JP3822347B2 - 射出成形体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、頭部衝撃指数(HIC)が低く、かつ衝撃時の表面割れがなく、更に耐熱変形性が高く、外観性(表面性)に優れた射出成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、特に自動車の内外装樹脂部品では、高温下での寸法安定性、表面外観などの特性とともに、米国などの側面衝突規制に見られるように、衝突時の安全性に関する特性の向上が望まれている。すなわち、側面衝突規制における内外装樹脂部品としては、頭部衝撃指数(HIC:Head Injurity Criteria) が低く、かつ衝撃時の表面割れがなく、更に耐熱変形性が高く、外観性(表面性)に優れた樹脂が要求されている。ちなみにFMVSSにおける頭部衝撃指数とは、加速度変化の一定時間の積分値における最大値として定義されている。
【0003】
成形体に使用する樹脂組成物としては、例えば、特開昭59−20346号ではゴム強化スチレン系樹脂に特定の可塑剤を添加する方法が開示されているが、耐熱変形性が低く、可塑剤の揮発もあり、満足できるものではない。特定の組成を有するポリプロピレン系樹脂の使用も検討されているが、ヒケによる成形体の表面外観不良、ソリによる寸法安定性不良や他材料との接着性に劣るという欠点を有している。
【0004】
また、ABS系樹脂とアクリル酸エステル系共重合体の組成物について、特開昭58−179257号ではゴム含有スチレン系樹脂とゲル含有率の高いアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物が、また特開昭63−17954号ではゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とABS樹脂とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物が耐薬品性を向上することが記載されている。しかしながら、これらの組成物ではHIC値が高く、衝撃時の表面割れや表面外観不良が見られ、本発明の目的とするHIC値が低く、衝撃時の表面割れがなく、更に耐熱性が高く、外観性(表面性)に優れた射出成形体は得られない。
【0005】
さらに、特開平8−27336号に記載されているゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物においても、本発明の目的とするHIC値が低く、衝撃時の表面割れがなく、外観性(表面性)に優れた成形体は得られない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の如き問題を解消し、成形体の頭部衝撃指数(HIC)が低く、かつ衝撃時の表面割れがなく、更に耐熱変形性が高く、外観性(表面性)に優れた射出成形体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、HIC値を低く、衝撃時の表面割れがなく、耐熱変形性を高くし、かつ外観性(表面性)を向上させるためには、ゴム含有マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体とからなる組成物におけるマトリックスは、マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体をミクロ相分離させたマトリックスにグラフト共重合体(ゴム)が島部として存在するポリマーアロイ構造とする必要があると考え、更に、HIC値を低く、耐衝撃性を高く、耐熱変形性を高く、かつ外観性(表面性)を一層効率よく向上させるためには、マレイミド−スチレン系共重合体とアクリル酸エステル系共重合体のミクロ相分離を微妙に制御した特殊な相構造を持ち、かつ一定形状の射出成形体が必要であると考えた。
【0008】
本発明者らは、このような観点から鋭意検討した結果、アクリル酸エステル系共重合体(I)とマレイミド系共重合体(II)、及びグラフト共重合体(III)からなる特定組成の樹脂組成物で作成した特殊な相構造を有し、かつ特定形状の射出成形体が、HIC値が低く、衝撃時の表面割れがなく、耐熱変形性が高く、かつ外観性(表面性)に優れることを見出し本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は、アクリル酸エステル系共重合体(I)5〜65重量部、マレイミド系共重合体(II)15〜80重量部、グラフト共重合体(III)5〜75重量部、及び他の熱可塑性樹脂(IV)0〜50重量部よりなる熱可塑性樹脂組成物〔(I)、(II)、(III)、(IV)合計で100重量部〕からなり、
前記アクリル酸エステル系共重合体(I)が、アクリル酸エステル40〜85重量%、シアン化ビニル化合物15〜40重量%、芳香族ビニル化合物0〜45重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)を重合してなる、Tgが20℃以下かつゲル含有量が10重量%以下の共重合体であり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであり、
前記マレイミド系共重合体( II )が、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、マレイミド系化合物5〜50重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)重合してなり、かつ芳香族ビニル化合物を49モル%以上含有する共重合体であり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2 dl /gであり、
前記グラフト共重合体 (III )が、体積平均粒径50〜1000 nm の、ジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体及びアクリル系ゴム重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体(A)と、芳香族ビニル化合物10〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル及びシアン化ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種10〜90重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)の単量体混合物を重合してなるグラフト部(B)とからなり、グラフト率が10〜80重量%であって、
成形品の表面から深さ5μmでの樹脂流れ方向に平行な断面における透過型電子顕微鏡で観察される相構造が、平均幅0.001〜3μmの筋状部(A)と平均粒径0.005〜2μmの島状部(B)及び前記(A)、(B)以外の海状部(C)を有することを特徴とする射出成形体を内容とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の成形体に使用される熱可塑性樹脂組成物は、アクリル酸エステル系共重合体(I)5〜65重量部、好ましくは8〜55重量部、更に好ましくは10〜45重量部、マレイミド系共重合体(II)15〜80重量部、好ましくは18〜70重量部、更に好ましくは20〜65重量部、グラフト共重合体(III)5〜75重量部、好ましくは10〜60重量部、更に好ましくは15〜50重量部、及び他の熱可塑性樹脂(IV)0〜50重量部、好ましくは0〜40重量部、更に好ましくは0〜30重量部〔(I)、(II)、(III)、(IV)合計で100重量部〕からなる。
アクリル酸エステル系共重合体(I)が5重量部未満ではHIC値が高くなり、65重量部を越えると耐熱性が低下し、また衝撃時の表面割れが発生し易くなる(以下、「衝撃時の表面割れ性が低下する」と記載する場合がある)。マレイミド系共重合体(II)が80重量部を越えるとHIC値が高くなり、15重量部未満では耐熱性が低下する。グラフト共重合体(III)が5重量部未満では、HIC値が高くなり、衝撃時の表面割れ性が低下し、75重量部を越えると耐熱性、外観性が低下する。他の熱可塑性樹脂(IV)が50重量部を越えるとHIC値が高くなり、衝撃時の表面割れ性が低下する。
【0011】
本発明の成形体は、成形体の表面から深さ5μmでの樹脂流れ方向に平行な断面における透過型電子顕微鏡で観察される相構造が、平均幅0.001〜3μmの筋状部(A)と平均粒径0.005〜2μmの島状部(B)、及び前記(A)、(B)以外の海状部(C)を有する、射出成形法により成形される射出成形体である。該相構造は、HIC値を低く、衝撃時の表面割れを少なくするために、平均幅0.001〜3μmの筋状部(A)と平均粒径0.01〜1.5μmの島状部(B)、及び前記(A)、(B)以外の海状部(C)を有する相構造が好ましく、更に平均幅0.001〜3μmの筋状部(A)と平均粒径0.15〜1.0μmの島状部(B)、及び前記(A)、(B)以外の海状部(C)を有する相構造が特に好ましい。
透過型電子顕微鏡観察(染色の程度)から、筋状部(A)はアクリル酸エステル系共重合体(I)が主成分であり、島状部(B)はグラフト共重合体(III)が主成分であり、海状部(C)はマレイミド系共重合体(II)が主成分で構成されていると考えられる。
【0012】
本発明におけるアクリル酸エステル系共重合体(I)は、HIC値を低くし、耐衝撃性を高くするために使用される部分であり、アクリル酸エステル系共重合体(I)としては、アクリル酸エステルは40〜85重量%、HIC値、衝撃時の表面割れの点から好ましくは50〜80重量%、更に好ましくは55〜75重量%、シアン化ビニル化合物は15〜40重量%、衝撃時の表面割れの点から好ましくは20〜35重量%、更に好ましくは20〜30重量%、芳香族ビニル化合物は0〜45重量%、外観性の点から好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは2〜25重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%(合計で100重量%)を共重合してなる。
【0013】
アクリル酸エステルが40重量%未満では、HIC値が高く、衝撃時の表面割れが発生し易く、85重量%を越えると、耐熱変形性が低く、剥離しやすくなる。また、シアン化ビニル化合物が15重量%未満では、剥離しやすく、HIC値が高くなり、40重量%を越えると剥離しやすく、HIC値が高く、衝撃時の表面割れが発生し易くなる。また、芳香族ビニル化合物が45重量%を越えると耐衝撃性が低く、HIC値が高くなる傾向がある。更に、共重合可能な単量体が30重量%を越えるとHICが高く、衝撃時の表面割れが発生し易い。
【0014】
アクリル酸エステル系共重合体(I)のTg(ガラス転移温度)は、HIC値の点から20℃以下であり、好ましくは0℃以下、更に好ましくは−10℃以下である。20℃を越えるとHIC値が高くなる傾向がある。
アクリル酸エステル系共重合体(I)のゲル含有量〔ゲル含有量とは、メチルエチルケトン2%溶液を23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残渣を乾燥し、(濾過残渣重量/元の共重合体の重量)×100で表した値である。〕は、10重量%以下、加工性の点から、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。10重量%を越えると成形性が低下する傾向がある。
また、アクリル酸エステル系共重合体(I)のメチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)は、0.3〜1.2dl/g、好ましくは0.4〜1.0dl/g、更に好ましくは0.45〜0.9dl/gである。0.3dl/g未満では耐衝撃性が、1.2dl/gを越えると加工性が低下する傾向がある。
【0015】
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、ブチルアクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうちではアクリロニトリルが工業的見地から好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、クロルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、これらのうちではスチレンが工業的見地から好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
また、前記化合物と共重合可能な単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0016】
本発明におけるマレイミド系共重合体(II)は、耐熱性、加工性を付与するために使用される成分であり、マレイミド系共重合体(II)としては、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、好ましくは15〜35重量%、マレイミド系化合物5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%、好ましくは20〜75重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%(合計で100重量%)からなり、かつ芳香族ビニル化合物を49モル%以上含有する単量体混合物を重合してなる共重合体である。シアン化ビニル化合物が10重量%未満では、衝撃時の表面割れが発生し易く、40重量%を越えると加工性が低下する。マレイミド系化合物が5重量%未満では耐熱性が低下し、50重量%を越えると外観性が低下する。芳香族ビニル化合物が10重量%未満では外観性が低下し、85重量%を越えると衝撃時の表面割れ性が低下する。
単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の比率は特に重要であり、単量体混合物中の含有量が49モル%以上、好ましくは50モル%以上である。芳香族ビニル化合物の比率が49モル%未満では、熱安定性、衝撃時の表面割れ性、外観性が著しく低下する。
【0017】
マレイミド系共重合体(II)は、衝撃時の表面割れ性、外観性の点から、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/g、好ましくは0.35〜1.0dl/g、更に好ましくは、0.4〜0.9dl/gである。0.3dl/g未満では耐衝撃性が、1.2dl/gを越えると加工性が低下する傾向がある。
【0018】
マレイミド系共重合体(II)のシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が、マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレン、マレイミド系化合物としてはN−フェニルマレイミドが特に好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸及びそのエステルであるメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシルエチル、2−エチルヘキシル、グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0019】
本発明におけるグラフト共重合体(III)は、HIC値、衝撃時の表面割れ性の向上のために使用される。
ラフト共重合体(III)におけるゴム重合体(A)は、体積平均粒径50〜1000nm、好ましくは100〜900nm、更に好ましくは150〜800nmの、ジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体、アクリル系ゴム重合体であり、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。体積平均粒径が50nmあるいは1000nmを越えると耐衝撃性が低下する傾向がある。
ゴム重合体(A)の具体例としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル酸エステルゴム、水素化スチレン−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等のオレフィン系ゴム重合体、ポリアクリル酸エステルゴム、エチレン−アクリル酸エステルゴム等のアクリル系ゴム重合体が挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
ゴム重合体(A)は、酸基含有ラテックス(S)を使用する肥大法により製造されたものが好ましい。特にゴム重合体(A)は、ゴムラテックス100重量部(固形分)に対して、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸のうちの少なくとも1種の不飽和酸(c)5〜50重量%、アルキル基の炭素数が1〜12の少なくとも1種の(メタ)アルキルアクリレート(d)50〜95重量%、及び(c)、(d)と共重合可能な単量体(e)0〜40重量%(合計で100重量%)を重合させることにより調製した酸基含有ラテックスを使用する凝集肥大法により製造したゴム重合体が好ましい。(c)成分が5重量%未満では肥大し難く、耐衝撃性が低下し、50重量%を越えるとラテックスが凝析し易い傾向がある。また(d)成分が50重量%未満ではラテックスが凝析し易く、95重量%を越えると肥大し難く、耐衝撃性が低下する傾向がある。更に(e)成分が40重量%を越えるとラテックスが凝析し易い傾向がある。
【0021】
ラフト共重合体(III)は、ゴム重合体(A)と芳香族ビニル化合物10〜90重量%、好ましくは15〜85重量%、更に好ましくは20〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物の1種以上10〜90重量%、好ましくは15〜85重量%、更に好ましくは20〜80重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜15重量%からなる単量体混合物(合計で100重量%)を重合してなるグラフト部(B)とからなり、グラフト率が10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは25〜55重量%のグラフト共重合体である。また、ゴム重合体含量は樹脂組成物中5〜50重量%であることが好ましい。
単量体混合物の芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、グラフト共重合体のグラフト率及びゴム重合体含量が上記の範囲外では、HIC値、衝撃時の表面割れ性、外観性(表面性)が低下する。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちでは、メチルメタアクリレートが工業的見地から好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、工業的見地から、シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル、芳香族ビニル化合物としてはスチレンが特に好ましい。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸及びマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明における他の熱可塑性樹脂(IV)としては特に制限はないが、本発明におけるアクリル酸エステル系共重合体(I)、マレイミド系共重合体(II)、グラフト共重合体(III)の1種以上と親和性があるものが好ましい。たとえば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等のスチレン系共重合体、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。また、芳香族ポリカーボネート樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、SBS、SBES、SES等のスチレン系ブロック共重合体、変性ポリオレフィン等も使用できる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0025】
アクリル酸エステル系共重合体(I)、マレイミド系共重合体(II)、グラフト共重合体(III)はいかなる重合法を用いて製造したものでもかまわない。例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、乳化−懸濁重合法、乳化−塊状重合法等、本発明の範囲内の組成に制御できればどの重合法によって製造したものでもよい。グラフト共重合体(III)は、グラフト率を制御しやすい点から乳化重合法が好ましい。
【0026】
また、上記共重合体(I)、(II)、(III)は、いかなる開始剤、連鎖移動剤、乳化剤を用いて製造したものでもかまわず、例えば開始剤としては、過硫酸カリウム等の熱分解開始剤、Fe−還元剤−有機パーオキサイド等のレドックス系開始剤等が使用できる。連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、テルピノレン等が使用できる。乳化剤としては、オレイン酸ソーダ、パルミチン酸ソーダ、ロジン酸ソーダ等の脂肪酸金属塩系乳化剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、炭素数12〜20のアルキルスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ等のスルホン酸金属塩系乳化剤等が使用できる。これらは、いずれも単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0027】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、通常よく知られた酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、顔料、帯電防止剤、滑剤等を必要に応じて適宜使用できる。特に、スチレン系樹脂に用いられるフェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系の安定剤、抗酸化剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤及びオルガノポリシロキサン、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル、高級脂肪酸のアミド又はビスアミド及びその変性体、オリゴアミド、高級脂肪酸の金属塩類等の内部滑剤、外滑剤等は本発明における組成物を成形用樹脂として、より高性能なものとするために用いることができる。これらは、単独でもまた2種以上混合して使用することもできる。
【0028】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、更に他のスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体等の1種又は2種以上を50重量%以下、好ましくは40重量%以下で混合して、目的とする性能に調整することができる。
更に、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等の1種又は2種以上を混合することも可能である。
【0029】
本発明におけるアクリル酸エステル系共重合体(I)、マレイミド系共重合体(II)、グラフト共重合体(III)、他の熱可塑性樹脂(IV)からなる熱可塑性樹脂組成物は、その製造方法によるが、例えば、これらをラテックス、スラリー、溶液、粉末、ペレット等の状態あるいはこれらを組合せて混合することにより製造できる。重合後のアクリル酸エステル系共重合体(I)のラテックス、マレイミド系共重合体(II)のラテックス、グラフト共重合体(III)のラテックス、他の熱可塑性樹脂(IV)のラテックスからポリマー粉末を回収する場合は通常の方法、例えばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属の塩、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムのようなアルカリ金属の塩、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸のような無機酸及び有機酸を添加することでラテックスを凝固した後、脱水乾燥する方法で実施できる。またスプレー乾燥法も使用できる。
安定剤の使用量の一部を分散液の状態でこれら樹脂のラテックスあるいはスラリーに添加することもできる。
【0030】
本発明における熱可塑性樹脂組成物は、アクリル酸エステル系共重合体(I)、マレイミド系共重合体(II)、グラフト共重合体(III)、他の熱可塑性樹脂(IV)のそれぞれ単独あるいはこれら2種以上の混合物からなる粉末、ペレットに対し、上記の安定剤、必要ならば滑剤、顔料等を配合し、バンバリミキサー、ロールミル、1軸押出し機、2軸押出し機等公知の溶融混練機にて混練することができる。
【0031】
本発明の成形体は、上記熱可塑性樹脂組成物を用い射出成形法にて成形される。射出成形体は、HIC値、衝撃時の表面割れ性の点から、好ましくは、厚み0.1〜5mm、高さ3〜50mmのリブを、リブ間隔1〜50mmで2ケ以上連設した部位を有する平均肉厚0.5〜5mm、最大高さ3.5〜55mmの形状が良い。
より好ましくは、厚み0.3〜4.5mm、高さ5〜45mmのリブを、リブ間隔5〜45mmで4ケ以上連設した部位を有する平均肉厚1.0〜4.5mm、最大高さ5〜50mmの形状、更に好ましくは、厚み0.5〜4.0mm、高さ8〜40mmのリブを、リブ間隔7〜40mmで5ケ以上連設した部位を有する平均肉厚1.0〜4.5mm、最大高さ5〜50mmの形状が良い。
リブは、上記の形状を維持できれば、成形品の任意の個所にあればよい。成形品長手方向に対し、横に配列してもよいし、縦に配列してもよいし、斜めに配列してもよい。横リブ、縦リブ、斜めリブを組み合わせることもできる。各リブの厚み、高さ、方向は同一であってもよいし、それぞれ変えてもよい。
射出成形体の具体例としては、ピラー材、ドア材、インパネ材、センターパネル材、グリルガード材等の自動車の内外装樹脂製品、列車、飛行機等の座席及びその周辺の部材、乳児、幼児の玩具・乗物等が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例で示すが、これら実施例は本発明を限定するものではない。実施例中の「部」は重量部を、「%」は重量%を示す。
以下の記載において、略号はそれぞれ下記の物質を表す。
BA:ブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
TAC:トリアリルシアヌレート
MMA:メチルメタクリレート
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
AN:アクリロニトリル
St:スチレン
tDM:t−ドデシルメルカプタン
CHP:クメンハイドロパーオキサイド
PMI:N−フェニルマレイミド
αMSt:α−メチルスチレン
BMA:ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
他の熱可塑性樹脂(IV−a):AN/St/αMSt=25/10/60、還元粘度0.58dl/gの共重合体
他の熱可塑性樹脂(IV−b):AN/St=28/72、還元粘度0.65dl/gの共重合体
【0033】
実施例1〜6、比較例1〜6
(1)アクリル酸エステル系共重合体(I)の製造
▲1▼アクリル酸エステル系共重合体(I−a)の重合
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.0部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を仕込んだ。
反応器を攪拌しながら窒素気流下に65℃まで昇温させた。65℃に到達後、BA64部、AN28部、2EHA5部、St3部、tDM0.5部、CHP0.3部の混合物を連続的に7時間で滴下した。また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを重合時間1時間目に0.5部、3時間目に0.5部追加した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、重合を終了し、アクリル酸エステル系共重合体(I−a)を製造した。表1に結果を示す。
▲2▼アクリル酸エステル系共重合体(I−b)の製造
アクリル酸エステル系共重合体(I−a)と同様の方法で、単量体をBA57部、BMA10部、MMA5部、AN22部、St6部及びtDM0.35部、CHP0.3部として、アクリル酸エステル系共重合体(I−b)を製造した。表1に結果を示す。
▲3▼アクリル酸エステル系共重合体(I−c)の製造
アクリル酸エステル系共重合体(I−a)と同様の方法で、BA30部、AN45部、St25部、及びtDM0.5部、CHP0.3部として、アクリル酸エステル系共重合体(I−c)を製造した。表1に結果を示す。
▲4▼共重合体(I−d)の製造
アクリル酸エステル系共重合体(I−a)と同様の方法で、BA93部、AN7部、及びtDM0.35部、CHP0.3部として、アクリル酸エステル系共重合体(I−d)を製造した。表1に結果を示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003822347
【0035】
(2)マレイミド系共重合体(II)の製造
▲1▼マレイミド系共重合体(II−a)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水250部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を仕込んだ。
反応器を攪拌しながら窒素気流下に65℃まで昇温させた。65℃に到達後、PMI 13部、AN25部、St37部、αMSt25部、tDM0.45部、CHP0.4部の混合物を連続的に7時間で滴下した。また、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを重合時間1時間目に0.5部、3時間目に0.5部追加した。滴下終了後、65℃で1時間攪拌を続け、重合を終了し、マレイミド系共重合体(II−a)を製造した。表2に結果を示す。
▲2▼マレイミド系共重合体(II−b)の製造
マレイミド系共重合体(II−a)と同様の方法で、単量体をPMI 30部、AN17部、St53部、及びtDM0.35部、CHP0.3部として、マレイミド系共重合体(II−b)を製造した。表2に結果を示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003822347
【0037】
(3)ゴム重合体(B)の製造
第一段階として、未肥大ゴム重合体(B−1)、(B−2)を製造した。
▲1▼ゴム重合体(B−1)の製造
反応器に、純水230部、過硫酸カリウム0.2部、tDM0.15部を仕込んだ。
反応器内の空気を真空ポンプで除いた後、オレイン酸ナトリウム0.6部、ロジン酸ナトリウム2部、ブタジエン100部を仕込んだ。
系の温度60℃まで昇温し、重合を開始した。重合は25時間で終了した。重合転化率は96%、未肥大ゴム重合体(B−1)の粒径は83nmであった。
▲2▼ゴム重合体(B−2)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水200部、パルミチン酸ナトリウム0.2部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を仕込んだ。
反応器を攪拌しながら窒素気流下に55℃まで昇温させた。55℃に到達後、BA85部、BMA10部、2EHA5部、TAC1.5部、CHP0.3部の単量体混合物を7時間かけて滴下した。パルミチン酸ナトリウムを単量体混合物7時間滴下中の1時間後に0.3部、3時間後に0.5部、5時間後に0.5部添加した。滴下終了後、55℃で1時間攪拌を続け重合を終了した。重合転化率は98%、未肥大ゴム重合体(B−2)の粒径は110nmであった。
【0038】
(4)酸基含有ラテックス(S)の製造
第二段階として、上記未肥大ゴム重合体(B−1)、(B−2)を肥大化させるために必要な酸基含有ラテックス(S)を以下のように製造した。
▲1▼酸基含有ラテックス(S−1)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水200部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.6部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を仕込んだ。
反応器を攪拌しながら窒素気流下に70℃まで昇温させた。70℃に到達後、BMA25部、BA5部、tDM0.1部、CHP0.15部の単量体混合物を2時間かけて滴下後、更にBMA50部、2EHA4部、MAA16部、tDM0.25部、CHP0.15部を4時間かけて滴下し、滴下終了後、70℃で1時間攪拌を続け重合を終了し、酸基含有ラテックス(S−1)を得た。表3に結果を示す。
▲2▼酸基含有ラテックス(S−2)の製造
酸基含有ラテックス(S−1)と同様にして、表3に示す単量体混合物を使用し、酸基含有ラテックス(S−2)を製造した。表3に結果を示す。
【0039】
【表3】
Figure 0003822347
【0040】
(5)ゴム重合体(A)の製造
第三段階として、上記(3)で製造した未肥大ゴム重合体(B−1)、(B−2)と上記(4)で製造した酸基含有ラテックス(S−1)、(S−2)を使用し、ゴム重合体(A−1)、(A−2)を製造した。
▲1▼ゴム重合体(A−1)の製造
未肥大ゴム重合体(B−1)のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S−1)3.5部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−1)の製造を行った。ゴム重合体(A−1)の粒径は、420nmであった。
【0041】
▲2▼ゴム重合体(A−2)の製造
未肥大ゴム重合体(B−2)のラテックス100部(固形分)に酸基含有ラテックス(S−2)2部(固形分)を60℃で添加後、攪拌を1時間続けて肥大化させ、ゴム重合体(A−2)の製造を行った。ゴム重合体(A−2)の粒径は、640nmであった。
【0042】
(6)グラフト共重合体(III)の製造
▲1▼グラフト共重合体(III−a)の製造
攪拌機、還流冷却器、窒素導入口、モノマー導入口、温度計の設置された反応器に、純水280部、ゴム重合体(A−1)(固形分)60部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.01部、硫酸第一鉄0.0025部を仕込んだ。
反応器を攪拌しながら窒素気流下に60℃まで昇温させた。60℃に到達後、AN10部、St10部、MMA20部、CHP0.3部の混合物を連続的に5時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌を続け、重合を終了し、グラフト重合体(III−a)を得た。表4に結果を示す。
▲2▼グラフト共重合体(III−b)の製造
グラフト共重合体(III−a)と同様の方法で、ゴム重合体(A−2)70部にAN8部、St22部、CHP0.3部にて重合させ、グラフト共重合体(III−b)を製造した。表4に結果を示す。
【0043】
【表4】
Figure 0003822347
【0044】
(7)熱可塑性樹脂組成物の製造
(イ)上記(1)で製造したアクリル酸エステル系共重合体(I−a)、(I−b)のラテックス、上記(2)で製造したマレイミド系共重合体(II−a)、(II−b)のラテックス及び(6)で製造したグラフト共重合体(III−a)〜(III−b)のラテックスを表5に示す所定量の割合で均一混合し、フェノール系抗酸化剤を加えた後、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、(I)、(II)、(III)混合の樹脂組成物の粉末を得た。ついで得られた樹脂組成物に、エチレンビスステアリルアミド1部を混合し、株式会社タバタ製20Lブレンダーで10分間均一にブレンドした。更に株式会社日本鋼管製44m/m・2軸ベンド押出機で、ベント真空度700mmHgで250℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した(実施例1〜6)。
【0045】
(ロ)上記(1)で製造したアクリル酸エステル系共重合体(I−a)、(I−b)、(I−c)、(I−d)のラテックスに、(2)で製造したマレイミド系共重合体(II−a)のラテックスを(I)/(II)=2/1(固形分比)の割合で混合しフェノール系抗酸化剤を加えた後、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、(I)、(II)混合の樹脂組成物の粉末(A)を得た。別途、表5に示す所定量の割合となる比率にてグラフト共重合体(III−a)ラテックスとマレイミド系共重合体(II−a)のラテックスを混合し、フェノール系抗酸化剤を加えた後、塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して、(I)、(II)混合の樹脂組成物の粉末(B)を得た。
上記で得た2種類の粉末(A)、(B)を表5に示す所定量の割合となる比率で、かつ樹脂粉末100部に対しエチレンビスステアリルアミド1部を添加して、株式会社タバタ製20Lブレンダーで室温で5分間均一にブレンドした。更に株式会社タバタ製40m/m・l軸ベンド押出機で、ベント真空度700mmHgで250℃で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した(比較例1〜6)。
【0046】
上述のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットから、株式会社ファナック製FAS150B射出成形機を使用し、3種類の成形体(a)、(b)、(c)をシリンダー温度270℃で成形した。
図1、図2に成形体(a)の概略図を示す。成形体(a)は、断面がほぼC型の成形体本体1の内部に縦リブ2及び等間隔で横リブ3を配した自動車用ピラーカバーで、リブ厚み1.0mm(上端)〜1.4mm(根元)、リブ高さ27mm、横リブ間隔30mm、本体の肉厚2.3mm、本体の高さ29.3mmである。
成形体(b)は、成形体(a)と同様の形状で、リブ厚み1.5mm(上端)〜2.0mm(根元)、リブ高さ16mm、横リブ間隔40mm、本体の肉厚3.3mm、本体の高さ19.3mmである。
成形体(c)は、成形体(a)と同様の形状で、リブ厚み0.6mm(上端)〜0.9mm(根元)、リブ高さ34mm、横リブ間隔20mm、本体の肉厚1.8mm、本体の高さ35.8mmである。
得られた成形体(a)、(b)、(c)について、成形体の相構造及び特性を下記の方法で観察・測定した。結果は表5に示す。
【0047】
〔成形体の相構造〕
成形品の天面中心部を、表面部を含め樹脂流れ方向に平行でかつ表面と垂直な断面を切り出し、四酸化オスミニウム/酸化ルテニウムで染色した。表面から5μm深さにおける筋状部(A)(相対的に白い)と島状部(B)(ブタジエンゴム使用時は相対的に黒い)、海状部(C)(相対的に灰色)を透過型電子顕微鏡で撮影、観察した。
撮影写真から、ランダムに筋状部(A)の100個所の幅を測定し、筋状部(A)の平均幅を算出した。
島状部(B)は、株式会社ニレコ製LUZEXIIを使用し、画像解析法により平均粒径を算出した。
図3は、実施例1の成形体の相構造を示す透過型電子顕微鏡写真(倍率4万倍)であり、図4は該写真中の筋状部(A)と島状部(B)、海状部(C)からなる相構造を説明するための図であり、前記写真中の明確に写っているものをトレースしたものである。
【0048】
〔HIC値〕
HIC値は、4.5Kgの半球を成形体に24Km/Hrの速度で衝突させた時の加速度−時間変化を測定し、算出した〔指数〕。HIC値は小さいほど優れていることを示す。また試験後の成形体の天面の割れの有無を○(無)、×(有)で評価した。
〔外観性〕
外観性は上記成形体を目視にて、5点法で特に色むら、フローマークについて評価した。
5点:色むら、フローマークなし、4点:ほとんどなし、3点:ややあり、2点:あり、1点:著しい。
〔耐熱変形性〕
耐熱変形性は、上記成形体を24cmのスパンで2点支持し、85℃の雰囲気に24時間おいた後の最大熱変形量を測定した。熱変形量は数値が小さいほど優れていることを示す。
【0049】
表5の結果から、実施例1〜6に代表される本発明の射出成形体は、特に、HIC値が低く、割れがなく、かつ耐熱変形性が高く、外観性に優れている。
【0050】
【表5】
Figure 0003822347
【0051】
尚、表1〜表4中のTg(ガラス転移温度)、還元粘度、ゴム重合体の粒径、重合転化率は、それぞれ下記の方法で測定した。
【0052】
〔Tg(ガラス転移温度)の算出〕
アクリル酸エステル系共重合体(I)のTgは、各成分のホモポリマーのTg(「ポリマーハンドブック」に記載)からFox式を用いて算出した。
〔ゲル含有量の測定〕
アクリル酸エステル系共重合体(I)のラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、2%のメチルエチルケトン溶液とし、23℃で24時間放置し、100メッシュの金網で濾過して濾過残査を乾燥し、測定した。(濾過残査重量/元の重量)×100(%)で表す。
【0053】
〔還元粘度の測定〕
アクリル酸エステル系共重合体(I)あるいはマレイミド系共重合体(II)のラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、0.3g/dl濃度のN,N−ジメチルホルムアミド溶液として、30℃で還元粘度を測定した。
〔グラフト共重合体のグラフト率〕
グラフト共重合体(III)のラテックスに塩化カルシウムを加えて凝固させた。凝固スラリーを熱処理、脱水乾燥して得た樹脂粉末を、メチルエチルケトンに溶解して、遠心分離し、メチルエチルケトン可溶分と不溶分を得た。この不溶分と可溶分との比率から、グラフト率を特定した。
【0054】
〔ゴム重合体の粒径〕
ゴム重合体ラテックスについて、パシフィックサイエンス社製のナイコンプ粒径測定機を用いて測定した。
〔重合時の転化率〕
重合時の転化率は、固形分濃度より計算した。
【0055】
【発明の効果】
叙上のとおり、本発明の射出成形体は、HIC値が低く、衝撃時の表面割れがなく、耐熱変形性及び外観性(表面性)に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】射出成形体(a)の概略上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施例1の射出成形体の相構造を示す透過型電子顕微鏡写真(倍率4万倍)である。
【図4】図3の相構造をトレースした図面である。
【符号の説明】
1 本体
2 縦リブ
3 横リブ

Claims (3)

  1. アクリル酸エステル系共重合体(I)5〜65重量部、マレイミド系共重合体(II)15〜80重量部、グラフト共重合体(III)5〜75重量部、及び他の熱可塑性樹脂(IV)0〜50重量部よりなる熱可塑性樹脂組成物〔(I)、(II)、(III)、(IV)合計で100重量部〕からなり、
    前記アクリル酸エステル系共重合体(I)が、アクリル酸エステル40〜85重量%、シアン化ビニル化合物15〜40重量%、芳香族ビニル化合物0〜45重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)を重合してなる、Tgが20℃以下かつゲル含有量が10重量%以下の共重合体であり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2dl/gであり、
    前記マレイミド系共重合体( II )が、シアン化ビニル化合物10〜40重量%、マレイミド系化合物5〜50重量%、芳香族ビニル化合物10〜85重量%及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)重合してなり、かつ芳香族ビニル化合物を49モル%以上含有する共重合体であり、メチルエチルケトン可溶分の還元粘度(30℃、N,N−ジメチルホルムアミド溶液中)が0.3〜1.2 dl /gであり、
    前記グラフト共重合体 (III )が、体積平均粒径50〜1000 nm の、ジエン系ゴム重合体、オレフィン系ゴム重合体及びアクリル系ゴム重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴム重合体(A)と、芳香族ビニル化合物10〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル及びシアン化ビニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種10〜90重量%、及びこれらと共重合可能な単量体0〜30重量%(合計で100重量%)の単量体混合物を重合してなるグラフト部(B)とからなり、グラフト率が10〜80重量%であって、
    成形品の表面から深さ5μmでの樹脂流れ方向に平行な断面における透過型電子顕微鏡で観察される相構造が、平均幅0.001〜3μmの筋状部(A)と平均粒径0.005〜2μmの島状部(B)及び前記(A)、(B)以外の海状部(C)を有することを特徴とする射出成形体。
  2. 厚み0.1〜5mm、高さ3〜50mmのリブを、リブ間隔1〜50mmで2ケ以上連設した部位を有する平均肉厚0.5〜5mm、最大高さ3.5〜55mmの請求項1記載の射出成形体。
  3. ゴム重合体含量が樹脂組成物中5〜50重量%である請求項1又は2記載の射出成形体。
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