JP3996554B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高容量で、充放電特性に優れたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
4V級の電圧と高容量を特長とするリチウムイオン二次電池の正極活物質には、Liイオンのインターカレーションに有効な化合物としてLiMn24、LiMnO2、LiCoO2、LiCo1-xNix2、LiNiO2等が一般に用いられている。これらの中でも特に岩塩構造型のLiCoO2はLiに対し3.5V以上の高い放電電位を与え、かつ高容量を有する点で優れている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、LiCoO2は、電池の過充電事故などを契機として一部のLiCoO2粒子が電解液と異常反応して発熱し、これが周辺のLiCoO2粒子に次々と伝播するという熱暴走が発生し易い欠点がある。
【0004】
そこで、LiCoO2に比べて電解液との異常反応が発生しにくいマンガンを原料とするスピネル構造型のLiMn24を正極活物質に用いたリチウム二次電池が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)。また、コバルト酸化物にマンガン酸化物を混合して正極活物質に用いる方法も知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、LiMn24はLiCoO2に比べて体積当りの容量が小さく、また放電が高電位部と低電位部の2段階で起こるため、電圧変化が平坦でなく階段状になるなどの問題点を有する。
【0005】
【特許文献1】
特開昭55−136131号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平3−147276号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平4−123769号公報
【0008】
【特許文献4】
特開平5−13107号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年、熱的安定性と高容量を両立させるため、リチウム・ニッケル複合酸化物の層状の結晶構造を保持しつつ、熱的安定性の高いマンガンでニッケルを所定量置換させた一般組成式Li1+x+ αNi(1-x-y+ δ )/2yMn(1-x-y- δ )/22(但し、MはCr、Fe、Co、Alからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、0≦x≦0.1、0≦y≦0.4、−0.05≦α≦0.05、−0.1≦δ≦0.1)で表されるマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物を正極活物質とすることが検討されている。しかし、このマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物は、初期充放電効率が低いことによる容量低下が大きく、また大電流を流した際に電圧降下が大きいため負荷特性が悪くなる欠点がある。
【0010】
そこで、本発明は、高容量で、負荷特性が低下せず、熱的安定性が高いリチウム二次電池を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般組成式Li1+x+ αNi(1-x-y+ δ )/2yMn(1-x-y- δ )/22(但し、MはCr、Fe、Co、Alからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換元素であり、0≦x≦0.1、0y≦0.4、−0.05≦α≦0.05、−0.1≦δ≦0.1)で表されるマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物と、リチウム・コバルト複合酸化物とを正極活物質として含む正極を備えたリチウム二次電池であって、全正極活物質中で前記リチウム・コバルト複合酸化物の割合が50質量%以上であり、前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物と前記リチウム・コバルト複合酸化物の全質量に対して、前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の質量の割合が、50質量%未満であり、前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径が、前記リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/2以下であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のリチウム二次電池の一例は、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物とリチウム・コバルト複合酸化物とからなる正極活物質を用い、かつマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物とリチウム・コバルト複合酸化物の全質量に対して、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の質量の割合を50質量%未満、より好ましくは40質量%以下とし、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径を、リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/2以下、より好ましくは1/3以下としたことを特徴とする。
【0013】
これにより、高容量で、負荷特性が低下することがなく、熱的安定性が高いリチウム二次電池を提供できる。
【0014】
すなわち、図1に模式的に示すように、本実施形態のリチウム二次電池の正極において、リチウム・コバルト複合酸化物粒子1と、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物粒子2とを混在させたとき、複数のリチウム・コバルト複合酸化物粒子1の間の機械的接触は、より小粒子径のマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物粒子2が間に挿入されることによって阻害される。このため、電池が加熱されるなどして電極が昇温したときに、リチウム・コバルト複合酸化物粒子1の1つが電解液と異常反応して発熱しても、上記で挿入された熱的に安定なマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物粒子2が異常反応・発熱などの伝播を阻害するため、熱暴走が発生しにくいという効果が得られる。なお、図1において、3は電子伝導助剤である鱗片状黒鉛、4は導電性基体であるアルミニウム箔である。
【0015】
この熱暴走の発生を抑制するためには、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径を、リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/2以下、より好ましくは1/3以下とする必要がある。なお、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径が小さすぎると電解液との接触面積が増大して異常反応が発生し易くなり、かえって安全性が低下するという不都合があるので、その平均粒子径の下限値は、リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/40以上であることが好ましい。
【0016】
また、正極活物質中に容量密度の高いリチウム・コバルト複合酸化物を全正極活物質質量に対する質量比で50質量%以上混合して用いることにより高容量を得ることができ、かつ、初期充放電効率と大電流を流した際の電圧降下を少なくすることができる。
【0017】
このため、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物とリチウム・コバルト複合酸化物の全質量に対して、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の質量の割合を50質量%未満とすることが必要であり、特に10〜40質量%であることが好ましい。マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の含有量が50質量%以上では、初期充放電効率と大電流を流した際の電圧降下が大きくなるおそれがあり、また、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の含有量が10質量%より少ない場合は、リチウム・コバルト複合酸化物粒子の1つが電解液と異常反応して発熱した時の、マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物粒子による異常反応・発熱の伝播を阻害する効果が急減してしまい、電池の熱的安定性が低下するおそれがある。
【0018】
上記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物は、リチウム・マンガン複合酸化物(LiMnO2)の熱的安定性とリチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiO2)の高容量を両立させるために、リチウム・ニッケル複合酸化物の層状の結晶構造を保持しつつ、熱的安定性の高いマンガンでニッケルを所定量置換させたものである。また、上記リチウム・コバルト複合酸化物は、一般組成式LixCoO2で表され、xが0.98〜1.02の範囲にあるものが一般に使用される。
【0019】
上記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物は、一般組成式Li1+x+ αNi(1-x-y+ δ )/2yMn(1-x-y- δ )/22で表される層状型の化合物であるが、そのNiMnの部分はCr、Fe、Co、Al等の他の元素で置換することができる。そのような置換元素との組み合わせを例示すると、例えば、NiCoMn、NiFeMn、NiAlMn、NiFeCoMn、NiCoAlMn、NiFeAlMn、NiFeCoAlMn等が挙げられる。上記置換元素の導入は、酸化物等の形態で焼成時に添加すればよいが、上記元素を含む共沈化合物を原料に使用するのが望ましい。なお、上記置換元素の置換量は、上記一般組成式において0y≦0.4の範囲内とすればよく、また、マンガンの価数変化を抑制するためにも3価の遷移金属元素を導入することが好ましい。但し、0≦x≦0.1、−0.05≦α≦0.05、−0.1≦δ≦0.1である。
【0020】
上記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物及びリチウム・コバルト複合酸化物は、各元素を含む化合物を所定量混合して焼成することにより得られる。リチウム源としては、例えば、水酸化リチウム・一水和物、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、乳酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、ピルビン酸リチウム、硫酸リチウム、酸化リチウム等が使用でき、それらの中でも炭酸リチウムが特に好ましい。また、マンガン源及びニッケル源としては、例えば、等量のマンガンとニッケルが均一分布した化合物が挙げられ、それらの中でも共沈させたマンガン・ニッケルの水酸化物が特に好ましい。そして、コバルト源としては、例えば、炭酸コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト等が使用できる。
【0021】
上記化合物の焼成条件は特に限定されることはないが、750〜850℃で5〜15時間焼成することが好ましい。また、焼成時の雰囲気も特に限定されることはないが、空気中で行うことが好ましい。空気中で行うことにより反応の進行が容易になって、層状型のマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物を不純物の含有量が少ない状態で得ることができる。
【0022】
また、空気の流量としては、0.1cm3/分以上にすることが好ましく、1cm3/分以下がより好ましい。ガス流量が少ない場合には不純物が残存するおそれがあり、多すぎる場合にはマンガンの価数を制御できないなどの問題がある。また、3価のMnの生成を抑制するためにも、焼成は2回行うことが好ましく、特に500〜800℃で仮焼してから、再度焼成を行うのが好ましい。そして、焼成を2回行う場合、2回目の焼成温度を1回目の焼成温度よりも高くすることが好ましく、特に最初の焼成温度を750〜800℃にし、2回目の焼成温度を800〜850℃にするのが好ましい。
【0023】
正極は、例えば、上記正極活物質を含み、必要に応じて鱗片状黒鉛、カーボンブラックなどの電子伝導助剤を含み、さらにバインダを含む塗料を導電性基体上に塗布して乾燥することにより、導電性基体上に少なくとも正極活物質とバインダを含有する塗膜を形成する工程を経てシート状正極として作製される。
【0024】
上記正極と対向させる負極の活物質としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープできるものであればよく、そのような負極活物質としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭等の炭素系材料が使用できる。また、リチウムやリチウム含有化合物も負極活物質として用いることができる。そのリチウム含有化合物としては、リチウム合金とそれ以外のものとがある。リチウム合金としては、例えば、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウム等の合金が挙げられる。リチウム合金以外のリチウム含有化合物としては、例えば、錫酸化物、珪素酸化物、ニッケル−珪素系合金、マグネシウム−珪素系合金、タングステン酸化物、リチウム鉄複合酸化物等が挙げられる。これらの負極活物質のうち、黒鉛が容量密度が大きい点で特に好ましい。なお、上記負極活物質には、その製造直後にリチウムを含んでいないものもあるが、活物質として作用する際にはリチウムを含んだ状態になる。
【0025】
上記負極は、例えば、上記負極活物質に、バインダなどを加え、必要なら有機溶剤を追加投入しながら混合して塗料を調製し、その塗料を導電性基体上に塗布して乾燥することにより、塗膜を形成する工程を経てシート状負極として作製される。
【0026】
本実施形態において正極や負極の作製にあたって使用するバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0027】
本実施形態の正極、負極を塗布形成する際の塗料の溶剤としては、バインダ材料を溶解させるのに適当な溶剤を使用することが好ましい。このような溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、蒸留水などを単独または2種以上混合して用いることができる。
【0028】
また、正極や負極の作製にあたって使用する導電性基体としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金等からなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網等が使用できるが、正極の導電性基体としては特にアルミニウム箔が好ましく、負極の導電性基体としては特に銅箔が好ましい。
【0029】
本実施形態において、上記塗料を導電性基体に塗布する際の塗布方法としては、例えば、押出しコーター、リバースローラー、ドクターブレード、アプリケータなどをはじめ、各種の塗布方法を採用することができる。
【0030】
本実施形態の電解液としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの単独または2種以上の混合溶媒に、例えば、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiClO4、LiPF6、LiBF4などの電解質を単独または2種以上を溶解させて調製した有機溶剤系の電解液が用いられる。
【0031】
本実施形態のセパレータとしては、例えば、厚さ10〜50μmで、開孔率30〜70%の微多孔性ポリエチレンフィルムなどが好適に用いられる。
【0032】
本実施形態のリチウム二次電池は、例えば、上記のようにして作製されるシート状正極とシート状負極との間にセパレータを介在させて渦巻状に捲回作製した渦巻状電極体を、ニッケルメッキを施した鉄やステンレス鋼あるいはアルミニウム製の電池ケース内に挿入し、電解液を注入し、封口する工程を経て作製される。また、上記電池には、通常、電池内部に発生したガスをある一定圧力まで上昇した段階で電池外部に排出して、電池の高圧下での破裂を防止するための防爆機構が取り付けられる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
(1)正極の作製
マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(LiCo0.33Mn0.34Ni0.332)を下記の手法で合成した。マンガン源、ニッケル源およびコバルト源としては、マンガン、ニッケルおよびコバルトが均一分布した化合物が使用できるが、それらの中でもマンガン、ニッケルおよびコバルトを共沈させたマンガン−ニッケル−コバルトの水酸化物を用いた。
【0035】
先ず、マンガン−ニッケル−コバルト水酸化物と炭酸リチウムとを乳鉢中で混合・粉砕し、空気中にて900℃で12時間焼成を行い、再び乳鉢中で粉砕し、これを分粒して平均粒子径3μmのLiCo0.33Mn0.34Ni0.332の粉末を得た。
【0036】
次に、水酸化コバルトと炭酸リチウムとを乳鉢中で混合し、空気中にて900℃で12時間焼成して再び乳鉢中で粉砕し、これを分粒して平均粒子径10μmのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。
【0037】
次に、正極活物質含有塗膜形成用の塗料を以下の組成で調製した。
▲1▼上記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(正極活物質A):27.6質量部
▲2▼上記リチウム・コバルト複合酸化物(正極活物質B):64.4質量部
▲3▼正極活物質Aと正極活物質Bの質量比(A/B):30/70
▲4▼正極活物質Aと正極活物質Bの平均粒子径比(A/B):3/10
▲5▼鱗片状黒鉛(電子伝導助剤):5質量部
▲6▼ポリビニリデンフルオライド(バインダ):3質量部
▲7▼N−メチルピロリドン(溶剤):30質量部
【0038】
上記塗料の調製は次に示すように行った。先ず、ポリビニリデンフルオライド3質量部をN−メチルピロリドン22質量部に溶解して12質量%溶液を調製した。次に、この溶液にマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物27.6質量部と、リチウム・コバルト複合酸化物64.4質量部と、鱗片状黒鉛5質量部とを加え、さらに上記溶液を調製した残りのN−メチルピロリドン8質量部を加えて混合することによって塗料を調製した。そして、得られた塗料を厚さ15μmのアルミニウム箔にアプリケータを用いて塗布し、110℃に設定したホットプレート上で20分間乾燥した。同様に、アルミニウム箔の裏面側にも上記塗料を塗布し、110℃に設定したホットプレート上で20分間乾燥した。その後、100℃で8時間真空乾燥して正極活物質含有塗膜を両面に形成した。そして、この塗膜の形成後の電極体をロールプレスして、片面の塗膜厚みが72μm、全厚が159μm、電極単位面積あたりの活物質質量(片面)が20.19mgの両面塗布型のシート状正極を作製した。
【0039】
(2)負極の作製
負極活物質含有塗膜形成用の塗料を下記の組成で調製した。
▲1▼メソカーボンマイクロビーズ(負極活物質):95質量部
▲2▼ポリビニリデンフルオライド(バインダ):5質量部
▲3▼N−メチルピロリドン(溶剤):80質量部
【0040】
上記塗料の調製は次に示すように行った。先ず、ポリビニリデンフルオライド5質量部をN−メチルピロリドン37重量部に溶解して12質量%の溶液を調製した。次に、この溶液にメソカーボンマイクロビーズを95質量部加え、さらに上記溶液を調製した残りのN−メチルピロリドンを43質量部加えて混合することによって塗料を調整した。そして、得られた塗料を厚さ10μmの銅箔にアプリケータを用いて塗布し、110℃に設定したホットプレート上で20分間乾燥した。同様に、銅箔の裏面側にも上記塗料を塗布し、110℃に設定したホットプレート上で20分間乾燥した。その後、100℃で8時間真空乾燥して負極活物質含有塗膜を両面に形成した。そして、この塗膜形成後の電極体をロールプレスして、片面の塗膜厚みが79.5μm、全厚が169μm、電極単位面積あたりの活物質質量(正極に対向する部分の片面)が10.24mgの両面塗布型のシート状負極を作製した。
【0041】
(3)電池の作製
厚み15μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルムからなるシート状セパレータを上記シート状正極と上記シート状負極との間に介在させ、渦巻状に巻回して巻回構造の電極積層体を作製した。そして、この巻回構造の電極積層体を加圧して扁平状にした後、肉厚が0.3mm、開口部の大きさが縦5mm、横30mm、深さが48mmのアルミニウム製の角型電池ケースに挿入し、正極端子、負極端子にリード線を溶接した後、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(混合体積比で1:1)に1mol/dm3のLiPF6を溶解して調製した非水系の電解液を注入し、封口して本実施例のリチウム電池を作製した。
【0042】
図2は実施例1で作製したリチウム二次電池の平面図であり、図3は図2のA−A部の断面図である。図2、図3において、シート状の正極21とシート状の負極22は前述のようにセパレータ23を介して渦巻状に巻回した後、扁平状になるように加圧して扁平状巻回構造の電極積層体26として、角形の電池ケース24に電解液とともに収容されている。ただし、図2、図3では、煩雑化を避けるため、正極21や負極22の作製にあたって使用した集電体(導電性基体)としての金属箔や電解液等は図示していない。また、電極積層体26の内周側の部分は断面にしていない。
【0043】
電池ケース24はアルミニウム合金で形成され、電池の外装材となるものであり、この電池ケース24は正極端子を兼ねている。また、電池ケース24の底部にはポリテトラフルオロエチレンシートからなる絶縁体25が配置され、正極21、負極22及びセパレータ23からなる扁平状巻回構造の電極積層体26からは正極21及び負極22のそれぞれ一端に接続された正極リード体27と負極リード体28が引き出されている。また、電池ケース24の開口部を封口するアルミニウム合金製の蓋板29には、ポリプロピレン製の絶縁パッキング30を介してステンレス鋼製の端子31が取り付けられ、この端子31には絶縁体32を介してステンレス鋼製のリード板33が取り付けられている。更に、この蓋板29は上記電池ケース24の開口部に挿入され、両者の接合部を溶接することによって、電池ケース24の開口部が封口され、電池内部が密閉されている。
【0044】
なお、実施例1の電池では、正極リード体27を蓋板29に直接溶接することによって電池ケース24と蓋板29とが正極端子として機能し、負極リード体28をリード板33に溶接し、そのリード板33を介して負極リード体28と端子31とを導通させることによって端子31が負極端子として機能するようになっているが、電池ケース24の材質などによっては、その正極、負極が逆になる場合もある。
【0045】
(実施例2)
マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の組成を、LiCo0.16Mn0.42Ni0.422に変更した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0046】
参考例
マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物として、マンガンおよびニッケルを共沈させたマンガン−ニッケルの水酸化物を用いて作製した平均粒子径3μmのマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(LiMn0.5Ni0.52)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0047】
(実施例
下記に示した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0048】
正極活物質含有塗膜形成用の塗料を以下の組成で調製した。
▲1▼実施例1で作製したマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(正極活物質A):9.2質量部
▲2▼実施例1で作製したリチウム・コバルト複合酸化物(正極活物質B):82.8質量部
▲3▼正極活物質Aと正極活物質Bの質量比(A/B):10/90
▲4▼正極活物質Aと正極活物質Bの平均粒子径比(A/B):3/10
▲5▼鱗片状黒鉛(電子伝導助剤):5質量部
▲6▼ポリビニリデンフルオライド(バインダ):3質量部
▲7▼N−メチルピロリドン(溶剤):30質量部
【0049】
また、塗布、乾燥、ロールプレス後の片面の塗膜厚みが72μm、全厚が159μm、電極単位面積あたりの正極活物質質量(片面)が20.19mgの両面塗布型のシート状正極を作製する代わりに、片面の塗膜厚みが73μm、全厚が161μm、電極単位面積あたりの正極活物質質量(片面)が20.77mgの両面塗布型のシート状正極を作製し、片面の塗膜厚みが79.5μm、全厚が169μm、電極単位面積あたりの負極活物質質量(正極に対向する部分の片面)が10.24mgの両面塗布型のシート状負極を作製する代わりに、片面の塗膜厚みが78.5μm、全厚が167μm、電極単位面積あたりの負極活物質質量(正極に対向する部分の片面)が10.11mgの両面塗布型のシート状負極を作製した。なお、本実施例で塗膜厚みを上記のように変更したのは、正極と負極の容量比率を実施例1と同様とするためである。
【0050】
(実施例
正極活物質含有塗膜形成用の塗料を以下の組成で調製した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
(1)実施例1で作製したマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(正極活物質A):36.8質量部
(2)実施例1で作製したリチウム・コバルト複合酸化物(正極活物質B):55.2質量部
(3)正極活物質Aと正極活物質Bの質量比(A/B):40/60
(4)正極活物質Aと正極活物質Bの平均粒子径比(A/B):3/10
(5)鱗片状黒鉛(電子伝導助剤):5質量部
(6)ポリビニリデンフルオライド(バインダ):3質量部
(7)N−メチルピロリドン(溶剤):30質量部
【0051】
(実施例
リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径を7μmとした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0052】
(比較例1)
下記に示した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0053】
正極活物質含有塗膜形成用の塗料を以下の組成で調製した。
▲1▼リチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2):92質量部
▲2▼鱗片状黒鉛(電子伝導助剤):5質量部
▲3▼ポリビニリデンフルオライド(バインダ):3質量部
▲4▼N−メチルピロリドン(溶剤):30質量部
【0054】
また、塗布、乾燥、ロールプレス後の片面の塗膜厚みが72μm、全厚が159μm、電極単位面積あたりの正極活物質質量(片面)が20.19mgの両面塗布型のシート状正極を作製する代わりに、片面の塗膜厚みが74μm、全厚が163μm、電極単位面積あたりの正極活物質質量(片面)が21.22mgの両面塗布型のシート状正極を作製し、片面の塗膜厚みが79.5μm、全厚が169μm、電極単位面積あたりの負極活物質質量(正極に対向する部分の片面)が10.24mgの両面塗布型のシート状負極を作製する代わりに、片面の塗膜厚みが77.5μm、全厚が165μm、電極単位面積あたりの負極活物質質量(正極に対向する部分の片面)が9.95mgの両面塗布型のシート状負極を作製した。なお、本実施例で塗膜厚みを上記のように変更したのは、正極と負極の容量比率を実施例1と同様とするためである。
【0055】
(比較例2)
正極活物質含有塗膜形成用の塗料を以下の組成で調製した以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
▲1▼実施例1で作製したマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物(正極活物質A):64.4質量部
▲2▼実施例1で作製したリチウム・コバルト複合酸化物(正極活物質B):27.6質量部
▲3▼正極活物質Aと正極活物質Bの質量比(A/B):70/30
▲4▼正極活物質Aと正極活物質Bの平均粒子径比(A/B):3/10
▲5▼鱗片状黒鉛(電子伝導助剤):5質量部
▲6▼ポリビニリデンフルオライド(バインダ):3質量部
▲7▼N−メチルピロリドン(溶剤):30質量部
【0056】
(比較例3)
マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径を4μmとし、リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径を7μmとした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0057】
次に、上記のようにして作製した実施例1〜の電池、参考例の電池および比較例1〜3の電池の放電容量、負荷特性を測定した。また、上記負荷特性の測定において、充放電電流をCで表示した場合、700mAを1Cとして充放電を行った。充電は1Cの電流制限回路を設けて4.2Vの定電圧で行い、放電は1Cの電流制限回路を設けて電池の電極間電圧が3Vに低下するまで行って放電容量を測定した。そして、負荷特性として、0.2Cおよび2Cの放電容量をそれぞれ測定し、(2Cの放電容量)/(0.2Cの放電容量)の比を求めた。
【0058】
また、各電池の安全性を比較するため、充電電流を2Cに設定し、通常充電とは異なり4.2Vを超えても引き続き電池を充電するという過充電試験を行った。なお、この時の定電流電源は最大電圧12Vに設定した。電池ケースには熱電対を貼り付けて、過充電試験中の温度上昇を測定し、セパレータのシャットダウンにより充電が強制停止された以降の最大温度を求めた。実施例、参考例および比較例の各試験電池個数は10個である。
【0059】
以下、表1に実施例1〜参考例および比較例1〜3の正極塗膜の構成をまとめて示し、表2に上記電池特性の測定結果を示した。なお、表2において負荷特性は、(2Cの放電容量)/(0.2Cの放電容量)×100の値を示した。
【0060】
【表1】
Figure 0003996554
【0061】
【表2】
Figure 0003996554
【0062】
表2から明らかなように、実施例1〜実施例5および参考例の電池は、放電容量、負荷特性、安全性の全てにおいて満足できる結果を得た。これに対して、比較例1の電池では安全性に問題があり、比較例2の電池では放電容量と負荷特性に問題があり、比較例3の電池では負荷特性と安全性に問題があった。
【0063】
【発明の効果】
以上のように本発明は、放電容量、負荷特性、安全性のバランスを向上させたリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の正極塗膜構造の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】実施例1で作製したリチウム二次電池の平面図である。
【図3】図2のA−A部の断面図である。
【符号の説明】
1 リチウム・コバルト複合酸化物粒子
2 マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物粒子
3 鱗片状黒鉛
4 アルミニウム箔
21 正極
22 負極
23 セパレータ
24 電池ケース
25 絶縁体
26 電極積層体
27 正極リード体
28 負極リード体
29 蓋板
30 絶縁パッキング
31 端子
32 絶縁体
33 リード板

Claims (3)

  1. 一般組成式Li1+x+ αNi(1-x-y+ δ )/2yMn(1-x-y- δ )/22(但し、MはCr、Fe、Co、Alからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む置換元素であり、0≦x≦0.1、0y≦0.4、−0.05≦α≦0.05、−0.1≦δ≦0.1)で表されるマンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物と、リチウム・コバルト複合酸化物とを正極活物質として含む正極を備えたリチウム二次電池であって、
    全正極活物質中で前記リチウム・コバルト複合酸化物の割合が50質量%以上であり、
    前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物と前記リチウム・コバルト複合酸化物の全質量に対して、前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の質量の割合が、50質量%未満であり、
    前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径が、前記リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/2以下であることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物と前記リチウム・コバルト複合酸化物の全質量に対して、前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の質量の割合が、10質量%以上40質量%以下である請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記マンガン含有リチウム・ニッケル複合酸化物の平均粒子径が、前記リチウム・コバルト複合酸化物の平均粒子径の1/3以下である請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
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