JP2004323698A - 粉体処理剤およびそれを用いて処理された疎水化処理粉体、並びに該疎水化処理粉体を含有する化粧料 - Google Patents
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Abstract
【課題】化粧料粉体の表面を容易に改質でき、優れた耐水性、耐皮脂性を付与することができる粉体処理剤、該粉体処理剤で処理した耐水性、耐皮脂性に優れた疎水化処理粉体、および、該疎水化処理粉体を配合した良好な使用感を有し、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】シリル化ペプチドの一種以上とシラン化合物の一種以上とを、反応モル比、シリル化ペプチド:シラン化合物=1:10〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で粉体処理剤を構成し、該粉体処理剤で粉体表面を改質した疎水化処理粉体を含有させて化粧料を構成する。
【選択図】 なし
【解決手段】シリル化ペプチドの一種以上とシラン化合物の一種以上とを、反応モル比、シリル化ペプチド:シラン化合物=1:10〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で粉体処理剤を構成し、該粉体処理剤で粉体表面を改質した疎水化処理粉体を含有させて化粧料を構成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤、該粉体処理剤で表面を疎水化処理した粉体およびこれを含有する化粧料に関し、さらに詳しくは、粉体の表面を良好に改質しうる粉体処理剤、該粉体処理剤で処理された油性原料に分散性が良好で、耐水性、耐皮脂性を有し、しかも良好な使用感を有する疎水化処理粉体、および、その疎水化処理粉体を含有する耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れた化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化粧料に使用される粉体は、粉体の表面を高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、エステル類、オルガノポリシロキサンなどで表面処理し、粉体の表面を改質して、油性原料への分散性を改善すると共に、耐水性、耐皮脂性を向上させることが行われている。最近では粉体処理剤として、メチルハイドロジェンポリシロキサンやフッ素変性シリコーン誘導体などのシリコーン系化合物が多く用いられ(例えば、特許第2719303号公報、特開平7−196946号公報、特開2001−72891号公報、特開2002−363445号公報、特開平8−143424号公報、特開平8−143425号公報、特開平9−2920号公報など)、また、フルオロアルキルリン酸エステルの金属塩で処理した粉体も提案されている(特開平11−335227号公報)。
【0003】
しかしながら、メチルハイドロジェンポリシロキサンによる処理原理は、粉体表面上で少量の水を添加してメチルヒドロキシポリシロキサンにした後、脱水して高分子化することにより粉体表面を改質するが、完全に反応を進行させることが難しく、製品に配合した場合、少量ではあるが、水素を発生する恐れがあり、製品の性質を損なう場合がある。また、フッ素変性シリコーン誘導体やフルオロアルキルリン酸エステルによる処理では、粉体表面の改質はできるが、フッ素変性を行っているため、シリコーンや炭化水素系の油性原料に分散しにくいという問題があり、粉体処理剤として充分に満足できるものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、粉体表面を容易に改質できる粉体処理剤、油性原料への分散性が良好で、優れた耐水性、耐皮脂性を有する疎水化処理粉体、および、良好な使用感を有し、耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式 (I)
【0006】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−、−(CH2 )3 NH−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と、下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比、シリル化ペプチド:シラン化合物=1:10〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物、あるいは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に、さらに下記一般式 (III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を粉体100質量部に対して1〜30質量部使用して粉体を処理すると、油性原料への分散性が良好で、かつ優れた耐水性、耐皮脂性を有する疎水化処理粉体が得られ、該疎水化処理粉体を含有する化粧料は良好な使用感を有し、耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
なお、上記一般式(I)において、x、y、一般式(II)において、m、(4−p−m)は下付け文字である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の粉体処理剤、該粉体処理剤で処理した疎水化処理粉体、該疎水化処理粉体を用いた化粧料に分けて詳細に説明する。
【0009】
〔粉体処理剤〕
本発明の粉体処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できる。すなわち、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0010】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく20以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル官能基が増え、ペプチドの親水性の作用が減少し、yが上記範囲より大きくなるとシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の親水性が増し、粉体表面を充分に改質できないからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0012】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0013】
加水分解ペプチドとしては、例えば、前記のようなコラ−ゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0014】
本発明の粉体処理剤のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0015】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0017】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0018】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を3〜6時間かけて滴下し、その後の攪拌に5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0019】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0020】
シリル化ペプチドとシラン化合物の反応は、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの1種以上と上記一般式(II)で表されるシラン化合物の1種以上を、反応モル比が1:10〜1:100の範囲、好ましくは1:10〜1:85の範囲で縮重合させる。これは、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、粉体を処理しても充分な表面改質ができず、従って油性原料への良好な分散性、優れた耐水性、耐皮脂性が得られず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上では、得られるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなるからである。
【0021】
このようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は濃度を調整することで、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものが、粉体処理剤として用いられるが、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に、さらに加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じた一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させたものも粉体処理剤として使用することができる。
【0022】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基またはハロゲン基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0023】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
また、この他にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0025】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合したり凝集するのを防止する。
【0026】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0027】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシロキサンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0028】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時程度が好ましい。
【0029】
このようにして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体組成物の水酸基に一般式(III)で表されるシラン化合物を付加させたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物においても、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の粉体処理剤として用いられる。
【0030】
本発明の粉末処理剤のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、シリル化ペプチドとシラン化合物の重合が不充分で粉体処理剤としての効果が現れない恐れがあり、粘度が上記範囲以上になると、粘性が高くて粉体の表面処理がしにくくなるからである。
【0031】
本発明の粉体処理剤であるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合体組成物が粉体の疎水化処理能力に優れているのは、粉体表面の水酸基にシリル化ペプチドの親水性基が吸着しやすく、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体が粉体表面を覆い、その後シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体の水酸基との間で脱水縮合するためと思われる。
【0032】
〔疎水化処理粉体〕
本発明の疎水化処理粉体は、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を粉体100質量部に対して1〜30質量部使用し、粉体と本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤を有機溶媒に溶解した溶液に投入し、攪拌混合後、溶媒を除去する方法、粉体と粉体処理剤を混合した後、ボールミル、ジェットミルなどで粉砕混合する方法など公知の方法で粉体表面を処理することで得られる。
【0033】
処理対象となる粉体としては、通常化粧料に配合できるものなら形状、粒径、有機物、無機物などを問わず、いずれの粉体も対象となる。無機粉体の具体例としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、黒雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、群青、紺青、亜鉛華などが挙げられる。
【0034】
有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、セルロースパウダー、赤色202号、赤色204号、橙色203号、黄色204号などの有機顔料、などが挙げられる。
【0035】
本発明の疎水化処理粉体は、各種化粧品に使用することができるが、特にスキンケア製品、メーキャップ製品、制汗剤製品、頭髪製品などの皮膚や毛髪に外用される化粧料原料として好適である。
【0036】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、上記の疎水化処理粉体を含有させることによって構成されるが、対象となる化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、クレンジング剤、パック、オイルリキッド、マッサージ料、洗浄剤、ハンドクリーム、リップクリームなどのスキンケア化粧料、メーキャップ下地、白粉、固形ファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅などのメーキャップ化粧料、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、毛髪セット剤などの毛髪化粧料、日焼け止め乳液、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料、制汗剤などが挙げられる。
【0037】
そして、本発明の疎水化処理粉体の化粧料中の含有量としては、対象となる化粧料によって大きく異なるが、化粧料全量に対して0.1〜99質量%含有させることができる。
【0038】
本発明の化粧料には、本発明の疎水化処理粉体の効果を妨げない範囲で、目的に応じて油性原料、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、消炎剤、ビタミン、ホルモンなどの薬剤、香料、pH調整剤、金属封鎖剤、界面活性剤類、ポリマー類などの通常化粧品に配合される各種成分を含有させることができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤は、容易に各種粉体表面を改質でき、疎水化(改質)された粉体は、油性原料への分散性が良好で、しかも優れた耐水性、耐皮脂性を有し、これを化粧料に含有させると、優れた耐水性、耐皮脂性を有するため化粧崩れがなく、良好な使用感を有している。
【0040】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造例を示す。また、以下の製造例、実施例、比較例などにおいて溶液や分散液の濃度を示す%は質量%である。
【0041】
製造例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:10:10(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液429.2gと18%塩酸16.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)74.2gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)138.3gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液56.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに、60℃で1時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を221g得た。
【0042】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数6回転で測定したところ、粘度は15,153mPa・sであった。
【0043】
製造例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:35:15(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸10.7gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)138.4gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)107.7gの混液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に16時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液38.4gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに、60℃で1時間攪拌し、次いで反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を180g得た。
【0044】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は712mPa・sであった。
【0045】
製造例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液10.2gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで20%水酸化ナトリウム水溶液19.7gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0046】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例2と同じ条件で測定したところ、粘度は2120mPa・sであった。
【0047】
製造例4
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン (信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0048】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例2と同じ条件で測定したところ、粘度は1116mPa・sであった。
【0049】
実施例1(疎水化処理タルクの製造)
製造例1で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物3.6gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液を攪拌しながら精製水100gにタルク45gを分散させた懸濁液を滴下して混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理タルクを44g得た。
【0050】
得られた疎水化処理タルクは、デカメチルシクロペンタシロキサンに容易に分散した。
【0051】
実施例2(疎水化処理酸化チタンの製造)
製造例2で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物3.3gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液を攪拌しながら精製水100gに酸化チタン45gを分散させた懸濁液を滴下して混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理酸化チタンを42g得た。
【0052】
得られた疎水化処理酸化チタンは、デカメチルシクロペンタシロキサンに非常によく分散し、これを光学顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、疎水化処理していない酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させたもの(図2)に比べて、分散状態が良好であることが確認できた。
【0053】
実施例3(疎水化処理酸化チタンの製造)
製造例3で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物1.5gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液に酸化チタン100gを添加し混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理酸化チタンを47g得た。
【0054】
得られた疎水化処理酸化チタンは、デカメチルシクロペンタシロキサンに容易にかつよく分散した。
【0055】
実施例4および比較例1
表1に示す組成の2種類の固形ファンデーションを調製し、使用感および化粧崩れの有無を評価した。実施例4では、実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理したタルクを使用し、比較例1では、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理したタルクを用いている。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例4および比較例1の固形ファンデーションを専門のパネラーにて評価を行った。評価の方法は、それぞれの固形ファンデーションを左右の頬に塗布し、塗布時の伸び、塗布後のしっとり感についてどちらの固形ファンデーションが優れているか、あるいは両者に差がないかを比較評価させた。さらに、塗布後5時間後の塗布膜の状態を目視によって観察し、塗布膜のむらあるいは塗布膜の喪失が認められた場合を”化粧崩れあり”とし、化粧崩れの有無を評価した。
【0058】
表2に塗布時の伸び、塗布後のしっとり感についての評価を、実施例4が優れていると答えた人数、比較例1が優れていると答えた人数、両者に差はないと答えた人数で示し、表3に化粧崩れの有無の評価を、化粧崩れありと答えた人数で示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表2および表3に示す結果から、実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理したタルクを含有する実施例4の固形ファンデーションは、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理したタルクを含有する固形ファンデーションに比べて、塗布時の伸び、塗布後のしっとり感に優れ、化粧崩れが起きにくいことが明らかであった。
【0062】
実施例5および比較例2
表4に示す組成の2種類のサンスクリーン化粧料を調製し、耐水性および保存安定性を評価した。実施例5では、実施例2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理した酸化チタンを用い、比較例2では、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理した微粒子酸化チタンを用いている。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料の耐水性は以下のように評価した。すなわち、7.5cm×2.5cmのガラス板にサージカルテープ〔米国スリーエム社製TRANSPORE TAPE(商品名)〕を貼ったものを2枚用意し、精密天秤でそれぞれの重量を測り、それぞれのガラス板に実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料をそれぞれ40mgずつ精密に秤取した。そして、指サックをはめた指でサンスクリーン化粧料を1分間塗り伸ばした後、15分間自然乾燥し、重量を精密天秤で秤量し、サージカルテープを貼ったガラス板の重量を差し引いてサンスクリーン化粧料の塗布量を算出した。つぎに、このガラス板を25℃の精製水中に浸漬し、振幅1.5cm、振盪220回/分の条件下で30分間振盪し、その後、温度25℃、湿度50%の環境下に24時間放置して完全に乾燥させ、精密天秤にて秤量し、水中での振盪処理前後のサンスクリーン化粧料の重量から残存率を算出した。この耐水性試験は、実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料についてそれぞれ2回行い、その平均値をそれぞれのサンスクリーン化粧料の残存率とした。
【0065】
また、実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料の保存安定性の試験は以下のように行った。すなわち、それぞれのサンスクリーン化粧料を50℃の恒温槽中で1週間静置保存し、外観を目視によって凝集や相分離がないかを観察した。また、それぞれのサンスクリーン化粧料の粘度を調製翌日と調製1週間後にB型粘度計を用いて25℃で、ロータ4、回転数30回転、測定時間1分間で3回測定した。
【0066】
これらの結果を表5に示すが、耐水性評価試験のサンスクリーン化粧料の残存率は2回の平均値であり、粘度の値は3回の平均値である。
【0067】
【表5】
【0068】
表5に示す結果から、実施例2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理した酸化チタンを含有する実施例5のサンスクリーン化粧料は、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理した微粒子酸化チタンを含有するサンスクリーン化粧料に比べて、耐水性に優れ、経時安定性にも優れてることが明らかであった。
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の疎水化処理酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた分散液の光学顕微鏡写真である(倍率;1000倍)。
【図2】未処理の酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた分散液の光学顕微鏡写真である(倍率;1000倍)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤、該粉体処理剤で表面を疎水化処理した粉体およびこれを含有する化粧料に関し、さらに詳しくは、粉体の表面を良好に改質しうる粉体処理剤、該粉体処理剤で処理された油性原料に分散性が良好で、耐水性、耐皮脂性を有し、しかも良好な使用感を有する疎水化処理粉体、および、その疎水化処理粉体を含有する耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れた化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、化粧料に使用される粉体は、粉体の表面を高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、エステル類、オルガノポリシロキサンなどで表面処理し、粉体の表面を改質して、油性原料への分散性を改善すると共に、耐水性、耐皮脂性を向上させることが行われている。最近では粉体処理剤として、メチルハイドロジェンポリシロキサンやフッ素変性シリコーン誘導体などのシリコーン系化合物が多く用いられ(例えば、特許第2719303号公報、特開平7−196946号公報、特開2001−72891号公報、特開2002−363445号公報、特開平8−143424号公報、特開平8−143425号公報、特開平9−2920号公報など)、また、フルオロアルキルリン酸エステルの金属塩で処理した粉体も提案されている(特開平11−335227号公報)。
【0003】
しかしながら、メチルハイドロジェンポリシロキサンによる処理原理は、粉体表面上で少量の水を添加してメチルヒドロキシポリシロキサンにした後、脱水して高分子化することにより粉体表面を改質するが、完全に反応を進行させることが難しく、製品に配合した場合、少量ではあるが、水素を発生する恐れがあり、製品の性質を損なう場合がある。また、フッ素変性シリコーン誘導体やフルオロアルキルリン酸エステルによる処理では、粉体表面の改質はできるが、フッ素変性を行っているため、シリコーンや炭化水素系の油性原料に分散しにくいという問題があり、粉体処理剤として充分に満足できるものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、粉体表面を容易に改質できる粉体処理剤、油性原料への分散性が良好で、優れた耐水性、耐皮脂性を有する疎水化処理粉体、および、良好な使用感を有し、耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式 (I)
【0006】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−、−(CH2 )3 NH−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と、下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比、シリル化ペプチド:シラン化合物=1:10〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物、あるいは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に、さらに下記一般式 (III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を粉体100質量部に対して1〜30質量部使用して粉体を処理すると、油性原料への分散性が良好で、かつ優れた耐水性、耐皮脂性を有する疎水化処理粉体が得られ、該疎水化処理粉体を含有する化粧料は良好な使用感を有し、耐水性、耐皮脂性に優れ、化粧崩れがなく、かつ経時安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
なお、上記一般式(I)において、x、y、一般式(II)において、m、(4−p−m)は下付け文字である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の粉体処理剤、該粉体処理剤で処理した疎水化処理粉体、該疎水化処理粉体を用いた化粧料に分けて詳細に説明する。
【0009】
〔粉体処理剤〕
本発明の粉体処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できる。すなわち、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0010】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく20以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル官能基が増え、ペプチドの親水性の作用が減少し、yが上記範囲より大きくなるとシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の親水性が増し、粉体表面を充分に改質できないからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0012】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0013】
加水分解ペプチドとしては、例えば、前記のようなコラ−ゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0014】
本発明の粉体処理剤のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0015】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0017】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0018】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を3〜6時間かけて滴下し、その後の攪拌に5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0019】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0020】
シリル化ペプチドとシラン化合物の反応は、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの1種以上と上記一般式(II)で表されるシラン化合物の1種以上を、反応モル比が1:10〜1:100の範囲、好ましくは1:10〜1:85の範囲で縮重合させる。これは、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、粉体を処理しても充分な表面改質ができず、従って油性原料への良好な分散性、優れた耐水性、耐皮脂性が得られず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上では、得られるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなるからである。
【0021】
このようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は濃度を調整することで、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものが、粉体処理剤として用いられるが、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に、さらに加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じた一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させたものも粉体処理剤として使用することができる。
【0022】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基またはハロゲン基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0023】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
また、この他にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0025】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合したり凝集するのを防止する。
【0026】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0027】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシロキサンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0028】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時程度が好ましい。
【0029】
このようにして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体組成物の水酸基に一般式(III)で表されるシラン化合物を付加させたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物においても、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の粉体処理剤として用いられる。
【0030】
本発明の粉末処理剤のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、シリル化ペプチドとシラン化合物の重合が不充分で粉体処理剤としての効果が現れない恐れがあり、粘度が上記範囲以上になると、粘性が高くて粉体の表面処理がしにくくなるからである。
【0031】
本発明の粉体処理剤であるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合体組成物が粉体の疎水化処理能力に優れているのは、粉体表面の水酸基にシリル化ペプチドの親水性基が吸着しやすく、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体が粉体表面を覆い、その後シリル化ペプチド−シラン化合物共重合体の水酸基との間で脱水縮合するためと思われる。
【0032】
〔疎水化処理粉体〕
本発明の疎水化処理粉体は、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を粉体100質量部に対して1〜30質量部使用し、粉体と本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤を有機溶媒に溶解した溶液に投入し、攪拌混合後、溶媒を除去する方法、粉体と粉体処理剤を混合した後、ボールミル、ジェットミルなどで粉砕混合する方法など公知の方法で粉体表面を処理することで得られる。
【0033】
処理対象となる粉体としては、通常化粧料に配合できるものなら形状、粒径、有機物、無機物などを問わず、いずれの粉体も対象となる。無機粉体の具体例としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、黒雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、群青、紺青、亜鉛華などが挙げられる。
【0034】
有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、セルロースパウダー、赤色202号、赤色204号、橙色203号、黄色204号などの有機顔料、などが挙げられる。
【0035】
本発明の疎水化処理粉体は、各種化粧品に使用することができるが、特にスキンケア製品、メーキャップ製品、制汗剤製品、頭髪製品などの皮膚や毛髪に外用される化粧料原料として好適である。
【0036】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、上記の疎水化処理粉体を含有させることによって構成されるが、対象となる化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、クレンジング剤、パック、オイルリキッド、マッサージ料、洗浄剤、ハンドクリーム、リップクリームなどのスキンケア化粧料、メーキャップ下地、白粉、固形ファンデーション、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅などのメーキャップ化粧料、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、毛髪セット剤などの毛髪化粧料、日焼け止め乳液、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料、制汗剤などが挙げられる。
【0037】
そして、本発明の疎水化処理粉体の化粧料中の含有量としては、対象となる化粧料によって大きく異なるが、化粧料全量に対して0.1〜99質量%含有させることができる。
【0038】
本発明の化粧料には、本発明の疎水化処理粉体の効果を妨げない範囲で、目的に応じて油性原料、保湿剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、消炎剤、ビタミン、ホルモンなどの薬剤、香料、pH調整剤、金属封鎖剤、界面活性剤類、ポリマー類などの通常化粧品に配合される各種成分を含有させることができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤は、容易に各種粉体表面を改質でき、疎水化(改質)された粉体は、油性原料への分散性が良好で、しかも優れた耐水性、耐皮脂性を有し、これを化粧料に含有させると、優れた耐水性、耐皮脂性を有するため化粧崩れがなく、良好な使用感を有している。
【0040】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造例を示す。また、以下の製造例、実施例、比較例などにおいて溶液や分散液の濃度を示す%は質量%である。
【0041】
製造例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:10:10(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液429.2gと18%塩酸16.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)74.2gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)138.3gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液56.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに、60℃で1時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を221g得た。
【0042】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数6回転で測定したところ、粘度は15,153mPa・sであった。
【0043】
製造例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:35:15(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸10.7gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)138.4gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)107.7gの混液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に16時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液38.4gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに、60℃で1時間攪拌し、次いで反応液の温度を80℃に上げて1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を180g得た。
【0044】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は712mPa・sであった。
【0045】
製造例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら20%水酸化ナトリウム水溶液10.2gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで20%水酸化ナトリウム水溶液19.7gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0046】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例2と同じ条件で測定したところ、粘度は2120mPa・sであった。
【0047】
製造例4
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン (信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0048】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例2と同じ条件で測定したところ、粘度は1116mPa・sであった。
【0049】
実施例1(疎水化処理タルクの製造)
製造例1で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物3.6gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液を攪拌しながら精製水100gにタルク45gを分散させた懸濁液を滴下して混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理タルクを44g得た。
【0050】
得られた疎水化処理タルクは、デカメチルシクロペンタシロキサンに容易に分散した。
【0051】
実施例2(疎水化処理酸化チタンの製造)
製造例2で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物3.3gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液を攪拌しながら精製水100gに酸化チタン45gを分散させた懸濁液を滴下して混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理酸化チタンを42g得た。
【0052】
得られた疎水化処理酸化チタンは、デカメチルシクロペンタシロキサンに非常によく分散し、これを光学顕微鏡で観察したところ、図1に示すように、疎水化処理していない酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させたもの(図2)に比べて、分散状態が良好であることが確認できた。
【0053】
実施例3(疎水化処理酸化チタンの製造)
製造例3で得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物1.5gをデカメチルシクロペンタシロキサン50gに溶解し、この溶液に酸化チタン100gを添加し混合した。次いで、この混合液を減圧乾固し、さらにブレンダーにて粉砕し、疎水化処理酸化チタンを47g得た。
【0054】
得られた疎水化処理酸化チタンは、デカメチルシクロペンタシロキサンに容易にかつよく分散した。
【0055】
実施例4および比較例1
表1に示す組成の2種類の固形ファンデーションを調製し、使用感および化粧崩れの有無を評価した。実施例4では、実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理したタルクを使用し、比較例1では、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理したタルクを用いている。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例4および比較例1の固形ファンデーションを専門のパネラーにて評価を行った。評価の方法は、それぞれの固形ファンデーションを左右の頬に塗布し、塗布時の伸び、塗布後のしっとり感についてどちらの固形ファンデーションが優れているか、あるいは両者に差がないかを比較評価させた。さらに、塗布後5時間後の塗布膜の状態を目視によって観察し、塗布膜のむらあるいは塗布膜の喪失が認められた場合を”化粧崩れあり”とし、化粧崩れの有無を評価した。
【0058】
表2に塗布時の伸び、塗布後のしっとり感についての評価を、実施例4が優れていると答えた人数、比較例1が優れていると答えた人数、両者に差はないと答えた人数で示し、表3に化粧崩れの有無の評価を、化粧崩れありと答えた人数で示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表2および表3に示す結果から、実施例1で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理したタルクを含有する実施例4の固形ファンデーションは、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理したタルクを含有する固形ファンデーションに比べて、塗布時の伸び、塗布後のしっとり感に優れ、化粧崩れが起きにくいことが明らかであった。
【0062】
実施例5および比較例2
表4に示す組成の2種類のサンスクリーン化粧料を調製し、耐水性および保存安定性を評価した。実施例5では、実施例2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理した酸化チタンを用い、比較例2では、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理後に加熱処理した微粒子酸化チタンを用いている。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料の耐水性は以下のように評価した。すなわち、7.5cm×2.5cmのガラス板にサージカルテープ〔米国スリーエム社製TRANSPORE TAPE(商品名)〕を貼ったものを2枚用意し、精密天秤でそれぞれの重量を測り、それぞれのガラス板に実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料をそれぞれ40mgずつ精密に秤取した。そして、指サックをはめた指でサンスクリーン化粧料を1分間塗り伸ばした後、15分間自然乾燥し、重量を精密天秤で秤量し、サージカルテープを貼ったガラス板の重量を差し引いてサンスクリーン化粧料の塗布量を算出した。つぎに、このガラス板を25℃の精製水中に浸漬し、振幅1.5cm、振盪220回/分の条件下で30分間振盪し、その後、温度25℃、湿度50%の環境下に24時間放置して完全に乾燥させ、精密天秤にて秤量し、水中での振盪処理前後のサンスクリーン化粧料の重量から残存率を算出した。この耐水性試験は、実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料についてそれぞれ2回行い、その平均値をそれぞれのサンスクリーン化粧料の残存率とした。
【0065】
また、実施例5および比較例2のサンスクリーン化粧料の保存安定性の試験は以下のように行った。すなわち、それぞれのサンスクリーン化粧料を50℃の恒温槽中で1週間静置保存し、外観を目視によって凝集や相分離がないかを観察した。また、それぞれのサンスクリーン化粧料の粘度を調製翌日と調製1週間後にB型粘度計を用いて25℃で、ロータ4、回転数30回転、測定時間1分間で3回測定した。
【0066】
これらの結果を表5に示すが、耐水性評価試験のサンスクリーン化粧料の残存率は2回の平均値であり、粘度の値は3回の平均値である。
【0067】
【表5】
【0068】
表5に示す結果から、実施例2で製造したシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物で疎水化処理した酸化チタンを含有する実施例5のサンスクリーン化粧料は、メチルハイドロジェンポリシロキサンで被覆処理した微粒子酸化チタンを含有するサンスクリーン化粧料に比べて、耐水性に優れ、経時安定性にも優れてることが明らかであった。
【0069】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2の疎水化処理酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた分散液の光学顕微鏡写真である(倍率;1000倍)。
【図2】未処理の酸化チタンをデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた分散液の光学顕微鏡写真である(倍率;1000倍)。
Claims (4)
- 下記一般式(I)
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:10〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤。 - 請求項1記載のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に、さらに下記一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物からなる粉体処理剤。 - 請求項1および/または請求項2に記載のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を粉体100質量部に対して1〜30質量部使用し、粉体を処理してなることを特徴とする疎水化処理粉体。
- 請求項3記載の疎水化処理粉体を含有することを特徴とする化粧料。
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2003
- 2003-04-25 JP JP2003121084A patent/JP2004323698A/ja active Pending
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