙台67から給紙される用紙Pのサイズを用紙サイズ検出センサ73で検出し、制御手段160で後端検出センサ170からの検出情報と用紙サイズ検出センサからの用紙サイズ情報とに基づき、片面印刷または両面印刷の何れかの印刷が可能であるかを判断するので、版胴12に巻着されたマスタの種類に対応した用紙による正確な印刷を行える。また、印刷可能な場合、その印刷に関わるキー操作のみを有効とし、これら有効とされたキーに対応する表示手段を点灯させるので、誤操作が起こりにくく、また、誤って操作された場合でも、マスタや用紙サイズに対応していない印刷は実行されない。このため、誤操作による無駄な印刷を防止することができるとともに、マスタと用紙と印刷モードのミスマッチにより発生する版胴12とプレスローラ13との直接接触を防止でき、プレスローラ13の汚れを防止することができる。
図11は、片面印刷だけが行える孔版印刷装置200の構成を示す。この孔版印刷装置200の特徴は、後端検出センサ270を有し、このセンサからの出力を用いて装置に対応しない版胴を見分ける点にある。
図11に示す孔版印刷装置200は、図1に示す孔版印刷装置1から、両面印刷時に用いる補助トレイ8、再給紙手段9、切換部材10、再給紙搬送部材25などを取り除いた構成であり、これ以外は共有の構成とされている。よって、図1で説明している装置構成については割愛し、特徴的な構成と動作について説明する。
孔版印刷装置200は、マスタを巻着された状態で装置本体201に着脱可能な印刷ドラムとしての版胴220と、版胴220に給紙部4から給紙される用紙Pを押圧する印刷部材としてのプレスローラ13とを備えている。プレスローラ13は、図3に示すプレスローラ接離機構55の作動によって版胴220から離間した離間位置と版胴220に当触する圧接位置とを選択的に占める。
版胴220は、版胴12と同一構成で同一径とされていて、装置本体201に対して着脱自在とされている。装置本体201には、内部に連通する図示しない開口部を開閉するための仮想線で示す開閉カバー250が装着されている。この開閉カバー250は、版胴220の交換時に開閉操作される。
装置本体201の内部には、版胴220が所定の位置となるホームポジションを占めた時に、非対応のマスタの後端を検出する後端検出手段としての後端検出センサ270と、開閉カバー250の開閉状態を検知する開閉検知センサ280が配置されている。後端検出センサ270は版胴外周面に向かって光を照射する照射部と受光部とを備えた光学反射型の周知のセンサであって、版胴220に巻着されている特定のマスタの後端を検知するとLow信号を出力し、マスタを検知しないときにはHi信号を出力するようになっている。開閉検知センサ280はリミットスイッチのようなオン/オフスイッチで構成されていて、開閉カバー250が閉状態のときにオン信号を出力するものである。装置本体201の内部には、後端検出センサ270からの検出情報に基づき装置本体201に装着された版胴220の種類を判別する制御手段260が設けられている。
制御手段260は周知のマイクロコンピュータであって、図12に示すように、その内部にCPU261、ROM262、RAM263を有している。CPU261は、操作パネル203からの各種信号及び装置本体201に設けられた各種センサからの検知信号及びROM261から呼び出された動作プログラムに基づいて、印刷部2、製版部3、給紙部4、排版部5、排紙部6、画像読取部7に設けられた各駆動手段の作動等を制御し、孔版印刷装置200全体の動作を制御する。ROM262には孔版印刷装置全体の動作プログラムが記憶されており、この動作プログラムはCPU261によって適宜呼び出される。RAM263は、CPU261の計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル203上の各種キー及び各種センサから設定及び入力されたデータ信号及びオン・オフ信号を随時記憶する機能等を有している。制御手段260には、ホームポジションセンサ134、操作パネル203、後端検出センサ270、開閉検知センサ280、音声設定手段290が接続されている。
制御手段260は、ホームポジションセンサ134からの位相タイミング信号と、版胴駆動手段121が一定角度回転するごとに発生する回転パルス信号を用いて、版胴220の回転位相位置(タイミング)をリアルタイムで検知認識するようになっている。制御手段260は、後端検出センサ270からの検出情報に基づき、版胴220に巻着されているマスタの種類を検知して装置本体201に装着された版胴220の種類を判別する機能と、後端検出手センサ270からの検出情報に基づき表示手段116の表示状態を制御するとともに音声発生手段290を駆動して警告音を発生させる機能とを備えている。表示状態を制御とは、判別した版胴の種類や警告内容を表示装置116に表示することである。
図12に示すように、装置本体201の上部前面に設けられた操作パネル203は、その上面に、印刷スタートキー104、ストップキー105、テンキー106、用紙サイズキー107、製版スタートキー108、LEDならなる表示手段115、LCDからなる表示装置116等を有している。各キーの機能は図5に記載したキーに準ずる。
このような構成の孔版印刷装置200における版胴判別処理から印刷までの一連の流れを図14に示すフローチャートに沿って説明する。これから説明する前提として、装置本体201からは版胴220が取り外されていて、新たに版胴220を装着するものとする。
図14のステップV1では、開閉カバー250を開いて版胴201を装置本体201にセットし、ステップV2において開閉カバー250が閉じられている否かを開閉検知センサ280の出力から判断する。版胴201のセットは、ポームポジションを占めるようにセットする。ステップV2において開閉検知センサ280がオンであると、版胴206が装置本体201に装着されて開閉カバー250が閉じられているものとしてステップV3に進む。
ステップV3では、版胴220に巻着されているマスタの後端が検知されたか否かを後端検出センサ270からの出力変化で判断する。後端検出センサ270からの信号がLowの場合には、マスタ後端を検出しているので、ステップV4に進んで両面印刷用マスタ付版胴が装着されているものと判断してステップV5に進む。ステップV5では、表示装置116に両面印刷用マスタ付版胴が装着されていることを示す警告内容を表示するとともに、音声発生手段290を駆動して警告音を発生させてステップV6へ進む。ステップV6では、印刷スタートキー104を無効としてステップV7に進み、片面印刷用のマスタを形成するための製版を実行する。この製版動作では、製版スタートキー106を押下すると、版胴220に巻着されている両面印刷用のマスタが排版部5によって廃棄され、製版部3によって片面原稿91Aに対応する新たな製版が行われて版胴220に巻着される。また、製版スタートキー106が押下されると、警告表示および警告音が解除される。
ステップV7での製版動作が終了すると、ステップV10に進んで後端検出センサ270を待機状態、すなわちセンサに対する通電をオフし、ステップV11に進んで片面印刷を実行する。ここでの印刷実行に際しては、テンキー106で印刷枚数を入力後、印刷スタートキー104を押下することで印刷が開始される。そして、ステップV12において、印刷が終了したか否かが印刷枚数のカウントから判断され、印刷が終了することで、この処理を終了する。
ステップV3において後端検出センサ270からの信号がHiの場合には、マスタの後端が検知されていない状態であるので、片面製版マスタ付版胴が装着されているものと判断してステップV9に進む。ステップV9では、製版スタートキー108を無効としてステップV10に進み、後端検出センサ270を待機状態としてステップV11に進んで片面印刷を実行する。そしてステップV12において、印刷が終了するとこの処理を終了する。
このように、非対応のマスタの後端を検出する後端検出センサ270からの検出情報に基づき、装置本体201に装着された版胴220の種類を判別するので、誤って装着された版胴220による印刷を回避することができる。また、装置本体201に装着されている版胴220の種類が表示手段116に表示され、後端検出センサ270からの検出情報に基づき表示手段116の表示状態が制御されるので、誤って装着された版胴による印刷を回避することができる。
両面印刷用マスタが巻着された誤った版胴が装置本体201に装着された場合には印刷スタートキー104が、片面印刷用マスタが巻着されている正規な版胴が装置本体201に装着されている場合には製版スタートキー108がそれぞれ無効にされるので、誤操作による印刷や製版を防止することができる。後端検出センサ270は、ドラム判別終了後にオフ状態(待機状態)とされるので、装置の省電力化を促進することができる。装置本体201に装着される版胴の種類を検出することができるので、両面印刷用の孔版印刷装置1で用いた版胴を片面印刷用の孔版印刷装置200に用いることができ、版胴の共通化を図ることができる。