JP4879380B2 - 軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体並びに軟質樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟質性、表面外観性、耐候性に優れ、高温時の粘着性が少なく、加熱時の形状保持性に優れる軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体並びに軟質樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、軟質樹脂として、PVC系、スチレン系、オレフィン系等の樹脂が樹脂成形品として使用されている。なかでもPVC系の軟質樹脂は、軟質PVCとして車両外装用部品、建材部品、家電部品等に広く使用されているが、可塑剤を多量に添加する必要があり、加熱減量や可塑剤の移行等に問題があった。 またスチレン系の軟質樹脂では高温時の粘着性(ベトツキ性)が大きいとの問題点があった。更にオレフィン系の軟質樹脂では塗装、印刷等の表面加飾性に劣るという問題点があった。
【0003】
スチレン系樹脂とアクリル酸エステル系共重合体の組成物については、特開昭58−179257号にゴム含有スチレン系樹脂とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物あるいは特開昭63−17954、特開平8−027336にゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物が耐薬品性を向上することが記載されている。しかし、これらの組成物は軟質性に著しく劣り、本発明の目的とする軟質性、表面外観性、耐候性に優れ、高温時の粘着性が少なく、加熱時の形状保持性に優れた軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体はえられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き問題を解消した、軟質性、表面外観性に優れ、高温時の粘着性が少なく、加熱時の形状保持性に優れる軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、車両外装用部品、建材部品、家電部品等樹脂成形品としての軟質性を維持させるためには、ガラス転移温度が低い(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)が必須と考えた。さらに、加熱時の形状と弾性を保持するためには、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を拘束する必要があり、特定の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)とガラス転移温度が高い特定のスチレン系樹脂(ロ)からなるマトリックスのミクロ相分離を微妙に制御した特殊な相構造を持つ必要があると考えた。更により弾性を保持するためにグラフト共重合体(ハ)を使用することあるいは必要な場合には(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)自体も緩やかに拘束することも考慮した。
【0006】
これらの観点から、本発明者らは、鋭意検討した結果、
ガラス転移温度が20℃以下の特定の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、ガラス転移温度が50℃以上の特定のスチレン系樹脂(ロ)及びグラフト共重合体(ハ)からなり、特定の製造方法により得られる特定の相構造を有する軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体が、軟質性、表面外観性に優れ、高温時の粘着性が少なく、加熱時の形状保持性に優れることを見出だし、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステル40〜95重量%、芳香族ビニル化合物5〜60重量%、シアン化ビニル化合物0〜40重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、ガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)9〜90重量部、芳香族ビニル化合物10〜95重量%、シアン化ビニル化合物0〜45重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、マレイミド系単量体を含まない、ガラス転移温度が50℃以上のスチレン系樹脂(ロ)9〜90重量部、及びゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)1〜80重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)あわせて100重量部]からなり、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合したのち、スチレン系樹脂(ロ)を重合するか、あるいはスチレン系樹脂(ロ)の一部を重合した後、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合し、スチレン系樹脂(ロ)の残部を重合して得たものに、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)を混合することにより得られる、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)の連続相中に平均粒径50〜20000nmのスチレン系樹脂(ロ)の粒子及び平均粒径30〜2000nmのグラフト共重合体(ハ)の粒子が分散してなり、かつスチレン系樹脂(ロ)の粒子中に存在するグラフト共重合体(ハ)の粒子がグラフト共重合体(ハ)の全量に対し40体積%未満(0を含む)である軟質樹脂組成物を第一の内容とする。
【0008】
また、本発明は、(メタ)アクリル酸エステル40〜95重量%、芳香族ビニル化合物5〜60重量%、シアン化ビニル化合物0〜40重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、ガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)9〜90重量部、芳香族ビニル化合物10〜95重量%、シアン化ビニル化合物0〜45重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、マレイミド系単量体を含まない、ガラス転移温度が50℃以上のスチレン系樹脂(ロ)9〜90重量部、及びゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)1〜80重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)あわせて100重量部]からなり、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合したのち、スチレン系樹脂(ロ)を重合するか、あるいはスチレン系樹脂(ロ)の一部を重合した後、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合し、スチレン系樹脂(ロ)の残部を重合して得たものに、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)を混合することにより得られる、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)の連続相中に平均粒径50〜20000nmのスチレン系樹脂(ロ)の粒子及び平均粒径30〜2000nmのグラフト共重合体(ハ)の粒子が分散してなり、かつスチレン系樹脂(ロ)の粒子中に存在するグラフト共重合体(ハ)の粒子がグラフト共重合体(ハ)の全量に対し40体積%未満(0を含む)である樹脂成形体を第二の内容とする。
【0009】
本発明で最も重要なのは、軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体の相構造である。
すなわち、相構造は、軟質性、表面外観性、高温時の粘着性、加熱時の形状保持性の点から、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)の連続相中に平均粒径50〜20000nm、好ましくは100〜15000nm、更に好ましくは200〜10000nmのスチレン系樹脂(ロ)の粒子及び平均粒径30〜2000nm、好ましくは50〜1500nm、更に好ましくは80〜1000nmのグラフト共重合体(ハ)の粒子が分散してなる。
【0010】
スチレン系樹脂(ロ)の粒子中に存在するグラフト共重合体(ハ)の粒子は軟質性、表面外観性、高温時の粘着性の点から、グラフト共重合体(ハ)の全量に対し40体積%未満(0を含む)、好ましくは35体積%未満(0を含む)、更に好ましくは30体積%未満(0を含む)である。
【0011】
スチレン系樹脂(ロ)の粒径(体積平均粒径)とスチレン系樹脂(ロ)中のグラフト共重合体(ハ)の比率(体積%)は、成形品の中央部かつ厚み方向の中心部を成形時の樹脂流動方向と垂直な断面について透過型電子顕微鏡により観察し特定した。
【0012】
グラフト共重合体(ハ)の粒径は、本発明の系では、グラフト相とマトリックス相が透過型電子顕微鏡では区別できない場合があるため、グラフト率とゴム重合体の粒径からグラフト共重合体(ハ)の粒径を算出して、グラフト共重合体(ハ)の分散粒径とした。ゴム重合体の粒径は、ラテックス状態での光学的方法、上述の透過型電子顕微鏡による方法等、公知の方法により特定できる。
【0013】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体は、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)は好ましくは9〜90重量部、軟質性の点からより好ましくは15〜90重量部、更に好ましくは25〜85重量部とスチレン系樹脂(ロ)は好ましくは9〜90重量部、より好ましくは10〜80重量部、更に好ましくは15〜70量部、及びグラフト共重合体(ハ)は好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜70重量部、更に好ましくは10〜65重量部、[(イ)、(ロ)、(ハ)あわせて100重量部]からなる。上述の範囲外では、樹脂成形品の軟質性あるいは加熱時形状保持性が低下、あるいは粘着性が悪化する。
【0014】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)は、ガラス転移温度が20℃以下、好ましくは10℃〜−80℃、更に好ましくは0℃〜−70℃である。ガラス転移温度が20℃を越えると軟質性が著しく低下する。
【0015】
アクリル酸エステル系共重合体(イ)、共重合体(ロ)のガラス転移温度は、ホモポリマーのガラス転移温度(文献値:ポリマーハンドブック、製造メーカーの技術資料等)からFox式により算出したガラス転移温度を表す。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)は、軟質性の点から、ゲル含有量[ゲル含有量とは、メチルエチルケトン、2%溶液を23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残査を乾燥し、(濾過残査重量/元の重量)×100で表した値である。]が好ましくは40重量%以下、表面外観性の点からより好ましくは30量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。40重量%を越えると樹脂成形品の表面外観性が著しく低下する。
【0017】
また、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)は、引張強度、表面外観性の点から好ましくは0.3〜5.0dl/g、より好ましくは0.4〜4.0dl/g、更に好ましくは0.45〜3.0dl/gである。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)は、軟質性、表面外観性、粘着性の点から好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル40〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは50〜85重量%、シアン化ビニル化合物0〜40重量%、より好ましくは2〜35重量%、更に好ましくは3〜33重量%、芳香族ビニル化合物5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%、更に好ましくは15〜40重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%、より好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%(合計100重量%)を重合してなる共重体である。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、ブチル(メタ)アクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちではアクリロニトリルが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらのうちではスチレン工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0022】
共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等のマレイミド系単量体、及び
メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ジアリルフマレート等の多官能性ビニル単量体、及び(メタ)アクリル酸およびその2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。
【0023】
本発明のスチレン系樹脂(ロ)はマレイミド系単量体を含まないもので、ガラス転移温度が50℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは95℃以上、更に好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度が50℃未満であると樹脂成形品の加熱時形状保持性、軟質性が低下あるいは粘着性が悪化する。
【0024】
スチレン系樹脂(ロ)としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。樹脂成形品の引張強度、表面外観性の点から、スチレン系樹脂(ロ)としては、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合してなり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜2.0dl/g、更に0.4〜1.5dl/g、特に0.45〜1.2dl/gが好ましい。スチレン系樹脂(ロ)は、好ましくは引張強度、表面外観性、粘着性の点から、芳香族ビニル化合物10〜95重量%、更に好ましくは10〜85重量%、シアン化ビニル化合物0〜45重量%、更に好ましくは10〜40重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%、更に好ましくは0〜20重量%、(合計100重量%)を重合してなる。スチレン系樹脂(ロ)のシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレン、αーメチルスチレンが特に好ましい。これらは、単独または2種以上組み合わせて用いられる。共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸およびそのメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシルエチル、2−エチルヘキシル、グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等が挙げられる。これらは、単独または2種以上あっても良い。
【0025】
更にこれら上記のスチレン系樹脂(ロ)を使用するポリマーアロイ、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体と塩化ビニル系樹脂のアロイ、スチレン−アクリロニトリル共重合体とポリカーボネートのアロイ、スチレン−アクリロニトリル共重合体とナイロン6のアロイ、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートのアロイ、ポリスチレンとポリフェニレンオキサイドのアロイ等をスチレン系樹脂(ロ)として使用した場合も本発明の効果を発揮することができる。
【0026】
本発明のグラフト共重合体(ハ)は、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体である。
【0027】
ゴム重合体(A)の具体例としては、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のオレフィン系重合体、ポリアクリル酸エステルゴム、エチレン−アクリル酸エステルゴム等のアクリル系ゴム重合体、ポリジメチルシロキサンゴム、ポリジメチルシロキサン−アクリル複合ゴム等のシリコン系ゴム重合体が挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いられる。ゴム重合体(A)は、耐候性の点から、アクリルエステル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体がゴム重合体中25重量%以上、更に好ましくは40重量%以上有することが好ましい。
【0028】
グラフト共重合体(ハ)におけるゴム重合体(A)は、引張強度等の機械的特性の点から好ましくは体積平均粒径30〜2000nm、特に好ましくは50〜1500nm、更に好ましくは80〜1000nmのジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体である。グラフト共重合体(ハ)のゴム重合体(A)の体積平均粒径が30nm未満、あるいは2000nmを越えるばあいには引張強度等の機械的特性が低下する傾向にある。ゴム重合体(A)は、体積平均粒径の異なる2種以上を混合したものであっても構わない。
更にゴム重合体(A)は、酸基含有ラテックス(S)を使用する肥大法により製造されたものが好ましい。
【0029】
ゴム重合体(A)は、ゴムラテックス100重量部(固形分)に対して、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12の少なくとも1種の(メタ)アルキルアクリレート(d)50〜95重量%、及び(c),(d)と共重合可能な単量体0〜40%を重合させる事により調整した酸基含有ラテックスを使用する凝集肥大法により製造したゴム重合体が好ましい。
【0030】
グラフト共重合体(ハ)は、ゴム重合体(A)5〜95重量部、好ましくは10〜90重量部、更に好ましくは15〜85重量部にビニル単量体5〜95重量部、好ましくは10〜90重量部、更に好ましくは15〜85重量部を重合してなる。ビニル単量体としては、好ましくは芳香族ビニル化合物5〜90重量%,更に好ましくは10〜85重量%、更に好ましくは15〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の1種以上10〜95重量%、更に好ましくは15〜90重量%、更に好ましくは20〜85重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物である。上述の範囲外では、樹脂成形品の引張強度等の機械的特性、表面外観性が低下する傾向にある。
【0031】
グラフト共重合体(ハ)のシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、メチルメタアクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。共重合可能な単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミドの等マレイミド系単量体、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらは、単独または2種以上あっても良い。
【0032】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体で追加すべき重要な点は、JISK6301法による20℃の硬度である。本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体は、JIS K6301法による20℃の硬度が好ましくは30〜110であり、軟質性の点からより好ましくは40〜100、更に好ましくは45〜95である。
【0033】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体を製造するには、特に(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合したのち、スチレン系樹脂(ロ)を重合する方法、あるいはスチレン系樹脂(ロ)の一部を重合した後、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合し、スチレン系樹脂(ロ)の残部を重合して得たものに、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)を混合する方法が好ましい。
【0034】
また、本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体がえられれば、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)、スチレン系樹脂(ロ)、グラフト共重合体(ハ)は、いかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわない。開始剤は、過硫酸カリウム等の熱分解開始剤、Fe−還元剤−有機パーオキサイド等のレドックス系開始剤等公知の開始剤が使用できる。t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、αーメチルスチレンダイマー、テルピノレン等公知の連鎖移動剤が使用できる。乳化剤としてはオレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ等の脂肪酸金属塩系乳化剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ等のスルホン酸金属塩系乳化剤等公知の乳化剤が使用できる。
【0035】
また、本発明の(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)、スチレン系樹脂(ロ)、グラフト共重合体(ハ)以外の重合体、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の公知の熱可塑性エラストマーやポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリイミド等の他の熱可塑性樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を目的に応じて添加して、本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体として使用できる。
【0036】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体に使用される樹脂組成物は、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤を必要に応じて適宜使用できる。特に、スチレン系樹脂に用いられるフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤及びオルガノポリシロキサン、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル、高級脂肪酸のアミドまたはビスアミドおよびその変性体、オリゴアミド、高級脂肪酸の金属塩類等の内部滑剤、外滑剤等は成形用樹脂として、より高性能なものとするために用いることができる。
【0037】
これらの安定剤は、単独でもまた2種以上混合して使用することもできる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)、スチレン系樹脂(ロ)、グラフト共重合体(ハ)の樹脂混合物は、その製造方法によって異なるが、例えば、これらをラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレット等の状態あるいはこれらの組合わせにて混合して、製造できる。重合後の(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)のラテックス、スチレン系樹脂(ロ)のラテックスおよびグラフト共重合体(ハ)のラテックスからポリマー粉末を回収する場合は通常の方法、例えばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸及び有機酸を添加することでラテックスを凝固した後、脱水乾燥する方法で実施できる。またスプレー乾燥法も使用できる。
【0038】
安定剤の使用する量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
【0039】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体に使用される樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)、スチレン系樹脂(ロ)、グラフト共重合体(ハ)の単独あるいはこれら2種以上の混合物からなる粉末、ペレットに対し、上記の安定剤、必要ならば滑剤、顔料等を配合し、バンバリミキサー、ロールミル、1軸押出し機、2軸押出し機等公知の溶融混練機にて混練することができる。
【0040】
本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体は、射出成形、押出成形(フィルム成形、シート成形、異型品等の成形)、ブロー成形、真空成形、カレンダー成形、圧縮成形、トランスファー成形、熱成形、流動成形、積層成形等公知の成形加工法にて成形できる。
【0041】
本発明の軟質樹脂成形体としては、自動車の外装モール、サイドモール、マッドガード、ウエザーストリップ、グラスランチャンネル、バンパー、エアダムスカート、泥よけ等の外装部品、ルーフパッキン、ドアミラーパッキン、水切り、窓枠パッキン等シール材、ドレンチューブ、グロメット、クランクカバー、ハーネス部品等の車両外装用部品、インパネ表皮、ピラー表皮、コンソールボックス表皮、ウエルト、シフトレバーブーツ、シフトレバーノブ、チェンジノブ、ドアノブ、ヒーターコントロールノブ、オートマチックノブ、ステアリングホイール、ホーンパット、アームレストカバー、ヘッドレストカバー、アシストグリップ、ドアグリップ、パーキンググリップ、コントロールケーブル被覆、天井材表皮等の自動車、鉄道車両等の内装部品の表皮材等の車両内装用部品、手摺りカバー、ガラスシーリングパッキン、戸あたりパッキン、バスユニットパッキン、クーラー配管カバー、工業用パッキン、戸のシール材、タイルの目地材、防水シート、各種ガスケット等の建材用軟質部品、コードシース材、ケーブルシース材、ボックスカバー、掃除機のパッキン、エアコンホース、冷蔵庫のガスケット、自動皿洗い機のホース等の家電用部品、また、園芸用ホース、工業用ホース、シャワーのホース等のホース、チューブ類、文具、スポーツ用品、グリップ等の軟質樹脂成形体が挙げられる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な実施例で示すが、これら実施例は本発明を限定するものではない。実施例中の「部」は重量部を、「%」は重量%を示す。
【0043】
【実施例】
(1)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)と共重合体(ロ)の製造
・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ−1)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 250部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下DBSと略す) 1.0部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部、EDTA 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0044】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に65℃まで昇温させた。65℃、到達後、表1に示す一段目の単量体混合物(比率BA65%、AN10%、St25%)の67重量部とtDM、CHPを連続的に6時間で滴下した。また、DBSを単量体滴下2時間目に0.5部、4時間目に0.5部追加した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、一段目(共重合体(イ−1))の重合を終了した。
・共重合体(ロ)の製造
続いて、表2に示す二段目(共重合体(ロ−1))の単量体混合物(比率PMI25%、AN15%、St10%、αMSt50%)33重量部とtDM、CHPを連続的に2時間で滴下した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、二段目の重合を終了した。
・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ−2)〜(イ−6)と共重合体(ロ
−2)〜(ロ−5)の製造
上記の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ−1)、共重合体(ロ−1)と同様の方法で表1、表2に示す処方にて製造した。但し、共重合体(イ)と共重合体(ロ)の比率は、表4に示す比率とした。単量体の滴下時間は、共重合体(イ−1)と共重合体(ロ−1)と同様に、一段目と二段目の合計8時間(時間当たり12.5部の滴下速度)とし、一段目単量体の滴下終了後と二段目単量体の滴下終了後には各1時間の攪拌時間を設けた。
表1、表2に結果を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
(2)グラフト共重合体(ハ)の製造
ゴム重合体(A)に肥大化させるために必要なゴム重合体(R)及び酸基含有ラテックス(S)を製造した。
・ゴム重合体(R−1)
100L重合機に、純水 230部、過硫酸カリウム 0.2部、tDM 0.2部を仕込んだ。
【0047】
重合機内の空気を真空ポンプで除いた後、オレイン酸ナトリウム 0.6部、ロジン酸ナトリウム 2部、ブタジエン 100部を仕込んだ。
【0048】
系の温度60℃まで昇温し、重合を開始した。重合は25時間で終了した。重合転化率は96%、未肥大ゴム重合体(R−1)の粒径は85nmであった。
・ゴム重合体(R−2)
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 200部、パルミチン酸ナトリウム0.55部を仕込んだ。反応器を撹拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。昇温後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込んだ。更に、BA 98.5部、TAC2部、CHP 0.3部の単量体混合物を6時間かけて滴下し、滴下終了後、60℃で1時間攪拌を続け重合を終了した。単量体混合物滴下1.5時間目にパルミチン酸ナトリウム0.3部を、滴下4時間目にパルミチン酸ナトリウム0.35部を添加した。重合転化率は98%、未肥大ゴム重合体(R−2)の粒径は92nmであった。
・ゴム重合体(R−3)
純水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、オクタメチルシクロテトラシロキサン100部、テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部をホモジナイザーにて乳化分散し
オルガノシロキサンのラテックスを得た。
【0049】
重合機内を脱気し、窒素置換した後、上記のオルガノシロキサンのラテックスを重合機に仕込み、80℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸0.2部を加え、5時間攪拌した後、23℃で24時間放置し、その後水酸化ナトリウムで中和し重合を終了した。重合転化率は90%、得られたゴムラテックス(R−3)の粒径は130nmであった。
・酸基含有ラテックス(S)
ゴム重合体(R)からゴム重合体(A)に肥大化させるために必要な酸基含有ラテックス(S)を以下のように製造した。
【0050】
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 200部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.15部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.5部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0051】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に70℃まで昇温させた。70℃に到達後、BMA 25部、BA 5部、tDM 0.1部、CHP 0.15部の単量体混合物を2時間かけて滴下後、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 0.5部を添加し、更にBMA 50部、BA 4部、MAA 16部、tDM 0.5部、CHP 0.15部を4時間かけて滴下し、滴下終了後、70℃で1時間攪拌を続け重合を終了し、酸基含有ラテックス(S)を得た。
・ゴム重合体(A−1)
先に製造したゴム重合体(R−1)、(R−2)と酸基含有ラテックス(S)を使用し、ゴム重合体(A−1)を製造した。
【0052】
ゴム重合体(R−1)のラテックス40部(固形分)、(R−2)のラテックス60部(固形分)に酸基含有ラテックス(S)2.6部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させた。えられたゴム重合体(A−1)の粒径は、810nmであった。
・ゴム重合体(A−2)
ゴム重合体(A−1)と同様の方法にて、ゴム重合体(R−2)100部、酸基含有ラテックス(S)3.2部を使用し、ゴム重合体(A−2)を製造した。えられたゴム重合体(A−2)の粒径は620nmであった。
・ゴム重合体(A−3)
ゴム重合体(A−1)と同様の方法にて、ゴム重合体(R−2)85部、(R−3)15部、酸基含有ラテックス(S)3.5部を使用し、ゴム重合体を製造した。えられたゴム重合体(A−3)の粒径は430nmであった。
(2)グラフト共重合体(ハ)の製造
・グラフト共重合体(ハ−1)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水 280部、ゴム重合体(A−1)(固形分) 65部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 1部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部、EDTA 0.01部、硫酸第一鉄 0.0025部を仕込んだ。
【0053】
反応器を撹拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃到達後にAN 5部、St 10部、MMA 20部、CHP 0.2部の混合物を連続的に5時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌を続け、重合を終了し、グラフト重合体(ハ−1)を得た。表3に結果を示す。
・グラフト共重合体(ハ−2)、(ハ−3)の製造
グラフト共重合体(ハ−1)と同様の方法で、表3に示すゴム重合体、単量体混合物を使用し、グラフト共重合体(ハ−2)、(ハ−3)を製造した。表3に結果を示す。
【0054】
【表3】
(3)軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体の製造
(1)で製造した(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、共重合体(ロ)、(2)で製造したグラフト共重合体(ハ)のラテックスを表4に示す所定量の割合で混合し、フェノール系抗酸化剤を加えた後、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、(イ),(ロ),(ハ)混合の軟質樹脂組成物の粉末を得た。エチレンビスステアリルアミド1部、チヌビンP((株)チバガイギー製)0.3部、サノールLS−63((株)三共製)0.3部、グレー顔料1.5部を配合し、(株)タバタ製20Lブレンダーで均一にブレンドした。更に(株)タバタ製40m/m押出機で、230℃で溶融混練して、軟質樹脂組成物のペレットを製造した。
(株)ファナック製FAS100B射出成形機を使用し、押出ペレット化と同じシリンダー温度にて成形し、軟質樹脂成形体をえた。圧縮永久歪みの試験片は、射出成形後、プレス成形、切削して規定の形状に調整した。
[Tg(ガラス転移温度)の算出]
アクリル酸エステル系共重合体(イ)、共重合体(ロ)のガラス転移温度は、次の値を使用し、Fox式により算出した。
BA:219K、AN:398K、St:373K、MMA:377K、αMSt:453K、PMI:633K、2EHA:216K、BMA:293K
[ゲル含有量の測定]
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)、グラフト共重合体(ハ)ラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、2%のメチルエチルケトン溶液とし、23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残査を乾燥し、測定した。(濾過残査重量/元の重量)×100で表す。
[還元粘度の測定]
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)のラテックス、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)と共重合体(ロ)からなるラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、0.3g/dl濃度のN,N−ジメチルホルムアミド溶液として、30℃で還元粘度を測定した。 共重合体(ロ)の還元粘度は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)の還元粘度、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)と共重合体(ロ)からなる混合物の還元粘度から相加平均法により算出した。
[ゴム重合体の粒径]
ゴム重合体(A)のラテックスについて、(株)日機装社製のマイクロトラックUPA粒径測定機を用いて測定した。
[グラフト共重合体の分散粒径]
グラフト共重合体(ハ)のラテックスを塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末をメチルエチルケトンに溶解して、遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分を得た。この不溶分と可溶分との比率から、グラフト率を特定した。グラフト率と上述のゴム重合体の粒径からグラフト共重合体(ハ)の粒径を算出し、グラフト共重合体(ハ)の分散粒径とした。
[重合時の転化率]
重合時の転化率は、固形分濃度より、算出した。
[(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(イ)の連続相、スチレン系樹脂(ロ)の粒径、スチレン系樹脂(ロ)中のグラフト共重合体(ハ)の比率]
上述の射出成形法にて成形したASTM D638規格の1号ダンベル成形品を四酸化オスミニウム、酸化ルテニウムで染色した後、超薄切片を切りだし、超薄切片の中央部を透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)により観察し、連続相を特定した。観察写真の画像解析からスチレン系樹脂(ロ)の粒径(体積平均粒径)とスチレン系樹脂(ロ)中のグラフト共重合体(ハ)の比率を各々算出した。超薄切片は、ダンベル成形品の長手方向(成形時の樹脂流動方向)の中央部、かつ厚み方向の中心部の位置を長手方向と垂直な断面に平行に切り出した。
[樹脂組成物の特性]
硬度は、JIS K6301規格にもとづき20℃で測定した。
圧縮永久歪みは、JISK6301規格にもとづき70℃、22時間圧縮の条件で測定した。
【0055】
引張強度(単位:kg/cm2)、引張伸び(単位:%)は、ASTM D638規格にて1号ダンベルを使用し、23℃で評価した。
【0056】
表面外観性(艶むら、すじの有無)は、ダンベル成形品を目視で判断した(○:外観よい、×:外観わるい)で評価した。
【0057】
高温試験は、ダンベル成形品を80℃の乾燥機に8時間静置し、形状の変化(○:形状変化なし、×:形状変化あり)と粘着性(○:粘着なし、×:粘着あり)を観察した。
【0058】
耐候性試験は(株)スガ試験機製サンシャインウエザオメーター(63℃、雨あり)にて500時間後の変化を色差(ハンター式ΔE)にて評価した。
【0059】
【発明の効果】
表4の結果から、実施例1〜5に代表される本発明の軟質樹脂組成物及び軟質樹脂成形体は、軟質性、表面外観性、耐候性に優れ、高温時の粘着性が少なく、加熱時の形状保持性に優れる。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【符号の説明】
BA:ブチルアクリレート 2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
AN:アクリロニトリル St:スチレン
tDM:t−ドデシルメルカプタン CHP:クメンハイドロパーオキサイド
PMI:N−フェニルマレイミド αMSt:αーメチルスチレン
BMA:ブチルメタクリレート MAA:メタクリル酸
TAC:トリアリルシアヌレート
Claims (5)
- (メタ)アクリル酸エステル40〜95重量%、芳香族ビニル化合物5〜60重量%、シアン化ビニル化合物0〜40重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、ガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)9〜90重量部、芳香族ビニル化合物10〜95重量%、シアン化ビニル化合物0〜45重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜40重量%(合計100重量%)を重合してなり、マレイミド系単量体を含まない、ガラス転移温度が50℃以上のスチレン系樹脂(ロ)9〜90重量部、及びゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)1〜80重量部[(イ)、(ロ)、(ハ)あわせて100重量部]からなり、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合したのち、スチレン系樹脂(ロ)を重合するか、あるいはスチレン系樹脂(ロ)の一部を重合した後、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合し、スチレン系樹脂(ロ)の残部を重合して得たものに、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)を混合することにより得られる、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)の連続相中に平均粒径50〜20000nmのスチレン系樹脂(ロ)の粒子及び平均粒径30〜2000nmのグラフト共重合体(ハ)の粒子が分散してなり、かつスチレン系樹脂(ロ)の粒子中に存在するグラフト共重合体(ハ)の粒子がグラフト共重合体(ハ)の全量に対し40体積%未満(0を含む)である軟質樹脂組成物。
- 請求項1記載の軟質樹脂組成物を成形加工してなる成形体。
- (メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)がゲル含有量40重量%以下の(メタ)アクリル酸エステル系共重体からなり、JISK6301法による20℃の硬度が30〜100である請求項1記載の軟質樹脂組成物。
- グラフト共重合体(ハ)が、体積平均粒径30〜2000nmのジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体、シリコン系ゴム重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体(A)5〜95重量部に、芳香族ビニル化合物5〜90重量%,(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の少なくとも1種以上10〜95重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計100重量%)からなる単量体混合物5〜95重量部を重合してなる請求項1記載の軟質樹脂組成物。
- (メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合したのち、スチレン系樹脂(ロ)を重合するか、あるいはスチレン系樹脂(ロ)の一部を重合した後、(メタ)アクリル酸エステル系共重体(イ)を重合し、スチレン系樹脂(ロ)の残部を重合して得たものに、ゴム重合体(A)にビニル単量体(B)を重合してなるグラフト共重合体(ハ)を混合することを特徴とする請求項1記載の軟質樹脂組成物の製造方法。
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