JP2004339077A - 皮膚化粧料 - Google Patents
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Abstract
【課題】皮膚への伸展性、親和性に優れ、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れた皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシリル化ペプチドと、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を2個以上生じるシラン化合物を縮重合させた後、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を1個生じるシラン化合物を反応させて得られる、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて皮膚化粧料を構成する。シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の皮膚化粧料中の含有量が0.01〜10質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシリル化ペプチドと、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を2個以上生じるシラン化合物を縮重合させた後、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を1個生じるシラン化合物を反応させて得られる、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて皮膚化粧料を構成する。シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の皮膚化粧料中の含有量が0.01〜10質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳液、クリームなどの皮膚化粧料に関し、さらに詳しくは、皮膚への伸展性、親和性に優れ、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れた皮膚化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、皮膚化粧料では、皮膚になめらかさや潤い感(保湿性)を付与するためにコラーゲン、ケラチン、絹、ミルク、大豆、小麦などの天然物由来のタンパク質を加水分解した加水分解ペプチドを配合することが行われている(例えば特公昭61−2046号公報、特開平4−1118号公報、特開平8−198725号公報、特開2002−241257号公報など)。しかしながら、加水分解ペプチドは、皮膚に潤い感を付与する効果に優れるものの、多量に配合するとべたつきを生じやすく、その効果を充分に発現する量を配合しにくいという問題があった。
【0003】
また、皮膚になめらかさや撥水性を付与したり、塗布時の伸展性を向上させる目的から、高分子シリコーンやシリコーン誘導体を皮膚化粧料に配合することも行われているが(例えば、特開平5−262618号公報、特開平6−72853号公報など)、高分子シリコーンは、皮膚になめらか感を付与するが保湿性の付与作用はなく、しかも多量に使用すると油性感を生じるという問題があった。
【0004】
そのため、加水分解ペプチドとシリコーン類を同時に皮膚化粧料に配合することも試みられているが、加水分解ペプチドは本来親水性であり、高分子シリコーン類は疎水性のものが多く、皮膚に塗布した際に、加水分解ペプチドが付着した部分にはシリコーン類は付きにくく、シリコーン皮膜が生じた部分には加水分解ペプチド類は吸着しにくく、両者の効果を同時に発揮させるのは難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有し、なめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与できる皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記の一般式(I)
【0007】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記の一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記の一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて乳液、クリームなどの皮膚化粧料を調製するときは、皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有し、なめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できるが、具体的に示すと下記の通りである。
【0009】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0010】
上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく10以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル基が増え、ペプチド本来の皮膚や毛髪への収着作用が減少し、yが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル基部分の割合が少なくなってシリル基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、x+yが上記範囲より大きくなるとペプチドとしての皮膚や毛髪への収着性や浸透性が低分子ペプチドに比べて減少するからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0012】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0013】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0014】
本発明の油中水型乳化化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記の一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0015】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0017】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0018】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を2〜6時間かけて滴下し、その後5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0019】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0020】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記一般式(I)で示されるシリル化ペプチドの一種以上と上記一般式 (II)で示されるシラン化合物の一種以上を、反応モル比で1:1〜1:100の範囲、より好ましくは1:1〜1:85の範囲で縮重合させる。
【0021】
すなわち、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、十分な乳化能が得られず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上になると、シリコーン油感を生じ、さらに、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなる恐れがあるからである。
【0022】
つぎに、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、末端のシリル基に水酸基が残っているため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集して高分子化する恐れがあり、さらに、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる上記一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させる。
【0023】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記の一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0024】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
また、このほかにも、ヘキサメチルジシラザンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0026】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合するのを防止する。すなわち、この一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させることによって、保存安定性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物にすることができる。
【0027】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0028】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシラザンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0029】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時程度が好ましい。
【0030】
攪拌終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和し、さらに1〜10時間程度攪拌を続けて反応を完結させることによって、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られ、pHや濃度を調整後、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の皮膚化粧料に用いられる。
【0031】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、重合が不充分で、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果を発揮できないおそれがあり、粘度が上記範囲以上になると、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に流動性がなくなり、取り扱いにくくなるからである。
【0032】
本発明の皮膚化粧料は、乳液、ハンドクリーム、マッサージクリームなどを対象とし、これらの皮膚化粧料に、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成される。
【0033】
そして、本発明の皮膚化粧料中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量(皮膚化粧料への配合量)としては、皮膚化粧料中0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。というのは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は水に難溶性であり、日々の使用で蓄積性があるため、含有量が上記範囲以上になると皮膚がべたついたりする恐れがあり、逆にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が上記範囲以下では皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果を発揮できない恐れがあるためである。そして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の皮膚化粧料は、上記のように従来の皮膚化粧料に、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0035】
そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやその誘導体、湿潤剤、低級アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚への伸展性、親和性に優れ、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れる。
【0037】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造方法を参考例として示す。以下の参考例、実施例、比較例中における各成分の配合量などはいずれも質量部によるものであり、%は質量%を表す。また、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。
【0038】
参考例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液40.8gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで5%水酸化ナトリウム水溶液78.8gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0039】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は2,120mPa・sであった。
【0040】
参考例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃でさらに15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0041】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、参考例1と同じ条件で測定したところ、粘度は1,116mPa・sであった。
【0042】
参考例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:40:40(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク (加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液127.3gと18%塩酸4.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)88.0gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)164.0gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液17.1gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)6.4gを滴下し、60℃で1時間攪拌した。ついで攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液45.7gを徐々に滴下してpHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を209g得た。
【0043】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は640mPa・sであった。
【0044】
実施例1および比較例1
表1に示す組成の2種類のハンドクリームを調製し、それぞれの保湿性を評価した。実施例1では参考例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例1は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を用いていない。
【0045】
【表1】
【0046】
表1中、*1はセピック社のシマルゲルEG(商品名)である。
【0047】
上記実施例1および比較例1のハンドクリームを用いて、皮膚に塗布した際の保湿性を下記の方法で測定した。
【0048】
〔保湿性の試験方法〕
気温23℃、湿度47%の室内で30分間安静を保った被験者の、前腕内側部の角層水分量をアイ・ビイ・エス(株)製のSKICON−200EX(商品名)でスキンコンダクタンス(μS)として測定し、試験開始前の値とした。つぎに、3cm平方の部位に試験試料のハンドクリームを0.2ml塗布し、3分後に角層水分量を測定してこの値を試験開始時(0分)の値とした。続いて経時的に130分まで角層水分量を測定した。測定ポイントは各時間毎に5ポイントとし、その平均値を角層水分量とした。
【0049】
上記実施例1および比較例1のハンドクリームを塗布した皮膚のスキンコンダクタンス(μS)の経時変化を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、参考例1のN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を含有する実施例1のハンドクリームを塗布した皮膚は、試験開始時(0分)のスキンコンダクタンスの値が高く、9分後に値は低くなりその後ほぼ一定の値となったが、試験開始前(47.0)に比べると高い値を保ち続けた。一方、比較例1のハンドクリームを塗布した皮膚は、試験開始時(0分)のスキンコンダクタンスの値は高いが、4分後には試験開始前とほぼ同じ値にまで減少し、その後は値はほとんど変動しなかった。この結果より、実施例1のハンドクリームに含有させたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物であるN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、皮膚の角層の保湿性を高めることが明らかであった。
【0052】
実施例2および比較例2〜3
表3に示す組成の3種類のマッサージクリームを調製し、塗布時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感について評価した。
【0053】
実施例2は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として参考例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例2は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例3はシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどを用いていない。
【0054】
【表3】
【0055】
表3中、*2は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3749 (商品名)、*3はセピック社のモンタノブ68(商品名)、*4はセピック社のモンタノブ202(商品名)、*5は成和化成(株)製のプロモイスWU−32R(商品名)、*6は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0056】
上記実施例2および比較例2〜3のマッサージクリームについて、手に塗布している時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感をパネラー10名に下記の評価基準で評価させた。
【0057】
評価基準
強く感じる ;3点
感じる ;2点
ほとんど感じない;1点
全く感じない ;0点
【0058】
パネラーによる官能評価結果を表4に10人の平均値で示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表4に示すように、実施例2のマッサージクリームは、シリル化ペプチド−シラン化合物やシリコーン類などを配合していない比較例3のハンドクリームはもちろん、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を含有する比較例2のマッサージクリームに比べても、塗付時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感のいずれの評価項目においても評価値が高かった。この結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、シリコーンのポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体より肌へのなじみが良く、肌へ潤い感、やわらかさ、さらさら感を与える効果が優れていることが明らかであった。
【0061】
実施例3および比較例4
表5に示す組成の2種類の乳液を調製し、塗付時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、塗布後の肌の潤い感、さらさら感を評価した。
【0062】
実施例3は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として参考例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例4は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ジメチルポリシロキサンを用いている。
【0063】
【表5】
【0064】
表5中、*7は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH200C 10cs(商品名)、*8は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH245(商品名)、*9はグッドリッチ社のCARBOPOL980(商品名)、*10は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0065】
上記実施例3および比較例4の乳液を肌に塗布している時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感を10名のパネラーに実施例2と同じ評価基準で評価させた。その結果を表6に10人の平均値で示す。
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示す結果から明らかなように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有する実施例3の乳液は、ジメチルポリシロキサンを含有する比較例4の乳液に比べて、いずれの評価項目においても評価値が高く、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、皮膚への伸展性(ぬり広げやすさ)、親和性(肌へのなじみ)に優れ、皮膚に潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れていた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳液、クリームなどの皮膚化粧料に関し、さらに詳しくは、皮膚への伸展性、親和性に優れ、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れた皮膚化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、皮膚化粧料では、皮膚になめらかさや潤い感(保湿性)を付与するためにコラーゲン、ケラチン、絹、ミルク、大豆、小麦などの天然物由来のタンパク質を加水分解した加水分解ペプチドを配合することが行われている(例えば特公昭61−2046号公報、特開平4−1118号公報、特開平8−198725号公報、特開2002−241257号公報など)。しかしながら、加水分解ペプチドは、皮膚に潤い感を付与する効果に優れるものの、多量に配合するとべたつきを生じやすく、その効果を充分に発現する量を配合しにくいという問題があった。
【0003】
また、皮膚になめらかさや撥水性を付与したり、塗布時の伸展性を向上させる目的から、高分子シリコーンやシリコーン誘導体を皮膚化粧料に配合することも行われているが(例えば、特開平5−262618号公報、特開平6−72853号公報など)、高分子シリコーンは、皮膚になめらか感を付与するが保湿性の付与作用はなく、しかも多量に使用すると油性感を生じるという問題があった。
【0004】
そのため、加水分解ペプチドとシリコーン類を同時に皮膚化粧料に配合することも試みられているが、加水分解ペプチドは本来親水性であり、高分子シリコーン類は疎水性のものが多く、皮膚に塗布した際に、加水分解ペプチドが付着した部分にはシリコーン類は付きにくく、シリコーン皮膜が生じた部分には加水分解ペプチド類は吸着しにくく、両者の効果を同時に発揮させるのは難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有し、なめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与できる皮膚化粧料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記の一般式(I)
【0007】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記の一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記の一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて乳液、クリームなどの皮膚化粧料を調製するときは、皮膚に対して優れた親和性、伸展性を有し、なめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できるが、具体的に示すと下記の通りである。
【0009】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0010】
上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0011】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく10以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル基が増え、ペプチド本来の皮膚や毛髪への収着作用が減少し、yが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル基部分の割合が少なくなってシリル基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、x+yが上記範囲より大きくなるとペプチドとしての皮膚や毛髪への収着性や浸透性が低分子ペプチドに比べて減少するからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0012】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0013】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0014】
本発明の油中水型乳化化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記の一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0015】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0017】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0018】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を2〜6時間かけて滴下し、その後5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0019】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0020】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記一般式(I)で示されるシリル化ペプチドの一種以上と上記一般式 (II)で示されるシラン化合物の一種以上を、反応モル比で1:1〜1:100の範囲、より好ましくは1:1〜1:85の範囲で縮重合させる。
【0021】
すなわち、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、十分な乳化能が得られず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上になると、シリコーン油感を生じ、さらに、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなる恐れがあるからである。
【0022】
つぎに、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、末端のシリル基に水酸基が残っているため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集して高分子化する恐れがあり、さらに、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる上記一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させる。
【0023】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記の一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0024】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
また、このほかにも、ヘキサメチルジシラザンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0026】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合するのを防止する。すなわち、この一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させることによって、保存安定性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物にすることができる。
【0027】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0028】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシラザンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0029】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時程度が好ましい。
【0030】
攪拌終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和し、さらに1〜10時間程度攪拌を続けて反応を完結させることによって、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られ、pHや濃度を調整後、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の皮膚化粧料に用いられる。
【0031】
本発明の皮膚化粧料に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、重合が不充分で、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果を発揮できないおそれがあり、粘度が上記範囲以上になると、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に流動性がなくなり、取り扱いにくくなるからである。
【0032】
本発明の皮膚化粧料は、乳液、ハンドクリーム、マッサージクリームなどを対象とし、これらの皮膚化粧料に、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成される。
【0033】
そして、本発明の皮膚化粧料中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量(皮膚化粧料への配合量)としては、皮膚化粧料中0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。というのは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は水に難溶性であり、日々の使用で蓄積性があるため、含有量が上記範囲以上になると皮膚がべたついたりする恐れがあり、逆にシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が上記範囲以下では皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果を発揮できない恐れがあるためである。そして、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の皮膚化粧料は、上記のように従来の皮膚化粧料に、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0035】
そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやその誘導体、湿潤剤、低級アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚への伸展性、親和性に優れ、皮膚に対してなめらかさ、潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れる。
【0037】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造方法を参考例として示す。以下の参考例、実施例、比較例中における各成分の配合量などはいずれも質量部によるものであり、%は質量%を表す。また、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。
【0038】
参考例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液40.8gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで5%水酸化ナトリウム水溶液78.8gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0039】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は2,120mPa・sであった。
【0040】
参考例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃でさらに15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0041】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、参考例1と同じ条件で測定したところ、粘度は1,116mPa・sであった。
【0042】
参考例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:40:40(モル比)〕の製造
容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク (加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液127.3gと18%塩酸4.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)88.0gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製A−137)164.0gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液17.1gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)6.4gを滴下し、60℃で1時間攪拌した。ついで攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液45.7gを徐々に滴下してpHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を209g得た。
【0043】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は640mPa・sであった。
【0044】
実施例1および比較例1
表1に示す組成の2種類のハンドクリームを調製し、それぞれの保湿性を評価した。実施例1では参考例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例1は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を用いていない。
【0045】
【表1】
【0046】
表1中、*1はセピック社のシマルゲルEG(商品名)である。
【0047】
上記実施例1および比較例1のハンドクリームを用いて、皮膚に塗布した際の保湿性を下記の方法で測定した。
【0048】
〔保湿性の試験方法〕
気温23℃、湿度47%の室内で30分間安静を保った被験者の、前腕内側部の角層水分量をアイ・ビイ・エス(株)製のSKICON−200EX(商品名)でスキンコンダクタンス(μS)として測定し、試験開始前の値とした。つぎに、3cm平方の部位に試験試料のハンドクリームを0.2ml塗布し、3分後に角層水分量を測定してこの値を試験開始時(0分)の値とした。続いて経時的に130分まで角層水分量を測定した。測定ポイントは各時間毎に5ポイントとし、その平均値を角層水分量とした。
【0049】
上記実施例1および比較例1のハンドクリームを塗布した皮膚のスキンコンダクタンス(μS)の経時変化を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示すように、参考例1のN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を含有する実施例1のハンドクリームを塗布した皮膚は、試験開始時(0分)のスキンコンダクタンスの値が高く、9分後に値は低くなりその後ほぼ一定の値となったが、試験開始前(47.0)に比べると高い値を保ち続けた。一方、比較例1のハンドクリームを塗布した皮膚は、試験開始時(0分)のスキンコンダクタンスの値は高いが、4分後には試験開始前とほぼ同じ値にまで減少し、その後は値はほとんど変動しなかった。この結果より、実施例1のハンドクリームに含有させたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物であるN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、皮膚の角層の保湿性を高めることが明らかであった。
【0052】
実施例2および比較例2〜3
表3に示す組成の3種類のマッサージクリームを調製し、塗布時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感について評価した。
【0053】
実施例2は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として参考例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例2は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例3はシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどを用いていない。
【0054】
【表3】
【0055】
表3中、*2は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3749 (商品名)、*3はセピック社のモンタノブ68(商品名)、*4はセピック社のモンタノブ202(商品名)、*5は成和化成(株)製のプロモイスWU−32R(商品名)、*6は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0056】
上記実施例2および比較例2〜3のマッサージクリームについて、手に塗布している時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感をパネラー10名に下記の評価基準で評価させた。
【0057】
評価基準
強く感じる ;3点
感じる ;2点
ほとんど感じない;1点
全く感じない ;0点
【0058】
パネラーによる官能評価結果を表4に10人の平均値で示す。
【0059】
【表4】
【0060】
表4に示すように、実施例2のマッサージクリームは、シリル化ペプチド−シラン化合物やシリコーン類などを配合していない比較例3のハンドクリームはもちろん、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を含有する比較例2のマッサージクリームに比べても、塗付時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感のいずれの評価項目においても評価値が高かった。この結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、シリコーンのポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体より肌へのなじみが良く、肌へ潤い感、やわらかさ、さらさら感を与える効果が優れていることが明らかであった。
【0061】
実施例3および比較例4
表5に示す組成の2種類の乳液を調製し、塗付時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、塗布後の肌の潤い感、さらさら感を評価した。
【0062】
実施例3は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として参考例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例4は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ジメチルポリシロキサンを用いている。
【0063】
【表5】
【0064】
表5中、*7は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH200C 10cs(商品名)、*8は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH245(商品名)、*9はグッドリッチ社のCARBOPOL980(商品名)、*10は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0065】
上記実施例3および比較例4の乳液を肌に塗布している時のぬり広げやすさ、肌へのなじみ、クリームのなめらかさおよび塗布後の肌の潤い感、やわらかさ、さらさら感を10名のパネラーに実施例2と同じ評価基準で評価させた。その結果を表6に10人の平均値で示す。
【0066】
【表6】
【0067】
表6に示す結果から明らかなように、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有する実施例3の乳液は、ジメチルポリシロキサンを含有する比較例4の乳液に比べて、いずれの評価項目においても評価値が高く、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、皮膚への伸展性(ぬり広げやすさ)、親和性(肌へのなじみ)に優れ、皮膚に潤い感、柔軟性、べたつかずさらさらした感触を付与する効果に優れていた。
Claims (2)
- 下記の一般式(I)
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記の一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記の一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70質量%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有することを特徴とする皮膚化粧料。 - シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.05〜10質量%である請求項1記載の皮膚化粧料。
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