JP2004315369A - 毛髪処理剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる、特に染毛後の毛髪に使用するとこれらの効果に加えて、染色毛髪のシャンプー洗浄による褪色を抑制する効果に優れた毛髪処理剤を提供する。
【解決手段】ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシリル化ペプチドと、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を2個以上生じるシラン化合物を縮重合させた後、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を1個生じるシラン化合物を反応させて得られる、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて毛髪処理剤を構成する。シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の毛髪処理剤中の含有量が0.01〜5質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ケイ素原子に直結する水酸基を2個以上有するシリル化ペプチドと、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を2個以上生じるシラン化合物を縮重合させた後、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基を1個生じるシラン化合物を反応させて得られる、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて毛髪処理剤を構成する。シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の毛髪処理剤中の含有量が0.01〜5質量%であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤、ヘアトリーメントクリーム、PPT(ポリペプタイド)トリートメント剤、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアワックスなどの毛髪処理剤に関し、さらに詳しくは、毛髪に優れた艶、こし、はりを付与し、毛髪をなめらかにして櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる毛髪処理剤、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染毛毛髪の褪色を抑制する効果に優れた毛髪処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤などの毛髪処理剤には、毛髪に艶、はり、表面のなめらかさを付与する目的で、コンディショニング剤として、カチオン性界面活性剤、シリコーン、油性物質、タンパク質加水分解物などが配合されてきた。
【0003】
しかしながら、カチオン性界面活性剤は毛髪への収着性はよいものの、配合量が多いと毛髪を柔軟にしすぎてはりやこしを失わせるという欠点があり、シリコーン類や化粧品に用いられる油性物質などの疎水性物質は、損傷の少ない毛髪、すなわち疎水性が強い毛髪には収着しやすいが、損傷毛、すなわち損傷によって親水性基が表面に露出してきて親水性が強くなった毛髪には収着しにくく、損傷毛に対しては、シリコーンや油性物質の有する特性を充分に発揮することができないという問題があった。
【0004】
また、タンパク質加水分解物は毛髪への収着性がよく、特に、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学的処理や毎日の洗髪による毛髪のタンパク成分の溶出による毛髪の損傷などによる保湿性の低下を回復させ、毛髪に潤い感を付与する効果に優れるが、毛髪に艶、はりを付与する作用に関しては、高分子シリコーンに劣り、また、高濃度の配合ではべたつきを生じやすいという問題もあった。
【0005】
そのため、本発明者らは、加水分解ペプチドにシリル基を付加したシリル化ペプチドを開発し、毛髪処理剤に配合して加水分解ペプチドの有する艶、潤い感、毛髪のまとまり性の付与作用とシリル基の有する艶やなめらかさの付与作用を同時に発揮させることを試みてきた(例えば、特開平8−81338号公報、特開2000−302648号公報など)。
【0006】
しかしながら、上記シリル化ペプチドはペプチド部分に付加するシリル基が一つのため、高分子シリコーンに比べると毛髪表面へのなめらかさの付与作用に劣るという問題があり、充分に満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる毛髪処理剤、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染色毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果に優れた毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式 (I)
【0009】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−、−(CH2 )3 NH−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて毛髪処理剤を調製するときは、毛髪に艶、はりを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまり性が良好になり、しかも、染毛後の毛髪に使用するとシャンプーによる染色毛髪の褪色を抑制することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
なお、上記一般式(I)におけるx、y、および、一般式(II)におけるm、p、(4−p−m)は下付け文字である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の毛髪処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できるが、具体的に示すと下記の通りである。
【0012】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0013】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく10以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル基が増え、ペプチド本来の毛髪への収着作用が減少し、yが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル基部分の割合が少なくなってシリル基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、x+yが上記範囲より大きくなるとペプチドとしての毛髪への収着性や浸透性が低分子ペプチドに比べて減少するからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0015】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0016】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0017】
本発明の毛髪処理剤に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0018】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0020】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0021】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を2〜6時間かけて滴下し、その後の攪拌に5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0022】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0023】
この一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の縮重合に際して、一般式(II)で表されるシラン化合物の種類や反応量を適宜選択することにより、油性物質が多量配合される毛髪処理剤では、より相溶性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とすることができる。
【0024】
すなわち、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、シリル化ペプチド由来の親水性ペプチド部分と疎水性基を有するシラン化合物が縮重合したものであるため、界面活性能を有する。そのため、例えば、毛髪処理剤に炭素鎖長が長い高級脂肪酸や高級アルコールが含まれる場合には、一般式(IV)で表されるシラン化合物においてR6 に炭素鎖長が長い有機基が結合したシラン化合物、例えば、上記に例示したシラン化合物の中では、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどを使用してシリル化ペプチドと縮重合させると、炭素鎖長が長い高級脂肪酸や高級アルコールが含まれている毛髪処理剤の安定性を向上させることができる。
【0025】
このように、反応時のシラン化合物の種類を変化させることにより、種々の特性を有するシラン化合物共重合組成物を得ることができるが、本発明の毛髪処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記一般式(I)で示されるシリル化ペプチドの一種以上と上記一般式(II)で示されるシラン化合物の一種以上を、反応モル比で1:1〜1:100の範囲、より好ましくは1:1〜1:85の範囲で縮重合させる。
【0026】
すなわち、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、毛髪処理剤に含有させた場合、毛髪に艶、はり、こしを付与することができず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上になっても反応比に見合う毛髪への艶、はり、こしの付与作用の増加が認められないだけでなく、シリコーンオイル感を生じ、さらに、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなる恐れがある。
【0027】
つぎに、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、末端のシリル基に水酸基が残っているため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集して高分子化する恐れがあり、さらに、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる上記一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させる。
【0028】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0029】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
また、この他にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0031】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合するのを防止する。すなわち、この一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させることによって、保存安定性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物にすることができる。
【0032】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0033】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシロキサンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0034】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時間程度が好ましい。
【0035】
攪拌終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和し、さらに1〜10時間程度攪拌を続けて反応を完結させることによって、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られ、pHや濃度を調整後、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の毛髪処理剤に用いられる。
【0036】
本発明の毛髪処理剤に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、重合が不十分で、毛髪処理剤としての効果が現れない恐れがあり、粘度が上記範囲以上になると、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に流動性がなくなり、取り扱いにくくなるからである。
【0037】
本発明の毛髪処理剤は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤、ヘアトリートメントクリーム、PPT(ポリペプタイド)トリートメント剤、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアワックスなどを対象とし、これらの毛髪処理剤に、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成される。
【0038】
そして、本発明の毛髪処理剤中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量(毛髪処理剤への配合量)としては、一般的には毛髪処理剤中0.01〜5質量%が好ましいが、毛髪処理剤の種類や使用方法によって含有量は異なる。というのは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は水に難溶性であり、日々の使用で蓄積性があるため、含有量が多いと毛髪がごわついたり、べたついたりする恐れがあるためである。
【0039】
そのため、毎日使用するようなリンス剤では毛髪処理剤中0.01〜1質量%の含有量が適当であり、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学処理で損傷した毛髪に適用するようなヘアトリートメント剤などでは毛髪処理剤中0.5〜5質量%の含有量が好ましい。特に、染毛処理後に使用する染毛後処理剤では0.5〜5質量%含有していると毛髪からの染料成分の脱離を抑制する。なお、いずれの毛髪処理剤でも、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01質量%以下では、毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる効果や、染毛後の毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果は得られない恐れがある。
【0040】
本発明の毛髪処理剤は、上記のように、従来の各種毛髪処理剤に、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0041】
そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやその誘導体、湿潤剤、低級アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の毛髪処理剤は、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物が毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させ、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染色毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果に優れる。
【0043】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例や比較例中における各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。また、濃度を示す%は質量%である。なお、以下の実施例や比較例においては、毛髪処理剤の調製を行う関係もあって、各成分に関して「含有」という表現をせず、「配合」という表現で説明する。また、実施例に先だって、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造例を示す。
【0044】
製造例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液40.8gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで5%水酸化ナトリウム水溶液78.8gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0045】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は2120mPa・sであった。
【0046】
製造例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン (信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0047】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は1116mPa・sであった。
【0048】
製造例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:40:40(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液127.3gと18%塩酸4.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)88.0gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)164.0gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液17.1gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)6.4gを滴下し、60℃で1時間攪拌した。ついで攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液45.7gを徐々に滴下してpHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を209g得た。
【0049】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は640mPa・sであった。
【0050】
実施例1および比較例1〜2
表1に示す組成の3種類のヘアトリートメント剤を調製し、それぞれのヘアトリートメント剤を染毛後の毛髪に使用して、処理毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。また、処理毛髪のシャンプーによる褪色度を目視により比較した。
【0051】
実施例1では、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として製造例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例1は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例2はシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどを用いていない。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中、*1は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*2はセピック社製のシマルゲルEG(商品名)、*3は成和化成(株)製のプロモイスシルク−1000(商品名)、*4は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0054】
上記ヘアトリートメント剤による処理に先立ち、処理用の毛髪として、洗浄、ブリーチ処理、染毛処理を行なった染毛毛髪を作製した。すなわち、長さ13cmで重さ1.7gの毛束を3本用意し、あらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。つぎに、6%過酸化水素水と2%アンモニア水を1:1に調製したブリーチ剤に30分間浸漬した後、水道水流水中でゆすぎ、1Mクエン酸と0.2Mリン酸水素二ナトリウムの緩衝液(pH3)に5分間浸漬し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。この操作を5回繰り返し行なった後、市販されている黒色用の酸化型染毛剤で染色処理を行ない処理試験用毛束とした。
【0055】
この染毛を行なった毛束に約40℃の温水を含ませた後、実施例1および比較例1〜2のヘアトリートメント剤3gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で40℃の恒温槽に10分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた後、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさを10人のパネラーに官能評価させた。評価は、最も良いものを〔2点〕とし、2番目に良いものを〔1点〕とし、悪いものを〔0点〕とし、その平均値を評価値とした。
【0056】
次に、上記評価を行った毛束を40℃に加温した有効成分濃度1%のポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液200mlに10分間浸漬し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。この操作を10回繰り返し行なった後、10人のパネラーに染毛の色の濃さを目視で評価させた。評価は最も色の濃いものを〔2点〕とし、2番目に濃いものを〔1点〕とし、最も色の薄いものを〔0点〕とし、その平均値を染毛毛髪の褪色度の評価値とした
【0057】
パネラーによるヘアトリートメント処理後の毛髪の官能評価結果、および洗浄後の毛髪の褪色度評価結果をそれぞれ表2に10人の平均値で示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例1のヘアトリートメント剤で処理した毛髪は、比較例1および比較例2のヘアトリートメント剤で処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの官能評価項目においても評価値が高かった。この結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合した実施例1のヘアトリートメント剤はポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を配合した比較例1やシリル化ペプチド−シラン化合物などを配合していない比較例2のヘアトリートメント剤に比べて処理後の毛髪に艶、はりを付与し、櫛通り性、まとまりやすさを向上させる作用が優れていることが明らかであった。
【0060】
洗浄後の毛髪の色の比較では、大多数の人が実施例1のヘアトリートメント剤で処理した毛髪の色が最も濃いと答えていて、この結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を含有する実施例1のヘアトリートメント剤は、染毛後の洗浄による褪色を抑制する効果に優れていることが明らかであった。
【0061】
実施例2および比較例3
表3に示す組成の2種類のヘアクリームを調製し、頭髪に使用後の毛髪の、艶、はり、こし、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。
【0062】
実施例2では、製造例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例3ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用いている。
【0063】
【表3】
【0064】
表3中、*5は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3749 (商品名)、*6は成和化成(株)製のアヤコールGMIS(商品名)、*7は成和化成(株)製のマットルーブ2EHP(商品名)、*8は成和化成(株)製のプロモイスWG−SIG(商品名)である。
【0065】
上記実施例2のヘアクリームと比較例3のヘアクリームを、ブリーチ処理、染毛処理またはパーマ処理のいずれかの化学処理を1回以上行っている10名の女性パネラーに、最初の7日間は比較例3のヘアクリームで処理させ、次の7日間は実施例2のヘアクリームで処理させて、比較評価した。
【0066】
毛髪の処理方法は、ヘアクリームを適量手のひらにとり(量は頭髪量によって異なる)、手で損傷の激しい毛先を中心にヘアクリームを頭髪に擦り込むように塗布し、ヘアドライヤーで乾燥することによって行った。
【0067】
14日間の使用期間後(すなわち、実施例2のヘアクリーム7日間使用後)、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさについて、比較例3のヘアクリームを使用していた時より良くなったか、悪くなったか、あるいは変わらなかったかを回答させた。その結果を表4に、良くなったと答えた人数、変わらないと答えた人数、悪くなったと答えた人数で示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示す結果から明らかなように、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合した実施例2のヘアクリームの使用後は、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を配合した比較例3のヘアクリームを使用していた時よりも良くなったと答えた人数が、いずれの評価項目においても多かった。特に、良くなったと答えたパネラーの大多数が、毛先の櫛通り性が向上したことにより、ブラッシング時に無理な力を加える必要がなくなったと答えていた。これは、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物がブラッシングによる枝毛の発生を防止する効果を有することを意味している。これらの結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は使用後の毛髪に艶、はりを付与し櫛通り性、まとまり性を向上する効果に優れていて、損傷毛髪の枝毛の発生を防止することが明らかであった。
【0070】
実施例3および比較例4〜5
表5に示す組成の3種類のヘアリンスを調製し、損傷毛髪に使用して、毛髪のなめらかさを測定し、毛髪の、艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。
【0071】
実施例3では、製造例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例4ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例5ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどは用いていない。
【0072】
【表5】
【0073】
表5中、*9は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*10は成和化成(株)製のアヤコールアミンアミド50E(商品名)、*11は成和化成(株)製のアヤコールGMIS(商品名)、*12はライン(株)製のオクトピロックス(商品名)、*13は成和化成(株)製のプロモイスWU−32R(商品名)である。
【0074】
上記ヘアリンスによる処理に先立ち、実施例1と同様の操作で3回のブリーチ処理を行った損傷毛髪を3本作製し、以下のヘアリンス処理を行った。すなわち、損傷毛髪の毛束を、4%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすぎ、毛束の水分をタオルで軽く拭き取った後、実施例3および比較例4〜5のヘアリンス2gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で5分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた。この洗浄とリンス処理の操作を3回繰り返し行なった後、下記の評価試験に供した。
【0075】
上記処理を行った毛髪のなめらかさの評価は、カトーテック(株)製の摩擦感テスターKES−SEを使用し、湿度40±1%、温度22℃±1℃の条件下で処理毛髪表面の摩擦力を測定した。なお、この装置においては、なめらかさ(ざらつき)は、試料の表面の一定距離を移動する摩擦子が感じる摩擦係数の平均偏差で表され、単位は無次元であり、値が小さいほど「なめらかである」ことを示している。試験では1試料につき10回測定しその平均値を測定値とした。
【0076】
次に、同じ毛束を用いて、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさを10人のパネラーに実施例1と同じ評価基準で官能評価させた。それらの結果を表6に平均値で示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示すように、毛髪のなめらかさを示す摩擦係数の平均偏差は、実施例3のヘアリンスで処理した毛髪が最も小さく、比較例4のヘアリンスで処理した毛髪の84.4%、比較例5のヘアリンスで処理した毛髪の79.2%であった。この結果から、実施例3に配合されているN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪表面に均一に吸着し、毛髪表面をなめらかにする作用に優れていることが明らかであった。
【0079】
また、処理毛髪の官能評価では、実施例3のヘアリンスで処理した毛髪は比較例4〜5のヘアリンスで処理した毛髪に比べて毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの評価項目においても評価値が高かった。これらの結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪に艶、はりを付与し、なめらかさ、櫛通り性およびまとまりやすさを向上させる効果に優れていることが明らかであった。
【0080】
実施例4および比較例6
表7に示す組成の2種類のヘアコンディショナーを調製し、染毛後の毛髪に使用後し、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさ、染毛毛髪の褪色度を評価した。
【0081】
実施例4では、製造例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例6では、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用いている。
【0082】
【表7】
【0083】
表7中、*14は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*15はローム&ハース社製のアキュリン44(商品名)、*16は成和化成(株)製のマットルーブI・I(商品名)、*17は成和化成(株)製のアヤコールアミンアミド50E(商品名)、*18は成和化成(株)製のプロモイスWK−HCAQ(商品名)である。
【0084】
上記ヘアコンディショナーによる処理に先立ち、実施例1と同様の操作で5回のブリーチ処理を行なった後に染色処理を行なった損傷毛髪を2本作製し、以下のヘアコンディショナー処理を行った。すなわち、この損傷毛髪の毛束を4%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすぎ、水分をタオルで軽く拭き取った後、実施例4および比較例6のヘアコンディショナー2gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で5分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた。この洗浄とヘアリンス処理操作を10回繰り返し行なった後、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさおよび染毛毛髪の褪色度を10人のパネラーに、実施例4と比較例6のどちらが優れているかを官能評価させた。また、染毛毛髪の褪色度については、色が濃い(褪色が少ない)方を優れているとして評価させた。その結果を表8に、実施例4が優れていると答えた人数、比較例6の方が優れていると答えた人数、実施例4と比較例6は同じであると答えた人数で示す。
【0085】
【表8】
【0086】
表8に示すように、実施例4のヘアコンディショナーで処理した毛髪は、比較例6のヘアコンディショナーで処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの評価項目においても評価値が高かった。また、毛髪の褪色度の評価でも、実施例4で処理を行った毛髪は比較例6で処理を行った毛髪に比べて処理後の毛髪の色が濃いと答えていた人が大多数であった。これらの結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪に艶、はりを付与し、なめらかさ、櫛通り性およびまとまりやすさを向上させる効果に優れ、さらに染色毛髪の洗浄による褪色を抑制する作用にも優れていることが明らかであった。
【0087】
実施例5および比較例7
製造例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用いて下記の組成のヘアワックスを調製した。
【0088】
【0089】
また、上記とは別に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合せず、そのぶん滅菌イオン交換水を増量し、他の組成は実施例5と同一にしたヘアワックスを調製し、それを比較例7とした。
【0090】
上記2種類のヘアワックスについて10人のパネラーに頭髪に使用させ、使用後の艶、はり、こし、まとまりやすさについて評価させた。
【0091】
頭髪への使用方法は、頭髪を左右2つに分け、右または左の頭髪を実施例5のヘアワックスで処理し、他方の頭髪を比較例7のヘアワックスで処理させるハーフヘッド法で行なった。ヘアワックスの処理方法は、適量(頭髪の量や長さによって異なる)のヘアワックスを頭髪に塗布し、頭髪全体になじませるように手でもみ込むことにより行なわせた。
【0092】
各パネラーに処理後の頭髪の艶、はり、こし、まとまりやすさについて、良い方を〔1点〕とし、悪い方を〔0点〕として評価させた。その結果を表9に10人の合計点数で示す。
【0093】
【表9】
【0094】
表9に示すように、実施例5のヘアワックスで処理した毛髪は、比較例7のヘアワックスで処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、こし、まとまりやすさのいずれの項目においても評価値が高く、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物をヘアワックスに配合すると、処理後の毛髪に、艶、はり、こしを付与し、まとまりやすさを向上させることが明らかであった。
【0095】
実施例6および比較例8
製造例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用いて下記の組成のヘアスプレー原液を調製した後、ヘアスプレー原液:ジメチルエーテル=50:50(質量比 )の割合で混合してヘアスプレーを調製した。
【0096】
【0097】
また、上記とは別に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合せず、そのぶんエタノールを増量し、他の組成は実施例6と同一にしたヘアスプレーを調製し、それを比較例8とした。
【0098】
上記2種類のヘアスプレーについて10人のパネラーに実施例5と同様のハーフヘッド法で頭髪に均一に噴霧させ、噴霧後の頭髪の艶、はり、こし、まとまり性について実施例5と同様の評価基準で評価させた。その結果を表10に10人の合計点数で示す。
【0099】
【表10】
【0100】
表10に示すように、実施例6のヘアスプレーは、比較例8のヘアスプレーに比べて、噴霧後の頭髪の艶、はり、こし、まとまりやすさのいずれの項目においても評価値が高く、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物をヘアスプレーに配合すると、噴霧後の頭髪に、艶、はり、こしを付与し、まとまり性を向上させることが明らかであった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤、ヘアトリーメントクリーム、PPT(ポリペプタイド)トリートメント剤、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアワックスなどの毛髪処理剤に関し、さらに詳しくは、毛髪に優れた艶、こし、はりを付与し、毛髪をなめらかにして櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる毛髪処理剤、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染毛毛髪の褪色を抑制する効果に優れた毛髪処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤などの毛髪処理剤には、毛髪に艶、はり、表面のなめらかさを付与する目的で、コンディショニング剤として、カチオン性界面活性剤、シリコーン、油性物質、タンパク質加水分解物などが配合されてきた。
【0003】
しかしながら、カチオン性界面活性剤は毛髪への収着性はよいものの、配合量が多いと毛髪を柔軟にしすぎてはりやこしを失わせるという欠点があり、シリコーン類や化粧品に用いられる油性物質などの疎水性物質は、損傷の少ない毛髪、すなわち疎水性が強い毛髪には収着しやすいが、損傷毛、すなわち損傷によって親水性基が表面に露出してきて親水性が強くなった毛髪には収着しにくく、損傷毛に対しては、シリコーンや油性物質の有する特性を充分に発揮することができないという問題があった。
【0004】
また、タンパク質加水分解物は毛髪への収着性がよく、特に、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学的処理や毎日の洗髪による毛髪のタンパク成分の溶出による毛髪の損傷などによる保湿性の低下を回復させ、毛髪に潤い感を付与する効果に優れるが、毛髪に艶、はりを付与する作用に関しては、高分子シリコーンに劣り、また、高濃度の配合ではべたつきを生じやすいという問題もあった。
【0005】
そのため、本発明者らは、加水分解ペプチドにシリル基を付加したシリル化ペプチドを開発し、毛髪処理剤に配合して加水分解ペプチドの有する艶、潤い感、毛髪のまとまり性の付与作用とシリル基の有する艶やなめらかさの付与作用を同時に発揮させることを試みてきた(例えば、特開平8−81338号公報、特開2000−302648号公報など)。
【0006】
しかしながら、上記シリル化ペプチドはペプチド部分に付加するシリル基が一つのため、高分子シリコーンに比べると毛髪表面へのなめらかさの付与作用に劣るという問題があり、充分に満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決し、毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる毛髪処理剤、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染色毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果に優れた毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式 (I)
【0009】
【化2】
〔式中、R1 は水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、−(CH2 )3 S−、−(CH2 )3 NH−および−(CH2 )3 OCOCH2 CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、xは0〜50、yは1〜100、x+yは1〜100である(ただし、xおよびyはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させて毛髪処理剤を調製するときは、毛髪に艶、はりを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまり性が良好になり、しかも、染毛後の毛髪に使用するとシャンプーによる染色毛髪の褪色を抑制することを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
なお、上記一般式(I)におけるx、y、および、一般式(II)におけるm、p、(4−p−m)は下付け文字である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の毛髪処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、例えば、特開2001−48732号公報、特開2001−48775号公報などに開示の方法で合成できるが、具体的に示すと下記の通りである。
【0012】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の一方の成分である、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドは、特開平8−59424号公報および特開平8−67608号公報に開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0013】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R2 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R3 はR2 以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドにおいて、xは0〜50、好ましくは0より大きく10以下であり、yは1〜100、好ましくは1〜50、x+yは1〜100、好ましくは2〜50である。すなわち、xが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル基が増え、ペプチド本来の毛髪への収着作用が減少し、yが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル基部分の割合が少なくなってシリル基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、x+yが上記範囲より大きくなるとペプチドとしての毛髪への収着性や浸透性が低分子ペプチドに比べて減少するからである。なお、上記のx、yやx+yは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0015】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドのペプチド部分としては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられるが、タンパクの入手の容易さやペプチド部分の数平均分子量のコントロールしやすさから、加水分解ペプチドを用いるのが好ましい。
【0016】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変性物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0017】
本発明の毛髪処理剤に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物のもう一方の成分であるシラン化合物は、上記一般式(II)に示すものであるが、この化合物は、下記一般式(IV)
R6 nSiX(4−n) (IV)
〔式中、nは0から2の整数で、R6 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、n個のR6 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−n)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。なお、上記一般式(IV)において、n、(4−n)は下付け文字である。
【0018】
一般式(IV)で表されるシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルオクタデシル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、3−(トリメトキシシリル)プロピルポリオキシエチレン(10)エーテル、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシランなどが挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシリル化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(I)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(IV)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を少なくとも2個有する一般式(II)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(I)で表される親水基を有する有機シラン化合物の水酸基と一般式(II)で表されるシラン化合物の水酸基との縮重合が進み、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られる。
【0020】
加水分解反応は、一般的にはpH1〜3で良好に進行するが、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整はアルコキシシラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。また、一般式(IV)で表されるシラン化合物としてアミノシラン化合物を用いて酸性側で反応する場合は反応中にpHが上がるので、希塩酸や希硫酸などを添加してpHを1〜3に保つ必要がある。
【0021】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(IV)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(IV)で表されるシラン化合物を2〜6時間かけて滴下し、その後の攪拌に5〜20時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0022】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によって縮重合がさらに進みシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られるが、中和後の攪拌は1〜10時間程度が好ましい。
【0023】
この一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の縮重合に際して、一般式(II)で表されるシラン化合物の種類や反応量を適宜選択することにより、油性物質が多量配合される毛髪処理剤では、より相溶性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物とすることができる。
【0024】
すなわち、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、シリル化ペプチド由来の親水性ペプチド部分と疎水性基を有するシラン化合物が縮重合したものであるため、界面活性能を有する。そのため、例えば、毛髪処理剤に炭素鎖長が長い高級脂肪酸や高級アルコールが含まれる場合には、一般式(IV)で表されるシラン化合物においてR6 に炭素鎖長が長い有機基が結合したシラン化合物、例えば、上記に例示したシラン化合物の中では、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどを使用してシリル化ペプチドと縮重合させると、炭素鎖長が長い高級脂肪酸や高級アルコールが含まれている毛髪処理剤の安定性を向上させることができる。
【0025】
このように、反応時のシラン化合物の種類を変化させることにより、種々の特性を有するシラン化合物共重合組成物を得ることができるが、本発明の毛髪処理剤に用いるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、上記一般式(I)で示されるシリル化ペプチドの一種以上と上記一般式(II)で示されるシラン化合物の一種以上を、反応モル比で1:1〜1:100の範囲、より好ましくは1:1〜1:85の範囲で縮重合させる。
【0026】
すなわち、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以下では、毛髪処理剤に含有させた場合、毛髪に艶、はり、こしを付与することができず、また、一般式(I)で表されるシリル化ペプチドと一般式(II)で表されるシラン化合物の反応モル比が上記範囲以上になっても反応比に見合う毛髪への艶、はり、こしの付与作用の増加が認められないだけでなく、シリコーンオイル感を生じ、さらに、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が高粘度となって取り扱いが難しくなる恐れがある。
【0027】
つぎに、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は、末端のシリル基に水酸基が残っているため、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物同士が凝集して高分子化する恐れがあり、さらに、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる上記一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させる。
【0028】
一般式(III)で表されるシラン化合物としては、下記一般式(V)
R7 3 SiZ (V)
〔式中、3個のR7 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR7 は同じでもよく、異なっていてもよく、Zは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基からなる群から選ばれる少なくも1種の基である〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で加水分解することにより得られる。
【0029】
加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルクロロシラン、n−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシラン、tert−ブチルジフェニルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリ−n−ブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルアイオドシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
また、この他にも、ヘキサメチルジシラザンやヘキサメチルジシロキサンのようなケイ素原子を2個有するシリル化合物も、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じるので使用することができる。
【0031】
このような加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個生じる一般式(V)で表されるシラン化合物は、ケイ素原子に直結する反応基が一つであるため、それを加水分解して得られる一般式(III)で表されるシラン化合物は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中に存在する水酸基と反応して、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物中の水酸基を減少させ、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物がさらに縮重合するのを防止する。すなわち、この一般式(III)で表されるシラン化合物を反応させることによって、保存安定性のよいシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物にすることができる。
【0032】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水溶液中に一般式(V)で表されるシラン化合物を滴下することにより、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基が縮合する。
【0033】
ただし、上記一般式(V)で表されるシラン化合物においてZがハロゲン基のシラン化合物は加水分解性がよいので、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液中に上記一般式(V)で表されるシラン化合物を直接滴下することによって上記反応は進行するが、上記一般式(V)で表されるシラン化合物でZがアルコキシ基のものや、ヘキサメチルジシロキサンなどのケイ素原子が2個のシラン化合物では、あらかじめpH2〜3の水溶液中で加水分解して一般式(III)で表されるシラン化合物とし、その後、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物水溶液に滴下する必要がある。
【0034】
シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物と上記一般式(V)で表されるシラン化合物との反応温度は30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、一般式(V)で表されるシラン化合物の滴下に30分〜2時間、その後の攪拌は1〜6時間程度が好ましい。
【0035】
攪拌終了後、反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液で中和し、さらに1〜10時間程度攪拌を続けて反応を完結させることによって、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物が得られ、pHや濃度を調整後、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるものが本発明の毛髪処理剤に用いられる。
【0036】
本発明の毛髪処理剤に含有させるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のものと規定しているのは、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が上記範囲以下では、重合が不十分で、毛髪処理剤としての効果が現れない恐れがあり、粘度が上記範囲以上になると、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に流動性がなくなり、取り扱いにくくなるからである。
【0037】
本発明の毛髪処理剤は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント剤、ヘアトリートメントクリーム、PPT(ポリペプタイド)トリートメント剤、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアワックスなどを対象とし、これらの毛髪処理剤に、上記のようにして得られたシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成される。
【0038】
そして、本発明の毛髪処理剤中でのシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量(毛髪処理剤への配合量)としては、一般的には毛髪処理剤中0.01〜5質量%が好ましいが、毛髪処理剤の種類や使用方法によって含有量は異なる。というのは、このシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物は水に難溶性であり、日々の使用で蓄積性があるため、含有量が多いと毛髪がごわついたり、べたついたりする恐れがあるためである。
【0039】
そのため、毎日使用するようなリンス剤では毛髪処理剤中0.01〜1質量%の含有量が適当であり、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学処理で損傷した毛髪に適用するようなヘアトリートメント剤などでは毛髪処理剤中0.5〜5質量%の含有量が好ましい。特に、染毛処理後に使用する染毛後処理剤では0.5〜5質量%含有していると毛髪からの染料成分の脱離を抑制する。なお、いずれの毛髪処理剤でも、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01質量%以下では、毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させる効果や、染毛後の毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果は得られない恐れがある。
【0040】
本発明の毛髪処理剤は、上記のように、従来の各種毛髪処理剤に、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有させることによって構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0041】
そのような成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマー、増粘剤、動植物抽出物、ポリサッカライドまたはその誘導体、動植物および微生物由来のタンパク質の加水分解ペプチドやその誘導体、湿潤剤、低級アルコール類、高級アルコール類、アミノ酸、油脂類、シリコーン類、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の毛髪処理剤は、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内のシリル化ペプチド−シラン化合物が毛髪に優れた艶、はり、こしを付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、枝毛を防止し、かつ毛髪のまとまりやすさを向上させ、特に染毛後の毛髪に使用すると上記の効果に加えて染色毛髪のシャンプーによる褪色を抑制する効果に優れる。
【0043】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例や比較例中における各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示す。また、濃度を示す%は質量%である。なお、以下の実施例や比較例においては、毛髪処理剤の調製を行う関係もあって、各成分に関して「含有」という表現をせず、「配合」という表現で説明する。また、実施例に先だって、実施例で使用するシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の製造例を示す。
【0044】
製造例1
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン(加水分解セリシンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液200gと18%塩酸11.5gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)99.1gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)184.7gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液40.8gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)11.6gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。ついで5%水酸化ナトリウム水溶液78.8gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を260g得た。
【0045】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、B型粘度計、ロータ3、回転数30回転で測定したところ、粘度は2120mPa・sであった。
【0046】
製造例2
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:25:25(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン(加水分解コラーゲンの分子量は数平均分子量で約500)の10%水溶液150gと18%塩酸7.6gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン (信越シリコーン社製KBE−22)79.7gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)148.6gの混液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液22.9gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)9.3gを加えた後、60℃で1時間攪拌した。次いで5%水酸化ナトリウム水溶液68.5gを滴下し、pHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を211.9g得た。
【0047】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は1116mPa・sであった。
【0048】
製造例3
N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物〔1:40:40(モル比)〕の製造
内径12cm、容量2リットルの丸底円筒形ガラス製反応容器に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク(加水分解シルクの分子量は数平均分子量で約600)の10%水溶液127.3gと18%塩酸4.8gを加えてpHを1.5にし、60℃に加温した。つぎに400rpmで攪拌しながら、ジメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製KBE−22)88.0gとオクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー社製 A−137)164.0gの混液を5時間半かけて滴下した。滴下終了後、60℃で更に15時間攪拌を続けた。つぎに、攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液17.1gを徐々に滴下してpHを6に調整し、さらに60℃で1時間攪拌した。この反応液を60℃、400rpmで攪拌しながらトリメチルクロロシラン(信越シリコーン社製KA−31)6.4gを滴下し、60℃で1時間攪拌した。ついで攪拌しながら5%水酸化ナトリウム水溶液45.7gを徐々に滴下してpHを6に調整した後、60℃で1時間攪拌し、さらに反応液の温度を80℃に上げ1時間攪拌した。その後、反応液をロータリーエバポレーターにて減圧濃縮して固形分濃度を70%に調整し、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を209g得た。
【0049】
このようにして得られたN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物の70%水溶液の20℃での粘度を、製造例1と同じ条件で測定したところ、粘度は640mPa・sであった。
【0050】
実施例1および比較例1〜2
表1に示す組成の3種類のヘアトリートメント剤を調製し、それぞれのヘアトリートメント剤を染毛後の毛髪に使用して、処理毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。また、処理毛髪のシャンプーによる褪色度を目視により比較した。
【0051】
実施例1では、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物として製造例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例1は、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例2はシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどを用いていない。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中、*1は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*2はセピック社製のシマルゲルEG(商品名)、*3は成和化成(株)製のプロモイスシルク−1000(商品名)、*4は成和化成(株)製のセイセプトH(商品名)である。
【0054】
上記ヘアトリートメント剤による処理に先立ち、処理用の毛髪として、洗浄、ブリーチ処理、染毛処理を行なった染毛毛髪を作製した。すなわち、長さ13cmで重さ1.7gの毛束を3本用意し、あらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。つぎに、6%過酸化水素水と2%アンモニア水を1:1に調製したブリーチ剤に30分間浸漬した後、水道水流水中でゆすぎ、1Mクエン酸と0.2Mリン酸水素二ナトリウムの緩衝液(pH3)に5分間浸漬し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。この操作を5回繰り返し行なった後、市販されている黒色用の酸化型染毛剤で染色処理を行ない処理試験用毛束とした。
【0055】
この染毛を行なった毛束に約40℃の温水を含ませた後、実施例1および比較例1〜2のヘアトリートメント剤3gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で40℃の恒温槽に10分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた後、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさを10人のパネラーに官能評価させた。評価は、最も良いものを〔2点〕とし、2番目に良いものを〔1点〕とし、悪いものを〔0点〕とし、その平均値を評価値とした。
【0056】
次に、上記評価を行った毛束を40℃に加温した有効成分濃度1%のポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液200mlに10分間浸漬し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾させた。この操作を10回繰り返し行なった後、10人のパネラーに染毛の色の濃さを目視で評価させた。評価は最も色の濃いものを〔2点〕とし、2番目に濃いものを〔1点〕とし、最も色の薄いものを〔0点〕とし、その平均値を染毛毛髪の褪色度の評価値とした
【0057】
パネラーによるヘアトリートメント処理後の毛髪の官能評価結果、および洗浄後の毛髪の褪色度評価結果をそれぞれ表2に10人の平均値で示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例1のヘアトリートメント剤で処理した毛髪は、比較例1および比較例2のヘアトリートメント剤で処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの官能評価項目においても評価値が高かった。この結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合した実施例1のヘアトリートメント剤はポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を配合した比較例1やシリル化ペプチド−シラン化合物などを配合していない比較例2のヘアトリートメント剤に比べて処理後の毛髪に艶、はりを付与し、櫛通り性、まとまりやすさを向上させる作用が優れていることが明らかであった。
【0060】
洗浄後の毛髪の色の比較では、大多数の人が実施例1のヘアトリートメント剤で処理した毛髪の色が最も濃いと答えていて、この結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を含有する実施例1のヘアトリートメント剤は、染毛後の洗浄による褪色を抑制する効果に優れていることが明らかであった。
【0061】
実施例2および比較例3
表3に示す組成の2種類のヘアクリームを調製し、頭髪に使用後の毛髪の、艶、はり、こし、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。
【0062】
実施例2では、製造例1で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例3ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を用いている。
【0063】
【表3】
【0064】
表3中、*5は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3749 (商品名)、*6は成和化成(株)製のアヤコールGMIS(商品名)、*7は成和化成(株)製のマットルーブ2EHP(商品名)、*8は成和化成(株)製のプロモイスWG−SIG(商品名)である。
【0065】
上記実施例2のヘアクリームと比較例3のヘアクリームを、ブリーチ処理、染毛処理またはパーマ処理のいずれかの化学処理を1回以上行っている10名の女性パネラーに、最初の7日間は比較例3のヘアクリームで処理させ、次の7日間は実施例2のヘアクリームで処理させて、比較評価した。
【0066】
毛髪の処理方法は、ヘアクリームを適量手のひらにとり(量は頭髪量によって異なる)、手で損傷の激しい毛先を中心にヘアクリームを頭髪に擦り込むように塗布し、ヘアドライヤーで乾燥することによって行った。
【0067】
14日間の使用期間後(すなわち、実施例2のヘアクリーム7日間使用後)、毛髪の艶、はり、櫛通り性、まとまりやすさについて、比較例3のヘアクリームを使用していた時より良くなったか、悪くなったか、あるいは変わらなかったかを回答させた。その結果を表4に、良くなったと答えた人数、変わらないと答えた人数、悪くなったと答えた人数で示す。
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示す結果から明らかなように、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合した実施例2のヘアクリームの使用後は、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体を配合した比較例3のヘアクリームを使用していた時よりも良くなったと答えた人数が、いずれの評価項目においても多かった。特に、良くなったと答えたパネラーの大多数が、毛先の櫛通り性が向上したことにより、ブラッシング時に無理な力を加える必要がなくなったと答えていた。これは、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物がブラッシングによる枝毛の発生を防止する効果を有することを意味している。これらの結果より、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解セリシン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は使用後の毛髪に艶、はりを付与し櫛通り性、まとまり性を向上する効果に優れていて、損傷毛髪の枝毛の発生を防止することが明らかであった。
【0070】
実施例3および比較例4〜5
表5に示す組成の3種類のヘアリンスを調製し、損傷毛髪に使用して、毛髪のなめらかさを測定し、毛髪の、艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさを評価した。
【0071】
実施例3では、製造例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例4ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用い、比較例5ではシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物やシリコーンなどは用いていない。
【0072】
【表5】
【0073】
表5中、*9は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*10は成和化成(株)製のアヤコールアミンアミド50E(商品名)、*11は成和化成(株)製のアヤコールGMIS(商品名)、*12はライン(株)製のオクトピロックス(商品名)、*13は成和化成(株)製のプロモイスWU−32R(商品名)である。
【0074】
上記ヘアリンスによる処理に先立ち、実施例1と同様の操作で3回のブリーチ処理を行った損傷毛髪を3本作製し、以下のヘアリンス処理を行った。すなわち、損傷毛髪の毛束を、4%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすぎ、毛束の水分をタオルで軽く拭き取った後、実施例3および比較例4〜5のヘアリンス2gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で5分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた。この洗浄とリンス処理の操作を3回繰り返し行なった後、下記の評価試験に供した。
【0075】
上記処理を行った毛髪のなめらかさの評価は、カトーテック(株)製の摩擦感テスターKES−SEを使用し、湿度40±1%、温度22℃±1℃の条件下で処理毛髪表面の摩擦力を測定した。なお、この装置においては、なめらかさ(ざらつき)は、試料の表面の一定距離を移動する摩擦子が感じる摩擦係数の平均偏差で表され、単位は無次元であり、値が小さいほど「なめらかである」ことを示している。試験では1試料につき10回測定しその平均値を測定値とした。
【0076】
次に、同じ毛束を用いて、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさを10人のパネラーに実施例1と同じ評価基準で官能評価させた。それらの結果を表6に平均値で示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示すように、毛髪のなめらかさを示す摩擦係数の平均偏差は、実施例3のヘアリンスで処理した毛髪が最も小さく、比較例4のヘアリンスで処理した毛髪の84.4%、比較例5のヘアリンスで処理した毛髪の79.2%であった。この結果から、実施例3に配合されているN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪表面に均一に吸着し、毛髪表面をなめらかにする作用に優れていることが明らかであった。
【0079】
また、処理毛髪の官能評価では、実施例3のヘアリンスで処理した毛髪は比較例4〜5のヘアリンスで処理した毛髪に比べて毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの評価項目においても評価値が高かった。これらの結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪に艶、はりを付与し、なめらかさ、櫛通り性およびまとまりやすさを向上させる効果に優れていることが明らかであった。
【0080】
実施例4および比較例6
表7に示す組成の2種類のヘアコンディショナーを調製し、染毛後の毛髪に使用後し、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさ、染毛毛髪の褪色度を評価した。
【0081】
実施例4では、製造例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用い、比較例6では、シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物に代えて、ポリエーテル変性シリコーンであるポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体を用いている。
【0082】
【表7】
【0083】
表7中、*14は東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH3775M(商品名)、*15はローム&ハース社製のアキュリン44(商品名)、*16は成和化成(株)製のマットルーブI・I(商品名)、*17は成和化成(株)製のアヤコールアミンアミド50E(商品名)、*18は成和化成(株)製のプロモイスWK−HCAQ(商品名)である。
【0084】
上記ヘアコンディショナーによる処理に先立ち、実施例1と同様の操作で5回のブリーチ処理を行なった後に染色処理を行なった損傷毛髪を2本作製し、以下のヘアコンディショナー処理を行った。すなわち、この損傷毛髪の毛束を4%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすぎ、水分をタオルで軽く拭き取った後、実施例4および比較例6のヘアコンディショナー2gをそれぞれの毛束に均一に塗布して毛髪になじませた後、ラップフィルム上で5分間放置し、お湯でゆすぎ、室温で風乾させた。この洗浄とヘアリンス処理操作を10回繰り返し行なった後、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさおよび染毛毛髪の褪色度を10人のパネラーに、実施例4と比較例6のどちらが優れているかを官能評価させた。また、染毛毛髪の褪色度については、色が濃い(褪色が少ない)方を優れているとして評価させた。その結果を表8に、実施例4が優れていると答えた人数、比較例6の方が優れていると答えた人数、実施例4と比較例6は同じであると答えた人数で示す。
【0085】
【表8】
【0086】
表8に示すように、実施例4のヘアコンディショナーで処理した毛髪は、比較例6のヘアコンディショナーで処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、なめらかさ、櫛通り性、まとまりやすさのいずれの評価項目においても評価値が高かった。また、毛髪の褪色度の評価でも、実施例4で処理を行った毛髪は比較例6で処理を行った毛髪に比べて処理後の毛髪の色が濃いと答えていた人が大多数であった。これらの結果から、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物は、毛髪に艶、はりを付与し、なめらかさ、櫛通り性およびまとまりやすさを向上させる効果に優れ、さらに染色毛髪の洗浄による褪色を抑制する作用にも優れていることが明らかであった。
【0087】
実施例5および比較例7
製造例3で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用いて下記の組成のヘアワックスを調製した。
【0088】
【0089】
また、上記とは別に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合せず、そのぶん滅菌イオン交換水を増量し、他の組成は実施例5と同一にしたヘアワックスを調製し、それを比較例7とした。
【0090】
上記2種類のヘアワックスについて10人のパネラーに頭髪に使用させ、使用後の艶、はり、こし、まとまりやすさについて評価させた。
【0091】
頭髪への使用方法は、頭髪を左右2つに分け、右または左の頭髪を実施例5のヘアワックスで処理し、他方の頭髪を比較例7のヘアワックスで処理させるハーフヘッド法で行なった。ヘアワックスの処理方法は、適量(頭髪の量や長さによって異なる)のヘアワックスを頭髪に塗布し、頭髪全体になじませるように手でもみ込むことにより行なわせた。
【0092】
各パネラーに処理後の頭髪の艶、はり、こし、まとまりやすさについて、良い方を〔1点〕とし、悪い方を〔0点〕として評価させた。その結果を表9に10人の合計点数で示す。
【0093】
【表9】
【0094】
表9に示すように、実施例5のヘアワックスで処理した毛髪は、比較例7のヘアワックスで処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、こし、まとまりやすさのいずれの項目においても評価値が高く、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解シルク−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物をヘアワックスに配合すると、処理後の毛髪に、艶、はり、こしを付与し、まとまりやすさを向上させることが明らかであった。
【0095】
実施例6および比較例8
製造例2で製造したN−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を用いて下記の組成のヘアスプレー原液を調製した後、ヘアスプレー原液:ジメチルエーテル=50:50(質量比 )の割合で混合してヘアスプレーを調製した。
【0096】
【0097】
また、上記とは別に、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物を配合せず、そのぶんエタノールを増量し、他の組成は実施例6と同一にしたヘアスプレーを調製し、それを比較例8とした。
【0098】
上記2種類のヘアスプレーについて10人のパネラーに実施例5と同様のハーフヘッド法で頭髪に均一に噴霧させ、噴霧後の頭髪の艶、はり、こし、まとまり性について実施例5と同様の評価基準で評価させた。その結果を表10に10人の合計点数で示す。
【0099】
【表10】
【0100】
表10に示すように、実施例6のヘアスプレーは、比較例8のヘアスプレーに比べて、噴霧後の頭髪の艶、はり、こし、まとまりやすさのいずれの項目においても評価値が高く、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3’−メチルジヒドロキシシリル)プロポキシ〕プロピル加水分解コラーゲン−ジメチルジエトキシシラン−オクチルトリエトキシシラン共重合組成物をヘアスプレーに配合すると、噴霧後の頭髪に、艶、はり、こしを付与し、まとまり性を向上させることが明らかであった。
Claims (2)
- 下記一般式(I)
で表されるシリル化ペプチドの一種以上と下記一般式(II)
R4 mSi(OH)pY(4−p−m) (II)
〔式中、mは0から2の整数で、pは2から4の整数、m+p≦4で、R4 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、m個のR4 は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−p−m)個のYはアルコキシ基または水素原子である〕
で表されるシラン化合物の一種以上とを、反応モル比がシリル化ペプチド:シラン化合物=1:1〜1:100の範囲で水溶液中で縮重合させた後、下記の一般式(III)
R5 3 Si(OH) (III)
〔式中、3個のR5 は炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であり、3個のR5 は同じでもよく、異なっていてもよい〕
で表されるシラン化合物を水溶液中で付加させることにより得られ、固形分濃度が70%の時の20℃における粘度が500〜20,000mPa・sの範囲内にあるシリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物を含有することを特徴とする毛髪処理剤。 - シリル化ペプチド−シラン化合物共重合組成物の含有量が0.01〜5質量%である請求項1記載の毛髪処理剤。
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2003
- 2003-04-11 JP JP2003107435A patent/JP2004315369A/ja active Pending
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