JP3996701B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、加熱時の形状保持性に優れる軟質性熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車分野、家電機器分野、OA機器分野等における軟質性樹脂として、PVC系、オレフィン系、ウレタン系等の樹脂が使用されている。なかでもPVC系の軟質性樹脂は、軟質PVCとして広く使用されているが、可塑剤を多量に添加する必要があり、加熱減量等に問題があった。 また、PVC以外の軟質性樹脂は、例えばスチレン系の軟質樹脂では、軟質成分としてイソプレン、ブタジエン等のセグメントを持つ樹脂が提案されていが、ハードセグメントとソフトセグメントをブロック共重合体とするため、非水系での特殊な重合方法で合成する必要があり、設備、生産性等の点で特に経済性に劣るという欠点があった。
【0003】
また、スチレン系樹脂では、特開昭59−20346号にゴム強化スチレン系樹脂に特定の可塑剤を添加する方法が開示されているが、可塑剤の揮発があり満足できるものではない。また、ABS系樹脂とアクリル酸エステル系共重合体の組成物について、特開昭58−179257号にゴム含有スチレン系樹脂とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物、特開昭63−17954号にゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とABS樹脂とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物が耐薬品性を向上することが記載されているが、これらの組成物では軟質性に著しく劣り、本発明の目的とする軟質性に優れた樹脂は得られていない。
さらに、特開平8−027336号に記載されているゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物においても、本発明に類するような軟質性に優れた樹脂は得られていない。また、ABS系樹脂(マトリックスがスチレン−アクリロニトリル系共重合体やスチレン−アクリロニトリル−マレイミド系共重合体)のグラフト共重合体(ゴム)に関する効果は、数多く提案されているが、スチレン−アクリロニトリル系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体とからなる樹脂に適したグラフト共重合体(ゴム)の提案は見当たらない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き問題を解消し、軟質性、加熱時の形状保持性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、軟質性を維持させるためには、ガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)が必須と考えた。さらに、弾性を付与するためには、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)を拘束する必要があり、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)とガラス転移温度あるいは融点が50℃以上の共重合体(ロ)からなるマトリックスのミクロ相分離を微妙に制御した特殊な相構造を持つ必要があると考えた。更にグラフト共重合体(ハ)を使用することあるいは(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)自体も緩やかに拘束することも考慮した。
【0006】
これらの観点から、本発明者らは、鋭意検討した結果、特定組成の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、ガラス転移温度あるいは融点が50℃以上の特定組成のスチレン系共重合体(ロ)及び特定組成のグラフト共重合体(ハ)からなる組成物が、軟質性に優れることを見出だし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステル40〜90重量%、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物50重量%以下及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるガラス転移温度が20℃以下であり、かつゲル含量が50重量%以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)25〜90重量部と、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体(但し、マレイミド系単量体を除く)0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるガラス転移温度あるいは融点が50℃以上のスチレン系共重合体(ロ)5〜75重量部、及び体積平均粒径50〜1000nmのジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体(A)10〜90重量部に、芳香族ビニル化合物5〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の1種以上10〜95重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物10〜90重量部を重合してなるグラフト共重合体(ハ)10〜55重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)合わせて100重量部]からなり、JIS K6301法による20℃の硬度が30〜100である熱可塑性樹脂組成物を内容とする。
【0007】
本発明で特に重要なのは(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)である。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)は、ガラス転移温度が20℃以下、好ましくは−80℃〜15℃、更に好ましくは−70℃〜10℃である。ガラス転移温度が20℃を越えると軟質性が著しく低下する。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)は、軟質性、加工性の点から(メタ)アクリル酸エステル40〜90重量%、好ましくは45〜85重量%、更に好ましくは50〜80重量%、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、更に好ましくは18〜33重量%、芳香族ビニル化合物50重量%以下、好ましくは40重量%以下、更に好ましくは2〜32重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%(合計100重量%)を重合してなる共重合体である。
【0008】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)は、軟質性の点から、ゲル含有量[ゲル含有量とは、メチルエチルケトン、2%溶液を23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残査を乾燥し、(濾過残査重量/元の重量)×100で表した値である。]が50重量%以下、成形加工性の点から好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、10重量%以下である。50重量%を越えると成形加工性、外観性が著しく低下する。
【0009】
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)は、引張強度、加工性の点から好ましくは0.3〜5.0dl/g、特に好ましくは0.4〜4.0dl/g、更に好ましくは0.45〜3.0dl/gである。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、ブチル(メタ)アクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0010】
シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちではアクリロニトリルが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらのうちではスチレンが工業的見地から好ましい。
共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体、及び(メタ)アクリル酸およびその2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0011】
本発明のスチレン系共重合体(ロ)は、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体(但し、マレイミド系単量体を除く)0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるガラス転移温度あるいは融点(Mp)が50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上の共重合体である。ガラス転移温度あるいは融点が50℃未満であると加熱時形状保持性、軟質性が低下する。スチレン系共重合体(ロ)は、必要に応じ、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂からなる群のうちから選ばれる少なくとも1 種の熱可塑性樹脂と併用することが可能である。
【0012】
スチレン系共重合体(ロ)としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。耐衝撃性、加工性の点から、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、必要に応じ、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合可能な単量体を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜2.0dl/g、更に0.4〜1.5dl/g、特に0.45〜1.2dl/gが好ましい。
【0013】
スチレン系共重合体(ロ)は、機械的特性、加工性の点から、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体(但し、マレイミド系単量体を除く)0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるスチレン系共重合体であることが好ましい。スチレン系共重合体(ロ)のシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが特に好ましい。これらは、単独または2種以上組み合わせて用いられる。共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸およびそのメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシエチル、2−エチルヘキシル、グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等が挙げられる。これらは、単独または2種以上あっても良い。
【0014】
塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル80重量%以上とエチレン等の他の共重合可能なビニル系単量体20重量%以下の共重合体、後塩素化塩化ビニル等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂の重合度は、機械的特性、加工性の点から、好ましくは300〜2000、更に好ましくは400〜1500、更に好ましくは450〜1300である。
【0015】
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA系ポリカーボネート等が挙げられる。機械的特性、加工性の点から、好ましくは数平均分子量で1,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
エステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。機械的特性、加工性の点から、好ましくは数平均分子量で1,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
【0016】
アミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6、6、ナイロン12等が挙げられる。機械的特性、加工性の点から、好ましくは数平均分子量で1,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0017】
グラフト共重合体(ハ)におけるゴム重合体(A)は、好ましくは体積平均粒径50〜1000nm、更に好ましくは60〜900nm、特に好ましくは70〜800nmのジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体からなる群のなかから選ばれる少なくとも1種のゴム重合体である。グラフト共重合体(ハ)のゴム重合体(A)の体積平均粒径50nm未満、あるいは1000nmを越えるばあいには機械的特性が低下する傾向にある。ゴム重合体(A)は、体積平均粒径の異なる2種以上を混合したものであっても構わない。
【0018】
ゴム重合体(A)の具体例としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のオレフィン系重合体、ポリアクリル酸エステルゴム、エチレン−アクリル酸エステルゴム等のアクリル系ゴム重合体、ポリジメチルシロキサンゴム、ポリジメチルシロキサン−アクリル複合ゴム等のシリコン系ゴム重合体が挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いられる。ゴム重合体(A)は、酸基含有ラテックス(S)を使用する肥大法により製造されたものが好ましい。
【0019】
ゴム重合体(A)は、ゴムラテックスに対して、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12の少なくとも1種の(メタ)アルキルアクリレート(d)50〜95重量%、及び(c)、(d)と共重合可能な単量体0〜40%を重合させることにより調整した酸基含有ラテックスを使用する凝集肥大法により製造したゴム重合体が好ましい。
【0020】
グラフト共重合体(ハ)は、好ましくはゴム重合体(A)10〜90重量部、更に好ましくは20〜85重量部、特に好ましくは30〜80重量部にビニル単量体10〜90重量部、更に好ましくは15〜80重量部、特に好ましくは20〜70重量部を重合してなる。ビニル単量体としては、好ましくは芳香族ビニル化合物5〜90重量%、更に好ましくは10〜85重量%、特に好ましくは15〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の1種以上10〜95重量%、特に好ましくは15〜90重量%、更に好ましくは20〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜15重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物である。上述の範囲外では、機械的特性、加工性が低下する傾向にある。
【0021】
グラフト共重合体(ハ)のシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、メチルメタアクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは、単独または2種以上であっても良い。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)25〜90重量部、軟質性の点から好ましくは30〜85重量部、特に好ましくは35〜80重量部とスチレン系共重合体(ロ)15〜75重量部、好ましくは10〜65重量部、特に好ましくは15〜60量部、及びグラフト共重合体(ハ)10〜55重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)合わせて100重量部]からなる。上述の範囲外では、軟質性あるいは加熱時形状保持性が低下する。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物で最も重要なのは、JIS K6301法による20℃の硬度である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、JIS K6301法による20℃の硬度が30〜100であり、軟質性の点から好ましくは40〜98、更に好ましくは45〜97である。
【0024】
本発明の範囲の組成が得られれば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)、グラフト共重合体(ハ)はいかなる重合法、開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤を用いて製造したものでもかまわない。例えば、公知の塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法等、本発明の範囲内の組成に制御できればどの重合法によって製造したものでもよい。グラフト共重合体(ハ)は、グラフト率を制御しやすい点から、乳化重合法が好ましい。更に、ミクロ構造制御及び工業的見地から、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)、グラフト共重合体(ハ)は、いずれも乳化重合法が好ましい。
【0025】
また、本発明の範囲であれば、いかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわない。開始剤は、過硫酸カリウム等の熱分解開始剤、Fe−還元剤−有機パーオキサイド等のレドックス系開始剤等公知の開始剤が使用できる。t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、αーメチルスチレンダイマー、テルピノレン等公知の連鎖移動剤が使用できる。乳化剤としてはオレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ等の脂肪酸金属塩系乳化剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ等のスルホン酸金属塩系乳化剤等公知の乳化剤が使用できる。
【0026】
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)、グラフト共重合体(ハ)以外の重合体、例えば、NBR(ニトリルブタジエンゴム)等の汎用のゴム重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の公知の熱可塑性エラストマーやポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリイミド等の他の熱可塑性樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を目的に応じて更に添加して使用できる。
【0027】
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物は、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤を必要に応じて適宜使用できる。特に、スチレン系共重合体(ロ)に用いられるフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤及びオルガノポリシロキサン、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル、高級脂肪酸のアミドまたはビスアミドおよびその変性体、オリゴアミド、高級脂肪酸の金属塩類等の内部滑剤、外滑剤等は成形用樹脂として、より高性能なものとするために用いることができる。これらの安定剤は、単独でもまた2種以上混合して使用することもできる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)、グラフト共重合体(ハ)の樹脂混合物は、その製造方法によって異なるが、例えば、これらをラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレット等の状態あるいはこれらの組合わせにて混合して、製造できる。重合後の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)のラテックス、スチレン系共重合体(ロ)のラテックスおよび又はグラフト共重合体(ハ)のラテックスからポリマー粉末を回収する場合は通常の方法、例えばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸及び有機酸を添加することでラテックスを凝固した後、脱水乾燥する方法で実施できる。またスプレー乾燥法も使用できる。
【0029】
安定剤使用量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)、グラフト共重合体(ハ)の単独あるいはこれら2種以上の混合物からなる粉末やペレットに対し、上記の安定剤、必要ならば滑剤、顔料等を配合し、バンバリミキサー、ロールミル、1軸押出し機、2軸押出し機等公知の溶融混練機にて混練することができる。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形(フィルム成形、シート成形、異型品等の成形)、ブロー成形、真空成形、カレンダー成形、圧縮成形、トランスファー成形、熱成形、流動成形、積層成形等公知の成形加工法にて成形できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車、家電、建材等の幅広い分野で軟質性樹脂が必要とされる用途に幅広く使用出来る。特に、従来から軟質塩ビ樹脂が使用されている分野に好適である。
【0031】
例えば、自動車分野ではインパネ表皮、ピラー表皮、コンソールボックス表皮、ウエルト、シフトレバー、シフトレバーノブ、チェンジノブ、オートマチックノブ、ステアリングホイール、ホーンパッド、アームレストカバー、ヘッドレストカバー、アシストグリップ、ドアグリップ、パーキンググリップ、コントロールケーブル被覆、天井材表皮等の内層部品の表皮材や外装モール、サイドモール、マッドガード、ウエザーストリップ、グラスランチャンネル、バンパー、エアダムスカート、泥除け等の外装部品、ルーフパッキン、ドアミラーパッキン、水切り、窓枠パッキン等のシール材、ドレンチューブ、グロメット、クランクカバー、ハーネス部品等があげられる。
【0032】
家電分野では、コードシース材、ケーブルシース材、ボックスカバー、掃除機のパッキン、エアコンホース、冷蔵庫のガスケット、自動皿洗い機のホース等があげられる。
建材分野では、手摺りカバー、ガラスシーリングパッキン、戸あたりパッキン、バスユニットパッキン、クラー配管カバー、工業用パッキン、戸のシール材、タイルの目地材、防水シート、各種ガスケット等があげられる。
【0033】
また、園芸用ホース、工業用ホース、シャワーのホース等のホース、チューブ類、文具、スポーツ用品、グリップなどがあげられる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例で示すが、これら実施例は本発明を限定するものではない。実施例中の「部」は重量部を、「%」は重量%を示す。
1.(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)の製造
共重合体(イ−1)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 1.0部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部、EDTA 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0035】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に65℃まで昇温させた。65℃、到達後、BA 65部、AN 28部、St 7部、tDM 0.25部、CHP 0.3部の混合物を連続的に7時間で滴下した。また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを重合時間1時間目に0.5部、3時間目に0.5部追加した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、重合を終了し、共重合体(イ−1)を製造した。表1に結果を示す。
【0036】
共重合体(イ−2)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 45部、2EHA 30部、AN 22部、St3部及びtDM 0.25部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−2)を製造した。
共重合体(イ−3)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 40部、BMA 10部、2EHA 10部、AN 24部、St16部及びtDM 0.25部、1,4−ブタンジオールジメタクリレート0.005部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−3)を製造した。
【0037】
共重合体(イ−4)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 50部、2EHA 25部、AN 22部、St3部及びtDM 0.25部、アリルメタクリレート0.03部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−4)を製造した。
共重合体(イ−5)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 60部、2EHA 15部、GMA 5部、AN 17部、St3部及びtDM 0.25部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−4)を製造した。
【0038】
共重合体(イ−6)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 30部、AN 5部、St65部及びtDM 0.25部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−6)を製造した。
共重合体(イ−7)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 50部、AN45部、St5部及びtDM 0.25部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−7)を製造した。
【0039】
共重合体(イ−8)
共重合体(イ−1)と同様の方法で、単量体をBA 100部、及びアリルメタクリレート2部、CHP 0.3部として、共重合体(イ−8)を製造した。
イ−1〜イ−8の重合処方と重合転化率、ゲル含有量、還元粘度、Tgを表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[記号の説明]
BA:ブチルアクリレート 2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AN:アクリロニトリル St:スチレン
tDM:t−ドデシルメルカプタン CHP:クメンハイドロパーオキサイド
PMI:N−フェニルマレイミド αMSt:αーメチルスチレン
BMA:ブチルメタクリレート MMA:メチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
2.スチレン系共重合体(ロ)の製造
共重合体(ロ−1)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 1.0部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部、EDTA 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0042】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に65℃まで昇温させた。65℃、到達後、PMI 30部、AN 22部、St 43部、αMSt 5部、tDM 0.355部、CHP 0.3部を連続的に8時間で滴下した。滴下2時間目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.5部、滴下5時間目にジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.5部を添加した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、重合を終了し、共重合体(ロ−1)を製造した。表2に結果を示す。
【0043】
共重合体(ロ−2)
共重合体(ロ−1)と同様の方法で、表2に示す単量体混合物を使用し、共重合体(ロ−2)を製造した。
共重合体(ロ−3)
共重合体(ロ−1)と同様の方法で、表2に示す単量体混合物を使用し、共重合体(ロ−3)を製造した。
【0044】
共重合体(ロ−4)
共重合体(ロ−1)と同様の方法で、表2に示す単量体混合物を使用し、共重合体(ロ−4)を製造した。
【0045】
共重合体(ロ−1)〜(ロ−4)の重合処方、重合転化率、還元粘度、Tgを表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
3.グラフト共重合体(ハ)の製造
(1)ゴム重合体(A)の製造
ゴム重合体(A−1)
第一段階として、ゴム重合体(A−1)に肥大化させるために必要な未肥大ゴム重合体(B)を製造した。
【0048】
100L重合機に、純水 230部、過硫酸カリウム 0.2部、tDM 0.2部を仕込んだ。
重合機内の空気を真空ポンプで除いた後、オレイン酸ナトリウム 0.6部、ロジン酸ナトリウム 2部、ブタジエン 100部を仕込んだ。
系の温度60℃まで昇温し、重合を開始した。重合は25時間で終了した。重合転化率は96%、未肥大ゴム重合体(B)の粒径は85nmであった。
【0049】
第二段階として、未肥大ゴム重合体(B)からゴム重合体(A)に肥大化させるために必要な酸基含有ラテックス(S)を以下のように製造した。
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 200部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.6部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0050】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に70℃まで昇温させた。70℃に到達後、BMA 25部、BA 5部、tDM 0.1部、CHP 0.15部の単量体混合物を2時間かけて滴下後、更にBMA 50部、BA 4部、MAA 16部、tDM 0.5部、CHP 0.15部を4時間かけて滴下し、滴下終了後、70℃で1時間攪拌を続け重合を終了し、酸基含有ラテックス(S)を得た。
【0051】
第三段階として、先に製造した未肥大ゴム重合体(B)と酸基含有ラテックス(S)を次のように使用し、ゴム重合体(A−1)を製造した。
未肥大ゴム重合体(B)のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S)3.5部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−1)の製造を行った。ゴム重合体(A−1)の粒径は、450nmであった。
【0052】
ゴム重合体(A−2)
ゴム重合体(A−2)は、上記酸基含有ラテックス(S)を2.0部(固形分)使用する以外は、ゴム重合体(A−1)と同様次のようにして製造した。未肥大ゴム重合体(B)のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S)2部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−2)の製造を行った。ゴム重合体(A−2)の粒径は、610nmであった。
【0053】
ゴム重合体(A−3)
第一段階として、アクリル酸エステル系ゴム重合体(A−3)に肥大化させるために必要な未肥大ゴム重合体(C)を製造した。
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 200部、パルミチン酸ナトリウム0.55部を仕込んだ。反応器を撹拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。昇温後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込んだ。更に、BA 98.5部、TAC1.5部、CHP 0.3部の単量体混合物を6時間かけて滴下し、滴下終了後、60℃で1時間攪拌を続け重合を終了した。単量体混合物滴下1.5時間目にパルミチン酸ナトリウム0.3部を、滴下4時間目にパルミチン酸ナトリウム0.35部を添加した。重合転化率は98%、未肥大ゴム重合体(C)の粒径は92nmであった。
【0054】
第二段階として、先に製造した未肥大ゴム重合体(C)と酸基含有ラテックス(S)を使用し、次のようにしてアクリル酸エステル系ゴム重合体(A−3)を製造した。
未肥大ゴム重合体(C)のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S−1)3.5部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−3)の製造を行った。ゴム重合体(A−3)の粒径は、350nmであった。
【0055】
(2)グラフト共重合体(ハ)の製造
グラフト共重合体(ハ−1)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 280部、ゴム重合体(A−1)(固形分) 65部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部、EDTA 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0056】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃到達後にAN 11部、St 24部、CHP 0.2部の混合物を連続的に5時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌を続け、重合を終了し、グラフト重合体(ハ−1)を得た。表3に結果を示す。
グラフト共重合体(ハ−2)の製造
グラフト共重合体(ハ−1)と同様の方法で、ゴム重合体(A−2)80部にAN 5部、St 5部、MMA 10部、CHP 0.2部にて重合させ、グラフト共重合体(ハ−2)を製造した。
【0057】
グラフト共重合体(ハ−3)の製造
グラフト共重合体(ハ−1)と同様の方法で、ゴム重合体(A−3)55部にAN 12部、St 33部、CHP 0.3部にて重合させ、グラフト共重合体(ハ−3)を製造した。
グラフト共重合体(ハ−4)の製造
グラフト共重合体(ハ−1)と同様の方法で、ゴム重合体(B)50部にAN 15部、St 35部、CHP 0.3部にて重合させ、グラフト共重合体(ハ−4)を製造した。ハ−1〜ハ−4の重合処方、重合転化率を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
(4)熱可塑性樹脂組成物の製造
(1)で製造した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、(2)で製造したスチレン系共重合体(ロ)、(3)で製造したグラフト共重合体(ハ)のラテックスを表4に示す所定量(固形分)の割合で混合し、フェノール系抗酸化剤を加えた後、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、(イ)、(ロ)、(ハ)混合の樹脂組成物の粉末を得た。エチレンビスステアリルアミド1部を配合し、(株)タバタ製20Lブレンダーで均一にブレンドした。更に(株)タバタ製40m/m・1軸押出機で、240℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。(実施例1〜2、比較例1〜6、参考例1〜3)
各樹脂組成物の樹脂特性を評価し表4に示す。
[Tg(ガラス転移温度)の算出]
アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)のガラス転移温度あるいは融点は、DSC(セイコー電子工業(株)製SSC5200型)にて測定した。
[ゲル含有量の測定]
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、グラフト共重合体(ハ)のラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、2%のメチルエチルケトン溶液とし、23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残査を乾燥し、測定した。(濾過残査重量/元の重量)×100で表す。
[還元粘度の測定]
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、スチレン系共重合体(ロ)のラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、0.3g/dl濃度のN,N−ジメチルホルムアミド溶液として、30℃で還元粘度を測定した。
[グラフト共重合体のグラフト率]
グラフト共重合体(ハ)のパウダーを、メチルエチルケトンに溶解して、遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分を得た。この不溶分と可溶分との比率から、グラフト率を特定した。
[ゴム重合体の粒径]
ゴム重合体(A)ラテックスについて、パシフイックサイエンス社製のナイコンプ粒径測定機を用いて測定した。
[重合時の転化率]
重合時の転化率は、固形分濃度より、計算した。
[熱可塑性樹脂組成物の特性]
硬度は、JIS K6301規格にもとづき20℃で測定した。
【0060】
圧縮永久歪みは、JIS K6301規格にもとづき70℃、22時間圧縮の条件で測定した。
引張強度(単位:kg/cm2)、引張伸び(単位:%)は、ASTM D638規格にて1号ダンベルを使用し、23℃で評価した。
加熱時形状保持性は、ダンベルを80℃の乾燥機に8時間静置し、形状の変化を観察した。○(変化無し)、×(明らかに形状変化あり)で評価した。
成形加工性は射出成形時の充填の容易性で判断した。
○(充填比較的容易)、×(充填し難い)で評価した。
上述の硬度、引張強度、引張伸び、加熱時形状保持性に使用する試験片は、(株)ファナック製FAS100B射出成形機を使用し、押出ペレット化と同じシリンダー温度にて成形し、評価に供した。
【0061】
【表4】
【0062】
【発明の効果】
表4の結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、軟質性(特に、圧縮永久歪みが小さく、引張伸びが大きい)、加熱時形状保持性をバランス良く備えるとともに、成形も容易であり、特に引張伸びに優れている。
Claims (1)
- (メタ)アクリル酸エステル40〜90重量%、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物50重量%以下及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるガラス転移温度が20℃以下であり、かつゲル含量が50重量%以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)25〜90重量部と、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体(但し、マレイミド系単量体を除く)0〜30重量%(合計100重量%)を重合してなるガラス転移温度あるいは融点が50℃以上のスチレン系共重合体(ロ)5〜75重量部、及び体積平均粒径50〜1000nmのジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体(A)10〜90重量部に、芳香族ビニル化合物5〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の1種以上10〜95重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物10〜90重量部を重合してなるグラフト共重合体(ハ)10〜55重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)合わせて100重量部]からなり、JIS K6301法による20℃の硬度が30〜100である熱可塑性樹脂組成物。
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