JP4003910B2 - 化粧品用乳化剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧品用乳化剤およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、ケイ素原子に直結する水酸基を2個有する特定のシリル化ペプチドの1種以上と、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じる特定のシラン化合物の1種以上とを縮重合させて得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水系に油性物質を乳化させたり、その逆に疎水性溶媒に親水性物質を乳化させて乳化化粧品を調製する際には、一般に乳化剤として陰イオン性、陽イオン性、両イオン性、非イオン性などの界面活性剤が用いられているが、合成界面活性剤では、皮膚に対する刺激性を有するものが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
それらの中でも非イオン性界面活性剤が最も皮膚刺激性が少ないと言われているが、この非イオン性界面活性剤でも、人によっては刺激を感じるなどの問題もあり、そのため、アシル化アミノ酸、アシル化ペプチド、糖脂肪酸エステルなど、天然由来の原料を用いた界面活性剤の使用(例えば、特開昭63−122611号公報、特開昭59−26130号公報、特開昭63−44509号公報、特開平1−203036号公報など)や、より安全性を重視して蛋白質の加水分解物を乳化剤として利用することも提案されている(例えば、特開昭57−125673号公報、特開昭59−231007号公報など)。
【0004】
しかしながら、アシル化アミノ酸、アシル化ペプチドなどの蛋白質系界面活性剤、糖脂肪酸エステル系界面活性剤、蛋白質の加水分解物は合成界面活性剤に比べると乳化力が劣り、そのため、多価アルコールを併用したり、リン脂質と複合体を形成することによって乳化力を高める試みもなされているが(例えば、特開平6−279254号公報、特公平1−50720号公報、特開平5−70323号公報など)、乳化の対象となる油性物質は多種多様のため、充分な乳化効果が得られない場合がある。
【0005】
また、化粧品に使用する乳化剤としては、単に乳化力のみでなく、使用後の感触や安全性も重視する必要があり、乳化化粧品の処方設計の上で、好適な乳化剤を選択することは難しいため、乳化力が優れ、しかも乳化対象となる油性物質に合わせて好適に対応できる乳化剤が要望されている。
【0006】
従って、本発明は、多量の油性物質を容易に水中油型乳化物に乳化でき、しかも乳化対象となる油性物質に合わせて容易に製造できる化粧品用乳化剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記の一般構造式(I)
【0008】
【化3】
〔式中、R1、R2、R3のうち2個は水酸基で、残りは炭素数1〜3のアルキル基を示し、R4は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R5はR4以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2−、−(CH2)3 −および−(CH2)3 OCH2CH(OH)CH2−よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0〜500、nは0〜500、m+nは1〜500である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されケイ素原子に直結する水酸基を2個有するシリル化ペプチドの1種以上と、下記の一般構造式(III)
R9pSiX(4−p) (III)
〔式中、pは0から2の整数で、R9は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、p個のR9は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表され加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物の1種以上とを水溶液中で縮重合させて得られるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が多量の油性物質を容易に乳化し、しかも該シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を乳化の対象となる油性物質に合った乳化剤として容易に製造できることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、上記一般構造式(I)で表されケイ素原子に直結する水酸基を2個有するシリル化ペプチドとしては、その合成時からケイ素原子に直結する2個の水酸基を有し、上記一般構造式(I)で表される状態で得られるものと、下記の一般構造式(II)
【化4】
〔式中、R6〜R8はそれぞれアルコキシ基、ハロゲン基または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R6〜R8は同一でもよく、それぞれ異なっていてもよいが、R6〜R8のうち2個はアルコキシ基またはハロゲン基であり、R4、R5、A、mおよびnは前記一般構造式(I)に同じである〕
で表されるシラン化合物を加水分解して得られるものとがあり、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般構造式(II)で表されるシラン化合物〔この一般構造式(II)で表されるシラン化合物もシリル化ペプチドの一種である〕は、特開平8−59424号公報、特開平8−67608号公報、特開平7−223921号公報、特開平7−228508号公報などに開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0010】
上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R4は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R5はR4以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0011】
一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、mは0〜500、好ましくは0より大きく200以下(0<m≦200)、より好ましくは0より大きく50以下(0<m≦50)、さらに好ましくは0より大きく10以下(0<m≦10)であり、nは0〜500、好ましくは0より大きく200以下(0<n≦200)、より好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜40であり、m+nは1〜500、好ましくは1〜200、より好ましくは2〜100、さらに好ましくは3〜50である。
【0012】
すなわち、mが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル官能基が増え、ペプチド本来の毛髪への収着作用が減少し、nが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル官能基部分の割合が少なくなって、シリル官能基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、m+nが上記範囲より大きくなると、ペプチドとしての毛髪への収着性や浸透性が低分子量のペプチドに比べて減少する上に、保存中に凝集しやすくなり、保存安定性が低下する。なお、上記のm、nやm+nは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が後述するような加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0013】
上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドに使用されるペプチド類にはアミノ酸、ペプチドなどが含まれ、アミノ酸としては、例えば、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、システイン、システイン酸、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、O−ホスホセリン、シトルリンなどが挙げられる。
【0014】
上記ペプチドとしては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられる。
【0015】
天然ペプチドとしては、例えば、グルタチオン、バシトラシンA、インシュリン、グルカゴン、オキシトシン、バソプレシンなどが挙げられ、合成ペプチドとしては、例えば、ポリグリシン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリセリンなどが挙げられる。
【0016】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変成物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク(蛋白)、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0017】
本発明の乳化剤であるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドの1種以上に、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物の1種以上を縮重合させて得られるが、このように加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物は、前記のように、一般構造式(III)で表されるものであり、この一般構造式(III)で表されるシラン化合物は加水分解によって下記の一般構造式(IV)
R10pSi(OH)qY(4−q−p) (IV)
〔式中、pは0から2の整数で、qは2から4の整数、p+q≦4で、R10は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、p個のR10は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−q−p)個のYはアルコキシ基、水素原子およびシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物になる。なお、上記一般構造式(III)および(IV)におけるp、(4−p)、q、(4−q−p)は下付け文字である。
【0018】
このような一般構造式(III)で表されるシラン化合物の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなど、および、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリコシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤に、蛋白質、アルキル基、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシプロピレンエーテル、アクリル系ポリマー、ポリエステル、樹脂酸、染料、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、アルキルアンモニウム、芳香環などを結合させたものなどが挙げられる。
【0019】
つぎに、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと、一般構造式(III)で表されるシラン化合物との縮重合反応について説明する。
【0020】
上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、まず、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般構造式(III)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記シラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般構造式(IV)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドの水酸基と一般構造式(IV)で表されるシラン化合物の水酸基とが縮重合して共重合組成物が得られる。上記のように、一般構造式(III)で表されるシラン化合物から一般構造式(IV)で表されるシラン化合物への加水分解は、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドとの縮重合時に行われるので、上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物の加水分解を上記縮重合系とは別の系で行う必要はない。
【0021】
また、一般構造式(II)で表されるシラン化合物は、前記のように、加水分解によって一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドになるものであるが、反応に際しては、この一般構造式(II)で表されるシラン化合物を用いる場合は、一般構造式(II)で表されるシラン化合物の水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整すると、シリル基に結合するアルコキシ基やハロゲン基が加水分解を起こして水酸基になり、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドになるので、その後は上記と同様にその中に上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解して一般構造式(IV)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、シリル化ペプチドの水酸基と一般構造式(IV)で表されるシラン化合物の水酸基とが縮重合して共重合組成物が得られる。上記のように、一般構造式(II)で表されるシラン化合物を用いる場合も、その加水分解は酸性側に調整するか、または塩基性側に調整することによって行うことができるので、一般構造式(II)で表されるシラン化合物から一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドへの加水分解も、上記のシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物とを縮重合させるときの反応系と同じ系で行うことができ、別の系で行う必要はない。
【0022】
加水分解反応は、一般にpH2〜3で良好に進行するが、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般構造式(III)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整は該シラン化合物の滴下前のみでよいが、一般構造式(III)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般構造式(III)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを2〜3に保つ必要がある。
【0023】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般構造式(III)で表されるシリル化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物を30分〜2時間かけて滴下し、その後1〜6時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0024】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドや一般構造式(III)で表されるシラン化合物は解離しているので、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合が進み目的とするシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は2〜20時間程度が好ましい。
【0025】
本発明の化粧品用乳化剤を構成するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は上記のように製造されるが、水酸基を2個有するシリル化ペプチドとの反応に際して、水酸基を2個以上生じるシラン化合物の種類や反応量を適宜選択することにより、乳化対象となる油性物質に合った乳化剤を製造することができる。
【0026】
すなわち、例えば、乳化対象となる油性物質が高級脂肪酸のような炭素鎖長が長い場合には、一般構造式(III)で表されるシラン化合物においてR9 に炭素鎖長の長い有機基が結合したシラン化合物、例えば、上記に例示したシラン化合物の中では、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどを使用するとより充分な乳化力が得られる。また、乳化対象となる油性物質が芳香環を含む化合物である場合には、一般構造式(III)で表されるシラン化合物においてR9に芳香環を含む有機基が結合したシラン化合物、例えば、上記に例示したシラン化合物の中では、ジフェニルクロロシラン、フェニルトリメトキシシランなどを用いればよい。
【0027】
また、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物の1種以上との反応に際して、両者の反応比(モル比)を調整することによっても乳化対象となる油性物質に合った乳化剤とすることもできる。すなわち、例えば、乳化対象の油性物質の疎水性が強い場合は、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドに対する一般構造式(III)で表されるシラン化合物の反応比を大きくすることで、より疎水性の強い油性物質を乳化させ得る乳化剤とすることができる。
【0028】
一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物の反応比(上記シラン化合物を2種以上使用する場合はその合計量)は、乳化対象物が一般に乳化化粧品に使用されるシリコーンオイルや高級脂肪酸などの油剤、紫外線吸収剤などの油性物質では、モル比で1:2以上1:300以下、特に1:2以上1:200以下が好ましい。すなわち、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物の反応比が上記範囲以下では、一般に乳化化粧品に使用される油性物質を充分に乳化させる力が得られず、乳化後油層が分離してくるおそれがあり、また、一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般構造式(III)で表されるシラン化合物の反応比が上記範囲以上では反応比に見合う乳化力の増大が認めらないだけでなく、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となり取り扱いが難しくなるおそれがあるからである。しかし、上記のように、油性物質が芳香環を含む紫外線吸収剤のような場合、一般構造式(III)で表されるシラン化合物の一部に芳香環を有するシラン化合物を使用すると上記反応比以下でも容易に乳化が可能となり、上記反応比の範囲は厳密なものではない。
【0029】
上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物はそのままで化粧品用の乳化剤として使用できるが、共重合組成物の末端のシリル基には水酸基が残っているので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集して高分子化するおそれがあるため、さらに加水分解によって水酸基が1個生じるシラン化合物を付加させるのが好ましい。
【0030】
加水分解によって水酸基が1個生じるシラン化合物としては、例えば、下記の一般構造式(V)
R11 3Si Z (V)
〔式中、3個のR11は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR11は同じでもよく、異なっていてもよい。Zは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物が挙げられ、このシラン化合物は加水分解によって下記の一般構造式(VI)
R11 3Si (OH) (VI)
〔式中、3個のR11は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR11は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物になる。
【0031】
このように加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般構造式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルシリルアイオダイド、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0032】
また、上記以外にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0033】
このようなシラン化合物は一般構造式(V)から明らかなように、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般構造式(VI)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集するのを防止する。すなわち、この一般構造式(V)で表されるシラン化合物を加水分解して得られる一般構造式(VI)で表されるシラン化合物を反応させることによって、保存安定性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物にすることができる。
【0034】
ただ、上記一般構造式(V)で表されるシラン化合物において、加水分解によって水酸基を生じる官能基がハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物の縮重合によって得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に上記一般構造式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって反応は進行するが、上記一般構造式(V)で表されるシラン化合物で加水分解によって水酸基を生じる官能基がアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシロキサンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般構造式(VI)で表されるシラン化合物とし、その後、上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと上記一般構造式(III)で表されるシラン化合物の縮重合によって得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に滴下する必要がある。
【0035】
上記一般構造式(I)で表されるシリル化ペプチドと上記一般構造式(III) で表されるシラン化合物の縮重合によって得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般構造式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般構造式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌に1〜6時間程度が好ましい。
【0036】
攪拌終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和し、さらに2〜10時間程度攪拌を続けて反応を完結させることによって、凝集防止処理されたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られ、化粧品の乳化剤として使用に供される。
【0037】
本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤は、一般に水中油型乳化化粧品、特に油性物質を多量に含むクリームや乳液などの水中油型乳化化粧品を調製する際に従来の乳化剤に代えて、あるいは併用して使用されるが、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ただ、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤は、多量の油性物質を少量の水に乳化させる作用は大きいが、多量の水中に少量の油性物質を乳化させる力は弱いため、水が多量に含まれる乳化化粧品には向かない。
【0038】
本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤の使用量としては、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を製造する際のシラン化合物の種類や量および乳化対象の油性物質の種類や量によっても異なるが、化粧品中好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜15重量%である。すなわち、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物よりなる化粧品用乳化剤の使用量が上記範囲より少ない場合は充分な乳化力が得られなくなるおそれがあり、また、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤の使用量が上記範囲より多くなると乳化性には問題はないが、乳化剤を構成するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物において、シリル化ペプチドの割合が多い共重合組成物ではべたつき感を生じるおそれがあり、シラン化合物の割合が多い共重合組成物ではシリコーンオイル感が生じるおそれがある。
【0039】
乳化対象となる油性物質としては、化粧品に使用されるものなら特に制限はなく、例えば、高級脂肪酸類、炭化水素類、エステル油類、動植物油類、ロウ類、高級アルコール類、シリコーン油類、紫外線吸収剤類などが挙げられる。
【0040】
高級脂肪酸類としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、イソステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられ、炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、セレシン、ワセリンなどが挙げられ、エステル油類としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミテン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ステアリン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸−2−ヘキシルデシルなどが挙げられる。
【0041】
動植物油類としては、例えば、オリーブ油、アーモンド油、アボカド油、ナタネ油、ひまし油、パーム油、大豆油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、タラ肝油、鯨油、魚油などが挙げられ、ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カルナバロウなどが挙げられ、高級アルコール類としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、べヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどが挙げられ、シリコーン油類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などが挙げられる。
【0042】
また、紫外線吸収剤類としては、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸の誘導体、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノンの誘導体、パラメトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシルのようなパラメトキシ桂皮酸の誘導体またはそのエステル、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルのようなパラアミノ安息香酸の誘導体またはそのエステル、桂皮酸ベンジルのような桂皮酸の誘導体またはそのエステル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルのようなウロカニン酸またはそのエステルなどが挙げられる。
【0043】
【発明の効果】
本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤は、多量の油性物質を容易に水中油型乳化物に乳化でき、しかも乳化対象となる油性物質に合わせてシラン化合物を適宜選択することにより、各種の油性物質に合わせて好適に対応できる化粧品用乳化剤を容易に提供することができる。
【0044】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて溶液や分散液の濃度を示す%は重量%である。
【0045】
実施例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−ヘキサトリエトキシシラン共重合組成物〔1:60:1(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水270gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約1500)30gと18%塩酸10.5gを入れ、そこへジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)170.6gとヘキシルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)5.3gの混合物を30分かけて滴下した後、55℃で2時間攪拌した。つぎに、攪拌しながら室温まで冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液8.8gを滴下してpHを7に調整し、50℃にして15時間攪拌を続けた。さらに、この反応液を50℃で、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)4.2gを加えて1時間攪拌した後、20%水酸化ナトリウム水溶液7.2gを滴下して50℃で1時間攪拌し、ついで反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌して反応を完結させた。反応後、反応液を減圧濃縮して濃度を調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−ヘキシルトリエトキシシラン共重合組成物の20%水分散液を280g得た。
【0046】
実施例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−ヘキサトリエトキシシラン共重合組成物〔1:30:2(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水270gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約2000)30gと18%塩酸11.5gを入れ、そこへジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)61.4gとヘキシルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)7.6gの混合物を30分かけて滴下した後、55℃で2時間攪拌した。つぎに、攪拌しながら室温まで冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液11.8gを滴下してpHを7に調整し、50℃にして15時間攪拌を続けた。さらに、この反応液を50℃で、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)3.0gを加えて1時間攪拌した後、20%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを滴下して50℃で3時間攪拌し、ついで反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌して反応を完結させた。反応後、反応液を減圧濃縮して濃度を調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−ヘキシルトリエトキシシラン共重合組成物の20%水分散液を270g得た。
【0047】
実施例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン共重合組成物〔1:1:1(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水450gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約1500)50gと18%塩酸18.2gを入れ、そこへジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)5.0gとヘキシルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)9.4gの混合物を30分かけて滴下した後、55℃で2.5時間攪拌した。つぎに、攪拌しながら室温まで冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液17.8gを滴下してpHを7に調整し、室温で15時間攪拌を続けた。さらに、この反応液を室温で、250rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)3.7gを加えた後、直ちに20%水酸化ナトリウム水溶液6.7gを滴下し、室温で3時間攪拌し、反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌して反応を完結させた。反応後、反応液を減圧濃縮して濃度を調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン共重合組成物の20%水分散液を320g得た。
【0048】
実施例4
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン共重合組成物〔1:150(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、あらかじめ水180gとN−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約1500)20gと18%塩酸7.2gを入れ、そこへジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)300.9gを加えた後、55℃で2.5時間攪拌した。つぎに、攪拌しながら室温まで冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液6.5gを滴下してpHを7に調整し、室温で15時間攪拌を続けた。さらに、この反応液を室温で、250rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)3.0gを加えた後、直ちに20%水酸化ナトリウム水溶液5.4gを滴下し、室温で3時間攪拌し、次いで反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌して反応を完結させた。反応後、反応液を減圧濃縮して濃度を調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3'-メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン共重合組成物の20%水分散液を260g得た。
【0049】
実施例5〜7
前記実施例1〜2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を用いて表1に示す組成の乳化クリームを調製し、性状、粘度、保存安定性などを調べた。
【0050】
実施例5は実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とエステル油のイソステアリン酸ヘキシルデシルの乳化クリームであり、実施例6は同じ実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と鉱物油の流動パラフィンとの乳化クリームであって、実施例7は実施例2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と植物油であるオリーブ油との乳化クリームである。
【0051】
【表1】
【0052】
乳化クリームの調製は、いずれも、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水分散液を室温でホモミキサーで5000rpmで攪拌し、その中に油性物質を約10分間かけて滴下し、その後さらに10分間攪拌することによって行った。調製後の乳化組成物の外観を目視で観察し、粒径は顕微鏡で測定し、粘度はブルックフィールド粘度計で25℃、回転数5rpm、測定時間2分で測定した。なお、粒径は、顕微鏡観察で1/4以上を占める粒子の平均粒径であり、粘度はそれぞれ5回の測定の平均値である。
【0053】
さらに各乳化物は室温で1カ月間保存し、1カ月保存後の外観を観察し、粘度を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、実施例5〜7の乳化クリームは、いずれも乳化粒子の大きさがほぼ1μm前後の均一な粒子で構成される乳化クリームであり、液層の分離や不溶物の沈降などはまったく認められなかった。また、実施例5〜7の乳化クリームは、いずれも1カ月室温に保存しても液層の分離や、沈殿の生成などが認められず、また粘度も1カ月保存しても調製直後と大差はなく、保存安定性が優れていた。
【0056】
実施例8〜9
前記実施例3〜4で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を用いて表3に示す組成のローションを調製し、性状、保存安定性などを調べた。
【0057】
実施例8は実施例3で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と油溶性紫外線吸収剤であるメトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシル〔BASFアクチンゲセルシャフト社製、ユビナールMC80N(商品名)〕とのローションであり、実施例9は実施例4で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とシリコーン油のジメチルポリシロキサンとのローションである。
【0058】
【表3】
【0059】
ローションの調製は、いずれも、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水分散液を室温でホモミキサーで5000rpmで攪拌し、その中に油性物質を約10分間かけて滴下してクリーム状物質を得、その中に滅菌イオン交換水を約5分間かけて滴下し、その後さらに10分間攪拌することによって行った。調製後の乳化組成物の外観を目視で観察し、粒径を顕微鏡で測定した。さらに各乳化物は室温で1カ月間保存し、1カ月保存後の外観を観察した。それらの結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、実施例8〜9のローションは、いずれも乳化粒子の大きさがほぼ0.5〜1.5μmと均一な粒子で構成され、液層の分離や不溶物の沈降などはまったく認められなかった。また、実施例8〜9のローションは、いずれも1カ月室温に保存しても液層の分離や沈殿の生成などがまったく認められず、保存安定性が優れていた。
Claims (2)
- 下記の一般構造式(I)
で表されケイ素原子に直結する水酸基を2個有するシリル化ペプチドの1種以上と、下記の一般構造式(III)
R9 pSiX(4−p) (III)
〔式中、pは0から2の整数で、R9は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、p個のR9は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表され加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物の1種以上とを水溶液中で縮重合させて得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなることを特徴とする化粧品用乳化剤。 - 下記の一般構造式(I)
で表されケイ素原子に直結する水酸基を2個有するシリル化ペプチドの1種以上と、下記の一般構造式(III)
R9 pSiX(4−p) (III)
〔式中、pは0から2の整数で、R9は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、p個のR9は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表され加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が2個以上生じるシラン化合物の1種以上とを水溶液中で縮重合させて製造することを特徴とするシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる化粧品用乳化剤の製造方法。
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