JP4007667B2 - 糖尿病診断剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖尿病診断剤、詳しくは少なくとも1以上の特定位の炭素が13Cで標識されたアミノ酸を含む糖尿病診断剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病診断の一次スクリーニングに一般的に用いられている検査法は、尿糖検査、空腹時血糖値検査である。これらの検査は簡便で特異度は高いが、感度が低く、軽度の糖尿病患者では陰性となるため 7割以上の患者が見逃されてしまい、糖尿病のスクリーニング検査としては不充分であると考えられている(関川 他、Medical Practice 10:63, 1993)。一方、糖尿病の確定診断に用いられるグルコース負荷テストは、大量のグルコースを採取したことによる副作用、数時間の拘束、度重なる採血が必要で、被験者の身体的負担が大きく、手間もかかるため糖尿病のスクリーニング検査として実施することは実際には不可能である。近年、過去の一定期間の平均血糖値を反映する血中のHbA1Cやフルクトサミン検査が、糖尿病のスクリーニング検査として一部機関で導入されている。しかしながらこれらの検査法も、軽度の糖尿病への感度、特異度が充分とは言えず、また、測定値の施設間差の問題も残されているのが現状である。
【0003】
一方、糖尿病の通院患者の管理、治療効果の判定においては、血糖値、HbA1C、フルクトサミン検査が汎用されている。しかしながら、軽度の糖尿病では空腹時に血糖値が低下してしまうため判定の基準にはならない。また、HbA1Cやフルクトサミン検査は前述の問題点に加えて、結果を次の来院時まで知ることができないため、過去の検査結果をもとに患者への指示を行うことになってしまうという欠点がある。
かかる状況下、糖尿病の診断、糖尿病患者の管理、治療効果の判定のための、軽度の糖尿病患者を対象とした際にも有効な、被験者への負担が小さく、かつ結果が即時に精度よく得られる検査法の開発が望まれるところである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、軽度の糖尿病患者を対象とした際にも有効な、被検者の負担が小さく、正確な検査結果を即時に得ることができる糖尿病診断剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも1以上の特定位の炭素が13Cで標識されたアミノ酸を投与し、呼気CO2 中の13C濃度の増加率を測定することにより糖尿病を正確に診断することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、少なくとも1以上の特定位の炭素が13Cで標識されたアミノ酸を含む糖尿病診断剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の糖尿病診断剤のアミノ酸は、少なくとも1以上の特定位の炭素が13Cで標識されたアミノ酸である。
本発明において使用するアミノ酸とは、好適には脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、含硫アミノ酸、複素環アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸である。また脂肪族アミノ酸とは好適にはグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等が挙げられ、芳香族アミノ酸とは好適にはフェニルアラニン、チロシン等が挙げられ、含硫アミノ酸とは好適にはシステイン、シスチン、メチオニン等が挙げられ、複素環アミノ酸とは好適にはトリプトファン、プロリン、ヒスチジン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。さらに、酸性アミノ酸とは好適にはアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン等が挙げられ、塩基性アミノ酸とは好適にはアルギニン、リジン、オルニチン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
また、上記のアミノ酸は少なくとも1以上の特定位の炭素が標識されたものであればよい。標識される炭素位は限定されない。
13Cは安定同位体であるので放射性同位体と異なり放射線被曝の危険も一切ないので、本剤の安全性に問題はない。
本発明の糖尿病診断剤を用いる検査は、これを被験者に単回投与あるいは持続投与し、投与後の呼気CO2 中の13C濃度の増加を測定する呼気テストにより行う。具体的には、投与後の呼気CO2 中の13C濃度を測定し、投与後一定時間(例えば5分、10分、15分)経過後における呼気CO2 中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))、あるいは投与後一定時間までの呼気CO2 中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))の経時変化(立ち上がりの傾き、傾きの変化、ピークの時間等)のデータから糖尿病の診断を行う。さらに、かかる呼気テストによる評価は、単独でも有用であるが、血糖値、HbA1C値、フルクトサミン値等と組み合わせて総合的に判断することがより好ましい。
【0008】
ここで、呼気CO2 中の13C濃度の測定は、ガスクロマトグラフ−質量分析法(GC-MS)、赤外分光法、質量分析法、光電音響分光法、NMR(核磁気共鳴)法で行うことができる。
本発明の糖尿病診断剤は、上記の少なくとも1以上の特定位の炭素が13Cで標識されたアミノ酸(以下、標識アミノ酸という)を単独で、あるいは賦形剤または担体と混合し、投与経路に応じて経口剤(錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤等)、注射剤などに製剤化される。賦形剤または担体としては、当分野で常套的に使用され、薬剤学的に許容されるものであればよく、その種類及び組成は、投与経路や投与方法によって適宜変更される。例えば、液状担体としては水が用いられる。固体担体としては、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウムなどの有機酸塩などが使用される。注射剤の場合、一般に滅菌水、生理食塩水、各種緩衝液が望ましい。また、凍結乾燥製剤とし経口剤として用いたり、それを投与時に注射用の適当な溶剤、例えば滅菌水、生理食塩水、電解質溶液等の静脈投与用液体に溶解して投与することもできる。
【0009】
製剤中における標識アミノ酸の含量は、製剤の種類により異なるが、通常1〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%である。例えば注射剤の場合には、通常1〜40重量%となるよう標識アミノ酸を添加すればよい。カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉剤の場合は、標識アミノ酸は、約10〜100 重量%、好ましくは50〜100 重量%であり、残部は担体である。
本発明の糖尿病診断剤の投与量は、投与による呼気中の13CO2の増加を確認できる量が必要であり、患者の年齢、体重、検査目的により異なるが、例えば1回当たりの投与量は成人の場合、1〜1000mg/kg 体重程度である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに何ら影響されることはない。
【0010】
【実施例】
本発明に使用する標識アミノ酸の13C標識位置における13C純度は99 %以上である。その他特に明記しない限り特級試薬を用いた。
〔実施例1〕 呼気テストの方法
(1)軽度糖尿病ラットの作成
雄性Sprague-Dawley系(SD)ラットを、日本チャールズリバー社より購入した。新生児ラットについては、保育親とともに購入した。購入したラットは、23±2 ℃、湿度 55±10 %の条件で使用時まで飼育した。
【0011】
新生児期ラットへのストレプトゾトシン(STZ)投与によりインスリン分泌不全タイプの糖尿病を発症させた(細胞工学別冊、医学実験マニュアルシリーズ糖尿病研究ストラテジー 清野進、岡芳和編、秀潤社刊)。生後2日目のラットにSTZを90 mg/kgを皮下投与した。STZは、クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解し、溶解後5分以内に投与が終了するようにした。2日後に心臓より血液を採取しTerumoメディエース(血糖測定セット)を用いて随時血糖値を測定し、275 mg/dl以上の個体を選抜した。これらのラットはSTZ投与5週間後から随時血糖値が上昇を始め、7週間後にはほぼ全てのラットで随時血糖値が高値を示す。しかしながら、空腹時血糖値の上昇は軽度でほぼ正常値を示す。
日本糖尿病学会の基準(1982)によると、空腹時血糖値(静脈全血)120mg/dl以上を糖尿病とみなしている(糖尿病検査マニュアル 繁田幸男監修 南江堂刊)。そこで、空腹時血糖値検査からは糖尿病とみなされない、空腹時血糖値が120mg/dl未満(随時血糖値250mg/dl以上)の上記インスリン分泌不全タイプ糖尿病ラットを、軽度の糖尿病モデルとして使用した。
【0012】
(2)13C-呼気テスト
(1)で作成した糖尿病ラット(8〜10週齢)と健常ラット(8〜10週齢)について、以下の呼気テストを実施した。
(2)-1 静脈内投与
一晩絶食したラットをネンブタール腹腔内投与(50 mg/kg)で麻酔し、手術台に固定した。尾静脈より血液を採取し、Terumoメディエース(血糖測定セット)を用いて血糖値を測定した。頭部に呼気吸引用のキャップを被せ、標識アミノ酸を大腿静脈より所定量投与した。ストロークポンプ [バリアブル・ストロークポンプ VS-500、(株)柴田科学工業] を用いて呼気を約 100 ml/min の速度で吸引し、そのまま13CO2 アナライザー EX-130S [(株)日本分光] のフローセルに導入した。呼気吸引用のキャップとストロークポンプの間にはパーマピュアドライヤー( MD-050-12P、Perma Pure INC. )を設置して呼気中の水蒸気を除去した。
【0013】
13CO2 アナライザーから出力されるデータはAD変換した後パーソナルコンピュータ(Apple Power Macintosh 8500)に取込み、データ処理ソフトウェア Lab VIEW (National Instruments)を用いて 5秒間隔で 100msec毎 10 点のデータを積算平均し、13Catom%、Δ13C(‰)、炭酸ガス濃度(%)に変換することで連続測定 13C−呼気テストを行った。変換したデータはリアルタイムで画面表示した後、ハードディスク中に保存した。呼気テスト中、直腸温をモニターし、小動物用体温コントローラー TR-100 (Fine Science Tools INC.)により、37± 0.5℃に維持した。また、吸引呼気中の炭酸ガス濃度は 3± 0.5 %に維持した。実験終了後、ラットは過剰量のネンブタールを投与し屠殺した。
尚、Δ13C(‰)は各時点の呼気CO2 中の13C濃度(13C tmin)とCO2 標準ガスの13C濃度( 13C std)から下式により算出した。
【0014】
【数1】
Δ13C(‰)={(13C tmin-13C 0min)/13C std}×1000
【0015】
(2)-2 経口投与
一晩絶食したラット(9週齢)を無麻酔のままマイクロ照射装置用ラットホルダー内に固定し、尾静脈より血液を採取し、Terumoメディエース(血糖測定セット)を用いて血糖値を測定した。ストロークポンプ [バリアブル・ストロークポンプ VS-500、(株)柴田科学工業] を用いて呼気を約 100〜300 ml/minの速度で吸引し、そのまま13CO2 アナライザー EX-130S [(株)日本分光] のフローセルに導入した。ラットホルダーとストロークポンプの間にはパーマピュアドライヤー( MD-050-12P、Perma Pure INC. )を設置して呼気中の水蒸気を除去した。炭酸ガス濃度が安定した状態でいったんラットホルダーからラットを出し、標識アミノ酸を、経口投与用ゾンデを用いて胃内に所定量投与した。
【0016】
13CO2 アナライザーから出力されるデータはAD変換した後パーソナルコンピュータ(Apple Power Macintosh 8500)に取込み、データ処理ソフトウェア Lab VIEW (National Instruments)を用いて 5秒間隔で 100msec毎 10 点のデータを積算平均し、13Catom%、Δ13C(‰)、炭酸ガス濃度(%)に変換することで連続測定 13C−呼気テストを行った。変換したデータはリアルタイムで画面表示した後、ハードディスク中に保存した。また、吸引呼気中の炭酸ガス濃度は 3± 0.5 %に維持した。実験終了後、ラットは過剰量のネンブタールを投与し屠殺した。
尚、Δ13C(‰)は上記式により算出した。
【0017】
〔実施例2〕 1-13C-イソロイシン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 80.8±5.5mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 368.7±55.7mg/dl,空腹時血糖値 81.3±6.2mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-イソロイシン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-イソロイシン投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約9分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分までほぼ一定値を示した(図1)。
【0018】
投与後5分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 83.92±5.53‰、健常ラットで 46.98±3.24‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.001 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後2分から5分における傾きは、糖尿病ラットで 56.21±2.09‰/3分、健常ラットで 33.21±2.44‰/3分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.0001 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。 したがって、1-13C-イソロイシン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0019】
〔実施例3〕 1-13C-アラニン呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 79.5±4.5mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 445±20.9mg/dl,空腹時血糖値 100.8±15.0mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-アラニン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より10mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-アラニン投与後約4分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した。(図2)。
【0020】
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 161.35±6.67‰、健常ラットで 132.16±3.53‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.001 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後5分から15分における傾きは、糖尿病ラットで -52.09±19.38 ‰/10分、健常ラットで -18.12±7.28‰/10分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に小さかった。
【0021】
したがって、1-13C-アラニン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0022】
〔実施例4〕 1-13C-ヒスチジン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 73.8±2.3mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 417.7±36.6mg/dl,空腹時血糖値 106.7±5.4mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-ヒスチジン(ICON社より購入)を大腿静脈より30mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-ヒスチジン投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約17分までΔ13C(‰)値は増加を続けたが、その後20分まで徐々に減少した(図3)。
【0023】
投与後15分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 133.57±2.60‰、健常ラットで 81.56±10.84 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後5分から10分における傾きは、糖尿病ラットで 81.60±2.25‰/5分、健常ラットで 35.91±6.47‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.001 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。 したがって、1-13C-ヒスチジン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0024】
〔実施例5〕 1-13C-バリン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 76.5±9.9mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 430±30.5mg/dl,空腹時血糖値 99.8±11.1mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-バリン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-バリン投与後約6分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に増加した(図4)。
投与後5分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 73.54±7.30‰、健常ラットで 45.99±5.62‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
【0025】
また、投与後2分から4分における傾きは、糖尿病ラットで 38.55±3.15‰/2分、健常ラットで 24.17±2.32‰/2分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.001 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。 したがって、1-13C-バリン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0026】
〔実施例6〕 1,2-13C-オルニチン塩酸塩呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 67±5.8mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 411.8±102.5mg/dl,空腹時血糖値 77±5.7mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1,2-13C-オルニチン塩酸塩(ICON社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1,2-13C-オルニチン塩酸塩投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約14分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分までほぼ一定値を示した(図5)。
【0027】
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 155.70±17.99 ‰、健常ラットで 100.71±5.97‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後2分から7分における傾きは、糖尿病ラットで 87.79±12.93 ‰/5分、健常ラットで 53.56±4.72‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。 したがって、1,2-13C-オルニチン塩酸塩投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0028】
〔実施例7〕 1-13C-メチオニン呼気テスト
健常ラット(10週齢,空腹時血糖値 73.3±2.8mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(10週齢,随時血糖値 590.5±9.9mg/dl,空腹時血糖値 84±5.8mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-メチオニン(ICON社より購入)を大腿静脈より40mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-メチオニン投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約10分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図6)。
【0029】
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 216.30±30.02 ‰、健常ラットで 120.31±18.84 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後2分から7分における傾きは、糖尿病ラットで 161.58±24.17 ‰/5分、健常ラットで 88.17±17.04 ‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
したがって、1-13C-メチオニン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0030】
〔実施例8〕 1-13C-アルギニン呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 68.8±6.9mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 419.5±69.3mg/dl,空腹時血糖値 83.3±11.8mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-アルギニン(ICON社より購入)を大腿静脈より50mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-アルギニン投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約12分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図7)。
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 192.40±30.23 ‰、健常ラットで 111.68±14.15 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
【0031】
また、投与後2分から7分における傾きは、糖尿病ラットで 146.90±18.97 ‰/5分、健常ラットで 75.02±10.01 ‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
したがって、1-13C-アルギニン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0032】
〔実施例9〕 1-13C-トリプトファン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 61±1.6mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 487±56.5mg/dl,空腹時血糖値 94.7±10.4mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-トリプトファン(ICON社より購入)を大腿静脈より10mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-トリプトファン投与後20分までΔ13C(‰)値は増加を続けた(図8)。
【0033】
投与後20分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 19.42±4.37‰、健常ラットで 8.10±0.77‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。また、投与後10分から15分における傾きは、糖尿病ラットで 4.46±0.49‰/5分、健常ラットで 1.20±0.93‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
【0034】
したがって、1-13C-トリプトファン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0035】
〔実施例10〕 1-13C-セリン呼気テスト
健常ラット(10週齢,空腹時血糖値 69.8±3.8mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(10週齢,随時血糖値 569±50.3mg/dl,空腹時血糖値 93.3±7.6mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-セリン(ICON社より購入)を大腿静脈より50mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-セリン投与後約8分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分までほぼ一定値を示した。一方、糖尿病ラットでは、投与後約8分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図9)。
【0036】
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 228.08±43.45 ‰、健常ラットで 127.79±10.69 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後1分から4分における傾きは、糖尿病ラットで 158.13±41.24 ‰/4分、健常ラットで 84.17±11.38 ‰/3分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
【0037】
したがって、1-13C-セリン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0038】
〔実施例11〕 1-13C-チロシン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 79.8±3.9mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 442±28.6mg/dl,空腹時血糖値 86.5±7.4mg/dl,n=4)に、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を加え懸濁した1-13C-チロシン(mass Trace社より購入)を60mg/kg経口投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-チロシン投与後30分までΔ13C(‰)値は増加を続けた。一方、糖尿病ラットでは、投与後約20分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後30分まで徐々に減少した(図10)。
【0039】
投与後20分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 205.30±51.43 ‰、健常ラットで 73.96±35.10 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後5分から10分における傾きは、糖尿病ラットで 79.62±19.90 ‰/5分、健常ラットで 27.52±17.10 ‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
したがって、1-13C-チロシン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0040】
〔実施例12〕 1-13C-グルタミン呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 72.8±4.6mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 491mg/dl,空腹時血糖値 88.5mg/dl,n=2)に、生理食塩水に溶解した1-13C-グルタミン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-グルタミン投与後約3分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に増加した。一方、糖尿病ラットでは、投与後約3分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図11)。
【0041】
投与後5分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 168.18 ‰、健常ラットで 107.17±15.42 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後1分から2分における傾きは、糖尿病ラットで 105.59 ‰/分、健常ラットで 69.88±11.51 ‰/分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
したがって、1-13C-グルタミン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0042】
〔実施例13〕 1-13C-リジン塩酸塩呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 71±1.6mg/dl,n=3)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 431±71.7mg/dl,空腹時血糖値 90.3±4.9mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-リジン塩酸塩(mass Trace社より購入)を大腿静脈より50mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-リジン塩酸塩投与後約11分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分までほぼ一定値を示した。一方、糖尿病ラットでは、投与後約10分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図12)。
【0043】
投与後8分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 181.53±23.82 ‰、健常ラットで 96.95±27.48 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後15分から20分における傾きは、糖尿病ラットで -26.64±5.36‰/5分、健常ラットで -4.58±6.91‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に小さかった。
したがって、1-13C-リジン塩酸塩投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0044】
〔実施例14〕 1-13C-グルタミン酸呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 70.8±8.3mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 487.7±38.4mg/dl,空腹時血糖値 108±8.8mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-グルタミン酸(mass Trace社より購入)を大腿静脈より10mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-グルタミン酸投与後約4分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図13)。
【0045】
投与後4分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 170.62±12.18 ‰、健常ラットで 139.95±11.79 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後10分から20分における傾きは、糖尿病ラットで -43.29±3.47‰/10分、健常ラットで -27.97±5.05‰/10分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に小さかった。
したがって、1-13C-グルタミン酸投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0046】
〔実施例15〕 1-13C-プロリン呼気テスト
健常ラット(10週齢,空腹時血糖値 77.6±7.3mg/dl,n=5)および糖尿病ラット(10週齢,随時血糖値 430.3±45.2mg/dl,空腹時血糖値 97.3±12.5mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-プロリン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-プロリン投与後約9分までΔ13C(‰)値は増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図14)。
【0047】
投与後20分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 115.77±6.61‰、健常ラットで 92.27±11.10 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
したがって、1-13C-プロリン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値から、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0048】
〔実施例16〕 1-13C-グリシン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 75.5±5.8mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 410±10.7mg/dl,空腹時血糖値 90±11.9mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-グリシン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラットでは、1-13C-グリシン投与後約5分までΔ13C(‰)値は急激に増加し、約12分までほぼ一定値を示したが、その後20分まで徐々に減少した。一方、糖尿病ラットでは、投与後約5分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図15)。
【0049】
投与後7分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 156.62±10.83 ‰、健常ラットで 119.06±12.19 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
したがって、1-13C-グリシン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値から、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0050】
〔実施例17〕 1-13C-システイン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 74±7.7mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 457±4.3mg/dl,空腹時血糖値 93.7±16.6mg/dl,n=3)に、生理食塩水に溶解した1-13C-システイン(ICON社より購入)を大腿静脈より20mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
投与後2分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 42.87±2.09‰、健常ラットで 78.97±13.98 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に低かった。
【0051】
また、投与後1分から2分における傾きは、糖尿病ラットで 38.50±2.33‰/分、健常ラットで 65.72±10.66 ‰/分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に小さかった。
したがって、1-13C-システイン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0052】
〔実施例18〕 1-13C-ロイシン呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 82.5±4.5mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 399.5mg/dl,空腹時血糖値 85.5mg/dl,n=2)に、生理食塩水に溶解した1-13C-ロイシン(mass Trace社より購入)を大腿静脈より10mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
投与後5分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 52.89±10.83 ‰、健常ラットで 42.56±2.43‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
したがって、1-13C-ロイシン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値から、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0053】
〔実施例19〕 1-13C-アスパラギン酸呼気テスト
健常ラット(8週齢,空腹時血糖値 56.3±6.8mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(8週齢,随時血糖値 389±52.1mg/dl,空腹時血糖値 80.5±6.1mg/dl,n=4)に、生理食塩水に溶解した1-13C-アスパラギン酸(mass Trace社より購入)を大腿静脈より10mg/kg投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1-13C-アスパラギン酸投与後約2分までΔ13C(‰)値は急激に増加したが、その後20分まで徐々に減少した(図16)。
【0054】
投与後3分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 172.66±8.65‰、健常ラットで 126.56±13.45 ‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後3分から8分における傾きは、糖尿病ラットで -53.79±11.42 ‰/5分、健常ラットで -8.13±10.84 ‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に小さかった。
したがって、1-13C-アスパラギン酸投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0055】
〔実施例20〕 1,1-13C-シスチン呼気テスト
健常ラット(9週齢,空腹時血糖値 65.5±6.4mg/dl,n=4)および糖尿病ラット(9週齢,随時血糖値 324.5±7.7mg/dl,空腹時血糖値 81.8±11.5mg/dl,n=4)に、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を加え懸濁した1,1-13C-シスチン(mass Trace社より購入)を45mg/kg経口投与し、実施例1に記載の方法に従って、呼気CO2中の13C濃度の増加率(Δ13C(‰))を測定した。
健常ラット、糖尿病ラット共に、1,1-13C-シスチン投与後30分までΔ13C(‰)値は増加を続けた(図17)。
【0056】
投与後10分のΔ13C(‰)値は、糖尿病ラットで 69.15±6.44‰、健常ラットで 45.26±8.68‰であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、非常に有意( p< 0.01 (ANOVA with Fischer LSD))に高かった。
また、投与後5分から10分における傾きは、糖尿病ラットで 46.82±2.94‰/5分、健常ラットで 30.86±10.06 ‰/5分であり、糖尿病ラットは健常ラットに比べて、有意( p< 0.05 (ANOVA with Fischer LSD))に大きかった。
したがって、1,1-13C-シスチン投与後一定時間後のΔ13C(‰)値、あるいは、投与後のΔ13C(‰)値の増加の傾きから、糖尿病を診断することが可能である。またこの糖尿病の診断は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病に関しても、診断することが可能である。
【0057】
〔製剤例1〕 (注射剤)
1-13C-イソロイシン10重量部に対し、生理食塩水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌濾過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して注射剤を得た。
〔製剤例2〕 (内服液剤)
1-13C-アラニン10重量部に対し、精製水を加え全量を100重量部として、これを溶解後ミリポアフィルターを用いて除菌濾過した。この濾液をバイアル瓶にとり、密封して内服液剤を得た。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、被験者の身体的負担が小さく、正確な検査結果を即時に知ることができ、かつ副作用がなく安全に使用できる糖尿病診断剤が提供される。本発明の糖尿病診断剤は、空腹時に正常血糖値を示す軽度の糖尿病患者をもスクリーニングすることができ、見逃しやすい状況下においても健常人と糖尿病患者の判別が可能である。さらに、糖尿病の通院患者の管理、治療効果の判定に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】1-13C-イソロイシン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図2】1-13C-アラニン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図3】1-13C-ヒスチジン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図4】1-13C-バリン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図5】1,2-13C-オルニチン塩酸塩投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図6】1-13C-メチオニン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図7】1-13C-アルギニン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図8】1-13C-トリプトファン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図9】1-13C-セリン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図10】1-13C-チロシン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図11】1-13C-グルタミン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図12】1-13C-リジン塩酸塩投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図13】1-13C-グルタミン酸投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図14】1-13C-プロリン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図15】1-13C-グリシン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図16】1-13C-アスパラギン酸投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
【図17】1,1-13C-シスチン投与後の呼気中13CO2の増加を示す。
Claims (1)
- 1位の炭素が 13 Cで標識されたイソロイシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、メチオニン、アルギニン、トリプトファン、セリン、チロシン、グルタミン、リジン塩酸塩、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アスパラギン酸、システイン、ロイシン、1,2− 13 C−オルニチン、及び1,1− 13 C−シスチンからなる群から選ばれるアミノ酸を含む糖尿病診断剤。
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