JP4646098B2 - 化粧品基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミノ基を含有する有機基が結合したシラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材に関し、さらに詳しくは、毛髪に対する収着性が優れ、毛髪に艶、潤い、なめらかさを付与し、毛髪の櫛通り性を改善する作用が優れ、さらに毛髪に適用後に加熱処理を行うと優れたセット力を発揮し、かつ毛髪にはりを付与する作用が優れ、皮膚に対しては艶、潤い、なめらかさなどを付与する作用が優れたアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、化粧品に、ポリペプチドとシリコーンオイル(有機シリコーン化合物)を配合してポリペプチドの有する毛髪への収着作用、皮膚刺激の緩和作用、造膜による保護作用や保湿作用などと、シリコーンオイルによる艶・光沢の付与作用、撥水性付与作用などを発揮させることが試みられてきた。
【0003】
しかしながら、シリコーンオイルは、本来、疎水性(親油性)物質であり、親水性のポリペプチドとは相溶しにくく、水溶性化粧品には乳化剤を併用して配合しているが、乳化安定性に欠け、化粧品としての商品価値が損なわれやすいという問題があり、さらに、化粧品に使用した場合、先にシリコーンオイルと接触した部分にはポリペプチドが付着しにくく、その逆に、先にポリペプチドと接触した部分にはシリコーンオイルが付着しにくいため、両者の特性を充分に発揮させることができないという問題があった。
【0004】
そのため、シリコーンに親水性を付与する目的でポリオキシアルキレン基を導入したポリオキシアルキレン変性シリコーンが水溶性化粧料に利用されているが、ポリペプチドとは異なり、イオン性を有しないため毛髪や皮膚に吸着しにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、それらの問題を解決するため、ペプチドのアミノ基にケイ素化合物を結合させたシリコーン誘導体ペプチド(特許第2748174号公報)やシリル化ペプチド(特開平8−59424号公報、特開平8−67608号公報)を提案し、化粧品基材や繊維処理剤の配合剤として使用することができるようにしてきた。また、同様の提案として特開平5−148119号公報もあり、いずれも化粧品などに配合して、ペプチドの有する特性とシリコーンの有する特性を同時に発揮させることが試みられてきた。
【0006】
しかしながら、これらのシリコーンが結合したペプチド誘導体やシラン化合物が結合したペプチド誘導体は、シリコーンやシラン化合物をペプチドの側鎖のアミノ基を含む末端アミノ基に結合させたものであるため、それらの窒素原子のイオン性が弱まり、ペプチドのアミノ基の作用による毛髪や皮膚への収着力が、アミノ基が遊離で存在するペプチドに比べ劣るという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、ポリペプチドの優れた特性の上にシリコーン化合物の優れた特性を有し、しかも毛髪や皮膚への収着性に優れ、毛髪に対しては艶、潤い、はりを付与することができる化粧品基材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記の一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体が、毛髪や皮膚への収着性に優れ、毛髪に対しては艶、潤い、はりを付与し、さらに、毛髪に適用して加熱処理を行うと強固な被膜を形成して優れたセット力を発揮し、しかも毛髪をなめらかにし、毛髪の櫛通り性を改善する作用が優れ、皮膚に対しては艶、潤い、なめらかさを付与する作用に優れ、特に毛髪用化粧品の化粧品基材として有用性が高いことを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0010】
【化2】
【0011】
〔式中、R1 はアミノ基を含有する有機基で、R2 、R3 、R4 、R5 はそれぞれ独立して水酸基、炭素数1〜4の低級アルキル基または炭素数1〜4の低級アルキコキシ基で、R2 、R3 、R4 、R5 のうち少なくとも2個は水酸基であり、R6 は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基を示し、R7 はR6 以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手でメチレン基、プロピレン基、−CH2 OCH2 CH(OH)CH2 −および−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0〜200、nは0〜200、m+nは1〜200である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなることを特徴とする化粧品基材に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
上記一般式(I)で示されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体は、ケイ素原子に直結する水酸基を1個以上有するシリル化ペプチドと加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個以上生じかつアミノ基を含有する有機基が結合するシラン化合物の1種以上を水溶液中で縮合させることによって得られる。
【0013】
ケイ素原子に直結する水酸基を1個以上有するシリル化ペプチドとしては、例えば、下記一般式(II)
【0014】
【化3】
【0015】
〔式中、R8 、R9 、R10のうち少なくとも1個は水酸基で、残りは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基を示し、R12はR11以外のアミノ酸側鎖を示し、Aは結合手で−CH2 −、−(CH2 )3 −および−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0〜200、nは0〜200、m+nは1〜200である(ただし、mおよびnはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるものが挙げられ、例えば、特開平8−59424号公報、特開平8−67608号公報などに開示の方法で水溶液中で容易に合成できる。
【0016】
上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、R11は側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く側鎖の残基であるが、上記のような側鎖の末端にアミノ基を有する塩基性アミノ酸としては、例えば、リシン、アルギニン、ヒドロキシリシンなどが挙げられる。また、R12はR11以外のアミノ酸側鎖を示すが、そのようなアミノ酸としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、チロシン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。
【0017】
一般式(II)で表されるシリル化ペプチドにおいて、mは0〜200、好ましくは0より大きく50以下(0<m≦50)、より好ましくは0より大きく10以下(0<m≦10)であり、nは0〜200、好ましくは1〜100、より好ましくは2〜40であり、m+nは1〜200、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜50である。
【0018】
すなわち、mが上記範囲より大きくなると、側鎖のアミノ基に結合するシリル官能基が増え、ペプチド本来の毛髪への収着作用が減少し、nが上記範囲より大きくなると、ペプチド部分に対するシリル官能基部分の割合が少なくなって、シリル官能基部分が有する特性を充分に発揮することができなくなり、m+nが上記範囲より大きくなると、ペプチドとしての毛髪への収着性や浸透性が低分子量のペプチドに比べて減少する上に、保存中に凝集しやすくなり、保存安定性が低下する。なお、上記のm、nやm+nは、理論的には整数であるが、ペプチド部分が後述するような加水分解ペプチドである場合は、該加水分解ペプチドが分子量の異なるものの混合物として得られるため、測定値は平均値になる。
【0019】
上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドの構成にあたって使用されるペプチド類には、アミノ酸、ペプチドなどが含まれ、アミノ酸としては、例えば、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、シスチン、システイン、システイン酸、トリプトファン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、O−ホスホセリン、シトルリンなどが挙げられる。
【0020】
上記ペプチドとしては、天然ペプチド、合成ペプチド、タンパク質(蛋白質)を酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分加水分解して得られる加水分解ペプチドなどが挙げられる。
【0021】
天然ペプチドとしては、例えば、グルタチオン、バシトラシンA、インシュリン、グルカゴン、オキシトシン、バソプレシンなどが挙げられ、合成ペプチドとしては、例えば、ポリグリシン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリセリンなどが挙げられる。
【0022】
加水分解ペプチドとしては、例えば、コラーゲン(その変成物であるゼラチンも含む)、ケラチン、絹フィブロイン(シルク)、セリシン、カゼイン、コンキオリン、エラスチン、鶏、あひるなどの卵の卵黄タンパク(蛋白)、卵白タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、トウモロコシタンパク、米(米糠)タンパク、ジャガイモタンパクなどの動植物由来のタンパク、あるいは、サッカロミセス属、カンディダ属、エンドミコプシス属の酵母菌や、いわゆるビール酵母、清酒酵母といわれる酵母菌より分離した酵母タンパク、キノコ類(担子菌)より抽出したタンパク、クロレラより分離したタンパクなどの微生物由来のタンパクを酸、アルカリ、酵素またはそれらの併用で部分的に加水分解して得られるペプチドが挙げられる。
【0023】
本発明の化粧品基材である一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体を得るには、まず、上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドの1種以上に、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個以上生じかつアミノ基を含有する有機基が結合するシラン化合物の1種以上を縮合させるが、このように加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個以上生じるアミノ基を含有する有機基の炭素原子がケイ素原子に直接結合するシラン化合物としては、例えば、下記の一般式(III)
R13aSiX(4−a) (III)
〔式中、aは1から3の整数で、R13は炭素原子がケイ素原子に直接結合するアミノ基を有する有機基であり、a個のR13は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−a)個のXは水酸基、アルコキシ基およびハロゲン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕
で表されるシラン化合物が挙げられ、このシラン化合物は加水分解によって下記の一般式(IV)
R13aSi(OH)bY(4−b−a) (IV)
〔式中、aは1から3の整数で、bは1から3の整数、a+b≦4で、R13は炭素原子がケイ素原子に直接結合するアミノ基を有する有機基であり、a個のR13は同じでもよく、異なっていてもよい。(4−b−a)個のYはアルコキシ基、水素原子およびシロキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基である〕で表されるシラン化合物になる。なお、上記一般式(III)および一般式(IV)におけるa、(4−a)、b、(4−b−a)はいずれも下付け文字である。
【0024】
このような一般式(III)で表されるシラン化合物の具体例としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
つぎに、前記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドで代表されるケイ素原子に直結する水酸基を1個以上有するシリル化ペプチドと、前記一般式(III)で表されるシラン化合物で代表される加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個以上生じるアミノ基を含有する有機基の炭素原子がケイ素原子に直接結合するシラン化合物との縮合反応について説明するが、その説明にあたり、上記ケイ素原子に直結する水酸基を1個以上有するシリル化ペプチドとしては前記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドを代表させて説明し、加水分解によってケイ素原子に直結する水酸基が1個以上生じるアミノ基を含有する有機基の炭素原子がケイ素原子に直接結合するシラン化合物としては前記一般式(III)で表されるシラン化合物を代表させて説明する。
【0026】
上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドと一般式(III)で表されるシラン化合物との反応は、例えば、まず、上記一般式(II)で表されるシリル化ペプチドの水溶液を塩酸や硫酸で酸性側に調整するか、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液で塩基性側に調整し、その中に一般式(III)で表されるシラン化合物を滴下することにより、上記アミノ基を有する有機基の炭素原子がケイ素原子に直接結合するシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基などが加水分解してケイ素原子に直結する水酸基を1個以上有する一般式(IV)で表されるシラン化合物になり、その後、中和することによって、一般式(II)で表されるシリル化ペプチドの水酸基と一般式(III)で表されるシラン化合物の水酸基とが縮合して一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体が得られる。上記のように、一般式(III)で表されるシラン化合物から一般式(IV)で表されるシラン化合物への加水分解は、一般式(II)で表されるシリル化ペプチドとの縮合時に行われるので、上記一般式(III)で表されるシラン化合物の加水分解を上記縮合系とは別の系で行う必要はない。
【0027】
加水分解反応は、一般にpH2〜3で良好に進行するが、一般式(II)で表されるシリル化ペプチドによっては酸性側で不溶物が生じやすいものがあり、その際にはpH10〜11で行うのが好ましい。一般式(III)で表されるシラン化合物としてアルコキシシラン化合物を用いるときはpH調整は該シラン化合物の滴下前のみでよいが、一般式(III)で表されるシラン化合物としてハロゲン化シラン化合物やカルボキシシラン化合物を用いて塩基性側で反応する場合は反応中にpHが下がるので、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などを添加してpHを10〜11に保つ必要がある。
【0028】
反応温度は低すぎると反応が進行しにくく、高すぎると上記一般式(III)で表されるシラン化合物のアルコキシ基やハロゲン基が急激に加水分解するので、30〜60℃が好ましい。また、反応時間は、反応量によっても異なるが、上記一般式(III)で表されるシラン化合物を30分〜2時間かけて滴下し、その後1〜6時間攪拌を続けるのが好ましい。
【0029】
加水分解反応の終了時点では、反応溶液が酸性または塩基性のため一般式(II)で表されるシリル化ペプチドや一般式(III)で表されるシラン化合物は充分には縮合していないので、反応溶液が酸性側の場合は水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、反応溶液が塩基性側の場合は希塩酸や希硫酸などの酸水溶液を添加し攪拌して溶液を中和する。この中和によってより縮合が進み目的とする一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体が得られるが、中和後の攪拌は2〜5時間程度が好ましい。
【0030】
前記の中和反応終了後、一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体を含む反応液はpHを調整した後、液体のままあるいは粉末化して化粧品や繊維処理剤などへの配合剤として使用に供され、また、必要に応じて、イオン交換樹脂、透析膜、電気透析、ゲル濾過、限外濾過などによって精製した後、液体のままあるいは粉末化して使用に供される。
【0031】
本発明の一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材が配合される化粧品としては、例えば、シャンプー、ヘアリンス、枝毛コート、パーマネントウェ−ブ用第1剤および第2剤、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、セットローション、ヘアカラー、ヘアトリートメントリンス、液体整髪料、ヘアパック、養毛・育毛剤などの毛髪化粧品、化粧水、アフターシェーブローション、シェービングフォーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、エモリエントクリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、洗顔フォームなどの各種クリーム、脱毛剤、フェイスパック、乳液、洗顔料、ボディーシャンプー、各種石鹸、メイキャップ用品、日焼け止め用品など各種化粧品に利用が可能であるが、加熱により重合して強固な被膜を形成するので、ヘアリンス、枝毛コート、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、セットローション、整髪料などの毛髪化粧品に使用するのが特に好ましい。
【0032】
そして、本発明の上記一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材の配合量としては、化粧品中0.1〜30重量%、特に1〜20重量%程度にするのが好ましい。すなわち、一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体の化粧品中への配合量が上記範囲より少ない場合は、毛髪上に被膜を形成して毛髪に艶や潤いを付与したり、毛髪を保護したり、櫛通り性を改善する効果が充分に発現せず、また、一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体シラン化合物の化粧品中への配合量が上記範囲より多くなっても、それに伴う効果の増加がみられず、むしろ毛髪や皮膚にゴワツキを生じるおそれがあり、特に毛髪に使用して加熱処理する場合には毛髪の滑らかさが損なわれるおそれがある。
【0033】
また、上記化粧品に、本発明の上記一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材と併用して配合できる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤類、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、半合成ポリマー類、動植物油、炭化水素類、エステル油、高級アルコール類などの油剤、天然多糖類、保湿剤、低級アルコール類、アミノ酸類、動植物および微生物由来の蛋白質をを加水分解した加水分解ペプチドおよびそれらの四級化誘導体、エステル誘導体、アシル化誘導体類、動植物抽出物、防腐剤、香料などを挙げることができるが、これら以外にも本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【0034】
また、本発明の上記一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材は、鎖状または環状のメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変成シリコーンなどのシリコーンを併用した場合に、それらシリコーンの乳化安定性を向上させるとともに、シリコーンの作用を増加させることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の上記一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧品基材は、ペプチドの優れた特性の上にシリコーン化合物の優れた特性を有し、毛髪や皮膚への収着性に優れ、毛髪に対しては艶、潤い、はりを付与し、しかも毛髪をなめらかにし、毛髪の櫛通り性を改善する作用が優れ、皮膚に対しては艶、潤い、なめらかさを付与する作用に優れるなどの特性を有している。
【0036】
さらに、本発明の上記一般式(I)で表されるアミノ基含有シラン化合物を付加したペプチド誘導体からなる化粧料基材は、加熱により重合が進み、強固な被膜を形成するので、毛髪に適用して加熱処理を行うと優れたセット力を発揮し、しかも毛髪をなめらかにし、毛髪の櫛通り性を改善する作用が優れ、枝毛を防止して毛髪を保護する効果にも優れる。
【0037】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例、応用例などにおいて、溶液や分散液などの濃度を示す%はいずれも重量%である。
【0038】
実施例1および比較例1
数平均分子量2000の加水分解コラーゲンの25%水溶液250g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として38ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5にし、55℃に加温した。その溶液を攪拌しながら、その中に、シリル化剤として、(γ−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン9.4g(加水分解コラーゲンのアミノ態窒素量に対し1.0当量)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させてシリル化加水分解コラーゲンを得た。
【0039】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解コラーゲンのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は66%であった。このようにして得られたシリル化加水分解コラーゲンの一部を取り、以下の試験で用いる比較例1の試料とした。
【0040】
つぎに、このシリル化加水分解コラーゲン水溶液に希塩酸を添加してpHを3.5に調整し、この溶液を55℃で攪拌しながら、その中にアミノプロピルトリエトキシシラン5.5g(導入されたシリル基の1.0当量)を30分かけて滴下し、滴下終了後さらに55℃で3時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0041】
反応液を希水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、電気透析装置で脱塩し、pHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体の濃度が10%の水溶液を570g得た。
【0042】
得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体およびその原料であるシリル化加水分解コラーゲンをそれぞれ(株)島津製作所製のFT−IR8200PC(以下、FT−IRという)で、液体用セルを用いて分析して比較したところ、上記アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体ではその原料のシリル化加水分解コラーゲンより1250cm-1付近のSi−CH3 に起因すると考えられるピークが増強され、また、Si−Oに起因すると考えられる1100cm-1付近のピークが検出され、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体がSi−O−Si結合を有していることが確認された。
【0043】
ここで、この実施例1で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体を一般式(I)に照らして説明すると、上記実施例1で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体は、一般式(I)において、R1 がアミノプロピル基、R2 が水酸基、R3 が水酸基、R4 がメチル基、R5 が水酸基、R6 が塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除いた残基、R7 が加水分解コラーゲンを構成するアミノ酸の側鎖で、Aが−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、mの平均値が1.5、nの平均値が18.5、m+nの平均値が20であるものに相当する。
【0044】
実施例2および比較例2
数平均分子量800の加水分解小麦タンパクの25%水溶液300g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として82.6ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5にし、55℃に加温した。その溶液を攪拌しながら、その中に、シリル化剤として、(γ−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン18g(加水分解小麦タンパクのアミノ態窒素量に対し0.9当量)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させてシリル化加水分解小麦タンパクを得た。
【0045】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解小麦タンパクのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は67%であった。このようにして得られたシリル化加水分解小麦タンパクの一部を取り、以下の試験で用いる比較例2の試料とした。
【0046】
つぎに、このシリル化加水分解小麦タンパクの水溶液を55℃で攪拌しながら、その中にアミノプロピルトリエトキシシラン10g(導入されたシリル基の0.8当量)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに55℃で3時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0047】
反応液を希塩酸で中和した後、電気透析装置で脱塩し、pHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体の濃度が20%の水溶液を421g得た。
【0048】
得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体およびその原料であるシリル化加水分解小麦タンパクをそれぞれ実施例1と同様の方法でFT−IRで分析して比較したところ、上記アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体では1250cm-1付近のSi−CH3 に起因すると考えられるピークが増強され、また、Si−Oに起因すると考えられる1100cm-1付近のピークが検出され、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体がSi−O−Si結合を有していることが確認された。
【0049】
ここで、この実施例2で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体を一般式(I)に照らして説明すると、上記実施例2で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体は、一般式(I)において、R1 がアミノプロピル基、R2 が水酸基、R3 が水酸基、R4 がメチル基、R5 が水酸基、R6 が塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除いた残基、R7 が加水分解小麦タンパクを構成するアミノ酸の側鎖で、Aが−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、mの平均値が0.4、nの平均値が7.6、m+nの平均値が8であるものに相当する。
【0050】
実施例3および比較例3
数平均分子量600の加水分解大豆タンパクの25%水溶液250g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として107.5ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5にし、55℃に加温した。その溶液を攪拌しながら、その中に、シリル化剤として、(γ−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン24g(加水分解大豆タンパクのアミノ態窒素量に対し0.9当量)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させてシリル化加水分解大豆タンパクを得た。
【0051】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解大豆タンパクのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は69%であった。このようにして得られたシリル化加水分解大豆タンパクの一部を取り、以下の試験で用いる比較例3の試料とした。
【0052】
つぎに、このシリル化加水分解大豆タンパクの水溶液を55℃で攪拌しながら、その中にアミノプロピルトリエトキシシラン11.5g(導入されたシリル基の0.8当量)を30分かけて滴下し、滴下終了後、さらに55℃で3時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0053】
反応液を希塩酸でpHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体の濃度が20%の水溶液を374g得た。
【0054】
得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体およびその原料であるシリル化加水分解大豆タンパクをそれぞれ実施例1と同様にFT−IRで分析して比較したところ、上記アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体では1250cm-1付近のSi−CH3 に起因すると考えられるピークが増強され、また、Si−Oに起因すると考えられる1100cm-1付近のピークが検出され、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体がSi−O−Si結合を有していることが確認された。
【0055】
ここで、この実施例3で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体を一般式(I)に照らして説明すると、上記実施例3で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパク誘導体は、一般式(I)において、R1 がアミノプロピル基、R2 が水酸基、R3 が水酸基、R4 がメチル基、R5 が水酸基、R6 が塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除いた残基、R7 が加水分解大豆タンパクを構成するアミノ酸の側鎖で、Aが−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、mの平均値が0.6、nの平均値が5.4、m+nの平均値が6であるものに相当する。
【0056】
実施例4および比較例4
数平均分子量500の加水分解ケラチンの25%水溶液250g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として172ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5にし、55℃に加温した。その溶液を攪拌しながら、その中に、シリル化剤として、(γ−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン34g(加水分解ケラチンのアミノ態窒素量に対し0.8当量)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させてシリル化加水分解ケラチンを得た。
【0057】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解ケラチンのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は72%であった。この得られたシリル化加水分解ケラチンの一部を取り、以下の試験で用いる比較例4の試料とした。
【0058】
つぎに、このシリル化加水分解ケラチン水溶液に希塩酸を添加してpHを3.5に調整し、この溶液を55℃で攪拌しながら、その中にアミノプロピルトリエトキシシラン21.9g(導入されたシリル基の0.8当量)を1時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに55℃で3時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0059】
反応液を希水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体の濃度が20%の水溶液を322g得た。
【0060】
得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体およびその原料であるシリル化加水分解ケラチンをそれぞれ実施例1と同様にFT−IRで分析して比較したところ、上記アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体では1250cm-1付近のSi−CH3 に起因すると考えられるピークが増強され、また、Si−Oに起因すると考えられる1100cm-1付近のピークが検出され、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体がSi−O−Si結合を有していることが確認された。
【0061】
ここで、この実施例4で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体を一般式(I)に照らして説明すると、上記実施例4で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチン誘導体は、一般式(I)において、R1 がアミノプロピル基、R2 が水酸基、R3 が水酸基、R4 がメチル基、R5 が水酸基、R6 が塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除いた残基、R7 が加水分解ケラチンを構成するアミノ酸の側鎖で、Aが−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、mの平均値が0.7、nの平均値が4.3、m+nの平均値が5であるものに相当する。
【0062】
実施例5および比較例5
数平均分子量1000の加水分解シルクの20%水溶液250g(アミノ態窒素の測定によって得られた化学量論的モル数として69ミリモル)に20%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.5にし、55℃に加温した。その溶液を攪拌しながら、その中に、シリル化剤として、(γ−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン17.3g(加水分解シルクのアミノ態窒素量に対し1.0当量)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、55℃でさらに5時間攪拌を続け、反応を完結させてシリル化加水分解シルクを得た。
【0063】
反応終了後、アミノ態窒素を測定することにより、シリル官能基の加水分解シルクのアミノ態窒素への導入率を求めたところ、シリル官能基の導入率は65%であった。このようにして得られたシリル化加水分解シルクの一部を取り、以下の試験で用いる比較例5の試料とした。
【0064】
つぎに、このシリル化加水分解シルクの水溶液に希塩酸を添加してpHを3.5に調整し、この溶液を55℃で攪拌しながら、その中にアミノプロピルトリエトキシシラン9.9g(導入されたシリル基の1.0当量)を30分かけて滴下し、滴下終了後さらに55℃で3時間攪拌を続けて反応を完結させた。
【0065】
反応液を希水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、電気透析で脱塩し、pHを6.5に調整した後、濃縮して濃度調整を行うことにより、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体の濃度が10%の水溶液を476g得た。
【0066】
得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体およびその原料であるシリル化加水分解シルクをそれぞれ実施例1と同様にFT−IRで分析して比較したところ、上記アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体では1250cm-1付近のSi−CH3 に起因すると考えられるピークが増強され、また、Si−Oに起因すると考えられる1100cm-1付近のピークが検出され、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体がSi−O−Si結合を有していることが確認された。
【0067】
ここで、この実施例5で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体を一般式(I)に照らして説明すると、上記実施例5で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解シルク誘導体は、一般式(I)において、R1 がアミノプロピル基、R2 が水酸基、R3 が水酸基、R4 が水酸基、R5 が水酸基、R6 が塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除いた残基、R7 が加水分解シルクを構成するアミノ酸の側鎖で、Aが−(CH2 )3 OCH2 CH(OH)CH2 −、mの平均値が0.6、nの平均値が9.4、m+nの平均値が10であるものに相当する。
【0068】
〔毛髪への収着性試験〕
上記実施例1〜5で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体の毛髪表面への収着性を実施例1〜5のそれぞれの原料である比較例1〜5のシリル化加水分解ペプチドと比較した。
【0069】
試験には、あらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾した重さ約1gで長さ10cmの毛束を用いた。この毛束の重量を精秤した後、それぞれの毛束を実施例1〜5のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体および比較例1〜5のシリル化ペプチドのそれぞれ10%水溶液50g中に40℃で5分間浸漬し、室温で10分間ハンガーに吊るして過剰の溶液を落下させて除去した後、80℃の恒温槽で1時間乾燥した。乾燥後の毛束の重さを精秤し、処理前後の重量の変化を比較した。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、実施例1〜5のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体で処理した毛束の重量の増加率はいずれも10%以上あり、比較例1〜5のシリル化加水分解ペプチドで処理した毛束の重量増加率よりそれぞれ2倍程度高く、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体の毛髪表面への収着性が優れていることが明らかであった。
【0072】
なお、ブランクの処理後の毛束の重量が処理前に比べて減少しているのは、毛束の処理にイオン交換水を用いたため、毛髪中の成分が溶出したためであるが、この減量値を加算すると、実施例1〜5のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体で毛髪を処理すると、元の毛髪重量の約15〜20%のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体が毛髪に付着することになる。
【0073】
〔アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体による毛髪の引張り強度増強確認試験〕
シリル化ペプチドによる毛髪の引張り強度増強の確認は、Journal of SCCJ,Vol.21,No.2,p.127の「毛髪の損傷度評価法(I)」に記載の方法に従って行った。
【0074】
試験には、試料として用いる毛髪の強度のバラツキを低く抑えるため、毛髪の強度がほぼ一定となるように一度脱色処理を施した毛髪を用いた。すなわち、長さ10cmで重さ1gの毛束を10%過酸化水素水と10%アンモニア水の1:1混合液10gに30分間浸漬して脱色し、イオン交換水でゆすいだ後、乾燥して試験に供した。
【0075】
試験液には、実施例1および比較例1で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体およびシリル化加水分解コラーゲンの5%水溶液と、実施例2および比較例2で得られたアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体およびシリル化加水分解小麦タンパクの5%水溶液を用いて、それらの中に上記の脱色処理を施した毛束を40℃で5分間浸漬した。浸漬後、イオン交換水で充分にゆすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。この操作を3回繰り返した後、この毛束より30本の毛髪を抜き取り、それらを引張り強度試験に供した。
【0076】
引張り強度試験では、各毛髪の中央部(端から5cm)の長径および短径をマイクロメータで測定して断面積を計算した後、この部分の引張り強度を引張り強度試験機〔不動工業(株)製、レオメータ〕で測定し、断面積当りの引張り強度を算出した。
【0077】
比較の対照には、脱色処理のみを施した未処理毛と、加水分解コラーゲン(数平均分子量2000)の5%水溶液と加水分解小麦タンパク(数平均分子量800)の5%水溶液で同様に処理を施した毛髪の引張り強度を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示すように、実施例1のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲン誘導体で処理した毛髪は未処理毛に対して引張り強度が約16%増加し、実施例2のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパク誘導体で処理した毛髪は未処理毛に対して約12%引張り強度が増加していた。また、比較例1のシリル化加水分解コラーゲンで処理した毛髪や比較例2のシリル化加水分解小麦タンパクで処理した毛髪も、シリル化していない同じ分子量の加水分解コラーゲンや加水分解小麦タンパクで処理した毛髪に比べると、それぞれ強度の増加が認められるが、シリル化ペプチドにアミノ基含有シラン化合物を付加したアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体では、さらに毛髪への収着性、損傷毛の強度回復が向上することが明らかであった。
【0080】
〔応用例〕
つぎに、本発明のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ペプチド誘導体からなる化粧品基材を各種化粧品に配合した応用例について説明する。なお、配合量は重量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名の後ろに括弧書きで固形分濃度を示す。
【0081】
応用例1
表3に示す組成の3種類のトリートメントベース(実施品1および比較品1〜2)を調製し、該トリートメントベースとLPGガスを重量比8:2の割合で加圧容器内に充填して、トリートメントムース剤を調製した。
【0082】
【表3】
【0083】
上記実施品1および比較品1〜2のトリートメントムース剤0.5gずつをそれぞれ長さ10cmで重さ1gの毛束に塗布し、ヘアドライヤーで乾燥後、5人の女性パネラーに毛髪の艶、潤い、櫛通り性について5段階評価させた。評価基準は下記の通りであり、その結果を表4に平均値で示す。
【0084】
評価基準
5 : 非常に良い
4 : 良い
3 : 普通
2 : 悪い
1 : 非常に悪い
【0085】
【表4】
【0086】
表4に示すように、実施例1のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲンを配合した実施品1のトリートメントムース剤は、比較例1のシリル化加水分解コラーゲンを配合した比較品1のトリートメントムース剤やシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサンエマルジョン)を配合した比較品2のトリートメントムース剤に比べて、艶、潤い、櫛通り性のいずれにおいても評価値が高く、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解コラーゲンを配合した効果が明らかであった。
【0087】
応用例2
表5に示す組成の3種類のシャンプー(実施品2および比較品3〜4)を調製した。
【0088】
【表5】
【0089】
上記実施品2および比較品3〜4のシャンプーを用いて、それぞれ長さ10cmで重さ1gの毛束を洗浄した。洗浄には各シャンプー0.5gずつを使用し、温水を用いて洗浄後、温水ですすいだ後、ヘアドライヤーで乾燥した。この操作を5回繰り返した後、5人の女性パネラーに、洗髪後の毛髪の艶、潤い、なめらかさ、櫛通り性および洗髪時の泡の感触(軟らかさおよびなめらかさ)について応用例1と同様の評価基準で評価させた。その結果を表6に示すが、評価値は平均値である。
【0090】
【表6】
【0091】
表6に示すように、実施例2のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパクを配合した実施品2のシャンプーは、シリル化加水分解小麦タンパクを配合した比較品3のシャンプーやシリコーンオイル(オクタメチルトリシロキサン)を配合した比較品4のシャンプーに比べて、いずれの項目でも評価値が高く、アミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解小麦タンパクを配合した効果が明らかであった。
【0092】
応用例3
表7に示す組成の3種類のパーマネントウェーブ用第1剤(実施品3および比較品5〜6)を調製した。
【0093】
【表7】
【0094】
パーマネントウェーブ処理にあたっては、試験用毛束として重さ1gで長さ18cmの毛束を用い、その毛束を直径2cmのパーマ用ロッドに巻き付け、そのロッドに巻き付けた毛束のそれぞれに実施品3および比較品5〜6のパーマネントウエーブ用第1剤0.5mlずつを塗布し、15分間放置後、水道水の流水で水洗し、つぎに、第2剤として6%臭素酸ナトリウム水溶液を0.5mlずつ塗布し、15分間放置後、水道水の流水で水洗し、ヘアドライヤーで乾燥した。このパーマネントウエーブ処理工程を5回繰り返し、それぞれ1回目、3回目、5回目の処理が終了した段階で、毛髪の外観および触感について、5名の女性パネラーに応用例1と同様の評価基準で評価させた。その結果を表8に示すが、評価値は平均値である。
【0095】
【表8】
【0096】
表8に示すように、実施例3のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパクを配合した実施品3のパーマネントウェーブ用第1剤による場合は、シリル化加水分解大豆タンパクを配合した比較品5のパーマネントウェーブ用第1剤による場合やアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパクやシリル化加水分解大豆タンパクを配合していない比較品6のパーマネントウェーブ用第1剤による場合に比べて、処理後の毛髪の外観、触感とも評価値が高く、実施例3のアミノ基含有シラン化合物を付加したシリル化加水分解大豆タンパクを配合した効果が明らかであった。
【0097】
応用例4
表9に示す組成の3種類の酸化型染毛剤第1剤(実施品4および比較品7〜8)を調製した。
【0098】
【表9】
【0099】
第2剤には下記の組成の溶液を用いた。
[第2剤組成]
ステアリン酸 1.0部
モノステアリン酸グリセリン 1.5部
ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル 1.0部
過酸化水素水(35%) 15.5部
滅菌イオン交換水 計100部とする
【0100】
実施品4および比較品7〜8の酸化型染毛剤第1剤と上記第2剤を用いて、それぞれ重さ1gで長さ15cmの毛束を染毛した。染毛処理は、第1剤と第2剤を同量ずつ混合し、その混合物1gずつを毛束に塗布した後、30分間放置し、その後、温水ですすぎ、ついで、2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄することによって行った。染毛処理後ヘアドライヤーで毛束を乾燥した後、毛髪の艶、潤いおよび櫛通り性を10人のパネラー(女性6人、男性4人)に、応用例1と同じ評価基準で評価させた。その結果を表10に示すが、評価値は平均値である。
【0101】
【表10】
【0102】
表10に示すように、実施例4のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解ケラチンを配合した実施品4の酸化型染毛剤第1剤は、比較例4のシリル化加水分解ケラチンを配合した比較品7の酸化型染毛剤第1剤やシリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)を配合した比較品8の酸化型染毛剤第1剤に比べて、染毛後の毛髪の艶、潤い、櫛通り性のいずれに関しても評価値が高かった。
【0103】
応用例5
表11に示す組成の3種類のヘアリンス(実施品5および比較品9〜10)を調製した。
【0104】
【表11】
【0105】
上記ヘアリンスによる毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ15cmで重さ1gの毛束を6本用意し、それらの毛束を加水分解ペプチドやその誘導体を含まない市販のシャンプーで洗浄し、お湯でゆすいだ。この洗浄後の毛束に対して、実施品5および比較品9〜10のヘアリンスをそれぞれ2gずつ使用してヘアリンス処理した後、お湯でゆすぎ、実施品5と比較品9〜10のヘアリンスで処理した毛束のうちそれぞれ1本を1000Wの市販のヘアドライヤーで10cmの離れたところから熱風を当てて乾燥した。また、実施品5と比較品9〜10のヘアリンスで処理した毛束のそれぞれの残り1本はヘアドライヤーで冷風乾燥した。このシャンプー洗浄、ヘアリンス処理、乾燥の工程を5回繰り返した後、毛髪の艶、潤いを10人の女性パネラーに応用例1と同じ評価基準で評価させた。その結果を表12に平均値で示す。
【0106】
【表12】
【0107】
表12に示すように、アミノ基含有シラン化合物を付加したシリル化加水分解シルクを含有する実施品5のヘアリンスを使用して加熱乾燥した毛髪は、同じヘアリンスを使用して冷風乾燥した毛髪に比べて、毛髪の艶、潤い、櫛通り性のいずれにおいても評価値が高く、加熱処理によってアミノ基含有シラン化合物を付加したシリル化加水分解シルクが有する毛髪への艶、潤い、櫛通り性の付与作用が高められることが明らかであった。また、シリル化加水分解シルクを含有する比較品9のヘアリンスも、加熱乾燥した毛髪は冷風乾燥した毛髪に比べて毛髪への艶、潤い、櫛通り性の付与作用が高められるのが認められるが、評価値は実施品5に比べて低かった。一方、アミノ基含有シラン化合物を付加したシリル化加水分解シルクやシリル化加水分解シルクを含有しない比較品10のヘアリンスで処理した場合は、加熱処理した毛髪の方が加熱処理しない毛髪より評価値が低かったが、これは、加熱処理によって毛髪中の水分が蒸散し、毛髪の艶、潤いが失われ、櫛通り性が悪くなったためと考えられる。
【0108】
応用例6
表13に示す組成の3種類のボディシャンプー(実施品6および比較品11〜12)を調製した。
【0109】
【表13】
【0110】
上記実施品6および比較品11〜12のボディシャンプーを10人のパネラー(男性5人、女性5人)に2週間にわたってそれぞれのボディシャンプーを3回以上使用させ(使用量は各人で異なる)、洗浄時の泡質の(軟らかさおよびなめらかさ)および洗浄後の肌のなめらかさおよびしっとり感について下記の基準で評価させた。その結果を表14に10人の平均値で示す。
【0111】
評価基準
最も良いもの : 2
次に良いもの : 1
劣るもの : 0
【0112】
【表14】
【0113】
表14に示すように、実施例3のアミノ基含有シラン化合物を付加した加水分解大豆タンパクを配合した実施品6のボディシャンプーを使用した場合は、洗浄時の泡が軟らかく、なめらかで、使用後は肌になめらかさとしっとり感を与え、比較例3のシリル化加水分解大豆タンパクを配合した比較品11のボディーシャンプーやシリコーンオイル〔ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体〕を配合した比較品12のボディシャンプーよりも優れていることが明らかであった。
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